(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136110
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20230922BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041558
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】小竹 恭太
(72)【発明者】
【氏名】内藤 嘉彦
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002BB07
3C002DD13
3C002DD14
3C002HH01
3C002KK04
3C029EE01
3C029EE05
(57)【要約】
【課題】本発明は、複数のモータに入力される複数の電流値を監視することで、内部で発生する異常を検出することが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【解決手段】第1サーボモータ及び第2サーボモータに入力される複数の電流値を検出する電流検出部と、回転工具装置と自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち所定の工程において、第1サーボモータ及び第2サーボモータに入力される正常時の複数の電流値の経時的変化を記憶する記憶部と、所定の工程において、電流検出部によって検出される複数の電流値を、正常時の複数の電流値の経時的変化と比較して、所定の工程が正常に行われているか否かを判定する判定部と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具装置と、前記回転工具装置との間で工具の交換を行う自動工具交換装置と、を具備する工作機械であって、
前記回転工具装置は、
(i)ワークを加工するために、前記工具を回転可能に保持する回転工具本体部と、
(ii)前記回転工具装置を動作させるための動力を発生する第1サーボモータと、を有し、
前記自動工具交換装置は、前記自動工具交換装置を動作させるための動力を発生する第2サーボモータと、を有し、
前記第1サーボモータ及び前記第2サーボモータに入力される複数の電流値を検出する電流検出部と、
前記回転工具装置と前記自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち所定の工程において、前記第1サーボモータ及び前記第2サーボモータに入力される正常時の複数の電流値の経時的変化を記憶する記憶部と、
前記所定の工程において、前記電流検出部によって検出される前記複数の電流値を、前記正常時の複数の電流値の経時的変化と比較して、前記所定の工程が正常に行われているか否かを判定する判定部と、
を具備する、工作機械。
【請求項2】
前記自動工具交換装置は、筐体と、前記筐体内に収容され、前記工具を保持する複数の工具保持部が円周方向に沿って設けられる円形状のマガジンとを更に有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1サーボモータは、前記回転工具本体部を鉛直方向に沿って移動可能とする鉛直方向移動機構を動作させるための動力を発生し、
前記第2サーボモータは、前記マガジンを回転軸に沿って回転可能とするためのマガジン回転機構を動作させるための動力を発生し、
前記所定の工程は、前記回転工具装置と前記自動工具交換装置との間で前記工具の交換を行う所定の位置へ前記工具を移動する工程、又は、前記回転工具装置と前記自動工具交換装置とを前記所定の位置から前記一連の工具交換工程を開始する前の元の位置へ前記工具を移動する工程である、
請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記マガジンは、1つの工具を保持するための留め具を有し、
前記判定部は、前記電流検出部が検出する前記第2サーボモータへ入力される電流値に基づいて、前記留め具が破損しているかを判定する、
請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記回転工具装置は、前記回転工具本体部を水平方向に沿って移動可能とする第1水平方向移動機構を動作させるための動力を発生する第3サーボモータを有し、
前記電流検出部は、前記第3サーボモータに入力される電流値を検出し、
前記判定部は、前記回転工具装置と前記自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち他の所定の工程において、前記電流検出部によって検出される前記電流値が変動しない場合に、前記他の所定の工程が正常に行われていないと判定する、
請求項2~4のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記自動工具交換装置は、前記筐体を水平方向に沿って移動可能とする第2水平方向移動機構を動作させるための動力を発生する第4サーボモータを有し、
前記電流検出部は、前記第4サーボモータに入力される電流値を検出し、
前記判定部は、前記回転工具装置と前記自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち他の所定の工程において、前記電流検出部によって検出される前記電流値が変動しない場合に、前記他の所定の工程が正常に行われていないと判定する、
請求項2~5のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記他の所定の工程は、前記工具を前記回転工具装置から前記自動工具交換装置へ受け渡す工程、又は、前記工具を前記自動工具交換装置から前記回転工具装置へ受け渡す工程である、
請求項5又は6に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワークを加工するための工具を回転可能に保持する回転工具装置と、回転工具装置との間で工具の交換を行う自動工具交換装置(Automatic Tool Changer、ATC)と、を備える工作機械が知られている。工作機械は、例えば特許文献1に記載される方法を用いて、回転工具装置とATCとの間で行われる一連の工具交換工程において、装置の故障、及び、衝突等の異常が発生しているか否かを判定し、異常発生時には動作を停止している。
