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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136128
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230922BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A47J27/00 109K
A47J27/00 103A
H05B6/12 303
H05B6/12 308
H05B6/12 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041582
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 裕一
【テーマコード(参考)】
3K151
4B055
【Fターム(参考)】
3K151AA33
3K151CA58
4B055AA02
4B055BA32
4B055DA02
4B055DA03
4B055DB14
4B055GA13
4B055GB46
4B055GD03
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】保温時の騒音発生を抑制する炊飯器を提供する。
【解決手段】本発明の炊飯器は、水を含む被炊飯物を収容する鍋4と、鍋4を加熱する側面コイル11-1および底コイル11-2と、側面コイル11-1および底コイル11-2を制御する保温制御手段52と、を備え、保温制御手段52は、被炊飯物を保温する工程である保温工程において、側面コイル11-1および底コイル11-2の中の1つのみを使用して鍋4を加熱するように制御する構成としている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する複数の加熱コイルと、
前記複数の加熱コイルを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記被炊飯物を保温する工程である保温工程において、前記複数の加熱コイルの中の1つを使用するとともに、2以上の通電パターンで前記鍋を加熱するように制御することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記複数の加熱コイルのうち、少なくとも1つは前記鍋の底部を加熱する加熱コイルであり、前記制御手段は、前記保温工程において、前記鍋の底部を加熱する加熱コイルを使用して前記鍋を加熱するように制御することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
被炊飯物を収容する鍋と、
前記鍋を加熱する複数の加熱コイルと、
前記複数の加熱コイルを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記被炊飯物を保温する工程である保温工程における少なくとも一部の期間において、1の加熱コイルを複数回以上ON/OFFさせた後で他の加熱コイルに切替える通電パターンで前記鍋を加熱するように制御することを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
前記期間が、前記保温工程における、所定の温度帯の低温側または高温側の温度で維持する安定期であることを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱で被炊飯物の保温が可能な炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の炊飯器として、例えば特許文献1には、被炊飯物を収容する内鍋と、内鍋を誘導加熱する複数の誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルを制御するマイコンと、内鍋の温度を検出する鍋用温度センサを備え、マイコンが鍋用温度センサの検出値に基づいて誘導加熱コイルを制御し、内鍋内のご飯を食事可能な保温温度帯の高温側または低温側で保温するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-14546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の炊飯器では、被炊飯物の保温時に複数の誘導加熱コイルで加熱するとき、当該複数の誘導加熱コイルをすべて使用して加熱しており、複数の誘導加熱コイルすべてを同時に通電するように加熱制御され、もしくは、複数の加熱コイルの通電を順次切替えるように加熱制御されていた。しかしながら複数の誘導加熱コイルの通電の切替えを、例えばリレーなどの機械的なスイッチにより行なう場合、この機械的なスイッチによる誘導加熱コイルの通電の切替え時に機械的な音が頻繁に発生してしまい、保温時の騒音が大きいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、保温時の騒音発生を抑制する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の炊飯器は、被炊飯物を収容する鍋と、前記鍋を加熱する複数の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記被炊飯物を保温する工程である保温工程において、前記複数の加熱コイルの中の1つを使用して前記鍋を加熱するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炊飯器によれば、複数の加熱コイルを切替えるときの、リレーなどの機械的なスイッチによる機械的な音の発生を抑制して、保温工程における騒音発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示す炊飯器の斜視図である。
図2】同上、炊飯器の縦断面図である。
図3】同上、内枠および加熱コイルの断面図および底面側から見た平面図である。
図4】同上、炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
図5】同上、炊飯工程における、鍋温度センサの検知温度と、蓋温度センサの検知温度と、底コイルの出力と、側面コイルの出力と、の経時的な変化を示すグラフである。
図6】従来の炊飯器および本実施形態の炊飯器の、被炊飯物の量別の、容量判定工程における鍋温度の経時的な変化を示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態を示す炊飯器の保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、底コイルの出力と、側面コイルの出力と、の経時的な変化を示すグラフである。
図8】本実施形態の変形例を示す炊飯器の保温工程における、鍋温度センサの検知温度と、底コイルの出力と、側面コイルの出力と、の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい炊飯器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【0010】
図1図7は、本発明における炊飯器の一実施形態を示している。先ず炊飯器全体の構成を図1および図2に基づいて説明すると、1は本体であり、上方から見て前面と後面、左側面と右側面が対向する略矩形状をなし、上面が開口されている。2は本体1の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体であり、本体1と同様に、上方から見て前面と後面、左側面と右側面が対向する略矩形状をなし、上面が略平坦に構成されている。本体1は上面を開口した鍋収容部3を有し、蓋体2を開けたときに、被炊飯物である水や米を収容する容器としての有底状の鍋4が、その鍋収容部3に着脱自在に収容される構成となっている。鍋収容部3は、椀状で樹脂製の内枠5などを組み合わせて構成され、全体が有底筒状に形成される。
