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特開2023-136023積層成形システムおよび積層成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136023
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】積層成形システムおよび積層成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20230922BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20230922BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B29C43/18
B29C43/34
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041420
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
【テーマコード(参考)】
4F204
4F211
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AG01
4F204AG03
4F204AM28
4F204AM32
4F204AR07
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FB11
4F204FG02
4F204FN11
4F204FN15
4F211AG03
4F211SA07
4F211SC05
4F211SD01
4F211SJ13
4F211SJ15
4F211SJ31
4F211SP03
4F211SP17
(57)【要約】
【課題】 積層装置におけるキャリアフィルムの垂れ下がりによる成形不良発生の問題を低減することのできる積層成形システムおよび積層成形方法を提供する。
【解決手段】 キャリアフィルムF1,F2を用いて積層成形品Aを積層装置12の一側から搬入し、積層装置12で積層成形後に積層装置12の他側から搬出する積層成形システム11において、前記積層装置12の成形位置12aに対して搬入側の外側近傍位置と、前記積層装置12の成形位置12aに対して搬出側の外側近傍位置には、前記積層装置12の成形位置12aにおけるキャリアフィルムF1および積層成形品Aの垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構18a,18bが備えられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムを用いて積層成形品を積層装置の一側から搬入し、積層装置で積層成形後に積層装置の他側から搬出する積層成形システムにおいて、
前記積層装置の成形位置に対して搬入側の外側近傍位置と、前記積層装置の成形位置に対して搬出側の外側近傍位置には、前記積層装置の成形位置におけるキャリアフィルムおよび積層成形品の垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構が備えられた積層成形システム。
【請求項2】
前記垂れ下がり防止機構は、キャリアフィルムの移動を抑制する移動抑制動抑制機構であって、キャリアフィルムを挟持する挟持部を備える、請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項3】
前記垂れ下がり防止機構は、キャリアフィルムの移動を抑制する移動抑制動抑制機構であって、キャリアフィルムを吸着する吸着部を備える、請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項4】
前記垂れ下がり防止機構は、キャリアフィルムを変形させるキャリアフィルム変形機構であって、キャリアフィルムの断面形状を変形させる変形機構部を備える、請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項5】
キャリアフィルムを用いて積層成形品を積層装置の一側から搬入し、積層装置で積層成形後に積層装置の他側から搬出する積層成形方法において、
先に前記積層装置の成形位置に対して搬入側の外側近傍位置のキャリアフィルムと、前記積層装置の成形位置に対して搬出側の外側近傍位置に設けられた前記積層装置の成形位置におけるキャリアフィルムおよび積層成形品の垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構を作動させキャリアフィルムの移動を抑制した後、積層装置の真空チャンバの形成または積層装置による積層成形品の加圧成形を行う積層成形方法。
【請求項6】
前記積層成形品の1枚当たりの重量は、500gないし8kgである請求項5に記載の積層成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアフィルムを用いて積層成形品を積層装置の一側から搬入し、積層装置で積層成形後に積層装置の他側から搬出する積層成形システムおよび積層成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャリアフィルムを用いて積層成形品を積層装置の一側の入口から搬入し、積層装置で積層成形後に積層装置の他側の出口から搬出する積層成形システムおよび積層成形方法に関しては特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1は、積層装置である真空ラミネータ1と同じく積層装置である平坦化プレス機2との間には、被積層材4とフィルム状支持体5に支持された積層材(5)とが積層された製品4’を支持している連続したフィルム状の搬送体6を図1の矢印Xの方向に送るためのチャック搬送装置25が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-120100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記特許文献1については、図1に示されるように積層装置の真空積層装置の後工程にチャック搬送装置が設けられるか、図2に示されるように積層装置の平坦化プレス装置の後工程にチャック搬送装置が設けられており、積層成形品の搬送時のみにチャック装置を使用するため次のような問題がある場合があった。即ち製品の重量が軽い場合は、搬送に使用するキャリアフィルム(特に下側のキャリアフィルム)は積層成形品の重量により殆ど垂れ下がらない。しかし積層成形品の重量が重くなるにつれて積層成形品を載置した下側のキャリアフィルムが垂れ下がるという問題が出てくる。そして特に成形が開始される前の被積層材と積層材とからなる積層成形品が積層装置に搬入された後、積層装置内の成形位置で下側のキャリアフィルムの垂れ下がりにより加圧開始前に下盤側の昇温された熱板に当接してしまうと片面側からのみ先に熱伝導が促進される等の理由から不良の発生に繋がる場合が多い。