【0003】
ここで、特許文献1に記載される方法は、工具交換動作中の1つのモータの電流値を監視して、このモータの電流値が許容値を越えた場合に、工作機械の動作を停止するものである。一方で、一連の工具交換工程において使用されるモータは複数存在しており、これらのモータに入力される複数の電流値を監視することで、工作機械における異常な状態を検出することが可能な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数のモータに入力される複数の電流値を監視することで、内部で発生する異常を検出することが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態に係る工作機械は、回転工具装置と、回転工具装置との間で工具の交換を行う自動工具交換装置と、を具備する工作機械であって、回転工具装置は、(i)ワークを加工するために、工具を回転可能に保持する回転工具本体部と、(ii)回転工具装置を動作させるための動力を発生する第1サーボモータと、を有し、自動工具交換装置は、自動工具交換装置を動作させるための動力を発生する第2サーボモータと、を有し、第1サーボモータ及び第2サーボモータに入力される複数の電流値を検出する電流検出部と、回転工具装置と自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち所定の工程において、第1サーボモータ及び第2サーボモータに入力される正常時の複数の電流値の経時的変化を記憶する記憶部と、所定の工程において、電流検出部によって検出される複数の電流値を、正常時の複数の電流値の経時的変化と比較して、所定の工程が正常に行われているか否かを判定する判定部と、を具備する。
【0007】
本開示の実施形態に係る工作機械において、自動工具交換装置は、筐体と、筐体内に収容され、工具を保持する複数の工具保持部が円周方向に沿って設けられる円形状のマガジンとを更に有する、ことが好ましい。
【0008】
本開示の実施形態に係る工作機械において、第1サーボモータは、回転工具本体部を鉛直方向に沿って移動可能とする鉛直方向移動機構を動作させるための動力を発生し、第2サーボモータは、マガジンを回転軸に沿って回転可能とするためのマガジン回転機構を動作させるための動力を発生し、所定の工程は、回転工具装置と自動工具交換装置との間で工具の交換を行う所定の位置へ工具を移動する工程、又は、回転工具装置と自動工具交換装置とを所定の位置から前記一連の工具交換工程を開始する前の元の位置へ工具を移動する工程である、ことが好ましい。
【0009】
本開示の実施形態に係る工作機械において、マガジンは、1つの工具を保持するための留め具を有し、判定部は、電流検出部が検出する第2サーボモータへ入力される電流値に基づいて、留め具が破損しているかを判定する、ことが好ましい。
【0010】
本開示の実施形態に係る工作機械において、回転工具装置は、回転工具本体部を水平方向に沿って移動可能とする第1水平方向移動機構を動作させるための動力を発生する第3サーボモータを有し、電流検出部は、第3サーボモータに入力される電流値を検出し、判定部は、回転工具装置と自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち他の所定の工程において、電流検出部によって検出される電流値が変動しない場合に、他の所定の工程が正常に行われていないと判定する、ことが好ましい。
【0011】
本開示の実施形態に係る工作機械において、自動工具交換装置は、筐体を水平方向に沿って移動可能とする第2水平方向移動機構を動作させるための動力を発生する第4サーボモータを有し、電流検出部は、第4サーボモータに入力される電流値を検出し、判定部は、回転工具装置と自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程のうち他の所定の工程において、電流検出部によって検出される電流値が変動しない場合に、前記他の所定の工程が正常に行われていないと判定する、ことが好ましい。
【0012】
本開示の実施形態に係る工作機械において、他の所定の工程は、工具を回転工具装置から自動工具交換装置へ受け渡す工程、又は、工具を自動工具交換装置から回転工具装置へ受け渡す工程である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の実施形態に係る工作機械によれば、複数のモータに入力される複数の電流値を監視することで、内部で発生する異常を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る工作機械の部分斜視図である。
【
図2】
図1に示す工作機械の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1及び
図2に示す自動工具交換装置の拡大斜視図である。
【
図4A】
図3に示す視点βから見たマガジンの正面図である。
【
図4B】
図4Aに示すマガジンに工具を保持する工程を説明するための図(その1)である。
【
図4C】
図4Aに示すマガジンに工具を保持する工程を説明するための図(その2)である。
【
図5】本実施形態に係る工作機械のB軸回転工具装置と自動工具交換装置との間で行われる一連の工具交換工程を示すフローチャートである。
【
図6A】
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置、及び、ATCの移動位置を示す図(その1)である。
【
図6B】
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置、及び、ATCの移動位置を示す(その2)である。
【
図6C】
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置、及び、ATCの移動位置を示す図(その3)である。
【
図6D】
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置、及び、ATCの移動位置を示す図(その4)である。
【
図6E】
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置、及び、ATCの移動位置を示す図(その5)である。
【
図6F】
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置、及び、ATCの移動位置を示す図(その6)である。
