(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136008
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20230922BHJP
B29C 48/07 20190101ALI20230922BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08J9/14 CET
B29C48/07
B29C44/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041401
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】中村 文香
(72)【発明者】
【氏名】長野 将樹
【テーマコード(参考)】
4F074
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA13E
4F074AA32
4F074AA64M
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4F214UN64
4F214UP84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】難燃性能が改善され、JIS燃焼性の平均時間のばらつきが小さくなるスチレン系樹脂押出発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】スチレン系樹脂と、臭素系難燃剤、陰イオン界面活性剤を有し、陰イオン界面活性剤は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01~5.0重量部であるスチレン系樹脂押出発泡体であって、臭素系難燃剤が臭素化スチレンブタジエンポリマーであるスチレン系樹脂押出発泡体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂、臭素系難燃剤、陰イオン界面活性剤を含むスチレン系樹脂押出発泡体であって、臭素系難燃剤が臭素化スチレンブタジエンポリマーであることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂の総量100重量部に対して、臭素化スチレンブタジエンポリマーを0.5~3.0重量部含有することを特徴とする、請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂の総量100重量部に対して、陰イオン界面活性剤が0.01~0.1重量部含有することを特徴とする、請求項1または請求項2記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項4】
陰イオン界面活性剤が、アルキル硫酸塩であることを特徴とする、請求項1~3いずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項5】
さらにラジカル発生剤を含み、前記スチレン系樹脂の総量100重量部に対して、ラジカル発生剤を0.05~0.5重量部含有することを特徴とする、請求項1~4いずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項6】
ラジカル発生剤が、2,3-ジメチル2,3―ジフェニルブタンおよび/または、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼンであることを特徴とする、請求項5に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂押出発泡体が、JIS A9511の燃焼試験方法に合格することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項8】
前記スチレン系樹脂押出発泡体が、JIS A9511の燃焼試験で燃焼時間平均1.0秒未満、及び標準偏差0.3未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂押出発泡ボードである、請求項1~8のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡ボード。
【請求項10】
スチレン系樹脂、臭素系難燃剤、陰イオン界面活性剤を含むスチレン系樹脂組成物を押出発泡する押出発泡体の製造方法であって、臭素系難燃剤が臭素化スチレンブタジエンポリマーであることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項11】
スチレン系樹脂と陰イオン界面活性剤を混合する工程を有する、請求項10に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項12】
発泡剤が、炭素数が3~5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項10もしくは11に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項13】
発泡剤として、さらに、水、二酸化炭素、窒素、炭素数が1~4のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項12に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性能を備えたスチレン系樹脂押出発泡体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂を押出機等にて加熱溶融し、次いで発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧域に押し出すことにより、スチレン系樹脂発泡体を連続的に製造する方法は、既に知られている。