【0005】
前記問題に対応するためにキャアフィルムの張力を強くすることも考えられる。しかしキャリアフィルムの張力を強くするためには、キャリアフィルムを厚みが厚くて強度の大きいものに変更する必要がある。そのような厚みの厚いキャリアフィルムは、高価な上、厚みが厚いために成形に悪影響を及ぼす場合もあった。またキャリアフィルムの張力を強くするためには、キャリアフィルム搬送装置のモータの能力やキャリアフィルム搬送装置の強度を向上させなければならず、装置のコストアップの原因にも繋がる。そこで本発明は、積層装置におけるキャリアフィルムの垂れ下がりによる成形不良発生の問題を低減することのできる積層成形システムおよび積層成形方法を提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る、積層成形システムは、キャリアフィルムを用いて積層成形品を積層装置の一側から搬入し、積層装置で積層成形後に積層装置の他側から搬出する積層成形システムにおいて、前記積層装置の成形位置に対して搬入側の外側近傍位置と、前記積層装置の成形位置に対して搬出側の外側近傍位置には、前記積層装置の成形位置におけるキャリアフィルムおよび積層成形品の垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構が備えられる。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば積層装置におけるキャリアフィルムの垂れ下がりによる成形不良発生の問題を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の積層成形システムの概略側面図である。
図2】第1の実施形態の積層成形システムの概略平面図である。
図3】第1の実施形態の積層成形システムの真空積層装置と垂れ下がり防止機構によりキャリアフィルムの垂れ下がり防止作動中の状態を示す説明図である。
図4】第1の実施形態の積層成形システムの作動を示す説明図である。
図5】第2の実施形態の積層成形システムの概略側面図である。
図6】従来技術の積層成形システムの真空積層装置のキャリアフィルムの垂れ下がり状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態の積層成形システム11について、積層装置である真空積層装置12と第1のプレス装置13と第2のプレス装置14をその一部を断面表示した図1図2を参照して説明する。積層成形システム11は、真空積層装置12の後工程に第1のプレス装置13と第2のプレス装置14の2基のプレス装置13,14が連続して設けられている。また積層成形システム11は、真空積層装置12の前工程にキャリアフィルム搬送装置15のうちのキャリアフィルム送出装置16を備えるとともに第2のプレス装置14の後工程にキャリアフィルム巻取装置17を備えている。
【0010】
また本発明では、積層装置である真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14には、積層装置の成形位置に対して搬入側の外側近傍位置と、前記積層装置の成形位置に対して搬出側の外側近傍位置には、前記積層装置の成形位置におけるキャリアフィルムF1,F2(特に下側のキャリアフィルムF1)および積層成形品Aの垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構18、19、20が備えられている。なお前記垂れ下がり防止機構18、19,20は、最初に積層成形を行う真空積層装置12においては必須の装置であり、他の第1のプレス装置13,第2のプレス装置14では必要に応じて設けられる。更に積層成形システム11は、制御装置21を備えている。前記制御装置21は、真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14、キャリアフィルム搬送装置15のキャリアフィルム送出装置16およびキャリアフィルム巻取装置17、垂れ下がり防止機構18,19,20に接続されていて積層成形システム11全体の制御を行う。
【0011】
次に積層成形システムを構成する装置を前工程側から順に説明する。キャリアフィルム搬送装置15のキャリアフィルム送出装置16は、凹凸を備えた基板とその少なくとも一方の面に当接されるように重ねられた積層フィルムからなる積層成形品Aの移送装置とフィルムのテンション装置を兼ねている。キャリアフィルム送出装置16下部本体部22には、下側の巻出ロール23および従動ローラ24を備えている。前記巻出ロール23から巻き出された下側のキャリアフィルムF1は従動ローラ24の部分で水平状態に向きが変更される。下側のキャリアフィルムF1が水平状態となった部分に、前工程から重ねられて送られてくる基板と積層フィルムからなる積層成形品Aを載置する載置ステージ部25が設けられている。またキャリアフィルム送出装置16の上部本体部26は、上側の巻出ロール27および従動ローラ28を備えており、前記巻出ロール27から巻き出された上側のキャリアフィルムF2は従動ローラ28の部分で基板と積層フィルムA2からなる積層成形品A3の上に重ねられる。これらキャリアフィルムF1,F2に挟まれて積層成形品Aが移送される。なお本実施形態の説明においては、積層成形前の材料も積層成形中の半製品も積層成形後の完成品も全て積層成形品Aと記載している。そしてキャリアフィルムF1,F2は、真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14においてキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形が行われた際に積層フィルムが溶融して装置部分に付着することを防止する。またキャリアフィルムF1,F2の使用は、特に第1のプレス装置13と第2のプレス装置14においては積層成形品を加圧する際に一定の緩衝作用が付与されるという利点もある。
