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特開2023-136022コイン型非接触情報媒体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136022
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】コイン型非接触情報媒体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20230922BHJP
   G06K 19/04 20060101ALI20230922BHJP
   A63F 13/95 20140101ALI20230922BHJP
【FI】
G06K19/077 156
G06K19/04 070
G06K19/077 264
A63F13/95 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041418
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田見 憲一朗
(72)【発明者】
【氏名】小宮 実
(72)【発明者】
【氏名】種子田 大幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐衝撃性が高く、複数のコイン型非接触情報媒体が近接したときでも正確な無線通信を行うコイン型非接触情報媒体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】コイン型非接触情報媒体10は、ICチップが設けられた基板110と、少なくとも1つのスリット部を含む金属リング120と、基板及び金属リングを覆う保護部材130と、を含む。ICチップは、金属リングのスリット部の間隙内に設けられている。基板は、スリット部と嵌合する突出部を含み、ICチップは、突出部の上に設けられていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップが設けられた基板と、
少なくとも1つのスリット部を含む金属リングと、
前記基板および前記金属リングを覆う保護部材と、を含み、
前記ICチップは、前記スリット部の間隙内に位置する、コイン型非接触情報媒体。
【請求項2】
前記基板は、前記少なくとも1つのスリット部と嵌合する突出部を含み、
前記ICチップは、前記突出部の上に設けられている、請求項1に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項3】
側面視において、前記ICチップの上面は、前記金属リングの上面よりも下方に位置する、請求項1または請求項2に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項4】
前記金属リングは、内側に段差部を含み、
前記基板の周縁部が、前記段差部と接する、請求項1または請求項2に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項5】
前記基板には、さらに、アンテナおよび前記アンテナに直列に接続されたインダクタが設けられている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項6】
ICチップが設けられた基板と、
少なくとも1つのスリット部および表面から内部に窪んだ第1の凹部を含む金属リングと、
前記基板および前記金属リングを覆う保護部材と、を含み、
前記第1の凹部は、前記基板と重畳し、
前記ICチップは、前記第1の凹部と前記基板とによって形成される空間内に位置する、コイン型非接触情報媒体。
【請求項7】
前記第1の凹部の開口面は、前記基板によって塞がれている、請求項6に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項8】
前記基板には、さらに、アンテナおよび前記アンテナに直列に接続されたインダクタが設けられ、
前記金属リングは、さらに、前記表面から前記内部に窪んだ第2の凹部を含み、
前記インダクタは、前記第2の凹部と前記基板とによって形成される空間内に位置する、請求項6または請求項7に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項9】
前記基板には、さらに、前記ICチップと並列に接続されたコンデンサが設けられ、
前記金属リングは、さらに、前記表面から前記内部に窪んだ第3の凹部を含み、
前記コンデンサは、前記第3の凹部と前記基板とによって形成される空間内に位置する、請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項10】
前記インダクタは、前記基板の上に実装されたチップインダクタである、請求項5または請求項8に記載のコイン型非接触情報媒体。
【請求項11】
基板の突出部にICチップを実装し、
少なくとも1つのスリット部を含む金属リングに、前記基板を、前記突出部が前記少なくとも1つのスリット部に嵌合するように配置し、
射出成型を用いて、前記基板および前記金属リングを覆う保護部材を形成する、コイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項12】
側面視において、前記ICチップの上面が、前記金属リングの上面よりも下方に位置するように、前記金属リングに前記基板を配置する、請求項11に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項13】
前記基板の周縁部が前記金属リングの内側の段差部で係止されるように、前記金属リングに前記基板を配置する、請求項11または請求項12に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項14】
さらに、前記基板に形成されたアンテナに直列に接続されるようにインダクタを実装する、請求項11乃至請求項13のいずれか一項に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項15】
基板にICチップを実装し、
前記基板に、表面から内部に窪んだ第1の凹部を含む金属リングを、前記第1の凹部が前記ICチップを覆うように配置し、
