(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136115
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230922BHJP
E01F 9/00 20160101ALI20230922BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G08G1/09 D
E01F9/00
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041565
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 宗彦
【テーマコード(参考)】
2D064
5H181
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA22
2D064EA01
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181MC18
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】車両の運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することが可能な、交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムを提供する。
【解決手段】交通設備情報記憶部と映像情報取得部と再生制御部と交通設備情報追跡部と視認性判定部とを備える。交通設備情報記憶部は、所定の交通設備の視認性の判定対象とする判定対象区間の位置情報を記憶する。映像情報取得部は、車両に設置された撮像装置が判定対象区間を走行する間に進行方向の車外を撮影した映像情報と、対応する撮影位置情報とを取得する。再生制御部は、映像情報を逆再生する。交通設備情報追跡部は、映像情報の逆再生中に交通設備の情報部分を追跡する。視認性判定部は、交通設備情報追跡部が交通設備の情報部分を正常に検出できないフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、交通設備の視認性が低い位置と判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である判定対象区間の位置情報を記憶する交通設備情報記憶部と、
車両が前記判定対象区間外から前記判定対象区間内を通って前記交通設備の近傍まで走行する間、前記車両に設置された撮像装置が進行方向の車外を撮影した映像情報と、前記映像情報内のフレームごとに紐づけられた、対応する撮影位置情報とを取得する映像情報取得部と、
前記映像情報取得部で取得された映像情報を逆再生する再生制御部と、
前記再生制御部による前記映像情報の逆再生中に、撮影位置が前記判定対象区間内である各フレームから前記交通設備の情報部分を順次検出することで、前記交通設備の情報部分を追跡する交通設備情報追跡部と、
前記交通設備情報追跡部が前記交通設備の情報部分を正常に検出できないフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する視認性判定部と、を備えた交通設備の視認性判定装置。
【請求項2】
前記視認性判定部は、前記交通設備の情報部分を検出できないフレームまたは前記交通設備の情報部分に欠けが生じるフレームがあったときに、該当するフレームに対応する撮影位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する、請求項1に記載の交通設備の視認性判定装置。
【請求項3】
前記視認性判定部により前記交通設備の視認性が低いと判定された位置を地図情報上に示した判定結果情報を表示させる結果表示制御部をさらに備える、請求項1または2に記載の交通設備の視認性判定装置。
【請求項4】
前記交通設備情報追跡部は、前記再生制御部による前記映像情報の逆再生中に、撮影位置が前記判定対象区間内である各フレームから、前記交通設備からの距離が所定値以内の樹木の情報部分をさらに検出し、
前記視認性判定部は、前記交通設備情報追跡部により前記交通設備からの距離が所定値以内の樹木の情報部分が検出されたフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、将来前記交通設備の視認性が低下する可能性がある位置と判定する、請求項1~3いずれか1項に記載の交通設備の視認性判定装置。
【請求項5】
コンピュータに、
所定の交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である判定対象区間の位置情報を記憶する機能と、
