(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136118
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電気転てつ機のロック状態検知装置
(51)【国際特許分類】
B61L 5/10 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B61L5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041568
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】木村 実
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 崇充
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161SS04
5H161SS13
5H161SS16
5H161SS21
(57)【要約】
【課題】 正常、異常のみならず、転換不能に至る前でも適切なタイミングで再調整することができ、目視確認にもバラツキなく行え、しかもスリットが目詰まりして誤検知となるようなことがなくて正確な検知ができる電気転てつ機のロック状態検知装置を提供する。
【解決手段】 この発明のロック状態検知装置は、ロックピースに設けられて鎖錠かんの切り欠き側面から押される荷重を測定する測定手段25と、この測定手段の測定値と予め設定した基準値を比較して鎖錠状態の良否状況を出力するデータ処理手段31と、このデータ処理手段からの出力データを表示し常時監視可能とする表示監視手段38,39と、を備えている
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖錠かんと、この鎖錠かんに形成された切り欠きに挿し込まれて鎖錠状態とするロックピースと、を有する電気転てつ機のロック状態検知装置において、
前記ロックピースに設けられて前記鎖錠かんの切り欠き側面から押される荷重を測定する測定手段と、この測定手段の測定値と予め設定した基準値を比較して鎖錠状態の良否状況を出力するデータ処理手段と、このデータ処理手段からの出力データを表示し常時監視可能とする表示監視手段と、を備えていることを特徴とする電気転てつ機のロック状態検知装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記鎖錠かんの切り欠き側面と対向する位置に該側面に対して移動自在に設けられたピンと、前記ピンが先端を切り欠き側面から押されて移動するとその押圧荷重を受けるばね材と、前記ばね材が受ける押圧荷重を測定するセンサと、を有している請求項1に記載の電気転てつ機のロック状態検知装置。
【請求項3】
前記測定手段は、箱型ユニット本体内にセンサがピンとの間にばね材を介在させて配置され、かつピンの先端がユニット本体外に突出して切り欠き側面を向き接触可能に配置された測定ユニットとしてロックピースに内蔵されている請求項2に記載の電気転てつ機のロック状態検知装置。
【請求項4】
前記データ処理手段は、前記測定手段からの測定値を検出する検出部と、予め設定した基準値を閾値として記憶する記憶部と、前記検出部の測定値と記憶部の基準値を比較して測定値が閾値に達すると出力する出力部と、を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の電気転てつ機のロック状態検知装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記ロックピースが切り欠きに挿し込まれた鎖錠状態においてロックピースが切り欠きとの間に形成される左右隙間が均等のとき良好、左右隙間にズレが生じ、このズレが大きくなるにしたがい良好から正常、注意、警報というデータを表示監視手段に出力する請求項4に記載の電気転てつ機のロック状態検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気転てつ機のロック状態検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置としてロック偏移検出器なるものが知られている。このロック偏移検出器は、例えば、
