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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136016
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】フィルム製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 41/34 20060101AFI20230922BHJP
   B29C 41/52 20060101ALI20230922BHJP
   B29C 41/28 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B29C41/34
B29C41/52
B29C41/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041412
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 直輝
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA33
4F205AC05
4F205AG01
4F205AJ03
4F205AR13
4F205AR20
4F205GA07
4F205GB02
4F205GC07
4F205GF24
4F205GN28
4F205GN29
(57)【要約】
【課題】溶液製膜法によるポリマーフィルムの製造において、高品質なポリマーフィルムを高い歩留まりで製造可能とする。
【解決手段】フィルム製造装置1は、支持体及び離型層を含み、離型層は算術平均粗さRaが1.0μm以下の表面を有している離型性支持体11と、離型層の表面を面内方向へ走行させる駆動装置12と、液状のフィルム材料を離型層へ供給して塗膜F1を形成する供給装置13と、塗膜F1を硬化させてポリマーフィルムF2を形成する硬化装置14と、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす剥離装置15とを備え、剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるようにポリマーフィルムF2を形成し、剥離強度PとポリマーフィルムF2の張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるようにポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体及びその上に設けられた離型層を含み、前記離型層は算術平均粗さRaが1.0μm以下の表面を有している離型性支持体と、
前記離型層の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させる駆動装置と、
液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に塗膜を形成する供給装置と、
前記塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成する硬化装置と、
前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がす剥離装置と
を備え、
前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすフィルム製造装置。
【請求項2】
支持体と、
前記支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させる駆動装置と、
離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に第1塗膜を形成するとともに、液状のフィルム材料を前記第1塗膜の硬化物である離型層へ供給して、前記離型層上に第2塗膜を形成する供給装置と、
前記第1塗膜及び前記第2塗膜を硬化させて前記離型層及びポリマーフィルムをそれぞれ形成する硬化装置と、
前記ポリマーフィルムを前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体から引き剥がす剥離装置と、
形成すべきポリマーフィルムの種類に関する情報が入力され、その種類に対応した離型層形成条件を取得する制御部と
を備えたフィルム製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータを記憶している請求項2に記載のフィルム製造装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記形成すべきポリマーフィルムの種類に関する情報が更に入力され、その種類に対応したフィルム形成条件を更に取得する請求項2に記載のフィルム製造装置。
【請求項5】
前記制御部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータを記憶している請求項4に記載のフィルム製造装置。
【請求項6】
前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成し、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がす請求項2乃至5の何れか1項に記載のフィルム製造装置。
【請求項7】
前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である請求項1又は6に記載のフィルム製造装置。
【請求項8】
前記支持体は、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有している請求項1乃至7の何れか1項に記載のフィルム製造装置。
【請求項9】
支持体及びその上に設けられた離型層を含み、前記離型層は算術平均粗さRaが1.0μm以下の表面を有している離型性支持体を準備することと、
前記離型層の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させながら、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に塗膜を形成することと、
前記塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成することと、
前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすことと
を含み、
前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすフィルム製造方法。
【請求項10】
ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照して、その種類に対応した離型層形成条件を取得することと、
支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させながら、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に第1塗膜を形成することと、
前記第1塗膜を硬化させて離型層を形成することにより、前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体を得ることと、
前記離型性支持体の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させながら、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に第2塗膜を形成することと、
前記第2塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成することと、
前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすことと
を含み、前記離型層の形成は、取得した前記離型層形成条件のもとで行うフィルム製造方法。
【請求項11】
ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照して、その種類に対応した離型層形成条件及びフィルム形成条件を取得することと、
支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させながら、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に第1塗膜を形成することと、
