(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136044
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ガス吹込みプラグおよびガス吹込みプラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
C21C 7/072 20060101AFI20230922BHJP
F27D 3/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C21C7/072 J
F27D3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041447
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】籠 貴大
【テーマコード(参考)】
4K013
4K055
【Fターム(参考)】
4K013CA21
4K055AA02
4K055AA04
4K055MA05
(57)【要約】
【課題】従来のプラグに比べてガス流量を増加させる。
【解決手段】ポーラス質耐火物製の芯体部分2と、芯体部分2を少なくとも部分的に包囲する緻密質耐火物製の外周部分3と、芯体部分2に接するガスプール5と、ガスプール5と流体連通する給気管6と、を備え、芯体部分2と外周部分3との間に少なくとも部分的に延在し、かつガスプール5に接しない空隙7が設けられ、先端面12に空隙7が開口している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラス質耐火物製の芯体部分と、
前記芯体部分を少なくとも部分的に包囲する緻密質耐火物製の外周部分と、
前記芯体部分に接するガスプールと、
前記ガスプールと流体連通する給気管と、を備え、
前記芯体部分と前記外周部分との間に少なくとも部分的に延在し、かつ前記ガスプールに接しない空隙が設けられ、
先端面に前記空隙が開口しているガス吹込みプラグ。
【請求項2】
前記外周部分を少なくとも部分的に包囲するメタルケースをさらに備える請求項1に記載のガス吹込みプラグ。
【請求項3】
前記空隙の幅が0.10mm以上0.50mm以下である請求項1または2に記載のガス吹込みプラグ。
【請求項4】
ガス吹き込みプラグの予備成形体を形成する第一工程と、前記予備成形体を焼成する第二工程と、を有し、
前記第一工程が、
ポーラス質耐火物を用いて前記予備成形体の芯体部分を形成するステップと、
緻密質耐火物を用いて前記予備成形体の外周部分を形成するステップと、
前記予備成形体の前記芯体部分と前記外周部分との間に可燃性材料を配置するステップと、を含み、
前記第二工程が、前記可燃性材料の少なくとも一部を焼失させることを含み、
前記可燃性材料を配置するステップにおいて、前記可燃性材料を、前記予備成形体の先端面に露出し、かつ、前記予備成形体の基端面に露出しないように配置するガス吹込みプラグの製造方法。
【請求項5】
前記可燃性材料が、線状、棒状、もしくはシート状、またはこれらの組み合わせである請求項4に記載のガス吹込みプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吹込みプラグおよびガス吹込みプラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
取鍋や坩堝などの溶融金属を取り扱う容器において溶融金属を攪拌する方法として、容器の底部からガスを吹き込んで当該ガスによって溶融金属を流動させる方法が汎用される。この目的のために容器の底部に装着されるガス吹込みプラグとしては、
図8に示すように、ポーラス質耐火物製の芯体部分2、芯体部分2を包囲して設けられる緻密性耐火物製の外周部分3、および、芯体部分2にガスを供給する給気管6、を備えるガス吹込みプラグ8が例示される。このガス吹込みプラグ8では、芯体部分2がガスの流路として機能し、給気管6から供給されたガスが芯体部分2を通って先端面22から容器内部に放出される(経路A)。この種のガス吹込みプラグを、ポーラスプラグと称する場合がある。
【0003】
ポーラスプラグでは、先端部分に溶融金属が付着し、ポーラス質耐火物の細孔に溶融金属が浸透することで、ガスの経路が閉塞する現象が発生する。この現象により、ポーラスプラグにおけるガスの流量は、繰り返される操業を経て徐々に低下する。ポーラスプラグの閉塞は先端部分に酸素を吹き付ける酸素洗浄によって解消できるが、このときに耐火物が溶損するため、酸素洗浄の繰り返しによってポーラスプラグの寿命が短縮される。したがって、ポーラスプラグの寿命を延長するためには、先端部分に溶融金属が付着しにくくして、酸素洗浄の頻度を低減することが必要であり、そのために種々の構造が検討されている。
【0004】
