(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136072
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ワーク吸着装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B25J15/06 H
B25J15/06 S
B25J15/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041495
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707CY01
3C707DS01
3C707FS08
3C707FT11
3C707FT17
3C707FT18
3C707FU01
3C707GU06
3C707HS14
3C707MT09
(57)【要約】
【課題】ワーク吸着面に対してワーク上面が傾いていても、ワーク上面の所定位置にワーク吸着面を倣わせて吸着可能なワーク吸着装置を提供する。
【解決手段】ワーク吸着装置1は、第1軸L1方向に往復動可能な支持ロッド部6と、支持ロッド部の先端に第2軸L2方向の基端が第1ジョイント部10で回動自在に連結された回動アーム部20と、回動アーム部の先端に第3軸L3方向の基端が第2ジョイント部40で回動自在に連結され磁力でワーク110を吸着するチャックユニット50とを有するマグネットチャック5を備える。チャックユニットは筐体51の先端にワーク吸着面48aを有する。第1及び第2ジョイント部は第1及び第2中心点S1,S2を有し、支持ロッド部と回動アーム部とは第1中心点S1を中心として、回動アーム部とチャックユニットとは第2中心点S2を中心として、相互に回動自在である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に往復動可能であり、その移動方向の両端に先端及び基端を有した支持ロッド部と、第2軸方向の両端に一端及び他端を有し前記支持ロッド部の先端に一端が第1ジョイント部で回動自在に連結された回動アーム部と、第3軸方向の両端に先端及び基端を有する筐体を有し、前記筐体の基端が前記回動アーム部の他端に第2ジョイント部で回動自在に連結され、磁力によってワークを吸着するためのチャックユニットと、を有するマグネットチャックを備えるワーク吸着装置であって、
前記マグネットチャックにおいて、
前記チャックユニットは、前記筐体の先端に前記第3軸に対して直交する方向に延びるワーク吸着面が形成されており、
前記第1ジョイント部は、第1中心点を有しており、
前記支持ロッド部と前記回動アーム部とは、前記第1中心点を中心として相互に回動自在であり、
前記第2ジョイント部は、第2中心点を有しており、
前記回動アーム部と前記チャックユニットとは、前記第2中心点を中心として相互に回動自在である、
ことを特徴とするワーク吸着装置。
【請求項2】
前記チャックユニットは、前記筐体の内側に形成されて前記第3軸方向に延びるシリンダ孔と、前記シリンダ孔内を移動可能に設けられたチャックピストンと、前記チャックピストンに取り付けられて前記チャックピストンとともに移動する永久磁石と、を有しており、
前記永久磁石は、前記第3軸方向において、前記永久磁石を前記筐体の先端側に移動させて前記ワークを前記ワーク吸着面で吸着させるための吸着位置と、前記永久磁石を前記筐体の基端側へ移動させて前記ワークの吸着を解除するための吸着解除位置との間で往復動可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のワーク吸着装置。
【請求項3】
前記第1ジョイント部は、前記第1中心点を有した第1ボール体と、前記第1ボール体を摺動自在に収容する第1凹部と、を有して構成され、
前記第2ジョイント部は、前記第2中心点を有した第2ボール体と、前記第2ボール体を摺動自在に収容する第2凹部と、を有して構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク吸着装置。
【請求項4】
前記第1ジョイント部において、前記第1ボール体は前記支持ロッド部に取り付けられ、前記第1凹部は前記回動アーム部の一端に開口しており、
前記第2ジョイント部において、前記第2ボール体は前記チャックユニットの基端に取り付けられ、前記第2凹部は前記回動アーム部の他端に開口している、
ことを特徴とする請求項3に記載のワーク吸着装置。
【請求項5】
前記回動アーム部は、前記第1ジョイント部の前記第1凹部に収容された前記第1ボール体と前記第1凹部との相対回動、及び前記第2ジョイント部の前記第2凹部に収容された前記第2ボール体と前記第2凹部との相対回動をロック及びロック解除可能な第1ロック機構部を有している、
ことを特徴とする請求項4に記載のワーク吸着装置。
【請求項6】
前記回動アーム部は、その一端に取り付けられて前記第2軸方向に貫通する第1貫通孔を有した第1カバー部材と、前記回動アーム部の他端に取り付けられて前記第2軸方向に貫通する第2貫通孔を有した第2カバー部材と、を有し、
前記第1ロック機構部は、
前記第1及び前記第2カバー部材のそれぞれに形成された前記第1及び前記第2貫通孔と、
前記回動アーム部の一端側及び他端側の各内部に形成された第1及び第2シリンダ孔と、
前記第1シリンダ孔内に移動可能に設けられて一端側に開口する第1穴部を有した第1ピストンと、
前記第2リンダ孔内に移動可能に設けられて他端側に開口する第2穴部を有した第2ピストンと、
前記第1シリンダ孔の前記第2軸方向の他端側に形成されて前記第1ピストンによって区画された第1圧力室と、
前記第2シリンダ孔の前記第2軸方向の一端側に形成されて前記第2ピストンによって区画された第2圧力室と、を有して構成されており、
前記第1貫通孔及び前記第1穴部は、前記第2軸方向において連通し、前記第1貫通孔及び前記第1穴部で囲まれた内側空間は、前記第1ボール体を収容する前記第1凹部を形成し、
前記第1貫通孔の内面には、前記第1ボール体の前記第2軸方向の一端側の外面に摺接する第1外側摺接面が形成され、
前記第1穴部の内面には、前記第1ボール体の前記第2軸方向の他端側の外面に摺接する第1内側摺接面が形成されており、
前記第2貫通孔及び前記第2穴部は、前記第2軸方向において連通し、前記第2貫通孔及び前記第2穴部で囲まれた内側空間は、前記第2ボール体を収容する前記第2凹部を形成し、
前記第2貫通孔の内面には、前記第2ボール体の前記第2軸方向の他端側の外面に摺接する第2外側摺接面が形成され、
前記第2穴部の内面には、前記第2ボール体の前記第2軸方向の一端側の外面に摺接する第2内側摺接面が形成されており、
前記第1及び前記第2シリンダ孔のそれぞれの前記第1及び前記第2圧力室に対して圧縮空気を給排することにより、前記第1及び前記第2ピストンを前記第2軸方向に往復動させることができるようになっており、
前記第1及び前記第2圧力室に供給される圧縮空気で、前記第1ピストンを前記第2軸方向の一端側に、前記第2ピストンを前記第2軸方向の他端側に移動させることにより、前記第1外側摺接面及び前記第1内側摺接面で前記第1ボール体を挟持させるとともに、前記第2外側摺接面及び前記第2内側摺接面で前記第2ボール体を挟持させ、
それにより、前記回動アーム部は、前記支持ロッド部及び前記チャックユニットのそれぞれに対して回動がロックされる、
ことを特徴とする請求項5に記載のワーク吸着装置。
【請求項7】
前記第1貫通孔の前記第1外側摺接面は、前記第1ボール体の前記第1中心点よりも前記第2軸方向の一端側の外面に接触し、
前記第1穴部の前記第1内側摺接面は、前記第1ボール体の前記第1中心点よりも前記第2軸方向の他端側の外面に接触し、
前記第2貫通孔の前記第2外側摺接面は、前記第2ボール体の前記第2中心点よりも前記第2軸方向の他端側の外面に接触し、
前記第2穴部の前記第2内側摺接面は、前記第2ボール体の前記第2中心点よりも前記第2軸方向の一端側の外面に接触する、
ことを特徴とする請求項6に記載のワーク吸着装置。
【請求項8】
前記第1ピストンの前記第1内側摺接面は、前記第2軸方向の一端側に進むに従って内径が拡大する円錐面に形成され、
前記第2ピストンの前記第2内側摺接面は、前記第2軸方向の他端側に進むに従って内径が拡大する円錐面に形成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のワーク吸着装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の複数の前記マグネットチャックと、
複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部を往復動可能に支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、
前記第1軸に対して直交する方向に延び、複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部を個別に往復動可能に挿通する複数の貫通孔を有したアーム支持部材と、