【0011】
鍋4は、熱伝導性の良いアルミニウムを主材7とし、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体8が、主材7の外面の側部下部から底部にかけて接合してある。また、鍋4の側面下部から底面に対向する内枠5の外面には、鍋4の発熱体8を電磁誘導加熱する加熱手段として、加熱コイル11を備えている。そして加熱コイル11に高周波電流を供給すると、加熱コイル11から発生する交番磁界によって鍋4の発熱体8が発熱し、炊飯時と保温時に鍋4内の被炊飯物を加熱する構成となっている。なお加熱コイル11については、後程詳しく説明する。また内枠5の底部中央部には、鍋温度検出手段としての鍋センサ12が、鍋4の外面底部と弾発的に接触するように配設される。
【0012】
蓋体2の後部には本体1との連結部となるヒンジ13が設けられる。また蓋体2の前方上面には、蓋体操作体14が露出状態で配設されており、この蓋体操作体14を押すと、本体1と蓋体2との係合が解除され、本体1の上部後方に設けたヒンジバネ(図示せず)により、ヒンジ13のヒンジ軸を回転中心として蓋体2が開く構成となっている。
【0013】
蓋体2の後方上面には、鍋4内の被炊飯物から発生する蒸気を炊飯器の外部に排出する蒸気口15が配設される。また蓋体2の上面には、この蒸気口15や蓋体操作体14の他に、炊飯に関わる様々な情報を表示するための、画面表示部としてのLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)16や状態表示部としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)表示部17などで構成される表示手段18と、タッチセンサで構成されてLCD16の上方に配設され、炊飯を開始させたり、時間や炊飯コ-スなどを選択させたりするための操作手段19と、がそれぞれ配設される。また表示手段18や操作手段19の下面には、制御PC(Printed Circuit:印刷回路)板21が配置される。
【0014】
LED表示部17は、実際の炊飯器の状態を表示するもので、本実施形態では、予約設定がされていているときに「予約」のLED表示部が点灯し、保温状態になると「保温」の工程LED表示部が点灯し、後述する減圧手段38により鍋4の内部が大気圧より低い減圧状態になると、「真空」の工程LED表示部が点灯し、炊飯中に鍋4の内部に圧力がかかり始めてから、被炊飯物が炊き上がるまでの鍋4の内部が加圧されているときに、「圧力」の工程LED表示部が点灯するように構成される。そのため、LCD16のバックライトを減光させた減光状態のときでも、ユーザがLED表示部17を確認することで炊飯器の現在の状態を一目で理解することができる。ここでLED表示部17のそれぞれのLED表示部が点灯したときの光の色をそれぞれ異ならせてもよく、炊飯器が現在どのような状態であるかを一目で理解できる。なお本実施形態ではLED表示部17の位置について、LCD16のすぐ前に配置されているが、LCD16から離れた位置に配置されてもよい。またLED表示部17を除く構成にして、このLED表示部17の表示内容をLCD16で表示するように構成してもよい。
【0015】
タッチセンサで構成された操作手段19は、例えば、導電性ポリマーによる透明電極部と制御PC板21に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、LCD16に表示される複数のボタン表示部の何れかにタッチ操作を行なうことで、そのボタン表示部の上に配設され、当該ボタン表示部に対応したタッチキーがタッチ操作されて、このボタン表示部が選択される構成となっている。
【0016】
このようにユーザの操作性および安全性を考慮して、蓋体操作体14は炊飯器におけるユーザに近い側である上面前方に配置され、蒸気口15は炊飯器におけるユーザから離れた側である上面後方に配置されることで蓋体2の上面において蓋体操作体14と蒸気口15との間に表示手段18を設けるスペースを大きく確保することができ、表示手段18や、その上方に配設される操作手段19を大きく設けることができるため、表示手段18の視認性および操作手段19の操作性を向上させることができる。また蓋体2の上面には、LCD16上方の操作手段19以外には、従来の炊飯器に設けられていた、例えば炊飯キーや切キーのような物理キー・ボタンなどの操作手段が存在せず、操作手段19のみで炊飯器の操作を行なうために操作時にボタンを探す手間が省け、操作性を向上させることができる。また非常にスマートな外観にすることができ、精密部品である表示手段18や操作手段19の配置されたスペースをコンパクトにすることができる。また物理キー・ボタンなどを除くことで蓋体2の上面を略平面状に構成することができ、拭き掃除などもしやすく清掃性を向上させている。
【0017】
蓋体2の下側には、蓋体2の下部部材としての内蓋組立体23が配設される。内蓋組立体23は、鍋4の上方開口部と略同径の円盤状を有する金属材料からなり、鍋4の上方開口部を覆う内蓋24と、この内蓋24と鍋4との間をシールするために、内蓋24の外側全周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン25と、鍋4の内圧力を調整する調圧部26とを備えている。環状に形成された蓋パッキン25は、図2に示されるように蓋体2を閉じた蓋閉時に、鍋4の開口部である上面に当接して、この鍋4と内蓋24との間の隙間を塞ぎ、鍋4から発生する蒸気を密閉するものである。
【0018】
蓋体2の内部には、蓋体2の開閉を検知するために、ヒンジ13近傍に蓋開閉検知手段27が設けられる。ここで蓋開閉検知手段27は、光学式、機械式、磁石式など、どのような検知方式のものでもよく、蓋体2の開閉に応じた検知信号を出力できればよい。また蓋体2の内部には、内蓋24を加熱する蓋加熱手段としての蓋ヒータ31と、この蓋ヒータ31による内蓋24の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ32がそれぞれ設けられる。そして蓋体2の内部には、鍋4内で発生した蒸気を外部へ放出する通路として、蒸気口15と調圧部26とを連通する蒸気排出経路33が形成される。
【0019】
調圧部26には、鍋4の内部と蒸気口15との間の蒸気排出経路33を開閉する調圧弁34が設けられる。調圧弁34はボール状で、蓋体2の内部に設けたソレノイド35と連動し、鍋4内の蒸気を外部へ放出する場合には蒸気排出経路33を開放し、鍋4内を加圧または減圧状態にする場合には蒸気排出経路33を閉塞するように、ソレノイド35が調圧弁34を転動させる。そして加圧時には、加熱コイル11への高周波通電により鍋4内の被炊飯物が加熱され、被炊飯物が沸騰して蒸気が発生し、この蒸気が鍋4内に充満することにより鍋4の内圧が所定値に達すると、調圧弁34の自重に抗して蒸気排出経路33を開放することで、鍋4内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。また蓋体2の内部には、圧力センサ36(図3参照)が調圧部26に臨んで設けられ、鍋4内部の圧力を検知している。
【0020】
38は、蓋体2を本体1に閉じた状態で、鍋4の内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧手段である。減圧手段38は、鍋4を鍋収容体3に収容し、蓋体2を閉じた後にソレノイド35を通電させて調圧弁34が蒸気排出経路33を塞いだ状態で、密閉した鍋4の内部圧力を低下させる。また、鍋4内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧手段38の動作源となる減圧ポンプ39の動作を停止し、鍋4内部を減圧状態に保っている。さらに、鍋4内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ39の動作を停止し、減圧ポンプ39と鍋4の内部との間を連通する図示しない経路を開放する。つまり減圧手段38は、鍋4内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0021】