図10,11に示すように、転てつ機の鎖錠かんに取り付けられた移動スリットが外箱内部に取り付けられた固定スリットの発光素子と受光素子間の光を遮断することでロック偏移状態を検出するものである。そして、この検出器においては、光がスリットに遮られずに受光されているとき、内蔵するリレーの接点が動作し、正常として表示部の発光ダイオードが点灯する。一方、光がスリットに遮られると、一定時間の経過後に内蔵するリレーが落下して警報出力し、異常として表示部の発光ダイオードは消灯する。
【0003】
しかし、従来のロック偏移検出器は、次のような問題点があった。
(1)正常、異常の結果しか判らず、偏移量が転換不能の直前まで大きくならないと警報が上がらず、転換不能に至る前に適切なタイミングで再調整できない。(ロック偏移量が±1.5mmを超えると、転てつ機は転換不能となり列車の運行ができなくなる)
(2)検出方法が光式のため、転てつ機内の潤滑油やほこり等によりスリットが目詰まりして誤検知となる場合がある。
(3)ロック状態の確認は、転てつ機内部のロックピースと切り欠きの隙間を目視による目分量で行っていたため、検知には作業者によりバラツキもあった。
【0004】
そこで発明者らは、前記ロック偏移検出器が、鎖錠かんの切り欠きにロックピース(ヘッド)を挿し込んだ状態で、切り欠きとヘッドの横の位置(隙間)を監視し、両者が適正な位置にいるか検出するものであることに鑑み、鎖錠かんの切り欠きとロックピースの位置(左右の隙間)をより細かく測定することで、互いが接触してしまう前に作業員が保守・調整を行うことが可能となれば、予防保全に効果があるのではないかと考え、鋭意研究してこの発明を完成させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、この発明は、前記のような従来のもののもつ問題点を解決し、正常、異常のみならず、転換不能に至る前でも適切なタイミングで再調整することができ、目視確認にもバラツキなく行え、しかもスリットが目詰まりして誤検知となるようなことがなくて正確な検知ができる電気転てつ機のロック状態検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、鎖錠かんと、この鎖錠かんに形成された切り欠きに挿し込まれて鎖錠状態とするロックピースと、を有する電気転てつ機のロック状態検知装置において、前記ロックピースに設けられて前記鎖錠かんの切り欠き側面から押される荷重を測定する測定手段と、この測定手段の測定値と予め設定した基準値を比較して鎖錠状態の良否状況を出力するデータ処理手段と、このデータ処理手段からの出力データを表示し常時監視可能とする表示監視手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記測定手段は、前記鎖錠かんの切り欠き側面と対向する位置に該側面に対して移動自在に設けられたピンと、前記ピンが先端を切り欠き側面から押されて移動するとその押圧荷重を受けるばね材と、前記ばね材が受ける押圧荷重を測定するセンサと、を有している。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記測定手段は、箱型ユニット本体内にセンサがピンとの間にばね材を介在させて配置され、かつピンの先端がユニット本体外に突出して切り欠き側面を向き接触可能に配置された測定ユニットとしてロックピースに内蔵されている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記データ処理手段は、前記測定手段からの測定値を検出する検出部と、予め設定した基準値を閾値として記憶する記憶部と、前記検出部の測定値と記憶部の基準値を比較して測定値が閾値に達すると出力する出力部と、を備えている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記出力部は、前記ロックピースが切り欠きに挿し込まれた鎖錠状態においてロックピースが切り欠きとの間に形成される左右隙間が均等のとき良好、左右隙間にズレが生じ、このズレが大きくなるにしたがい良好から正常、注意、警報というデータを表示監視手段に出力する。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の電気転てつ機のロック状態検知装置によれば、ロックピースに設けられて鎖錠かんの切り欠き側面から押される荷重を測定する測定手段と、この測定手段の測定値と予め設定した基準値を比較して鎖錠状態の良否状況を出力するデータ処理手段と、このデータ処理手段からの出力データを表示し常時監視可能とする表示監視手段と、を備えるので、正常、異常のみならず、従前できなかった転換不能に至る前でも適切なタイミングで再調整することができる。