複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部を個別に挿通する連通孔を有して前記アーム支持部材に取り付けられ、前記アーム支持部材に対して前記支持ロッド部をロック及びロック解除可能な第2ロック機構部を有した複数の連結部と、
複数の前記支持ロッド部のそれぞれに取り付けられ、前記支持ロッド部の移動によって前記連結部の前記第1軸方向の一端に当接して、前記貫通孔から前記支持ロッド部が抜脱されるのを防止する複数の抜止部材と、
複数の前記マグネットチャックのそれぞれにおける前記連結部と前記支持ロッド部との間に設けられ、複数の前記マグネットチャックのそれぞれを前記アーム支持部材に対して前記第1軸方向の先端側へ付勢する複数のばね部材と、を有して構成され、
複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部は、互いに間隔を有してそれぞれの前記第1軸が平行になるように前記アーム支持部材に配置されている、
ことを特徴とするワーク吸着装置。
【請求項10】
前記連結部の前記第2ロック機構部は、
前記第1軸方向に延びて前記連結部の前記連通孔に形成された第3シリンダ孔と、
前記第3シリンダ孔内において、前記支持ロッド部の側面に対向して配置された押圧面を有するブレーキパッドと、
前記第3シリンダ孔内を前記第1軸方向に移動可能であり、前記ブレーキパッドよりも前記第1軸の径方向外側の前記第3シリンダ孔内に配置された傾斜面を有する第3ピストンと、
前記ブレーキパッドと前記傾斜面との間に配置されて前記第3ピストンの移動により前記傾斜面から径方向内側を向く押圧力を受ける押圧部材と、
前記第3ピストンによって前記第3シリンダ孔が区画された第3圧力室と、を有して構成され、
前記第3シリンダ孔の前記第3圧力室に対して圧縮空気を給排することにより、前記第3ピストンを前記第1軸方向に往復動させることができるようになっており、
前記第3圧力室に供給された圧縮空気で前記第3ピストンを移動させることにより、前記押圧部材が前記傾斜面から径方向内側を向く押圧力を受けて前記ブレーキパッドを径方向内側へ押圧して、前記押圧面が前記支持ロッド部の側面を押圧し、
それにより、前記アーム支持部材に対して前記支持ロッド部がロックされる、
ことを特徴とする請求項9に記載のワーク吸着装置。
【請求項11】
前記連結部は、前記第1軸方向の両側に一端及び他端を有し、一端が前記アーム支持部材に取り付けられ、内部に前記連通孔が形成された連結胴部を有し、
前記連結胴部は、その一端に取り付けられて前記第1軸方向に貫通する挿通孔を有して前記アーム支持部材の前記貫通孔に挿通される固定部材を備え、
前記挿通孔は、前記連結胴部の前記連通孔に連通して、前記挿通孔及び前記連通孔に前記支持ロッド部が挿通され、
前記固定部材は、前記アーム支持部材の前記貫通孔に挿通された状態で、前記アーム支持部材に着脱可能に取り付けられ、
それにより、前記連結胴部は、前記アーム支持部材に着脱可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項10に記載のワーク吸着装置。
【請求項12】
前記固定部材は、前記アーム支持部材の前記第1軸方向の一端側の端面から突出した状態で前記アーム支持部材に取り付けられ、
前記支持ロッド部は、その基端部が前記固定部材における前記挿通孔の前記第1軸方向の一端から突出した状態で、前記支持ロッド部の基端部に前記抜止部材が取り付けられ、
前記抜止部材は、前記固定部材の前記挿通孔の内径よりも大きく、且つ前記アーム支持部材の前記貫通孔の内径よりも小さい直径を有した円柱状に形成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載のワーク吸着装置。
【請求項13】
前記ばね部材は、前記連結胴部の他端と前記支持ロッド部の先端部との間に配置された圧縮ばねである、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載のワーク吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力でワークを吸着するマグネットチャックを備えるワーク吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筐体内に電磁石を設けたマグネットチャックや、筐体内に形成されたシリンダ孔内を移動可能に設けたピストンに永久磁石を取り付けて、ピストンとともに永久磁石を変位させるマグネットチャックは、例えば、特許文献1及び2に示すように、既に知られている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のマグネットチャックは、筐体内に電磁石が設けられ、筐体の下面には上下方向に直交する横方向に延びるワーク吸着面が形成されている。このマグネットチャックは、電磁石が作動すると、ワーク吸着面に磁力が生じてワーク吸着面でワークを吸着可能に構成されている。マグネットチャックは、筐体の上面に接続された昇降装置によって上下方向に移動可能である。
【0004】
一方、特許文献2に記載のマグネットチャックは、筐体内にシリンダ孔が形成され、このシリンダ孔内にピストンが上下方向に移動可能に設けられている。ピストンの下部には永久磁石が取り付けられて、ピストンとともに永久磁石がシリンダ孔内を上下方向に移動可能である。このマグネットチャックの下端には、上下方向に直交する横方向に延びるワーク吸着面が形成され、マグネットチャックの上端には、マグネットチャックを上下方向に移動させるためのロボットアームが連結されている。
【0005】
これらのマグネットチャックによってワークを吸着させる場合において、ワークの上面がワーク吸着面に対して傾いていると、マグネットチャックの降下時に、ワーク吸着面の一部がワーク上面に当接して、ワーク吸着面をワーク上面に倣わせることができない。このため、マグネットチャックは、ワークをワーク吸着面で吸着することができない。
【0006】
そこで、特許文献1及び2に記載のマグネットチャックのそれぞれの上部に特許文献3に記載の関節、すなわち、上下方向に対して直交する方向の軸周りにマグネットチャックを回転可能にする関節を設けると、ワーク吸着面の一部がワーク上面に当接しても、マグネットチャックをさらに下方に移動させることで、マグネットチャックが関節の軸周りに回動してワーク吸着面をワーク上面に倣わせた状態で接触させることができる。
【0007】
しかしながら、マグネットチャックは、関節の軸周りに回動するとともに下方に移動すると、ワーク吸着面がワーク上面を吸着する位置が所定位置に対してずれてしまう。また、枠体内に永久磁石が移動可能なマグネットチャックでは、上下方向の寸法が横方向の寸法に対してより大きくなるので、このずれ量もより増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-171784号公報
【特許文献2】特開2019-186324号公報
【特許文献3】実用新案登録第3087910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の技術的課題は、ワーク吸着面に対してワークの上面が傾いている場合でも、ワーク上面の所定位置にワーク吸着面を倣わせた状態で吸着させることができるワーク吸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するため、本発明に係るワーク吸着装置は、第1軸方向に往復動可能であり、その移動方向の両端に先端及び基端を有した支持ロッド部と、第2軸方向の両端に一端及び他端を有し前記支持ロッド部の先端に一端が第1ジョイント部で回動自在に連結された回動アーム部と、第3軸方向の両端に先端及び基端を有する筐体を有し、前記筐体の基端が前記回動アーム部の他端に第2ジョイント部で回動自在に連結され、磁力によってワークを吸着するためのチャックユニットと、を有するマグネットチャックを備えるワーク吸着装置であって、前記マグネットチャックにおいて、前記チャックユニットは、前記筐体の先端に前記第3軸に対して直交する方向に延びるワーク吸着面が形成されており、前記第1ジョイント部は、第1中心点を有しており、前記支持ロッド部と前記回動アーム部とは、前記第1中心点を中心として相互に回動自在であり、前記第2ジョイント部は、第2中心点を有しており、前記回動アーム部と前記チャックユニットとは、前記第2中心点を中心として相互に回動自在である、ことを特徴とする。
【0011】
この場合において、好ましくは、前記チャックユニットは、前記筐体の内側に形成されて前記第3軸方向に延びるシリンダ孔と、前記シリンダ孔内を移動可能に設けられたチャックピストンと、前記チャックピストンに取り付けられて前記チャックピストンとともに移動する永久磁石と、を有しており、前記永久磁石は、前記第3軸方向において、前記永久磁石を前記筐体の先端側に移動させて前記ワークを前記ワーク吸着面で吸着させるための吸着位置と、前記永久磁石を前記筐体の基端側へ移動させて前記ワークの吸着を解除するための吸着解除位置との間で往復動可能である。
【0012】