【0012】
次にキャリアフィルム送出装置16の後工程に配置される真空積層装置12について説明する。積層装置の一種である真空積層装置12は、真空状態のチャンバC内の成形位置12a(成形領域)においてダイアフラム31等の加圧体により基板と積層フィルムからなる積層成形品Aを加圧して、1次成形された積層成形品Aに積層成形するものである。真空積層装置12は、固定的に設けられた上盤32に対して下盤33が昇降機構34により昇降可能に設けられている。上盤32には外枠部35が設けられている。また下盤33にも外枠部36が設けられている。そして下盤33が上昇して下盤33の外枠部36が上盤32の外枠部35と当接した際に内部にチャンバCが形成可能となっている。そして前記外枠部35,36のうち真空積層装置12の一側にはキャリアフィルムF1,F2の間に挟まれこの積層装置で積層成形前の積層成形品Aが搬入されるための搬入口37が設けられており、反対側の真空積層装置の他側にはキャリアフィルムF1,F2の間に挟まれこの積層装置で積層成形後の積層成形品Aが搬出されるための搬出口38が設けられている。本実施形態では昇降機構34は油圧シリンダからなるが、真空積層装置12の昇降機構34に電動モータを用いて下盤33の上昇速度と、上盤32の外枠部35との接触時の速度コントロールを行うようにしてもよい。チャンバCは図示しない真空ポンプに接続され、チャンバC内の大気を吸引して真空状態とすることが可能となっている。なお本発明において真空状態とは所定値まで減圧された状態のものを指す。
【0013】
上盤32の中央の下面には図示しないヒータにより加熱される熱板39が取付けられ、熱板39の表面には耐熱性のゴム膜等の弾性体シート40が取付けられている。一方下盤33の中央の上面にも図示しないヒータにより加熱される熱板41が取付けられている。また下盤33の前記熱板41の周囲の部分には加圧体である耐熱性ゴム膜からなるダイアフラム31が熱板41の上面を覆うように取付けられている。そして図示しないコンプレッサにより加圧空気がダイアフラム31の裏面側に送られることによりダイアフラム31はチャンバC内で膨出して熱板39との間で成形位置12aにおいて積層成形品Aを加圧する。本実施形態において、膨出していない状態のダイアフラム31の表面31a(これらも含めて熱板41の表面)から下盤33側の外枠部36の上面36aまでの高さは一例としては30mm、更に好適な範囲の一例としては10mmないし50mmに設けられている。また密閉されたチャンバCが形成された際のチャンバCの高さ(上側の弾性体シート40を含む熱板39の表面40aと下側の熱板41の膨出していないダイアフラム31の表面31aの間隔)もまた、一例として10~80mmに設けられている。
【0014】
なお真空積層装置12のダイアフラム31は上盤32に取付けられ上盤32側から積層成形品Aを押圧するものでもよい。また真空積層装置12は、上下の加圧ブロックの平坦な加圧面にそれぞれゴムが貼りつけられ、いずれか一方の加圧ブロックが他方の加圧ブロックに向けて前進して成形位置において積層成形品Aを押圧するプレス装置であってもよい。またこれらの真空積層装置12において、チャンバCの形成は、下盤または上盤の移動とともに行われるもの以外に、チャンバ形成部材のみが独立して移動してチャンバCを形成するものでもよい。
【0015】
前記真空積層装置12の成形位置12aに対して一側の搬入口37の外側近傍位置と、前記真空積層装置12の成形位置12aに対して他側の搬出口38の外側近傍位置には、前記真空積層装置12内でのキャリアフィルムF1および積層成形品Aの垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構18a、18bが備えられている。なお本発明において外側近傍位置とは、外枠部35,36がある場合はその外側となり、外枠部35,36の側面に当接しない範囲で最も近い位置が望ましいが、垂れ下がり防止機構18aの搬出側縁と外枠部35,36の外縁の距離が好適には50cm以内、最も離れていて1m以内の位置を一つの基準としている。本実施形態の垂れ下がり防止機構18は、キャリアフィルムF1,F2の移動を抑制する移動抑制動抑制機構であって、一対の垂れ下がり防止機構18a,18bのセットからなる。前記垂れ下がり防止機構18のセットは、真空積層装置12とは別に積層成形システム11の本体側の構造部材43に取り付けられている。より具体的には上下のキャリアフィルムF1,F2が通過する部分の下方位置には、下側のキャリアフィルムF2に接触するか僅かに離間した位置に平板状の支持部材44が前記構造部材43に対して固定的に設けられている。支持部材44の支持面44aの高さは、チャンバ解放時の下盤33の外枠部36の上面の高さよりも高く、上盤32の外枠部35の下面35aの高さと同じかそれよりも低くなっている。また支持部材44の支持面44aは金属鏡面よりも摩擦係数が大きいものとし、キャリアフィルムF1と当接した際の摩擦力を向上させてもよい。この支持部材44には図示しないアース線を取り付けるか、または図示しない除電装置を取り付けてキャリアフィルムF1,F2または積層成形品Aが帯電して発生する静電気を除去または減少させるようにしてもよい。
【0016】
また図2および図3に示されるように、前記構造部材43のうちキャリアフィルムF1,F2が通過しない両側部分から上方に向けて柱部材45,45がそれぞれ形成され、柱部材45,45の上部はアクチュエータ取付部材46により連結されている。そして前記アクチュエータ取付部材46の上面には垂れ下がり防止機構18a、18bのアクチュエータである油圧シリンダまたはエアシリンダ等のシリンダ47が設けられている。なおアクチュエータは電動モータを駆動源とするものでもよい。そして前記シリンダ47のロッド47aには、上側のキャリアフィルムF2の上面を押圧するための押圧部材48が設けられている。押圧部材48の下面側の押圧面48aは平面状となっているが、ゴム等の弾性部材を貼り付け、キャリアフィルムF2を押圧した際の摩擦力を向上させてもよい。押圧部材48の両端は、柱部材45の内側に設けられたガイド部によりガイドされてシリンダ47等のアクチュエータの作動により支持部材44に対して昇降移動されるようになっている。本実施形態では、前記支持部材44と押圧部材48との双方から、キャリアフィルムF1,F2を挟持する挟持部49が構成される。
【0017】