たとえば、実開平3-68958号公報(特許文献1)には、多孔質耐火物製のプラグ本体の周囲に多孔質の目地が設けられたポーラスプラグが開示されている。特許文献1のポーラスプラグによれば、プラグ本体が閉塞したときに目地の溶損が進み、閉塞部分(浸潤層)の下部が侵食されて閉塞部分の剥離に至るので、プラグの閉塞がひとりでに解消される。
【0005】
また、特開平9-194927号公報(特許文献2)には、一般的なポーラスプラグに使用されるポーラス質耐火物製の芯体部分に替えて、緻密質耐火物性の棒状耐火物を千鳥格子状に並べて使用し、棒状耐火物どうしの間の目地をガスの流路として利用するプラグが開示されている。特許文献2のプラグによれば、一つ一つのガス流路の断面積が小さいため溶融金属が進入しにくく、閉塞が生じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3-68958号公報
【特許文献2】特開平9-194927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、閉塞が生じた際のメンテナンス作業の必要性を低減しているものの、平常時のガス流量は特許文献1以前の技術と同様だった。また、特許文献2の技術では、最も外周に配置される棒状耐火物の側面が外周部分の緻密性耐火物によって塞がれてしまうため、ガス流量を増加させにくかった。このように従来のプラグは、ガス流量を増加させる観点で改善の余地があった。
【0008】
そこで、従来のプラグに比べてガス流量を増加させうるガス吹込みプラグおよびその製造方法の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガス吹込みプラグは、ポーラス質耐火物製の芯体部分と、前記芯体部分を少なくとも部分的に包囲する緻密質耐火物製の外周部分と、前記芯体部分に接するガスプールと、前記ガスプールと流体連通する給気管と、を備え、前記芯体部分と前記外周部分との間に少なくとも部分的に延在し、かつ前記ガスプールに接しない空隙が設けられ、先端面に前記空隙が開口していることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、給気管から供給されたガスがガス吹込みプラグの先端から流出するまでの経路として、芯体部分の先端面を経由する経路と、芯体部分の側面および空隙を経由する経路と、の二通りが形成される。このうち前者は従来技術に係るガス吹込みプラグにも同様に存在する経路であるが、後者は従来技術に係るガス吹込みプラグには存在しない経路であるので、上記の構成では後者の経路の分、ガスの流路が従来技術に比べて増加している。これによって、従来のプラグに比べてガス流量を増加させうる。
【0011】
また、本発明に係るガス吹込みプラグの製造方法は、ガス吹き込みプラグの予備成形体を形成する第一工程と、前記予備成形体を焼成する第二工程と、を有し、前記第一工程が、ポーラス質耐火物を用いて前記予備成形体の芯体部分を形成するステップと、緻密質耐火物を用いて前記予備成形体の外周部分を形成するステップと、前記予備成形体の前記芯体部分と前記外周部分との間に可燃性材料を配置するステップと、を含み、前記第二工程が、前記可燃性材料の少なくとも一部を焼失させることを含み、前記可燃性材料を配置するステップにおいて、前記可燃性材料を、前記予備成形体の先端面に露出し、かつ、前記予備成形体の基端面に露出しないように配置することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、空隙を設ける方法が比較的簡単であるので、生産性を損なうことなく、従来のプラグに比べてガス流量が増加したプラグが得られる。
【0013】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0014】
本発明に係るガス吹込みプラグは、一態様として、前記外周部分を少なくとも部分的に包囲するメタルケースをさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、給気管の設置が容易になる。また、ガス吹込みプラグを引き抜き交換するための支持部位にすることができる。
【0016】
本発明に係るガス吹込みプラグは、一態様として、前記空隙の幅が0.10mm以上0.50mm以下であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、芯体部分の先端面を経由する経路と、芯体部分の側面および空隙を経由する経路と、の双方のガス流量を確保しやすいので、双方の経路とも閉塞しにくい。
【0018】
本発明に係るガス吹込みプラグの製造方法は、一態様として、前記可燃性材料が、線状、棒状、もしくはシート状、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、均一な厚みの空隙を容易に形成することができる。
【0020】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係るガス吹込みプラグの縦断面図である。
【