スチレン系樹脂押出発泡体には、JIS A9511記載の押出スチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満たすために、難燃剤が添加される。
スチレン系樹脂押出発泡体に適した難燃剤の主な必要特性としては、一般的なスチレン系樹脂の押出加工条件である230℃程度の温度では分解しないことである。押出加工条件下で難燃剤が分解すると、樹脂の劣化が引き起こされるため、得られる発泡体の成形性が悪化したり、発泡体気泡径が制御し難い、等の悪影響を及ぼすからである。
スチレン系樹脂押出発泡体に適した難燃剤のもう一つの必要特性としては、スチレン系樹脂の分解前に、効率良く分解することである。ポリスチレンは300℃付近から分解することが知られている。そのため、300℃付近よりも低い温度において難燃剤が効率よく分解しないと、JIS A9511記載の燃焼性規格を満たさない恐れがあるからである。また、必要な燃焼性能を得るために、結果として難燃剤の添加部数を多くしなければならず、製品コストアップや、得られる発泡体の成形性悪化等の悪影響を及ぼす傾向にあるからである。
【0003】
以上のような背景から、スチレン系樹脂押出発泡体の難燃剤としては、ヘキサブロモシクロデカン(以下、「HBCD」と略する。)が広く用いられてきた。HBCDは、押出加工条件下では比較的安定であり、且つポリスチレンの分解時には効率よく分解することが知られており、少ない添加部数で高度な難燃性能を発現することができる。
しかし、HBCDは難分解性で生態に対して高蓄積性の化合物である懸念があることから、環境衛生上好ましいものではなく、HBCD使用量の削減、およびHBCDに代わる難燃剤の開発が望まれている。そこで、HBCD以外の臭素系難燃剤を用いたスチレン系樹脂押出発泡体の検討がなされている。
【0004】
例えば、HBCDに代わる難燃剤として、従来の低分子型の難燃剤に取って代わり、ポリマー型の難燃剤の開発がなされている。その中で、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーがHBCDと同等レベルの難燃性能を有するものとして注目されている(特許文献1および2参照)。但し、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーは、熱安定性に問題があり、アルキルホスファイトとエポキシ化合物を安定剤として使用することにより、臭素化ポリマー難燃剤の熱安定性が改善される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-120935号公報
【特許文献2】特開2017-2248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術ではJIS A9511の燃焼試験での測定値のばらつきが大きく、JIS燃焼性規格を満たさない恐れがあった。
本発明は、難燃性スチレン系樹脂押出発泡体が有する前記課題を解決するためになされたものであって、難燃性能に優れるスチレン系樹脂押出発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題の解決のために鋭意研究した結果、スチレン系樹脂および発泡剤を、押出機内にて溶融混錬して低圧域下に押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体に、難燃剤として脂肪族臭素含有ポリマーを含有し、更に、陰イオン界面活性剤であるアルキル硫酸塩を所定量含有せしめることによって、上記課題を達成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕スチレン系樹脂、臭素系難燃剤、陰イオン界面活性剤を含むスチレン系樹脂押出発泡体であって、臭素系難燃剤が臭素化スチレンブタジエンポリマーであることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体。
〔2〕前記スチレン系樹脂の総量100重量部に対して、臭素化スチレンブタジエンポリマーを0.5~3.0重量部含有することを特徴とする、〔1〕に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔3〕前記スチレン系樹脂の総量100重量部に対して、陰イオン界面活性剤が0.01~0.1重量部含有することを特徴とする、〔1〕または〔2〕記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔4〕陰イオン界面活性剤が、アルキル硫酸塩であることを特徴とする、〔1〕~〔3〕いずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔5〕さらにラジカル発生剤を含み、前記スチレン系樹脂の総量100重量部に対して、ラジカル発生剤を0.05~0.5重量部含有することを特徴とする、〔1〕~〔4〕いずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔6〕ラジカル発生剤が、2,3-ジメチル2,3―ジフェニルブタンおよび/または、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼンであることを特徴とする、〔5〕に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔7〕前記スチレン系樹脂押出発泡体が、JIS A9511の燃焼試験方法に合格することを特徴とする、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔8〕前記スチレン系樹脂押出発泡体が、JIS A9511の燃焼試験で燃焼時間平均1.0秒未満、及び標準偏差0.3未満であることを特徴とする、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