したがって、目視確認にもバラツキなく行える。しかもスリットが目詰まりして誤検知となるようなことがなくて正確な検知ができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、測定手段は、鎖錠かんの切り欠き側面と対向する位置に該側面に対して移動自在に設けられたピンと、前記ピンが先端を切り欠き側面から押されて移動するとその押圧荷重を受けるばね材と、前記ばね材が受ける押圧荷重を測定するセンサとを有しているので、測定手段の構成をコンパクトにすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、測定手段は、箱型ユニット本体内にセンサがピンとの間にばね材を介在させて配置され、かつピンの先端がユニット本体外に突出して切り欠き側面を向き接触可能に配置された測定ユニットとしてロックピースに内蔵されているので、測定手段にほとんど外部負荷がかからず故障等も抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、データ処理手段は、前記測定手段からの測定値を検出する検出部と、予め設定した基準値を閾値として記憶する記憶部と、前記検出部の測定値と記憶部の基準値を比較して測定値が閾値に達すると出力する出力部と、を備えているので、鎖錠状態の良否状況を閾値に応じて出力することができ、きめ細かい状況の把握が可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、出力部は、前記ロックピースが切り欠きに挿し込まれた鎖錠状態においてロックピースが切り欠きとの間に形成される左右隙間が均等のとき良好、左右隙間にズレが生じ、このズレが大きくなるにしたがい良好から正常、注意、警報というデータを表示監視手段に出力するので、鎖錠状態の変化具合の程度を設置・点検調整する作業者や運行管理者が常時目視により容易に確認することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施の形態に係る電気転てつ機のロック状態検知装置の概要を示す平面図である。
【
図2】転てつ機が反位のロック状態の正面図である。
【
図4】転てつ機が定位のロック状態の正面図である。
【
図6】実施形態で用いるロック状態監視器の内部構造を示す正断面図である。
【
図8】測定用ピンの押し込み量と荷重と出力電圧の関係等を説明する図である。
【
図9】測定用ピンの押し込み量と荷重と出力電圧の関係を数値で示す表である。
【
図10】従来の転てつ機のロック偏移検出器の一例を示す平面図である。
【
図11】同上の転てつ機のロック偏移検出器の鎖錠かん近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る電気転てつ機のロック状態検知装置について説明する。
【0018】
図1~5において、1は電気転てつ機である。この転てつ機1は、動作かん2、駆動モータ3、鎖錠かん5等から構成されており、駆動モータ3によってクラッチなど駆動伝達機構を介して動作かん2を動作させるようになっている。鎖錠かん5は、上下に所定間隔をおいて配置された鎖錠かん5aと鎖錠かん5bからなる。転てつ機1には主に転換機能及びロック機能があるが、以下それについて説明する。
【0019】
転てつ機1は、基本レール11に対して1対のトングレール12を密着又は離間させることで線路を分岐させ、列車の進路を切り替える転換機構を備えている。
図1はトングレール12a,12bを基本レール11a,11bに密着させた転てつ機1が反位(R側)にある状態を示している。
図1の状態からトングレール12a,12bを基本レール11a,11bから離間させると転てつ機1が定位(N側)の状態になる(
図4参照)。すなわち、転てつ機1は、駆動モータ3の回転運動を動作かん2の直線運動に変換させ、動作かん2から連結ロッド15等を介してトングレール12に接続された転てつ棒13を押し引きしてトングレール12を転換させる。これを転換機能という。
【0020】
また、転てつ機1は、鎖錠かん5から連結ロッド14等を介してトングレール12に連結させ、トングレール12の動作に連動して鎖錠かん5を
図1で左右に移動させ、転換動作終了時にトングレール12をロック状態に維持するロック機構を備えている。このロック機構による作用をロック機能という。すなわち、転てつ機1は、