また、好ましくは、前記第1ジョイント部は、前記第1中心点を有した第1ボール体と、前記第1ボール体を摺動自在に収容する第1凹部と、を有して構成され、前記第2ジョイント部は、前記第2中心点を有した第2ボール体と、前記第2ボール体を摺動自在に収容する第2凹部と、を有して構成されている。また、好ましくは、前記第1ジョイント部において、前記第1ボール体は前記支持ロッド部に取り付けられ、前記第1凹部は前記回動アーム部の一端に開口しており、前記第2ジョイント部において、前記第2ボール体は前記チャックユニットの基端に取り付けられ、前記第2凹部は前記回動アーム部の他端に開口している。
【0013】
また、好ましくは、前記回動アーム部は、前記第1ジョイント部の前記第1凹部に収容された前記第1ボール体と前記第1凹部との相対回動、及び前記第2ジョイント部の前記第2凹部に収容された前記第2ボール体と前記第2凹部との相対回動をロック及びロック解除可能な第1ロック機構部を有している。
【0014】
この場合において、好ましくは、前記回動アーム部は、その一端に取り付けられて前記第2軸方向に貫通する第1貫通孔を有した第1カバー部材と、前記回動アーム部の他端に取り付けられて前記第2軸方向に貫通する第2貫通孔を有した第2カバー部材と、を有し、前記第1ロック機構部は、前記第1及び前記第2カバー部材のそれぞれに形成された前記第1及び前記第2貫通孔と、前記回動アーム部の一端側及び他端側の各内部に形成された第1及び第2シリンダ孔と、前記第1シリンダ孔内に移動可能に設けられて一端側に開口する第1穴部を有した第1ピストンと、前記第2リンダ孔内に移動可能に設けられて他端側に開口する第2穴部を有した第2ピストンと、前記第1シリンダ孔の前記第2軸方向の他端側に形成されて前記第1ピストンによって区画された第1圧力室と、前記第2シリンダ孔の前記第2軸方向の一端側に形成されて前記第2ピストンによって区画された第2圧力室と、を有して構成されており、前記第1貫通孔及び前記第1穴部は、前記第2軸方向において連通し、前記第1貫通孔及び前記第1穴部で囲まれた内側空間は、前記第1ボール体を収容する前記第1凹部を形成し、前記第1貫通孔の内面には、前記第1ボール体の前記第2軸方向の一端側の外面に摺接する第1外側摺接面が形成され、前記第1穴部の内面には、前記第1ボール体の前記第2軸方向の他端側の外面に摺接する第1内側摺接面が形成されており、前記第2貫通孔及び前記第2穴部は、前記第2軸方向において連通し、前記第2貫通孔及び前記第2穴部で囲まれた内側空間は、前記第2ボール体を収容する前記第2凹部を形成し、前記第2貫通孔の内面には、前記第2ボール体の前記第2軸方向の他端側の外面に摺接する第2外側摺接面が形成され、前記第2穴部の内面には、前記第2ボール体の前記第2軸方向の一端側の外面に摺接する第2内側摺接面が形成されており、前記第1及び前記第2シリンダ孔のそれぞれの前記第1及び前記第2圧力室に対して圧縮空気を給排することにより、前記第1及び前記第2ピストンを前記第2軸方向に往復動させることができるようになっており、前記第1及び前記第2圧力室に供給される圧縮空気で、前記第1ピストンを前記第2軸方向の一端側に、前記第2ピストンを前記第2軸方向の他端側に移動させることにより、前記第1外側摺接面及び前記第1内側摺接面で前記第1ボール体を挟持させるとともに、前記第2外側摺接面及び前記第2内側摺接面で前記第2ボール体を挟持させ、それにより、前記回動アーム部は、前記支持ロッド部及び前記チャックユニットのそれぞれに対して回動がロックされる。
【0015】
また、好ましくは、前記第1貫通孔の前記第1外側摺接面は、前記第1ボール体の前記第1中心点よりも前記第2軸方向の一端側の外面に接触し、前記第1穴部の前記第1内側摺接面は、前記第1ボール体の前記第1中心点よりも前記第2軸方向の他端側の外面に接触し、前記第2貫通孔の前記第2外側摺接面は、前記第2ボール体の前記第2中心点よりも前記第2軸方向の他端側の外面に接触し、前記第2穴部の前記第2内側摺接面は、前記第2ボール体の前記第2中心点よりも前記第2軸方向の一端側の外面に接触する。また、好ましくは、前記第1ピストンの前記第1内側摺接面は、前記第2軸方向の一端側に進むに従って内径が拡大する円錐面に形成され、前記第2ピストンの前記第2内側摺接面は、前記第2軸方向の他端側に進むに従って内径が拡大する円錐面に形成されている。
【0016】
また、本発明に係わるワーク吸着装置は、請求項5から8のいずれか1項に記載の複数の前記マグネットチャックと、複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部を往復動可能に支持する支持部と、を有し、前記支持部は、前記第1軸に対して直交する方向に延び、複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部を個別に往復動可能に挿通する複数の貫通孔を有したアーム支持部材と、複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部を個別に挿通する連通孔を有して前記アーム支持部材に取り付けられ、前記アーム支持部材に対して前記支持ロッド部をロック及びロック解除可能な第2ロック機構部を有した複数の連結部と、複数の前記支持ロッド部のそれぞれに取り付けられ、前記支持ロッド部の移動によって前記連結部の前記第1軸方向の一端に当接して、前記貫通孔から前記支持ロッド部が抜脱されるのを防止する複数の抜止部材と、複数の前記マグネットチャックのそれぞれにおける前記連結部と前記支持ロッド部との間に設けられ、複数の前記マグネットチャックのそれぞれを前記アーム支持部材に対して前記第1軸方向の先端側へ付勢する複数のばね部材と、を有して構成され、複数の前記マグネットチャックの各支持ロッド部は、互いに間隔を有してそれぞれの前記第1軸が平行になるように前記アーム支持部材に配置されている、ことを特徴とする。
【0017】
この場合において、好ましくは、前記連結部の前記第2ロック機構部は、前記第1軸方向に延びて前記連結部の前記連通孔に形成された第3シリンダ孔と、前記第3シリンダ孔内において、前記支持ロッド部の側面に対向して配置された押圧面を有するブレーキパッドと、前記第3シリンダ孔内を前記第1軸方向に移動可能であり、前記ブレーキパッドよりも前記第1軸の径方向外側の前記第3シリンダ孔内に配置された傾斜面を有する第3ピストンと、前記ブレーキパッドと前記傾斜面との間に配置されて前記第3ピストンの移動により前記傾斜面から径方向内側を向く押圧力を受ける押圧部材と、前記第3ピストンによって前記第3シリンダ孔が区画された第3圧力室と、を有して構成され、前記第3シリンダ孔の前記第3圧力室に対して圧縮空気を給排することにより、前記第3ピストンを前記第1軸方向に往復動させることができるようになっており、前記第3圧力室に供給された圧縮空気で前記第3ピストンを移動させることにより、前記押圧部材が前記傾斜面から径方向内側を向く押圧力を受けて前記ブレーキパッドを径方向内側へ押圧して、前記押圧面が前記支持ロッド部の側面を押圧し、それにより、前記アーム支持部材に対して前記支持ロッド部がロックされる。
【0018】
また、好ましくは、前記連結部は、前記第1軸方向の両側に一端及び他端を有し、一端が前記アーム支持部材に取り付けられ、内部に前記連通孔が形成された連結胴部を有し、前記連結胴部は、その一端に取り付けられて前記第1軸方向に貫通する挿通孔を有して前記アーム支持部材の前記貫通孔に挿通される固定部材を備え、前記挿通孔は、前記連結胴部の前記連通孔に連通して、前記挿通孔及び前記連通孔に前記支持ロッド部が挿通され、前記固定部材は、前記アーム支持部材の前記貫通孔に挿通された状態で、前記アーム支持部材に着脱可能に取り付けられ、それにより、前記連結胴部は、前記アーム支持部材に着脱可能に取り付けられている。
【0019】
また、好ましくは、前記固定部材は、前記アーム支持部材の前記第1軸方向の一端側の端面から突出した状態で前記アーム支持部材に取り付けられ、前記支持ロッド部は、その基端部が前記固定部材における前記挿通孔の前記第1軸方向の一端から突出した状態で、前記支持ロッド部の基端部に前記抜止部材が取り付けられ、前記抜止部材は、前記固定部材の前記挿通孔の内径よりも大きく、且つ前記アーム支持部材の前記貫通孔の内径よりも小さい直径を有した円柱状に形成されている。
【0020】
また、好ましくは、前記ばね部材は、前記連結胴部の他端と前記支持ロッド部の先端部との間に配置された圧縮ばねである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、ワーク吸着面に対してワークの上面が傾いている場合でも、ワーク上面の所定位置にワーク吸着面を倣わせた状態で吸着させることができるワーク吸着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係わるワーク吸着装置の正面図である。
【
図3】
図2のIII-III矢視に相当するワーク吸着装置の断面図である。
【
図4】連結部が挿着された伸長状態にあるマグネットチェックの正面図である。
【
図5】
図4のV-V矢視に相当するマグネットチェック及び連結部の断面図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII矢視に相当する回動アーム部の断面図である。
【