なお垂れ下がり防止機構18a,18bの挟持部49は、上側に固定的な支持部材を備え、下側に設けたアクチュエータにより押圧部材が上昇されるものでもよい。またキャリアフィルムF1,F2の上下に可動式の押圧部材を設けたものでもよい。更に積層装置の一側と他側に設けられる垂れ下がり防止機構18のいずれか一方の機構は、キャリアフィルムF1,F2の移動方向に沿って水平移動されるようにしてもよい。即ち真空積層装置12の搬入口37の外側近傍に設けられた垂れ下がり防止機構18aは、キャリアフィルムF1,F2を把持後に前工程側に移動され、真空積層装置12の搬出口38の外側近傍に設けられた垂れ下がり防止機構18bは、キャリアフィルムF1,F2を把持後に後工程側に移動されるものでもよい。このことにより前記双方の垂れ下がり防止機構18a,18bにより挟まれる真空積層装置12の部分のキャリアフィルムF1,F2の張力をアップすることができる。
【0018】
図2に示されるように、本実施形態では垂れ下がり防止機構18a,18bの挟持部49の押圧部材48および支持部材44のキャリアフィルムF1,F2の幅方向の長さBはキャリアフィルムF1,F2の横幅よりも大きくなっており、キャリアフィルムF1,F2の幅方向の全体を押圧可能となっている。しかし押圧部材48により押圧される部分は、積層成形品Aが保持されないキャリアフィルムF1,F2の両側部分のみであってもよい。そのことによりキャリアフィルムF1,F2に保持される積層成形品Aが板厚の厚いものであっても、積層成形品Aが垂れ下がり防止機構18a,18bの部分を通過する際に、支持部材44と押圧部材48の間隔を小さくすることができ、両者の間を速やかに閉鎖できるようになる。
【0019】
また垂れ下がり防止機構18の挟持部49は、挟持する上下の部材うちの少なくとも一方が回転可能なローラとしてもよい。その場合も少なくとも一方のローラは、昇降機構により昇降可能として、ローラと他部材やローラ間の距離を調整可能とすることが望ましい。またローラと他部材やローラ間の距離を近接させてキャリアフィルムF1,F2を挟持した際に、ローラの回転をロックしてもよい。また垂れ下がり防止機構のローラは、駆動機構により回転可能としてもよい。その場合ローラの間の距離を近接させローラを用いてキャリアフィルムF1,F2を挟持した際に、搬入口37の外側近傍の垂れ下がり防止機構18aのローラはキャリアフィルムF1,F2を前工程側に引っ張る方向に回転駆動させ、搬出口38の外側近傍の垂れ下がり防止機構18bのローラはキャリアフィルムF1,F2を後工程側に引っ張る方向に回転駆動させて、真空積層装置12の部分のキャリアフィルムF1,F2に張力をアップさせてもよい。
【0020】
積層装置である真空積層装置12の成形位置12aに対して搬出側の外側近傍位置に設けられ、真空積層装置12の成形位置12aにおけるキャリアフィルムF1,F2および積層成形品Aの垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構18bについては、成形位置12aに対して搬入側の外側近傍位置に設けられる垂れ下がり防止機構18aと同じ機構であるので説明を省略する。ただし押圧面48aの形状は、搬入口37の外側近傍の垂れ下がり防止機構18aの押圧部材48の押圧面48aや支持部材44の支持面44aの形状は、キャリアフィルムF1,F2が積層装置側に滑って移動しにくい表面形状とし、搬出口38の外側近傍の垂れ下がり防止機構18bの押圧面48aや支持面44aはキャリアフィルムF1,F2が積層装置側に滑って移動しにくい表面形状としてもよい。
【0021】
なお上記した積層装置の搬入口37の外側近傍位置と搬出口38の外側近傍位置に設けられるキャリアフィルムF1,F2および積層成形品Aの垂れ下がりを防止する垂れ下がり防止機構18は、積層装置に直接取り付けてもよい。具体的には真空積層装置12の下盤33から一側に向けて図示しないブラケットを固定し、該ブラケットに搬入口側の垂れ下がり防止機構18aを設ける。また真空積層装置12の下盤33から他側に向けて図示しないブラケットを固定し、該ブラケットに搬入口側の垂れ下がり防止機構18bを設ける。
【0022】
次に前記真空積層装置12の後工程に直列方向に配設される第1のプレス装置13について説明する。第1のプレス装置13は、真空積層装置12で加圧成形された凹凸が残った状態の1次積層成形品(積層成形品A)を成形位置13a(成形領域)において更に加圧してより平坦な2次積層成形品(積層成形品A)に加圧成形するものである。第1のプレス装置13は、下方に設けられた略矩形のベース盤51と、前記ベース盤51の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤52の四隅近傍の間にそれぞれ立設された4本のタイバ53を備えている。そして第1のプレス装置13は、略矩形の可動盤である下盤54がベース盤51と上盤52との間で昇降移動可能となっている。また第1のプレス装置13は、サーボモータ55等の電動モータを駆動源とするものであり、ベース盤51には加圧手段のサーボモータ55が取付けられている。なお加圧手段は油圧シリンダでもよい。
【0023】
第1のプレス装置13の上盤52と下盤54の各対向面には加圧ブロック56,57がそれぞれ取付けられている。加圧ブロック56,57には、カートリッジヒータ等の温度制御手段が備えられている。加圧ブロック56,57の加圧面56a,57aの構造はそれぞれ同じであるので、一方の加圧ブロック56の加圧面56aについて説明する。加圧ブロックの56の表面にはゴム、樹脂フィルム、繊維シート等の緩衝材58が取り付られている。そして緩衝材58の前面(加圧ブロック56とは反対側)には、金属製の薄板であるプレスプレート59が取り付けられている。
【0024】
また前記第1のプレス装置13の後工程に直列方向に配設される第2のプレス装置14が配設されている。第2のプレス装置14の構成は第1のプレス装置13とほぼ同じであるのでここでは説明を省略する。
【0025】