【
図7】
図5に示す一連の工具交換工程において各サーボモータに供給される正常時の電流波形を示す図である。
【
図8】工具アンクランプが異常だった場合に、所定の工具交換工程において各サーボモータに供給される電流波形を示す図である。
【
図9】次工具クランプが異常だった場合に、所定の工具交換工程において各サーボモータに供給される電流波形を示す図である。
【
図10】マガジンが破損していた場合に、所定の工具交換工程において各サーボモータに供給される電流波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る工作機械について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
図1は、本実施形態に係る工作機械1の部分斜視図である。
図1に示す工作機械1は、丸棒状の長尺の棒材であるワークWを加工するための装置である。工作機械1は、ワークWを支持するための主軸2、B軸回転工具装置3等を含んで構成される回転工具駆動装置13、自動工具交換装置(Automatic Tool Changer、ATC)4、及び、後述する数値制御(Numerically Controlled、NC)装置5等を含んで構成される。
【0017】
主軸2は、支持台6に設けられている。主軸2は、Z軸方向を軸線として、Z軸を中心としてワークWを回転自在に支持すると共に、ワークWを支持台6の正面側に移動可能に支持する。支持台6は、ベッド7に固定支持される。
【0018】
支持台6の正面側には、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向とも称される)に沿って延びるレール8が設置される。レール8には、第3サーボモータMT3で発生する動力によって矢印α1の方向にスライドするベース10が装着される。ベース10には、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(鉛直方向とも称される)に沿って延びるレール11が設置される。レール11には、第1サーボモータMT1で発生する動力によって矢印α2の方向にスライドする回転工具駆動装置13が装着される。
【0019】
回転工具駆動装置13は、ワークWの加工を行うための工具を保持する装置である。この回転工具駆動装置13は、工具131,132、並びに、第1工具31及び第2工具32を有するB軸回転工具装置3を有する。工具131,132は、先端を下方に向けた状態で、X軸方向に沿って並設される。第1工具31及び第2工具32は、B軸回転工具装置3を構成するB軸回転工具本体部33に回転可能に保持され、先端を側方に向けた状態で、X軸方向に沿って並設される。本実施形態に係る工作機械1は、主軸2によってワークWをZ軸方向に移動させ、回転工具駆動装置13を矢印α1又は矢印α2の方向に移動させることによって、所定の工具でワークWの加工を行うことができる。B軸回転工具本体部33は、旋回モータMT5で発生する動力によって旋回モータMT5の旋回軸Aを中心として矢印α0の方向に旋回可能に支持される。
【0020】
ATC4は、B軸回転工具装置3との間で工具の交換を行う装置である。ATC4は、筐体41、第4サーボモータMT4、筐体41内に保持された後述する円形状のマガジン42、及び、第2サーボモータMT2等を含んで構成される。ベッド7には、X軸方向に沿って延びるレール15が設置される。レール15には、第4サーボモータMT4で発生する動力によって矢印α3の方向にスライドする筐体41が装着される。マガジン42は、第2サーボモータMT2で発生する動力によって回転軸Bを中心として矢印α4の方向に回転可能に支持される。
【0021】
図2は、
図1に示す工作機械1の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、B軸回転工具装置3は、B軸回転工具本体部33、第1水平方向移動機構M3、第3サーボモータMT3、鉛直方向移動機構M1、第1サーボモータMT1、旋回機構M5、及び、旋回モータMT5等を含んで構成される。
【0022】
第1水平方向移動機構M3は、B軸回転工具本体部33を含む回転工具駆動装置13全体を矢印α1の方向に移動可能とする。第3サーボモータMT3は、入力される電流を機械的出力(トルク及び回転数等の動力)に変換し、第1水平方向移動機構M3に与える。これにより、第1水平方向移動機構M3は、B軸回転工具本体部33を矢印α1の方向に進退移動する。第3サーボモータMT3の動作は、モーションコントローラC3によって制御される。
【0023】
モーションコントローラC3は、後述するNC装置5から伝達される制御信号に応じて、第3サーボモータMT3に所定の電流を入力する。モーションコントローラC3に伝達される制御信号は、少なくとも、第3サーボモータMT3の回転量(rad又はステップ数)及び回転数(rpm)を含む。第3サーボモータMT3には、センサSe3が設けられ、センサSe3によって第3サーボモータMT3の実回転量及び実回転数が検出され、モーションコントローラC3に伝達される。モーションコントローラC3は、制御信号に含まれる第3サーボモータMT3の回転量及び回転数の数値と、センサSe3によって検出される第3サーボモータMT3の実回転量及び実回転数の数値とが比較され、これらの数値の偏差が無くなるように第3サーボモータMT3に所定の電流を入力する。以下、モーションコントローラC1、C2、C4、C5の制御方法はモーションコントローラC3の制御方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0024】
鉛直方向移動機構M1は、B軸回転工具本体部33を含む回転工具駆動装置13全体を矢印α2の方向に上下移動可能とする。第1サーボモータMT1は、鉛直方向移動機構M1を動作させるための動力を発生する。第1サーボモータMT1の動作は、モーションコントローラC1によって制御される。モーションコントローラC1による第1サーボモータMT1の制御方法はモーションコントローラC3による第3サーボモータMT3の制御方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0025】
