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特開2023-136074容器スタック把持装置、および容器スタック搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136074
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】容器スタック把持装置、および容器スタック搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B25J15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041499
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 英嗣
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES04
3C707ET03
3C707EU09
3C707EW01
3C707HS01
3C707HS12
3C707NS07
(57)【要約】
【課題】互いに異なる外径を有する容器スタックを安定して把持しつつ容器への傷や凹みも抑制可能な容器スタック把持装置および容器スタック搬送方法を提供する。
【解決手段】本発明の容器スタック把持装置は、複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面に当接可能な少なくとも3本の棒状部材と、前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材を支持する少なくとも3本のアーム部材と、前記アーム部材を回転可能に支持するベース板と、前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させる駆動手段と、を含み、前記駆動手段を介した前記アーム部材の回転によって前記3本の棒状部材がそれぞ旋回して近接することで前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面に当接可能な少なくとも3本の棒状部材と、
前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材を支持する少なくとも3本のアーム部材と、
前記アーム部材を回転可能に支持するベース板と、
前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させる駆動手段と、を含み、
前記駆動手段を介した前記アーム部材の回転によって前記3本の棒状部材がそれぞ旋回して近接することで前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持する、
容器スタック把持装置。
【請求項2】
前記アーム部材は、前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材の基端を支持する少なくとも3本の回転アームを含み、
前記ベース板には前記回転アームに対応して少なくとも3つの軸部材が設けられてなり、
前記駆動手段は、前記3つの軸部材を連結させて当該軸部材の回転に追従して前記3本の回転アームを同期して回転させる帯状拘束部材と、前記帯状拘束部材を駆動させる動力機構と、を含み、
前記帯状拘束部材を介した前記回転アームの回転によって、前記3本の棒状部材が前記3つの軸部材の中心に対してそれぞれ近接することで前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持する、
請求項1に記載の容器スタック把持装置。
【請求項3】
前記3つの軸部材のうちの1つに前記動力機構が連結されてなり、
前記動力機構からの動力が前記帯状拘束部材を介して前記3つの軸部材のうちの残りの軸部材に伝達される、
請求項2に記載の容器スタック把持装置。
【請求項4】
前記動力機構は、
前記1つの軸部材と一方の端部が連結された接続片と、
前記接続片の他方の端部と連結されて前記接続片を前記1つの軸部材周りに回転させるシリンダ機構と、
を含んで構成されてなる、
請求項3に記載の容器スタック把持装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、
前記3つのアーム部材を連動させるリンク機構と、
前記リンク機構を駆動する動力機構と、を含み、
前記リンク機構を介した前記アーム部材の回転によって、前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持する、
請求項1に記載の容器スタック把持装置。
【請求項6】