その他、本体1の内部には、制御手段41を含むユニット化された加熱基板組立42が配設される。制御手段41は、炊飯器の各部を電気的に制御するために、マイクロコンピュータを構成する制御用IC43や、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段44(図4参照)や、炊飯に関する時間を計測可能なタイマなどの計時手段45(図4参照)などを備え構成される。特に制御手段41は、鍋センサ12の検知温度に基づいて主に加熱コイル11を制御して鍋4の底部を温度管理し、蓋温度センサ32の検知温度に基づいて主に蓋ヒータ31を制御して、被炊飯物に対向する内蓋24を温度管理するように構成される。
【0022】
図3は、内枠5および加熱コイル11の断面図および底面側から見た平面図を示している。同図を参照して加熱コイル11の説明をすると、本実施形態の加熱コイル11は、第1のコイルとしての側面コイル11-1と、第2のコイルとしての底コイル11-2とで構成されている。側面コイル11-1および底コイル11-2は、それぞれ内枠5の外面、すなわち鍋収容部3の外面に、鍋4に対向するように設けられている。具体的には鍋4を鍋収容部3に収容したときに、底コイル11-2は、底面ヒータとして鍋4底部の外側面に対向させて配設され、側面コイル11-1は、側下ヒータとして、底コイル11-2の外側および上方で、鍋4の側面下部の外側面に対向させて配設される。本実施形態の加熱コイル11の最高出力は、例えば側面コイル11-1および底コイル11-2が共に1400Wで構成されているが、これらの数値は一例であり、炊飯器の加熱特性に応じて側面コイル11-1および底コイル11-2の出力バランスを任意に設定してよい。なお本実施形態では、加熱コイル11は2つの加熱コイルで構成されているが、本発明はこれに限定されることなく、さらに多くの数の加熱コイルで構成されてもよく、その場合も、それぞれの加熱コイルが鍋4の底部から側面下部に対向させて同心状に配設され、また複数の加熱コイルが上下方向に並べられて配設される。また側面コイル11-1および底コイル11-2は、それぞれが個別にらせん状に形成されてもよく、または同心円状に形成されてもよく、それぞれの加熱コイルにおける形状に特に制約はない。
【0023】
ここで加熱コイル11を駆動したときの熱の移動について説明すると、側面コイル11-1が通電されると、側面コイル11-1に対向する部分である鍋4の側面下部の外側面が最初に高温となり、この熱が主材7経由で当該側面下部に接している被炊飯物の水に移動する。被炊飯物の熱の移動は主に水の移動と共に行われるが、被炊飯物の米が存在する場所では、当該水の移動は被炊飯物の米粒の間の狭い空隙のみに制限されてしまい、水および熱の移動が鈍化してしまう。その一方で、米が存在しない場所では、対流により水および熱の移動が活発になるため、側面下部に接している被炊飯物の水の次は、米が下方に沈むために存在しない被炊飯物の上層部分の水が高温となる。その後、被炊飯物の中央部分において、高温部となった被炊飯物の上層部分の水および熱が、低温部としての被炊飯物の中層部分に移動し、その後、被炊飯物の下層部分に移動していく。この現象がいわゆる熱対流であり、本実施形態では外対流として説明する。
【0024】
また底コイル11-2が通電されると、底コイル11-2に対向する部分である鍋4の底部の外側面が最初に高温となり、この熱が主材7経由で当該底部に接している被炊飯物の水に移動する。ここで被炊飯物の下層部分では被炊飯物の米が下方に沈んでいるため、下層部分の上部が被炊飯物の米および水で覆われた状態であり、この水の温度および圧力が上昇する。その後、下層部分において温度および圧力が高くなった水が、被炊飯物の米粒の間の空隙を通り抜けて上方に移動し、上方に吹上げることにより、下層部分で温度が上昇した水、すなわち熱水が、熱と共に被炊飯物の中層部分に移動し、その後、上層部分に移動していく。この現象がいわゆる吹上げであり、本実施形態では内対流として説明する。
【0025】
そのため側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させると、鍋4内の被炊飯物において熱の外対流と内対流とが交互に発生するため、鍋4内の被炊飯物の水の撹拌を促進することにより加熱ムラを低減することができる。
【0026】
図4は、本実施形態における炊飯器の電気的な構成を示している。同図において、制御手段41の入力ポートには、鍋センサ12と、蓋温度センサ32と、圧力センサ36と、蓋開閉検知手段27と、操作手段19とがそれぞれ電気的に接続される。また制御手段41の出力ポートには、前述したソレノイド35と、減圧ポンプ39と、表示手段18とに加えて、側面コイル11-1に接続する側面コイル駆動手段46と、底コイル11-2に接続する底コイル駆動手段47と、蓋ヒータ31に接続する蓋ヒータ駆動手段48とがそれぞれ電気的に接続される。
【0027】
側面コイル駆動手段46は、制御手段41からの加熱制御信号を受けて側面コイル11-1に高周波電流を供給して通電させるものであり、底コイル駆動手段47は、制御手段41からの加熱制御信号を受けて底コイル11-2に高周波電流を供給して通電させるものである。これらの側面コイル駆動手段46や底コイル駆動手段47は、例えば電源回路や、インバータや、IH駆動回路や、スイッチ素子などを有して構成され、側面コイル11-1や底コイル11-2に供給される高周波電流の周期や、一周期に対するON時間の比率(ON時比率)を変化させることで、側面コイル11-1や底コイル11-2からの鍋4への出力を増減させることができる。また蓋ヒータ駆動手段48は、制御手段41からの加熱制御信号を受けて蓋ヒータ31に直流電流または交流電流を供給して駆動するものである。なお本実施形態では、側面コイル11-1や底コイル11-2への通電はスイッチ素子により択一的に切り替えがなされる場合を実施例として説明するが、本発明はこれに限定されることはなく、側面コイル11-1および底コイル11-2が同時に通電する期間を含むものであってもよい。
【0028】
制御手段41は、鍋センサ12や蓋温度センサ32からの各温度検知信号と、圧力センサ36からの圧力検知信号と、蓋開閉検知手段27からの検知信号と、操作手段19からの操作信号とを受けて、表示手段18に表示制御信号を出力し、また加熱コイル11の側面コイル11-1および底コイル11-2を通電させる側面コイル駆動手段46および底コイル駆動手段47、蓋ヒータ31を駆動させる蓋ヒータ駆動手段48に、それぞれ加熱制御信号を出力し、調圧弁34を動かすソレノイド35や、減圧手段38の減圧ポンプ39にそれぞれ駆動制御信号を出力するものである。この制御手段41は、記憶手段44から読み出したプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯制御手段51、保温制御手段52および表示制御手段53を制御用IC43に備えている。
【0029】
炊飯制御手段51は、操作手段19からの炊飯開始の指示を受けて、鍋4に投入した米の吸水を促進させるひたし炊き工程と、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱工程と、被炊飯物の沸騰状態を継続させる沸騰継続工程と、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらし工程の各工程を順に実行して、鍋4内部の被炊飯物に対して所望の圧力で炊飯加熱する炊飯制御を行なうものである。また保温制御手段52は、鍋4内部のご飯を所定の保温温度に保つように制御するものである。そして表示制御手段49は、操作手段19からの操作信号に基づき各種の制御信号を生成し、また表示手段18の表示動作を制御するものである。