旋回機構M5は、旋回モータMT5の旋回軸Aを中心として矢印α0の方向にB軸回転工具本体部33を旋回可能とする。旋回モータMT5は、旋回機構M5を動作させるための動力を発生する。旋回モータMT5の動作は、モーションコントローラC5によって制御される。モーションコントローラC5による旋回モータMT5の制御方法はモーションコントローラC3による第3サーボモータMT3の制御方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0026】
図2に示すように、ATC4は、円形状のマガジン42、第2水平方向移動機構M4、第4サーボモータMT4、マガジン回転機構M2、及び、第2サーボモータMT2等を含んで構成される。
【0027】
第2水平方向移動機構M4は、マガジン42が収容される筐体41を矢印α3の方向に移動可能とする。第4サーボモータMT4は、第2水平方向移動機構M4を動作させるための動力を発生する。第4サーボモータMT4は、入力される電流を機械的出力(トルク及び回転数等の動力)に変換し、第2水平方向移動機構M4に与える。これにより、第2水平方向移動機構M4は、マガジン42が収容された筐体41を矢印α3の方向に進退移動する。第4サーボモータMT4の動作は、モーションコントローラC4によって制御される。モーションコントローラC4による第4サーボモータMT4の制御方法はモーションコントローラC3による第3サーボモータMT3の制御方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0028】
マガジン回転機構M2は、回転軸Bを中心として矢印α4の方向にマガジン42を回転可能とする。第2サーボモータMT2は、マガジン回転機構M2を動作させるための動力を発生する。第2サーボモータMT2は、入力される電流を機械的出力(トルク及び回転数等の動力)に変換し、マガジン回転機構M2に与える。これにより、マガジン回転機構M2は、回転軸Bを中心として矢印α4の方向にマガジン42を回転する。第2サーボモータMT2の動作は、モーションコントローラC2によって制御される。モーションコントローラC2による第2サーボモータMT2の制御方法はモーションコントローラC3による第3サーボモータMT3の制御方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0029】
NC装置5は、B軸回転工具装置3、及び、ATC4各々の動作を制御するための装置である。
図2に示すように、NC装置5は、インターフェース部51、記憶部52、入力部53、出力部54、電流検出部55、及び、制御部56等を含んで構成される。インターフェース部51、記憶部52、入力部53、出力部54、電流検出部55、及び、制御部56は、バス57を介して相互に接続される。制御部56からの各種制御信号は、インターフェース部51を介してモーションコントローラC1~C5に伝達される。モーションコントローラC1~C5から対応するサーボモータMT1~MT5に出力された複数の電流値は、インターフェース部51を介して電流検出部55へ伝達される。
【0030】
記憶部52は、例えば、半導体記憶装置を含み、制御部56での処理に用いられるプログラム及びデータ等を記憶する。記憶部52は、少なくとも、B軸回転工具装置3とATC4との間で行われる一連の工具交換工程を制御部56に実行させるためのプログラムを記憶する。プログラムは、CD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部52にインストールされてもよい。また、記憶部52は、一連の工具交換工程が正常に行われる場合において、サーボモータMT1~MT4に入力される複数の電流値の経時的変化を予め記憶している。
【0031】
入力部53は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、工作機械1のオペレータによる操作に対応する信号を生成する。生成された信号は、オペレータの指示として、制御部56に供給される。
【0032】
出力部54は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、制御部56から供給される映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。
【0033】
電流検出部55は、サーボモータMT1~MT4に入力される複数の電流値を検出して、検出結果を制御部56へ伝達する。
【0034】
制御部56は、工作機械1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部56は、記憶部52に記憶されるプログラムに従って、一連の工具交換工程を実行する。制御部56は、指令部561、及び、判定部562を有する。指令部561は、例えば、一連の工具交換工程を実行するための制御信号を、インターフェース部51を介して、モーションコントローラC1~C5に伝達する。制御信号は、各サーボモータの回転量(rad又はステップ数)及び回転数(rpm)を含む。判定部562は、一連の工具交換工程が正常に行われているか否かを判定する。具体的な判定手順については、後述する。
【0035】
図3は、
図1及び
図2に示すATC4の拡大斜視図である。
図3に示すように、ATC4の筐体41内には、マガジン42が収容され、マガジン回転機構M2を構成する回転軸43の一端が、マガジン42の中心に固定支持される。回転軸43は、基台45に設置される支持部材44によって回転可能に支持される。マガジン42は、第2サーボモータMT2で発生する動力によって矢印α
4の方向に回転する。また、筐体41には、不図示の開閉機構によって、ATC4内に収容される交換用の工具を搬出及び搬入するために開閉するシャッタ46が配置される。
【0036】
図4Aは、
図3に示す視点βから見たマガジン42の正面図である。
図4Aに示すように、マガジン42には、工具を保持する12個の工具保持部H1~H12が円周方向に沿って設けられる。工具保持部H1~H12は、同一の構成を有しているため、以降、説明の便宜上、工具保持部H1についてのみ説明する。1つの工具保持部H1は、工具Tを格納する凹部H13、及び、凹部H13に格納された工具Tを把持する弾性部材を有する2つの留め具H14を有する。例えば、
図4Bに示すように、工具Tは、Y軸方向に沿って下降することで、凹部H13に格納され、
図4Cに示すように、留め具H14によって凹部H13内に弾性的に保持される。
【0037】