前記動力機構は、前記3つのアーム部材のうちの一部と接続して当該一部のアーム部材を前記軸部材周りに回転させるシリンダ機構であり、
前記3つのアーム部材のうちの残りの他部は、前記一部のアーム部材の少なくとも1つと前記リンク機構を介して接続されてなる、
請求項5に記載の容器スタック把持装置。
【請求項7】
前記棒状部材のうち前記ベース板との接続箇所と反対側の端部には、前記容器スタックのフランジ部を支持可能な係止突起が設けられてなる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の容器スタック把持装置。
【請求項8】
複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面を保持する少なくとも3本の棒状部材と、前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材を支持する少なくとも3本のアーム部材と、前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させる駆動手段と、を有する容器スタック把持装置を用いた容器スタック搬送方法であって、
前記3本の棒状部材が成す仮想内接円の直径が前記容器スタックの外径よりも大きくなるように前記3本の棒状部材を互いに離間させる工程と、
前記容器スタックの鉛直上方に対して前記離間させた前記3本の棒状部材を位置付けする工程と、
前記容器スタックの鉛直上方から前記3本の棒状部材を降下させる工程と、
前記駆動手段を介して前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させて、前記降下させた前記3本の棒状部材を互いに近接させて前記容器スタックの側面を把持する工程と、
前記容器スタックを把持した前記3本の棒状部材を上昇させて搬送位置に向けて前記容器スタックを搬送する工程と、
を有することを特徴とする容器スタック搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の紙コップなどの容器を積み重ねた容器スタックを把持する把持装置および容器スタックの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば食品を収容するカップ容器や飲料を注出するコップ容器が知られている。これらの容器は、例えば紙や樹脂などで形成されており、上下に積み重ねた状態(これを「容器スタック」とも称する)で搬送されることがある。
【0003】
例えば特許文献1~特許文献3などにおいては、容器を積み重ねて構成された容器スタックを保持し得る容器保持具を有する容器保持機構と、上記容器保持機構を移送し得る位置制御機構とを備えた容器把持および搬送装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-136458号公報
【特許文献2】特開2006-187861号公報
【特許文献3】特開2021-171880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献によれば、容器スタックの搬送を自動的にかつ繰り返して行うことができるから、容器スタックを人手によって搬送する場合に比べて大幅に作業効率の向上を図ることができる。他方で、従来の容器スタックの把持装置は、容器スタックを構成する容器の外径に合わせて設計されているため、異なる外径の容器を把持する場合にはハンド(把持部)を都度取り換えて対応しなければならない。
【0006】
仮に単一のハンド(把持部)で異なる外径の複数種類の容器を把持しようとする場合には、把持部と容器の外径とが合っていないために容器の把持自体が不安定になるだけでなく、場合によっては把持部で容器を傷付けたり凹ましたりする恐れもあり得る。
このように従来における容器スタックの把持装置および手法では、単一のハンド(把持部)で異なる外径の容器スタックの搬送に対応できておらず、更なる作業効率の向上や汎用性が希求されている。
【0007】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、互いに異なる外径を有する容器スタックを安定して把持しつつ容器への傷や凹みも抑制可能な容器スタック把持装置および容器スタック搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における容器スタック把持装置は、(1)複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面に当接可能な少なくとも3本の棒状部材と、前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材を支持する少なくとも3本のアーム部材と、前記アーム部材を回転可能に支持するベース板と、前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させる駆動手段と、を含み、前記駆動手段を介した前記アーム部材の回転によって前記3本の棒状部材がそれぞ旋回して近接することで前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持することを特徴とする。