図10】第1及び第2ジョイント部が回動状態にあるときの回動アーム部の断面図である。
【
図11】永久磁石が吸着位置に移動したチャックユニットの断面図である。
【
図12】永久磁石が吸着解除位置に移動したチャックユニットの断面図である。
【
図13】支持ロッド部が挿通された連結部の正面図である。
【
図14】
図13のXIV-XIV矢視に相当する支持ロッド部及び連結部の断面図である。
【
図16】支持ロッド部及び連結部の分解斜視図である。
【
図17】ワーク吸着面に対してワーク上面が右上がりに傾いている場合において、チャックユニットでワークを吸着する際の作用説明図である。
【
図18】ワーク吸着面に対してワーク上面が右下がりに傾いている場合において、チャックユニットでワークを吸着する際の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るワーク吸着装置について説明する。本実施形態では、ワーク吸着装置は複数のマグネットチャックを有し、マグネットチャックのチャックユニットはその筐体内に永久磁石を移動可能に設けたものを例にして説明する。なお、ワーク吸着装置はマグネットチャックを1つ有したものでもよく、またマグネットチャックはその筐体内に電磁石を固定したものでもよい。
【0024】
図1-
図3は、本発明に係るワーク吸着装置1の一実施形態を示すものである。このワーク吸着装置1は、複数のマグネットチャック5と支持部70とを有して構成され、これらマグネットチャック5は支持部70に対して往復動可能に支持される。本実施形態では、マグネットチャック5は支持部70に対して4つ設けられており、支持部70は、例えばロボットの先端アームや昇降機械等に連結されて、ワーク吸着装置1の全体が支持部70のアーム支持部材71に対して直交する方向(以下、「第1軸L1方向」と記すことがある。)に移動可能である。
【0025】
マグネットチャック5は、
図5に示すように、第1軸L1方向に往復動可能であり、その移動方向の両端に先端6a及び基端6bを有した支持ロッド部6と、第2軸L2方向の両端に基端20b(一端)及び先端20a(他端)を有し支持ロッド部6の先端6aに基端20bが第1ジョイント部10で回動自在に連結された回動アーム部20と、第3軸L3方向の両端に先端51a及び基端51bを有する筐体51を有し、筐体51の基端51bが回動アーム部20の先端20aに第2ジョイント部40で回動自在に連結され、磁力によってワークを吸着するためのチャックユニット50と、を有する。本実施形態では、マグネットチャック5は、第1軸L1方向の基端側から先端側へ向かって、支持ロッド部6と、第1ジョイント部10と、回動アーム部20と、第2ジョイント部40と、チャックユニット50と、を有して構成される。なお、
図5は、支持ロッド部6が後述する連結部75に挿着された状態を示している。
【0026】
本実施形態では、支持ロッド部6は、第1軸L1方向に沿って延びる細長の円柱状に形成されている。支持ロッド部6の基端6bには、後述する抜止部材3が螺合して取り付けられ、支持ロッド部6の先端6aには、連結ナット2が螺合して取り付けられている。
【0027】
第1ジョイント部10は、
図5,
図8-
図10に示すように、第1ボール体11と、第1ボール体11を摺動自在に収容する第1凹部12と、を有して構成されている。第1ジョイント部は、その中心である第1中心点S1を有しており、支持ロッド部6と回動アーム部20とが、第1中心点S1を中心として相互に回動自在に連結されている。
【0028】
本実施形態では、第1ボール体11は、球状に形成されており、第1ボール体11の第1軸L1方向の基端側が、連結ナット2に螺合して取り付けられており、第1中心点S1は第1軸L1上に位置している。
【0029】
第1凹部12は、回動アーム部20の伸長方向(第2軸L2方向)の基端6aに開口している。本実施形態では、第1凹部12は、
図8及び
図9に示すように、回動アーム部20の基端20bに取り付けられた第1カバー部材21の第1貫通孔22と、回動アーム部20の基端側の内部に設けられた第1ピストン23の第2軸L2方向の基端側(一端側)に開口する第1穴部24と、を有して構成されており、第1貫通孔22及び第1穴部24は、第2軸L2方向において連通し、第1貫通孔22及び第1穴部24で囲まれた内側空間26は、第1ボール体11を収容する第1凹部12を形成している。
【0030】
第1カバー部材21は、本実施形態では、板状に形成されており、第1カバー部材21の外周部が複数のボルト25等の締結手段で回動アーム部20の基端20bに固定されている。第1カバー部材21の中央部には、第2軸L2方向に貫通する第1貫通孔22が形成されている。第1貫通孔22は、第1カバー部材21の第2軸L2方向の両端で開口し、その内面は第2軸L2周りに環状に延びて第1ボール体11の基端側の外面に沿って摺接する第1外側摺接面22aを形成している。第1外側摺接面22aは、第1ボール体11の第1中心点S1よりも第2軸L2方向の基端側の外面に接触する。
【0031】
第1ピストン23の第1穴部24は、本実施形態では、第2軸L2方向の基端側から先端側へ向かって窪んだ半球状に形成されており、第1穴部24の内面は第1ボール体11の先端側の外面に摺接する第1内側摺接面24aを形成している。第1内側摺接面24aは、基端側に進むに従って内径が拡大する円錐面に形成されており、第1ボール体11の第1中心点S1よりも第2軸L2方向の先端側の外面に接触する。
【0032】
このように、第1ボール体11は、
図5及び
図10に示すように、第1凹部12内に回動自在に支持されているので、支持ロッド部6と回動アーム部20とは、第1ボール体11の第1中心点S1を中心として相互に回動自在である。なお、第1ピストン23の詳細については後述する。
【0033】
本実施形態では、回動アーム部20は、
図6-
図10に示すように、第2軸L2方向に伸びる筒状に形成されている。回動アーム部20の内部には、第2軸L2方向に貫通するアーム貫通孔27が形成されており、回動アーム部20の基端側及び先端側の各内部には第1シリンダ孔28及び第2シリンダ孔29が形成されている。第1及び第2シリンダ孔28,29は、同一内径及び同一深さを有し、且つアーム貫通孔27の内径よりも大径である。第1シリンダ孔28には第1ピストン23が、第2シリンダ孔29には第2ピストン30が移動可能に設けられている。
【0034】
第1シリンダ孔28の深さは、第1ピストン23の第1内側摺接面24aが第1ボール体11の外面に当接した状態において、第1ピストン23の先端側の頂部23aと第1シリンダ孔28の底面との間に隙間31が形成されるような大きさを有している。この隙間31を第1ピストン23が先端側に向かって後退することで、第1凹部12に対する第1ボール体11の回動が可能となる。
【0035】
本実施形態では、第1ピストン23は、
図8,
図10に示すように、円柱状に形成されており、第1ピストン23の先端側の外周面には、周方向に延びる環状の凹溝23bが形成されている。この凹溝23b内には、第1ピストン23の外周面と第1シリンダ孔28の内周面との間をシールするシール部材23cが装着されている。シール部材23cは、リップ型のシール部材であり、シール部材23cのリップ部23dは、第1ピストン23の先端側へ向かうに従って外径が拡大する方向に傾いている。このため、リップ部23dは、第1ピストン23の外周面と第1シリンダ孔28の内周面との間において、先端側から基端側への圧縮空気の流通を阻止する。
【0036】
第1シリンダ孔28の先端側には第1ピストン23によって区画された第1圧力室28aが形成されている。本実施形態では、第1圧力室28aは、第1ピストン23の頂部23aと第1シリンダ孔28の底面との間に形成されており、アーム貫通孔27に連通している。回動アーム部20の第2軸L2方向の中間部には、圧縮空気を外部からアーム貫通孔27に導入可能な給排ポート20dが形成されている。
【0037】
回動アーム部20の先端20aとチャックユニット50の筐体51の基端51bとを連結する第2ジョイント部40は、本実施形態では、
図5及び
図8-
図10に示すように、前述した第1ジョイント部10と同様に構成されており、第2ボール体41と、第2ボール体41を摺動自在に収容する第2凹部42と、を有して構成される。第2ジョイント部40は、第2中心点S2を有しており、回動アーム部20とチャックユニット50とが、第2中心点S2を中心として相互に回動自在に連結されている。
【0038】
本実施形態では、第2ボール体41は、球状に形成されており、第2ボール体41の第3軸L3方向(チャックユニット50の伸長方向)の先端側がチャックユニット50の筐体51に取り付けられており、第2中心点S2は第3軸L3上に位置している。
【0039】
第2凹部42は回動アーム部20の先端に開口している。本実施形態では、第2凹部42は、回動アーム部20の先端に取り付けられた第2カバー部材32の第2貫通孔33と、回動アーム部20の先端側の内部に設けられた第2ピストン30の第2軸L2方向の先端側に開口する第2穴部34と、を有して構成されており、第2貫通孔33及び第2穴部34は、第3軸L3方向において連通し、第2貫通孔33及び第2穴部34で囲まれた内側空間35は、第2ボール体41を収容する第2凹部42を形成している。