図5は、本実施形態に係る工作機械1のB軸回転工具装置3とATC4との間で行われる一連の工具交換工程を示すフローチャートである。
図6A~
図6Fは、
図5に示す一連の工具交換工程の各工程における、B軸回転工具装置3、及び、ATC4の移動位置を示す図である。以下、B軸回転工具本体部33に保持されている第2工具32を他の工具に変更する場合の正常動作について説明する。
【0038】
所定の手順によって工具交換の指令が入力されると、最初に制御部56は、記憶部52に記憶されるプログラムに従って、B軸回転工具装置旋回を実行する(ステップS1)。具体的には、制御部56の指令部561は、インターフェース部51を介して所定の制御信号(各サーボモータの回転量(rad又はステップ数)及び回転数(rpm))をモーションコントローラC3に伝達する。モーションコントローラC3は、指令部561から伝達される制御信号に応じて、第3サーボモータMT3を制御して、第1水平方向移動機構M3を駆動することによって、B軸回転工具装置3を移動させて、B軸回転工具本体部33をレール8に沿って
図6Aに示す矢印α
1の方向(前進方向)に移動させる。以下、便宜上、各移動機構M1~M5、及び、B軸回転工具装置3についての説明を省略する。また、指令部561からモーションコントローラC1~C5への制御信号の伝達、及び、モーションコントローラC1~C5における制御信号に応じたサーボモータMT1~MT4、及び、旋回モータMT5の制御についての説明を省略する。
【0039】
次に、指令部561は、旋回モータMT5を制御し、B軸回転工具本体部33を、旋回モータMT5の旋回軸Aを中心として
図6Aに示す矢印α
0の方向に180度旋回させる。
【0040】
次に、制御部56は、B軸回転工具装置3、及び、ATC4の水平方向移動を実行する(ステップS2)。具体的には、
図6Aに示すように、制御部56の指令部561は、第3サーボモータMT3を制御してB軸回転工具本体部33を矢印α
1の方向(前進方向)に移動させ、同時期に制御部56の指令部561は、第4サーボモータMT4を制御して、筐体41を矢印α
3の方向(前進方向)に移動させる。このとき、筐体41のシャッタ46は、不図示の開閉機構により開かれる。結果として、B軸回転工具本体部33、及び、筐体41は、
図6Aに示す状態から、
図6Bに示す状態に移動する。
【0041】
次に、制御部56は、B軸回転工具装置3の鉛直方向移動を実行する(ステップS3)。具体的には、
図6Bに示すように、制御部56の指令部561は、第1サーボモータMT1を制御して、B軸回転工具本体部33を矢印α
2の方向に下降させる。B軸回転工具本体部33の下降によって、B軸回転工具本体部33に支持されていた第2工具32が、空いている工具保持部H1の2つの留め具H14によって仮に保持される。
【0042】
なお、B軸回転工具本体部33が下降する前に、制御部56の指令部561は、第2サーボモータMT2を制御して、空いている工具保持部H1が第2工具32の真下に位置するようにマガジン42を回転させる。さらに、B軸回転工具本体部33が下降してから次のステップが開始するまでの間、指令部561は、第2サーボモータMT2を制御して、マガジン42が回転しないように所定の位置に維持する。
【0043】
次に、制御部56は、工具アンクランプを実行する(ステップS4)。具体的には、制御部56の指令部561は、B軸回転工具本体部33内で第2工具32を保持している不図示の工具保持機構を制御して、第2工具32の保持を解除させる。さらに、制御部56の指令部561は、第3サーボモータMT3を制御して、B軸回転工具本体部33を、第2工具32が工具保持部H1に仮に保持されている状態のまま、矢印α
1の方向(前進方向)に少しだけ移動させる。結果として、B軸回転工具本体部33は第2工具32を介してマガジン42を押し込むこととなり、第2工具32はB軸回転工具本体部33から外れて工具保持部H1に完全に保持された状態となる。すなわち、ステップS4によって、第2工具32のB軸回転工具装置3からATC4へ受け渡しが完了する。この状態を
図6Cに示す。
【0044】
なお、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込む際、マガジン42による負荷が発生する。したがって、B軸回転工具本体部33を矢印α1の方向に移動させるために制御される第3サーボモータMT3に対して、モーションコントローラC3から供給される電流値は、マガジン42による負荷が存在しない場合と比較して変動する。
【0045】
一方、制御部56の指令部561は、第4サーボモータMT4を制御することによって筐体41を所定の位置(
図6Cに示す位置)に維持するように制御している。しかしながら、マガジン42は第2工具32を介してB軸回転工具本体部33によって押し込まれるため、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4に出力される電流値は、筐体41を所定の位置に維持しようとして、筐体41が押し込まれない場合と比較して変動する。
【0046】
次に、制御部56は、B軸回転工具装置3の水平方向移動を実行する(ステップS5)。具体的には、
図6Cに示すように、制御部56の指令部561は、第3サーボモータMT3を制御して、B軸回転工具本体部33を矢印α
1の方向(後退方向)に移動させる。結果として、B軸回転工具本体部33は、
図6Cに示す状態から、
図6Dに示す状態に移動する。
【0047】
次に、制御部56は、次工具準備を実行する(ステップS6)。具体的には、指令部561は、第2サーボモータMT2を制御して、次に使用する工具(次工具321)が保持されている工具保持部Hnが一番上に位置するように、回転軸Bを中心として矢印α
4の方向にマガジン42を回転させる。この状態を
図6Dに示す。
【0048】
次に、制御部56は、B軸回転工具装置3の水平方向移動を実行する(ステップS7)。具体的には、
図6Dに示すように、制御部56の指令部561が第3サーボモータMT3を制御してB軸回転工具本体部33を矢印α
1の方向(前進方向)に移動させる。
【0049】
次に、制御部56は、次工具クランプを実行する(ステップS8)。具体的には、制御部56の指令部561は、第3サーボモータMT3を制御してB軸回転工具本体部33を矢印α
1の方向(前進方向)に少しだけ移動させながら、B軸回転工具本体部33内の工具保持機構を制御して、次工具321を保持させる。すなわち、ステップS8によって、次工具321のATC4からB軸回転工具装置3からへ受け渡しが完了する。この状態を
