(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136112
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/054 20140101AFI20230922BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20230922BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01L31/04 620
H01L31/04 560
C03C19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041561
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田飼 伸匡
【テーマコード(参考)】
4G059
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC01
5F151BA16
5F151BA17
5F151JA02
5F151JA03
5F151JA23
5F251BA16
5F251BA17
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA23
(57)【要約】
【課題】隣接する他の太陽電池モジュール等が太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池セルの光入射側に重ねられた透光性を有する保護材を備え、太陽電池モジュールに対し、遮蔽物から遠ざかる方向を第1方向とし、第1方向に対して平面視において反時計回りに90度回転させた方向を第2方向とした場合、保護材の少なくとも遮蔽物寄りの一部領域につき、第1方向上に光源及び光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、第2方向上に光源及び光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、第1の60度鏡面光沢度の方が第2の60度鏡面光沢度よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルと、前記太陽電池セルの光入射側に重ねられた、透光性を有する保護材と、を備えた太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池モジュールに対し、太陽光の入射角度によって前記太陽電池セルに影がかかる位置に遮蔽物が存在する条件で、前記遮蔽物から遠ざかる方向を第1方向とし、前記第1方向に対して平面視において反時計回りに90度回転させた方向を第2方向とした場合、
前記保護材の少なくとも前記遮蔽物寄りの一部領域につき、前記第1方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、前記第2方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、前記第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さい、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1方向での、前記保護材の拡散透過率が30%以上である、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第1の60度鏡面光沢度は、前記第2の60度鏡面光沢度を基準として10%以上小さい、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
太陽電池セルと、前記太陽電池セルの光入射側に重ねられた、透明な硬質材料からなる保護材と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記保護材が、前記硬質材料に対して斜め方向に研磨材を投射して光入射側の面に凹凸を形成するブラスト加工により形成され、
前記太陽電池モジュールに対し、太陽光の入射角度によって前記太陽電池セルに影がかかる位置に遮蔽物が存在する条件で、前記遮蔽物から遠ざかる方向を第1方向とし、前記第1方向に対して平面視において反時計回りに90度回転させた方向を第2方向とした場合、
前記保護材の少なくとも前記遮蔽物寄りの一部領域につき、前記第1方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、前記第2方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、前記第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さくなっている、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記ブラスト加工における前記斜め方向は、加工を行う面の上方から前記第1方向に向かう方向、又は、上方から前記第一方向に対して平面視において反時計回りに180°回転させた第3方向に向かう方向である、請求項4に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の屋根に複数配置される太陽電池モジュールが提案されている(特許文献1)。各太陽電池モジュールは、ガラス基板と、ガラス基板に設けられた複数の太陽電池セルと、外周縁に設けられた枠部と、を備える。