【0040】
第2カバー部材32は、本実施形態では、
図8-
図10に示すように、板状に形成されており、第2カバー部材32の外周部がボルト25等の締結部材で回動アーム部20の先端20aに固定されている。第2カバー部材32の中央部には第2軸L2方向に貫通する第2貫通孔33が形成されており、第2貫通孔33の第2軸L2方向の両端は開口し、第2貫通孔33の内面は第2軸L2周りに環状に延びて第2ボール体41の他端側の外面に沿って摺接する第2外側摺接面33aを形成している。第2外側摺接面33aは、第2ボール体41の第2中心点S2よりも第2軸L2方向の先端側の外面に接触する。
【0041】
第2ピストン30の第2穴部34は、本実施形態では、先端側から基端側へ向かって窪んだ半球状に形成されている。第2穴部34の内面は第2ボール体41の基端側の外面に摺接する第2内側摺接面34aを形成しており、本実施形態では、第2内側摺接面34aは、先端側に進むに従って内径が拡大する円錐面に形成されており、第2ボール体41の第2中心点S2よりも第2軸L2方向の基端側の外面に接触する。
【0042】
このように、第2ボール体41は第2凹部42内に回動自在に支持されているので、回動アーム部20と
図5に示すチャックユニット50は、第2ボール体41の第2中心点S2を中心として相互に回動自在である。
【0043】
また、本実施形態では、第2ピストン30を移動可能に収容する第2シリンダ孔29の深さは、第2ピストン30の第2内側摺接面34aが第2ボール体41の外面に当接した状態において、第2ピストン30の基端側の頂部30aと第2シリンダ孔29の底面との間に隙間31が形成されるような大きさを有している。この隙間31を第2ピストン30が基端側に向かって後退することで、第2凹部42に対する第2ボール体41の回動が可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、第2ピストン30は、円柱状に形成されており、第2ピストン30の外周面には、周方向に延びる環状の凹溝30bが形成されており、この凹溝30b内に第2ピストン30の外周面と第2シリンダ孔29の内周面との間をシールするシール部材30cが装着されている。このシール部材30cは、リップ型のシール部材であり、シール部材30cのリップ部30dは、先端側から基端側へ向かうに従って外径が拡大する方向に傾いている。このため、リップ部30dは、第2ピストン30の外周面と第2シリンダ孔29の内周面との間において、基端側から先端側への圧縮空気の流通を阻止する。
【0045】
第2シリンダ孔29の基端側には第2ピストン30によって区画された第2圧力室29aが形成されている。本実施形態では、第2圧力室29aは、第2ピストン30の基端側の頂部30aと第2シリンダ孔29の底面との間に形成されており、アーム貫通孔27に連通している。
【0046】
ところで、回動アーム部20には、
図8及び
図10に示すように、第1ジョイント部10の第1凹部12に収容された第1ボール体11と第1凹部12との相対回動、及び第2ジョイント部40の第2凹部42に収容された第2ボール体41と第2凹部42との相対回動をロック及びロック解除可能な第1ロック機構部37が設けられている。
【0047】
本実施形態では、第1ロック機構部37は、第1及び第2カバー部材21,32のそれぞれに形成された第1及び第2貫通孔22,33と、回動アーム部20の基端側及び先端側の各内部に形成された第1及び第2シリンダ孔28,29と、第1シリンダ孔28内に移動可能に設けられた第1ピストン23と、第2リンダ孔29内に移動可能に設けられた第2ピストン30と、第1シリンダ孔28に形成された第1圧力室28aと、第2シリンダ孔29に形成された第2圧力室29aと、を有して構成される。
【0048】
第1ロック機構部37は、給排ポート20dからアーム貫通孔27に圧縮空気が導入されると、第1及び第2シリンダ孔28,29のそれぞれの第1及び第2圧力室28a,29aに対して圧縮空気が供給されて、第1及び第2ピストン23,30を第2軸L2方向の先端側及び基端側に移動させ又は押圧することができる。従って、第1外側摺接面22a及び第1内側摺接面24aで第1ボール体11を挟持させるとともに、第2外側摺接面33a及び第2内側摺接面34aで第2ボール体41を挟持させて、それにより、回動アーム部20は、
図5に示す支持ロッド部6及びチャックユニット50のそれぞれに対する回動がロックされる。
【0049】
また、アーム連通孔27内の圧縮空気が給排ポート20dから排出されると、第1及び第2ピストン23,30の第1及び第2ボール体11,41に対する押圧力が開放された状態になる。従って、第1外側摺接面22a及び第1内側摺接面24aによる第1ボール体11の挟持が開放されるとともに、第2外側摺接面33a及び第2内側摺接面34aによる第2ボール体41の挟持が開放されて、それにより、回動アーム部20は、
図5に示す支持ロッド部6及びチャックユニット50のそれぞれに対して回動が可能な状態、すなわち、ロックが解除された状態となる。
【0050】
次に、チャックユニット50について説明する。チャックユニット50は、
図5,
図11,
図12に示すように、筐体51と、筐体51の内側に形成されて第3軸L3方向に延びるシリンダ孔52aと、シリンダ孔52a内を移動可能に設けられたチャックピストン57と、チャックピストン57に取り付けられてチャックピストン57とともに移動する永久磁石60と、を有して構成されており、磁力によってワーク110を吸着するものである。
【0051】
本実施形態では、筐体51は、第3軸L3方向に延びる直方体状に形成され、内部にシリンダ孔52aが形成されたシリンダチューブ52と、シリンダチューブ52の基端に取り付けられたトップカバー53と、シリンダチューブ52の先端に取り付けられたボトムカバー54と、を有してなる。シリンダ孔52aは、チャックピストン57によって第3軸L3方向の基端側に形成された第1圧力室52bと、第3軸L3方向の先端側に形成された第2圧力室52cとに区画されている。
【0052】
シリンダチューブ52の側壁52eの先端側には、エア給排用の第1ポート52dが形成されており、第1ポート52dは第2圧力室52cに連通している。シリンダチューブ52の側壁52eの基端側には、エア給排用の第2ポート52fが形成されており、この第2ポート52fは第1圧力室52bに連通している。シリンダ孔52aの基端側には、ラッチヨーク56が挿着されてシリンダ孔52aの基端側の開口を塞いでいる。
【0053】
チャックピストン57は、基端側に配置された円板状のシールホルダ58と、シールホルダ58の先端側端面の中央部に取り付けられたコアヨーク59と、コアヨーク59の周方向外側に配置された永久磁石60と、永久磁石60の周方向外側に配置されたカバーヨーク61と、永久磁石60の先端に取り付けられたリングプレート62と、を有してなる。
【0054】
シールホルダ58は、その外周面に形成された環状の凹溝内にシリンダ孔52aの内面に摺接するピストンシール63が設けられている。コアヨーク59は、円柱状に形成されており、コアヨーク59の先端部には先端に開口する凹部59bが形成されている。
【0055】
カバーヨーク61は、円筒状に形成され、シールホルダ58の先端側端面の外周部に取り付けられている。カバーヨーク61の基端側に形成された2つの環状溝には、ウエアリング65,65が設けられている。これらウエアリング65,65によって、チャックピストン57がシリンダ孔52aに沿って案内支持される。カバーヨーク61の内周面とコアヨーク59の外周面との間には、環状の空間部66が形成されており、この空間部66内に永久磁石60が挿着されている。
【0056】
ボトムカバー54は、円板状に形成されており、シリンダ孔52aの先端の開口を塞いでいる。ボトムカバー54の先端には、第3軸L3方向に対して直交する方向に延びるワーク吸着面48aが形成されている。
【0057】
このように構成されたチャックユニット50は、シリンダ孔52aの第1及び第2圧力室52b、52cに対して圧縮空気を給排することにより、チャックピストン57を第3軸L3方向に往復移動させることができ、そして、永久磁石60を、第3軸L3方向において、筐体51の先端側に移動させてワーク110をワーク吸着面48aで吸着させる吸着位置P1(
図11参照)と、筐体51の基端側へ移動させてワーク110の吸着を解除する吸着解除位置P2(
図12参照)との間で移動可能である。
【0058】
トップカバー53は、筐体51の基端51bにボルト等の締結手段によって固定されており、トップカバー53の中央には、第2ボール体41の先端部が螺合して取り付けられている。
【0059】
このように、チャックユニット50の筐体51は、永久磁石60を吸着位置P1と吸着解除位置P2との間で移動させるためのシリンダ孔52aが第3軸L3方向に延びている。また、第2ボール体41が筐体51の基端側に突出して取り付けられている。このため、チャックユニット50は、第3軸L3方向に縦長の直方体状に形成されている。
【0060】
次に、支持部70について説明する。支持部70は、
図1及び