本実施形態では、積層成形システム11の積層装置である第1のプレス装置13についても真空積層装置12の垂れ下がり防止機構18と同じ目的を有する垂れ下がり防止機構19(19aと19bのセット)が設けられている。真空積層装置12の垂れ下がり防止機構18と、第1のプレス装置13の垂れ下がり防止機構19および第2のプレス装置14についても真空積層装置12の垂れ下がり防止機構20の相違点は、後者が第1のプレス装置13内の上盤52と下盤54の間に設けられている点である。具体的には、積層成形システム11の構造部材43に固定されたブラケット61が第1のプレス装置13の上盤52と下盤54の間に向けて延設されており、ブラケット61に支持部材62が固定されている。また垂れ下がり防止機構19のシリンダ63は、上盤52の下面に取り付けられ、シリンダ63のロッドに押圧部材64が取り付けられている。この構造により、第1のプレス装置13の成形位置13aを構成する加圧ブロック56,57に最も近傍でキャリアフィルムF1等と積層成形品Aの垂れ下がりが防止できる。しかし垂れ下がり防止機構19は、成形位置13aの搬入側の外側近傍と、搬出側の外側近傍に設けられるものであればよく、第1のプレス装置13の下盤54等の外側の搬入側の近傍位置と、下盤54等の外側の搬出側の近傍位置に設けられたものでもよい。また第2のプレス装置14についても真空積層装置12の垂れ下がり防止機構18と同様の垂れ下がり防止機構20(20aと20bのセット)が設けられている。
【0026】
しかし本発明においては積層成形システム11において最初の積層成形(1次成形)を行う真空積層装置12には垂れ下がり防止機構は必須であるが、2台目以降の積層成形(2次成形や3次成形など)を行う積層装置である第1のプレス装置13と第2のプレス装置14には、前記垂れ下がり防止機構19,20は必須ではない。または前後2基の積層装置の間に設けられる垂れ下がり防止機構は一基で共用されるものであってもよい。具体的には前工程の積層装置(例えば真空積層装置12)の搬出口38の近傍位置に設けられる垂れ下がり防止機構18bと、その後工程の積層装置(例えば第1のプレス装置13)の搬入口の外側近傍位置に設けられる垂れ下がり防止機構19aは共用される一基のみとしてもよい。
【0027】
次に第2のプレス装置14の後工程に設けられるキャリアフィルム搬送装置15のキャリアフィルム巻取装置17について説明する。キャリアフィルム巻取装置17は、キャリアフィルム送出装置16と共同してキャリアフィルムF1,F2の移送とテンション調整を行う。ただしキャリアフィルム搬送装置15によるフィルムテンションは、軽量の積層成形品Aの場合にはそれのみで十分な機能を発揮するが、一例として500g以上の積層成形品Aの場合は、それのみではキャリアフィルムF1,F2(特に積層成形品Aを載置した下側のキャリアフィルムF1)が垂れ下がり気味になることがある。特に積層装置が複数台連続して設けられる積層成形システム11の場合はその傾向が大きくなる。
【0028】
キャリアフィルム巻取装置17は、下部本体部71には巻取ロール72および従動ローラ73が備えられており、前記巻取ロール72により下側のキャリアフィルムF1が巻き取られる。またキャリアフィルム巻取装置17の上部本体部74は、上側の巻取ロール75および従動ローラ76を備えており、前記従動ローラ76の部分で積層成形品Aから上側のキャリアフィルムF2が剥離され、上側のキャリアフィルムF2は前記上側の巻取ロール75に巻取られる。そして下側のキャリアフィルムF1のみが水平状態で送られる部分に積層成形品Aの搬出ステージ部77が設けられている。なお上下側のキャリアフィルムF1,F2は同じ位置で方向が変更され、別のコンベア等に移動された積層成形品Aが取り出されるものでもよい。またキャリアフィルムF1,F2の移送装置としては、キャリアフィルムF1,F2の両側を把持して後工程に向けて引っ張る移載装置(いわゆるチャック装置)を設けてもよい。
【0029】
次に積層成形システム11の制御装置21について説明する。積層成形システム11では、キャリアフィルム搬送装置15のキャリアフィルム送出装置16、真空積層装置12とその前後に設けられる垂れ下がり防止機構18、第1のプレス装置13とその前後に設けられる垂れ下がり防止機構19、第2のプレス装置14とその前後に設けられる垂れ下がり防止機構20、キャリアフィルム搬送装置15のキャリアフィルム巻取装置17は、制御装置21に接続されている。そして制御装置21はシーケンス制御部81や記憶部82等を備えており、積層成形システム11は制御装置21によりシーケンス制御がなされる。また積層成形システム11は、設定表示装置83を備えており、設定表示装置83は制御装置21に接続されている。
【0030】
なお本発明の積層成形システム11は、キャリアフィルムF1,F2を用いて積層成形品Aを順送り搬送するものであれば、少なくとも1台の積層装置を備えていればよく、第1のプレス装置13と第2のプレス装置14の両方または、第2のプレス装置14は設けないものでもよい。ただし1台の真空積層装置12のみを備えた積層成形システムよりも、真空積層装置12と第1のプレス装置13を備えた積層成形システムや、真空積層装置12と第1のプレス装置13と第2のプレス装置14を備えた積層成形システムの場合、巻出ロール23,27から巻取ロール72,75までのキャリアフィルムF1,F2の長さ(送り量)が長くなるので、キャリアフィルム搬送装置15のみではキャリアフィルムF1,F2に有効なテンションがかけにくくなり、本発明の垂れ下がり防止機構18,19,20が有効となる。なお本発明においてキャリアフィルムは、少なくとも積層成形品Aを載置して搬送する下側のキャリアフィルムF1を備えていればよく、上側のキャリアフィルムF2が無い場合は、それぞれの積層成形品Aに対してカバーフィルムが重ねられて積層成形が行われる。
【0031】
次に第1の実施形態の積層成形システム11を用いた、積層成形品の積層成形方法について図4の作動説明図を用いて垂れ下がり防止機構の作用を中心に説明する。連続成形時の積層成形システム11では、制御装置21のシーケンス制御により、ダイアフラム式の真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14において同時にバッチ処理的に積層成形が行われる。しかしここでは1バッチ分の被積層材である基板と積層フィルムからなる積層成形品Aの成形順序に沿って説明する。
【0032】
積層成形システム11のキャリアフィルム送出装置16の巻出ロール23,27にセットされるキャリアフィルムF1,F2は上下とも一般的なキャリアフィルムF1,F2であり、材質はこれに限定されるものではないが、テレフタレンテレフタレートか、テレフタレンテレフタレートを主成分とするものである。またその厚みもこれに限定されるものではないが、25μmのものが主流であり他には10μmから100μm程度のものが使用される。また巻出ロール23,27と巻取ロール72,75の間でテンションを掛けて張られたキャリアフィルムF1,F2の張力は、一例として60Nであり、好ましい範囲としては20Nないし160N程度で使用される。前記下限値よりも張力が低い場合、キャリアフィルムF1,F2および積層成形品Aの移動時および積層装置で待機時に特に下側のキャリアフィルムF1が垂れ下がってしまう。また前記のキャリアフィルムF1,F2の張力が上限値よりも高い場合、上記したような一般的なキャリアフィルムF1,F2では強度不足のため、キャリアフィルムに縦方向に皺が発生したり、巻出ロール23,27が駆動軸のみが回転するスリップを起こすなどの問題が発生する可能性がある。
