(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136117
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】振動特性解析方法
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20230922BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20230922BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20230922BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20230922BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01M7/02 H
G06F30/13
G06F30/20
E04B1/00 ESW
G01H17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041567
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 陽三
【テーマコード(参考)】
2G064
5B146
【Fターム(参考)】
2G064AA05
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB11
2G064BA02
2G064CC42
2G064DD23
5B146AA04
5B146DJ02
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】建築物の任意の点における振動特性の予測精度を向上させる振動特性解析方法を提案する。
【解決手段】本発明は、建築物の測定点における周波数応答関数を測定し(ステップS1)、前記測定された周波数応答関数から減衰固有角振動数と、モード減衰率と、加振点及び応答点における加振方向の振動の固有モードを同定し(ステップS2)、前記建築物の任意の点における固有モードを、所定の関数列の級数で近似し(ステップS3)、重み付き最小二乗法により前記級数の係数を計算し(ステップS6)、前記建築物の任意の点における周波数応答関数を予測する(ステップS8)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の測定点における周波数応答関数を測定するステップと、
前記測定された周波数応答関数から減衰固有角振動数と、モード減衰率と、加振点及び応答点における加振方向の振動の固有モードを同定するステップと、
前記建築物の任意の点における固有モードを、所定の関数列の級数で近似するステップと、
前記同定された固有モード及び前記級数を用いて、重み付き最小二乗法により前記級数の係数を計算するステップと、
前記係数が計算されて前記近似された固有モードを用いて、前記建築物の任意の点における周波数応答関数を予測するステップと、を備える振動特性解析方法。
【請求項2】
前記級数の係数を計算するステップにおいて、実際に周波数応答関数を測定した応答点に加えて、前記加振方向の振動が略ゼロとなる点を仮想的な応答点とする請求項1に記載の振動特性解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動特性解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の構造物に発生する振動がさまざまな問題を引き起こすことに鑑みて、構造物の振動特性を解析するための技術開発が盛んに行われている。振動特性を解析する場合、対象となる構造物を数理的なモデルで表す必要がある。数理的なモデルで表す方法として、実験モード解析が知られている。実験モード解析は、対象の構造物に振動を加え測定し、測定結果として得られた周波数応答関数から固有振動数(減衰固有角振動数)、モード減衰比(モード減衰率)、固有モード、又はこれらに間接的に対応するパラメータを同定する方法である。
【0003】
固有振動数及びモード減衰比は、時間的又は周波数的な特性を決めるパラメータであり、多点変分法や部分空間法といったモード特性同定法により精度よく同定することができる。一方、固有モードは、振動の空間的な特性を決めるパラメータ(関数)である。対象の構造物の振動特性を測定する際に設定した加振点や応答点に関しては、上記のモード特性同定法であっても固有モードを同定することができる。しかし、加振点や応答点以外の点に関しては、固有モードを同定することができないという問題がある。測定時の時間的及び空間的な制約から設定可能な加振点及び応答点の数は制限されることが多く、増やすことはできない。しかし、限られた加振点及び応答点の情報から、それら以外の任意の点の振動特性を解析することができれば、対象の構造物の振動特性を把握する上で非常に有用である。
【0004】
また、構造物の振動特性の解析を通じて、制振装置などを用いた制振対策を要求されることがある。実際に制振対策を施す場合、(1)対策前の構造物の振動特性(周波数応答関数)を測定する、(2)測定結果から振動特性を数理的にモデル化する、(3)振動特性の目標値を設定する、(4)制振対策を検討する、(5)モデルを用いて制振対策後の効果を予測する、(6)予測結果が目標値を満たすか否か判定する、といった手順がとられることが多い。しかし、従来では、上記のとおり加振点や応答点以外の点に関して固有モードを同定することができないという問題があるため、制振対策の検討に改善の余地が残されている。
