(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136011
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ダイカスト装置
(51)【国際特許分類】
B22D 17/26 20060101AFI20230922BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20230922BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20230922BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B22D17/26 J
B22D17/20 Z
B29C45/17
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041404
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰実
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM25
4F202AM26
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL50
4F202CP10
4F202CR10
4F206AM25
4F206AM26
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM06
4F206JN35
4F206JP30
4F206JQ81
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】省スペースかつ低コストでありながら、優れたミスト回収効果を発揮し得るダイカスト装置を提供する。
【解決手段】ダイカスト装置10は、一対の金型11,12と、可動型11を駆動可能な駆動装置13と、一対の金型11,12の型開き時に一対の金型11,12の周囲に飛散するミストMを吸引可能な吸引装置14と、一対の金型11,12の型開き動作の途中で、可動型11の移動を一定時間停止すると共にミストMを吸引するように、駆動装置13及び吸引装置14を制御可能な制御装置15をさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締め及び型開き可能な一対の金型と、
可動型となる前記一方の金型を駆動可能な駆動装置と、
前記一対の金型の型開き時に前記一対の金型の周囲に飛散するミストを吸引可能な吸引装置とを備えたダイカスト装置において、
前記一対の金型の型開き動作の途中で、前記可動型となる一方の金型の移動を一定時間停止すると共に前記ミストを吸引するように、前記駆動装置及び前記吸引装置を制御可能な制御装置をさらに備えたことを特徴とするダイカスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製自動車部品の製造に、ダイカスト装置が用いられている。ダイカスト装置を用いた金属製部品の製造に際しては、離型剤を金型表面に塗布して行うのが一般的であるが、離型剤は高温状態の金型表面に接触することで、又は金型表面に付着した状態で加熱されることでミスト化する場合がある。この種のミストは、周辺の設備に付着することで、当該設備の汚染を招くおそれがある。
【0003】
例えば特許文献1には、成形機の上部に、ミスト回収装置を配設すると共に、ミストを吸引してろ過することにより廃液処理を行う装置を設け、この処理装置とミスト回収装置とを排気ダクトで連結してなるミスト回収システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際の製造現場では、成形時に発生したミストが、型開きに伴い金型の周囲に飛散する。そのため、特許文献1に記載のように金型の一方側にミスト回収装置を配置しただけでは、十分なミスト回収効果を得ることが難しい。例えばミスト回収システムの排気能力を向上させて、ミスト回収効率を高める方法も考えられるが、これだと、排気のための設備が大型化するため、設置スペース上の問題が生じるおそれがある。また、排気能力の高い装置ほど高価になるため、設備コストの高騰を招く。
【0006】
以上の事情に鑑み、本明細書では、省スペースかつ低コストでありながら、優れたミスト回収性能を発揮し得るダイカスト装置を提供することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係るダイカスト装置によって達成される。すなわち、このダイカスト装置は、型締め及び型開き可能な一対の金型と、可動型となる一方の金型を駆動可能な駆動装置と、一対の金型の型開き時に一対の金型の周囲に飛散するミストを吸引可能な吸引装置とを備えたダイカスト装置において、一対の金型の型開き動作の途中で、可動型となる一方の金型の移動を一定時間停止すると共にミストを吸引するように、駆動装置及び吸引装置を制御可能な制御装置をさらに備えた点をもって特徴付けられる。