図3に示すように、複数のマグネットチャック5の各支持ロッド部6を個別に往復動可能に挿通する複数の貫通孔71aを有したアーム支持部材71と、複数のマグネットチャック5の各支持ロッド部6を個別に挿通する連通孔77を有してアーム支持部材71に取り付けられた複数の連結部75と、複数の支持ロッド部6のそれぞれに取り付けられ、各支持ロッド部6の移動によって連結部75の基端に当接して、貫通孔71aから支持ロッド部6が抜脱されるのを防止する複数の抜止部材3と、複数のマグネットチャック5のそれぞれに設けられた連結部75と支持ロッド部6との間に位置して、複数のマグネットチャック5のそれぞれをアーム支持部材71に対して第1軸L1方向の先端側へ付勢する複数の圧縮コイルばね108(ばね部材、圧縮ばね)と、を有して構成される。
【0061】
本実施形態では、アーム支持部材71は、第1軸L1に対して直交する方向(横方向)に延びる板状に形成され、第1軸L1方向の両端に先端面及び基端面を有しており、貫通孔71aが横方向に等間隔を有してアーム支持部材71に複数形成されている。アーム支持部材71の横方向の中央部には、第1軸L1に沿って基端側へ突出する連結支持部71bが取り付けられている。この連結支持部71bに、例えばロボットの先端アームや昇降機械等が接続される。複数の貫通孔71aのそれぞれには、支持ロッド部6が第1軸L1方向に沿って挿通されている。
【0062】
連結部75は、
図3,
図13-
図16に示すように、第1軸L1方向に延びてその両側に基端76b(一端)及び先端76c(他端)を有する連結胴部76を備えている。連結胴部76の内部には、第1軸L1方向に延びる連通孔77が貫通している。
【0063】
連結胴部76の連通孔77には、アーム支持部材71に対して支持ロッド部6をロック及びロック解除可能な第2ロック機構部80が設けられている。第2ロック機構部80は、本実施形態では、連通孔77の基端側に設けられた基端側第2ロック機構部81と、連通孔77の先端側に設けられた先端側第2ロック機構部82とを有して構成される。
【0064】
基端側第2ロック機構部81は、
図14-
図16に示すように、連結胴部76の連通孔77の基端側に形成されて第1軸L1方向に延びる第3シリンダ孔78と、第3シリンダ孔78内において、支持ロッド部6の側面に対向して配置された押圧面83dを有するブレーキパッド83と、第3シリンダ孔78内を第1軸L1方向に移動可能であり、ブレーキパッド83よりも第1軸L1の径方向外側の第3シリンダ孔78内に配置された傾斜面84aを有する第3ピストン84と、ブレーキパッド83と傾斜面84aとの間に配置されて第3ピストン84の移動により傾斜面84aから径方向内側を向く押圧力を受ける押圧部材85と、第3ピストン84によって第3シリンダ孔78が区画された第3圧力室86と、を有して構成される。
【0065】
本実施形態では、第3シリンダ孔78は、連結胴部76の基端で開口する円筒状に形成されており、第3シリンダ孔78の内径は連通孔77の内径よりも大きい。第3シリンダ孔78の先端には、第1軸L1方向に対して直交する方向に延びる段部78aが環状に形成されている。
【0066】
また、本実施形態では、ブレーキパッド83は、合成樹脂等の弾性部材によって円筒状に形成されている。ブレーキパッド83は、周方向に等間隔を有して分割された複数のブレーキ片83aを有して構成されている。各ブレーキ片83aは、第1軸L1を中心として径方向外側へ広がる扇形状に形成されており、ブレーキ片83aの径方向内側には、支持ロッド部6の側面が摺接する円弧状の押圧面83dが形成されている。この押圧面83dは、複数のブレーキ片83aを周方向に連続して配置すると、支持ロッド部6の外周面を囲んで支持ロッド部6が挿通される貫通孔83bの一部を構成する。押圧面83dには、径方向内側に開口して支持ロッド部6の周りを囲むように延びる環状の溝部83eが第1軸L1方向に間隔を有して複数形成されている。ブレーキ片83aの外面には、押圧部材85の一部を収容して第1軸L1方向に延びる凹溝83cが形成されている。
【0067】
また、本実施形態では、第3ピストン84は、円柱状に形成されており、第3ピストン84の中央部には第1軸L1方向に貫通する貫通孔84bが形成されている。この貫通孔84bに支持ロッド部6が第1軸L1方向に移動自在に挿通されている。第3ピストン84の基端には第3穴部84cが開口しており、この第3穴部84cは第3ピストンの第1軸L1方向の中間部まで窪んでいる。第3穴部84cの内面は、押圧部材85を囲むように環状に延びて基端側に進むに従って内径が拡大する傾斜面84aを形成している。
【0068】
第3ピストン84の先端側の外周面には、周方向に延びる環状の凹溝84dが形成されており、この凹溝84d内に第3ピストン84の外周面と第3シリンダ孔78の内周面との間をシールするシール部材87が挿着されている。また、第3ピストン84の貫通孔84bの内面には、周方向に延びる環状の凹溝内に貫通孔84bの内面と支持ロッド部6の側面との間をシールするシール部材88が挿着されている。これらシール部材87,88のそれぞれは、リップ型のシール部材であり、これらリップ部87a,88aは、第1軸L1方向の先端側へ向かうに従って外径が拡大する方向に傾いている。このため、これらリップ部87a,88aは、第3ピストン84の外周面と第3シリンダ孔78の内周面との間及び、貫通孔84bの内面と支持ロッド部6の側面との間において、先端側から基端側への圧縮空気の流通を阻止することができる。
【0069】
また、本実施形態では、押圧部材85は、金属製の複数の球体85aを有しており、複数の球体85aは、複数のブレーキ片83aのそれぞれの凹溝83b内に挿入されている。複数の球体85aは、球体支持部材89によって支持されている。
【0070】
また、本実施形態では、球体支持部材89は、基端に開口する穴部89aを有した円筒状に形成されており、球体支持部材89の基端部には、径方向外側へ突出するフランジ部89bが環状に形成されている。フランジ部89bは、連結胴部76の基端上に設置された状態でボルト89c等の締結手段によって連結胴部76に固定されている。穴部89aは、第1軸L1方向に沿って先端側まで延びる円筒状に形成されており、穴部89aの底部は第1軸L1方向に対して直交する方向に延びる。穴部89aの底部の中央部には、支持ロッド部6が挿通される貫通孔89dが形成されている。穴部89a内には、支持ロッド部6に装着されたブレーキパッド83が収容される。穴部89aの底面には、ブレーキパッド83の先端が接触している。これによりブレーキパッド83の先端側への移動が阻止される。
【0071】
球体支持部材89の側壁90の外面は、基端側に進むに従って外径が拡大する傾斜面90aを形成している。この傾斜面90aは、第3ピストン84の傾斜面84aと略平行に延びている。球体支持部材89の側壁90には、球体85aを収容するための孔部90bが周方向に等間隔を有して複数形成されている。複数の孔部90bのそれぞれは、複数のブレーキ片83aの凹溝83cのそれぞれに対向して配置され、径方向に向かって側壁90を貫通している。孔部90bの内径は、球体85aの直径よりも僅かに大きく、また側壁90の厚さ(孔部90bの長さ)は、球体85aの直径よりも小さい。このため、球体85aは、孔部90b内を径方向に移動可能であり、球体85aの両端は、孔部90bの両端のそれぞれから突出している。球体85aの径方向内側の端部はブレーキパッド83の凹溝83cの内面に接触し、球体85aの径方向外側の端部は第3ピストン84の傾斜面84aに接触している。
【0072】
球体85aの径方向両側の端部がブレーキ片83a及び第3ピストン84に接触した状態において、第3ピストン84の第3穴部84cの内面と球体支持部材89の外面との間、及び第3ピストン84の基端側の端面と球体支持部材89の基端側の内面との間には、隙間91が形成される。このため、第3ピストン84が基端側へ移動した場合に、第3ピストン84の傾斜面84aによって球体85aを押圧することができる。
【0073】
第3圧力室86は、第3ピストン84によって第3シリンダ孔78の先端側を区画して形成されている。本実施形態では、第3圧力室86は、第3ピストン84の先端側の頂部84eと第3シリンダ孔78の底面との間に形成されており、連通孔77に連通している。連結胴部76の第1軸L1方向の中間部には、圧縮空気を外部から連通孔77に導入可能な給排ポート92が形成されている。
【0074】
次に、先端側第2ロック機構部82について説明する。先端側第2ロック機構部82は、前述した基端側第2ロック機構部81と略同様に構成されているので、基端側第2ロック機構部81と相違する部分について説明し、基端側第2ロック機構部81と同一態様部分については説明を簡略化する。
【0075】
本実施形態では、先端側第2ロック機構部82は、
図15及び
図16に示すように、連結部75の連通孔77の先端側に形成された第4シリンダ孔79と、第4シリンダ孔79内において、支持ロッド部6の側面に対向して配置された押圧面83dを有するブレーキパッド83と、第4シリンダ孔79内を移動可能であり、ブレーキパッド83よりも径方向外側の第4シリンダ孔79内に配置された傾斜面94aを有する第4ピストン94と、ブレーキパッド83と傾斜面94aとの間に配置されて第4ピストン94の移動により傾斜面94aから径方向内側を向く押圧力を受ける押圧部材85と、第4ピストン94によって第4シリンダ孔79が区画された第4圧力室95と、を有して構成される。