【0003】
この太陽電池モジュールにおいて、隣接する他の太陽電池モジュール等によって、一部の太陽電池セルに太陽光が遮られるものが発生する。そうなると、太陽光が遮られた太陽電池セルが太陽電池モジュール内で抵抗となり、太陽光が遮られていない太陽電池セルも含め、太陽電池モジュール全体で発電効率が低下するおそれがある。これに対して、この太陽電池モジュールでは、太陽光が遮られる可能性のある太陽電池セルが、他の太陽電池セルよりも広幅とした構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこのような構成では、太陽電池モジュールに含まれる太陽電池セルの種類が増えるため、太陽電池モジュールの製造コストが増大してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、隣接する他の太陽電池モジュール等が太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルと、前記太陽電池セルの光入射側に重ねられた、透光性を有する保護材と、を備えた太陽電池モジュールであって、前記太陽電池モジュールに対し、太陽光の入射角度によって前記太陽電池セルに影がかかる位置に遮蔽物が存在する条件で、前記遮蔽物から遠ざかる方向を第1方向とし、前記第1方向に対して平面視において反時計回りに90度回転させた方向を第2方向とした場合、前記保護材の少なくとも前記遮蔽物寄りの一部領域につき、前記第1方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、前記第2方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、前記第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さい。
【0008】
かかる構成によれば、第2の60度鏡面光沢度に対して第1の60度鏡面光沢度が小さい分、保護材において第2方向よりも第1方向の拡散透過率が大きい。よって、遮蔽物の側から差す太陽光線により保護材で発生した拡散光を、直達光の届かない太陽電池セルに到達させられるため、遮蔽物によって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域の受光量を増加させられる。この受光量の増加した分だけ、遮蔽物による発電量低下を緩和できる。
【0009】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記第1方向での、前記保護材の拡散透過率が30%以上であってもよい。
【0010】
また、前記太陽電池モジュールでは、前記第1の60度鏡面光沢度は、前記第2の60度鏡面光沢度を基準として10%以上小さくてもよい。
【0011】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルと、前記太陽電池セルの光入射側に重ねられた、透明な硬質材料からなる保護材と、を備えた太陽電池モジュールの製造方法であって、前記保護材が、前記硬質材料に対して斜め方向に研磨材を投射して光入射側の面に凹凸を形成するブラスト加工により形成され、前記太陽電池モジュールに対し、太陽光の入射角度によって前記太陽電池セルに影がかかる位置に遮蔽物が存在する条件で、前記遮蔽物から遠ざかる方向を第1方向とし、前記第1方向に対して平面視において反時計回りに90度回転させた方向を第2方向とした場合、前記保護材の少なくとも前記遮蔽物寄りの一部領域につき、前記第1方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、前記第2方向上に光源及び当該光源の光線を受ける受光器が配置されるように測定装置を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、前記第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さくなっている。
【0012】
かかる構成によれば、隣接する他の太陽電池モジュール等が、太陽電池モジュールに入射する太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュールを、ブラスト加工という公知の加工方法により簡単に製造することができる。
【0013】