【0008】
このように、本発明では、可動型の駆動装置及びミストの吸引装置を制御可能な制御装置を設けると共に、この制御装置により、型開き動作の途中で、可動型の移動を一定時間停止すると共にミストを吸引するようにした。これにより、一対の金型の間に生じる開放空間が従来(型開き動作の完了時における開放空間)よりも小さい状態でミストの吸引を行うことができるので、飛散前の濃度の高い状態のミストを回収することができる。よって、効率よくミストを回収することが可能となる。また、このように金型間の開放空間が比較的小さな状態でミストを回収するのであれば、排気量(吸引量)の大きな装置も不要であるから、装置の設置スペースや設備コストの高騰を憂慮する必要もない。従って、本発明に係るダイカスト装置によれば、ミストの回収効率に優れたダイカスト装置を省スペースにかつ低コストに提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、省スペースかつ低コストでありながら、優れたミスト回収性能を発揮し得るダイカスト装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るダイカスト装置の型締め状態における要部正面図である。
【
図2】
図1に示すダイカスト装置の型開き動作の途中における要部正面図である。
【
図3】
図1に示すダイカスト装置の型開き動作が完了した状態における要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るダイカスト装置の内容を図面に基づき説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るダイカスト装置10の要部正面図を示している。
図1に示すように、このダイカスト装置10は、型締め及び型開き可能な一対の金型11,12と、可動型となる一方の金型11(以後、可動型11と称する。)を駆動可能な駆動装置13と、一対の金型11,12の型開き時に一対の金型11,12間から周囲に飛散するミストM(
図2を参照)を吸引可能な吸引装置14と、駆動装置13及び吸引装置14の制御を行う制御装置15とを主に備える。また、本実施形態では、ダイカスト装置10は、エア吹付け装置16をさらに備える。以下、ダイカスト装置10の各要素のうちミストMの回収に関わる要素の詳細を中心に説明する。
【0013】
一対の金型11,12は、互いに接近し又は離隔可能に構成されている。本実施形態では、固定型となる他方の金型12(以後、固定型12と称する。)が床面上の所定位置に固定され、可動型11に駆動装置13が連結されており、可動型11が水平方向に沿って移動することで、型締め又は型開きを実施可能としている。
【0014】
駆動装置13は、可動型11に型締め又は型開き方向の駆動力を付与可能に構成される。ここで、駆動装置13には、公知の駆動機構が適用可能であり、本実施形態では、駆動装置13は、油圧装置17と、電動装置18とを有する。この場合、何れも詳細な図示は省略するが、油圧装置17は油圧シリンダで、又は油圧シリンダとトグル機構とで構成され、電動装置18は、モータと、ボールねじなどの動力変換装置とで構成される。油圧装置17と電動装置18は可動型11に対して別個独立に駆動力を付与可能に構成されるのが好ましく、例えば油圧装置17の駆動時間(駆動力の付与時間)と、電動装置18の駆動時間(駆動力の付与時間)とが重複してもよい。あるいは、駆動時間が重複しないように、油圧装置17の駆動時間と電動装置18の駆動時間とをずらしてもよい。すなわち、油圧装置17と電動装置18の何れか一方のみが駆動可能に構成されてもよい。また、駆動時間をずらす場合、型締め時に必要な加圧力を考慮して、電動装置18で型締め動作を開始し、所定の距離だけ可動型11を移動させた時点で油圧装置17を駆動して一対の金型11,12同士が当接した後、型締めを行うまでの間の動作を実施してもよい。型開き動作に関しても、油圧装置17により型開き動作を開始し、所定の距離だけ可動型11を移動させた時点で電動装置18を駆動して可動型11に電動装置18の駆動力を付与してもよい。
【0015】
吸引装置14は吸気用の吸引口20を有する。本実施形態では、吸引口20は一対の金型11,12の周囲に配設される。そして、一対の金型11,12の型開き時に一対の金型11,12間の開放空間19に存在するミストM(ともに
図2を参照)を吸引可能に構成される。例えば
図1に示すように、一対の金型11,12が水平方向に沿って型締め又は型開き動作を行う構成をとる場合、吸引口20が、型開きに伴い一対の金型11,12間に形成される開放空間19の上方に配置される。
【0016】