図2】実施形態に係るガス吹込みプラグの上面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における横断面図である。
【
図4】実施形態に係るガス吹込みプラグを製造する手順を示す図である。
【
図5】実施形態に係るガス吹込みプラグを製造する手順を示す図である。
【
図6】実施形態に係るガス吹込みプラグを製造する手順を示す図である。
【
図7】実施形態に係るガス吹込みプラグを製造する手順を示す図である。
【
図8】従来技術に係るガス吹込みプラグの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るガス吹込みプラグおよびガス吹込みプラグの製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るガス吹込みプラグを、溶融金属精錬容器の底部に設置されるガス吹込みプラグ1(以下、単に「プラグ1」と称する。)に適用した例について説明する。
【0023】
〔プラグの構成〕
本実施形態に係るプラグ1は、芯体部分2と、芯体部分2を包囲する外周部分3と、芯体部分2および外周部分3を収容するメタルケース4と、を備える(
図1)。芯体部分2の基端面21はガスプール5に接しており、当該ガスプール5と流体連通する給気管6がメタルケース4に溶接されている。プラグ1は、基端11側から供給されたガスを先端面12から吐出する役割を果たすポーラスプラグであり、ポーラス質耐火物製の芯体部分2がガスの流路として機能する。芯体部分2と外周部分3との間に空隙7が設けられており、空隙7はプラグ1の先端面12に開口している。
【0024】
なお、プラグ1の先端とはプラグ1の使用時に溶融金属精錬容器の内側に露出する側(
図1の上方側)をいい、プラグ1の基端とはプラグ1の使用時に溶融金属精錬容器の外側を向く側(
図1の下方側)をいう。したがって、プラグ1の先端面12は使用状態において溶融金属に曝されることになる。
【0025】
芯体部分2は、ポーラス質耐火物製である。当該ポーラス質耐火物としては、当分野において通常使用されるポーラス質耐火物を使用でき、たとえば、高アルミナ質、マグネシア質、などの耐火物でありうる。すなわち、ポーラス質耐火物は、アルミナ、マグネシア、クロミアの金属酸化物を含みうるプレス成型品である。また、ポーラス質耐火物は、カーボン、ムライト、ジルコニア化合物、ホウ素化合物、粘土、などを含んでいてもよい。
【0026】
芯体部分2の形状は特に限定されず、円錐台状、角錐台状など任意の形状でありうる。本実施形態では一例として、芯体部分2の上側部分24が円錐台状であり、下側部分25が四角錐台状である例を示している(
図2、
図3)。芯体部分2の先端面22は円形である。
【0027】
外周部分3は、緻密質耐火物製であり、芯体部分2を周方向に包囲する態様で設けられている。外周部分3を構成する緻密質耐火物製としては、当分野において通常使用される緻密質耐火物を使用でき、たとえば、高アルミナ質、アルミナマグネシア質、アルミナスピネル質、などの耐火物でありうる。すなわち、緻密質耐火物は、アルミナ、マグネシア、スピネル、などの金属酸化物を含みうる流し込み施工品である。また、緻密質耐火物は、アルミナセメント、シリカフラワー、金属粉、分散剤、などを含んでいてもよい。
【0028】
本実施形態では、外周部分3が円錐台状である例を示している。これに対応して、プラグ1の先端面12および横断面は円形である(
図2、
図3)。なお、芯体部分2と外周部分3との横断面形状が異なっていてもよいし、双方の横断面形状が同種(円形と円形、など。)であってもよい。
【0029】
メタルケース4は、芯体部分2および外周部分3を収容する金属製のケースである。メタルケース4を構成する金属は特に限定されず、たとえば、SPCC、SUS304などでありうる。メタルケース4はプラグ1の先端側が開口しており、したがってプラグ1の先端面12では芯体部分2および外周部分3が露出している。一方、芯体部分2および外周部分3の側面および基端側はメタルケース4に包囲されている。
【0030】
芯体部分2の基端面21および外周部分3の基端面31と、メタルケース4と、の間に、ガスプール5が設けられている。ガスプール5は、実体を有する部材が設けられていない空間であり、給気管6から流入したガスが横方向(プラグ1の長手方向と交差する方向)に拡散するための空間として機能する。
【0031】
また、当該ガスプール5と流体連通する給気管6がメタルケース4に溶接されている。給気管6は金属製の管であり、その金属はたとえば、SGP、STPG370、などでありうる。メタルケース4を構成する金属と給気管6を構成する金属とは、同一の金属であってもよいし、互いに溶接可能な限度で異なる金属であってもよい。
【0032】
本実施形態に係るプラグ1では、芯体部分2の上側部分24と外周部分3との間に空隙7が設けられている。一方、芯体部分2の下側部分25と外周部分3との間には、空隙が設けられていない。したがって空隙7は、プラグ1の先端面12に開口しており、芯体部分2および外周部分3に沿って延びているが、ガスプール5には接していない(