〔9〕前記スチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂押出発泡ボードである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡ボード。
〔10〕スチレン系樹脂、臭素系難燃剤、陰イオン界面活性剤を含むスチレン系樹脂組成物を押出発泡する押出発泡体の製造方法であって、臭素系難燃剤が臭素化スチレンブタジエンポリマーであることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
〔11〕スチレン系樹脂と陰イオン界面活性剤を混合する工程を有する、〔10〕に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
〔12〕発泡剤が、炭素数が3~5である飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、〔10〕もしくは〔11〕に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
〔13〕発泡剤として、さらに、水、二酸化炭素、窒素、炭素数が1~4のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、〔12〕に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、難燃性能が改善され、JIS燃焼性の平均時間のばらつきが小さくなるスチレン系樹脂押出発泡体である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0011】
(スチレン系樹脂)
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、後述する臭素化スチレンブタジエンポリマーと異なるスチレン系樹脂であれば、特に限定なく、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン系単量体の単独重合体、または、2種以上の単量体の組み合わせからなる共重合体;前記スチレン系単量体とジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の単量体の少なくとも1種を共重合させた共重合体などが挙げられる。
なお、スチレン系単量体と共重合させるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの単量体は、製造されるスチレン系樹脂押出発泡体の圧縮強度等の物性を低下させない範囲内の量で用いることができる。
【0012】
また、本発明で用いられるスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体の単独重合体または共重合体に限られず、前記スチレン系単量体の単独重合体または共重合体と、前記他の単量体の単独重合体または共重合体とのブレンド物であってもよく、ジエン系ゴム強化ポリスチレンやアクリル系ゴム強化ポリスチレンをブレンドすることもできる。
これらのスチレン系樹脂のうちでは、押出発泡成形性などの面から、スチレンホモポリマー、スチレンアクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンが好ましい。特に好ましくは、コスト面から、スチレンホモポリマーである。
【0013】
スチレン系樹脂は、スチレン系樹脂100重量部中、スチレン系単量体に由来する構成単位を有する樹脂を、50重量部以上含むことが好ましく、60重量部以上含むことがより好ましく、70重量部以上含むことがより好ましく、80重量部以上含むことがより好ましく、90重量部以上含むことがさらに好ましく、95重量部以上含むことが特に好ましい。
【0014】
(難燃剤)
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体においては、臭素系難燃剤として、臭素化スチレンブタジエンポリマーを使用することにより難燃性能及び環境適合性に優れた発泡体を得ることができる。
本発明で用いられる臭素化スチレンブタジエンポリマーとしては、例えば、臭素化スチレンブタジエンブロックコポリマー、臭素化スチレンブタジエンランダムコポリマー、臭素化スチレンブタジエングラフトポリマー、臭素化・エポキシ化スチレンブタジエンブロックコポリマーなどが挙げられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらのうちでも、臭素化スチレンブタジエンブロックコポリマーが、性能、コスト、供給安定面から、好ましい。
【0015】
このような臭素化スチレンブタジエンポリマーとしては、例えば特許文献1に記載のポリマーを使用することができる。より具体的には、スチレンブタジエンコポリマーのうちブタジエンに由来する構成単位部分が臭素化されたコポリマーを使用することができる。このようなコポリマーにうち、難燃性能の観点から、スチレンに由来する構成単位は臭素化させていないものが好ましい。このような、ブタジエンに由来する構成単位部分が臭素化され、スチレンに由来する構成単位は臭素化されていない臭素化スチレンブタジエンポリマー(臭素化ブタジエン・スチレン共重合体)としては、例えば、CAS No.1 195978-93-8の臭素化ブタジエン・スチレン共重合体を例示できる。
