(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136032
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230922BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20230922BHJP
F25B 41/20 20210101ALI20230922BHJP
【FI】
F25B1/00 385Z
F25B1/00 101Z
F25B43/00 L
F25B41/20 Z
F25B1/00 396B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041431
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣崎 佑
(57)【要約】
【課題】非共沸混合冷媒を用いた空気調和機において、蒸発器への着霜を抑えることができる空気調和機を提供する。
【解決手段】圧縮機12、室内熱交換器7、膨張弁14及び室外熱交換器13を順次接続して、非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路2を備えた空気調和機1において、室内熱交換器7の流出側と室外熱交換器13の流入側とを接続する液側配管16に並列に接続されたバイパス路17と、バイパス路17に設けられたレシーバ22と、レシーバ22へ流入する冷媒量を調整する第1流量調整弁20、第2流量調整弁21と、膨張弁14および第1流量調整弁20、第2流量調整弁21を制御する制御部3と、を有し、制御部3は、冷媒入口温度に基づき第1流量調整弁20、第2流量調整弁21を制御して、室外熱交換器13に流入する液冷媒の量を調整する空気調和機。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を順次接続して、冷媒として非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置において、
前記凝縮器の流出側と前記蒸発器の流入側とを接続する液側配管に並列に接続されたバイパス路と、
前記バイパス路に設けられた冷媒貯留手段と、
前記冷媒貯留手段へ流入する冷媒量を調整する流量調整手段と、
前記蒸発器に流入する冷媒の温度である冷媒入口温度を検出する入口温度検出手段と、
前記減圧手段および前記流量調整手段を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記蒸発器の冷媒入口温度に基づき前記流量調整手段を制御して、前記蒸発器に流入する気液二相冷媒の量を調整することを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記液側配管における前記バイパス路が分岐する分岐部と前記バイパス路が合流する合流部との間に設けられ、
前記流量調整手段は、前記バイパス路における前記冷媒貯留手段の上流側に設けられて開度を調整できる第1流量調整弁および前記バイパス路における前記冷媒貯留手段の下流側に設けられて開度を調整できる第2流量調整弁を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁が閉じた状態で、前記蒸発器の冷媒入口温度が所定値以下になった場合に、前記第1流量調整弁を開とし前記第2流量調整弁は閉じた状態を維持する、もしくは、前記第2流量調整弁を開とし前記第1流量調整弁の開度を前記第2流量調整弁の開度より大きくすることを特徴とする請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記凝縮器の出口側冷媒の乾き度が所定値を超える場合は、前記第1流量調整弁を閉とし前記第2流量調整弁を開とする、もしくは、前記第1流量調整弁を開とし前記第1流量調整弁の開度を前記第2流量調整弁の開度より小さくすることを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記減圧手段は、前記液側配管において前記バイパス路が分岐する分岐部よりも上流側に設けられ、
前記流量調整手段は、前記液側配管において前記バイパス路が分岐する前記分岐部もしくは前記バイパス路が合流する合流部に設けられる三方弁であり、