車両が前記判定対象区間外から前記判定対象区間内を通って前記交通設備の近傍まで走行する間、前記車両に設置された撮像装置が進行方向の車外を撮影した映像情報と、前記映像情報内のフレームごとに紐づけられた、対応する撮影位置情報とを取得する機能と、
取得した映像情報を逆再生する機能と、
前記映像情報の逆再生中に、撮影位置が前記判定対象区間内である各フレームから前記交通設備の情報部分を順次検出することで、前記交通設備の情報部分を追跡する機能と、
前記追跡の処理中に、前記交通設備の情報部分を正常に検出できないフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する機能と、を実行させる交通設備の視認性判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路などの交通機関には、車両の運転に関する指示を示す信号機や標識などの交通設備がある。これらは、交通の安全を確保するとともに交通の流れを円滑にするために必要な設備であるため、該当する指示を認識すべき区間である指示認識区間を走行する車両の運転手から視認可能になるように設置される。
【0003】
しかし、これらの交通設備の設置から長期間が経過すると、設備近傍の樹木が伸びたり、周囲に新たな建築物が建設されたりすることで、指示認識区間内であっても対応する交通設備を視認できない、または視認し難い位置が発生する場合がある。
【0004】
このような位置の発生の有無を判定するため、車両に搭載したカメラ装置から進行方向を撮影した撮像情報を解析して所定の交通設備の部分を検出することで、撮影した位置から当該交通設備の視認が可能であるかを判定する技術がある。この技術を利用することで、簡易な処理で交通設備の視認性を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した技術を用いる場合、確認対象の交通設備から遠い位置で撮影した撮像情報を解析して交通設備の部分を検出しようとすると、該当部分が小さいため検出精度が低くなり、適正に検出できない場合がある。その場合、該当する撮影位置に関する交通設備の視認性を適正に判定することができないという問題があった。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、車両の運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することが可能な、交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る交通設備の視認性判定装置は、所定の交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である判定対象区間の位置情報を記憶する交通設備情報記憶部と、車両が前記判定対象区間外から前記判定対象区間内を通って前記交通設備の近傍まで走行する間、前記車両に設置された撮像装置が進行方向の車外を撮影した映像情報と、前記映像情報内のフレームごとに紐づけられた、対応する撮影位置情報とを取得する映像情報取得部と、前記映像情報取得部で取得された映像情報を逆再生する再生制御部と、前記再生制御部による前記映像情報の逆再生中に、撮影位置が前記判定対象区間内である各フレームから前記交通設備の情報部分を順次検出することで、前記交通設備の情報部分を追跡する交通設備情報追跡部と、前記交通設備情報追跡部が前記交通設備の情報部分を正常に検出できないフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する視認性判定部とを備える。
【0009】
また前記視認性判定部は、前記交通設備の情報部分を検出できないフレームまたは前記交通設備の情報部分に欠けが生じるフレームがあったときに、該当するフレームに対応する撮影位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定してもよい。
【0010】
また前記交通設備の視認性判定装置は、前記視認性判定部により前記交通設備の視認性が低いと判定された位置を地図情報上に示した判定結果情報を表示させる結果表示制御部をさらに備えていてもよい。
【0011】
また前記交通設備情報追跡部は、前記再生制御部による前記映像情報の逆再生中に、撮影位置が前記判定対象区間内である各フレームから、前記交通設備からの距離が所定値以内の樹木の情報部分をさらに検出し、前記視認性判定部は、前記交通設備情報追跡部により前記交通設備からの距離が所定値以内の樹木の情報部分が検出されたフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、将来前記交通設備の視認性が低下する可能性がある位置と判定してもよい。
【0012】