【0076】
第4シリンダ孔79は、連結胴部76の先端に開口する円筒状に形成されており、第4シリンダ孔79の内径は、連通孔77の内径よりも大きい。第4シリンダ孔79の基端側の端部には、第1軸l1方向に対して直交する方向に延びる段部79aが環状に形成されている。
【0077】
ブレーキパッド83は、基端側第2ロック機構部81のブレーキパッド83と同一であるので、その説明は省略する。
【0078】
また、本実施形態では、第4ピストン94は、その中央部に貫通する貫通孔94bに支持ロッド部6が第1軸L1方向に移動自在に挿通されている。第4ピストン94の先端には、第4穴部94cが開口しており、第4穴部94cの内面は、先端側に進むに従って内径が拡大する傾斜面94aに形成されている。
【0079】
第4ピストン94の基端側の外周面には環状の凹溝94dが形成されており、この凹溝94d内に第4ピストン94の外周面と第4シリンダ孔79の内周面との間をシールするシール部材96が装着されている。また、第4ピストン94の貫通孔94bの内面に形成された環状の凹溝内には貫通孔94bの内面と支持ロッド部6の側面との間をシールするシール部材97が装着されている。これらシール部材96、97は、リップ型のシール部材であり、これらシール部材96、97のリップ部96a、97aは、先端側から基端側へ向かうに従って外径が拡大する方向に傾いている。このため、これらリップ部96a、97aは、第4ピストン94の外周面と第4シリンダ孔79の内周面との間及び、貫通孔94bの内面と支持ロッド部6の側面との間において、基端側から先端側への圧縮空気の流通を阻止することができる。
【0080】
また、本実施形態では、押圧部材85は、金属製の複数の球体85aから構成されており、球体支持部材89で支持されている。球体支持部材89は、先端に開口する穴部89aを有した円柱状に形成されており、球体支持部材89の先端部に形成されたフランジ部89bが連結胴部76の先端にボルト89c等の締結手段で固定されている。穴部89aの底部に形成された貫通孔89dに支持ロッド部6が挿通されており、穴部89a内には支持ロッド部6に装着されたブレーキパッド83が収容されている。穴部89aの底面には、ブレーキパッド83の基端が接触している。これによりブレーキパッド83の先端側への移動を阻止している。
【0081】
また、本実施形態では、球体支持部材89の側壁90の外面は、先端側に進むに従って外径が拡大する傾斜面90aになっており、この傾斜面90aは、第4ピストンの傾斜面94aと平行に延びている。球体支持部材89の側壁90には、複数の球体85aのそれぞれを収容するための孔部90bが複数形成されている。孔部90bに挿入された球体85aの径方向内側の端部はブレーキパッド83の凹溝83cの内面に接触し、球体85aの径方向外側の端部は第4ピストン94の傾斜面94aに接触している。
【0082】
球体85aがブレーキ片83a及び第4ピストン94に接触した状態において、第4ピストン94の第4穴部94cの内面と球体支持部材89の外面との間、及び第4ピストン94の先端側の端面と球体支持部材89の先端側の内面との間には、隙間98が形成される。このため、第4ピストン94が先端側へ移動した場合に、第4ピストン94の傾斜面94aによって球体85aを押圧することができる。
【0083】
また、本実施形態では、第4圧力室95は、第4ピストン94によって第4シリンダ孔79の基端側を区画して形成されている。本実施形態では、第4圧力室95は、第4ピストン94の基端側の頂部94eと第4シリンダ孔79の底面との間に形成されており、連通孔77に連通している。
【0084】
このように構成された基端側及び先端側第2ロック機構部81,82において、給排ポート92から連通孔77を通じて第3及び第4圧力室86,95に対して圧縮空気を給排することにより、第3及び第4ピストン84,94の押圧部材85に対する押付け及び押付けの開放を行うことができる。例えば、第3及び第4圧力室86,95に供給された圧縮空気で第3及び第4ピストン84,94を連結胴部76の第1軸L1方向の両端側へ移動させ又は押圧することにより、球体85aが傾斜面84a,94aから径方向内側を向く押圧力を受ける。このため、ブレーキパッド83,83が径方向内側へ押圧されて、押圧面83d、83dが支持ロッド部6の側面を押圧する。それにより、アーム支持部材71(連結胴部76)に対して支持ロッド部6をロックすることができる。
【0085】
連結胴部76の基端には、
図3,
図15,
図16に示すように、第1軸L1方向に貫通する挿通孔100aを有してアーム支持部材71の貫通孔71aに挿通される固定部材100が取り付けられている。本実施形態では、固定部材100は、第1軸L1方向に延びて両側に基端101d及び先端101eを有して筒状に形成された固定本体部101と、固定本体部101の先端側から径方向外側へ突出する環状のフランジ部101aと、固定本体部101の先端から突出する筒状の係止突出部101bとを有してなる。フランジ部101aは、球体支持部材89の基端上に設置された状態で、ねじ102等の締結手段によって球体支持部材89に固定されている。このため、固定部材100は、球体支持部材89を介して連結胴部76に固定されている。
【0086】
固定部材100の挿通孔100aには支持ロッド部6が挿通され、フランジ部101aが球体支持部材89の基端に固定された状態において、固定部材100の係止突出部101bは、球体支持部材89の穴部89aに嵌合された状態で挿入されて、係止突出部101bの先端がブレーキパッド83の基端に接触している。それにより、ブレーキパッド83は、係止突出部101bと球体支持部材89の穴部89aの底面とによって挟持された状態となって、第1軸L1方向の両側への移動を防止することができる。
【0087】
固定本体部101の外径は、アーム支持部材71の貫通孔71aの内径よりも小さく、固定本体部101の基端側の側面には、雄ねじ部101cが形成されている。固定本体部101は、アーム支持部材71の貫通孔71aに挿通されてフランジ部101aの基端側の端面がアーム支持部材71の先端側の端面に接触した状態で、固定本体部101の基端側は貫通孔71aから突出している。そして、この突出した固定本体部101の雄ねじ部101cに取付ナット103を螺合させることにより、固定部材100がアーム支持部材71に固定される。それにより、連結胴部76は、固定部材100を介してアーム支持部材71に着脱可能に固定されている。
【0088】
一方、本実施形態では、連結胴部76の先端76cには、
図3,
図15,
図16に示すように、第1軸L1方向に貫通する挿通孔104aを有したカバー部材104が取り付けられている。カバー部材104は、第1軸L1方向に延びる筒状のカバー本体部105と、カバー本体部105の第1軸L1方向の中間部から径方向外側へ突出する環状のフランジ部105aとを有してなる。フランジ部105aは、球体支持部材89の先端上に設置された状態で,ねじ102等の締結手段によって球体支持部材89に固定されている。このため、カバー部材104は、球体支持部材89を介して連結胴部76に固定されている。
【0089】
カバー本体部105の基端はブレーキパッド83の先端に接触している。それにより、ブレーキパッド83は、カバー本体部105と球体支持部材89の穴部89aの底面とで挟持された状態となって、ブレーキパッド83の第1軸L1方向の両側への移動を防止することができる
【0090】
本実施形態では、支持ロッド部6は、
図3及び
図14に示すように、その基端部が固定部材100の挿通孔100aの基端から突出した状態で、支持ロッド部6の基端6bに抜止部材3が取り付けられている。本実施形態では、抜止部材3は円柱状に形成されており、その直径は、固定部材100の挿通孔100aの内径よりも大きく、且つアーム支持部材71の貫通孔71aの内径よりも小さい。このため、抜止部材3はアーム支持部材71の貫通孔71aを挿通可能であるので、抜止部材3を支持ロッド部6に取り付けたままでアーム支持部材71の貫通孔71aに対して挿抜することができる。また、抜止部材3は、固定部材100の挿通孔100aの内径よりも大きいので、支持ロッド部6が連結部75に対して先端側へ移動した際に、支持ロッド部6が固定部材100の固定本体部101の基端101dに当接するので、支持ロッド部6が連結部75から抜脱する虞を防止することができる。
【0091】
本実施形態では、支持ロッド部6の先端に螺合された連結ナット2は、支持ロッド部6の外径よりも大径である。このため、連結ナット2が支持ロッド部6に取り付けられた状態において、連結ナット2の基端は支持ロッド部6に対して径方向外側に突出したばね座2b(段部)を形成する。
【0092】
このばね座2bとカバー部材104との間には、圧縮コイルばね(圧縮ばね、ばね部材)108が設けられている。本実施形態では、圧縮コイルばね108は、その内部に支持ロッド部6が挿通されており、その一端がカバー部材104の先端に当接し、他端が連結ナット2のばね座2bに当接した状態で装着されている。圧縮コイルばね108は、常に支持ロッド部6を先端側へ付勢している。