【0030】
記憶手段44は、例えばそれぞれの米の設定、炊き方の設定、かたさの設定などに応じた炊飯コースが記憶されており、記憶手段44に記憶された炊飯コースの米の設定、炊き方の設定、かたさの設定などが表示手段18に選択可能に表示され、操作手段19で選択してこれらの設定を行なうことで、当該炊飯コースの選択および設定を行なっている。また記憶手段44は、どのようなタイミングや出力で加熱コイル11や蓋ヒータ31や調圧弁34や減圧手段38を駆動させるかの、加熱コイル11、蓋ヒータ31、調圧弁34および減圧手段38の駆動のパターンである加熱パターンや、加熱コイル11の駆動時に、どのようなタイミングや出力で側面コイル11-1や底コイル11-2を通電させるかの側面コイル11-1および底コイル11-2の通電のパターンである通電パターンを複数記憶しており、炊飯制御手段51や保温制御手段52は、これらの加熱パターンや通電パターンにより加熱コイル11や、蓋ヒータ31や、調圧弁34や、減圧手段38を制御している。
【0031】
本実施形態の通電パターンは、側面コイル11-1および底コイル11-2の通電時間および出力を含んだパターンであり、例えば、側面コイル11-1を出力W1、通電時間T1で通電した後、コイルを切り替えて、底コイル11-2を出力W2、通電時間T2で通電させて、所定の期間に亘りこれを繰り返すものである。なお通電パターンには、コイルの通電時間と出力の一方のみを変動させ、他方を不変とするものを含んでおり、例えば、複数のコイル間で通電時間が一定である一方で出力がそれぞれのコイルで異なる場合や、複数のコイル間で出力が一定である一方で通電時間がそれぞれのコイルで異なる場合を含む。
【0032】
ここで「通電パターンを切替える」とは、通電パターンそのものを切替えることを意味しており、上記の例で説明すると、側面コイル11-1を出力W1、通電時間T1で通電させた後、底コイル11-2を出力W2、通電時間T2で通電させる、ということを繰り返す通電パターンを、所定のタイミングで、側面コイル11-1を出力W3、通電時間T3、で通電させた後、底コイル11-2を出力W4、通電時間T4で通電させる、ということを繰り返す通電パターンに切替えることをいう。
【0033】
なお通電パターンは、コイルの切替え時にすべてのコイルの通電がOFFとなる切替時間を含んでいてもよい。すなわち、一方のコイルを所定の通電時間および出力で通電→切替時間1→他方のコイルを所定の通電時間および出力で通電→切替時間2を1サイクルとしてこれを繰り返す通電パターンであってもよい。ここで、切替時間1と切替時間2とが同一の時間であってもよく、異なる時間であってもよい。
【0034】
それぞれの通電パターンにおける側面コイル11-1および底コイル11-2の通電時間や出力は、それぞれの工程において、本願発明者らが鋭意実験等を行って決定される値であればよい。例えば側面コイル11-1および底コイル11-2の通電時間は、それぞれ数秒以上であることが好ましく、これにより、鍋4内の被炊飯物において熱の外対流と内対流とを交互に所定時間以上発生させて、鍋4内の被炊飯物の水の撹拌を促進することにより加熱ムラを低減することができる。
【0035】
また本願発明者は、外対流と内対流を発生させる時間について、1の通電パターンにおいて同一の時間ではないことが好ましいことを知見した。すなわち、1の通電パターンにおける側面コイル11-1と底コイル11-2の通電時間が同一の時間ではなく、繰り返し時におけるコイルの切替の前後で、切替えられたコイルの通電時間がそれぞれ異なることが好ましい。
【0036】
また保温工程においては、後述するように、一方のコイルの通電制御を行なう一方で、他方のコイルを通電させない通電パターンもある。この通電パターンでは、一方のコイルを所定の通電時間および出力で通電→当該コイルの所定の時間通電しない、ということを繰り返すものとなる。
【0037】
次に、上記構成の炊飯器について炊飯工程における作用を説明する。図5は、本実施形態の炊飯器の炊飯工程における、鍋温度センサ12の検知温度である鍋温度tと、蓋温度センサ31の検知温度である蓋温度tと、底コイル11-2の出力Pと、側面コイル11-1の出力Pと、の経時的な変化をそれぞれグラフで示している。
【0038】
図5を参照して、本実施形態の炊飯時における動作を説明すると、先ず鍋4内に被炊飯物として米および液体としての水を入れ、この鍋4を鍋収容部3にセットした後に、蓋体2を閉じる。それと前後して、炊飯器を通電すると、本体1や蓋体2は炊飯や保温が行われていない初期の切(待機)状態となる。
【0039】
そして操作手段19で、炊飯コースの設定後に炊飯開始の指示を操作すると、炊飯制御手段51が、今回の炊飯コースの設定の加熱パターンに沿って、鍋4内の被炊飯物に対するひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、むらし工程の各炊飯動作を行なう。
【0040】
ひたし炊き工程中では鍋4内の圧力が大気圧よりも低い減圧状態となるように、炊飯制御手段51が調圧部26や減圧手段38の動作を各々制御する。具体的には、ひたし炊き工程が開始されると、炊飯制御手段51は、蒸気排出経路33を調圧弁34で閉塞するようにソレノイド35を制御する。そしてこの状態で、炊飯制御手段51は、圧力センサ36による圧力検知に基づき、減圧手段38の経路を開放すると共に、真空ポンプ39を連続動作させ、密閉した鍋4の内部の空気を真空ポンプ39で抜き取る真空引きを行なう。また表示制御手段53は、「真空」の工程LED表示部を点灯させるようにLED表示部17を制御する。その後、炊飯制御手段51は、鍋4内部の圧力が大気圧よりも低い減圧状態で一定値以下に維持されるように減圧手段38を制御する。こうして、ひたし炊き工程の全期間に亘って、鍋4内部を減圧状態に保っている。
【0041】
またひたし炊き工程が開始されると、炊飯制御手段51は、側面コイル駆動手段46に加熱制御信号を出力して、所定の出力で所定の時間Tだけ鍋4を加熱するように側面コイル11-1を制御し、時間T経過後に、炊飯制御手段51が所定の時間Tだけ鍋4への加熱を停止するように側面コイル11-1を制御して、時間T経過後の鍋温度tにより被炊飯物の量である炊飯容量を判定する容量判定工程を行なう。所定の時間Tは、加熱が停止する時間T経過時から、容量判定が可能となる温度低下を生じさせることができる時間に設定される。本実施形態では、容量判定工程において鍋センサ12に最も近い加熱コイル11である底コイル11-2を使用せず、鍋センサ12から最も離れた加熱コイル11である側面コイル11-1のみを使用して鍋4を加熱している。そのため鍋センサ12が加熱コイル11の加熱による影響を受けることを抑制し、鍋センサ12の温度検知の精度悪化を抑制することができる。
【0042】
ここで本実施形態では、容量判定工程における鍋4を加熱する時間Tを30秒以上としており、この「30秒」は、最低限の容量判定の区別である最小容量とその他の容量との判定をするために必要な時間である。また容量判定工程における鍋4への加熱を停止する時間Tを1分以上としており、この「1分」は、最小容量とその他の容量との判定をするために必要な時間である。そのため、例えば炊飯コースで時間を優先させるコースである「早炊き」コースなどで、時間Tが30秒、時間Tが1分に設定されてもよい。
【0043】