【0005】
特許文献1には建築物のスラブの振動同定方法、制振装置、制振装置配置方法、建築床構造、及び振動測定装置について開示されている。特許文献1では振動スペクトルの測定点を4点に限定しているため、高次の固有モードや非対称な形状、複雑な形状をしている固有モードを正確に同定することができない。また、固有モードを陽な形で同定しないため、制振対策の効果を予測する場合、測定点以外の任意の点における効果を予測することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような観点から、本発明は、建築物の任意の点における振動特性の予測精度を向上させる振動特性解析方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、建築物の測定点における周波数応答関数を測定するステップと、前記測定された周波数応答関数から減衰固有角振動数と、モード減衰率と、加振点及び応答点における加振方向の振動の固有モードを同定するステップと、前記建築物の任意の点における固有モードを、所定の関数列の級数で近似するステップと、前記同定された第1固有モード及び前記級数を用いて、重み付き最小二乗法により前記級数の係数を計算するステップと、前記係数が計算されて前記近似された固有モードを用いて、前記建築物の任意の点における周波数応答関数を予測するステップと、を備える振動特性解析方法である。
【0009】
本発明によれば、測定点以外の任意の点における固有モードを近似して表現することで、任意の点における振動特性を測定なしで予測できる。また、要求される予測精度に応じて、級数の次数は適宜設定できる。また、要求される予測精度に応じて、測定点の数を適宜設定できる。したがって、建築物の任意の点における振動特性の予測精度を向上させることができる。
制振対策を行う場合であっても、建築物の任意の位置に制振装置を設置した場合の振動系に対して周波数応答関数を求めるという同様のアプローチをとることができる。つまり、建築物の測定点における周波数応答関数を求めるだけでなく、測定によってまたは理論的に制振装置の周波数応答関数を得られれば、これらの周波数応答関数を用いて任意の点における振動特性を測定なしで予測できる。このため、制振対策の効果を予測できる。
【0010】
前記級数の係数を計算するステップにおいて、実際に周波数応答関数を測定した応答点に加えて、前記加振方向の振動が略ゼロとなる点を仮想的な応答点とすることが好ましい。
前記級数の係数を計算するステップにおいて、前記応答点の数が前記係数の数よりも大きい必要があるが、かかる構成によれば、建築物の構造上、非常に剛性が高い部分であるため加振方向にほとんど振動せず、測定なしでも固有モードを0とすることができる点を応答点とすることで、実質的に応答点の数を増やすことができる。このため、固有モードを近似する関数列の級数の係数をすべて計算するために必要な関係式を用意することができる。その結果、測定時の時間的及び空間的な制約から設定可能な加振点及び応答点の数は制限されることが多く、増やすことはできない条件であっても、測定点以外の任意の点における固有モードを近似して表現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建築物の任意の点における振動特性の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】固有モードの例であり、(a)がr=1の場合、(b)がr=2の場合、(c)がr=3の場合である。rは固有モードの次数である。
【
図3】建築物の床構造において、固有モードの節となる位置の説明図である。
【
図4】本実施形態の振動特性解析方法のフローチャートである。
【
図6】本実施例で測定された周波数応答関数の例である。
【
図7】本実施例において部分空間法で同定した結果を示す表である。
【
図8】本実施例において部分空間法で同定した、点X11Y21から点X21Y21への周波数応答関数のグラフである。
【
図9】固有モードの節となる仮想的な測定点の説明図である。
【
図10】本実施例において最小二乗法によって得られた係数の結果を示す表である。
【
図11】近似された固有モードの例であり、(a)がr=1の場合、(b)がr=2の場合、(c)がr=3の場合である。
【
図12】本実施例の床構造において測定を行っていない点の説明図である。
【
図13】測定を行っていない点X31Y22から点X11Y21への伝達コンプライアンスのグラフある。
【
図14】測定を行っていない点X31Y22における駆動点コンプライアンスのグラフである。
【
図15】制振対策の効果の予測を説明する床構造において、TMDを設置した点の説明図である。
【
図16】床構造及びTMDからなる振動系全体のブロック線図である。
【
図17】点X21Y22における駆動点アクセレランスのグラフである。
【
図18】点X21Y22から点X31Y22への伝達アクセレランスのグラフである。
【