【0009】
また、上記(1)に記載の容器スタック把持装置においては、(2)前記アーム部材は、前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材の基端を支持する少なくとも3本の回転アームを含み、前記ベース板には前記回転アームに対応して少なくとも3つの軸部材が設けられてなり、前記駆動手段は、前記3つの軸部材を連結させて当該軸部材の回転に追従して前記3本の回転アームを同期して回転させる帯状拘束部材と、前記帯状拘束部材を駆動させる動力機構と、を含み、前記帯状拘束部材を介した前記回転アームの回転によって、前記3本の棒状部材が前記3つの軸部材の中心に対してそれぞれ近接することで前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持することが好ましい。
【0010】
また、上記(2)に記載の容器スタック把持装置においては、(3)前記3つの軸部材のうちの1つに前記動力機構が連結されてなり、前記動力機構からの動力が前記帯状拘束部材を介して前記3つの軸部材のうちの残りの軸部材に伝達されることが好ましい。
【0011】
また、上記(3)に記載の容器スタック把持装置においては、(4)前記動力機構は、前記1つの軸部材と一方の端部が連結された接続片と、前記接続片の他方の端部と連結されて前記接続片を前記1つの軸部材周りに回転させるシリンダ機構と、を含んで構成されてなることが好ましい。
【0012】
また、上記(1)に記載の容器スタック把持装置においては、(5)前記駆動手段は、前記3つのアーム部材を連動させるリンク機構と、前記リンク機構を駆動する動力機構と、を含み、前記リンク機構を介した前記アーム部材の回転によって、前記3本の棒状部材が前記容器スタックの側面を把持することが好ましい。
【0013】
また、上記(5)に記載の容器スタック把持装置においては、(6)前記動力機構は、前記3つのアーム部材のうちの一部と接続して当該一部のアーム部材を前記軸部材周りに回転させるシリンダ機構であり、前記3つのアーム部材のうちの残りの他部は、前記一部のアーム部材の少なくとも1つと前記リンク機構を介して接続されてなることが好ましい。
【0014】
また、上記(1)~(6)のいずれかに記載の容器スタック把持装置においては、(7)前記棒状部材のうち前記ベース板との接続箇所と反対側の端部には、前記容器スタックのフランジ部を支持可能な係止突起が設けられてなることが好ましい。
【0015】
さらに上記した課題を解決するため、本発明の一実施形態における容器スタック搬送方法は、(8)複数の容器を積み重ねた容器スタックの側面を保持する少なくとも3本の棒状部材と、前記3本の棒状部材に対応して設けられて前記棒状部材を支持する少なくとも3本のアーム部材と、前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させる駆動手段と、を有する容器スタック把持装置を用いた容器スタック搬送方法であって、前記3本の棒状部材が成す仮想内接円の直径が前記容器スタックの外径よりも大きくなるように前記3本の棒状部材を互いに離間させる工程と、前記容器スタックの鉛直上方に対して前記離間させた前記3本の棒状部材を位置付けする工程と、前記容器スタックの鉛直上方から前記3本の棒状部材を降下させる工程と、前記駆動手段を介して前記3本のアーム部材を互いに同期して連動させて、前記降下させた前記3本の棒状部材を互いに近接させて前記容器スタックの側面を把持する工程と、前記容器スタックを把持した前記3本の棒状部材を上昇させて搬送位置に向けて前記容器スタックを搬送する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器へ傷や凹みがついてしまうことを抑制しつつ、異なる複数の外径規格に対応した容器スタックを安定して把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の容器スタック把持装置を含む搬送システムを示した模式図である。
図2】容器スタック把持装置を側面側から見た側面図である。
図3】容器スタック把持装置を底面側から見た側面図である。
図4】容器スタック把持装置におけるアーム部材の回転動作と、この回転動作による棒状部材の状態遷移を示す模式図である。