図6Eに示す。
【0050】
ステップS8で次工具321を保持する際、結果として、B軸回転工具本体部33は次工具321を介してマガジン42を押し込むこととなる。したがって、B軸回転工具本体部33を矢印α1の方向に移動させるために制御される第3サーボモータMT3に対して、モーションコントローラC3から供給される電流値は、マガジン42による負荷が存在しない場合と比較して高くなる。同様に、マガジン42は次工具321を介してB軸回転工具本体部33によって押し込まれるため、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4に出力される電流値は、筐体41を所定の位置に維持しようとして、筐体41が押し込まれない場合と比較して高くなる。
【0051】
次に、制御部56は、B軸回転工具装置3の鉛直方向移動を実行する(ステップS9)。
図6Eに示すように、制御部56の指令部561は、第1サーボモータMT1を制御して、B軸回転工具本体部33を矢印α
2の方向に上昇させる。結果として、B軸回転工具本体部33は、
図6Eに示す状態から
図6Fに示す状態に移動する。この状態で、マガジン42から次工具321が外されることとなる。さらに、B軸回転工具本体部33が上昇してから次のステップが開始するまでの間、制御部56の指令部561は、第2サーボモータMT2を制御して、マガジン42が回転しないように所定の位置に維持する。
【0052】
次に、制御部56は、B軸回転工具装置3、及び、ATC4の水平方向移動を実行する(ステップS10)。具体的には、
図6Fに示すように、制御部56の指令部561は、第3サーボモータMT3を制御して、B軸回転工具本体部33を矢印α
1の方向(後退方向)に移動させ、同時期に制御部56の指令部561は、第4サーボモータMT4を制御して筐体41を矢印α
3の方向(後退方向)に移動させる。このとき、筐体41のシャッタ46は、不図示の開閉機構により閉じられる。
【0053】
最後に、制御部56は、B軸回転工具装置旋回を実行して(ステップS11)、一連の工具交換工程が終了する。具体的には、制御部56の指令部561は、旋回モータMT5を制御し、B軸回転工具本体部33を、旋回モータMT5の旋回軸Aを中心として
図6Fに示す矢印α
0の方向に180度旋回させ、同時期に制御部56の指令部561は、第3サーボモータMT3を制御してB軸回転工具本体部33を
図6Fに示す矢印α
1の方向(後退方向)に移動させる。結果として、B軸回転工具本体部33は、
図6Fに示す状態から、再び
図6Aに示す状態に移動する。
【0054】
図7は、一連の工具交換工程において各サーボモータに供給される正常時の電流波形を示している。
図7において、横軸は時間(時刻t
1~t
8)(s)を示し、縦軸は電流値(mA)を示し、S3~S9は
図5に示す一連の工具交換工程のステップに対応する期間を示している。電流A1は、モーションコントローラC1から第1サーボモータMT1へ供給される電流波形を示し、電流A2は、モーションコントローラC2から第2サーボモータMT2へ供給される電流波形を示している。電流A3は、モーションコントローラC3から第3サーボモータMT3へ供給される電流波形を示し、電流A4は、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4へ供給される電流波形を示している。なお、上記については、
図8~
図10においても同様である。
【0055】
図7においてP1として示す電流A3の期間では、
図5のステップS4について説明したように、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込む際、マガジン42による負荷により、モーションコントローラC3から第3サーボモータMT3に供給される電流値が変動している。
図7においてP2として示す電流A3の期間では、
図5のステップS8について説明したように、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込む際、マガジン42による負荷により、モーションコントローラC3から第3サーボモータMT3に供給される電流値が変動している。
【0056】
図7においてP3として示す電流A4の期間では、
図5のステップS4について説明したように、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込む際、B軸回転工具本体部33による押し込みに対して筐体41の位置を維持するために、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4に供給される電流値が変動している。
図7においてP4として示す電流A4の期間では、
図5のステップS8について説明したように、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込む際、B軸回転工具本体部による押し込みに対して筐体41の位置を維持するために、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4に供給される電流値が変動している。
【0057】
図7においてP5として示す電流A2の期間では、
図5のステップS3の正常動作時には、マガジン42を移動させるような現象が発生していないため、モーションコントローラC2から第2サーボモータMT2に供給される電流値が変動していない。
図7においてP6として示す電流A2の期間では、
図5のステップS9の正常動作時には、マガジン42を移動させるような現象が発生していないため、モーションコントローラC2から第2サーボモータMT2に供給される電流値が変動していない。
【0058】
図7においてP7として示す電流A1の期間では、
図5のステップS3の正常動作時について説明したように、B軸回転工具本体部33を下降させているため、モーションコントローラC1から第1サーボモータMT1に供給される電流値が変動している。
図7においてP8として示す電流A1の期間では、
図5のステップS9の正常動作時について説明したように、B軸回転工具本体部33を上昇させているため、モーションコントローラC1から第1サーボモータMT1に供給される電流値が変動している。
【0059】