射出成型を用いて、前記基板および前記金属リングを覆う保護部材を形成する、コイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項16】
前記第1の凹部の開口面が前記基板によって塞がれるように、前記基板に前記金属リングを配置する、請求項15に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項17】
さらに、前記基板に形成されたアンテナに直列に接続されるようにインダクタを実装し、
前記金属リングは、さらに、前記表面から前記内部に窪んだ第2の凹部を含み、
前記第2の凹部が前記インダクタを覆うように、前記基板に前記金属リングを配置する、請求項15または請求項16に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項18】
さらに、前記ICチップと並列に接続されるようにコンデンサを実装し、
前記金属リングは、さらに、前記表面から前記内部に窪んだ第3の凹部を含み、
前記第3の凹部が前記コンデンサを覆うように、前記基板に前記金属リングを配置する、請求項15乃至請求項17のいずれか一項に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【請求項19】
前記インダクタは、チップインダクタである、請求項14または請求項17に記載のコイン型非接触情報媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、コイン型非接触情報媒体に関する。また、本発明の一実施形態は、コイン型非接触情報媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDのような非接触情報媒体は、無線通信によってリーダライタとの通信接続を行うため、リーダライタとの接触がなく、利便性が高いことから需要が増加している。なかでも、ICチップを備えたコイン型非接触情報媒体は、セキュリティーが高く、真偽判定が可能であることから、カジノのチップとして利用され始めている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6021949号明細書
【特許文献2】米国特許第3766452号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイン型非接触情報媒体がカジノのチップとして利用される場合、複数のコイン型非接触情報媒体の各々の情報を正確に読み取る必要がある。また、カジノのチップは、複数のチップが衝突し合うことが多いため、衝突によってICチップが破損することを防止する必要がある。特に、カジノのチップとして利用されるコイン型非接触情報媒体は、高級感を出すために重量を必要とし、重り部材を含む場合がある。重り部材を含むコイン型非接触情報媒体同士が衝突した衝撃は、重り部材を含まないコイン型非接触情報媒体同士が衝突した衝撃よりも大きいため、ICチップへ伝達される衝撃も大きくなる。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、耐衝撃性が高く、複数のコイン型非接触情報媒体が近接したときでも正確な無線通信を行うことが可能であるコイン型非接触情報媒体を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、上記コイン型非接触情報媒体の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体は、ICチップが設けられた基板と、少なくとも1つのスリット部を含む金属リングと、基板および金属リングを覆う保護部材と、を含み、ICチップは、スリット部の間隙内に設けられている。
【0007】
基板は、少なくとも1つのスリット部と嵌合する突出部を含み、ICチップは、突出部の上に設けられていてもよい。
【0008】
側面視において、ICチップの上面は、金属リングの上面よりも下方に位置してもよい。
【0009】
金属リングは、内側に段差部を含み、基板の周縁部が、段差部と接してもよい。
【0010】
基板には、さらに、アンテナおよびアンテナに直列に接続されたインダクタが設けられていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体は、ICチップが設けられた基板と、少なくとも1つのスリット部および表面から内部に窪んだ第1の凹部を含む金属リングと、基板および金属リングを覆う保護部材と、を含み、第1の凹部は、前記基板と重畳し、ICチップは、第1の凹部と基板とによって形成される空間内に位置する。
【0012】
第1の凹部の開口面は、基板によって塞がれていてもよい。
【0013】
基板には、さらに、アンテナおよびアンテナに直列に接続されたインダクタが設けられ、金属リングは、さらに、表面から内部に窪んだ第2の凹部を含み、インダクタは、第2の凹部と基板とによって形成される空間内に位置してもよい。
【0014】
基板には、さらに、ICチップと並列に電気的に接続されたコンデンサが設けられ、金属リングは、さらに、表面から内部に窪んだ第3の凹部を含み、コンデンサは、第3の凹部と基板とによって形成される空間内に位置してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の製造方法は、基板の突出部にICチップを実装し、少なくとも1つのスリット部を含む金属リングに、基板を、突出部が少なくとも1つのスリット部に嵌合するように配置し、射出成型を用いて、基板および金属リングを覆う保護部材を形成する。
【0016】
側面視において、ICチップの上面が、金属リングの上面よりも下方に位置するように、金属リングに基板を配置してもよい。
【0017】
基板の周縁部が金属リングの内側の段差部で係止されるように、金属リングに基板を配置してもよい。
【0018】
コイン型非接触情報媒体の製造方法は、さらに、基板に形成されたアンテナに直列に接続されるようにインダクタを実装してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の製造方法は、基板にICチップを実装し、基板に、表面から内部に窪んだ第1の凹部を含む金属リングを、第1の凹部がICチップを覆うように配置し、射出成型を用いて、基板および前記金属リングを覆う保護部材を形成する。