図5】アーム部材の回転動作によって棒状部材の中心からの距離(把持径)が変化することを説明するための模式図(その1)である。
図6】アーム部材の回転動作によって棒状部材の中心からの距離(把持径)が変化することを説明するための模式図(その2)である。
図7】第2実施形態の容器スタック把持装置を含む搬送システムを示した模式図である。
図8】容器スタック把持装置におけるリンク部材の回転動作と、この回転動作による棒状部材の状態遷移を示す模式図である。
図9】リンク部材の回転動作によって棒状部材の中心からの距離(把持径)が変化することを説明するための模式図(その2)である。
図10】容器スタックの搬送方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の容器スタック把持装置及び搬送方法について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を説明するものであり、本発明を意図せず限定するものではなく、他の公知の構成を適宜補完してもよい。また、以下で詳述する構成以外の構成については、上記した特許文献1や特許文献2を含む公知の搬送機構を適宜援用してもよい。
また、以下の実施形態では、ベース板30の鉛直方向をZ軸として例示するが、この軸設定は説明の便宜上のためであり、本発明を意図せず限定するものではない。
【0019】
[第1実施形態]
<搬送システム200>
図1に、第1実施形態における容器スタックの搬送システム200を示す。同図に示すとおり本実施形態の搬送システム200は、容器スタックCSを把持可能な容器スタック把持装置100と、この容器スタック把持装置100を例えば6自由度で操作して任意の位置に搬送可能な公知のロボットハンドRHと、を含んで構成されている。
【0020】
この搬送システム200は、一例として、未使用の容器スタックCSが複数本収容された収容ボックス300から、容器スタック把持装置100を介して容器スタックCSを抽出して所望の位置へ搬送する機能を有して構成されている。
【0021】
ここで、「容器スタック」とは、上記した特許文献3や図1などに例示されるとおり、例えば紙コップ等の公知の容器を積み重ねて構成されたものを言う。より具体的には、本実施形態の容器スタックCSは、積み重ねる上側の容器の上端部(フランジ部)以外の胴部と底部のほぼ容器全体を下側の容器内に順次収納する形で例えば数個~数十個だけ柱状に積み重ねた形態を有する。
【0022】
なお個々の容器の材質としては、公知の材料が適用でき、例えば紙や樹脂あるいは紙に樹脂のコーティングを施したものなどが例示できる。容器の外観形状としても、公知の形状を適用でき、例えば食品用途に適した浅底のカップ形状や飲料用途に適したコップ形状が適用できる。
【0023】
また、容器における開口の形状についても、例えば円形や四角形などの任意の公知の形状を採用してもよい。かような容器に収容する被収容物としては、例えば納豆やヨーグルトなどの食品や薬効成分を含有する薬剤などの固形物の他に、例えば飲料などの液状物など公知の種々の物質が例示できる。
【0024】
<収容ボックス300>
収容ボックス300は、図1などに示すように、容器スタックCSが搬入または搬出可能な開口面を有する直方体形状の箱である。一例として、本実施形態の収容ボックス300は、積み立てた状態の容器スタックCSを複数本だけ収容できる程度の公知の段ボール箱が例示できる。
【0025】
<容器スタック把持装置100>
次に図1図4を参照しつつ、本実施形態における容器スタック把持装置100の詳細な構成について説明する。
これらの図から理解されるとおり、本実施形態の容器スタック把持装置100は、棒状部材10、アーム部材20、ベース板30、駆動手段40及びRH連結手段50を含んで構成されている。
【0026】
棒状部材10は、複数の容器を積み重ねた容器スタックCSの側面に当接する機能を有して構成される。図1図3などから理解されるとおり、本実施形態の棒状部材10は、基端11が後述するアーム部材20に固定される棒状の部材である。また、本実施形態の棒状部材10は、容器スタックCSの側面を把持可能なように、ベース板30に対してアーム部材20を介してZ軸周り(図2図3におけるθz方向)に複数本(本例では棒状部材10A~10Cの3本)設けられる。
【0027】
なお図2に示すように、棒状部材10は、例えば基端11側の側面に補強リブ板14が設けられていてもよい。補強リブ板14は、例えば棒状部材10と同質の材料でもよいし、強度が相対的に高い鋼板などであってもよい。棒状部材10が補強リブ板14を備えることで、容器スタックCSを繰り返し把持しても意図せず棒状部材自体が湾曲してしまうことを防止できる。
【0028】