前記冷媒貯留手段は気液分離機能を有することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記蒸発器の冷媒入口温度が所定値以下になった場合に、前記三方弁を前記バイパス路側に切換えることを特徴とする請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置であって、特に非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題に鑑み、地球環境に悪影響を与えない冷媒を冷凍サイクル装置の作動流体として用いることが望まれている。当該冷媒の候補として非共沸混合冷媒が検討されており、特許文献1には、冷媒として非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置として空気調和機が示されている。この非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置は、単一冷媒を利用する冷凍サイクル装置と同様に、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が順に接続された冷媒回路を備えている。この非共沸混合冷媒を用いた冷媒回路を利用する空気調和機が暖房運転を行う場合、凝縮器が室内の利用側熱交換器となり、蒸発器が室外の熱源側熱交換器となる。圧縮機から吐出された冷媒は、利用側熱交換器で室内空気と熱交換を行って凝縮し、膨張弁で減圧され、熱源側熱交換器で室外空気と熱交換を行って蒸発した後、圧縮機に吸入される。従来の単一冷媒を用いた冷凍サイクル装置を利用する空気調和機においては、利用側熱交換器内で冷媒の凝縮温度および熱源側熱交換器内での蒸発温度は一定となる。一方、非共沸混合冷媒の場合は、その性質から、利用側熱交換器内で冷媒が凝縮する際に、また、熱源側熱交換器内で冷媒が蒸発する際に、冷媒の温度が変化するという特性を有している。つまり、利用側熱交換器内および熱源側熱交換器内で冷媒温度が一定とはならず、温度勾配が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、特許文献1に示す空気調和機において暖房運転を行う場合、蒸発器として機能する熱源側熱交換器の冷媒入口温度が冷媒出口温度より低くなる。熱源側熱交換器での冷媒と室外空気との熱交換量は冷媒温度と室外空気温度との温度差に依存する。暖房能力を向上させるため、熱源側熱交換器の冷媒出口側でも当該温度差を十分に大きくするため冷媒出口温度が低くなるように膨張弁の開度を制御すると、冷媒入口温度は過度に低下する。そのため、例えば、空気調和機の暖房運転時において、冬場等の外気温度が低い場合には、この熱源側熱交換器の冷媒入口部分で着霜が起こりやすくなるという課題がある。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置において、蒸発器への着霜を抑えることができる冷凍サイクル装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、圧縮機、凝縮器、減圧手段及び蒸発器を順次接続して、冷媒として非共沸混合冷媒が循環する冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置において、凝縮器の流出側と蒸発器の流入側とを接続する液側配管に並列に接続されたバイパス路と、バイパス路に設けられた冷媒貯留手段と、冷媒貯留手段へ流入する冷媒量を調整する流量調整手段と、蒸発器に流入する冷媒の温度である冷媒入口温度を検出する入口温度検出手段と、減圧手段および流量調整手段を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、蒸発器の冷媒入口温度に基づき流量調整手段を制御して、蒸発器に流入する気液二相冷媒の量を調整する冷凍サイクル装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置において、蒸発器への着霜を抑えることができる冷凍サイクル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気調和装置の冷凍回路図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気調和装置において冷媒貯留手段に冷媒が貯留していない状態のモリエル線図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