【0020】
第1の凹部の開口面が基板によって塞がれるように、基板に金属リングを配置してもよい。
【0021】
コイン型非接触情報媒体の製造方法は、さらに、基板に形成されたアンテナに直列に接続されるようにインダクタを実装し、金属リングは、さらに、表面から内部に窪んだ第2の凹部を含み、第2の凹部がインダクタを覆うように、基板に金属リングを配置してもよい。
【0022】
コイン型非接触情報媒体の製造方法は、さらに、ICチップと並列に接続されるようにコンデンサを実装し、金属リングは、さらに、表面から内部に窪んだ第3の凹部を含み、第3の凹部がインダクタを覆うように、基板に金属リングを配置してもよい。
【0023】
インダクタは、基板の上に実装されたチップインダクタであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体は、ICチップに伝達される衝撃を緩和することができるため、耐衝撃性が高い。また、複数のコイン型非接触情報媒体が近接したときでも、コイル間の相互干渉が抑制されているため、コイン型非接触情報媒体の共振回路の共振周波数または電圧の変化が小さく、正確な無線通信を行うことができる。また、複数のコイン型非接触情報媒体が重ねられた場合であっても、複数のコイン型非接触情報媒体の各々の共振回路の共振周波数の変化が小さく、コイン型非接触情報媒体で生成される電圧の低下が抑制されるため、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体の読取個数が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の概略を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の基板および金属リングの側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の基板および金属リングの上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の基板および金属リングの分解斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体のICチップの構成を示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の回路図である。
図8】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の製造方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の基板および金属リングの側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の基板および金属リングの分解斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の概略を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の基板および金属リングの上面図である。
図15】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の金属リングの底面図である。
図16】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の製造方法を示すフローチャートである。
図17】本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体の金属リングの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0028】
本明細書および図面において、同一または類似する複数の構成を総じて表記する際には、同一の符号または同一の符号に大文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。一つの構成のうちの複数の部分をそれぞれ区別して表記する際には、同一の符号を用い、さらにハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0029】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0030】
本明細書において、コイン型非接触情報媒体に含まれる基板を基準とし、ICチップが設けられる基板の面を「上面」とし、その反対の基板の面を「底面」として説明する。また、上面および底面と交差する面を「側面」として説明する。
【0031】
本明細書において、「近接する」とは、複数のコイン型非接触情報媒体がその間に空間を有して近づいている場合だけでなく、複数のコイン型非接触情報媒体が直接接している場合も含む。例えば、「近接する」には、複数のコイン型非接触情報媒体が重なった状態を含むものとする。
【0032】
<第1実施形態>
図1図8を参照して、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10について説明する。
【0033】
[1.コイン型非接触情報媒体10の概略]
図1は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の概略を示す斜視図である。図1に示すように、コイン型非接触情報媒体10は、基板110、金属リング120、および保護部材130を含む。基板110および金属リング120は、コイン型非接触情報媒体10の内部に位置し、いずれも保護部材130によって覆われている。
【0034】
保護部材130は、コイン型非接触情報媒体10の外観形状を形成しているとともに、外部からの衝撃に対して基板110および金属リング120を保護する。そのため、コイン型非接触情報媒体10では、基板110および金属リング120が、保護部材130によって完全に覆われていることが好ましい。保護部材130は、樹脂であり、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。保護部材130として、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、または塩化ビニルなどを用いることができる。
【0035】