CAS No.1 195978-93-8で示される臭素化ブタジエン・スチレン共重合体は、例えば、ケムチュラ社から、商品名「EMERALD INNOVATION 3000」として販売されている。
【0016】
本発明における難燃剤組成物中の、臭素化スチレンブタジエンポリマーの含有量は、組成物総重量100wt%とした場合、臭素化スチレンブタジエンポリマーが30~80wt%であることが好ましく、更にコスト面から40wt%以上、更には50wt%以上が好ましい。30wt%未満の低濃度難燃剤組成物であると、スチレン系押出発泡体へ含有する際に、大量に添加する必要があることから、コスト面で不利である。また、80wt%を超えると、難燃剤組成物中のスチレン系樹脂の比率が極めて少なくなることから、該組成物が脆化する傾向にあり、製造が困難となる傾向にある。また、難燃剤の分解が発生する傾向にあり、難燃剤組成物の外観不良、引いては発泡体の外観不良に繋がる恐れがある。
本発明における臭素系難燃剤の含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~5.0重量部が好ましく、0.5~3.0重量部がより好ましい。
【0017】
(ラジカル発生剤)
本発明においては、さらに、ラジカル発生剤を併用することにより、スチレン系樹脂押出発泡体の難燃性能を向上させることができる。
本発明で用いられるラジカル発生剤としては、例えば、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテン等のフェニル基を有するアルカンやアルケンが挙げられ、ジクミルパーオキサイドのような過酸化物も含まれる。
これらの中でも、樹脂加工温度条件にて、安定なものが好ましく、具体的には2,3-ジメチル2,3-ジフェニルブタン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼンが好ましい。
本発明におけるラジカル発生剤の含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.05~5.0重量部が好ましく、0.05~0.5重量部がより好ましい。
【0018】
(陰イオン界面活性剤)
本発明においては、さらに、陰イオン界面活性剤を使用することにより、スチレン系樹脂押出発泡体の難燃性能をさらに向上させることができる。
本発明で用いられる陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩が好ましく、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのラウリル硫酸やその塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウムなどのポリオキシエチレンラウリルエーテル有機酸塩を使用することができる。
これらの中でも、樹脂加工温度条件にて、分散性に優れた、アルキル硫酸塩が好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムがより好ましい。例えば、花王株式会社から、商品名「エマール10PT」として販売されている。
本発明におけるアルキル硫酸塩の含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.005~7.0重量部が好ましく、0.01~5.0重量部がより好ましく、0.02~0.1重量部がさらにより好ましい。
【0019】
(発泡剤)
本発明で用いられる発泡剤としては、特に限定するものではないが、炭素数3~5の飽和炭化水素を使用することにより、優れた環境適合性を付与することができる。
本発明で用いられる炭素数3~5の飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、n―ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。これらは単独でも良いし、2種以上組み合わせても良い。これらの炭素数3~5の飽和炭化水素のなかでは、発泡性の点から、プロパン、n―ブタン、i-ブタン、あるいは、これらの2種以上の混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点から、n―ブタン、i-ブタン、あるいは、これらの混合物が好ましく、特に好ましくはi-ブタンである。
なお、発泡体の熱伝導率向上の観点から、スチレン系樹脂押出発泡体の全スチレン系樹脂100重量部に対して、i-ブタンは2.5~4.0重量部含有させることが好ましい。ただし、i-ブタンは可燃性ガスであることから、多量添加によって、発泡体の難燃性能を悪化させる傾向にある。熱伝導率と難燃性能とのバランスを取るための好ましい含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、2.7~3.7重量部である。
【0020】
本発明では、さらに、炭素数3~5の飽和炭化水素以外の他の発泡剤を用いることにより、発泡体製造時に可塑化効果や助発泡効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的に発泡体の製造が可能となる。
本発明で用いられる他の発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類;ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチル-n-ブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの炭素数1~4の飽和アルコール類;蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンなどのフッ素化アルキル発泡剤、水、二酸化炭素、窒素などの無機発泡剤;アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などを用いることができる。これらの他の発泡剤は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
