(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136049
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】エアバッグ装置のカバー体
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20230922BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041456
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 恭平
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054BB02
(57)【要約】
【課題】装飾部材の破損を抑制することが可能なエアバッグ装置のカバー体を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置のカバー体は、貫通孔を有し、収納されたエアバッグを覆うカバー本体部と、装飾部と、装飾部から突出して貫通孔に挿通される突出部とを有する装飾部材と、装飾部材の突出部に係合される被係合部を有するベース部材と、貫通孔に突出部とともに挿通されて貫通孔の縁から突出部を保護する保護部材と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有し、収納されたエアバッグを覆うカバー本体部と、
装飾部と、前記装飾部から突出して前記貫通孔に挿通される突出部とを有する装飾部材と、
前記装飾部材の前記突出部に係合される被係合部を有するベース部材と、
前記貫通孔に前記突出部とともに挿通されて前記貫通孔の縁から前記突出部を保護する保護部材と、
を備えるエアバッグ装置のカバー体。
【請求項2】
前記保護部材は、前記突出部が挿通される挿通孔が設けられる本体部と、前記本体部における前記挿通孔に対応する部分から突出して前記貫通孔に挿通されるフランジ部とを有する、
請求項1に記載のエアバッグ装置のカバー体。
【請求項3】
前記保護部材は、前記突出部の突出方向において、少なくとも、前記突出部の基端に対応する部分から、前記カバー本体部に対応する部分までの範囲に設けられる、
請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置のカバー体。
【請求項4】
前記保護部材は、前記突出部の周囲を覆うように設けられる、
請求項1~3の何れか1項に記載のエアバッグ装置のカバー体。
【請求項5】
前記保護部材は、前記装飾部とは異なり、かつ、外部から前記装飾部とともに視認可能な他の装飾部を有する、
請求項1~4の何れか1項に記載のエアバッグ装置のカバー体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置のカバー体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置には、エアバッグを覆うカバー本体部を有するカバー体が設けられる。例えば、特許文献1には、カバー本体部の表面側に設けられる装飾部材と、装飾部材との間でカバー本体部を挟むベース部材とを有する構成が開示されている。
【0003】
装飾部材には、ベース部材側に突出する突出部が設けられ、突出部がカバー本体部の貫通孔に挿通されて、ベース部材の被係合部に係合することで、装飾部材がカバー本体部およびベース部材に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアバッグの展開動作に応じてカバー本体部が変形すると、装飾部材の突出部に、貫通孔の縁が衝突するので、この衝突に起因して、装飾部材の突出部、すなわち装飾部材が破損するおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、装飾部材の破損を抑制することが可能なエアバッグ装置のカバー体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエアバッグ装置のカバー体は、
貫通孔を有し、収納されたエアバッグを覆うカバー本体部と、
装飾部と、前記装飾部から突出して前記貫通孔に挿通される突出部とを有する装飾部材と、
前記装飾部材の前記突出部に係合される被係合部を有するベース部材と、
前記貫通孔に前記突出部とともに挿通されて前記貫通孔の縁から前記突出部を保護する保護部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、装飾部材の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係るカバー体が適用されたエアバッグ装置の一例を示す図である。
【
図3】第2装飾部材を背面側から見た斜視図である。
【
図4】第1装飾部材の突出部部分におけるカバー体の断面図である。
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係るカバー体が適用されたエアバッグ装置の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、エアバッグ装置1は、エアバッグモジュールとも称され、車両内の被取付物2の中心部分等を覆うように取り付けられる。
図1には、被取付物2として、車両のステアリングホイールが示されているが、エアバッグ装置1を取り付け可能なものであれば良い。