前記第1塗膜を硬化させて離型層を形成することにより、前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体を得ることと、
前記離型性支持体の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させながら、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に第2塗膜を形成することと、
前記第2塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成することと、
前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすことと
を含み、前記離型層及び前記ポリマーフィルムの形成は、それぞれ、取得した前記離型層形成条件及び取得した前記フィルム形成条件のもとで行うフィルム製造方法。
【請求項12】
前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成し、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がす請求項10又は11に記載のフィルム製造方法。
【請求項13】
前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である請求項9又は12に記載のフィルム製造方法。
【請求項14】
前記支持体として、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有しているものを使用する請求項9乃至13の何れか1項に記載のフィルム製造方法。
【請求項15】
フィルム製造装置において使用する離型性支持体を製造するための離型性支持体製造装置であって、
支持体と、
前記支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させる駆動装置と、
離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に塗膜を形成する供給装置と、
前記塗膜を硬化させて離型層を形成する硬化装置と、
前記フィルム製造装置において形成すべきポリマーフィルムの種類に関する情報が入力され、その種類に対応した離型層形成条件を取得する制御部と
を備えた離型性支持体製造装置。
【請求項16】
前記制御部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータを記憶している請求項15に記載の離型性支持体製造装置。
【請求項17】
前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成する請求項15又は16に記載の離型性支持体製造装置。
【請求項18】
前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である請求項17に記載の離型性支持体製造装置。
【請求項19】
前記支持体は、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有している請求項15乃至18の何れか1項に記載の離型性支持体製造装置。
【請求項20】
ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照して、その種類に対応した離型層形成条件を取得することと、
支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させながら、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に塗膜を形成することと、
前記塗膜を硬化させて離型層を形成することにより、前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体を得ること
を含み、前記離型層の形成は、取得した前記離型層形成条件のもとで行う離型性支持体製造方法。
【請求項21】
前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成する請求項20に記載の離型性支持体製造方法。
【請求項22】
前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である請求項21に記載の離型性支持体製造方法。
【請求項23】
前記支持体として、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有しているものを使用する請求項20乃至22の何れか1項に記載の離型性支持体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムの製造方法として、溶液製膜法がある。溶液製膜法によると、厚さのばらつきが小さく、高い表面平滑性を有するフィルムが得られる。そのため、溶液製膜法は、広範な分野で、例えば、偏光子用の保護フィルムや位相差フィルムなどの光学部材用フィルムの製造に利用されている。
【0003】
溶液製膜法では、例えば、高分子樹脂の溶液をベルト又はドラム状の支持体上へ流延する。次いで、塗膜から溶媒を除去する。その後、これにより得られたフィルムを支持体から剥離する。
【0004】
支持体には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックを使用することがある。プラスチックからなる支持体は、再利用が困難であり、使い捨てとなる場合が多い。支持体には、金属を使用することもある。金属製の支持体は、再利用が可能であり、プラスチック製の支持体と比較してコスト面で有利である。
【0005】
特許文献1には、溶液製膜法により、光学的に等方性のアクリル系フィルムを製造することが記載されている。この文献に記載された方法では、先ず、アクリル系ポリマーを有機溶媒に溶解させてなるポリマー溶液を金属製の支持体上へ流延する。次に、塗膜を、自己支持性を示すまで乾燥させる。次いで、これにより得られた自己支持性フィルムを、支持体から剥離する。その後、自己支持性フィルムを更に乾燥させて、アクリル系フィルムを得る。この方法では、例えば、剥離剤をポリマー溶液中に含有させておくか、又は、金属製の支持体を剥離剤でコーティングしておく。このように、この文献に記載された方法では、自己支持性フィルムに溶媒の一部を残留させておくとともに、離型剤を使用し、更に、0.1乃至5.0kg/mの範囲内の張力で自己支持性フィルムを支持体から剥離する。これにより、光学的に等方性のアクリル系フィルムを製造可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-176982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶液製膜法によるポリマーフィルムの製造において、高品質なポリマーフィルムを高い歩留まりで製造可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、支持体及びその上に設けられた離型層を含み、前記離型層は算術平均粗さRaが1.0μm以下の表面を有している離型性支持体と、前記離型層の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させる駆動装置と、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に塗膜を形成する供給装置と、前記塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成する硬化装置と、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がす剥離装置とを備え、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすフィルム製造装置が提供される。
【0009】