前記太陽電池モジュールの製造方法では、前記ブラスト加工における前記斜め方向は、加工を行う面の上方から前記第1方向に向かう方向、又は、上方から前記第一方向に対して平面視において反時計回りに180°回転させた第3方向に向かう方向であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、隣接する他の太陽電池モジュール等が太陽光の遮蔽物となった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II位置における模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、前記太陽電池モジュールにおける各方向を説明するための模式的な図であり、(A)は第1方向及び第2方向を説明するための模式的な平面図であり、(B)は第1方向を説明するための模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、前記太陽電池モジュールの保護材の構成を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図4を参照しつつ説明する。
【0017】
太陽電池モジュール1は、
図1及び
図2に示すように、太陽電池セル20と、太陽電池セル20の光入射側に重ねられた、透光性を有する保護材3と、を備える。また、太陽電池モジュール1は、
図2に示すように、太陽電池セル20と保護材3の間に設けられた封止材4を備える。さらに、太陽電池モジュール1は、保護材3の外縁に配置される枠部5を備える。この太陽電池モジュール1は、板状であり、例えば、主面(受光面)側を上方(太陽側)に向けた状態で、民家等の建物の屋根に設置される。この太陽電池モジュール1に対して、太陽光の入射角度によって太陽電池セル20に影がかかる位置に遮蔽物Sが存在する。本実施形態では、屋根に複数の太陽電池モジュール1が設置される。この場合において遮蔽物Sは、例えば、対象の太陽電池モジュール1と上側で隣り合う別の太陽電池モジュール1が有する下側の枠部5が該当することがある。
【0018】
ここで、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、太陽電池モジュール1に対し、太陽光の入射角度によって太陽電池セル20に影がかかる位置に遮蔽物S(本実施形態では、上側で隣り合う別の太陽電池モジュール1の枠部5)が存在する条件で、遮蔽物Sから遠ざかる方向を第1方向とし、第1方向に対して平面視において反時計回りに90度回転させた方向を第2方向とする。このとき、遮蔽物Sによる影は、第1方向の向きに延びる。また、
図2に示すように、保護材3の少なくとも遮蔽物S寄り(遮蔽物Sに近接した位置)の一部領域31(図示左端部)につき、第1方向上に光源70及び当該光源70の光線を受ける受光器71が配置されるように測定装置7を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、第2方向上に光源70及び当該光源70の光線を受ける受光器71が配置されるように測定装置7を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、第1の60度鏡面光沢度の方が第2の60度鏡面光沢度よりも小さい。なお、光源70と受光器71との位置関係は、図示の位置関係と逆であってもよい。
【0019】
なお、「保護材3の少なくとも遮蔽物S寄りの一部領域31」は、例えば、太陽電池セル20のうち直達光の届かない太陽電池セル20aの上方に位置する領域であり、遮蔽物Sによって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域である。即ち、「保護材3の少なくとも遮蔽物S寄りの一部領域31」は、太陽電池モジュール1の設置時に、遮蔽物Sによって太陽電池セル20に直達光が届かなくなる可能性のある領域である。ただし、この領域は時刻や季節によって変化するため、「保護材3の少なくとも遮蔽物S寄りの一部領域31」の範囲は適宜設定できる。
【0020】
60度鏡面光沢度と拡散透過率とは、逆関係にある。このため、本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、第2の60度鏡面光沢度に対して第1の60度鏡面光沢度が小さい分、保護材3において第2方向よりも第1方向の拡散透過率が大きい。また、
図4に示すように、遮蔽物Sの側(図示左側)から差す太陽光線により保護材3で発生した拡散光Lは、入射点の後方に進む拡散光L1と、入射点の前方に進む拡散光L2と、の両方を含む。よって、この拡散光L1を、太陽電池セル20のうち直達光の届かない太陽電池セル20aに到達させられるため、遮蔽物Sによって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域31の受光量を増加させられる。このように、遮蔽物Sによって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域31(保護材3のうち
図4におけるドットで塗られた領域)の受光量を増加させられることから、直達光の届かない太陽電池セル20aにおける受光量が増加した分だけ、直達光の届く太陽電池セル20を含む複数の太陽電池セル20で遮蔽物Sによる発電量低下を緩和できる。なお、この太陽電池モジュール1では、保護材3全体の光沢度を下げるのではなく、直達光の届かない領域に対応した保護材3の一部(遮蔽物S寄りの一部領域31)のみ光沢度を下げているため、太陽電池モジュール1の外観が不自然になりにくく従来に近いものとなっている。
【0021】