る空気調和装置の制御フロー図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る空気調和装置において冷媒貯留手段の状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る空気調和装置において冷媒貯留手段に冷媒が貯留した状態のモリエル線図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る空気調和装置の冷凍回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る冷凍サイクル装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
本発明に係る冷凍サイクル装置の実施形態である空気調和機1について説明する。
図1は、本実施形態の空気調和機1の冷凍回路図である。
図2は、本実施形態の空気調和機1において後述するレシーバ22に冷媒が貯留していない状態のモリエル線図である。
【実施例0011】
図1を参照して、本実施形態である空気調和機1について説明する。
図1は本実施形態における空気調和機1の冷媒回路図を示す。空気調和機1は、冷媒回路2と制御部3を備え、冷房運転と暖房運転が可能である。冷媒回路2は、冷媒として非共沸混合冷媒が循環する。非共沸混合冷媒は、例えば、R32とR1234yfの混合冷媒である。冷媒回路2は、室外に配置される室外機11と室内に配置される室内機5を備えている。室外機11は、冷媒配管4で接続された圧縮機12、四方弁15、室外熱交換器13、減圧手段としての膨張弁14を備え、室内機5は、冷媒配管4で接続された室内熱交換器7を備えている。室内熱交換器7と室外熱交換器13を接続する冷媒配管4には後述するバイパス路17が並列に接続されている。室外機11は、室外熱交換器13に外気を送るための図示しない送風機を備え、室内機5は、室内熱交換器7に室内の空気を送るための図示しない室内ファンを備えている。四方弁15は圧縮機12の吐出側に接続され、冷房運転時と暖房運転時とで冷媒回路2を循環する冷媒の流れる向きを変える切換弁である。冷房運転時には、圧縮機12から吐出された冷媒が四方弁15を介して、室外熱交換器13、膨張弁14、室内熱交換器7、四方弁15、圧縮機12の吸入側へと流れる。暖房運転時には、圧縮機12から吐出された冷媒が四方弁15を介して、室内熱交換器7、膨張弁14、室外熱交換器13、四方弁15、圧縮機12の吸入側へと流れる。
【0012】
暖房運転時の冷媒回路2における冷媒の流れを説明する。
図1において実線で示す矢印は暖房運転の場合の冷媒の流れを示す。暖房運転時において、圧縮機12で圧縮されて高温高圧になったガス冷媒は四方弁15を介して室内熱交換器7を流れる。室内熱交換器7を流れる高温高圧のガス冷媒は、室内ファンによって送風された室内の空気と熱交換することによって放熱して凝縮し高温高圧の液冷媒になる。高温高圧のガス冷媒と熱交換をした室内の空気は暖められる。室内熱交換器7を通過して放熱した液冷媒は、膨張弁14によって減圧され低温低圧の気液二相冷媒になる。低温低圧の気液二相冷媒は室外熱交換器13を流れ、室外熱交換器13を通過する際に送風機によって送風された外気と熱交換し、外気の熱を吸熱することにより蒸発し低温低圧のガス冷媒になる。吸熱したガス冷媒は四方弁15を介して圧縮機12に戻り、再び、高温高圧に圧縮される。
【0013】
冷房運転時の冷媒回路2における冷媒の流れを説明する。冷房運転時の冷媒の流れは、暖房運転の場合の逆である。
図1において破線で示す矢印は冷房運転の場合の冷媒の流れを示す。冷房運転時において、圧縮機12で圧縮されて高温高圧になったガス冷媒は四方弁15を介して室外熱交換器13を流れる。室外熱交換器13を流れる高温高圧のガス冷媒は、室外ファンによって送風された外気と熱交換することによって放熱して凝縮し高温高圧の液冷媒になる。室外熱交換器13を通過して放熱した液冷媒は、膨張弁14によって減圧され低温低圧の気液二相冷媒になる。低温低圧の気液二相冷媒は室内熱交換器7を流れ、室内熱交換器7を通過する際に送風機によって送風された室内の空気と熱交換し、室内の空気の熱を吸熱することにより蒸発し低温低圧のガス冷媒になる。気液二相冷媒が蒸発する際に室内の空気から熱を奪い室内の空気は冷やされる。室内の空気から吸熱したガス冷媒は四方弁15を介して圧縮機12に戻り、再び、高温高圧に圧縮される。