図1~
図3)。
【0033】
ガス源(不図示)からプラグ1に供給されたガスは、給気管6を通じてガスプール5に至り、ガスプール5においてプラグ1の径方向に拡散するとともに、芯体部分2の基端面21から芯体部分2の細孔に進入する。ガスはさらに芯体部分2の中を進み、その一部は先端面22から溶融金属精錬容器の内部に流入する。また一部は、側面23から空隙7に流入し、空隙7を経由して溶融金属精錬容器の内部に流入する。このように、本実施形態に係るプラグ1では、ガスが溶融金属精錬容器の内部に流入する経路として、先端面22を経由する経路A(従来のプラグ8(
図8)にも同様に存在する経路である。)に加えて、側面23および空隙7を経由する経路Bが追加的に設けられている。これによって、プラグ1の通気量を向上できる。
【0034】
本実施形態では、空隙7の幅を0.30mmにしてある。この例のように、空隙7の幅が0.10mm以上であると、ガスが空隙7に流入しやすいため、プラグ1の全体として十分なガス流量を確保しやすい。また、空隙7の幅が0.50mm以下であると、溶融金属が空隙7に流入しにくいため、空隙7の閉塞を回避しやすい。空隙7の幅は、0.15mm以上であることがより好ましく、0.18mm以上であることがさらに好ましい。また、空隙7の幅は、0.45mm以下であることがより好ましく、0.40mm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
なお、空隙7をガスプール5に接しない態様で設けてあるため、経路Aおよび経路Bの双方のガスとも芯体部分2を経由する。これによって、経路Aおよび経路Bの双方に十分なガス流量を確保しやすく、プラグ1の先端面12の全体にわたって溶融金属の付着を好適に防止できる。これに対し、仮に空隙7がガスプール5に接していると、大部分のガスが芯体部分2を迂回して空隙7経由で溶融金属精錬容器の内部に流入するため、先端面22におけるガスの流量が著しく低下し、先端面22に溶融金属が付着しやすくなる。
【0036】
〔プラグの製造方法〕
次に、プラグ1の製造方法について説明する。プラグ1の製造方法は、プラグ1の予備成形体1aを形成する第一工程と、当該予備成形体1aを焼成する第二工程と、第二工程で得られた焼成体をメタルケース4に収容する第三工程と、を含む。このうち第一工程は、予備成形体1aの芯体部分2aを形成する第一ステップ、予備成形体1aの芯体部分2aを可燃性材料7aで包囲する第二ステップ、および予備成形体1aの外周部分3aを形成する第三ステップに、さらに区分される。
【0037】
(1)第一工程
第一工程の第一ステップでは、ポーラス質耐火物を用いて予備成形体1aの芯体部分2aを形成する(
図4)。ここで使用されるポーラス質耐火物は上記に列挙したとおりであり、予備成形体1aの焼成後にプラグ1の芯体部分2の所望の形状になるように予備成形体1aの芯体部分2aの形状が決定される。なお、ポーラス質耐火物の予備成形に通常用いられる器具、助剤などが使用されうる。
【0038】
第一工程の第二ステップでは、予備成形体1aの芯体部分2aを可燃性材料7aで包囲する(
図5)。ここで使用する可燃性材料7aは、プラグ1の芯体部分2を構成するポーラス質耐火物および外周部分3を構成する緻密質耐火物の焼成温度(たとえば500℃以下)において燃焼する物質である。また、可燃性材料7aの位置および大きさは、予備成形体1aの焼成時に可燃性材料7aが焼失して形成される空隙が所望の空隙7の形状になるように決定される。特に、空隙7がプラグ1の先端面12に開口し、かつガスプール5に接しないことに対応して、可燃性材料7aは、芯体部分2aの先端面22aと面一に位置合わせされている一方で、芯体部分2aの基端面21aには達していない。可燃性材料7aが線状、棒状、もしくはシート状、またはこれらの組み合わせであると、均一な厚みの空隙7を容易に形成できるため、好ましい。
【0039】
第一工程の第三ステップでは、緻密質耐火物を用いて予備成形体1aの外周部分3aを形成する(
図6)。本実施形態では、上記の第二ステップの後に第三ステップを実施するので、芯体部分2aが可燃性材料7aで包囲されている部分については、可燃性材料7aをさらに包囲するように外周部分3aを形成することになる。ここで使用される緻密質耐火物は上記に列挙したとおりであり、予備成形体1aの焼成後にプラグ1の外周部分3の所望の形状になるように予備成形体1aの外周部分3aの形状が決定される。なお、緻密質耐火物の予備成形に通常用いられる器具、助剤などが使用されうる。
【0040】
以上の三つのステップを経て、芯体部分2a、外周部分3a、および可燃性材料7aを含む予備成形体1aが得られる。上記の手順から明らかなように、第二ステップは、予備成形体1aの芯体部分2aと外周部分3aとの間に可燃性材料7aを配置するステップだといえる。
【0041】
(2)第二工程