図1に示すように、転てつ機本体に動作かん2の移動方向と交叉する方向に移動可能に内蔵されている1対のロックピース17を有し、このロックピース17が鎖錠かん5に形成された切り欠き18に挿入されることで鎖錠(ロック)され、抜き出されることでロックが解除されて移動可能となる。また、鎖錠かん5a,5bの先端部は連結ロッド14等を介してトングレール12a,12bに連結され、連結ロッド14の中間には、鎖錠かん5a,5bの位置を微調整するための調整ネジ及び調整ナットが設けられている。
【0021】
ロックピース17は、
図1に示すように平面視で左右に所定間隔をおいて配置されたロックピース17aとロックピース17bからなっている。そして、前記したようにロックピース17a,17bが、鎖錠かん5a,5bの基端側に形成された切り欠き18a,18bに挿し込まれると鎖錠状態(ロック状態)となる。
【0022】
ロックピース17a,17bと鎖錠かん5a,5bの関係について説明すると、(1)ロックピース17a,17bがいずれも切り欠き18a,18bに挿し込まれていない場合は、鎖錠かん5a,5bは左右に移動できる。(2)ロックピース17aが鎖錠かん5aの切り欠き18aに挿し込まれた場合は、鎖錠かん5a,5bはロックされる。(3)ロックピース17bが鎖錠かん5bの切り欠き18bに挿し込まれた場合は、鎖錠かん5a,5bはロックされる。すなわち、(1)は鎖錠かんとロックピースが解錠中の状態、(2)と(3)は鎖錠中の状態となる。
【0023】
図6において、20はロック状態監視器で、測定ユニット21を備えている。測定ユニット21は箱型の空間をもつユニット本体22を有し、該本体内には測定用ピン23、コイルばね24、カバー26、荷重センサ25が順に配置されている。Lは測定用ピン23のユニット本体22外に突出した突出量を示し、この突出量Lはピン23が切り欠き18に挿し込まれていない状態(コイルばね24が負荷を受けていない自然状態)で3,5mmとなるように設定されている。一方、切り欠き18の両側面間の幅は3.0mmに設定されている。そのため、切り欠き18にロックピース17が挿し込まれる際、ロックピース17がスムーズに挿し込まれるように鎖錠かん5に取り付けられた図示しないガイド材によって案内されるようになっている。すなわち、ピン23の突出量Lが左右の隙間aの合計より大きい値のため(3.5mm>3.0mm)、凹まされて挿し込まれることになるが、ガイド材によってピン23がコイルばね24を圧縮するように先端から凹まされながら押し込まれる。そして2mm押し込まれると、
図3,5に示すように切り欠き18内の左右の隙間aが各1.5mm、合計3.0mmとなるが、この隙間aの状態が適正な鎖錠状態となる。なお、前記ピン23の突出量L(3,5mm)の上限としてはコイルばね24の圧縮力やユニットのコンパクト化を考慮して4mm程度が好ましい。
【0024】
温度変化に伴い、ロックピース17と鎖錠かん5の切り欠き18の位置にズレが生じることがあり、そうすると左右の隙間aの値が変化し、それに合わせてピン23の押し込み量も変化する。そのため、この実施の形態ではロック状態監視器20によって隙間aの値を測定し、ロックピース17による鎖錠状態を表示し常時監視できるようにしている。以下、その構成について説明する。
【0025】
前記のような構成のロック状態監視器20がロックピース17a,17bに
図3,5に示すような取り付けにより内蔵されている。そして、外部に突出したピン23の先端が鎖錠かん5の切り欠き18側面に接して押されると、ピン23がコイルばね24を押す方向に移動し、この移動に伴って押圧されるコイルばね24の荷重をセンサ25が検知し、
図7に示すロック荷重処理部31へ検知信号を出力するようになっている。
【0026】
ロック荷重処理部31は、ロック荷重検出部33、ロック荷重記憶部34、温度データ処理部36、及びデータ出力部37から構成されている。ロック荷重検出部33と接続してN側荷重センサ25a及びR側荷重センサ25bが設けられている。ロック荷重記憶部34と接続して設定部32が設けられている。温度データ処理部36と接続して温度センサ35が設けられている。また、データ出力部37と接続してモニタ表示部38と、集中監視装置39が設けられている。
【0027】
設定部32は、初期設置時の荷重を基準値として設定するとともに、測定値と基準値の差に任意の閾値が設定されている。閾値は荷重センサ25の測定値に対し例えば警報等を出力するためのもので、ロックピース17と切り欠き18の中心位置との位置関係につき、測定した数値に関する任意の値が設定される。
【0028】