【0033】
本発明においてキャリアフィルムF1が垂れ下がりとは、積層成形品Aの重量により下側のキャリアフィルムF1が上側のキャリアフィルムF2とは密着していない状態となることであり、その部分のフィルムの長さは、下側のキャリアフィルムF1よりも上側のキャリアフィルムF2よりも長く伸びた状態となる。そして下側のキャリアフィルムF1の垂れ下がりが顕著となると、いずれかの積層装置に下側のキャリアフィルムF1に載置した積層成形品Aを移動させた際に、下側のキャリアフィルムF1の下面と、積層装置の熱板等の加圧面が当接してしまう。本発明では上記のキャリアフィルムF1の垂れ下がり状態を抑制することができるので、上記した熱板とキャリアフィルムF1を介した熱板の当接による成形不良以外に、チャンバCの真空吸引時にキャリアフィルムF1がバタついて積層成形品Aの位置ずれが発生することも抑制することができる場合がある。
【0034】
また積層成形品Aについては、一般的にはビルドアップ基板を含む凹凸を備えた回路基板と絶縁フィルムの組み合わせ、または凹凸を備えた回路基板とレジストフィルムの場合が多いが、前記には限定されない。本発明の垂れ下がり防止機構18,19,20を必要とする積層成形品Aのサイズは、これに限定されるものではないが、厚みが0.1mmないし20mm、更には0.5mmないし10mm程度のものである。また積層成形品が1個取り成形の場合の1枚の重量(質量)も、これに限定されるものではないが、500gないし8kgである。更に積層成形品が複数個取り成形の場合は、それらの複数の積層成形品の総重量が前記の範囲となる。前記したような重量の積層成形品の場合、特殊なキャリアフィルムを使用せず、上記したような一般的なキャリアフィルムF1,F2により搬送すると特に下側のキャリアフィルムF1が積層成形品Aの重量により下方に向けて垂れ下がりやすいという問題がある。また特に真空積層装置12等の積層装置の熱板間の成形位置にキャリアフィルムF1,F2と積層成形品Aが搬入されると、一例として50℃ないし200℃に昇温された熱板等からの熱の影響によりキャリアフィルムF1,F2がより一層変形や伸びが発生して垂れ下がりやすくなる。
【0035】
図4の積層成形システム11の作動を示す説明図に沿って積層成形システム11と特に垂れ下がり防止機構18等の作動について説明する。積層成形システム11は連続して工程が繰り返されるものであるが、ここでは垂れ下がり防止機構18等の作動を中心に説明するため最初にフィルム搬送工程Paから説明を行う。載置ステージ部25に新たに積層成形を行う積層成形品Aが載置され、真空積層装置12等において積層成形が終了してチャンバC等が開放されると、キャリアフィルム巻取装置17の巻取ロール72,75が回転駆動されてキャリアフィルムF1,F2と積層製品Aが図1の右側(一側)から左側(他側)に向けて移動させる。そして成形前の積層成形品Aは真空積層装置12の成形位置12aへ移動され、真空積層装置12で成形された積層成形品Aは第1のプレス装置13の成形位置13aへ移動される。また第1のプレス装置13で成形された積層成形品Aは第2のプレス装置14の成形位置14a(成形領域)へ移動され、第2のプレス装置14で成形された積層成形品Aは搬出ステージ部77へ移動される。そしてキャリアフィルムF1,F2は、キャリアフィルム搬送装置15により張力を発生させた状態で停止される。
【0036】
前記のキャリアフィルムF1,F2が積層成形品Aと共に移動する際、垂れ下がり防止機構18、19,20は、押圧部材48等が上昇位置(開位置)で停止さ、開放されている。この垂れ下がり防止機構18が開位置にある際の、支持部材44と押圧部材48の間隔は、積層成形品Aの厚みと上下のキャリアフィルムF1,F2の厚みを加えたものよりも大きく設ける必要があり、これに限定されるものではないが、一例として積層成形品Aの厚みプラス1mmないし15mmに設定される。この際に垂れ下がり防止機構18a,18bの支持部材44の支持面44aを下側のキャリアフィルムF1の下面が当接されながら擦動されるようにすれば、移動中もキャリアフィルムF1と積層成形品Aの垂れ下がりを防止することができる。
【0037】
また真空積層装置12の一側の搬入側にはキャリアフィルムF1,F2とともに積層成形前の積層成形品Aを通過させるための搬入口が設けられている。更に真空積層装置12の他側の搬出側にはキャリアフィルムF1,F2とともに積層成形後の積層成形品Aを通過させるための搬出口38が形成されている、前記搬入口37と搬出口38の開口間隔(外枠部35,36の間隔)は、積層成形品の厚みとキャリアフィルムの厚みを加えたものよりも大きく設ける必要があり、これに限定されるものではないが、積層成形品Aの厚みプラス10mmないし25mmに設定される。真空積層装置12の前記開口間隔を、垂れ下がり防止機構18の支持部材44と押圧部材48の間隔よりも広く設けるのは以下の理由である。即ち、真空積層装置12への積層成形品Aの搬入時や真空積層装置12からの搬出時に、積層成形品AがキャリアフィルムF1,F2を介して上盤32の外枠部35や下盤33の外枠部36(いずれもシール部などを含む)に当接してしまうと、これら部分は比較的高熱の金属部や硬質ゴム部であり、積層成形品Aのフィルムがずれたり溶融状態の樹脂に損傷が発生する可能性がある。また真空積層装置12の成形位置12aに搬入後の積層成形品AがキャリアフィルムF1,F2を介して真空積層装置12の各部に意図せずに当接することを抑制するためである。
【0038】