本発明の他の側面によると、支持体と、前記支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させる駆動装置と、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に第1塗膜を形成するとともに、液状のフィルム材料を前記第1塗膜の硬化物である離型層へ供給して、前記離型層上に第2塗膜を形成する供給装置と、前記第1塗膜及び前記第2塗膜を硬化させて前記離型層及びポリマーフィルムをそれぞれ形成する硬化装置と、前記ポリマーフィルムを前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体から引き剥がす剥離装置と、形成すべきポリマーフィルムの種類に関する情報が入力され、その種類に対応した離型層形成条件を取得する制御部とを備えたフィルム製造装置が提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記制御部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータを記憶している上記側面に係るフィルム製造装置が提供される。
【0011】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記制御部は、前記形成すべきポリマーフィルムの種類に関する情報が更に入力され、その種類に対応したフィルム形成条件を更に取得する上記側面に係るフィルム製造装置が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記制御部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータを記憶している上記側面に係るフィルム製造装置が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成し、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がす上記側面の何れかに係るフィルム製造装置が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である上記側面の何れかに係るフィルム製造装置が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記支持体は、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有している上記側面の何れかに係るフィルム製造装置が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、支持体及びその上に設けられた離型層を含み、前記離型層は算術平均粗さRaが1.0μm以下の表面を有している離型性支持体を準備することと、前記離型層の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させながら、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に塗膜を形成することと、前記塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成することと、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすこととを含み、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすフィルム製造方法が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照して、その種類に対応した離型層形成条件を取得することと、支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させながら、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に第1塗膜を形成することと、前記第1塗膜を硬化させて離型層を形成することにより、前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体を得ることと、前記離型性支持体の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させながら、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に第2塗膜を形成することと、前記第2塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成することと、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすこととを含み、前記離型層の形成は、取得した前記離型層形成条件のもとで行うフィルム製造方法が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照して、その種類に対応した離型層形成条件及びフィルム形成条件を取得することと、支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させながら、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に第1塗膜を形成することと、前記第1塗膜を硬化させて離型層を形成することにより、前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体を得ることと、前記離型性支持体の表面が面内方向へ走行するように前記離型性支持体を移動させながら、液状のフィルム材料を前記離型層へ供給して、前記離型層上に第2塗膜を形成することと、前記第2塗膜を硬化させてポリマーフィルムを形成することと、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすこととを含み、前記離型層及び前記ポリマーフィルムの形成は、それぞれ、取得した前記離型層形成条件及び取得した前記フィルム形成条件のもとで行うフィルム製造方法が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成し、前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がすときの剥離強度Pが1乃至20N/mの範囲内になるように前記ポリマーフィルムを形成し、前記剥離強度Pと前記ポリマーフィルムの張力Tとの比P/Tが0.2乃至4の範囲内になるように前記ポリマーフィルムを前記離型性支持体から引き剥がす上記側面の何れかに係るフィルム製造方法が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である上記側面の何れかに係るフィルム製造方法が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、前記支持体として、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有しているものを使用する上記側面の何れかに係るフィルム製造方法が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、フィルム製造装置において使用する離型性支持体を製造するための離型性支持体製造装置であって、支持体と、前記支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させる駆動装置と、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に塗膜を形成する供給装置と、前記塗膜を硬化させて離型層を形成する硬化装置と、前記フィルム製造装置において形成すべきポリマーフィルムの種類に関する情報が入力され、その種類に対応した離型層形成条件を取得する制御部とを備えた離型性支持体製造装置が提供される。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、前記制御部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータを記憶している上記側面に係る離型性支持体製造装置が提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成する上記側面の何れかに係る離型性支持体製造装置が提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である上記側面に係る離型性支持体製造装置が提供される。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、前記支持体は、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有している上記側面の何れかに係る離型性支持体製造装置が提供される。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照して、その種類に対応した離型層形成条件を取得することと、支持体の表面が面内方向へ走行するように前記支持体を移動させながら、離型剤を前記支持体へ供給して、前記支持体上に塗膜を形成することと、前記塗膜を硬化させて離型層を形成することにより、前記支持体と前記離型層とを含んだ離型性支持体を得ることを含み、前記離型層の形成は、取得した前記離型層形成条件のもとで行う離型性支持体製造方法が提供される。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層として表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である層を形成する上記側面に係る離型性支持体製造方法が提供される。