図8は、工具アンクランプが異常だった場合に、所定の工具交換工程(
図5のステップS4参照)において各サーボモータに供給される電流波形を示している。
【0060】
例えば、B軸回転工具本体部33が第2工具32を保持していなかった場合、
図5のステップS4の動作では、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込むことが発生しない。したがって、
図8においてP1´として示す電流A3の期間では、マガジン42による負荷が存在しないので、モーションコントローラC3から第3サーボモータMT3に供給される電流値が変動しない。同様に、
図8においてP3´として示す電流A3の期間では、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込むことが発生しないので、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4に供給される電流値が変動しない。なお、
図8のP1´及びP3´において、正常動作する場合の電流A3及び電流A4の波形を破線で示している。
【0061】
図8に示すように、正常動作時の電流波形(
図7参照)と、異常動作時の電流波形(
図8参照)とを比較することによって、工具アンクランプ時の異常を検出することが可能となる。具体的には、記憶部52には、
図7に示すような正常動作時に電流波形を予め記憶させておく。一方、工具交換工程の開始後は、電流検出部55で第3サーボモータMT3に供給される電流値及び/又は第4サーボモータMT4に供給される電流値を検出し、ステップS4に対応する時刻t
2~t
3の期間で所定の電流変動が発生しない場合に、制御部56の判定部562が、異常が発生したと判定する。
【0062】
上述したように、サーボモータへ供給される電流値が許容値を超えるような場合のみが、異常とは限らない。したがって、本実施形態に係る工作機械1は、モータの電流値が許容値未満であっても、工具アンクランプを実行する工程において内部で発生する異常を検出することができる。
【0063】
図9は、次工具クランプが異常だった場合に、所定の工具交換工程(
図5のステップS8参照)において各サーボモータに供給される電流波形を示している。
【0064】
例えば、B軸回転工具本体部33が次工具321を保持していなかった場合、
図5のステップS8の動作では、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込むことが発生しない。したがって、
図9においてP2´として示す電流A3の期間では、マガジン42による負荷が存在しないので、モーションコントローラC3から第3サーボモータMT3に供給される電流値が変動しない。同様に、
図9においてP4´として示す電流A3の期間では、B軸回転工具本体部33によってマガジン42を押し込むことが発生しないので、モーションコントローラC4から第4サーボモータMT4に供給される電流値が変動しない。なお、
図9のP2´及びP4´において、正常動作する場合の電流A3及び電流A4の波形を破線で示している。
【0065】
図9に示すように、正常動作時の電流波形(
図7参照)と、異常動作時の電流波形(
図9参照)とを比較することによって、次工具アンクランプ時の異常を検出することが可能となる。具体的には、記憶部52には、
図7に示すような正常動作時に電流波形を予め記憶させておく。一方、工具交換工程の開始後は、電流検出部55で第3サーボモータMT3に供給される電流値及び/又は第4サーボモータMT4に供給される電流値を検出し、ステップS8に対応する時刻t
6~t
7の期間で所定の電流変動が発生しない場合に、制御部56の判定部562が、異常が発生したと判定する。
【0066】
上述したように、サーボモータへ供給される電流値が許容値を超えるような場合のみが、異常とは限らない。したがって、本実施形態に係る工作機械1は、モータの電流値が許容値未満であっても、次工具アンクランプを実行する工程において内部で発生する異常を検出することができる。
【0067】
図10は、マガジン42が破損していた場合に、所定の工具交換工程(
図5のステップS3及びS9参照)において各サーボモータに供給される電流波形を示している。
【0068】
図4A及び
図4Bにおいて説明したように、工具は、マガジン42に設けられた、2つの留め具H14を有する工具保持部H1~H12のいずれか1つに格納される。一方、工具を工具保持部に挿入する際(ステップS3)、及び、工具を工具保持部から抜き取る際(ステップS9)、制御部56の指令部561の指示により、モーションコントローラC2は、第2サーボモータMT2を制御して、マガジン42が所定の位置に維持されるように制御している。
【0069】
例えば、何らかの事情により、2つの留め具H14のうち1つが破損する場合が考えられる。このような場合に、工具を工具保持部に挿入、又は、工具を工具保持部から抜き取ろうとすると、マガジン42に対して左右いずれかの方向に回転しようとする負荷が掛かる。負荷が掛かると、モーションコントローラC2は、第2サーボモータMT2に供給される電流値を変動させて、マガジン42が所定の位置に維持されるような制御を行うこととなる。
【0070】
工具を工具保持部に挿入する際(ステップS3)、
図10においてP5´として示す電流A2の期間では、
図4Aに示す2つの留め具H14のうち図中で左側の留め具H14が破損している場合、モーションコントローラC2は、
図10の電流波形60に示すように、第2サーボモータMT2に供給される電流値を上振れさせて、破損している留め具H14の方向へのマガジン42の回転を規制する。一方、
図4Aに示す2つの留め具H14のうち図中で右側の留め具H14が破損している場合、
図10の電流波形61に示すように、モーションコントローラC2は、第2サーボモータMT2に供給される電流値を下振れさせて、破損している留め具H14の方向へのマガジン42の回転を規制する。なお、
図10のP5において、正常動作する場合の電流A2の波形を破線で示している。
【0071】
また、工具を工具保持部から抜き取る際(ステップS9)、
図10においてP6´として示す電流A2の期間では、
図4Aに示す2つの留め具H14のうち図中で左側の留め具H14が破損している場合、モーションコントローラC2は、
図10の電流波形62に示すように、第2サーボモータMT2に供給される電流値を上振れさせて、破損している留め具H14の方向へのマガジン42の回転を規制する。一方、