図1に示すコイン型非接触情報媒体10は円形平板状であるが、コイン型非接触情報媒体10の形状はこれに限られない。コイン型非接触情報媒体10は、楕円形平板状であってもよく、多角形平板状であってもよい。また、コイン型非接触情報媒体10は、底面の直径よりも厚さが小さい平板状であることが好ましいが、底面の直径よりも厚さが大きい円筒状であってもよい。
【0036】
コイン型非接触情報媒体10は、例えば、カジノまたはアミューズメント施設などにおいて使用されるチップ(コインまたはトークン)であるが、コイン型非接触情報媒体10の用途はこれに限られない。コイン型非接触情報媒体10は、例えば、物品管理用のタ
グとして使用することもできる。
【0037】
[2.コイン型非接触情報媒体10の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の断面図である。具体的には、図2は、図1に示すA1-A2線に沿って上面から底面に向かって切断されたコイン型非接触情報媒体10の断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の基板110および金属リング120の側面図である。具体的には、図3は、保護部材130が除去されたコイン型非接触情報媒体10において、基板110および金属リング120のB方向から側面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の基板110および金属リング120の上面図である。具体的には、図4は、保護部材130が除去されたコイン型非接触情報媒体10において、基板110および金属リング120の上面図である。図5は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の基板110および金属リング120の分解斜視図である。具体的には、図5は、保護部材130が除去されたコイン型非接触情報媒体10において、基板110および金属リング120の分解斜視図である。
【0038】
基板110上には、アンテナ140、インダクタ150、コンデンサ160、およびICチップ170が設けられている(例えば、図4または図5参照)。すなわち、基板110は、アンテナ140、インダクタ150、コンデンサ160、およびICチップ170を支持する基材として機能することができる。基板110として、例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、複合基材エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスポリイミド基板、BT基板、テフロン(登録商標)基板、またはPPO基板などを用いることができる。
【0039】
アンテナ140は、無線通信を行うリーダライタから信号を受信し、またはリーダライタに信号を送信する。アンテナ140のコイルの巻き数は好ましくは1回以上3回以下であり、特に好ましくは2回である。従来のアンテナと比較すると、アンテナ140のコイルの巻き数は大幅に少ない。アンテナ140は、金属などの導電性材料などを用いて、基板110上に所定の形状を有するように形成される。アンテナ140は、印刷、塗布、またはエッチングなどの方法を用いて形成することができる。インダクタ150、コンデンサ160、およびICチップ170は、基板110上に実装される。そのため、インダクタ150およびコンデンサ160は、それぞれ、実装可能なチップインダクタおよびチップコンデンサである。インダクタ150は、アンテナ140と直列に電気的に接続されている(例えば、図4または図5参照)。コンデンサ160およびICチップ170は、接続点142、144において、アンテナ140と電気的に接続されている(例えば、図4参照)。なお、コンデンサ160とICチップ170とは、並列に電気的に接続されている。
【0040】
ここで、図6を参照して、ICチップ170について説明する。
【0041】
図6は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10のICチップ170の構成を示すブロック図である。図6に示すように、ICチップ170は、制御部172、通信部174、および記憶部176を含む。制御部172は、通信部174および記憶部176の処理動作を制御する。通信部174は、アンテナ140を介して受信したリーダライタからの信号を処理し、リーダライタから要求された情報を記憶部176から抽出する。また、通信部174は、抽出した情報に対応する信号を、アンテナ140を介してリーダライタに送信する。記憶部176は、コイン型非接触情報媒体10を識別する識別情報を含む各種情報を記憶する。
【0042】
ICチップ170には、アンテナ140、インダクタ150、およびコンデンサ160によって形成される共振回路から誘導電流が供給される。ICチップ170は、誘導電流に対応する電圧値がしきい値(動作可能電圧値)以上であるとき、動作を開始する。
【0043】
再び、図2図5を参照して、コイン型非接触情報媒体10の構成について説明する。
【0044】
基板110は、概ね円形状を有し、外側に突出した突出部112を含む(例えば、図5参照)。ICチップ170は、突出部112上に設けられている。
【0045】
金属リング120は、コイン型非接触情報媒体10に重量を付与する重り部材として機能することができる。金属リング120として、例えば、真鍮またはアルミニウムなどを用いることができる。金属リング120は、概ね環状を有し、金属リング120の一部が切断され、金属リング120の断面端部が露出されたスリット部122を含む(例えば、図5参照)。換言すると、金属リング120は、スリット部122を含むC字状を有する。
【0046】
金属リング120の内径は、基板110の直径とほぼ同じであるか、または僅かに大きい。また、金属リング120のスリット部122の間隙の幅は、基板110の突出部112の幅とほぼ同じであるか、または僅かに大きい。そのため、突出部112がスリット部122と嵌合するように、金属リング120の内側に基板110を挿入することができる。換言すると、突出部112は、スリット部122の間隙に挿入されている。金属リング120の内側には、段差部124が設けられている(例えば、図5参照)。突出部112がスリット部122の間隙に挿入されると、基板110は、段差部124によって係止され(例えば、図2参照)、位置が固定される。