ロック荷重検出部33は、測定ユニット21からの出力データとしての出力電圧を受けてコイルばね24への荷重を検出し、検出した情報(出力電圧)を記憶部34へ出力する。記憶部34は、記憶した情報(出力電圧)と検出した情報(出力電圧)を比較し、その結果を出力部37へ送る。出力部37は、記憶部34からの情報や温度センサ35から送られる温度データ処理部36の情報を入力して、その情報をモニタ表示部38と集中監視装置39へ出力するとともに、閾値超過時等に注意やアラーム警報等を出力する。
【0029】
モニタ表示部38は、出力部37からの情報、例えば転換中他、警報、注意、良好、等のデータを表示する。集中監視装置39は、出力部37からの情報やデータ処理部36からの情報、アラーム警報等を確認することができるほか。モニタ表示部38のデータ以外にピン23の押し込み量、コイルばね24への荷重、出力電圧、周囲温度も確認することができる。なお、モニタ表示部38は設置・点検調整する作業者の設備であるため現地に設けられる。集中監視装置39は運行管理する作業者の設備であるため機器室に設けられる。
【0030】
なお、荷重センサ25は周囲温度による影響を受け、例えば温度変化等により左右1.5mmずつの隙間aの間隔が変化すると、その値が変化する。そのため、ロック荷重処理部31は測定結果を基に補正することで、過酷な環境下でも正しい荷重を出力することができるようになっている。
【0031】
前記したように、この実施の形態によれば、ロックピース17a,17bが鎖錠かん5a,5bの切り欠き18a,18bに挿し込まれることにより、トングレール12を鎖錠し、挿し込みが解かれることによりトングレール12を解錠するという通常の鎖錠状態の検知作用のほか、ズレ等による鎖錠かん5a,5bの鎖錠状態を良好から警報など異常に至るまで監視する作用も併せ持つ。
【0032】
図8,9はピン23の押し込み量と荷重と出力電圧の関係を示す。例えばピン23の押し込み量が2mmであれば、左右の隙間aが均等になって、荷重の基準値が40N(出力電圧6.0V)となり、適正な転換位置で鎖錠状態になって良好となる。また、ピン23の押し込み量が2.5mmであれば、荷重が50N(出力電圧7.5V)となり、正常となる。また、ピン23の押し込み量が3.0mmであれば、荷重が60N(出力電圧9.0V)となり、注意となる。ピン23の押し込み量が3.3mmであれば、荷重が66N(出力電圧9.9V)となり、警報となる。一方、ピン23の押し込み量が1.5mmであれば、荷重が30N(出力電圧4.5V)となり、正常となる。ピン23の押し込み量が1.0mmであれば、荷重が20N出力電圧(3.0V)となり、注意となる。ピン23の押し込み量が0.7mmであれば、荷重が14N(出力電圧2.1V)となり、警報となる。このようにピン23の押し込み量の数値から荷重センサ25で荷重を測定することによって鎖錠状態の状況が良好、正常、注意、警報等、いずれにあるのかをタイムリーに情報として出力することが可能になっている。
【0033】
そして良好や正常以外の注意や警報の情報が出力された場合は、いずれも異常とされ、それを招く出力電圧の値に閾値を設定することも可能である。すなわち、この例では閾値を、0~1.5V:転換中他、1.5~2.1V:警報(右)、2.1~3.0V:注意(右)、3.0~5.25V,6.75~9V:正常、5.25~6.75V:良好、9~9.9V:注意(左)、9.9V以上:警報(左)と設定している。ここで(右)はロックピース17a側を示し、(左)はロックピース17b側を示す。
【0034】
前記のロック状態検知装置の作用について説明する。ロック状態検知装置では前記したようにロックピース17a,17bが鎖錠かん5a,5bの切り欠き18a,18bに挿し込むことによりトングレール12を鎖錠し、挿し込みを解くことによりトングレール12を解錠するという通常のロック状態の検知作用のほか、ズレ等による鎖錠かん5a,5bのロック状態を表示し監視する作用もあるので、それらについて以下に説明する。
【0035】
図3,5に示すように鎖錠かん5a,5bの切り欠き18a,18bにロックピース17a,17bが挿し込まれた際、隙間が左1.5mm、右1.5mmと均等である場合は、ロックピース17a,17bのピン23は先端から2.0mm押し込まれることになる。この押し込みにより、センサ25が荷重40Nから出力データ(出力電圧6.0V)をロック荷重検出部33へ入力し、さらにロック荷重記憶部34、データ出力部37へと入力され、出力電圧6.0Vが閾値5.25~6.75Vの範囲であるからモニタ表示部38に「良好」と表示されるとともに、集中監視装置39でも監視可能となる。そして、この場合は