次にチャンバ閉鎖工程Pbでは、前回の積層成形後に下降している真空積層装置12の下盤33を上昇させて真空積層装置12の一側の搬入側の搬入口37と他側の搬出側の搬出口38の閉鎖を行う。また第1のプレス装置13、第2のプレス装置14においても可動盤である下盤54を上昇させて型閉を行う。しかし真空積層装置12の搬入口37や搬出口38の開口間隔は前記のように比較的大きく、また真空積層装置12等の積層装置の上盤32等に対する下盤33の上昇時には、他方の盤や積層成形品Aに大きな衝撃を与えられないので、下盤33の上昇速度は特に後半においては遅くせざるを得ない。そのためチャンバ閉鎖工程Pbにおいて真空積層装置12の下盤33を上昇させて前記搬入口37と前記搬出口38の閉鎖を行うためには一定以上の時間を要する。一方垂れ下がり防止機構18の押圧部材48は、押圧面48aにゴムを備え、支持部材44との間でキャリアフィルムF1,F2を挟み込むだけであるので、移動速度を比較的高速にできる。
【0039】
そのため本実施形態では、キャリアフィルム搬送装置15の停止(積層成形品Aの移動の完了)と同時か僅か前後に、真空積層装置12の搬入側の外側近傍位置と搬出側の外側近傍位置にそれぞれ取り付けられている垂れ下がり防止機構18a、18bを閉作動させる。具体的には、真空積層装置12の垂れ下がり防止機構18のシリンダ47を作動させて押圧部材48等を下降させ、支持部材44との間でキャリアフィルムF1,F2を挟持し、キャリアフィルムF1,F2の移動を阻止する。この際に並行して真空積層装置12の下盤33や、第1のプレス装置13や第2のプレス装置14の加圧ブロック57も上昇されるが、それらが上盤側の部材や下側のキャリアフィルムF1と当接されるよりも前に、押圧部材48と支持部材44の間でキャリアフィルムF1,F2が挟持されるようにする。そしてチャンバ閉鎖工程Pbの前半のうちに垂れ下がり防止機構18等によるキャリアフィルムF1,F2の移動阻止は完了し、チャンバ閉鎖工程Pbの後半は下盤33等のみが上昇され、下盤33の外枠部36と上盤32の外枠部35が当接されるとチャンバCが形成される。
【0040】
図3は、垂れ下がり防止機構18の押圧部材48が作動されてキャリアフィルムF1,F2の挟持が行われ、キャリアフィルムF1,F2と積層成形品Aの垂れ下がり防止作動が行われた状態を示している。少なくともチャンバCが形成されるまでは、下盤33側の熱板41に密着している状態のダイアフラム31の表面31aと下側のキャリアフィルムF1の表面の間の空間を保ち、両者が直接当接しないので、熱板41の熱が下側のキャリアフィルムF1を介して積層成形品Aにダイレクトに伝わることは抑制される。一方、図6に示される従来技術では、真空積層装置91は垂れ下がり防止機構を備えていないので、1回の成形における積層成形品Aの重量が一例として500gを超えるような場合に下側のキャリアフィルムF1が支承用ローラ93、94よりも積層装置側の内側部分において垂れ下がってしまい、下側のキャリアフィルムF1の下面と前記ダイアフラム92の表面92aが積層成形前(特に真空チャンバ形成前)に当接される可能性があった。そして特にはこれに限定されるものではないが、積層装置における1回の成形時の積層成形品Aの重量が1kgを超えるような場合には、特にキャリアフィルムF1,F2垂れ下がりの傾向が問題となり対策が必要となる場合が多い。
【0041】
なおこの際にキャリアフィルムF1.F2により搬送される積層成形品Aが垂れ下がり防止機構18,19,20の部分を通過したことを光電管や近接スイッチ等により検出し、通過後すぐに垂れ下がり防止機構18,19,20のアクチュエータを作動させてもよい。そうすることにより積層成形品Aが積層装置の成形位置に到達することとほぼ同時か僅かに遅れてキャリアフィルムF1,F2を押圧および挟持することができ、キャリアフィルムF1,F2の移動や滑りによる垂れ下がりをより一層防止することができる。
【0042】
そして垂れ下がり防止機構18による垂れ下がり防止が行われた後のチャンバ閉鎖工程Pbでは、真空積層装置12等の下盤33等の上昇によるチャンバ閉鎖だけが継続して行われる。そして真空積層装置12において、下盤33の外枠部36の上面36aと上盤32の外枠部35の下面35aがキャリアフィルムF1,F2を介して当接されると下盤33の上昇は終了され、再び次の積層成形工程Pcが行なわれる。積層成形工程Pcでは、真空積層装置12の閉鎖されたチャンバCは真空吸引され、ダイアフラム31を加圧空気で膨出させることにより、積層成形品Aの積層成形が行われる。また第1のプレス装置13と第2のプレス装置14においても、加圧ブロック56と加圧ブロック57の間で積層成形が行われる。
【0043】
積層成形工程Pcが完了すると真空積層装置12のチャンバCは大気開放され、次にチャンバ開放工程Pdに移行する。チャンバ開放工程Pdでは、昇降機構34により下盤33が下降されるが、この際にはまだ垂れ下がり防止機構18等はキャリアフィルムF1,F2を挟持した状態を継続している。そして下盤33が完全に下降されるか、下降途中でも搬入口37と搬出口38がキャリアフィルムF1,F2と積層成形品Aを通過可能な開口間隔となった時点で、垂れ下がり防止機構18等を開作動させて、キャリアフィルムF1,F2の挟持を中止する。具体的には垂れ下がり防止機構18のシリンダ47を作動させて押圧部材48を上昇させる。
【0044】
垂れ下がり防止機構18等によるキャリアフィルムF1,F2の挟持が終了するのと同時か僅かに遅れて、キャリアフィルム搬送装置15の巻取ロール72,75を駆動させ、最初に記載したフィルム搬送工程Paを行う。このように本実施形態では、キャリアフィルムF1,F2の移動時以外は、移動抑制動抑制機構でもある垂れ下がり防止機構18等によりキャリアフィルムF1,F2を挟持し、キャリアフィルムF1,F2の移動を抑制(完全に移動停止している状態も含む)しているので、特に所定以上の重さを有する積層成形品Aを載置した下側のキャリアフィルムF1が積層装置の成形位置において垂れ下がり、早い段階から下側の成形部材に当接してしまうことを防止することができる。なお垂れ下がり防止機構18等によるキャリアフィルムF1,F2の挟持は、積層成形工程Pcの間は中止するようにしてもよい。
【0045】
次に第2の実施形態の積層成形システム101について図5を参照して説明する。第2の実施形態の積層成形システム101は、第1の実施形態の積層成形システム11とキャリアフィルム搬送装置15、真空積層装置12、第1のプレス装置13、第2のプレス装置14の構造は同じであり、垂れ下がり防止機構102、103,104について相違しているので、前記部分は同一符号で表し、相違点のみ説明を行う。
【0046】
第2の実施形態の積層成形システム101では、キャリアフィルムF1,F2の移動を抑制する移動抑制動抑制機構であって、従動ローラ24,73間で移動される下側のキャリアフィルムF1の下面に沿って表面に多孔質材107を備えたブロック(以下多孔質ブロック105と称する)を備えている。