【0047】
突出部112上に設けられたICチップ170は、スリット部122の間隙内、すなわち、金属リング120の端面(または切断面)の間に位置する。側面視において、ICチップ170の上面は、金属リング120の上面よりも下方に位置する(例えば、図3参照)。
【0048】
なお、スリット部122は、突出部112が嵌合される、少なくとも1つが設けられていればよく、金属リング120は、複数のスリット部122を含んでいてもよい。
【0049】
上述したように、コイン型非接触情報媒体10では、ICチップ170が、スリット部122の間隙内に位置し、金属リング120の端面によって保護されている。そのため、コイン型非接触情報媒体10の落下などによって、外部からコイン型非接触情報媒体10に衝撃が与えられた場合であっても、金属リング120によって衝撃が吸収されるので、ICチップ170に伝達される衝撃を緩和することができる。
【0050】
[3.コイン型非接触情報媒体10の電気特性]
図7は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の回路図である。図7に示すように、アンテナ140とインダクタ150とは、直列に電気的に接続され、アンテナ140、インダクタ150、およびコンデンサ160によって閉回路が形成されている。アンテナ140、インダクタ150、およびコンデンサ160によって形成される閉回路は、いわゆる共振回路である。
【0051】
アンテナ140、インダクタ150、およびコンデンサ160によって形成される共振回路の共振周波数frは、以下の式(1)によって表される。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、式(1)中のLa、Lb、およびCは、それぞれ、アンテナ140のインダクタンス、インダクタ150のインダクタンス、およびコンデンサ160の容量である。
【0054】
コイン型非接触情報媒体10の共振回路の共振周波数frが、リーダライタの周波数fcと一致すると、コイン型非接触情報媒体10の共振回路に誘導電流が流れる。アンテナ140のインダクタンスLaおよびインダクタ150のインダクタンスLbは、コイン型非接触情報媒体10の共振回路の共振周波数frがリーダライタの周波数fcと一致するように設定されているため、コイン型非接触情報媒体10は、リーダライタから高効率で電力を受け取ることができる。
【0055】
上述したように、インダクタ150は、チップインダクタであるため、そのサイズは十分に小さい。そのため、インダクタ150は、集中定数化が可能である集中定数型インダクタということもできる。コイン型非接触情報媒体10では、アンテナ140のコイルの巻き数が少なく、アンテナ140のインダクタンスLaは、インダクタ150のインダクタンスLbよりも小さい。そこで、コイン型非接触情報媒体10では、インダクタ150のインダクタンスLbを大きくすることによって共振回路のインダクタンスを大きくし、コイン型非接触情報媒体10の共振周波数frとリーダライタの周波数fcとを一致させている。コイン型非接触情報媒体10では、アンテナ140のインダクタンスLaが小さくても、インダクタ150のインダクタンスLbを大きくすればよく、コンデンサ160の容量Cを増加させる必要はない。そのため、コンデンサ160の容量Cは、従来の容量とほぼ同等とすることができる。したがって、コイン型非接触情報媒体10は、コンデンサ160のサイズを大きくすることなく、小型化を図ることが可能である。また、コイン型非接触情報媒体10では、コンデンサ160の容量Cが大きくならないため、Q値(Q factor)も小さくならない。そのため、発電効率が低下せず、ICチップ170に電力を十分に供給することができる。その結果、コイン型非接触情報媒体10では、電力不足に起因したICチップ170の誤動作などが防止される。したがって、コイン型非接触情報媒体10は、リーダライタと安定した無線通信を行うことができる。
【0056】
次に、複数のコイン型非接触情報媒体10とリーダライタとの無線通信について説明する。
【0057】
インダクタ150を有しない従来のコイン型非接触情報媒体では、アンテナのコイルの巻き数を多くすることによって、アンテナのインダクタンスを増加させて共振周波数frを調整していた。コイルの巻き数が多いアンテナ同士が近接すると、コイル間の相互干渉が起きる。そのため、従来のコイン型非接触情報媒体では、アンテナおよびコンデンサによって形成された共振回路の共振周波数または電圧が変化し、リーダライタとの間で正確な無線通信を行うことができなかった。
【0058】
これに対し、コイン型非接触情報媒体10では、アンテナ140のコイルの巻き数は1回であり、従来のコイン型非接触情報媒体のアンテナのコイルの巻き数に比べて大幅に少ない。そのため、複数のコイン型非接触情報媒体10が近接した場合であっても、アンテナ140によるコイル間の相互干渉は発生しにくい。
【0059】
また、コイルの形状も、コイル間の相互干渉に影響を及ぼす。コイルの形状が大きくなるほど、コイルが重なる領域が増加するため、コイル間の相互干渉が発生しやすくなる。しかしながら、コイン型非接触情報媒体10に含まれるインダクタ150は、サイズが十分に小さく、コイルの形状も小さい。そのため、複数のコイン型非接触情報媒体10が近接した場合であっても、インダクタ150によるコイル間の相互干渉は発生しにくい。
【0060】
したがって、コイン型非接触情報媒体10では、コイル間の相互干渉が抑制されるため、複数のコイン型非接触情報媒体10が近接した場合であっても、複数のコイン型非接触情報媒体10とリーダライタとの間で正確な無線通信を行うことができる。
【0061】
さらに、コイン型非接触情報媒体10では、共振回路のインダクタンスと容量との比率は、従来のコイン型非接触情報媒体とほぼ同等である。そのため、複数のコイン型非接触情報媒体10が近接した場合であっても、共振強度を所定値以上に保持することができるため、リーダライタからの電力を効率よく受け取ることができる。その結果、複数のコイン型非接触情報媒体10の各々は、円滑に動作を開始することができる。
【0062】
上述したように、コイン型非接触情報媒体10は、複数のコイン型非接触情報媒体10が近接する場合であっても、コイル間の相互干渉が抑制され、電力が効率よく供給されるため、正確な無線通信を行うことができる。