【0012】
エアバッグ装置1は、
図2に示すカバー体100の他、ベースプレート、袋状のエアバッグ、ガスを噴射するインフレータ等(不図示)を備える。ベースプレートは、金属板で構成され、ホーンプレートやブラケット部等を介してステアリングホイールに取り付けられる。このベースプレートに、エアバッグ、インフレータおよびカバー体100が取り付けられ、折り畳まれたエアバッグがカバー体100により覆われている。
【0013】
図2に示すように、カバー体100は、ケース体、パッド、またはモジュールカバー等とも称されるものであり、カバー本体部110と、第1装飾部材120と、ベース部材130と、第2装飾部材140と、を有する。
【0014】
カバー本体部110は、例えば、TPO(Thermoplastic Olefinic Elastomer)等の軟質の合成樹脂等で一体に成形されて構成されている。カバー本体部110は、例えば、円筒形状に構成されており、正面部111と周板部112とを有する。なお、カバー本体部110は、円筒形状以外の形状であっても良い。
【0015】
正面部111は、円筒形状の底に対応する部分であり、被取付物2の正面側に位置することで、被取付物2の中心部分の一部を正面側から被覆する。
【0016】
周板部112は、円筒形状の側壁に対応する部分であり、正面部111の周縁から背面側に突出する。正面部111と周板部112とで囲まれた部分に、折り畳んだエアバッグが収納される。
【0017】
正面部111の背面側には、テアライン(不図示)が形成されており、テアラインの開裂により、エアバッグの展開時に複数の扉部が形成される。テアラインは、正面部111の背面に溝状に設けられ、正面部111の他の部分よりも脆弱に形成されている。テアラインは、設定したい扉部の形状、および扉部の枚数に応じて任意に形成可能である。また、周板部112には、ベースプレートとカバー体100とを係合するための係合爪部および係合開口部等(不図示)が複数設けられている。
【0018】
また、正面部111の正面側には、第1装飾部材120および第2装飾部材140が取り付けられる取付凹部113が設けられている。
【0019】
取付凹部113は、正面部111の正面側から凹んで設けられており、第1装飾部材120および第2装飾部材140の形状に対応した形状に構成されている。取付凹部113には、複数の貫通孔113Aが設けられている。
【0020】
複数の貫通孔113Aは、後述する第1装飾部材120の複数の突出部123が挿通される孔であり、各突出部123に対応する位置にそれぞれ設けられている。
図2では、貫通孔113Aは4つ設けられている。
【0021】
また、貫通孔113Aの大きさは、突出部123の他、後述する第2装飾部材140のフランジ部142も挿通可能な程度の大きさである。
【0022】
第1装飾部材120、ベース部材130および第2装飾部材140は、エンブレムやオーナメントとも称されるものであり、カバー体100を装飾するために設けられる。本実施の形態では、例えば円形状に形成されている。第1装飾部材120は、本発明の「装飾部材」に対応する。
【0023】
第1装飾部材120は、カバー本体部110の正面側に設けられ、表面側において、装飾的な処理を施された部分を有する。装飾的な処理を施された部分は、例えば、硬質または軟質の合成樹脂により成形され、適宜塗装やメッキ等の表面処理が施されたものであっても良いし、エアバッグ装置1が搭載される車両の製造業者の象徴的形状やロゴ等であっても良い。
【0024】
本実施の形態の第1装飾部材120は、環状部121と、文字部122とで構成されている。文字部122は、「N」および「P」の2文字が並んで構成されており、環状部121の内側に配置されている。環状部121および文字部122は、本発明の「装飾部」に対応する。
【0025】
環状部121の背面には、背面から突出する複数の突出部123が設けられている。本実施の形態では、突出部123は、環状部121の上部、左部、下部、右部の4箇所に1つずつの計4つ設けられている。なお、突出部123の断面形状は、円形状、四角形状、十字形状等、どのような形状であっても良い。
【0026】
ベース部材130は、カバー本体部110の背面側に設けられ、複数の突出部123が係合可能な複数の被係合部131を有する。複数の被係合部131は、複数の突出部123のそれぞれに対応する位置に設けられている。この被係合部131に、カバー本体部110の貫通孔113Aを挿通された突出部123が係合することで、第1装飾部材120およびベース部材130がカバー本体部110に固定される。
【0027】
第2装飾部材140は、第1装飾部材120とカバー本体部110との間に設けられ、表面側において、第1装飾部材120と同様に、装飾的な処理を施された部分を有する。第2装飾部材140は、第1装飾部材120が表面側に位置するため、環状部121と文字部122との間の空間等の第1装飾部材120が存在しない箇所を装飾する部材である。第2装飾部材140は、本体部141と、フランジ部142(
図3参照)とを有する。
【0028】
本体部141は、第1装飾部材120の環状部121よりも径が大きい円板状に構成されており、上記の装飾的な処理を施された部分を有する部分であり、外部から第1装飾部材120とともに視認可能である。本体部141は、本発明の「他の装飾部」に対応する。
【0029】
本体部141には、第1装飾部材120の複数の突出部123が挿通される複数の挿通孔143が設けられている。
【0030】