【0014】
暖房運転の場合、室内熱交換器7は凝縮器として機能し、室外熱交換器13は蒸発器として機能する。冷房運転の場合、室外熱交換器13は凝縮器として機能し、室内熱交換器7は蒸発器として機能する。膨張弁14を介して室内熱交換器7と室外熱交換器13を接続する冷媒配管4は、凝縮した後の液冷媒が流れるため、室内熱交換器7と室外熱交換器13を接続する冷媒配管4を本実施形態では液側配管16とする。
【0015】
次に、本実施形態における冷媒回路2の特徴的な構成について説明する。室内熱交換器7と室外熱交換器13とを接続する液側配管16には並列にバイパス路17が接続されている。バイパス路17は、室内熱交換器7側の第1分岐部18で液側配管16と接続され、室外熱交換器13側の第2分岐部19で液側配管16と接続される。膨張弁14は、液側配管16の第1分岐部18第2分岐部19との間に配置される。バイパス路17には冷媒を貯留するためのレシーバ22(冷媒貯留手段)が接続されている。バイパス路17の第1分岐部18とレシーバ22との間には、バイパス路17を流れる冷媒の流量を調整する第1流量調整弁20が設けられている。第1流量調整弁20は膨張弁としても機能することができる。バイパス路17の第2分岐部19とレシーバ22との間には、バイパス路17の開度を調整する第2流量調整弁21が設けられている。第1流量調整弁20および第2流量調整弁21が、レシーバ22へ流入する冷媒量を調整する流量調整手段となる。尚、第2流量調整弁21は膨張弁としても機能することができる。液側配管16の室外熱交換器13側には、室外熱交換器13に流入する冷媒入口温度を検出する入口温度センサ25が配置されている。入口温度センサ25は本発明における入口温度検出手段である。本実施形態では、暖房運転時に、冷媒回路2において、圧縮機12、四方弁15、室内熱交換器7、液側配管16における膨張弁14、室外熱交換器13、四方弁15、圧縮機12で構成される回路をメイン回路8とする。
【0016】
次に
図2のモリエル線図を参照して、冷媒回路2における冷媒の状態を説明する。
図2のモリエル線図は暖房運転時のモリエル線図である。
図2に示したイ~ニの記号は、次の状態を示す。イは、室外熱交換器13を通過して圧縮機12に吸入される前の冷媒の状態である。ロは圧縮機12によって圧縮され室内熱交換器7に流入する前の冷媒の状態である。ハは、室内熱交換器7を通過して凝縮して膨張弁14を通過する前の冷媒の状態である。ニは、膨張弁14を通過して室外熱交換器13に流入する前の冷媒の状態である。破線は等温線であり、下側の破線は0℃を示し、上側の破線は外気温である10℃を示す。
【0017】
本実施形態の空気調和機1の用いられる冷媒回路2は、冷媒として非共沸混合冷媒が循環する。そのため、単一冷媒では飽和域内において、圧力が一定であれば温度も一定となるが、非共沸混合冷媒では飽和域内においても、
図2の破線で示されるような等温線となり、飽和域内で圧力が一定であっても温度は変化する。暖房運転を開始すると、
図2に示すように、膨張弁14を通過して室外熱交換器13に流入する前の冷媒の温度は0℃よりも低い-2℃の状態となっている。また、室外熱交換器13を通過する冷媒の温度は6℃であり外気温10℃との差は4℃である。この状態のままで暖房運転を続けると室外熱交換器13の冷媒入口部分で着霜が起こりやすくなる。室外熱交換器13の冷媒入口部分での着霜を回避するために、膨張弁14の開度が大きくなるように制御すると、室外熱交換器13に流入する前の冷媒温度を上げることができるが、その場合、室外熱交換器13を通過する冷媒の温度も上がってしまい、外気温との温度差を十分につけることができない。暖房能力を向上させるためには、室外熱交換器13の冷媒出口側でも冷媒温度と外気温との温度差を大きくする必要がある。そこで、本実施形態では、制御部3が次に示す制御を行う。
【0018】
図3は、制御フロー図である。まず、暖房運転開始時の初期状態として、第1流量調整弁20と第2流量調整弁21は閉じている(ST1)。そのため、暖房運転時には凝縮器として機能する室内熱交換器7を通過した冷媒は全て膨張弁14を通過し、膨張弁14を通過し低温低圧となった冷媒は蒸発器として機能する室外熱交換器13に流入する。暖房運転開始時の初期状態から暖房運転を続けていると、室外熱交換器13に流入する冷媒の温度は、