吸引装置14の吸引量は、型開き時、特に後述する型開き動作の途中で可動型11を一時的に停止する段階において、一対の金型11,12間の開放空間19に存在するミストMの過半(50%以上)を吸引可能な限りにおいて、任意に設定可能である。この際、吸引量の上限値は、設置可能なスペースの観点から設定されるのがよく、また、吸引量の下限値は、想定される開放空間19の容積の観点から設定されるのがよい。具体的な数値を挙げると、吸引装置14の吸引量は、50m3/min以上でかつ200m3/min以下に設定され、より好ましくは100m3/min以上でかつ150m3/min以下に設定される。
【0017】
吸引装置14には集じん機などのミスト回収装置(図示は省略)が接続されており、吸引装置14で吸引した、ミストMを含むエアに対して、ミストMをエア中から除去して回収するための所定の処理を実施できるようになっている。
【0018】
エア吹付け装置16は、開放空間19に存在するミストMに向けてエアを吹付け可能に構成される(
図2を参照)。そのため、エア吹付け装置16のノズル16aが、一対の金型11,12の型開き動作の途中で一対の金型11,12間に形成される開放空間19を指向するように、エア吹付け装置16が配置される。本実施形態では、一対の金型11,12の下方にエア吹付け装置16が配置され、型開き動作の途中で一対の金型11,12間に開放空間19が形成された際、この開放空間19に向けてエアを吹付け可能とされている。
【0019】
制御装置15は、駆動装置13(本実施形態では油圧装置17と電動装置18)と、吸引装置14とを制御可能に構成される。具体的に、制御装置15は、一対の金型11,12が型開き状態にある場合(
図3を参照)、可動型11に型締め方向(
図3でいえば右方向)の駆動力を付与して、型締め動作を開始するように、駆動装置13を制御する。また、制御装置15は、一対の金型11,12が型締め状態にある場合(
図1を参照)、可動型11に型開き方向(
図1でいえば左方向)の駆動力を付与して、型開き動作を開始するように、駆動装置13を制御する。そして、型開き動作の途中で、可動型11と固定型12との対向間隔W(
図2を参照)が所定の大きさに達した時点で、駆動装置13による可動型11の型開き方向への移動を一定時間停止する。これにより、一対の金型11,12間の対向間隔Wが所定の大きさに維持される。
【0020】
ここで、対向間隔Wの大きさは、一対の金型11,12の型開き動作完了時における対向間隔WF(
図3を参照)よりも小さく、例えば30mm以上でかつ300mm以下に設定される。あるいは、型開き完了時の対向間隔WFとの比でいえば、0.05≦W/WF≦0.5となるように、対向間隔Wの大きさが設定される。
【0021】
また、可動型11の停止時間は、吸引装置14による吸引量や、エア吹付け装置16によるエアの吹付け量によっても変動するが、おおよそ1~10秒程度に設定するのがよい。この停止時間があまりに短いと、十分な量のミストMを吸引することが難しくなるためである。一方、この停止時間が長過ぎると、生産効率の低下を招くためである。
【0022】
なお、本実施形態のように、駆動装置13が油圧装置17と電動装置18とを有し、かつ油圧装置17と電動装置18の何れか一方を択一的に駆動制御する場合、制御装置15は、まず型締め状態にある可動型11に油圧装置17から駆動力を付与して、可動型11の型開き方向への移動を開始するように、油圧装置17を制御してもよい。また、この場合、制御装置15は、可動型11が上述の如く型開き途中の所定位置で一定時間停止する間に、油圧装置17の駆動を停止すると共に電動装置18の駆動を開始するように、油圧装置17及び電動装置18を制御してもよい。
【0023】
以下、本実施形態におけるミストMの回収態様の一例を説明する。
【0024】
まず、制御装置15からの指令に基づき、
図1に示すように、型締め状態にある一対の金型11,12のうち可動型11に対し油圧装置17から型開き方向の駆動力を付与し、型開き動作を開始する。また、本実施形態では、この時点(型開き動作の開始時)で吸引装置14とエア吹付け装置16を作動させて、一対の金型11,12間に形成され拡大を開始する開放空間19の上部に配置された吸引口20を介して開放空間19内の気体を吸引する動作を開始すると共に、開放空間19に向けたエアの吹付け動作を開始する。
【0025】
そして、可動型11と固定型12との対向間隔Wが所定の大きさに達した時点で(
図2を参照)、制御装置15からの指令に基づき、油圧装置17の駆動を停止し、可動型11の型開き方向への移動を一時的に停止する。これにより、一定時間、一対の金型11,12間に所定の対向間隔Wを有する開放空間19が維持される。そして、この間、吸引装置14による吸引動作とエア吹付け装置16によるエアの吹付け動作を継続することにより、開放空間19のミストMが吸引装置14により吸引される。また、開放空間19の上部に押し出されたミストMが吸引装置14により吸引される。
【0026】
このようにして開放空間19のミストMが吸引装置14により吸引された後、すなわち一定時間、対向間隔Wの開放空間19が維持された後、制御装置15は、電動装置18を駆動して、可動型11の型開き方向への移動を再開する。そして、可動型11が型開き完了時の位置まで移動した時点で(