図4Aに示す2つの留め具H14のうち図中で右側の留め具H14が破損している場合、
図10の電流波形63に示すように、モーションコントローラC2は、第2サーボモータMT2に供給される電流値を下振れさせて、破損している留め具H14の方向へのマガジン42の回転を規制する。なお、
図10のP6´において、正常動作する場合の電流A2の波形を破線で示している。
【0072】
制御部56の指令部561の指示により、モーションコントローラC1は、第1サーボモータMT1を制御して、B軸回転工具本体部33を下降、及び、上昇させるように制御している。例えば、2つの留め具H14のうち1つが破損している場合に、B軸回転工具本体部33を下降、及び、上昇させようとすると、留め具H14による弾性抵抗は破損していない場合の弾性抵抗と比較して小さくなり、第1サーボモータMT1に掛かる負荷も小さくなる。負荷が小さくなると、モーションコントローラC1は、第1サーボモータMT1に供給される電流値を通常よりも小さく変動させるような制御を行うこととなる。
【0073】
工具を工具保持部に挿入する際(ステップS3)、
図10においてP7´として示す電流A1の期間では、留め具H14による弾性抵抗が小さくなるので、モーションコントローラC1から第1サーボモータMT1に供給される電流値の変動が小さくなる。なお、
図10のP7´において、正常動作する場合の電流A1の波形を破線で示している。
【0074】
また、工具を工具保持部から抜き取る際(ステップS9)、
図10においてP8´として示す電流A1の期間では、留め具H14による弾性抵抗が小さくなるので、モーションコントローラC1から第1サーボモータMT1に供給される電流値の変動が小さくなる。なお、
図10のP8´において、正常動作する場合の電流A1の波形を破線で示している。
【0075】
図10に示すように、正常動作時の電流波形(
図7参照)と、異常動作時の電流波形(
図10参照)とを比較することによって、マガジン42の破損による異常を検出することが可能となる。具体的には、記憶部52には、
図7に示すような正常動作時に電流波形を予め記憶させておく。一方、工具交換工程の開始後は、電流検出部55で第1サーボモータMT1に供給される電流A1、及び、第2サーボモータMT2に供給される電流A2の電流値を検出し、ステップS3に対応する時刻t
1~t
2の期間及び/又はステップS9に対応する時刻t
7~t
8の期間で所定の電流変動が発生した場合に、制御部56の判定部562が、異常が発生したと判定する。このように、同一の異常に対して、複数の電流値の波形が同時に異なった波形となる現象が発生する場合には、複数の電流値の経時的変化を正常値と比較することによって、より正確に異常判定を行うことが可能となる。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態に係る工作機械1は、少なくとも、工具アンクランプ時の異常、次工具クランプ時の異常、及び/又は、マガジン42の破損による異常の有無を、関連するサーボモータに供給される電流値を検出して判定することが可能となる。
【0077】
ここで、本実施形態に係る工作機械1において、センサSe1~センサSe5によって検出されるサーボモータMT1~MT4、及び、旋回モータMT5の実回転量及び実回転数が、NC装置5にも伝達されるようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態に係る工作機械1において、記憶部52は、一連の工具交換工程が正常に行われる場合において、少なくとも、第1サーボモータMT1、及び、第2サーボモータMT2に入力される複数の電流値の経時的変化を予め記憶するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態に係る工作機械1において、モーションコントローラC1が制御する第1サーボモータMT1は複数設置されてもよく、B軸回転工具装置3は、複数の第1サーボモータMT1を用いて、鉛直方向移動機構M1を動作させてもよい。なお、他のモーションコントローラC2~C5と、他のサーボモータMT2~MT5と、他の機構M2~M5とについても同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0080】
また、制御部56は、ステップS1において、B軸回転工具本体部33をレール8に沿って矢印α1の方向(前進方向)に移動させる工程と、B軸回転工具本体部33を、旋回モータMT5の旋回軸Aを中心として矢印α0の方向に180度旋回させる工程とに分けて、B軸回転工具装置旋回を実行している。しかしながら、制御部56は、ステップS11と同様に、ステップS1において、第3サーボモータMT3を制御してB軸回転工具本体部33を矢印α1の方向(前進方向)に移動させ、同時期にB軸回転工具本体部33を、旋回モータMT5の旋回軸Aを中心として矢印α0の方向に180度旋回させてもよい。
【0081】
また、本実施形態に係る工作機械1において、工具保持部H1~H12は、
図4A~
図4Cに示すように、工具Tを把持する弾性部材を有する2つの留め具H14を有している。しかしながら、本実施形態に係る工作機械1において、工具保持部H1~H12の留め具は、一体物として構成されてもよい。
【0082】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明及び技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものである。特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点及び欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神及び範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0083】
1 工作機械
2 主軸
3 B軸回転工具装置
4 自動工具交換装置(ATC)
5 数値制御装置(NC装置)
32 第2工具
33 B軸回転工具本体部
41 筐体
42 マガジン
51 インターフェース部
52 記憶部
53 入力部
54 出力部
55 電流検出部
56 制御部
321 次工具
561 指令部
562 判定部
MT1~MT4 第1サーボモータ~第4サーボモータ