また本実施形態では、鍋4を加熱する時間Tで、炊飯制御手段51が鍋センサにより鍋温度tが60℃に達した検知信号を受信すると、炊飯制御手段51は、当該検知信号を受信した時点で鍋4への加熱を停止し、その後、所定の時間Tだけ鍋4への加熱を停止するように側面コイル11-1を制御している。被炊飯物であるお米および水が60℃以上になると、お米の吸水時にお米の糊化を促進してしまい、ご飯の炊き上がりが悪化する場合があるので、容量判定工程では、鍋温度tが60℃未満になるようにして、お米の吸水時におけるお米の糊化を抑制している。
【0044】
図6は、ひたし炊き工程の容量判定工程における、従来の炊飯器の鍋温度の経時的な変化と、本実施形態の炊飯器の鍋温度の経時的な変化とを、被炊飯物の量別にそれぞれグラフで示している。ここで、実線で示されたt0O、t0B、t0M、t0Sが従来の炊飯器で被炊飯物の量が特大、大、中、小のときにおける鍋センサ12の検知温度のグラフであり、点線で示されたt1O、t1B、t1M、t1S、本実施形態の炊飯器で被炊飯物の量が特大、大、中、小のときにおける鍋センサ12の検知温度である鍋温度tのグラフである。従来では、側面コイル11-1と底コイル11-2の両方を使用して鍋4を加熱しており、特に容量が小のときにt0Sが60℃の近傍まで上昇するなど鍋4の鍋底の温度が上がりすぎてしまい、お米の糊化が進む場合があった。そこで本実施形態では、側面コイル11-1のみを使用し、従来の炊飯器よりも加熱コイル11全体の出力を抑制して鍋4を加熱し、鍋4の鍋底の温度の上昇を抑えている。
【0045】
また本実施形態では、時間Tの終了時の鍋温度tにより炊飯制御手段51が炊飯容量を判定している。なお、時間Tの終了時の鍋温度tに基づいた容量判定は、時間Tの終了時の鍋温度tのみによるものであっても、時間Tの終了時の鍋温度tとひたし炊き工程開始時の鍋温度との差に基づくものであっても、時間Tの終了時の鍋温度tと加熱が停止した時間Tにおける鍋温度tとの差に基づくものであってもよい。そして、ひたし炊き工程開始時の鍋温度tについては、所定の固定値としてもよい。
【0046】
本実施形態では、時間Tの終了時の鍋温度tのみにより炊飯容量を判定する構成を採用している。ここで、炊飯容量の判定は、例えば、時間Tの終了時における鍋温度に対し、被炊飯物の量が特大、大、中、小のそれぞれの場合における閾値の範囲を設けておき、時間Tの終了時における鍋温度がどの範囲に含まれるかに基づいて判定することができる。そして、図6に示すように、時間Tの終了時において、本実施形態のt1O、t1B、t1M、およびt1Sの間の温度差が、従来のt0O、t0B、t0M、およびt0Sの間の温度差よりも大きいことがわかる。すなわち、本実施形態の炊飯器の方が、温度差が大きい分だけ、グルーピング精度を向上させ、炊飯容量の判定を精確にすることができる。なお本発明はこれに限定されず、炊飯容量を判定する方法は一例である。
【0047】
炊飯制御手段51は、計時手段45から時間Tが経過した計時信号を受信すると、ひたし炊き工程のひたし工程に移行し、炊飯制御手段51は、鍋温度センサ12による鍋4の底部の温度検知に基づき、側面コイル駆動手段46および底コイル駆動手段47にそれぞれ加熱制御信号を出力して、側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させるように制御し、鍋4を加熱して、図5に示されるように、鍋4内の水温を所定の温度、例えば35~55℃、最高でも60℃にまで昇温させて米の吸水を促進させるひたし工程を行なう。ひたし工程は、鍋4内の水温を所定の温度に所定の時間、例えば15分程度保持するように構成されるが、この時間は任意に変更してよい。
【0048】
具体的には、炊飯制御手段51は底コイル11-2のデューティー比がA%、側面コイル11-1のデューティー比がB%で側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させるように制御する。また炊飯制御手段51は、炊飯工程の全期間に亘って、側面コイル11-1の通電と底コイル11-2の通電との切替えがあるとき、当該切替え時に側面コイル11-1および底コイル11-2を両方がOFFとなる切替時間を挟むように制御する。なお、この切替時間の長さは、一定であってもよく、炊飯工程に応じて変更してもよい。また、切替時間を有しない制御としてもよい。なお本実施形態では、炊飯制御手段51は、ひたし工程では容量判定工程で判定した被炊飯物の量によらずに一定の通電パターンで側面コイル11-1や底コイル11-2を制御しているが、容量判定工程で判定した被炊飯物の量に応じて側面コイル11-1や底コイル11-2のデューティー比を変更し、通電パターンを変更するように制御してもよい。その後、炊飯制御手段51は、計時手段45から、ひたし工程から所定の時間が経過した計時信号を受信すると、ひたし炊き工程を終了して次の沸騰加熱工程に移行する。
【0049】
沸騰加熱工程に移行すると、炊飯制御手段51が側面コイル駆動手段46および底コイル駆動手段47にそれぞれ加熱制御信号を出力して、ひたし炊き工程よりも鍋4内の被炊飯物を強く加熱するように側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させるように制御し、被炊飯物の沸騰検知を行なうまで加熱する工程である加熱工程を行なう。
【0050】
具体的には、加熱工程に移行すると、炊飯制御手段51は、加熱工程の最初に、底コイル11-2のデューティー比C%をひたし工程のときのデューティー比A%よりも少々増加させ(C>A)、また側面コイル11-1デューティー比と底コイル11-2のデューティー比とを略同一にして、ひたし炊き工程よりも少々強い程度の出力で側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させる通電パターンで制御する。ここで炊飯制御手段51は、沸騰加熱工程において、容量判定工程で判定した被炊飯物の量に応じて側面コイル11-1および底コイル11-2の通電時間を変更しており、例えば底コイル11-2のデューティー比は、炊飯物の量が特大のときにD%、炊飯物の量が大のときにE%、炊飯物の量が中のときにF%、炊飯物の量が小のときにG%とすると、D<E<F<Gの順にデューティー比が大きく設定され、また側面コイル11-1のデューティー比はD>E>F>Gに設定される。
【0051】
また沸騰加熱工程に移行すると、炊飯制御手段51は、ソレノイド35を制御して蒸気排出経路33を開放させるように調圧弁34を転動させ、鍋4内を本体1の機外と連通させた状態にして、被炊飯物からの蒸気を蒸気排出経路33経由で蒸気口15から本体1の機外に放出する。そして表示制御手段53は、「真空」の工程LED表示部を消灯させるようにLED表示部17を制御する。
【0052】
その後、炊飯制御手段51は、計時手段45から沸騰加熱工程を開始してから所定時間経過した計時信号を受信すると、1周期における底コイル11-2の通電時間J秒および側面コイル11-1の通電時間K秒は加熱工程の最初のときの1周期における底コイル11-2の通電時間H秒および側面コイル11-1の通電時間I秒と同一または異なった時間で通電させ、底コイル11-2を通電→切替時間→側面コイル11-1を通電→切替時間というパターンで、加熱工程の最初のときの出力と同一または低い出力で側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させる通電パターンで所定時間制御して、出力Pおよび出力Pを出力させる。なお、以降の沸騰加熱工程、沸騰継続工程およびむらし工程でも、炊飯制御手段51は、底コイル11-2を通電→切替時間→側面コイル11-1を通電→切替時間というパターンで側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させる通電パターンで加熱コイル11を制御する。また、このときの底コイル11-2の通電時間は、炊飯物の量が特大≦大≦中≦小の順に時間が長く設定され、その一方で、側面コイル11-1の通電時間は、炊飯物の量が小≦中≦大≦特大の順に時間が長く設定される。そして、このときの加熱コイル11の駆動時における側面コイル11-1および底コイル11-2の通電のパターンである通電パターンの周期が、小≦中≦大≦特大の順に長く設定される、なお本発明はこれらに限定されず、通電パターンの周期や設定は一例である。