【0063】
[4.コイン型非接触情報媒体10の製造方法]
図8は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10の製造方法を示すフローチャートである。コイン型非接触情報媒体10は、ステップS100~ステップS120によって製造される。但し、コイン型非接触情報媒体10の製造方法は、これに限られず、別のステップを含んでいてもよい。
【0064】
ステップS100では、所定の形状を有するアンテナ140が形成された基板110上に、インダクタ150、コンデンサ160、およびICチップ170を実装する。これにより、アンテナ140と、インダクタ150、コンデンサ160、およびICチップ170とが電気的に接続される。また、アンテナ140、インダクタ150、およびコンデンサ160による閉回路が形成される。
【0065】
ステップS110では、突出部112がスリット部122と嵌合するように、金属リング120の内側に基板110を挿入する。基板110と金属リング120との位置合わせは、突出部112とスリット部122との嵌合によって行うことができるため、別途位置合わせ用のマーカーを設ける必要はない。また、挿入された基板110は、金属リング120の内側の段差部124によって係止され、位置が固定される。
【0066】
ステップS120では、射出成型を用いて、基板110および金属リング120を覆う保護部材130を成型する。具体的には、金型内に配置された基板110および金属リング120に樹脂を射出し、所定の温度および圧力の下で樹脂を成型することによって、保護部材130を形成する。
【0067】
以上説明したように、コイン型非接触情報媒体10では、ICチップ170が、金属リング120のスリット部122に位置し、金属リング120の端面によって保護されている。そのため、コイン型非接触情報媒体10は、高い耐衝撃性を有する。また、コイン型非接触情報媒体10では、インダクタ150によって相互干渉を抑制することができるため、コイン型非接触情報媒体10は、共振回路の共振周波数の変化が小さく、複数のコイン型非接触情報媒体10が近接したときでも正確な無線通信を行うことができる。また、複数のコイン型非接触情報媒体10が重ねられた場合であっても、複数のコイン型非接触情報媒体10の各々の共振回路の共振周波数の変化が小さく、コイン型非接触情報媒体10で生成される電圧の低下が抑制されるため、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体10の読取個数が向上する。また、複数のコイン型非接触情報媒体10が重ねられると、重なった金属リング120によって筒状体が形成され、電波が筒状体内で反射されながら通り抜けることができる。そのため、リーダライタから離れたコイン型非接触情報媒体10にまで電波が届くようになり、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体10の読取個数が向上する。
【0068】
<第1実施形態の変形例>
図9および図10を参照して、コイン型非接触情報媒体10の一変形例であるコイン型非接触情報媒体10Aについて説明する。なお、以下では、コイン型非接触情報媒体10Aの構成がコイン型非接触情報媒体10の構成と同様であるとき、コイン型非接触情報媒体10Aの構成の説明を省略する場合がある。
【0069】
図9は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10Aの基板110Aおよび金属リング120Aの側面図である。また、図10は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体10Aの基板110Aおよび金属リング120Aの分解斜視図である。
【0070】
基板110A上には、アンテナ140、インダクタ150、コンデンサ160、およびICチップ170が設けられている(例えば、図10参照)。金属リング120Aは、スリット部122Aを含む。金属リング120Aの外周は、基板110Aの外周と略一致し、金属リング120Aは、基板110A上に配置されている(例えば、図9参照)。
【0071】
コイン型非接触情報媒体10Aでは、基板110Aは突出部を含まず、金属リング120Aは、段差部を含んでいない。しかしながら、金属リング120Aが配置された基板110Aにおいて、ICチップ170は、スリット部122Aの間隙内、すなわち、金属リング120Aの端面の間に位置し、金属リング120Aの端面によって保護されている。また、ICチップ170の上面は、金属リング120Aの上面よりも下方に位置する(例えば、図9参照)。
【0072】
以上説明したように、コイン型非接触情報媒体10Aでは、ICチップ170が、金属リング120Aのスリット部122Aに位置し、金属リング120Aの端面によって保護されている。そのため、コイン型非接触情報媒体10Aは、高い耐衝撃性を有する。また、コイン型非接触情報媒体10Aでは、インダクタ150によって相互干渉を抑制することができるため、コイン型非接触情報媒体10Aは、共振回路の共振周波数の変化が小さく、複数のコイン型非接触情報媒体10Aが近接したときでも正確な無線通信を行うことができる。また、複数のコイン型非接触情報媒体10Aが重ねられた場合であっても、複数のコイン型非接触情報媒体10Aの各々の共振回路の共振周波数の変化が小さく、コイン型非接触情報媒体で生成される電圧の低下が抑制されるため、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体10Aの読取個数が向上する。また、複数のコイン型非接触情報媒体10Aが重ねられると、重なった金属リング120Aによって筒状体が形成され、電波が筒状体内で反射されながら通り抜けることができる。そのため、リーダライタから離れたコイン型非接触情報媒体10Aにまで電波が届くようになり、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体10Aの読取個数が向上する。
【0073】
<第2実施形態>
図11図16を参照して、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20について説明する。なお、以下では、コイン型非接触情報媒体20の構成が、コイン型非接触情報媒体10の構成と同様であるとき、コイン型非接触情報媒体20の構成の説明を省略する場合がある。