【0029】
本発明の更に他の側面によると、前記離型層の前記表面の算術平均粗さRaは0.1μm以上である上記側面に係る離型性支持体製造方法が提供される。
【0030】
本発明の更に他の側面によると、前記支持体として、算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にある表面を有しているものを使用する上記側面の何れかに係る離型性支持体製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、溶液製膜法によるポリマーフィルムの製造において、高品質なポリマーフィルムを高い歩留まりで製造可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る製造装置のブロック図。
図2図2は、図1の製造装置の一部を概略的に示す図。
図3図3は、供給装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す図。
図4図4は、硬化装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す図。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
以下に記載する実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎない。本発明は、他の種々の形態で実施することも可能である。
【0034】
以下の実施形態では、理解を容易にするために、構成要素等の省略及び簡略化が適宜なされている。また、図面における構成要素の配置、大きさ及び形状等は、理解を容易にするために、実際の配置、大きさ、形状及び配置等とは一致していない場合がある。更に、断り書きがない限り、各構成要素は、1つのみ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。即ち、本発明は、図面に示された配置位置、大きさ、形状及び数に、必ずしも限定されない。
【0035】
なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
<1>製造装置
図1は、本発明の一実施形態に係る製造装置のブロック図である。図2は、図1の製造装置の一部を概略的に示す図である。図3は、供給装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す図である。図4は、硬化装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す図である。
【0037】
図1に示す製造装置1は、図2乃至図4に示す離型性支持体11及び図2に示すポリマーフィルムF2を製造するための装置である。ここで、ポリマーフィルムF2は、一例によれば、偏光子用保護フィルム及び位相差フィルム等の光学部材用フィルムである。
【0038】
この製造装置1は、図2に示す製造装置本体10と、図1に示す制御部16とを含んでいる。
【0039】
製造装置本体10は、図2乃至図4に示す離型性支持体11と、図1に示す、駆動装置12、供給装置13、硬化装置14及び剥離装置15とを含んでいる。
【0040】
離型性支持体11は、図3及び図4に示すように、支持体111と離型層112とを含んでいる。
【0041】
支持体111は、支持面を有している。ここでは、支持体111は、後述する駆動プーリ122及び従動プーリ121に架け渡されたエンドレスベルトである。支持体111は、周面を支持面として有しているドラムであってもよい。
【0042】
一例によれば、支持体111の支持面は、金属又は合金からなる。支持体111は、例えば、鉄、ステンレス、銅、ニッケル、チタン、及びタンタル等の金属又は合金からなる。金属又は合金からなる支持体111は、その表面に、クロム、金、銀及びニッケル等からなるメッキ皮膜や表面処理層を有していてもよい。メッキ皮膜や表面処理層を設けることにより、支持面の耐食性や硬度を高めることができる。
【0043】
支持体111は、ポリマーからなるものであってもよい。そのような支持体111には、例えば、ポリイミド及びフッ素樹脂等の耐熱性樹脂を使用することができる。
【0044】
エンドレスベルトは、厚さが0.1乃至5mmの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至2mmの範囲内にあることがより好ましい。エンドレスベルトの厚さを大きくすると、駆動プーリ122及び従動プーリ121の位置で、エンドレスベルトの外面である支持面の曲率半径を大きくすることが必要になる。その結果、製造装置本体10が大型化し、設備費が嵩む可能性がある。エンドレスベルトの厚さを小さくすると、後述する駆動プーリ122及び従動プーリ121の位置でエンドレスベルトの支持面の曲率半径を小さくすることができる。但し、エンドレスベルトの厚さを小さくすると、高い平滑性を達成することが難しくなり、ポリマーフィルムに厚さのばらつきを生じる懸念がある。
【0045】
支持体111の幅、即ち、支持面の走行方向に対して垂直な方向の寸法は、1乃至2mの範囲内にあることが好ましい。この幅を大きくすると、より高い生産性を達成できる。但し、例えば、エンドレスベルトの場合、この幅を大きくすると、溶接箇所の全長が増加し、コストアップにつながるだけでなく、溶接痕がポリマーフィルムの品質へ影響を及ぼす可能性も高くなる。
【0046】
支持体111は、支持面の算術平均粗さRaが0.6乃至2.0μmの範囲内にあることが好ましい。ここで、「算術平均粗さRa」は、JIS B0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状-輪郭曲線式-用語、定義及び表面性状パラメータ」に規定された方法によって得られる値である。支持面の算術平均粗さRaを大きくすると、支持体111に対する離型層112との密着性が向上する。但し、支持面の算術平均粗さRaを大きくすると、離型層112の算術平均粗さRaを小さくすることが難しくなる。
【0047】
離型層112は、支持体111上に設けられている。離型層112は、支持体111の支持面を被覆している。後述するように、離型層112は、離型剤を支持体111へ供給して、支持体111上に第1塗膜を形成し、この第1塗膜を硬化させることにより得られたものである。
【0048】
離型剤としては、公知のシリコーン系又はフッ素系溶液が挙げられるが、これに限定されるものではない。一例によれば、離型剤は、シリコーン系又はフッ素系化合物と有機溶媒とを含んでいる。離型剤は、硬化剤を更に含んでいてもよく、表面平滑性向上のための界面活性剤や支持体111との密着性を高めるための添加剤を更に含んでいてもよい。
【0049】
離型層112の厚さは、1乃至10μmの範囲内にあることが好ましく、2乃至5μmの範囲内にあることがより好ましい。離型層112の厚さを小さくすると、その表面の算術平均粗さRaを小さくすることが難しくなる可能性がある。離型層112の厚さを大きくすると、その形成時に行う硬化処理に要する時間が長くなる。また、離型層112の厚さを大きくすると、その硬化収縮に起因して、支持体111からの剥離及び脱落を生じ易くなる可能性がある。
【0050】