これら他の発泡剤の中では、発泡性、発泡体成形性などの点からは、炭素数1~4の飽和アルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、難燃性、あるいは、断熱性等の点からは、水、二酸化炭素、窒素が好ましい。さらに、可塑化効果の点から、ジメチルエーテルが特に好ましく、コスト、気泡径の制御による断熱性向上効果の点から、水が特に好ましい。
【0021】
以上の観点から、本発明では、炭素数3~5の飽和炭化水素の他に、発泡剤として、さらに、水、二酸化炭素、窒素、炭素数が1~4のアルコール類、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の他の発泡剤を含むことが好ましい。
【0022】
本発明における発泡剤の使用量(前述の飽和炭化水素及び他の発泡剤の合計量)は、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、2~20重量部が好ましく、4~10重量部がより好ましい。発泡体の使用量は2重量部未満では、発泡倍率が低く、樹脂発泡体としての軽量、断熱などの特性が発揮されにくい場合があり、20重量部超では、過剰な発泡剤量のため、発泡体中にボイドなどの不良を生じる場合がある。
【0023】
(安定剤)
安定剤は、難燃剤の分解を抑制することができる。本押出発泡体が安定剤をさらに含む場合、当該押出発泡体は難燃性および/または熱安定性に優れる押出発泡体が得られるという利点を有する。安定剤としては特に限定されないが、難燃性および熱安定性に優れる押出発泡体を得ることができることから、エポキシ化合物、多価アルコールエステルなどが好適に挙げられる。
【0024】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA-グリシジルエーテル、クレゾールノボラック、フェノールノボラックなどが挙げられる。多価アルコールエステルは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、酢酸およびプロピオン酸などの一価のカルボン酸、または、アジピン酸およびグルタミン酸などの二価のカルボン酸、との反応物(エステル)である。
多価アルコールエステルは、分子中に一個以上の水酸基を持つエステルの混合物であり得、原料の多価アルコールを少量含有することもあり得る。多価アルコールエステルとして、具体的には、ジペンタエリスリトールとアジピン酸との反応混合物(ジペンタエリスリトール/アジピン酸反応混合物)が好適に挙げられる。
本発明におけるエポキシ化合物の含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1~5.0重量部が好ましく、0.1~0.5重量部がより好ましい。
また、多価アルコールエステルの含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1~5.0重量部が好ましく、0.1~0.5重量部がより好ましい。
【0025】
(加工助剤)
加工助剤としては特に限定されないが、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、流動パラフィン、オレフィン系ワックスなどが挙げられる。脂肪酸金属塩としては特に限定されないが、テアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウムなどが挙げられる。
本発明における加工助剤の含有量としては、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1~5.0重量部が好ましく、0.1~0.5重量部がより好ましい。
【0026】
(気泡径調整剤)
気泡径調整剤としては、タルクなどが挙げられ、スチレン系樹脂押出発泡体中の全スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1~10.0重量部が好ましく、0.1~5.0重量部がより好ましい。
【0027】
(吸水媒体)
本発明において、他の発泡剤として水を用いる場合には、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質を添加することが好ましい。本発明に用いられる吸水性物質の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール-アクリル酸塩系共重合体、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、アクリロニトリル-メタクリル酸メチル-ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体およびこれらの誘導体などの吸水性高分子の他、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)などのように表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩並びにこれらの有機化処理品、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土、ベントナイトなどの多孔性物質等があげられる。
本発明における吸水性物質の添加量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.1~3重量部がより好ましい。