【0074】
[1.コイン型非接触情報媒体20の概略]
図11は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20の概略を示す斜視図である。図11に示すように、コイン型非接触情報媒体20は、基板210、金属リング220、および保護部材230を含む。基板210および金属リング220は、コイン型非接触情報媒体20の内部に位置し、いずれも保護部材230によって覆われている。
【0075】
[2.コイン型非接触情報媒体20の構成]
図12および図13は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20の断面図である。具体的には、図12は、図11に示すC1-C2線に沿って上面から底面に向かって切断されたコイン型非接触情報媒体20の断面図であり、図13は、図11に示すD1-D2線に沿って上面から底面に向かって切断されたコイン型非接触情報媒体20の断面図である。図14は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20の基板210および金属リング220の上面図である。具体的には、図14は、保護部材230が除去されたコイン型非接触情報媒体20において、基板210および金属リング220の上面図である。図15は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20の金属リング220の底面図である。具体的には、図15は、基板210および保護部材230が除去されたコイン型非接触情報媒体20において、金属リング220の底面図である。
【0076】
基板110上には、アンテナ240、インダクタ250、コンデンサ260、およびICチップ270が設けられている(例えば、図14参照)。アンテナ240のコイルの巻き数は1回である。インダクタ250およびコンデンサ260は、それぞれ、チップインダクタおよびチップコンデンサである。インダクタ250は、アンテナ240と直列に電気的に接続されている。コンデンサ260およびICチップ270は、接続点242、244において、アンテナ240と電気的に接続されている。なお、コンデンサ260とICチップ270とは、並列に電気的に接続されている。
【0077】
金属リング220は、基板210上に配置されている(例えば、図12または図13参照)。金属リング220は、金属リング220の一部が切断されたスリット部222を含む(例えば、図14または図15参照)。また、金属リング220の底面(基板210側の表面)には、底面から内部に窪んだ凹部224が設けられている(図13図14、または図15参照)。凹部224は、基板210と重畳している。
【0078】
凹部224の開口面積は、ICチップ270の実装面積よりも大きい(例えば、図14参照)。また、凹部224の深さは、基板210の表面からICチップ270の上面までの高さよりも大きい(例えば、図13参照)。そのため、基板210上に金属リング220が配置されると、基板210と凹部224とによって閉じられた空間が形成され、ICチップ270は、形成された空間内に位置する。凹部224の開口面の少なくとも一部が基板210によって塞がれていればよいが、凹部224の開口面の全てが塞がれていることが好ましい。凹部の224の開口面が基板210によって完全に塞がれている場合、形成された空間は、基板210および金属リング220によって取り囲まれているため、空間内に位置するICチップ270は、保護部材230と接していない。
【0079】
凹部224の開口形状は、矩形に限られない。凹部224の開口形状は、円形、楕円形、または多角形などであってもよい。
【0080】
上述したように、コイン型非接触情報媒体20では、ICチップ270が、金属リング220に設けられた凹部224内に位置し、凹部224によって保護されている。そのため、コイン型非接触情報媒体20の落下などによって、外部からコイン型非接触情報媒体20に衝撃が与えられた場合であっても、金属リング220によって衝撃が吸収されるので、ICチップ270に伝達される衝撃を緩和することができる。また、コイン型非接触情報媒体20も、複数のコイン型非接触情報媒体20が近接する場合であっても、コイル間の相互干渉が抑制され、電力が効率よく供給されるため、正確な無線通信を行うことができる。
【0081】
[3.コイン型非接触情報媒体20の製造方法]
図16は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20の製造方法を示すフローチャートである。コイン型非接触情報媒体20は、ステップS200~ステップS220によって製造される。但し、コイン型非接触情報媒体20の製造方法は、これに限られず、別のステップを含んでいてもよい。
【0082】
ステップS200では、所定の形状帆を有するアンテナ240が形成された基板210上に、インダクタ250、コンデンサ260、およびICチップ270を実装する。これにより、アンテナ240と、インダクタ250、コンデンサ260、およびICチップ270とが電気的に接続される。また、アンテナ240、インダクタ250、およびコンデンサ260による閉回路が形成される。
【0083】
ステップS210では、凹部224がICチップ270を覆うように、基板210上に金属リング220を配置する。なお、基板210と金属リング220との位置合わせは、金属リング220のスリット部222を用いて行ってもよい。例えば、基板210にスリット部222と同じ大きさのスリット部を設け、基板210のスリット部に金属リング220のスリット部222を一致させることにより、基板210と金属リング220との位置合わせを行うことができる。また、基板に金属リング220のスリット部222と嵌合する凸部を設け、基板210の凸部に金属リング220のスリット部222を嵌合させることにより、基板210と金属リング220との位置合わせを行うことができる。
【0084】