図19】点X21Y22から点X41Y22への伝達アクセレランスのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
[計算方法]
まず、構造物に対して振動を加えたときの任意の点の周波数応答関数を求める計算方法について説明する。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
式(4)の二乗誤差εはマトリクスの形式で、以下のように表すことができる。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
そこで、構造物の構造的特徴から固有モードの節になる点のデータを追加する。具体的には、建築物の柱が位置する点のデータを追加する。
図3は、建築物の床構造において、固有モードの節となる位置の説明図である。
図3の床構造は、床スラブ1と、床スラブ1に対して架設されている複数の小梁2と大梁3を備えている。また、床スラブ1の任意の位置に複数の柱4が立設している。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
[処理]
本実施形態の解析装置は、上記した計算方法を実行する計算機である。解析装置は、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
[実施例]
床構造の振動特性を予測する実施例について説明する。
図5は、本実施例の床構造の概略図である。
図5の床構造は、
図3の床構造と同様、床スラブ1及び小梁2,大梁3を備え、柱4が立設している。床構造の横寸法:L
xは22200mmであり、縦寸法:L
yは11500mmである。
【0051】
まず、点X11Y21がインパルスハンマーで加振されると、各応答点(
図5中■)における(伝達)コンプライアンスの周波数応答関数が測定される。なお本実施例では、本発明による同定結果が正しいことを評価できるように、数値計算による計算結果を測定結果として採用している。実際の測定結果に対しても同じ手順で適用可能である。
図6は、本実施例で測定された周波数応答関数の例である。
図6は点X11Y21を加振点とし、点X21Y21を応答点としたときの実測結果である。
図6のグラフの形式は、
図2と同様である。
なお、後に行うモード特性同定法との整合性の観点から、複数の測定点のうち少なくとも1つは加振点と同じにする必要がある。
【0052】
次に、解析装置は、多点偏分法や部分空間法などのモード特性同定法により、減衰固有角振動数、モード減衰率、加振点及び各応答点における固有モードを同定する。同定した固有モードの振動は、点X11Y21がインパルスハンマーで加振されたときの加振方向の振動であり、床スラブ1の鉛直方向の振動である。本実施例では、自由度n=30として部分空間法を用いた。
図7は、本実施例において部分空間法で同定した結果を示す表である。図示の便宜上、
図7では、モード次数rがr=1,2,3における固有振動数f
r[Hz](減衰固有角振動数ω
drに対応)、及びモード減衰比ζ
r(モード減衰率σ
rに対応)を示す。
図8は、本実施例において部分空間法で同定した、点X11Y21から点X21Y21への周波数応答関数のグラフである。
図8のグラフの形式は、
図2と同様である。
図8に示すように、部分空間法の同定結果(破線)は、実測結果(実線)を忠実に再現している。
なお、r次の固有振動数f
r[Hz]は、r次の固有角振動数Ω
r[Hz]によって、f
r=2πΩ
rとなり、r次の減衰固有角振動数ω
drは、ω
dr=Ω
r(1-ζ
r
2)
0.5となる。
【0053】
次に、解析装置は、式(2)の関数列を設定する。本実施例では、x方向とy方向のチェビシェフ多項式の積で次のように表す。
【0054】
【0055】
x方向とy方向の打ち切り次数Nx,Nyはそれぞれ、Nx=5,Ny=3とする。例として3次までのチェビシェフ多項式Ti(-1≦ζ≦1)は次のように表される。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
そこで、対象としている構造体の構造的特徴から固有モードの節となる点、つまり加振方向の振動変位がほぼ0となる点の式を追加する。解析装置は、追加された式のデータを取得する。式の追加は、例えば、ユーザからの入力(指定)により実行されるようにしてもよいし、該当する点に対して自動的に入力され実行されるようにしてもよい。
図9は、固有モードの節となる仮想的な測定点の説明図である。
図9に示す床構造は、
図5と同様である。
図9において、柱4が他の部分よりも堅く、固有モードの節となるため、解析装置は、柱4の位置に仮想的な測定点12点(
図9中■)を設定し、当該12点の固有モードの値が0になるとし、12個の関係式を追加する。
【0062】
【0063】
【0064】
解析装置は、式(1)を用いることで、本実施例において測定を行っていない点における周波数応答関数を予測することもできる。
図12は、本実施例の床構造において測定を行っていない点の説明図である。
図13は、測定を行っていない点X31Y22から点X11Y21への伝達コンプライアンスのグラフある。
図14は、測定を行っていない点X31Y22における駆動点コンプライアンスのグラフである。
図13及び
図14のグラフの形式は、
図2と同様である。