図3を参照)、制御装置15は、電動装置18の駆動を停止し、可動型11の移動を終了する。このようにして型開き動作及び型開き動作中のミストMの回収が行われる。
【0027】
なお、吸引装置14による吸引動作及びエア吹付け装置16によるエアの吹付け動作は、可動型11の移動終了と共に終了してもよい。また、吸引動作については、次の一連のサイクル(型開きから型締め、そして型開きまでの動作)においても継続して実施してもよい。もちろん、可動型11の一時停止期間のみの作動で十分な場合には、当該期間のみ吸引装置14とエア吹付け装置16を作動させてもよい。
【0028】
以上述べたように、本実施形態に係るダイカスト装置10では、可動型11の駆動装置13及びミストMの吸引装置14を制御可能な制御装置15を設けると共に、この制御装置15により、型開き動作の途中で、可動型11の移動を一定時間停止すると共にミストMを吸引するようにした(
図2を参照)。これにより、一対の金型11,12間に生じる開放空間19が従来(例えば
図3に示す型開き動作の完了時における対向間隔WFの開放空間19)よりも小さい状態でミストMの吸引を行うことができるので、飛散前の濃度の高い状態のミストMを回収することができる。よって、効率よくミストMを回収することが可能となる。また、このように一対の金型11,12間の開放空間19が比較的小さな状態でミストMを回収するのであれば、排気量(吸引量)の大きな吸引装置14も不要であるから、吸引装置及びミスト回収装置の設置スペースや設備コストの高騰を憂慮する必要もない。従って、本実施形態に係るダイカスト装置10によれば、ミストMの回収効率に優れたダイカスト装置10を省スペースにかつ低コストに提供することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、一対の金型11,12が水平方向に沿って型締め及び型開きを行う構成とし、かつ開放空間19の上部に吸引装置14の吸引口20を配置したので、開放空間19から主に上方に向けて飛散するミストMを効率よく吸引することができる。加えて、本実施形態では、一対の金型11,12の下方から開放空間19に向けてエアを吹付けるようにしたので、ミストMを開放空間19の上方に向けて押し出すことができる。これにより、ミストMの上方への移動を促進して、吸引装置14によるミストMの吸引効率をさらに高めることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、可動型11の型開き動作の途中における一時停止期間(
図2に示す状態の期間)を利用して、油圧装置17と電動装置18の駆動切替えを行うようにした。これら油圧装置17と電動装置18の構成によっては、駆動の切替えに一定の時間を要する場合もあるが、本実施形態のように、可動型11の停止期間中に駆動の切替えを行えば、切替えに要する時間を可動型11の停止期間に含めることができるので、生産性の低下を最小限に留めることが可能となる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係るダイカスト装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、駆動装置13を、油圧装置17と電動装置18とで構成し、可動型11の一時停止期間中に、油圧装置17から電動装置18への駆動切替えを行う場合を例示したが、もちろんこれ以外の態様をとることも可能である。例えば電動装置18の駆動中に可動型11の移動を一時停止し、一定時間の経過後、電動装置18による可動型11の移動を再開するよう、制御装置15で電動装置18を制御してもよい。あるいは、油圧装置17の駆動中に可動型11の移動を一時停止し、一定時間の経過後、油圧装置17による可動型11の移動を再開するよう、制御装置15で油圧装置17を制御してもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、吸引装置14の吸引口20は水平方向を指向している場合を図示したが(
図1等を参照)、もちろんこれには限られない。例えば型開き動作の途中で形成される開放空間19に向けて下方又は斜め下方を指向するように吸引口20を配置してもよい。
【0034】
また、エア吹付け装置16によるエアの吹付け方向との関係について、例えばエア吹付け装置16のノズル16aと、吸引口20とが対向するように、ノズル16aと吸引口20とを配置してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 ダイカスト装置
11 可動型
12 固定型
13 駆動装置
14 吸引装置
15 制御装置
16 エア吹付け装置
16a ノズル
17 油圧装置
18 電動装置
19 開放空間
20 吸引口
M ミスト
W 対向間隔(型開き途中)
WF 対向間隔(型開き完了時)