図2及び図3に示すように、本実施形態においては、上記したベース板30の中央(例えば後述する中心位置SP)を基点として、軸周りに等間隔(概ね120°)で3本の棒状部材10A~10Cがそれぞれアーム部材20を介してベース板30に設けられている。なお本実施形態では上記のとおり軸周りに等間隔で棒状部材が配置されているが、これらの棒状部材の間隔は必ずしも互いに等しくせずともよい。
【0029】
また図2に示すように、各々の棒状部材10における先端12には、上記した容器スタックCSのうち例えば最下段に位置する容器の凸部(フランジなど)に係止可能な係止突起13が設けられていることが好ましい。このように棒状部材10のうちベース板30との接続箇所と反対側の端部に容器スタックのフランジ部を支持可能な係止突起13が設けられることで、搬送中における容器スタックCSの落下を抑制することが可能となる。
【0030】
なお本実施形態の棒状部材10では係止突起13が容器スタックCS中の最下段に位置する容器のフランジに係止可能な位置に配置されているが、例えば容器スタックCSの最下段以外の容器に対しても係止可能な位置に係止突起13が設けられていてもよい。
【0031】
棒状部材10の材質としては、特に制限はなく例えばアルミニウムなど公知の金属材料やアクリルなど公知の樹脂材料を適用してもよい。
また、本実施形態ではベース板30に対して合計3本の棒状部材10を設けているが、この形態に限られず容器スタックCSを安定して把持可能な限りにおいて2本または4本以上の任意の数だけ棒状部材10をベース板30に対してアーム部材20を介して設置してもよい。
【0032】
アーム部材20は、前記した3本の棒状部材10に対応して設けられてこの棒状部材10を支持する機能を有して構成されている。図2図4に示すように、本実施形態のアーム部材20は、外形が所定の厚みを有する直方体状の板材で構成された回転アームが例示でき、後述するベース板30の軸部材31を挿入して固定するための第1孔部21と、上記した棒状部材10を挿入して固定するための第2孔部22と、を含んで構成されている。
【0033】
より具体的に本実施形態のアーム部材20は、図2及び図3に示すように、前記した3本の棒状部材10A~10Cに対応して設けられて棒状部材10の基端11を支持する少なくとも3本の回転アーム20A~20Cを含んで構成されている。なおアーム部材20の材質としては、特に制限はなく例えばアルミニウムなど公知の金属材料やアクリルなど公知の樹脂材料を適用してもよい。
【0034】
また、図3から理解されるとおり、回転アーム20A~20Cは、互いの第1孔部21がベース板30の中心位置SPに対して軸周りに等間隔(概ね120°)で配置されている。従って、ある基準状態においては、図3に示すように、中心位置SPに対して互いに軸周りで上記した等間隔となって放射状に向くように複数の回転アームがベース板30上に配置されることがある(このときが3本の棒状部材10によって把持可能な最大の把持径となる)。
なお上記した中心位置SPは、容器スタックCSを把持した際に当該容器の中心軸と概ね一致していてもよい。
【0035】
ベース板30は、図3及び図4に示すように、前記したアーム部材20(本実施形態では回転アーム)に対応して少なくとも3つの軸部材31が設けられてなり、この軸部材31を介してアーム部材20を回転可能に支持する機能を有して構成されている。
図3に示すように、ベース板30のうちそれぞれの軸部材31にはスプロケット32が同軸となるように連結して固定されている。これによりスプロケット32の回転に追従して軸部材31も回転し、さらにこの軸部材31の回転に追従して当該軸部材31と連結されたアーム部材20が回転される。
なお本実施形態ではスプロケット32を用いているが、これに代えて回転歯車など公知の動力伝達部材を適用してもよい。
【0036】
駆動手段40は、3本のアーム部材20を互いに同期して連動させる機能を有し、この駆動手段40を介した3つの回転アーム20A~20Cの回転によって3本の棒状部材10A~10Cがそれぞれ旋回して近接することで容器スタックCSの側面を把持することが可能となっている。逆に言えば、駆動手段40を介した3つの回転アーム20A~20Cの回転によって3本の棒状部材10A~10Cがそれぞれ旋回して離間することで、把持した容器スタックCSを解放することが可能となっている。
【0037】
より具体的に本実施形態の駆動手段40は、前記した3つの軸部材31又はスプロケット32を連結させて当該軸部材31の回転に追従して3本の回転アーム20A~20Cを互いに同期して回転させる帯状拘束部材42と、この帯状拘束部材42を駆動させる動力機構と、を含んで構成されている。
また、図3に示すように、駆動手段40は、上記した帯状拘束部材42の張力を調整する張力調整手段(テンショナー)43を含んでいてもよい。これにより帯状拘束部材42で歯飛びやズレなどが生じて軸部材31同士の連動が阻害されてしまうことを防止できる。