また本開示に係る交通設備の視認性判定プログラムは、コンピュータに、所定の交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である判定対象区間の位置情報を記憶する機能と、車両が前記判定対象区間外から前記判定対象区間内を通って前記交通設備の近傍まで走行する間、前記車両に設置された撮像装置が進行方向の車外を撮影した映像情報と、前記映像情報内のフレームごとに紐づけられた、対応する撮影位置情報とを取得する機能と、取得した映像情報を逆再生する機能と、前記映像情報の逆再生中に、撮影位置が前記判定対象区間内である各フレームから前記交通設備の情報部分を順次検出することで、前記交通設備の情報部分を追跡する機能と、前記追跡の処理中に、前記交通設備の情報部分を正常に検出できないフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する機能とを実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムによれば、車両の運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置を利用した視認性判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置に接続される装置を搭載した車両、および視認性判定装置が視認性判定対象とする区間を示した説明図である。
【
図3】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置に接続される装置を搭載した車両が走行する際に通過する点を示す説明図である。
【
図4】(a)~(c)は、一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置に接続された録画装置で撮影されて記憶された、位置情報が紐づけられたフレームの例である。
【
図5】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置が実行する視認性判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置が、映像情報の各フレームから信号機の情報部分を追跡する状態を示す説明図である。
【
図7】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置が取得した映像情報の中で、信号機に対する視認性が低い位置で撮影されたフレームの例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る交通設備の視認性判定装置で表示された判定結果情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、一実施形態による交通設備の視認性判定装置を利用した視認性判定システムが、道路Rの所定位置に設置された交通設備である信号機Sに対する、所定の判定対象区間D内からの視認性を判定する場合について説明する。
【0016】
〈一実施形態による視認性判定システムの構成〉
一実施形態による視認性判定システムの構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、視認性判定システム1の構成を示すブロック図である。視認性判定システム1は、道路Rを走行する車両Cに設置された撮像装置11、位置情報取得装置12、および録画装置13と、録画装置13に通信接続可能に構成された視認性判定装置20とを備える。
【0017】
図2は、撮像装置11、位置情報取得装置12、および録画装置13を搭載した車両Cと、視認性判定システム1が道路R内の信号機Sの視認性を判定する判定対象区間Dとを示す。判定対象区間Dは、道路R内の位置PSから信号機Sの手前且つ近傍にある停止線L上の位置PEまでの点線で示す走行区間である。
【0018】
撮像装置11は、車両Cの運転席近傍に設置され、進行方向の車外を撮影する。撮像装置11は、判定対象区間D内の信号機Sから最も遠い位置から、信号機Sの形状を適正に認識可能な状態で撮影するスペックを有し、既設のドライブレコーダ装置等で構成してもよい。
【0019】
位置情報取得装置12は、例えば、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System: GNSS)用の複数の衛星からのGNSS信号を受信して位置情報を算出することによって、車両Cの現在位置情報を取得する。GNSSは、一例としてGPS(Global Positioning System)である。
【0020】