離型層112の表面は、算術平均粗さRaが1.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。この算術平均粗さRaは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。表面の平滑性に優れたポリマーフィルムF2を得るうえでは、この算術平均粗さRaを小さくすることが有利である。また、この算術平均粗さRaを小さくすると、離型性支持体11からポリマーフィルムF2を引き剥がす前における、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離は生じ難くなる。但し、この算術平均粗さRaを小さくすると、離型性支持体11に対するポリマーフィルムF2の密着性が大きくなる。その結果、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす際に、ポリマーフィルムF2に伸び又は破断を生じ易くなる。例えば、ポリマーフィルムF2に、弾性変形を生じた部分と塑性変形を生じた部分とが、ポリマーフィルムF2の長さ方向へ交互に生じる可能性がある。
【0051】
駆動装置12は、図3及び図4に示す支持体111又は離型層112の表面が面内方向へ走行するように支持体111又は離型性支持体11を移動させる。駆動装置12は、ここでは、図2に示す駆動プーリ122及び従動プーリ121と、図示しないモータとを含んでいる。上記の通り、支持体111は、ここでは、駆動プーリ122と従動プーリ121とに架け渡されたエンドレスベルトである。モータは、駆動プーリ122を図2において時計回りに回転させる。駆動プーリ122の回転に伴い、支持体111は時計回りに走行し、従動プーリ121は時計回りに回転する。
【0052】
一例によれば、駆動装置12は、支持体111の走行速度が1乃至30m/分の範囲内になるように、支持体111又は離型性支持体11を移動させる。なお、塗膜の溶媒含有量が多いほど、その乾燥に長時間を要する。従って、離型剤やフィルム材料の溶媒含有量が多い場合、駆動装置12は支持体の走行速度が低速になるように支持体111又は離型性支持体11を移動させる。
【0053】
供給装置13は、離型剤を支持体111へ供給して、支持体111上に第1塗膜を形成する。また、供給装置13は、液状のフィルム材料を第1塗膜の硬化物である離型層112へ供給して、離型層112上に第2塗膜F1を形成する。
【0054】
フィルム材料は、一例によれば、樹脂と溶媒とを含んだ溶液である。樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルロースポリマー、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、及びエポキシ樹脂などが挙げられる。溶媒の種類は、樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されない。この溶液の固形分濃度は、1乃至70質量%の範囲内とすることが一般的である。樹脂の種類によっては、フィルム材料は無溶媒であってもよい。フィルム材料は、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び機能性粒子等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0055】
供給装置13は、一例によれば、スロットダイを含んだダイコータである。供給装置13は、他の塗工方式を利用した装置、例えば、コンマコータ又はロールコータであってもよい。また、ここでは、供給装置13には、1つのコータで第1塗膜と第2塗膜とを形成する構成を採用しているが、供給装置13は、第1塗膜を形成するためのコータと、第2塗膜を形成するためのコータとを含んでいてもよい。
【0056】
第1塗膜を形成するためのコータは、ダイコータであることが好ましい。ダイコータを使用した場合、離型剤を大気へ殆ど晒すことなしに塗工できるため、溶剤の揮発等に起因した離型剤の物性変化が小さい。また、ダイコータは、厚さの均一性に優れた離型層112を得るうえでも有利である。
【0057】
第2塗膜を形成するためのコータも、ダイコータであることが好ましい。ダイコータを使用した場合、フィルム材料を大気へ殆ど晒すことなしに塗工できるため、溶剤の揮発等に起因したフィルム材料の物性変化が小さい。また、ダイコータを使用した場合、フィルム材料が無溶媒であるときには、スロットダイを適切な温度に加熱してフィルム材料の粘度を低下させることにより、塗工し易くすることも可能である。そして、ダイコータは、厚さの均一性に優れたポリマーフィルムF2を得るうえでも有利である。
【0058】
スロットダイの吐出方向は、図2及び図3に示すように鉛直方向であってもよく、水平方向であってもよく、斜め方向であってもよい。スロットダイの吐出方向は、これが吐出する流体の粘度に応じて適宜設定する。何れの場合であっても、均一な塗工を行ううえでは、スロットダイの吐出方向は、これと向き合った支持面に対して垂直であることが好ましい。
【0059】
支持体111とスロットダイの吐出口との距離Lは、例えば、0.01乃至50mmの範囲内に設定する。安定した塗布を可能とする距離Lの範囲は、スロットダイから吐出する流体の粘度及び表面張力、塗膜の厚さ、並びに支持体111の走行速度に応じて変化し得る。例えば、薄いポリマーフィルムF2を高速で製造する場合、距離Lは小さくすることが好ましい。なお、ポリマーフィルムF2の厚さに制限はないが、一般には、1乃至300μmの範囲内にある。
【0060】
硬化装置14は、第1塗膜を硬化させて離型層112を形成する。硬化装置14は、更に、第2塗膜F1を硬化させて、ポリマーフィルムF2を形成する。硬化装置14は、熱風又は赤外線によって塗膜を加熱する加熱装置を含んでいてもよく、塗膜へ紫外線又は電子線を照射する活性エネルギー線照射装置を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0061】
硬化装置14による硬化処理の条件は、離型層112の表面の算術平均粗さRa等へ影響を及ぼし得る。例えば、硬化装置14が、図4に示すノズル141を含み、ノズル141が吹き出す熱風によって第1塗膜を乾燥させるものである場合、ノズル141が熱風を吹き出す方向や、第1塗膜の近傍における風速は、離型層112の表面状態等へ影響を及ぼし得る。
【0062】
ノズル141が吹き出す熱風によって第1塗膜を乾燥させる場合、第1塗膜の近傍における風速は、0.2乃至1.0m/秒の範囲内にあることが好ましい。風速を過剰に低くすると、溶媒除去効率が低下し、例えば、第1塗膜のうち表面近傍の領域における溶媒量が少なくなった時点で、第1塗膜のうち支持体111の近傍の領域に多量の溶媒が残留するという状況を生じる可能性がある。風速を過剰に高めると、第1塗膜の表面近傍で離型剤の流動が起こり、算術平均粗さRaが大きな表面を有している離型層112が得られる可能性がある。
【0063】
ノズル141が熱風を吹き出す方向は、この方向の支持面への正射影が支持面の走行方向と一致し、且つ、支持面に対して成す角度θが0乃至60°の範囲内となるように設定することが好ましい。このような配置は、高い溶媒除去効率を達成するとともに、算術平均粗さRaが小さな表面を有している離型層112を得るうえで有利である。
【0064】
剥離装置15は、図2に示すポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす。剥離装置15は、ここでは、剥離ロール151と、ガイドロール152及び153と、巻取装置154とを含んでいる。
【0065】
剥離ロール151は、ポリマーフィルムF2及び離型性支持体11を間に挟んで従動プーリ121と隣接している。剥離ロール151は、巻取装置154の巻取動作によって、図2において反時計回りに回転するとともに、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から剥離する。ガイドロール152及び153は、ポリマーフィルムF2を剥離ロール151から巻取装置154へ案内する。巻取装置154は、ポリマーフィルムF2に張力を与えるとともに、これをロール状に巻き取る。
【0066】
剥離装置15は、剥離ロール151と巻取装置154との間でポリマーフィルムF2に加わる張力を調節する張力調節装置を更に含んでいる。張力制御装置は、剥離ロール151と巻取装置154との間でポリマーフィルムF2に加わる張力を、指定された値に維持する。
【0067】
制御部16は、図1に示すように、駆動装置12と、供給装置13と、硬化装置14と、剥離装置15とに接続されている。制御部16は、これらの動作を制御する。
【0068】
制御部16は、処理部161と、記憶部162と、入力装置と、ネットワーク装置と、表示装置とを含んでいる。
【0069】
処理部161は、中央処理装置を含んでいる。記憶部162は、主記憶装置と補助記憶装置とを含んでいる。
【0070】
中央処理装置は、大規模集積回路であって、演算装置と制御装置とを含んでいる。演算装置は、論理演算及び四則演算などの演算処理を行う。制御装置は、実行する命令を解読し、各装置の動作を制御する。具体的には、入力装置及び張力計から送出された指令及び情報を受け取り、演算装置、主記憶装置及び補助記憶装置の動作を制御する。