図2に示すように-2℃の状態となる。次に、入口温度センサ25に基づき、室外熱交換器13に流入する直前の冷媒の温度(入り口温度)を検出し、入り口温度が所定値より高いかどうかを判断する(ST2)。本実施形態では、所定値は-1℃(マイナス1℃)である。所定値を-1℃としたのは、-1℃で冷媒が室外熱交換器13に流入し続けると、室外熱交換器13の流入口側で着霜が生じる可能性が高いからである。室外熱交換器13に流入する冷媒の温度は-2℃の状態となっているため、入り口温度は所定値の-1℃以下である。
【0019】
次に、入り口温度が所定値の-1℃以下になると(ST2におけるNo)、制御部3は第1流量調整弁20および第2流量調整弁21を開いて、メイン回路8を循環する冷媒量を調整して、室外熱交換器13に流入する冷媒量を調整する冷媒量調整制御を行う(ST3)。このとき、第1流量調整弁20の開度は第2流量調整弁21の開度より大きくする。これにより、室内熱交換器7を通過して液側配管16を流れていた冷媒は、バイパス路17に流入してレシーバ22に溜まるため、メイン回路8を循環する冷媒量が減少する。メイン回路8を循環する冷媒量が減少すると、室内熱交換器7における冷媒圧力が低下し凝縮温度が低下する。凝縮温度が低下すると、室内の空気の温度差が小さくなるため、凝縮過程でのエンタルピー差が小さくなる。
図5は、レシーバ22に冷媒が貯留した状態のモリエル線図である。
図2の暖房運転をしていた状態から、冷媒量調整制御を行うと、ハとニで示す冷媒の膨張過程における冷媒のエンタルピーが右側に移動する。すなわち、凝縮過程、及び、蒸発過程でのエンタルピー差が減少する。従って、冷媒量調整制御を行うことによってエンタルピー差が減少するため、暖房運転時に-2℃となっていた冷媒の入り口温度が0℃となる。尚、冷媒慮調整制御は第1流量調整弁20を開いて、第2流量調整弁21を閉じる制御でも構わない。ただし、早期にレシーバ22に冷媒を溜めるためには、メイン回路8における液側配管16がバイパス路17よりも冷媒が流れにくくなることが望ましいため、第2流量調整弁21を徐々に開きながら、膨張弁14の開度を徐々に絞ることが望ましい。
【0020】
次に、制御部3は、室内熱交換器7の出口側における冷媒の乾き度が所定値(0.2)を超えたかどうかを判断する(ST4)。乾き度は、室内熱交換器7の出口側の冷媒圧力および冷媒温度に基づき算出する。室内熱交換器7の出口側の冷媒圧力および冷媒温度は、室内熱交換器7の出口側に設けた出口圧力センサ26および出口温度センサ27によって検出する。乾き度は気液二相状態の冷媒における気相冷媒の量の占める割合であって、モリエル線図において、右側の飽和蒸気線に近づくにつれて乾き度は1に近づき、左側の飽和液線に近づくにつれて0に近づく。単一冷媒の場合は、飽和域内において、圧力が一定であれば温度も一定となるため、圧力と温度だけでは乾き度は求められないが、非共沸混合冷媒の場合は、飽和域内において、等温線が傾斜するため求めることができる。
【0021】
制御部3は、乾き度が所定値の0.2を超えた場合(ST4のYes)は、第1流量調整弁20の開度を第2流量調整弁21の開度より小さくする(ST5)。または、第1流量調整弁20を全閉にし、第2流量調整弁21を全開にする制御でも構わない。乾き度が所定値の0.2を超えてしまうと、膨張弁14に流入する気相冷媒の比率が上がるため、膨張弁の制御性の低下や冷媒音の発生リスクが高くなってしまう。そこで、ST5に示す制御を行う。これにより、レシーバ22に溜まっていた冷媒が、メイン回路8側に戻り、メイン回路8を循環する冷媒量が増加する。メイン回路8を循環する冷媒量が増加すると、室内熱交換器7における冷媒圧力が上がり、凝縮温度が上がる。凝縮温度が上がると、室内の空気の温度差が大きくなるため、凝縮過程でのエンタルピー差が大きくなる。
【0022】
次に、上記したST2からST3の制御について、
図4を用いて、さらに詳細に説明する。
【0023】
図4の(a)は、暖房運転を開始した状態を示す。暖房運転を開始した状態では、第1流量調整弁20および第2流量調整弁21は閉じているため、冷媒はバイパス路17を通過せず、全て液側配管16を通過する。この状態では、
図2で示すモリエル線図のような状態になっており、膨張弁14を通過して室外熱交換器13に流入する前の冷媒の温度は0℃よりも低い-2℃の状態となっている。
【0024】
制御部3は、室外熱交換器13に流入する前の冷媒の温度が所定値の-1℃以下であると判断すると、