録画装置13は、録画制御部131と、映像情報記憶部132とを有する。録画制御部131は、車両Cが判定対象区間D外から判定対象区間D内を通って信号機Sの近傍まで走行する間、撮像装置11が進行方向の車外を撮影した映像情報と、位置情報取得装置12で取得された車両Cの位置情報とを同期をとって取得する。録画制御部131は、取得した映像情報のフレームごとに、対応する車両Cの位置情報を撮影位置情報として紐づけて映像情報記憶部132に記憶させることで録画処理を行う。
【0021】
視認性判定装置20は、記憶部21と、表示部22と、CPU23とを有する。記憶部21は、交通設備情報記憶部としての信号機情報記憶部211と、判定結果情報記憶部212とを有する。
【0022】
信号機情報記憶部211は、信号機Sの位置情報、信号機Sの視認性の判定対象とする判定対象区間Dの位置情報を記憶する。判定結果情報記憶部212は、後述するように、CPU23で判定される視認性判定の結果情報を記憶する。表示部22は、後述するようにCPU23の制御により、映像情報および視認性判定の結果情報を表示する。
【0023】
CPU23は、映像情報取得部231と、再生制御部232と、交通設備情報追跡部としての信号機情報追跡部233と、視認性判定部234と、結果表示制御部235とを有する。
【0024】
映像情報取得部231は、録画装置13と有線または無線で通信接続され、映像情報記憶部132に記憶された映像情報を取得する。再生制御部232は、映像情報取得部231で取得された映像情報を逆再生させる。信号機情報追跡部233は、再生制御部232による映像情報の逆再生中に、撮影位置が判定対象区間D内である各フレームから、テンプレートマッチング技術等を用いて信号機Sの情報部分を順次検出することで、信号機Sの情報部分を追跡する。
【0025】
視認性判定部234は、信号機情報追跡部233が映像情報内の信号機Sの情報部分を追跡しているときに、信号機Sの情報部分を正常に検出できないフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を信号機Sの視認性が低い位置と判定する。視認性判定部234は、視認性が低い位置と判定した位置の情報および該当するフレームを、判定結果情報として判定結果情報記憶部212に記憶させる。結果表示制御部235は、判定結果情報記憶部212に記憶された判定結果情報を表示部22に表示させる。
【0026】
〈一実施形態による視認性判定システムの動作〉
次に、本実施形態による視認性判定システム1により実行される、信号機Sに対する視認性判定処理の動作について、
図3~8を参照して説明する。
図3は、視認性判定処理を行うために車両Cが走行する際に通過する点を示す。
図3中の位置P0は判定対象区間D外であり、車両Cが走路R上で走行を開始する位置を示し、位置PSは判定対象区間Dの開始位置を示し、位置P1、P2、P3、P4、およびP5は判定対象区間D内の位置を示し、位置PEは判定対象区間Dの終了位置を示す。
【0027】
まず撮像装置11が車両Cの進行方向の車外を撮影しながら、車両Cが判定対象区間D外の位置P0から走行を開始する。車両Cは、判定対象区間Dの開始位置PS、判定対象区間D内の位置P1、P2、P3、P4、およびP5を通って信号機Sの手前且つ近傍の位置PEまで走行する。撮像装置11は、車両Cの走行中に撮影により生成したフレームを順次、録画装置13に送信する。
【0028】
撮像装置11により位置P0で撮影され生成されたフレームを、位置P0に対応するフレームF0とする。同様に、位置PSに対応するフレームをフレームFSとし、位置P1に対応するフレームをフレームF1とし、位置P2に対応するフレームをフレームF2とし、位置P3に対応するフレームをフレームF3とし、位置P4に対応するフレームをフレームF4とし、位置P5に対応するフレームをフレームF5とし、位置PEに対応するフレームをフレームFEとする。
【0029】
また、車両Cが走行している間、位置情報取得装置12が所定時間間隔で車両Cの位置情報を取得し、順次、録画装置13に送信する。録画装置13では、録画制御部131が、撮像装置11から送信されたフレームと位置情報取得装置12から送信された位置情報とを同期をとって取得する。録画制御部131は、取得したフレームごとに、対応する位置情報を撮影位置情報として紐づけて映像情報記憶部132に記憶させることで録画処理を行う。
【0030】
例えば、
図4(a)に示すように、撮像装置11により位置P4で撮影されたフレームF4には、位置P4の情報が撮影位置情報として紐づけられる。また、
図4(b)に示すように、位置P5で撮影されたフレームF5には、位置P5の情報が撮影位置情報として紐付けられる。また、
図4(c)に示すように、位置PEで撮影されたフレームには、位置PEの情報が撮影位置情報として紐づけられる。このようにして撮影位置情報が紐づけられたフレームが、映像情報記憶部132に記憶される。