【0071】
主記憶装置は、処理すべき情報、プログラム及び演算結果等を一時的に記憶する。主記憶装置は、大規模集積回路であって、例えば、ランダムアクセスメモリなどの揮発性メモリを含んでいる。
【0072】
補助記憶装置は、不揮発性の記憶装置である。補助記憶装置は、プログラム及び各種データを長期的に記憶可能である。補助記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブの1以上を含んでいる。補助記憶装置が記憶しているデータの少なくとも一部は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルである。なお、上記のプログラムの動作については、後で詳述する。
【0073】
入力装置は、オペレータの操作によって指令及び情報を入力するためのものである。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、タッチパネル、及び音声入力装置の1以上を含んでいる。
【0074】
ネットワーク装置は、制御部16と外部装置とを有線又は無線接続可能とするものである。ここで、外部装置は、駆動装置12、供給装置13、硬化装置14、及び剥離装置15である。制御部16は、ネットワーク装置を介して、外部装置へ情報及び指令を送出する。
【0075】
表示装置は、例えば、中央処理装置による演算処理の結果の一部を表示することにより、オペレータの操作を補助するためのものである。表示装置は、例えば、液晶表示装置又は有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
【0076】
<2>製造方法
上記の製造装置1による離型性支持体11及びポリマーフィルムF2の製造は、例えば、以下の方法により行う。
【0077】
図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。なお、ここでは、一例として、製造開始時において、支持体111に離型層112は設けられていないこととする。
【0078】
この方法では、先ず、オペレータは、入力装置を介して、製造すべきポリマーフィルムの種類を制御部16へ入力する(ステップS1)。制御部16は、主記憶装置が記憶しているプログラムに従って、以下の処理及び制御を行う。
【0079】
即ち、制御部16は、ポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、形成すべきポリマーフィルムの種類を参照する。これにより、制御部16は、先の種類に対応した離型層形成条件及びフィルム形成条件を取得する(ステップS2)。
【0080】
ここで、或るポリマーフィルムと他のポリマーフィルムとは、厚さ及び材質の少なくとも一方が異なっている場合、種類が異なっているとする。また、上記のテーブルは、例えば、ポリマーフィルムの種類毎に、ポリマーフィルムの品質及び生産性の観点で最適なフィルム形成条件を、例えば、実験及び/又はシミュレーションによって導き出すとともに、この最適なフィルム形成条件における離型層112の表面粗さを実現するための離型層形成条件を、例えば、実験及び/又はシミュレーションによって導き出すことによって得ることができる。
【0081】
離型層形成条件は、ダイヘッドにおける離型剤の温度、離型剤の供給速度、支持体111の走行速度、ダイヘッドから支持体111までの距離L、ノズル141が吹き出す熱風の温度、熱風の風速、及びノズル141が熱風を吹き出す方向が支持面に対して成す角度θの1以上を含むことができる。一例によれば、離型層形成条件は、表面の算術平均粗さRaが上述した範囲内にある離型層112を形成するための条件である。
【0082】
フィルム形成条件は、離型層112の表面粗さ、ダイヘッドにおけるフィルム材料の温度、フィルム材料の供給速度、支持体111の走行速度、ダイヘッドから支持体111までの距離L、ノズル141が吹き出す熱風の温度、熱風の風速、ノズル141が熱風を吹き出す方向が支持面に対して成す角度θ、剥離装置15がポリマーフィルムF2へ加える張力の1以上を含むことができる。一例によれば、フィルム形成条件は、離型層112の表面の算術平均粗さRaが所定の値である場合に、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がすときの剥離強度Pが所定の範囲内になり、剥離ロール151と巻取装置154との間でポリマーフィルムF2に加わる張力Tに対する剥離強度Pの比P/Tが所定の範囲内になる条件である。
【0083】
剥離強度Pは、1乃至20N/mの範囲内にあることが好ましい。剥離強度Pを過剰に小さくすると、離型性支持体11からポリマーフィルムF2を引き剥がす前における、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離が生じ易くなる。剥離強度Pを過剰に大きくすると、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす際に、ポリマーフィルムF2に伸び又は破断を生じ易くなる。例えば、ポリマーフィルムF2に、弾性変形を生じた部分と塑性変形を生じた部分とが、ポリマーフィルムF2の長さ方向へ交互に生じる可能性がある。
【0084】
比P/Tは、0.2乃至4の範囲内にあることが好ましい。比P/Tが小さすぎると、剥離と巻取とのバランスが悪く、ポリマーフィルムF2に伸びや破断を生じる可能性がある。比P/Tを過剰に大きくすると、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11からの剥離が不安定になる。
【0085】
制御部16には、支持体111の表面粗さに関する情報、例えば、算術平均粗さRaを更に入力してもよい。この場合、ステップS2では、支持体の表面粗さとポリマーフィルムの種類と離型層形成条件とフィルム形成条件とを各々が含んだ複数のデータからなるテーブルに、支持体111の表面粗さと形成すべきポリマーフィルムF2の種類とを参照する。これにより、制御部16は、上記の表面粗さと上記のポリマーフィルムの種類との組み合わせに対応した離型層形成条件及びフィルム形成条件を取得する(ステップS2)。
【0086】
次に、制御部16は、上記のようにして取得した離型層形成条件のもとで、支持体111上に離型層112が形成されるように、駆動装置12、供給装置13及び硬化装置14の動作を制御する(ステップS3)。具体的には、制御部16は、駆動装置12、供給装置13及び硬化装置14へ、離型層形成条件に対応した情報と動作開始の指令とを送出する。駆動装置12、供給装置13及び硬化装置14は、制御部16から受け取った情報に対応した動作条件のもとで動作を開始する。
【0087】
即ち、先ず、供給装置13は、ダイヘッドから支持体111までの距離Lを、制御部16から受け取った情報に基づいて調節する。また、供給装置13は、離型剤を、制御部16から受け取った情報に基づいて所定の温度に加熱するとともに、この温度に保持する。更に、硬化装置14は、ノズル141が熱風を吹き出す方向が支持面に対して成す角度θを、制御部16から受け取った情報に基づいて調節する。
【0088】
次に、駆動装置12は、制御部16から受け取った情報に基づいて支持体111が所定の走行速度で面内方向へ走行するように、支持体111を移動させる。供給装置13は、走行している支持体111へ、制御部16から受け取った情報に基づいて所定の供給速度で離型剤を供給して、支持体111上に第1塗膜を形成する。硬化装置14は、第1塗膜へ向けて、制御部16から受け取った情報に基づいて所定の温度及び風速でノズル141から熱風を吹き出させて、第1塗膜を乾燥及び硬化させる。
【0089】
なお、ダイヘッドにおける離型剤の温度、離型剤の供給速度、支持体111の走行速度、ダイヘッドから支持体111までの距離L、ノズル141が吹き出す熱風の温度、熱風の風速、及びノズル141が熱風を吹き出す方向が支持面に対して成す角度θの1以上は、駆動装置12、供給装置13又は硬化装置14において手動で設定してもよい。この場合、制御部16は、手動で設定すべき条件に関する情報を、表示装置に表示することが好ましい。
【0090】
その後、制御部16は、駆動装置12、供給装置13及び硬化装置14へ、動作停止の指令を送出する。以上のようにして、支持体111と第1塗膜の硬化物である離型層112とを含んだ離型性支持体11を得る。
【0091】