【0053】
そして炊飯制御手段51は、計時手段45から、さらに所定時間が経過した計時信号を受信すると、1周期における底コイル11-2の通電時間L秒および側面コイル11-1の通電時間M秒の合計の通電時間L+M秒を、先程の1周期における底コイル11-2の通電時間J秒および側面コイル11-1の通電時間K秒の合計の通電時間J+K秒よりも同一または低減させつつ所定の出力を維持して(H+I≧J+K≧L+M)、側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させる通電パターンで制御する。ここで底コイル11-2の通電時間は、先程と同様に、炊飯物の量が特大≦大≦中≦小の順に時間が長く設定され、その一方で、側面コイル11-1の通電時間は、炊飯物の量が小≦中≦大≦特大の順に時間が長く設定される。これらのように側面コイル11-1および底コイル11-2により鍋4内部で被炊飯物を加熱することで、図5に示されるように鍋センサ12が検出する鍋温度tと共に、蓋温度センサ32が検出する蓋温度tが次第に上昇する。
【0054】
その後、炊飯制御手段51は、鍋センサ12からの温度検知信号により鍋温度tが所定温度以上、例えば90℃以上に達したことを受信し、および/または蓋温度センサ32からの温度検知信号により蓋温度tが所定温度以上、例えば90℃以上に達したことを受信すると、被炊飯物の加圧状態での沸騰を検知する沸騰検知の工程である安定#1工程を開始する。
【0055】
安定#1工程では、炊飯制御手段51は、ソレノイド35を制御して蒸気排出経路33を閉塞させるように調圧弁34を転動させて鍋4の内部を密閉した状態にしており、前述のように鍋4内部で被炊飯物を強く加熱しているため、この被炊飯物が大気圧以上、例えば1.2気圧に達するまで鍋4内部で加圧され、その加圧状態で被炊飯物の水を沸騰させることができる。これにより、加圧状態における米の糊化最適温度である105℃(1.2気圧の場合)で被炊飯物の水を沸騰させることで、米の硬さと粘りのバランスを確保することができる。また表示制御手段53は、「圧力」の工程LED表示部を点灯させるようにLED表示部17を制御する。なお炊飯制御手段51は、例えば米の種類の設定などにより、圧力センサ36の検知圧力に基づいて、鍋4内部の圧力を調整するようにソレノイド35を制御してもよい。
【0056】
また炊飯制御手段51は、1周期における底コイル11-2の通電時間N秒および側面コイル11-1の通電時間O秒の合計の通電時間N+O秒は直前の加熱工程の1周期における合計の通電時間L+M秒と略同等にする一方で、底コイル11-2の通電時間N秒を直前の加熱工程の底コイル11-2の通電時間L秒よりも少々短くして(N<L)、側面コイル11-1の通電時間O秒を直前の加熱工程の側面コイル11-1の通電時間M秒よりも少々長くし(O>M)、側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させる通電パターンで制御する。したがって炊飯制御手段51は、沸騰加熱工程において加熱工程と安定#1工程とで異なる通電パターンで底コイル11-2および側面コイル11-1を制御している。その一方で炊飯制御手段51は、加熱工程と同様に、被炊飯物の量に応じて、異なる通電パターンで底コイル11-2および側面コイル11-1を制御している。
【0057】
また炊飯制御手段51は、鍋センサ12の検知温度や蓋温度センサ32の検知温度が所定の時間にどの程度上昇するのかという検知温度の傾きを算出する。具体的には、炊飯制御手段51が、鍋センサ12の検知温度から鍋4の底部の温度である鍋温度tの上昇が、例えば120秒で3℃以下など所定の温度上昇率以下になったと算出したら、鍋温度tの温度上昇率の変化による沸騰を検知したと判定する。また炊飯制御手段51が、蓋温度センサ32の検知温度から内蓋24の温度である蓋温度tの上昇が、例えば60秒で1℃以下など所定の温度上昇率以下になったと算出したら蓋温度t2の温度上昇率の変化による沸騰を検知したと判定する。そして炊飯制御手段51が、鍋温度tの温度上昇率の変化による沸騰を検知し、かつ蓋温度tの温度上昇率の変化による沸騰を検知した時点で、次の沸騰継続工程に移行する。なお、これらの沸騰を検知するための鍋温度tや蓋温度tの所定の温度上昇率は、容量判定工程で判定された被炊飯物の量に応じてそれぞれ調節され、設定されてもよい。また沸騰検知の方法は一例であり、炊飯制御手段51が鍋温度tの温度上昇率の変化による沸騰を検知したと判定した時点で、次の沸騰継続工程に移行するように構成してもよい。
【0058】
このように本実施形態では、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱工程において、炊飯制御手段51は、鍋温度tの温度上昇率の変化による沸騰および蓋温度tの温度上昇率の変化による沸騰を検知するまでに、加熱工程で3つの異なる通電パターンで側面コイル11-1および底コイル11-2を制御し、また安定#1工程でも異なる通電パターンで側面コイル11-1および底コイル11-2を制御しており、加熱コイル11の通電パターンを複数回切替えている。そのため被炊飯物の水が沸騰するまでに適切な通電パターンをきめ細かく変更でき、ご飯に炊きムラが発生する虞を低減させている。なお本発明はこれに限定されず、例えば炊飯制御手段51が、安定#1工程に移行するときに加熱コイル11の通電パターンを切替えるなど、沸騰加熱工程において被炊飯物の水が沸騰するまでに加熱コイル11の通電パターンを少なくとも1回切替えるように制御する構成であればよい。また炊飯制御手段51は、被炊飯物の量に応じて、異なる通電パターンで底コイル11-2および側面コイル11-1を制御しており、被炊飯物の量に応じて適切な通電パターンをきめ細かく変更して、ご飯に炊きムラが発生する虞を低減させている。
【0059】
沸騰継続工程に移行すると、炊飯制御手段51は、鍋センサ12からの温度検知信号に基づき鍋温度tが、所定の温度に到達するまで加熱コイル11の通断電制御を行なうと共に、蓋温度センサ32からの検知温度から蓋温度tが、例えば98℃以上など所定の温度を維持するように蓋ヒータ33を連続通電する制御を行ない、被炊飯物の沸騰状態を継続させる工程である安定#2工程を開始する。安定#2工程の、加熱コイル11の駆動時における側面コイル11-1および底コイル11-2の通電パターンは1周期の長さが安定#1工程のものよりも加熱コイル11の駆動を停止させる時間、すなわち加熱コイル11のOFF時間が長く設定される。
【0060】
また沸騰継続工程に移行したら、炊飯制御手段51は鍋4内を常圧と大気圧よりも高い圧力との間に繰り返し変化させるために、ソレノイド35を周期的に通断電制御して、調圧弁34で蒸気排出経路33を周期的に開閉している。
【0061】
炊飯制御手段51は、安定#2行程で鍋4内部の水が無くなりはじめ、鍋温度センサ15の検知温度から鍋4の底部の温度が所定の温度以上に到達または温度の上昇が10秒で0.5℃以上など所定の温度上昇率以上になったと算出すると、被炊飯物の炊き上がりを検知する炊上工程を開始する。
【0062】