【0031】
次に、録画装置13に録画された映像情報を用いて、視認性判定装置20が信号機Sに対する視認性判定処理を行う場合について説明する。
図5は、視認性判定装置20が実行する視認性判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0032】
まず、映像情報取得部231が、録画装置13の映像情報記憶部132に記憶された映像情報を取得する(S1)。次に、再生制御部232が、映像情報取得部231が取得した映像情報内のフレームのうち撮影位置が信号機S近傍のフレーム、例えば撮影位置情報として位置PEが紐づけられている
図4(c)のフレームを選択し、表示部22に表示する(S2)。
【0033】
次に信号機情報追跡部233が、信号機情報記憶部211に記憶した信号機Sの位置情報を参照して機械学習により、表示されたフレームの情報の中から信号機Sの情報部分を検出する(S3)。このときに表示されているフレームは信号機Sの近傍で撮影された撮像情報であるため、信号機Sの情報部分のサイズが大きく、信号機情報追跡部233は容易に検出することができる。
【0034】
次に、再生制御部232が映像情報を、現在表示されている
図4(c)のフレームから逆再生を開始する(S4)。つまり、再生制御部232は、撮影順とは逆の順序で映像情報を表示部22に表示させる。
【0035】
再生制御部232が映像情報の逆再生を開始すると、信号機情報追跡部233が以降のフレームから信号機Sの情報を追跡する追跡処理を開始する(S5)。具体的には、信号機情報追跡部233は、まず
図4(c)のフレームFEの次に表示されたフレーム(フレームFE-1とする)内の信号機Sの情報部分を検出する(S6)。このとき信号機情報追跡部233は、フレームFEで検出された信号機Sの情報部分に基づいてテンプレートマッチング処理を行うことにより、フレームFE-1から信号機Sの情報部分を検出する。隣接するフレーム間では信号機Sの位置および大きさの差異は小さいため、信号機情報追跡部233は1つ前のフレームにおける検出結果に基づいて処理対象のフレームから容易に信号機Sの情報部分を検出して、追跡することができる。
【0036】
次に、視認性判定部234が、信号機情報追跡部233の追跡処理において、フレームFE-1から信号機Sの情報部分が正常に検出されたか否かを判定する(S7)。信号機情報追跡部233は、処理対象のフレームで検出された信号機Sの情報部分に関し、所定数前のフレームで検出された信号機Sの情報部分との相関値が所定値以上であれば、処理対象のフレームから信号機Sの情報部分が正常に検出されたと判定する。ここではまだ追跡処理を開始した直後であり所定数前のフレームが存在しないため、最初のフレームFEとの相関値に基づいて判定する。この信号機Sの情報部分に関する相関値を比較するフレーム数の間隔は、撮影位置の変化に応じて障害物の大きさが徐々に大きくなる場合であっても、信号機Sの形状が明らかに変化したことを検出可能と考えられる間隔で予め設定される。
【0037】
視認性判定部234が信号機Sの情報部分が正常に検出されたと判定したときには(S7の「YES」)、さらに次のフレームFE-2の撮影位置が判定対象区間D内であれば(S8の「YES」)、ステップS6に戻る。そして、信号機情報追跡部233が、次のフレームFE-2内の信号機Sの情報部分の追跡処理を実行する(S6)。このようにして信号機情報追跡部233が追跡処理を行うことにより、
図6に示すように、フレームFEにおける信号機Sの検出結果に基づいて、以降のフレームにおける信号機Sの情報部分を矢印で示すように順次検出して追跡することができる。
【0038】
ステップS6~S8の処理を繰り返す中で、追跡の処理中に、信号機情報追跡部233で信号機Sの情報部分が検出されなかったかまたは、検出されたが信号機Sの情報部分に欠けが生じていたフレームがあった場合について説明する。ここで、「検出されたが信号機Sの情報部分に欠けが生じていたフレーム」とは、所定数前のフレームで検出された信号機Sの情報部分との相関値が所定値未満であると判断されたフレームである。
【0039】
この場合、視認性判定部234は、信号機Sの情報部分が正常に検出されないフレームがあったと判定し(S7の「NO」)、視認性判定部234は、該当するフレームに対応する撮影位置を信号機Sの視認性が低い位置と判定する。ここでは、位置P1からP3の区間に対応するフレームF1~F3において、木Tが障害物となって信号機Sの情報部分が正常に検出されず、視認性判定部234は、対応する位置P1~P3の区間を信号機Sの視認性が低い位置と判定する。信号機Sの視認性が低い位置P1~P3内で撮影されたフレームの例として、位置P2に対応するフレームF2を