第二工程は、予備成形体1aを焼成する工程である。焼成の使用器具および焼成条件は公知のものを使用でき、使用されるポーラス質耐火物および緻密質耐火物の種類、添加物や助剤などの副材料の種類、ならびに予備成形体1aの寸法、などを考慮して決定される。予備成形体1aの焼成時に可燃性材料7aが焼失して、空隙7が形成された焼成体1bが得られる(
図7)。すなわち第二工程は、可燃性材料7aの少なくとも一部を焼失させることを含む。
【0042】
(3)第三工程
第三工程は、第二工程で得られた焼成体1bをメタルケース4に収容する工程である。第三工程は、ポーラスプラグの製造方法において耐火物製の焼成体をメタルケースに収容する際に通常実施される方法で実施されうる。
【0043】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るガス吹込みプラグおよびガス吹込みプラグの製造方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
上記の実施形態では、芯体部分2の上側部分24の全周にわたって空隙7が設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るガス吹込みプラグにおいて、空隙が芯体部分と外周部分との間に少なくとも部分的に延在していればよく、上記の例のように芯体部分を包囲する形状の空隙でなくてもよい。
【0045】
上記の実施形態では、プラグ1がメタルケース4を備える構成を例として説明した。しかし、本発明に係るガス吹込みプラグは、メタルケースを備えないものであってもよい。また、メタルケースを備える場合は、上記の実施形態のように外周部分の全体がメタルケースに収容されていてもよいが、外周部分の一部のみがメタルケースに収容されていてもよい。
【0046】
上記の実施形態では、プラグ1の製造方法として、予備成形体1aの芯体部分2aを形成する第一ステップ、予備成形体1aの芯体部分2aを可燃性材料7aで包囲する第二ステップ、および予備成形体1aの外周部分3aを形成する第三ステップをこの順で実施して予備成形体1aを得る構成を例として説明した。しかし、本発明に係るガス吹込みプラグの製造方法の第一工程において、芯体部分と外周部分との間に可燃性材料が配置された予備成形体が得られる限りにおいて、各ステップの実施順は限定されない。
【0047】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0048】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし以下の実施例は本発明を限定しない。
【0049】
〔空気流通試験〕
(実施例および比較例)
実施例1として、
図1に示す断面形状を有するプラグを製造した。比較例として、
図8に示す断面形状を有するプラグを製造した。双方のプラグの芯体部分を構成するポーラス質耐火物および外周部分を構成する緻密質耐火物は、いずれも同一とした。具体的には、ポーラス質耐火物の組成をアルミナ89%、シリカ7%、クロミア2%とし、緻密質耐火物の組成をアルミナ91%、マグネシア7%とした。プラグの耐火物部分(芯体部分および外周部分)の全長は、いずれも300mmとした。芯体部分のうち、上側部分は円錐台状とし、長さ240mm、上端の直径80mm、下端の直径120mmとした。また、下側部分は断面が正方形の四角錐台状とし、長さ60mm、上端の一辺80mm、下端の一辺100mmとした。実施例1のプラグでは、空隙の幅を0.3mmとした。一方、比較例のプラグは、芯体部分と外周部分とが密着した構造とし、空隙を設けなかった。
【0050】
(評価)
実施例および比較例の各プラグをガス源(不図示)に接続し、0.1~0.3MPaの範囲の圧力でガスを供給して、ガスの流量(L/分単位)を測定した。各プラグについての圧力と流量との関係を
図9に示す。ガスの供給圧が0.1~0.3MPaの範囲において、実施例1のプラグを用いた場合に、比較例のプラグを用いた場合に比べてガスの流量が向上することが明らかになった。
【0051】
〔実使用試験〕
(実施例および比較例)
上記の実施例1および比較例に加えて、空隙の幅を0.10~0.70mmの範囲で変更した他は実施例1のプラグと同様の構造とした実施例2~8を製造した。なお、各実施例における空隙の幅の具体的な値を、後掲する表1に示している。
【0052】
(評価)
実施例1~8ならびに比較例の各ノズルを300トン取鍋に装着し、鋼の回分式の鋳造に供した。各回分の終了時に、ガス吹きプラグに0.1MPaの圧力でガスを供給したときの流量が150L/分未満である場合は酸素洗浄を行うとともに、ガス吹きプラグの高さが60mm以下である場合はプラグを使用不可と判断した。各プラグについて使用不可と判断した時点までの回分数を記録した(表1)。実施例1~8では、空隙を有さない比較例(従来技術に係るノズル)に比べて寿命の延長が認められた。空隙の幅が0.10mm以上0.50mm以下である実施例1~7において、寿命の延長が特に顕著だった。
【0053】