【0028】
(製造方法)
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法としては、スチレン系樹脂、難燃剤組成物、陰イオン界面活性剤、添加剤等を押出機等の加熱溶融手段に供給し、任意の段階で高圧条件下にて発泡剤をスチレン系樹脂に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却した後、ダイを通して該流動ゲルを低圧領域に押出発泡して、発泡体を形成することにより製造される。
発泡剤を添加する工程までを詳説すると、スチレン系樹脂、難燃剤組成物、陰イオン界面活性剤、必要に応じて用いる添加剤(安定剤、ラジカル発生剤、吸水性物質、その他の各種添加剤)を例えばドライブレンドして得られる混合物を押出機に供給して加熱溶融混練し、押出機の所望の位置で、この混練物に発泡剤を添加してスチレン系樹脂に圧入する。
本発明では、このように、特定の難燃剤組成物を予め調製し、これとスチレン系樹脂及び発泡剤を用いて発泡体とすることで、熱安定性及び難燃性に優れ且つ優れた外観を有する発泡体の提供を可能にした。
【0029】
スチレン系樹脂、難燃剤組成物、陰イオン界面活性剤、発泡剤及び必要に応じて用いる添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については、特に制限するものではない。加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤である臭素化スチレンブタジエンポリマーなどの影響も含め、樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば160~240℃程度が好ましく、更に好ましくは225℃以下である。溶融混練時間は、単位時間当たりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。
発泡成形方法も、特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0030】
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与せしめるためには、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10~150mm、好ましくは20~100mmである。
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の密度については、軽量でかつ優れた断熱性および曲げ強度、圧縮強度を付与せしめるためには、15~50kg/m3であることが好ましく、25~40kg/m3であるのがさらに好ましい。
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、優れた熱安定性、難燃性能および断熱性能の点から、建材用途の断熱材として好適に用いられる。
【実施例0031】
以下、本発明の一実施形態について、実施例および比較例を用いて詳細に説明する。なお本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。
【0032】
実施例及び比較例において使用した原料は、次の通りである。
(A)スチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、680]
(B)難燃剤
・臭素化スチレンブタジエンブロックポリマー[ケムチュラ製、EMERALD INNOVATION 3000、臭素含有率65wt%]
(C)ラジカル発生剤
・ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン [UNITED INITIATORS製、CUROX CC-P3]
(D)界面活性剤
・ラウリル硫酸ナトリウム[花王製、エマール10PT]
(E)エポキシ化合物
・ビスフェノール-A-グリシジルエーテル[ADEKA製、EP-13,エポキシ当量180~200g/eq.]
(F)多価アルコール部分エステル
・ジペンタエリスリトール-アジピン酸反応混合物[味の素ファインテクノ製、プレンライザーST210]
(G)加工助剤
・ステアリン酸カルシウム[堺化学工業(株)製、SC-P]
(H)気泡径調整剤
・タルク[林化成(株)製、PHK-400]
(I)吸水媒体
・ベントナイト[(株)BYK製、ベントライトL]
・シリカ[エボニックデグサジャパン(株)製、カープレックスBS-304F]
(J)発泡剤
・イソブタン [三井化学(株)製]
・ジメチルエーテル [岩谷産業(株)製]
・水 [水道水]。
【0033】
実施例および比較例にて実施した測定方法および評価方法は、次の通りである。
【0034】
(1)発泡体密度
発泡体密度は、発泡体密度(g/cm 3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
【0035】
(2)独立気泡率
各実施例および比較例にて得られたスチレン系樹脂押出発泡体について、押出装置から押出される方向を押出方向とし、押出方向に垂直な面の長手方向を幅方向とし、押出方向に垂直な面の短手方向を厚さ方向とした。また、押出発泡体の押出方向の長さを押出発泡体の長さとし、押出発泡体の幅方向の長さを押出発泡体の幅とし、押出発泡体の厚さ方向の長さを押出発泡体の厚さとした。スチレン系樹脂押出発泡体の幅方向中央部の場所の3箇所各々から、厚さ30mm×長さ(押出方向)25mm×幅25mmの試験片を切り出した。3つの試験片について、ASTM-D2856-70の手順Cに従って体積等を測定し、以下の計算式にて各試験片の独立気泡率を求めた。3つの試験片の平均値をスチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(V1-W/ρ)×100/(V2-W/ρ)。