【0038】
このうち本実施形態の動力機構は、図3に示すように、スプロケット32を介して1つの軸部材31と一方の端部が連結された接続片41Aと、この接続片41Aの他方の端部と連結されて接続片41Aを前記した1つの軸部材31周りに回転させるシリンダ機構41Bと、を含んで構成されている。
【0039】
接続片41Aは、上記したシリンダ機構41Bの出力端部と上記した軸部材31及びスプロケット32とを連結する機能を具備する。従ってシリンダ機構41Bによってシリンダの出力端部と接続片41Aとの接続部が進退することで、この接続片41Aと連結された軸部材31とスプロケット32は当該軸部材31を中心として時計回り又は反時計回りに回転することが可能となっている。
【0040】
シリンダ機構41Bは、ベース板30に搭載されて、アーム部材20を軸周りに回転させるための回転力を発生する機能を有する。かようなシリンダ機構41Bの具体例としては、例えばエアシリンダや油圧シリンダなど公知の種々のシリンダ機構を適用できる。
【0041】
本実施形態では、3つある軸部材31とスプロケット32のセットうちの1セット(図3では+X方向である紙面上側に位置するセットであり、これらを入力用軸部材31及び入力用スプロケット32とも称する)に対して上記した動力機構が連結されてなり、この動力機構からの動力がまず入力用軸部材31を介して入力用スプロケット32に伝達される。次いでこの入力用スプロケット32の回転に連動して帯状拘束部材42を介して残りのスプロケット32が回転することで、これらスプロケット32に接続する残りの軸部材31に回転力がそれぞれ伝達されるように構成されている。
【0042】
また本実施形態では、図3に示すように、複数のスプロケット32は互いに帯状拘束部材42で連結されている。従って駆動手段40からの駆動力は複数のスプロケット32のうちの1つに伝達されることで、上記した帯状拘束部材42を介して上記複数のスプロケット32が同期して回転することとなる。かような帯状拘束部材42の具体例としては、駆動手段40による力を伝達可能な限りにおいて特に制限はなく、例えば公知のベルトやチェーンが例示できる。本実施形態では、一例として、帯状拘束部材42としてチェーンを適用している。
【0043】
このように本実施形態においては、前記した帯状拘束部材42を介した回転アーム20A~20Cの回転によって、この回転アームに対応した3本の棒状部材10A~10Cが3つの軸部材31の中心(図4図6に示す把持中心O)に対してそれぞれ近接することでこれら棒状部材10が容器スタックCSの側面を把持することが可能となっている。
【0044】
換言すれば、図5及び図6に示すように、回転アーム20A~20Cの回転によって3本の棒状部材10A~10Cが把持中心Oに対して互いに同期しながら近接または離間することで、容器スタックCSを把持するための把持径Rを調整することが可能となっている。
【0045】
なお本実施形態では、図4においては3本の棒状部材10A~10Cや回転アーム20A~20CがポジションP1~ポジションP2までの7つの位置を取り得ることを示していたり、図5図6においては把持径RがR1~R4の4段階で取り得ることを示しているが、本発明はこの形態に限られない。すなわち、回転アーム20A~20Cが互いに干渉しない限りにおいて、3本の棒状部材10A~10Cの位置は任意のポジションに設定可能であり容器スタックCSを把持するための把持径Rも無段階で調整してもよい。
【0046】
RH連結手段50は、容器スタック把持装置100を上記したロボットハンドRHに接続する機能を有する。かようなRH連結手段50は、例えば、ロボットハンドRHに当接して固定する接続部51と、上記接続部51とベース板30とを連結する連結部52と、を含んで構成されていてもよい。
【0047】
なお接続部51とロボットハンドRHの固定手法としては、特に制限はなく、例えばボルトによる締結など公知の種々の締結手段を適用できる。また本実施形態のRH連結手段50は上記した構成を備えているが、容器スタック把持装置100をロボットハンドRHの先端に取り付け可能であれば特に制限はなく、例えば接続部51と連結部52を一体で形成したりする他に、これらの構成に代えて公知の他の連結機構を適用してもよい。
【0048】
以上説明した第1実施形態における容器スタック把持装置100および搬送システム200によれば、駆動手段40によってアーム部材20を介して棒状部材10が互いに同期して近接または離間することで、異なる把持径となる複数種類の容器スタックCSの側面を把持することが実現される。
これにより容器スタックCSを構成する個々の容器へ傷や凹みがついてしまうことを抑制しつつ、異なる複数の外径規格に対応した容器スタックCSを安定して把持することが可能となる。