ステップS220では、射出成型を用いて、基板210および金属リング220を覆う保護部材230を成型する。具体的には、金型内に配置された基板210および金属リング220に樹脂を射出し、所定の温度および圧力の下で樹脂を成型することによって、保護部材230を形成する。このとき、ICチップ270は、凹部224によって保護されており、樹脂と接していない。そのため、ICチップ270は、樹脂の成型における温度および圧力の影響を受けにくく、射出成型工程におけるICチップ270へのダメージが低減される。
【0085】
以上説明したように、コイン型非接触情報媒体20では、ICチップ270が、金属リング220に設けられた凹部224内に位置し、凹部224によって保護されている。そのため、コイン型非接触情報媒体10は、高い耐衝撃性を有するとともに、射出成型工程におけるICチップ270へのダメージを低減する。また、コイン型非接触情報媒体20では、インダクタ250によって相互干渉を抑制することができるため、コイン型非接触情報媒体20は、共振回路の共振周波数の変化が小さく、複数のコイン型非接触情報媒体20が近接したときでも正確な無線通信を行うことができる。また、複数のコイン型非接触情報媒体20が重ねられた場合であっても、複数のコイン型非接触情報媒体20の各々の共振回路の共振周波数の変化が小さく、コイン型非接触情報媒体で生成される電圧の低下が抑制されるため、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体20の読取個数が向上する。また、複数のコイン型非接触情報媒体20が重ねられると、重なった金属リング220によって筒状体が形成され、電波が筒状体内で反射されながら通り抜けることができる。そのため、リーダライタから離れたコイン型非接触情報媒体20にまで電波が届くようになり、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体20の読取個数が向上する。
【0086】
<第2実施形態の変形例>
図17を参照して、コイン型非接触情報媒体20の一変形例であるコイン型非接触情報媒体20Aについて説明する。なお、以下では、コイン型非接触情報媒体20Aの構成が、コイン型非接触情報媒体20の構成と同様であるとき、コイン型非接触情報媒体20Aの構成の説明を省略する場合がある。
【0087】
図17は、本発明の一実施形態に係るコイン型非接触情報媒体20Aの金属リング220Aの底面図である。図17に示すように、金属リング220Aは、金属リング220Aの一部が切断されたスリット部222Aを含む。また、金属リング220の底面には、底面から内部に窪んだ第1の凹部224A-1が設けられている。
【0088】
さらに、金属リング220Aでは、環状の内側に第1の突出部226A-1および第2の突出部226A-2が設けられている。また、第1の突出部226A-1および第2の突出部226A-2には、それぞれ、底面から内部に窪んだ第2の凹部224A-2および第3の凹部224A-3が設けられている。
【0089】
基板210上に金属リング220Aが配置されたとき、第1の凹部224A-1、第2の凹部224A-2、および第3の凹部224A-3は、それぞれ、ICチップ270、インダクタ250、およびコンデンサ260を覆うことができる。すなわち、ICチップ270は、基板210と第1の凹部224A-1によって形成された空間内に位置し、インダクタ250は、基板210と第2の凹部224A-2によって形成された空間内に位置し、コンデンサ260は、基板210と第3の凹部224A-3によって形成された空間内に位置する。いずれの空間も、基板210および金属リング220Aによって取り囲まれているため、空間内に位置するICチップ270、インダクタ250、およびコンデンサ260は、保護部材と接していない。
【0090】
以上説明したように、コイン型非接触情報媒体20Aでは、ICチップ270、インダクタ250、およびコンデンサ260が、それぞれ、第1の凹部244A-1、第2の凹部244A-2、および第3の凹部244A-3によって保護されている。そのため、コイン型非接触情報媒体20Aは、高い耐衝撃性を有するとともに、射出性工程におけるICチップ270、インダクタ250、およびコンデンサ260へのダメージを低減する。また、コイン型非接触情報媒体20Aでは、インダクタ250によって相互干渉を抑制することができるため、コイン型非接触情報媒体20Aは、共振回路の共振周波数の変化が小さく、複数のコイン型非接触情報媒体20Aが近接したときでも正確な無線通信を行うことができる。また、複数のコイン型非接触情報媒体20Aが重ねられた場合であっても、複数のコイン型非接触情報媒体20Aの各々の共振回路の共振周波数の変化が小さく、コイン型非接触情報媒体で生成される電圧の低下が抑制されるため、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体20Aの読取個数が向上する。また、複数のコイン型非接触情報媒体20Aが重ねられると、重なった金属リング220Aによって筒状体が形成され、電波が筒状体内で反射されながら通り抜けることができる。そのため、リーダライタから離れたコイン型非接触情報媒体20Aにまで電波が届くようになり、リーダライタにおけるコイン型非接触情報媒体20Aの読取個数が向上する。
【0091】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、または設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0092】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0093】
10、10A:コイン型非接触情報媒体、 110、110A:基板、 112:突出部、 120、120A:金属リング、 122、122A:スリット部、 124:段差部、 130:保護部材、 140:アンテナ、 142、144:接続点、 150:インダクタ、 160:コンデンサ、 170:ICチップ、 172:制御部、 174:通信部、 176:記憶部、
20、20A:コイン型非接触情報媒体、 210:基板、 220、220A:金属リング、 222、222A:スリット部、 224、224A:凹部、 226A:突出部、 230:保護部材、 240:アンテナ、 242、244:接続点、 250:インダクタ、 260:コンデンサ、 270:ICチップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17