炊上工程が開始されると、炊飯制御手段51は、蒸気排出経路33を調圧弁34で閉塞するようにソレノイド35を制御する。また炊飯制御手段51は、1周期における底コイル11-2の通電時間Q秒を安定#2工程の1周期における底コイル11-2の通電時間O秒よりも増加させる(Q>O)一方で、1周期における側面コイル11-1の通電時間R秒を安定#2工程の1周期における側面コイル11-1の通電時間P秒以下に(R≦P)設定され、側面コイル11-1と底コイル11-2とを交互に通電させる通電パターンで制御する。したがって炊上工程において1周期における底コイル11-2の通電時間Q秒は、側面コイル11-1の通電時間R秒よりも長く設定される。炊上工程において鍋4内に被炊飯物の水は殆ど無く、内対流や外対流が発生しないため、このように側面コイル11-1より底コイル11-2の通電時間を長くすることにより、鍋4内底に残る水を鍋底側からより効率的に加熱することができる。ここで底コイル11-2の通電時間は、先程と同様に、炊飯物の量が特大≧大≧中≧小の順に時間が長く設定され、その一方で、側面コイル11-1の通電時間も同様に、炊飯物の量が特大≧大≧中≧小の順に時間が長く設定される。
【0063】
炊飯制御手段51は、鍋センサ12からの温度検知信号により鍋温度tが所定のドライアップ温度、例えば120℃に達達したことを受信し、または鍋センサ12からの温度検知信号から鍋温度tの上昇が所定の温度上昇率以上、例えば10秒で0.5℃以上になったことを算出すると、鍋4内部の水が無くなり、被炊飯物の炊き上がりを検知したと判定して、次のむらし工程に移行する。
【0064】
むらし工程では、炊飯制御手段51は、蓋温度センサ32からの検知温度から蓋温度tが所定の温度を維持するように蓋ヒータ33を連続通電する制御を行ない、内蓋24への露付きを防止すると共に、鍋4内部のご飯が焦げない程度に高温が保持されるように、加熱コイル11の通断電制御を所定の時間だけ継続して行ない、鍋4の底部の温度を管理する。このむらし工程においても、加熱コイル11の駆動/駆動停止がある程度行われるため、炊飯制御手段51は、1周期の長さが短い炊上工程の通電パターンと略同様の通電パターンで制御する。また炊飯制御手段51は、ソレノイド35を制御して蒸気排出経路33を開放させるように調圧弁34を転動させ、鍋4内を本体1の機外と連通させた状態にして、被炊飯物からの蒸気を蒸気排出経路33経由で蒸気口15から本体1の機外に放出する。また表示制御手段53は、「圧力」の工程LED表示部を消灯させるようにLED表示部17を制御する。炊飯制御手段51が計時手段45から所定の時間がした計時信号を受信すると、むらし工程が終了して炊飯工程が完了し、保温制御手段52による保温工程に移行する。
【0065】
このように本実施形態では、炊飯制御手段51が鍋温度tの温度上昇率の変化による沸騰および蓋温度tの温度上昇率の変化による沸騰を検知した後も、炊上工程で加熱コイル11の通電パターンを切替え、またむらし工程でも加熱コイル11の通電パターンを切替えるように制御しており、被炊飯物の水の沸騰を継続させて炊き上げ、ご飯が焦げない程度に高温が保持されるときも適切な通電パターンをきめ細かく変更することにより、ご飯に炊きムラが発生する虞を低減させている。なお本発明はこれに限定されず、例えば炊飯制御手段51が、むらし工程で通電パターンを切替えるなど、被炊飯物の水が沸騰した後も通電パターンを少なくとも1回切替えるように制御する構成であればよい。
【0066】
次に、上記構成の炊飯器について保温工程における作用を説明する。図7は、本実施形態の炊飯器の保温工程における、鍋温度センサ12の検知温度である鍋温度tと、底コイル11-2の出力Pと、側面コイル11-1の出力Pと、の経時的な変化をそれぞれグラフで示している。
【0067】
本実施形態では、図7に示されるように、保温工程が5つの期間T~Tに細分化されており、保温制御手段52は、これら5つの期間T~Tのそれぞれで異なる通電パターンで、使用するコイルである底コイル11-2を制御している。すなわち保温制御手段52は、期間T~Tが移行するごとに、前の期間の通電パターンから、底コイル11-2の通電時間、出力または通電しない時間の少なくとも1つを変更した通電パターンに切替えている。なお本発明はこれに限定されず、保温制御手段52が、保温工程において複数の加熱コイルの中の1つを使用するとともに、保温工程を通して通電パターンをすべて同一にするのではなく、通電パターンを少なくとも1回は切替えて、2以上の通電パターンで、使用するコイルを制御する構成であればよい。
【0068】
本実施形態の保温工程は、保温工程を開始してから、例えば30分以内の所定期間、またはご飯の温度が、例えば90℃以上の所定の温度以上である期間の保温初期Tと、保温初期Tの次に移行し、保温工程を開始してから例えば60分以内の所定期間であり、ご飯の温度を徐々に降下させる保温降下期Tと、保温工程を開始してから60分を超えており、ご飯の温度を、ご飯におけるメイラード反応を抑制可能な温度である保温温度帯の、低温側である例えば70℃プラスマイナス3℃の低温保温の温度に維持して保温する低温安定期Tと、ご飯の温度を、低温保温の設定温度から高温保温の温度に上昇させる高温降下期Tと、ご飯の温度を、保温温度帯の高温側である例えば73℃プラスマイナス3℃の高温保温の温度に維持して保温する高温安定期Tと、の各期間を備えて構成される。
【0069】
また本実施形態では、保温工程において保温制御手段52は、底コイル駆動手段47に加熱制御信号を出力して、所定の出力で鍋4を加熱するように底コイル11-2を制御し、保温工程で側面コイル11-1を使用しない通電パターンで制御している。そのため側面コイル11-1および底コイル11-2を切替えるときの、リレーなどの機械的なスイッチによる機械的な音の発生を抑制して、保温工程における騒音を低減させている。
【0070】
保温行程に移行すると、保温制御手段52は、鍋センサ12の検知温度tに基づき被炊飯物としてのご飯の温度を算出し、ご飯の温度が、例えば90℃以上の所定の温度以上に維持するように底コイル11-2を通断電制御して鍋4の温度を管理する保温初期Tの期間になる。また保温制御手段52は、当該鍋4内のご飯の温度に対して内蓋24の鍋4対向面の温度が平均的に高くなるように、蓋温度センサ32の検知温度に基づき蓋ヒータ22を通断電制御して内蓋24の温度を管理する。その結果、内蓋24の鍋4対向面の結露を防止して、ご飯へのつゆ落ちを防止することができ、炊き立て状態を保持して炊き立て相当の食味を維持することができる。そして表示制御手段53は、「保温」の工程LED表示部を点灯させるようにLED表示部17を制御する。保温制御手段52が計時手段45から、保温初期Tの開始から例えば30分などの所定時間が経過した計時信号を受信すると、保温降下期Tに移行する。
【0071】
保温降下期Tでは、保温制御手段52は、鍋センサ12の検知温度tに基づき底コイル11-2を制御して鍋4の温度を管理して、保温工程を開始してから例えば60分などの所定時間をかけて、鍋4内部のご飯の温度を、例えば70℃プラスマイナス3℃の低温保温の温度まで降下させる。それと共に保温制御手段52は、蓋温度センサ32の検知温度に基づき蓋ヒータ31を制御して内蓋24の温度管理を行ない、内蓋24への露付きを防止する。なお保温降下期Tに保温制御手段52は、蒸気排出経路33を調圧弁34で閉塞するようにソレノイド35を制御してもよく、炊飯工程のむらし工程で脱気した後に鍋4内外の連通を遮断した状態で、被炊飯物であるご飯の温度を沸騰温度近傍から低温保温の温度まで降下させるため、鍋4内の蒸気などの気体の温度も降下して水などの液体になり、鍋4の内部を減圧脱気状態にすることができる。保温制御手段52は、保温行程開始から所定時間が経過し、かつ鍋センサ12の検知温度tに基づき鍋4内部のご飯の温度を低温保温の設定温度まで降下させたと判定すると、次の低温安定期Tに移行する。
【0072】
低温安定期Tでは、保温制御手段52は鍋センサ12の検知温度tに基づき、ご飯の温度を、例えば70℃プラスマイナス3℃の低温保温の温度に維持するように底コイル11-2を通断電制御して鍋4の温度を管理し、鍋4内部のご飯が黄変や独特の臭気を発するという保温状態の劣化を抑制する。それと共に保温制御手段52は、蓋温度センサ32の検知温度に基づき蓋ヒータ31を制御して内蓋24の温度管理を行ない、内蓋24への露付きを防止する。なお低温安定期Tに保温制御手段52は、蒸気排出経路33を調圧弁34で閉塞するようにソレノイド35を制御してもよく、鍋4内外の連通を遮断して、蒸気孔17aからの腐敗菌や食中毒菌の侵入を防止し、また外気からの冷たい空気の侵入も防止することができる。また保温降下期Tで鍋4の内部が減圧脱気状態である場合は、この鍋4の内部の減圧脱気状態を維持することができる。保温制御手段52が計時手段45から、低温安定期Tを開始してから例えば6時間などの所定時間が経過した計時信号を受信すると、次の高温降下期Tに移行する。