次に、制御部16は、上記のようにして取得したフィルム形成条件のもとで、ポリマーフィルムF2が形成されるように、駆動装置12、供給装置13、硬化装置14及び剥離装置15の動作を制御する(ステップS4)。具体的には、制御部16は、駆動装置12、供給装置13、硬化装置14及び剥離装置15へ、フィルム形成条件に対応した情報と動作開始の指令とを送出する。駆動装置12、供給装置13、硬化装置14及び剥離装置15は、制御部16から受け取った情報に対応した動作条件のもとで動作を開始する。
【0092】
即ち、先ず、供給装置13は、ダイヘッドから支持体111までの距離Lを、制御部16から受け取った情報に基づいて調節する。また、供給装置13は、フィルム材料を、制御部16から受け取った情報に基づいて所定の温度に加熱するとともに、この温度に保持する。更に、硬化装置14は、ノズル141が熱風を吹き出す方向が支持面に対して成す角度θを、制御部16から受け取った情報に基づいて調節する。
【0093】
次に、駆動装置12は、制御部16から受け取った情報に基づいて支持体111が所定の走行速度で面内方向へ走行するように、支持体111を移動させる。供給装置13は、走行している支持体111へ、制御部16から受け取った情報に基づいて所定の供給速度でフィルム材料を供給して、離型層112上に第2塗膜F1を形成する。硬化装置14は、第2塗膜F1へ向けて、制御部16から受け取った情報に基づいて所定の温度及び風速でノズル141から熱風を吹き出させて、第2塗膜F1を硬化させる。剥離装置15は、制御部16から受け取った情報に基づいて、剥離ロール151と巻取装置154との間でポリマーフィルムF2に加わる張力Tが所定の値に維持されるように、第2塗膜F1の硬化物であるポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がすとともに、ロール状に巻き取る。
【0094】
なお、ダイヘッドにおけるフィルム材料の温度、フィルム材料の供給速度、支持体111の走行速度、ダイヘッドから支持体111までの距離L、ノズル141が吹き出す熱風の温度、熱風の風速、ノズル141が熱風を吹き出す方向が支持面に対して成す角度θ、剥離ロール151と巻取装置154との間でポリマーフィルムF2に加わる張力Tの1以上は、駆動装置12、供給装置13、硬化装置14又は剥離装置15において手動で設定してもよい。この場合、制御部16は、手動で設定すべき条件に関する情報を、表示装置に表示することが好ましい。
【0095】
その後、制御部16は、駆動装置12、供給装置13、硬化装置14及び剥離装置15へ、動作停止の指令を送出する。以上のようにして、ポリマーフィルムF2からなるロールを得る。
【0096】
<3>効果
上述した方法では、溶液製膜法によりポリマーフィルムF2を製造する。溶液製膜法によると、厚さのばらつきが小さく、高い表面平滑性を有するフィルムが得られる。
【0097】
また、この方法では、ポリマーフィルムの種類毎に、最適な離型層形成条件及び最適なフィルム形成条件を事前に調べておき、形成すべきポリマーフィルムの種類に応じて最適な離型層形成条件及び最適なフィルム形成条件を選択する。例えば、離型層112の表面の算術平均粗さRaが所定の範囲内となり且つ剥離強度Pが所定の範囲内になるように第1及び第2塗膜の形成及びそれらの硬化を行うとともに、比P/Tが所定の範囲内になるようにポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす。これにより、離型性支持体11からポリマーフィルムF2を引き剥がす前における、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離は生じ難くすることができるとともに、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がす際におけるポリマーフィルムF2の伸び又は破断を生じ難くすることができる。
【0098】
従って、上記の方法によると、高品質なポリマーフィルムを高い歩留まりで製造することが可能となる。
【0099】
また、上記の製造装置1によると、形成すべきポリマーフィルムの種類の変更が容易である。即ち、或る種類のポリマーフィルムの製造を終了し、他の種類のポリマーフィルムの製造を開始する場合、先ず、製造装置1から離型性支持体11を取り外し、支持体111から離型層112を除去する。離型層112は、例えば、物理的手法によって支持体から除去することができる。離型層112は、物理的手法と化学的手法とを組み合わせて除去してもよい。例えば、物理的手法による処理を行った後に離型層112の一部が支持体111上に残留していた場合、有機溶媒を含ませたウェスで支持体111を擦ることにより、支持体111から残留物を除去してもよい。その後、離型層112を除去した支持体111を製造装置1へ再度設置し、新たに形成すべきポリマーフィルムの種類に対応した離型層形成条件及びフィルム形成条件のもとで、離型層112及びポリマーフィルムF2をそれぞれ形成する。この製造装置1は、形成すべきポリマーフィルムの種類に適した離型層形成条件及びフィルム形成条件を記憶しているので、形成すべきポリマーフィルムの種類を変更する際に、高品質なポリマーフィルムを高い歩留まりで製造するための条件を得るための試験は不要である。従って、この製造装置1は、少量多品種の製造に適している。
【0100】
なお、離型層の表面の算術平均粗さRaは、例えば、この表面を研磨することによって小さくできる可能性がある。しかしながら、研磨を行った場合、離型層が支持体から部分的に剥離するか又は離型層に傷を生じる。従って、表面の算術平均粗さRaが小さな離型層112は、上記のように、塗工及び硬化条件等を最適化することにより実現することが好ましい。
【0101】
<4>変形例
上述した製造装置及び製造方法には、様々な変形が可能である。
例えば、記憶部162がサーバと通信可能である場合、サーバが上述したプログラム及びデータの少なくとも一方を記憶していれば、記憶部162は、上述したプログラム及びデータの少なくとも一方を記憶していなくてもよい。
【0102】
上記の製造装置1において製造した離型性支持体11は、この製造装置1においてポリマーフィルムF2の製造に使用せずに、他の製造装置においてポリマーフィルムの製造に使用してもよい。但し、この場合、離型性支持体11の着脱時や搬送時に、離型層112の損傷を生じ易い。従って、上記の製造装置1において製造した離型性支持体11は、この製造装置1においてポリマーフィルムF2の製造に使用することが好ましい。
【実施例0103】
以下に、本発明に関連して行った試験を記載する。なお、ここに記載する、材質、構造及び各種条件等は、適宜変更可能である。
【0104】
(試験1)
図1乃至図4を参照しながら説明した製造装置1を使用して、離型性支持体11及びポリマーフィルムF2を製造した。
【0105】
離型剤としては、メチルエチルケトンとトルエンとを1:1の質量比で含んだ溶媒中に、シリコーン樹脂を固形分濃度が5質量%となるように溶解させたものを使用した。支持体111としては、支持面の算術平均粗さが0.8μmである金属製エンドレスベルトを使用した。
【0106】
供給装置13としては、ダイコータを使用した。第1塗膜の形成時において、支持体111の走行速度は5m/分とし、支持体111からとスロットダイの吐出口までの距離Lは1.5mmとした。第1塗膜は、500mmの幅に形成した。
【0107】
硬化装置14としては、熱風式乾燥炉を使用した。第1塗膜の硬化時において、ノズル141が吹き出す熱風の温度は120℃とし、第1塗膜の近傍における熱風の風速は0.5m/秒とした。ノズル141が熱風を吹き出す方向は、この方向の支持面への正射影が支持面の走行方向と一致し、且つ、支持面に対して成す角度θが約30°となるように設定した。第1塗膜の乾燥時間は2分間とした。第1塗膜を硬化させてなる離型層112の算術平均粗さRaは0.4μmであった。
【0108】
フィルム材料としては、ポリカーボネートを固形分濃度が25質量%となるように塩化メチレンに溶解させてなるものを使用した。
【0109】
第2塗膜の形成時において、支持体111の走行速度は10m/分とし、支持体111からとスロットダイの吐出口までの距離Lは0.5mmとした。第2塗膜は、350mmの幅に形成した。
【0110】
第2塗膜の硬化時において、ノズル141が吹き出す熱風の温度は100℃とし、第2塗膜の近傍における熱風の風速は15m/秒とした。ノズル141が熱風を吹き出す方向は、この方向の支持面への正射影が支持面の走行方向と一致し、且つ、支持面に対して成す角度θが約30°となるように設定した。第2塗膜の乾燥時間は1分間とした。第2塗膜の硬化物であるポリマーフィルムF2の離型性支持体11に対する剥離強度Pは、8N/mであった。