【0093】
さて、ワーク吸着装置1は、
図1に示すように、複数のマグネットチャック5をアーム支持部材71に取り付けて構成されているが、これらマグネットチャック5のそれぞれの支持ロッド部6は、互いに平行になるようにアーム支持部材71に取り付けられている。
【0094】
次に、ワーク吸着装置1によって、ワーク110の第1軸L1方向(以下、「上下方向」と記す。)の基端側の面(以下、「上面)と記す。)が、上下方向に対して直交する方向(以下、「左右方向」と記す。)と同一方向を向く非傾斜面と、左右方向に対して異なる方向に傾いた複数の傾斜面とを有して形成されたワーク110を吸着する場合について説明する。
【0095】
本実施形態では、ワーク110は、さらに非傾斜面と複数の傾斜面の一部の上下方向の高さが相違している。すなわち、ワーク110は、
図3に示すように、金属性の板状部材を複数折り曲げて形成されており、左側から右側へ向かって第1傾斜面110a、第2傾斜面110b、非傾斜面110c、第3傾斜面110dを有している。第1傾斜面110aは、左側から右側へ進むに従って上方へ傾く右上がり傾斜面であり、第2傾斜面110bは、第1傾斜面110aと略同じ高さに位置して左側から右側へ進むに従って下方へ傾く右下がりの傾斜面であり、非傾斜面110cは第1及び第2傾斜面110a,110bよりも下方位置にあって左右方向に延び、第3傾斜面110dは、左右方向の中間位置が非傾斜面110cの高さと同じ高さに位置して、第2傾斜面110bよりも傾斜角度が小さい右下がりの傾斜面である。
【0096】
このように形成されたワーク110をワーク吸着装置1で吸着させる場合には、先ず、ワーク110をワーク吸着装置1の下方に設置する。そして、
図5に示すように、第1ロック機構部37による回動アーム部20の支持ロッド部6及びチャックユニット50に対するロックを解除し、且つ第2ロック機構部80による連結胴部76に対する支持ロッド部6のロックを解除する。さらに、チャックユニット50の永久磁石60を吸着位置P1に移動させた状態にする。それにより、支持ロッド部6は、連結胴部76に対して上下方向に移動自在となって、マグネットチャック5の全体が下方へ移動して抜止部材3が固定部材100の基端101dに当接する。それにより、マグネットチャック5は下方の移動が停止するとともに、マグネットチャック5の全体が第1軸L1方向に沿った直線状に延びた状態になる。
【0097】
このような状態で、ワーク吸着装置1を下方に移動させると、
図17(a)及び
図18(a)に示すように、ワーク110の複数の傾斜面うち最も上方に位置する第1傾斜面110a及び第2傾斜面110bのそれぞれの上方に存在するチャックユニット50のワーク吸着面48aが第1傾斜面110a及び第2傾斜面110bに当接する。この場合、第1傾斜面110aに当接したチャックユニット50は、そのワーク吸着面48aの右側の端部Bが第1傾斜面110aに当接し(
図17(a)参照)、第2傾斜面110bに当接したチャックユニット50は、そのワーク吸着面48aの左側の端部Aが第2傾斜面110bに当接する(
図17(a)参照)。
【0098】
そして、さらにワーク吸着装置1を下方へ移動させると、これらのマグネットチャック5は、これらの傾斜面110a,110bからの反力を受けて、下方へ移動するアーム支持部材71に対して直線状態のままで上方へ相対移動して、圧縮コイルばね108を縮小させる。それにより、
図17(b)及び
図17(b)に示すように、マグネットチャック5の下方移動と圧縮コイルばね108の押圧力とが相まって、それぞれのチャックユニット50は左右方向の端部A,Bが第1傾斜面110a及び第2傾斜面110bに当接した状態で、それぞれの回動アーム部20を、第1ジョイント部10の第1中心点S1を回動支点として左右方向に回動させるとともに、それぞれのチャックユニット50を、第2ジョイント部40の第2中心点S2を回動支点として左右方向に回動させる。従って、それぞれのワーク吸着面48aは、第1及び第2傾斜面110a,110bに倣った状態で所定位置に対してずれずに接触して吸着することができる。
【0099】
また、ワーク吸着装置1の下方への移動時に、
図18(a)に示すように、第3傾斜面110dの上方に位置するマグネットチャック5のワーク吸着面48aの左側の端部Aが第3傾斜面110dに当接する。そして、さらにワーク吸着装置1を下方へ移動させると、マグネットチャック5は、第3傾斜面110dからの反力を受けて、下方へ移動するアーム支持部材71に対して直線状態のままで上方へ相対移動して、圧縮コイルばね108を縮小させる。それにより、
図18(b)に示すように、マグネットチャック5の下方移動と圧縮コイルばね108の押圧力とが相まって、チャックユニット50の左側の端部Aが第3傾斜面110dに当接した状態で、回動アーム部20を、第1ジョイント部10の第1中心点S1を回動支点として右方向に回動させるとともに、チャックユニット50を、第2ジョイント部40の第2中心点S2を回動支点として左側に回動させる。従って、ワーク吸着面48aは、第3傾斜面110dに倣った状態で所定位置に対してずれずに接触して吸着することができる。
【0100】
さらに、ワーク吸着装置1の下方への移動時に、
図3に示すように、非傾斜面110cの上方に位置するマグネットチャック5のチャックユニット50のワーク吸着面48aは、非傾斜面110cに倣った状態で当接する。そして、さらにワーク吸着装置1を下方へ移動させると、マグネットチャック5は、第3傾斜面110dからの反力を受けて、下方へ移動するアーム支持部材71に対して直線状態のままで上方へ相対移動して、圧縮コイルばね108を縮小させる。それにより、マグネットチャック5の下方移動と圧縮コイルばね108の押圧力とが相まって、チャックユニット50のワーク吸着面48aを非傾斜面110cに押圧する。このとき、回動アーム部20は、第1ジョイント部10の第1中心点S1及び第2ジョイント部40の第2中心点S2に対して回動することはなく、それにより、マグネットチャック5は、直線状態のままの姿勢に維持される。従って、ワーク吸着面48aは、非傾斜面110cに倣った状態で所定位置に対してずれずに接触して吸着することができる。
【0101】
そして、複数のマグネットチャック5のそれぞれの第1ロック機構部37、第2ロック機構部80に対して圧縮空気を供給して、支持ロッド部6をアーム支持部材71に対してロックし、且つ回動アーム部20を支持ロッド部6及びチャックユニット50に対して回動をロックする。それにより、複数のチャックユニット50のそれぞれのワーク吸着面48aが対応する傾斜面を吸着した状態の姿勢に維持される。そして、ワーク吸着装置1を上方へ移動させると、ワーク110が傾くことなく上方へ移動させることができる。
【0102】
このように、本発明に係わるワーク吸着装置1によれば、回動アーム部20の基端が支持ロッド部6の先端に対して第1ジョイント部10で回動自在に連結され、回動アーム部20の先端がチャックユニット50の基端に対して第2ジョイント部40で回動自在に連結されているので、ワーク吸着面48aに対してワーク110の上面が傾いている場合でも、ワーク吸着面48aをワーク上面の所定位置に対してずれることなくワーク上面に倣った状態で吸着させることができる。
【0103】
なお、前述した実施形態では、チャックユニット50は、縦長に形成されたものを示したが、チャックユニット50の幅方向の大きさが第3軸L3方向の長さよりも大きい横長に形成されたものでもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 ワーク吸着装置
3 抜止部材
5 マグネットチャック
6 支持ロッド部
6a,51a,76b 先端
6b,51b,76c 基端
10 第1ジョイント部
11 第1ボール体
12 第1凹部
20 回動アーム部
21 第1カバー部材
22 第1貫通孔
22a 第1外側摺接面
23 第1ピストン
24 第1穴部
24a 第1内側摺接面
26,35 内部空間
28 第1シリンダ孔
29 第2シリンダ孔
30 第2ピストン
32 第2カバー部材
33 第2貫通孔
33a 第2外側摺接面
34 第2穴部
34a 第2内側摺接面
37 第1ロック機構部
40 第2ジョイント部
41 第2ボール体
42 第2凹部
48a ワーク吸着面
50 チャックユニット
51 筐体
52a シリンダ孔
52b 第1圧力室
52c 第2圧力室
57 チャックピストン
60 永久磁石
70 支持部
71 アーム支持部材
71a 貫通孔
75 連結部
76 連結胴部
77 連通孔
78 第3シリンダ孔
80 第2ロック機構部
81 基端側第2ロック機構部(第2ロック機構部)
82 先端側第2ロック機構部(第2ロック機構部)
83 ブレーキパッド
84 第3ピストン
85 押圧部材
86 第3圧力室
94 第4ピストン
95 第4圧力室
100 固定部材
108 圧縮コイルばね(ばね部材、圧縮ばね)
L1 第1軸
L2 第2軸
L3 第3軸
P1 吸着位置
P2 吸着解除位置
S1 第1中心点
S2 第2中心点