この太陽電池モジュール1では、第1方向での、保護材3の拡散透過率が30%以上である。このように、第1の60度鏡面光沢度は、第2の60度鏡面光沢度を基準として10%以上(本実施形態では、25%程度)小さい。
【0022】
また、この太陽電池モジュール1では、第1方向上の遮蔽物S側の領域31に光源70を配置して測定した、第3の60度鏡面光沢度(
図2に示したように、光源70及び受光器71を配置した際の第1の60度鏡面光沢度と同じ)は、第1方向上の遮蔽物Sとは反対側(
図3A及び
図3Bにおける右側)の領域32に光源70を配置して測定した、第4の60度鏡面光沢度よりも小さい。この構成によれば、第1方向では、第4の60度鏡面光沢度に対する第3の60度鏡面光沢度の分、拡散透過率が大きい。よって、遮蔽物Sの側(
図4における左側)から差す太陽光線のうち、保護材3で発生した拡散光を、直達光の届かない太陽電池セル20aにより多く到達させられるため、遮蔽物Sによって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域31の受光量を増加させられる。
【0023】
さらに、太陽電池セル20は短冊状(細長形状)とされており、複数の太陽電池セル20がシングリング接続されて、太陽電池ストリング2を構成している。シングリング接続とは、細長形状の太陽電池セル20を、屋根板を葺くようにして、各太陽電池セル20における長辺が重なるように順次配置していくことによる接続である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、太陽電池セル20は、直列接続されている。また、シングリング接続の接続方向は、第1方向と一致している。このように複数の太陽電池セル20がシングリング接続された太陽電池ストリング2では、単体の太陽電池セル20が小さく、影の影響による出力低下が生じやすいので、このような太陽電池ストリング2を備えた太陽電池モジュール1において、遮蔽物Sによる出力低下の対策を有効にできる。
【0024】
本実施形態の太陽電池モジュール1では、各太陽電池セル20の大きさ(シングリング接続された太陽電池ストリング2では、各太陽電池セル20の幅寸法)は同じである。各太陽電池セル20は、例えば、長方形の板状である。本実施形態では、従来のように遮蔽物Sによる影の対策のために、広幅の太陽電池セルを用意する必要がない。
【0025】
また、この太陽電池モジュール1では、遮蔽物Sにより太陽光が遮蔽され得る部位の全体で、第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さくなっている。なお、例えば、太陽電池モジュール1の設置位置の想定により、太陽電池モジュール1に対する日差しの方向が定まっている場合、即ち、シングリング接続の接続方向の一方側に、遮蔽物Sによる太陽光の遮蔽が生じると定まっている場合、シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の接続方向における一端部(
図1における左右方向における一端部)で、第1の60度鏡面光沢度の方が第2の60度鏡面光沢度よりも小さくなっていればよい。
【0026】
さらに、太陽電池モジュール1に対する日差しの方向が定まっていない場合、即ち、シングリング接続の接続方向の一方側に遮蔽物Sによる太陽光の遮蔽が生じると定まっていない場合、シングリング接続に係る太陽電池ストリング2の、接続方向両端部(
図1における左右方向における両端部)で、第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さくすることも考えられる。この構成によれば、シングリング接続の接続方向のどちら側に遮蔽物Sによる太陽光の遮蔽が生じても、遮蔽物Sによる発電量低下を緩和できる。このため、太陽電池モジュール1に設置位置の自由度が高い。なお、遮蔽物Sにより太陽光が遮蔽され得る部位に関係なく、太陽電池モジュール1の全体で、第1の60度鏡面光沢度の方が第2の60度鏡面光沢度よりも小さくなっていてもよい。
【0027】
保護材3は、例えば、透明な硬質材料により構成される。また、保護材3は、板状の部材であり、具体的には、ガラス板である。また、保護材3の厚みは、例えば、2mm以上8mm以下である。本実施形態の太陽電池モジュール1では、保護材3は、太陽電池セル20の表面200のみに設けられている(
図2参照)。この場合、太陽電池セル20の裏面201には、樹脂シート6が設けられている。
【0028】
なお、保護材3は、太陽電池セル20の表面200及び裏面201の両方に設けられていてもよい。この場合、太陽電池セル20の表面200に設けられた保護材3においてのみ、第1の60度鏡面光沢度と、第2方向上に光源70及び当該光源70の光線を受ける受光器71が配置されるように測定装置7を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、第1の60度鏡面光沢度の方が前記第2の60度鏡面光沢度よりも小さくすればよい。
【0029】