【0049】
[第2実施形態]
次に図7図9を用いて、第2実施形態における容器スタック把持装置110について説明する。上記した第1実施形態における容器スタック把持装置100の駆動手段40は、帯状拘束部材42とその動力機構とでアーム部材を軸部材31の軸周りに回転させて棒状部材を互いに近接又は離間させる構成となっていた。
【0050】
これに対して本実施形態における容器スタック把持装置110の駆動手段40はアーム部材20を連動させるリンク機構とその動力機構を備えている点に主とした特徴がある。
従って第2実施形態においては、既述の第1実施形態と同様の構成については同じ参照番号を付してその説明は適宜省略する。
【0051】
<容器スタック把持装置110>
これらの図から理解されるとおり、本実施形態の容器スタック把持装置110は、棒状部材10、アーム部材20、ベース板30、駆動手段40及びRH連結手段50を含んで構成されている。
【0052】
このうち本実施形態の駆動手段40は、図7及び図8から理解されるとおり、3つのアーム部材20D~20Fを連動させるリンク機構と、このリンク機構を駆動する動力機構と、を含んで構成されている。
【0053】
アーム部材20Dは、図7及び図8に示すとおり、軸部材31を介して回転可能なようにベース板30に固定される。このアーム部材20Dは、図8及び図9などに示すように、軸部材31が挿入される中央部から延びる第1端部20Daが第1連結部44を介してシリンダ機構41と連結される。また、アーム部材20Dのうち中央部から延びる第2端部20Dbの先端には、上記した棒状部材10Aが接続されている。さらにアーム部材20Dのうち中央部から延びる第3端部20Dcには第3連結部46の一端46aが接続される。
【0054】
アーム部材20Eは、図7及び図8に示すとおり、軸部材31を介して回転可能なようにベース板30に固定される。このアーム部材20Eは、図8及び図9などに示すように、軸部材31が挿入される中央部から延びる第1端部20Eaが上記した第3連結部46の他端46bと接続されている。また、アーム部材20Eのうち中央部から延びる第2端部20Ebには上記した棒状部材10Bが接続されている。
【0055】
これにより、アーム部材20Dがシリンダ機構41の作用によって軸部材31を軸として回転すると、上記した第3連結部46を介してアーム部材20Eもアーム部材20Dに連動して軸部材31を軸として回転する。
【0056】
また、アーム部材20Fは、図7及び図8に示すとおり、軸部材31を介して回転可能なようにベース板30に固定される。このアーム部材20Fは、図8及び図9などに示すように、軸部材31が挿入される中央部から延びる第1端部20Faが第2連結部45を介してシリンダ機構41と連結される。また、アーム部材20Fのうち中央部から延びる第2端部20Fbの先端には、上記した棒状部材10Cが接続されている。
これにより、アーム部材20Dがシリンダ機構41の作用によって軸部材31を軸として回転するのと並行して、アーム部材20Fも同様にシリンダ機構41の作用によって軸部材31を軸として回転する。
【0057】
また、本実施形態の動力機構は、上記した第1連結部44および第2連結部45でアーム部材20と連結して当該アーム部材20を駆動するシリンダ機構41で構成されている。 換言すれば本実施形態のシリンダ機構41は、3つのアーム部材20D~20Fのうちの一部(本例では20D及び20Fの2つ)と接続して当該一部のアーム部材を軸部材31周りに回転させる。そして3つのアーム部材20D~20Fのうちの残りの他部(本例では20Eの1つ)は、この一部のアーム部材の少なくとも1つ(本例では20D)とリンク機構を介して接続される。
【0058】
このように本実施形態のリンク機構は、上記した第1連結部44、第2連結部45および第3連結部46を含んで構成されている。これにより、シリンダ機構41の作用によって第1連結部44及び第2連結部45を介してアーム部材20D及びアーム部材20Fが軸部材31を中心に回転すると共に、アーム部材20Dの回転に連動して第3連結部46を介してアーム部材20Eが軸部材31を中心に回転する。
【0059】
そして本実施形態では、上記したリンク機構を介したアーム部材の回転に追従して3本の棒状部材10が互いに同期して近接することで容器スタックCSの側面を把持することが実現されている。従って図9に示すように、外径L1の容器や外径L2の容器など複数の外径に対応した汎用性の高い把持機能を実現できる。
なお上記したリンク機構の構成は一例であって、複数のアーム部材20の上記動作を実現可能であれば他のリンク構造を採用してもよい。
【0060】