複数の挿通孔143は、複数の突出部123のそれぞれに対応する位置に設けられている。挿通孔143は、本体部141と、後述するフランジ部142との両方を貫通する孔である。各挿通孔143に各突出部123が挿通されることで、第2装飾部材140は、第1装飾部材120とともに、カバー本体部110に固定される。
【0031】
図3および
図4に示すように、フランジ部142は、本体部141の背面側における各挿通孔143に対応する位置から突出して設けられている。フランジ部142は、例えば、円筒状に構成されており、第1装飾部材120の突出部123が挿通孔143に挿通された際、突出部123の周囲を覆うように設けられる。
【0032】
フランジ部142は、第2装飾部材140がカバー本体部110に取り付けられる際に、第1装飾部材120の突出部123が挿通された状態で、カバー本体部110の貫通孔113Aに、突出部123とともに挿通される。これにより、フランジ部142は、カバー本体部110の貫通孔113Aの縁から突出部123を保護するように配置される。第2装飾部材140は、本発明の「保護部材」に対応する。
【0033】
以上のように構成された本実施の形態の作用効果について説明する。例えば、エアバッグが展開することにより、カバー本体部110が変形すると、カバー本体部110における貫通孔113Aの縁が、貫通孔113Aを挿通した部材に衝突する。
【0034】
例えば、第2装飾部材がフランジ部を有していない構成である場合、第1装飾部材の突出部に貫通孔の縁が直接衝突する。エアバッグは力強く展開することから、貫通孔の縁が勢いよく突出部に衝突する。この衝突に起因して、突出部、すなわち第1装飾部材が破損するおそれがある。
【0035】
それに対して、本実施の形態では、フランジ部142が突出部123と貫通孔113Aの縁との間に設けられるため、フランジ部142により、突出部123を保護することができる。その結果、貫通孔113Aの縁が、直接突出部123に衝突することを防止し、ひいては突出部123、すなわち第1装飾部材120が破損することを抑制することができる。
【0036】
また、第2装飾部材140は、貫通孔113Aの縁による衝突から突出部123を保護する観点から、可能な限り、剛性の高い材料で構成することが好ましい。
【0037】
また、第2装飾部材140が本体部141とフランジ部142とで一体に構成されているので、エアバッグ装置1の装飾と、第1装飾部材120の保護との両方の機能を兼用させることができる。そのため、装飾用の部品と、保護用の部品とを別々に準備する必要がなくなるので、部品点数を削減することができる。
【0038】
また、フランジ部142が突出部123の周囲を覆うように設けられるので、突出部123の周囲を確実に保護することができる。
【0039】
また、第2装飾部材140の本体部141およびフランジ部142の部分が、挿通孔143を介して、第1装飾部材120の突出部123に挿通される。そのため、突出部123の突出方向において、突出部123の基端に対応する部分から、カバー本体部110に対応する部分までの範囲を第2装飾部材140が保護することになる。その結果、突出部123の突出方向において、突出部123を確実に保護することができる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、突出部123の数は4つであったが、本発明はこれに限定されず、4つ未満であっても良いし、5つ以上であっても良い。
【0041】
また、上記実施の形態では、フランジ部142が全ての挿通孔143に対応して設けられていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、4つの挿通孔のうちの2つに対応して設けられる等、全ての挿通孔に対応して設けられていなくても良い。また、この場合、フランジ部が設けられる挿通孔は、例えば、開裂方向において、カバー本体部における扉部の部分から比較的大きな遠心力がかかる部分に対応するものであっても良い。
【0042】
また、上記実施の形態では、第1装飾部材および第2装飾部材の外形は、円形状であったが、本発明はこれに限定されず、三角形状、四角形状等の多角形状や星型形状、歪な形状等、その他の形状であっても良い。
【0043】
また、上記実施の形態では、第2装飾部材が、第1装飾部材の突出部を保護するフランジ部を有していたが、本発明はこれに限定されず、第2装飾部材が、フランジ部を有さず、かつ、別途、突出部を保護する保護部材が設けられていても良い。この場合、保護部材は、例えば、上記のフランジ部部分のみのもの等、突出部に挿通可能なものであれば良い。また、第1装飾部材とは異なる、他の装飾部として、第2装飾部材を設ける必要がない場合は、上記の保護部材のみが設けられていても良い。
【0044】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示のエアバッグ装置のカバー体は、装飾部材の破損を抑制することが可能なエアバッグ装置のカバー体として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 エアバッグ装置
2 被取付物
100 カバー体
110 カバー本体部
111 正面部
112 周板部
113 取付凹部
113A 貫通孔
120 第1装飾部材
121 環状部
122 文字部
123 突出部
130 ベース部材
131 被係合部
140 第2装飾部材
141 本体部
142 フランジ部
143 挿通孔