以下、太陽電池モジュール1の製造方法について説明する。この製造方法は、太陽電池セル20と、太陽電池セル20の光入射側に重ねられた、透明な硬質材料からなる保護材3と、を備えた太陽電池モジュール1の製造方法である。保護材3が、硬質材料(例えば、ガラス板)に対して斜め方向に研磨材を投射して光入射側の面に凹凸を形成するブラスト加工により形成される。ブラスト加工における前記斜め方向は、加工を行う面の上方から第1方向に向かう方向、又は、上方から第一方向に対して平面視において反時計回りに180°回転させた第3方向に向かう方向である(
図3(A)及び
図3(B)参照)。ブラスト加工は、例えば、サンドブラストである。本実施形態の製造方法では、サンドブラストは、研磨材を吹き付けるノズルN及び硬質材料の両方を動かしながら行われる。また、ブラスト加工は、例えば、マスクを用いて部分的に行われる。
【0030】
この製造方法では、ブラスト加工により、上述のように太陽電池モジュール1の保護材3の光沢度が部分的に小さくなる。具体的に、太陽電池モジュール1に対し、太陽光の入射角度によって太陽電池セル20に影がかかる位置に遮蔽物Sが存在する条件で、保護材3の少なくとも遮蔽物S寄りの一部領域31につき、第1方向上に光源70及び当該光源70の光線を受ける受光器71が配置されるように測定装置7を配置して測定した、第1の60度鏡面光沢度と、第2方向上に光源70及び当該光源70の光線を受ける受光器71が配置されるように測定装置7を配置して測定した、第2の60度鏡面光沢度と、を比較すると、第1の60度鏡面光沢度の方が第2の60度鏡面光沢度よりも小さくなっている。
【0031】
本実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法では、隣接する他の太陽電池モジュール1等が、太陽電池モジュール1に入射する太陽光の遮蔽物Sとなった場合でも、発電量低下を緩和できる太陽電池モジュール1を、ブラスト加工という公知の加工方法により簡単に製造することができる。
【0032】
なお、保護材3の加工は、ブラスト加工以外に、硬質材料に対するエッチング加工(例えば、マスクを用いて部分的に行うエッチング加工)、硬質材料に対する薄膜形成、硬質材料に対する偏光フィルムの貼付等により行ってもよい。また、太陽電池モジュール1の全体で、第1の60度鏡面光沢度の方が第2の60度鏡面光沢度よりも小さくする場合、保護材3の全面に対してブラスト加工やエッチング加工等を行ってもよい。保護材3の全面に対してブラスト加工やエッチング加工を行う場合、部分的に加工を行うためのマスキング等の工程を省略することができるため、簡便な加工が可能である。
【0033】
以上の太陽電池モジュール1の製造方法のように、ガラス板をサンドブラスト加工することで形成した保護材3を備えるサンプルを準備したところ、第1の60度鏡面光沢度が4.6となり、第2の60度鏡面光沢度が6.8となった。このサンプルでは、保護材3(ガラス板)の厚みは3.2mmである。このサンプルに対して、島津製作所製分光光度計Solidspace-3700を用いて、拡散透過率測定を行った。具体的に、積分球の長方形型の開口部のうち上部約1/3を黒色紙で遮蔽し、その上にサンプルを重ねて測定を行った。ここで、黒色紙で遮蔽されていない下部2/3が、本実施形態の太陽電池モジュール1における遮蔽物Sによって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域を想定した領域である。
【0034】
この結果、第1方向を上向きとした測定における拡散透過率は43.90%となり、第2方向を上向きとした測定にける拡散透過率は38.92%となり、第1方向を上向きとした場合が、第2方向を上向きとした場合よりも、拡散透過率が大きくなることがわかった。このように、本実施形態の太陽電池モジュール1では、遮蔽物Sによって直達日射量の正透過成分が遮蔽されてしまう領域31の受光量を大きくすることができ、遮蔽物による発電量低下が緩和できることがわかった。
【0035】
なお、本発明の太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0036】
上記実施形態の太陽電池モジュール1は、例えば、主面(受光面)側を上方に向けた状態で設置されていたが、例えば、民家の外壁等の垂直面またはそれに近い面(例えば、垂直面に対して15°以内で傾斜した面)に対して取り付けられてもよい。この場合、太陽電池モジュール1は、垂直面等に対して取り付けるための取付部(ブラケット等)を備えることもできる。例えば、取付部は、枠部5に設けられる。
【0037】
上記実施形態の太陽電池ストリング2では、太陽電池セル20が、短冊状とされており、複数の太陽電池セル20がシングリング接続されていたが、太陽電池セル20の形状は正方形板状等の短冊状以外の形状を有してもよい。また、複数の太陽電池セル20はシングリング接続されておらず、配線材によって接続されていてもよい。
【0038】
また、太陽電池モジュール1は枠部5を備えていたが、枠部5を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…太陽電池モジュール、2…太陽電池ストリング、3…保護材、4…封止材、5…枠部、6…樹脂シート、7…測定装置、20、20a…太陽電池セル、31、32…領域、70…光源、71…受光器、200…表面、201…裏面、S…遮蔽物、L、L1、L2…拡散光、N…ブラストノズル