ここで、V1(cm 3)は空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、空気比較式比重計、型式1000型]を用いて測定した、試験片の真の体積である。真の体積とは、独立気泡でない部分の容積が除かれた体積である。V2(cm 3 )は、ノギス[ミツトヨ(株)製、M型標準ノギスN30]を用いて測定した、試験片の寸法より算出した見掛けの体積である。W(g)は試験片の全重量である。また、ρ(g/cm 3)はスチレン系樹脂押出発泡体の製造に使用したスチレン系樹脂の密度である。各実施例および比較例にて使用したスチレン系樹脂の密度ρは、1.05(g/cm 3)とした。
【0036】
(3)平均気泡径
各実施例および比較例にて得られたスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向断面(TD)、厚さ方向断面(HD)、押出方向断面(MD)のそれぞれについて、ASTM D-3576に準じて、マイクロスコープ[(株)KEYENCE製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-900]を用いて、100倍に拡大した画像を撮影した。
次に、得られた画像において、任意の位置で100mmの直線を描いた。各画像において、直線上にある気泡の個数を数え、次式により、スチレン系樹脂押出発泡体の気泡の平均弦長(t)を算出した。
平均弦長t(μm)=100/(気泡数×画像の拡大倍数)
次の式により、スチレン系樹脂押出発泡体の気泡の気泡径(D)を算出した。
気泡径D(μm)=t/0.616。
スチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径は、各方向に垂直な断面の画像から算出された気泡径の積を3条根した値であり、具体的には以下の式より算出した。
平均気泡径=(HD画像の気泡径×TD画像の気泡径×MD画像の気泡径)1/3
【0037】
(4)熱伝導率(W/mK)
各実施例および比較例にて得られたスチレン系樹脂押出発泡体について、製造してから7日間経過した当該スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率を、JIS A9511に準じて測定した。熱伝導率の測定には、厚み25mm、幅100mm、長さ300mmのスチレン系樹脂押出発泡体3枚を幅方向に並べて得られる厚み25mm、幅300mm、長さ300mmの1枚の試験体を、測定用試料として使用した。
【0038】
(5)JIS燃焼性
JIS A9511:2006Rに準拠し(測定方法Aを採用)、厚さ10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を用い、測定は、スチレン系樹脂押出発泡体の製造後、前記寸法の試験片に切削し、JIS K7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、-10%R.H.)の条件下に静置し、発泡体を製造してから7日間経過した後に行った。
JIS燃焼性の評価基準としては、消炎時間は試験片5個の測定結果の平均値とし、平均値を算出した。
【0039】
(実施例1)
[樹脂混合物の作製]
(A)スチレン系樹脂(680)100重量部に対して、(B)難燃剤としてEMERALD INNOVATION 3000/2.3重量部、(C)ラジカル発生剤としてCUROX CC-P3/0.2重量部、(D)陰イオン界面活性剤としてエマール10PT/0.03重量部、(E)エポキシ化合物としてEP-13/0.2重量部、(F)多価アルコール部分エステルとしてプレンライザーST210/0.2重量部、(G)加工助剤としてSCーP/0.2重量部、(H)気泡径調整剤としてタルク/0.8重量部、さらに、(I)吸水媒体としてベントライトL/0.5重量部、カープレックスBS-304F/0.3重量部からなる樹脂混合物をドライブレンドした。該ドライブレント物を[GP]と略する。
【0040】
[押出発泡体の作製]
得られたGPを口径150mmの単軸押出機、口径200mmの単軸押出機、及び冷却機を直列に連結した押出機へ、約800kg/hrで供給した。第一押出機に供給した樹脂混合物を、樹脂温度230℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、スチレン系樹脂100重量部に対して、(J)発泡剤としてイソブタン3.7重量部およびジメチルエーテル2.0重量部、水(水道水)0.9重量部、を第一押出機の先端付近で樹脂中に圧入した。その後、第一押出機に連結された第二押出機及び冷却機中にて、樹脂温度を120℃に冷却し、冷却機先端に設けた厚さ2mm×幅400mmの長方形断面の口金より大気中へ押出発泡させた後、口金に密着させて設置した成形金型とその下流側に設置した成形ロールにより、厚さ60mm×幅1000mmである断面形状の押出発泡体を得、カッターにて厚み50mm×幅910mm×長さ1820mmにカットし、発泡体を得た。
【0041】
(実施例2~6、比較例1~2)
表1に示すように、難燃剤、及び安定剤の配合量、及び陰イオン界面活性剤を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡体を得た。得られた発泡体の特性を、表1に示す。
【0042】
実施例1~6の押出発泡体は、陰イオン界面活性剤を使用していない比較例1~2の押出発泡体と比較して、JIS燃焼性の平均時間が1秒未満と低く、試験片5本のばらつきを評価する標準偏差も小さく0.3未満となり、燃焼性に優れていることがわかる。
【0043】