図7に示す。視認性判定部234は、視認性が低いと判定した位置P1~P3の情報および該当するフレームF1、F2、F3等を、判定結果情報として判定結果情報記憶部212に記憶させる(S9)。
【0040】
以降、視認性判定装置20は、判定対象区間D内で撮影されたフレームから順次信号機Sに対応する情報部分の追跡処理と、信号機Sの情報部分が正常に検出されたか否かを判定する判定処理とを繰り返す。そして、フレームFSに対する判定処理が終了し、ステップS8において視認性判定部234が次フレームの撮影位置が判定対象区間D内にないと判定すると(S8の「NO」)、信号機情報追跡部233は信号機Sの情報に関する追跡処理を終了する(S10)。
【0041】
信号機Sの情報に関する追跡処理が終了すると、結果表示制御部235が判定結果情報記憶部212に記憶された判定結果情報を表示部22に表示させる。結果表示制御部235は、例えば、
図8に示すように、地図情報上で、視認性が低いと判定した位置P1~P3を太線で強調して示すことで、該当する判定結果情報を表示させる。また、結果表示制御部235は、視認性が低いと判定した位置P1~P3のフレームを合わせて表示させてもよい。
【0042】
以上の実施形態によれば視認性判定装置は、車両が判定対象区間内を走行する間、車両に設置された撮像装置が撮影した映像情報を逆再生して、信号機の情報部分を正常に検出できないフレームに対応する撮影位置を当該信号機の視認性が低い位置と判定する。これにより視認性判定装置は、当該信号機に対する道路の所定区間内の各位置からの視認性を判定し、車両の運転手が運転中に視認すべき信号機の視認性を簡易な処理で精度良く判定することができる。
【0043】
また視認性判定装置は、信号機の情報部分を検出できないフレームまたは信号機の情報部分に欠けが生じるフレームがあったときに、該当するフレームに対応する撮影位置を、当該信号機の視認性が低い位置と判定する。このように判定することで、視認性判定装置は、信号機の視認性を位置ごとに精度良く判定することができる。
【0044】
また、視認性判定装置は、視認性判定部により信号機の視認性が低いと判定された位置を地図情報上に示した判定結果情報を表示させる結果表示制御部を備える。これにより、ユーザが認識しやすい状態で、信号機の視認性の判定結果を提示することができる。
【0045】
また上述した実施形態において、視認性判定部234が、将来信号機Sの視認性が低下する可能性がある位置をさらに判定してもよい。この場合、信号機情報追跡部233が追跡処理において処理対象のフレームから信号機Sの情報部分を検出する際に、信号機Sからの距離が所定値以内の樹木の情報部分を併せて検出する。視認性判定部234は、信号機Sからの距離が所定値以内の樹木の情報部分が検出されたフレームがあったときには、該当するフレームに対応する撮影位置を、樹木の成長により将来信号機Sの視認性が低下する可能性がある位置と判定する。そして視認性判定部234は、該当する撮影位置情報を判定結果情報記憶部212に記憶させる。記憶された撮影位置情報が結果表示制御部235の制御により表示部22に表示されることにより、将来信号機Sの視認性低下する可能性がある位置をユーザに提示することができる。
【0046】
上述した実施形態では、交通設備が信号機の場合について説明したが、これには限定されず、道路標識等でもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、車両Cが道路を走行する車両であり、車両Cに設置した位置情報取得装置12がGPS等を用いて車両Cの現在位置情報を取得する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、車両が鉄道車両の場合は、車両の車軸の回転数に基づいてロータリエンコーダが線路上のキロ程としての位置を算出することで、車両の現在位置情報を取得してもよい。
【0048】
上述した視認性判定装置の機能構成をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータを視認性判定装置として機能させる視認性判定プログラムを構築することも可能である。
【0049】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0050】
本開示は、例えば持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 視認性判定システム
11 撮像装置
12 位置情報取得装置
13 録画装置
20 視認性判定装置
21 記憶部
22 表示部
23 CPU
131 録画制御部
132 映像情報記憶部
211 信号機情報記憶部
212 判定結果情報記憶部
231 映像情報取得部
232 再生制御部
233 信号機情報追跡部
234 視認性判定部
235 結果表示制御部