【0047】
載置ステージ部25から下側のキャリアフィルムF1の搬送路の下方の多孔質ブロック105は、アースまたは除電装置に接続され、静電気を除去する。また多孔質ブロック105自体に冷却装置を備え、前記吸引通路から多孔質材107の内部を通じて冷却エアを供給して冷却を行うものでもよい。真空積層装置12の成形位置12aに対して搬入側の外側近傍位置と、前記真空積層装置12の成形位置12aに対して搬出側の外側近傍位置には垂れ下がり防止機構102の多孔質ブロック105a、105bがそれぞれ設けられている。これらの多孔質ブロック105は、積層成形システム101の本体部106に固定されてもよく、真空積層装置12等の積層装置にブラケット等を介して直接取りつけられるものでもよい。そして前記多孔質ブロックの多孔質材107の部分の裏面側は、図示しない吸引通路に接続されており、吸引通路は図示しない負圧発生装置に接続されている。または必要に応じて吸引通路は図示しない空圧源にも接続されている。
【0048】
また第1のプレス装置13の成形位置13aに対して搬入側の外側近傍位置と、前記第1のプレス装置13の成形位置13aに対して搬出側の外側近傍位置には垂れ下がり防止機構103の吸着部である多孔質ブロック105c、105dがそれぞれ設けられている。更に第2のプレス装置14の成形位置14aに対して搬入側の外側近傍位置と、前記第2のプレス装置14の成形位置14aに対して搬出側の外側近傍位置には垂れ下がり防止機構104の多孔質ブロック105e、105fがそれぞれ設けられている。第1のプレス装置13における「成形位置13aに対して搬入側の外側近傍位置」とは、加圧ブロック56,57の側面に当接していない範囲で最も近い位置に設けることが考えられるが、第1のプレス装置13の下盤54や上盤52の側面よりも外側であってもよい。前記外側に垂れ下がり防止機構19を設ける場合、垂れ下がり防止機構19の中心と前記下盤54や上盤52の側面との距離が、好適には50cm以内に設けることを一つの基準としている。また第2のプレス装置14の垂れ下がり防止機構20も同様の位置に設けられる。なお真空積層装置12の垂れ下がり防止機構102は必須であるが、第1のプレス装置13と第2のプレス装置14の垂れ下がり防止機構103,104は場合によっては省略してもよい。
【0049】
更には最後の積層装置からの搬出側の搬送路や搬出ステージ部77の下側のキャリアフィルムF1の下方にも多孔質ブロック105を設けてもよい。その場合は、前工程と同様に多孔質ブロックにより静電気の除去を行うようにしてもよい。また図示しない空圧源と多孔質ブロック105をエア配管により接続し、エア噴出により離型の促進や冷却の促進を図るようにしてもよい。なお多孔質ブロック105の多孔質材107の材質についてはこれに限定されるものではないが、ポーラスカーボンなどを用いてもよい。ポーラスカーボンを用いることにより、カーボン特性によりキャリアフィルムF1,F2の帯電を除去できる効果が期待できる。
【0050】
図5に示される第2の実施形態の積層成形システム101では、キャリアフィルムF1,F2を移動後に、垂れ下がり防止機構102の多孔質ブロック105a、105bを介して下側のキャリアフィルムF1を吸引することにより、真空積層装置12の成形位置12aにおける下側のキャリアフィルムF1と積層成形品Aの垂れ下がりを防止する。また同様に垂れ下がり防止機構103の多孔質ブロック105c、105dを介して下側のキャリアフィルムF1を吸引することにより、第1のプレス装置13の成形位置13aにおける下側のキャリアフィルムF1と積層成形品Aの垂れ下がりを防止し、垂れ下がり防止機構104の多孔質ブロック105e、105fを介して下側のキャリアフィルムF1を吸引することにより、第2のプレス装置14の成形位置14aにおける下側のキャリアフィルムF1と積層成形品Aの垂れ下がりを防止する。また前記においてキャリアフィルムF1,F2の吸着を解除後にその状態でキャリアフィルムF1,F2を移動させるか、または多孔質ブロック105a、105b等からエアを噴出させてキャリアフィルムF1,F2の密着状態を終了させた後にキャリアフィルムF1,F2を移動させる。なお下側のキャリアフィルムF1を吸着するものは、多孔質ブロック105以外に、ゴム吸盤などでもよく、上側のキャリアフィルムF2側に支持部材を設け、支持部材との間で吸着を行うようにしてもよい。
【0051】
次に第3の実施形態の積層成形システムとその垂れ下がり防止機構について説明する。第3の実施形態の垂れ下がり防止機構は、キャリアフィルムを変形させるキャリアフィルム変形機構であって、キャリアフィルムの断面形状を変形させる変形機構部を備えている。
例えば積層装置の搬入口側の垂れ下がり防止機構は、キャリアフィルムに熱と圧力を加えて変形させる。一例としては積層成形品が載置されていないキャリアフィルムの両側の端部を、連続して、或いは一定距離にわたって上方や下方に折り返すことにより、キャリアフィルムを断面コ状とするものでもよい。その場合平面状のキャリアフィルムよりも重量物を載置しても垂れ下がりにくくなる。またキャリアフィルムの少なくとも一部に、熱または押圧力により、凸状、釣鐘状、涙状の変形を伴わせてもよい。この場合は、積層成形品に当接されているキャリアフィルム以外の部分に上記の変形を行うことにより、キャリアフィルムを撓んだり垂れ下がりにくくすることができる。或いはキャリアフィルム上の積層成形品の位置ずれを防止する効果も期待できる。
【0052】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した第1の実施形態ないし第3の実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや第1の実施形態ないし第3の実施形態の各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0053】
11,101 積層成形システム
12 真空積層装置
12a,13a,14a 成形位置
13 第1のプレス装置
14 第2のプレス装置
15 キャリアフィルム搬送装置
18,18a,18b,19,20 垂れ下がり防止機構
37 搬入口
38 搬出口
49 挟持部
21 制御装置
A 積層成形品
F1,F2 キャリアフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6