図4の(b)に示すように、第1流量調整弁20および第2流量調整弁21を開く。第1流量調整弁20及び第2流量調整弁21を開くことで、室外熱交換器13に流入する冷媒が増加して圧縮機12に吸入される冷媒が湿り気味になり、圧縮機12の信頼性を低下させる恐れがあるが、圧縮機12に吸入される冷媒の状態を適正な状態に維持する制御(例えば目標吐出温度制御)によって膨張弁14の開度が絞られるため、信頼性低下を抑制できる。このとき、第1流量調整弁20の開度は第2流量調整弁21の開度より大きくしている。この制御により、冷媒回路2を流れる冷媒は、バイパス路17側に流入する。また、第1流量調整弁20の開度は第2流量調整弁21の開度より大きくしているため、レシーバ22に冷媒が貯留する。
【0025】
次に制御部3は、乾き度が所定値の0.2を超えた場合(
図3のST4のYes)
図4の(c)に示すように、第1流量調整弁20の開度を第2流量調整弁21の開度より小さくする。このとき、第1流量調整弁20の開度は、膨張弁14の開度よりも小さくする。この場合、第1流量調整弁20、第2流量調整弁21、膨張弁14として同じ口径の弁を用いることを想定している。異なる口径の弁を用いる場合は、第2流量調整手段21を流出した冷媒の温度を検出するセンサと、膨張弁14を流出した冷媒の温度を検出するセンサを備え、第2流量調整手段21を流出した冷媒の温度が低くなるように開度を制御する。この制御により、メイン回路8側を流れる冷媒流量が減少しすぎるのを抑制する。
【0026】
次に制御部3は、室外熱交換器13に流入する前の冷媒の温度が所定値の-1℃より高くなった場合、
図4の(d)に示すように、第1流量調整弁20および第2流量調整弁21を閉じる。これにより、冷媒回路2を流れる冷媒の循環量は、暖房運転時に室外熱交換器13に流入する冷媒の温度が-2℃の状態となっていた場合よりも、少なくなる。従って、冷媒の膨張過程における冷媒のエンタルピーを右側に移動させることができる。
【0027】
次に、
図6を用いて、他の実施形態である空気調和機40について説明する。最初の実施形態の空気調和機1と他の実施形態の空気調和機40との相違は、レシーバ22の代わりに気液分離器32を用い、第1流量調整弁20の代わりに第1三方弁30を用い、第2流量調整弁21の代わりに第2膨張弁31を用いた点であり、他は共通する。共通する構成については同一の符号を使い、また、共通する構成の説明は省略する。
【0028】
他の実施形態における空気調和機40における冷媒回路2の特徴的な構成について説明する。室内熱交換器7と室外熱交換器13とを接続する液側配管16には並列にバイパス路17が接続されている。バイパス路17は、室内熱交換器7側の第1三方弁30で液側配管16と接続し、室外熱交換器13側で液側配管16と接続する。膨張弁14は、液側配管16の第1三方弁30と室内熱交換器7との間に配置される。バイパス路17には、冷媒を液相冷媒と気相冷媒に分離して、液相冷媒を貯留するための気液分離器32と、気液分離器32よりも室外熱交換器13側に配置された第2膨張弁31とが接続されている。尚、第2膨張弁31は、バイパス路17側から液側配管16側へ冷媒を流す。気液分離器32は気液分離機能を有する冷媒貯留手段であっても構わない。第1三方弁30をおよび第2膨張弁31が、気液分離器32へ流入する冷媒量を調整する流量調整手段となる。
【0029】
次に、他の実施形態における空気調和機40の制御について説明する。まず、暖房運転開始時の初期状態として、第1三方弁30は、膨張弁14を通過した冷媒がバイパス路17側に流れない状態に切換っている。また、第2膨張弁31の開度は全閉状態となっている。そのため、室内熱交換器7を通過し、膨張弁14を通過して低温低圧となった冷媒は、液側配管16を通り蒸発器として機能する室外熱交換器13に流入する。暖房運転開始時の初期状態から暖房運転を続けていると、室外熱交換器13に流入する冷媒の温度は、
図2に示すように-2℃の状態となる。次に、入口温度センサ25に基づき、室外熱交換器13に流入する直前の冷媒の温度(入り口温度)を検出し、入り口温度が所定値より高いかどうかを判断する。本実施形態では、所定値は-1℃(マイナス1℃)である。所定値を-1℃としたのは、-1℃で冷媒が室外熱交換器13に流入し続けると、室外熱交換器13の流入口側で着霜が生じる可能性があるからである。室外熱交換器13に流入する冷媒の温度は-2℃の状態となっているため、室外熱交換器13の入り口温度は所定値の-1℃以下である。