【0073】
高温降下期Tでは、保温制御手段52は、鍋センサ12の検知温度tに基づき、ご飯の温度が高温保温の温度よりも所定温度高くなるように底コイル11-2を通断電制御して鍋4の温度を管理する。それと共に保温制御手段52は、蓋温度センサ32の検知温度に基づき蓋ヒータ31を制御して内蓋24の温度管理を行ない、内蓋24への露付きを防止する。その後、保温制御手段52は、鍋センサ12の検知温度tに基づき鍋4内部のご飯の温度が高温保温の温度よりも所定温度上昇したと判定すると、底コイル11-2を制御し、鍋センサ12の検知温度tに基づき鍋4の温度を管理して、鍋4内部のご飯の温度を高温保温の温度まで降下させる。保温制御手段52がご飯の温度を高温保温の設定温度まで降下させたと判定すると、次の高温安定期Tに移行する。
【0074】
なお保温工程で鍋4の内部を減圧脱気状態にする場合、保温制御手段52は、高温降下期Tにおいてご飯の温度が高温保温の温度よりも所定温度高くなるように底コイル11-2を通断電制御しているときに、ソレノイド35を制御して蒸気排出経路33を開放させるように調圧弁34を転動させて鍋4内の蒸気および空気を炊飯器の外に放出して脱気し、その後、鍋センサ12の検知温度tに基づき鍋4内部のご飯の温度が高温保温の温度よりも所定温度上昇したと判定したときに、蒸気排出経路33を調圧弁34で閉塞するようにソレノイド35を制御してもよく、その後、鍋4内部のご飯の温度を高温保温の温度まで降下させるため、鍋4の内部を再度減圧脱気状態にすることができる。
【0075】
高温安定期Tでは、保温制御手段52は鍋センサ12の検知温度tに基づき、ご飯の温度を、例えば73℃プラスマイナス3℃の高温保温の温度に維持するように底コイル11-2を通断電制御して鍋4の温度を管理し、それと共に保温制御手段52は、蓋温度センサ32の検知温度に基づき蓋ヒータ31を制御して内蓋24の温度管理を行ない、内蓋24への露付きを防止する。そのため、このご飯におけるメイラード反応を抑制しつつ、内蓋24の鍋4対向面の結露を防止して、ご飯へのつゆ落ちを防止することができる。なお高温安定期Tに保温制御手段52は、蒸気排出経路33を調圧弁34で閉塞するようにソレノイド35を制御してもよく、鍋4内外の連通を遮断して、蒸気孔17aからの腐敗菌や食中毒菌の侵入を防止し、また外気からの冷たい空気の侵入も防止することができる。また高温降下期Tで鍋4の内部が減圧脱気状態である場合は、この鍋4の内部の減圧脱気状態を維持することができる。
【0076】
以上のように、本実施形態の炊飯器では、被炊飯物としてのお米と水を収容する鍋4と、鍋4を加熱する複数の加熱コイルとしての側面コイル11-1および底コイル11-2と、側面コイル11-1および底コイル11-2を制御する制御手段としての保温制御手段52と、を備え、保温制御手段52は、被炊飯物を保温する工程である保温工程において、側面コイル11-1および底コイル11-2の中の1つを使用するとともに、2以上の通電パターンで鍋4を加熱するように制御する構成としている。
【0077】
このように構成することにより、側面コイル11-1および底コイル11-2を切替えるときの、リレーなどの機械的なスイッチによる機械的な音の発生を抑制して、保温工程における騒音発生を抑制することができる。
【0078】
また本実施形態の炊飯器では、側面コイル11-1および底コイル11-2のうち、少なくとも1つは鍋の底部を加熱する加熱コイルであり、保温制御手段52は、保温工程において鍋4の底部を加熱する加熱コイルとしての底コイル11-2を使用して鍋4を加熱するように制御する構成としている。保温工程において鍋4内に被炊飯物の水は無く内対流や外対流が発生しないため、底コイル11-2を使用して鍋4を加熱することにより、より効率的に被炊飯物を加熱することができる。
【0079】
図8は、本実施形態の炊飯器の変形例を示している。同図は、本変形例の保温工程における、鍋温度センサ12の検知温度である鍋温度tと、底コイル11-2の出力Pと、側面コイル11-1の出力Pと、の経時的な変化をそれぞれグラフで示している。
【0080】
本変形例では、保温工程で保温温度帯の低温側または高温側の温度で維持する安定期である低温安定期Tおよび高温安定期Tにおいて、保温制御手段52は、側面コイル駆動手段46および底コイル駆動手段47に加熱制御信号を出力して、所定の出力で鍋4を加熱するように側面コイル11-1および底コイル11-2を制御している。ここで低温安定期Tおよび高温安定期Tでは、保温制御手段52は、底コイル11-2を通電→切替時間→底コイル11-2を通電→切替時間→側面コイル11-1を通電→切替時間というパターンで底コイル11-2を複数回(図8の例では2回)ON/OFFさせた後に側面コイル11-1に切り替えて1回ON/OFFさせる通電パターンで加熱コイル11を制御する。そのため、保温制御手段52がこのような通電パターンで側面コイル11-1および底コイル11-2を制御することにより、側面コイル11-1および底コイル11-2を切替える回数を減少させ、リレーなどの機械的なスイッチによる機械的な音の発生を抑制して、保温工程における騒音発生を抑制することができる。
【0081】
以上のように、本変形例の炊飯器では、被炊飯物としてのお米と水を収容する鍋4と、鍋4を加熱する複数の加熱コイルとしての側面コイル11-1および底コイル11-2と、側面コイル11-1および底コイル11-2を制御する制御手段としての保温制御手段52と、を備え、保温制御手段52は、被炊飯物を保温する工程である保温工程における少なくとも一部の期間である、保温する温度を、所定の温度帯としての保温温度帯の低温側または高温側の温度で維持する安定期としての低温安定期Tおよび高温安定期Tにおいて、1のコイルとしての底コイル11-2を複数回以上ON/OFFさせた後で他のコイルとしての側面コイル11-1に切り替える通電パターンで鍋4を加熱するように制御するため、側面コイル11-1および底コイル11-2の切替頻度を減少させて、側面コイル11-1および底コイル11-2を切替えるときの、リレーなどの機械的なスイッチによる機械的な音の発生を抑制して、保温工程における騒音発生を抑制することができる。
【0082】
また本変形例の炊飯器では、1のコイルとしての底コイル11-2を複数回以上ON/OFFさせた後で他のコイルとしての側面コイル11-1に切り替える通電パターンで鍋4を加熱する期間が、保温工程における、所定の温度帯としての保温温度帯の低温側または高温側の温度で維持する安定期としての低温安定期Tおよび高温安定期Tであり、そのため所定の温度帯の温度で維持する期間で側面コイル11-1および底コイル11-2の切替頻度を減少させて、側面コイル11-1および底コイル11-2を切替えるときの、リレーなどの機械的なスイッチによる機械的な音の発生を抑制して、騒音発生を抑制することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。また実施形態中で例示した数値などはあくまでも一例にすぎず、炊飯器の仕様などに応じて適宜変更してかまわない。
【符号の説明】
【0084】
4 鍋
11-1 側面コイル(加熱コイル)
11-2 底コイル(加熱コイル)
52 保温制御手段(制御手段)
低温安定期(安定期)
高温安定期(安定期)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8