【0111】
剥離ロール151と巻取装置154との間でポリマーフィルムF2に加わる張力Tは、20N/mに設定した。即ち、比P/Tは0.4とした。
【0112】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜した。その結果、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離が不安定になることなく、長さが300mのポリマーフィルムF2からなるロールを得ることができた。また、このポリマーフィルムF2は、表面性状に優れていた。
【0113】
(試験2)
第1塗膜の硬化時において熱風の風速を0.2m/秒としたこと以外は試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは0.2μmであった。
【0114】
続いて、以下の点を除き、試験1と同様の方法でポリマーフィルムF2を製膜した。即ち、離型層112の算術平均粗さが小さくなったのに伴い、剥離強度Pが12N/mとなったため、比P/Tが0.4となるように張力Tを30N/mとした。
【0115】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜した。その結果、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離が不安定になることなく、長さが300mのポリマーフィルムF2からなるロールを得ることができた。また、このポリマーフィルムF2は、表面性状に優れていた。
【0116】
(試験3)
第1塗膜の硬化時において熱風の風速を1.0m/秒としたこと以外は試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは0.8μmであった。
【0117】
続いて、以下の点を除き、試験1と同様の方法でポリマーフィルムF2を製膜した。即ち、離型層112の算術平均粗さが大きくなったのに伴い、剥離強度Pが4N/mとなったため、比P/Tが0.4となるように張力Tを10N/mとした。
【0118】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜した。その結果、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離が不安定になることなく、長さが300mのポリマーフィルムF2からなるロールを得ることができた。また、このポリマーフィルムF2は、表面性状に優れていた。
【0119】
(試験4)
試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは、試験1と同様に0.4μmであった。
【0120】
続いて、張力Tを5N/mとしたこと以外は試験1と同様の方法によりポリマーフィルムF2を製膜した。なお、剥離強度Pは試験1と同様に8N/mであったので、比P/Tは1.6であった。
【0121】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜した。その結果、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離が不安定になることなく、長さが300mのポリマーフィルムF2からなるロールを得ることができた。また、このポリマーフィルムF2は、表面性状に優れていた。
【0122】
(試験5)
試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは、試験1と同様に0.4μmであった。
【0123】
続いて、張力Tを40N/mとしたこと以外は試験1と同様の方法によりポリマーフィルムF2を製膜した。なお、剥離強度Pは試験1と同様に8N/mであったので、比P/Tは0.2であった。
【0124】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜した。その結果、ポリマーフィルムF2の離型性支持体11からの剥離が不安定になることなく、長さが300mのポリマーフィルムF2からなるロールを得ることができた。また、このポリマーフィルムF2は、表面性状に優れていた。
【0125】
(試験6)
第1塗膜の硬化時において熱風の風速を1.5m/秒としたこと以外は試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは2.0μmであった。
【0126】
続いて、張力Tを1N/mとしたこと以外は試験1と同様の方法によりポリマーフィルムF2の製膜を試みた。なお、剥離強度Pは0.5N/mであったので、比P/Tは0.5であった。
【0127】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜しようとしたところ、ポリマーフィルムF2が剥離ロール151へ到達する前に離型性支持体11から剥離した。その結果、ポリマーフィルムF2を巻き取る際に、巻き取る際にシワや折れが発生した。
【0128】
(試験7)
試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは、試験1と同様に0.4μmであった。
【0129】
続いて、張力Tを100N/mとしたこと以外は試験1と同様の方法によりポリマーフィルムF2の製膜を試みた。なお、剥離強度Pは試験1と同様に8N/mであったので、比P/Tは0.08であった。
【0130】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜しようとしたところ、ポリマーフィルムF2の破断を生じ、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がすことができなかった。
【0131】
(試験8)
試験1と同様の方法により、離型層112を形成した。得られた離型層112の算術平均粗さRaは、試験1と同様に0.4μmであった。
【0132】
続いて、張力Tを1.6N/mとしたこと以外は試験1と同様の方法によりポリマーフィルムF2の製膜を試みた。なお、剥離強度Pは試験1と同様に8N/mであったので、比P/Tは5であった。
【0133】
このようにして、ポリマーフィルムF2を連続的に製膜しようとしたところ、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から円滑に引き剥がすことはできなかった。
【0134】
(評価)
以上の結果を、以下の表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
表1に示す試験1乃至3及び6の結果から明らかなように、第1塗膜の硬化時における熱風の風速を小さくすると、離型層112の算術平均粗さRaも小さくなった。このように、離型層形成条件は、離型層112の算術平均粗さRaへ影響を及ぼした。
【0137】
また、表1に示す試験1乃至3及び6の結果から明らかなように、離型層112の算術平均粗さRaが小さくなると、剥離強度Pは大きくなった。即ち、第1塗膜の硬化時における熱風の風速を小さくすると、剥離強度Pは大きくなった。このように、離型層形成条件は、剥離強度Pへも影響を及ぼした。
【0138】
更に、表1に示す試験1、4、5、7及び8の結果から明らかなように、比P/Tを過剰に大きくすると、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から円滑に引き剥がすことができなくなった。そして、比P/Tを過剰に小さくすると、ポリマーフィルムF2の破断を生じ、ポリマーフィルムF2を離型性支持体11から引き剥がすことができなくなった。
【0139】
以上から、試験1乃至5の条件を包含するように離型層形成条件及びフィルム形成条件を定めることにより、高品質なポリマーフィルムを高い歩留まりで製造可能となることを確認できた。
【符号の説明】
【0140】
1…製造装置、10…製造装置本体、11…離型性支持体、12…駆動装置、13…供給装置、14…硬化装置、15…剥離装置、16…制御部、111…支持体、112…離型層、121…従動プーリ、122…駆動プーリ、141…ノズル、151…剥離ロール、152…ガイドロール、153…ガイドロール、154…巻取装置、161…処理部、162…記憶部、F1…第2塗膜、F2…ポリマーフィルム、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ。
図1
図2
図3
図4
図5