これにより、本実施形態の駆動手段40によってアーム部材20を介して棒状部材10が互いに同期して近接または離間することで、第1実施形態と同様に異なる把持径となる複数種類の容器スタックCSの側面を把持することが実現される。
以上説明した第2実施形態の容器スタック把持装置110によれば、容器スタックCSを構成する個々の容器へ傷や凹みがついてしまうことを抑制しつつ、異なる複数の外径規格に対応した容器スタックCSを安定して把持することが可能となる。
【0061】
<容器スタック搬送方法>
次に図10もさらに参照しつつ上記した搬送システム200を用いた容器スタック搬送方法について詳述する。この容器スタック搬送方法は、例えば容器スタック把持装置100やロボットハンドRHの動作を制御可能なPC等の制御装置にプログラムとして格納されてCPUで実行可能な搬送方法である。なおこの容器スタック搬送方法のプログラムは、上記した制御装置のメモリに格納される他、クラウドなどのネットワークを介してPCへダウンロードされる形態であってもよい。
【0062】
まず図10に示すステップ1の前における準備段階では、容器スタックCSを把持可能なように、3本の棒状部材10が成す仮想内接円の直径が容器スタックCSの外径よりも大きくなるように駆動手段40を介して3本の棒状部材10を互いに離間させる。
【0063】
次いでステップ1では、ロボットハンドRHを操作して、容器スタックCSの鉛直上方に対し、上記準備段階で離間させた3本の棒状部材10を位置付けする。
ステップ1後のステップ2では、この収容ボックス300内に収容された未搬送の容器スタックCSの上方から、収納ボックス内の容器スタックCSの側面と3本の棒状部材10とが対向するように、ロボットハンドRHを介して3本の棒状部材10を降下させる。
【0064】
そしてステップ3では、ロボットハンドRHが3本の棒状部材10が容器スタックCSへ到達したか、すなわち容器スタックCSの側面を3本の棒状部材10が把持可能な程度に下降したか否かが判定される。ステップ3で3本の棒状部材10が容器スタックCSへ到達した場合には、続くステップ4で駆動手段40を駆動する。すなわち、ステップ4では、この駆動手段40を介して3本のアーム部材20を互いに同期して連動させて、上記で降下させた3本の棒状部材10を互いに近接させて容器スタックCSの側面を把持する。
【0065】
このとき棒状部材10の先端12に上述した係止突起13が設けられている場合には、この係止突起13が容器スタックCSのうち例えば最下段に位置する容器の凸部(フランジなど)に係止することで、搬送中における容器スタックCSの落下が抑制される。
【0066】
続くステップ5では、上記した制御装置のCPUによって不図示の光学センサーなど公知の検出手段を介して容器スタックCSが棒状部材10で把持されたか判定される。
そしてステップ5において容器スタックCSの把持が完了したと判定されたときは、続くステップ6において3本の棒状部材10で容器スタックCSの側面を保持しつつロボットハンドRHを介して当該棒状部材10を上昇させて容器スタックCSを目的の位置へ搬送する。
【0067】
そしてステップ7において容器スタックCSが搬送先(搬送位置)へ到達したか否かが判定される。そしてステップ7で容器スタックCSが搬送先(搬送位置)へ到達したと判定されたときは、ステップ8において駆動手段40を駆動して上記した棒状部材10を互いに同期して離間させることで、把持した容器スタックCSを搬送先(搬送位置)で解放する。
【0068】
以上説明した実施形態は本発明の趣旨を具現化した一例であり、本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてもよい。さらには本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で公知の構造や手法を適宜追加して変形してもよい。
例えば上記した第1実施形態や第2実施形態では棒状部材10は軸方向(図2におけるZ方向)に真っ直ぐ延びる棒状となっていたが、この形状に限られず部分的に湾曲していてもよい。また、上記した第1実施形態や第2実施形態ではベース板30に対して3本の棒状部材10を設けているが、この形状に限られず4本以上の任意の数だけ棒状部材10を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、異なる外径を有する複数種類の容器を把持可能な汎用性の高い容器スタックの把持装置を実現するのに適している。
【符号の説明】
【0070】
100、110 容器スタック把持装置
10 棒状部材
20 アーム部材
30 ベース板
40 駆動手段
50 RH連結手段
RH ロボットハンド
200 搬送システム
300 収容ボックス

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10