【0030】
次に、入り口温度が所定値の-1℃以下になると、制御部3は、膨張弁14の開度を全開にして、膨張弁14を通過した冷媒がバイパス路17側に流れるように第1三方弁30を切換える。また、制御部3は、第2膨張弁31の開度を全閉状態から適正な開度となるように制御する。すなわち、膨張弁14によって行われていた冷媒を膨張させる工程を第2膨張弁31が引き継ぐ。これにより、膨張弁14を通過した冷媒は、バイパス路17に流入して気液分離器32に流入する。気液分離器32に流入した冷媒は、気相冷媒と液相冷媒に分離され、液相冷媒は気液分離器32に溜まり、気相冷媒だけが液側配管16を流れて室外熱交換器13に流入する。これにより、冷媒回路2を循環する冷媒量が減少する。冷媒回路2を循環する冷媒量が減少すると、室内熱交換器7における冷媒圧力が低下し凝縮温度が低下する。凝縮温度が低下すると、室内の空気の温度差が小さくなるため、凝縮過程でのエンタルピー差が小さくなる。
図5は、気液分離器32に液相冷媒が貯留した状態のモリエル線図である。
図2の暖房運転をしていた状態から、冷媒量調整制御を行うと、ハとニで示す冷媒の膨張過程における冷媒のエンタルピーが右側に移動する。すなわち、凝縮過程、及び、蒸発過程でのエンタルピー差が減少する。したがって、冷媒量調整制御を行うことによってエンタルピー差が減少するため、暖房運転時に-2℃となっていた冷媒の入り口温度が0℃となる。
【0031】
次に、制御部3は、室内熱交換器7の出口側における冷媒の乾き度が所定値(0.2)を超えたかどうかを判断する。乾き度は、室内熱交換器7の出口側の冷媒圧力および冷媒温度に基づき算出する。室内熱交換器7の出口側の冷媒圧力および冷媒温度は、室内熱交換器7の出口側に設けた出口圧力センサ26および出口温度センサ27によって検出する。乾き度は気液二相状態の冷媒における気相冷媒の量の占める割合であって、モリエル線図において、右側の乾き飽和蒸気線に近づくにつれて乾き度は1に近づき、左側の飽和液線に近づくにつれて0に近づく。単一冷媒の場合は、飽和域内において、圧力が一定であれば温度も一定となるため、圧力と温度だけでは乾き度は求められないが、非共沸混合冷媒の場合は、飽和域内において、等温線が傾斜するため求めることができる。
【0032】
乾き度が所定値の0.2を超えた場合は、第1三方弁30は、膨張弁14を通過した冷媒がバイパス路17側に流れない状態に切換える。また、膨張弁14の開度を全開状態から適正な開度となるように制御する。すなわち、第2膨張弁31によって行われていた冷媒を膨張させる工程を膨張弁14が引き継ぐ。乾き度が所定値の0.2を超えてしまうと、膨張弁14に流入する気相冷媒の比率が上がるため、膨張弁の制御性の低下や冷媒音の発生リスクが高くなってしまう。従って、空気調和機1の能力低下を抑制する必要がある。第1三方弁30を切換えることによって、膨張弁14を通過した冷媒はバイパス路17側に流れなくなる。一方、気液分離器32に溜まっていた高圧の液冷媒は、膨張弁14による減圧で低圧となったメイン回路8側に圧力差で戻るため、メイン回路8を循環する冷媒量が増加する。メイン回路8を循環する冷媒量が増加すると、室内熱交換器7における冷媒圧力が上がり、凝縮温度が上がる。凝縮温度が上がると、室内の空気の温度差が大きくなるため、凝縮過程でのエンタルピー差が大きくなる。
【0033】
上記した実施形態では、非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置として空気調和機を例として説明したが、非共沸混合冷媒を用いた冷凍サイクル装置は空気調和機に限定されない。冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置であればよく、例えば、屋外に設置されるヒートポンプ式給湯器などでも構わない。
【0034】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
1…空気調和機、2…冷媒回路、3…制御部、4…冷媒配管、5…室内機、7…室内熱交換器、8…メイン回路、11…室外機、12…圧縮機、13…室外熱交換器、14…膨張弁、15…四方弁、16…液側配管、17…バイパス路、18…第1分岐部、19…第2分岐部、20…第1流量調整弁、21…第2流量調整弁、25…入口温度センサ、26…出口圧力センサ、27…出口温度センサ、30…第1三方弁、31…第2膨張弁、32…気液分離器、40…空気調和機