図13において、式(1)を用いて予測した部分空間法の同定結果(破線)は、既存の計算モデルから求めた計算結果(実線)を忠実に再現しており、精度よく予測できているといえる。
図14において、点X31Y22は、加振点かつ測定点として扱い、つまり駆動点としている。
図14において、式(1)を用いて予測した部分空間法の同定結果(破線)は、既存の計算モデルから求めた計算結果(実線)を忠実に再現しており、精度よく予測できているといえる。
【0065】
[制振対策の効果の予測]
本発明を用いることで、実測を行った床構造の任意の位置に制振対策を施した場合の任意の位置における振動の低減効果を予測することができる。ここでは、制振装置である同調質量ダンパー(以下、TMD(Tuned Mass Damper))を床構造に設置した場合の制振効果を予測する例について示す。
図15は、制振対策の効果の予測を説明する床構造において、TMDを設置した点の説明図である。
図15に示す床構造の1次固有モード(7.37 Hz)を制振するために点X31Y22にTMDを設置する。解析装置は、点X21Y22を加振したときの点X21Y22,X31Y22,X41Y22における周波数応答関数を予測する。なお、点X21Y22,X31Y22,X41Y22は、
図5に示す測定点の何れにも該当しないため、点X21Y22,X31Y22,X41Y22における制振対策前後の周波数応答関数を直接求めることはできない。
【0066】
図16は、床構造及びTMDからなる振動系全体のブロック線図である。
図16において、Gは床構造の周波数応答関数であり、HはTMDの周波数応答関数である。また、Uは床への加振力であり、Yは振動系の応答(振動変位)である。床への加振力Uが作用したとき、この振動系の応答Yは、周波数領域で次式のように書くことができる。
【0067】
【0068】
ここで、Gは式(1)に示すとおりである。また、TMDの質量、減衰、剛性をそれぞれm,c,kとすると次式で表される。なお、jは虚数単位であり、ωは角振動数である。
【0069】
【0070】
式(21)を用いて解析装置が予測した点X21Y22,X31Y22,X41Y22の周波数応答関数をそれぞれ
図17、
図18、
図19に示す。
図17は、点X21Y22における駆動点アクセレランスのグラフである。
図18は、点X21Y22から点X31Y22への伝達アクセレランスのグラフである。
図19は、点X21Y22から点X41Y22への伝達アクセレランスのグラフである。
図17~
図19のグラフの横軸は振動数[Hz]である。
図17~
図19では振動数と伝達アクセレランス(アクセレランス)は対数スケールで図示している。
図17~
図19のいずれにも制振装置なしの場合のグラフ(実線)及び制振装置ありの場合のグラフ(破線)が示されている。
【0071】
図17~
図19のいずれのグラフにおいても、TMDの効果により1次固有モード7.37 Hz付近の応答を低減できることが分かる。このように本発明を用いることで、測定を行っていない点における制振対策前の周波数応答関数だけでなく、制振対策を実施した場合の効果(周波数応答関数の変化分)も定量的に予測することが可能になる。
【0072】
[まとめ]
本実施形態によれば、測定点以外の任意の点における固有モードを近似して表現することで、任意の点における振動特性を測定なしで予測できる。また、要求される予測精度に応じて、級数の次数は適宜設定できる。また、要求される予測精度に応じて、測定点の数を適宜設定できる。したがって、建築物の任意の点における振動特性の予測精度を向上させることができる。
制振対策を行う場合であっても、建築物の任意の位置に制振装置を設置した場合の振動系に対して周波数応答関数を求めるという同様のアプローチをとることができる。つまり、建築物の測定点における周波数応答関数を求めるだけでなく、制振装置の周波数応答関数も求める。これらの周波数応答関数を用いて任意の点における振動特性を測定なしで予測できる。このため、制振対策の効果を予測できる。
また、建築物の構造上、非常に剛性が高い部分であるため加振方向にほとんど振動せず、測定なしでも固有モードを0とすることができる点を応答点とすることで、実質的に応答点の数を増やすことができる。このため、固有モードを近似する関数列の級数の係数をすべて計算するために必要な関係式を用意することができる。その結果、測定時の時間的及び空間的な制約から設定可能な加振点及び応答点の数は制限されることが多く、増やすことはできない条件であっても、測定点以外の任意の点における固有モードを近似して表現することができる。
【0073】
[変形例]
(a):本実施例では、床構造の同一平面内、すなわち二次元の構造物に発生する鉛直方向の振動について、二次元の周波数応答関数のモデルを構築する場合について説明した。しかし、本発明は、三次元の構造物に発生する振動について、三次元の周波数応答関数のモデルを構築する場合についても適用できる。例えば、室内の任意の三次元の点における音響モードを予測する場合にも本発明を適用できる。
【0074】
(b):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(c):その他、本発明の構成要素について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 床スラブ
2 小梁
3 大梁
4 柱