図8のようにロック状態が良好であることがわかる。
【0036】
鎖錠かん5a,5bの切り欠き18a,18bにロックピース17a,17bが挿し込まれたとき、隙間が左0mm、3mmとズレている場合は、ロックピース17a,17bのピン23は先端から0.5mm押し込まれることになる。この押し込みによりセンサ25が荷重70Nから出力電圧10.5Vをロック荷重検出部33へ入力し、さらにロック荷重記憶部34、データ出力部37へと入力され、出力電圧10.5Vが閾値9.9V以上の範囲であるからモニタ表示部38に「警報(左)」と表示されるとともに、集中監視装置39でも監視可能となる。この場合はロック状態が警報レベルであることがわかる。また、必要により警報を発する。
【0037】
また、鎖錠かん5a,5bの切り欠き18a,18bにロックピース17a,17bが挿し込まれたとき、隙間が左3mm、0mmとズレている場合は、ロックピース17a,17bのピン23は先端から0.5mm押し込まれることになる。この押し込みによりセンサ25が荷重10Nから出力電圧1.5Vをロック荷重検出部33へ入力し、さらにロック荷重記憶部34、データ出力部37へと入力され、出力電圧1.5Vが閾値1.5~2.1Vの範囲であるからモニタ表示部38に「警報(右)」と表示されるとともに、集中監視装置39でも監視可能となる。この場合もロック状態が警報レベルであることがわかる。また、必要により警報を発する。
【0038】
このように鎖錠かん5a,5bの切り欠き18a,18bにロックピース17a,17bが挿し込まれたときのピン23のコイルばね24への押圧荷重をセンサ25で検知し、その出力データからロック状態のズレ量を細かく捉えられることが可能なため、遮光の有無により正常か異常の結果しか判らなかった従前の課題が解消され、ロック状態の変化の具合を捉えることができる。なお、変化具合を捉えられるようになると、転換不能直前の警報以外に、正常、注意、要注意、警報等、変化具合に応じた情報を出力することも可能となる。この変化具合は出力データの外部出力により位置調整の目安(LED色別判定等)にすることも可能である。このようにズレ量を段階的に知ることが可能となるので、転換機能の不良を未然に防ぐことができる。
【0039】
変化具合に応じた情報を出力できるようになるため、これまで目分量で行っていた鎖錠かん5の切り欠き18とロックピース17の隙間aの調整が、出力する情報をもとに調整可能となり、作業者によるバラつきが無くなる。
【0040】
隙間aを力(荷重)に換算(増幅)して検出するため、従前の検出器のようにグリースやホコリ等の柔らかい異物介在の影響を受けなくなるほか、潤滑油やほこり等がスリットに詰まり誤検知となる恐れが無くなる。
【0041】
コイルばね24の強さにより自在に検出幅(分解能)を変化させることができる。隙間aの変化量は微量であるが、適切なコイルばねを使用することで変化量を増幅することができる。
【0042】
鎖錠かん5の力を直接測定可能なため、間接的な測定より信頼性を上げることができる。ロックピース17に取り付けることで直接力(荷重)を測定できることから、間接的な測定より信頼度が高い。
【0043】
なお、上記実施の形態はあくまでも好ましい一例であり、この発明は特許請求の範囲に記載した範囲内であれば細部の設計等は任意に変更、修正が可能である。例えば、コイルばね24に代えて、皿ばね、板ばね等のバネ材を用いてもよい。また、ロック状態監視器20の構成はあくまで一例であり、これ以外の形状・構造とした構成としてもよい。また、出力データとして荷重を電圧に変換した例を挙げたが、電圧に代えて電流に変換してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 電気転てつ機
2 動作かん
3 駆動モータ
5,5a,5b 鎖錠かん
11,11a,11b 基本レール
12,12a,12b トングレール
13 転てつ棒
14,15 連結ロッド
17 ロックピース
18,18a,18b 切り欠き
20 ロック状態監視器
21 測定ユニット
22 ユニット本体
23 測定用ピン
24 コイルばね(バネ材)
25 荷重センサ(測定手段)
26 カバー
31 ロック荷重処理部(データ処理手段)
32 設定部
33 ロック荷重検出部
34 ロック荷重記憶部
35 温度センサ
36 温度データ処理部
37 データ出力部
38 モニタ表示部
39 集中監視装置
a 隙間
L 測定用ピンの突出量