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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136171
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】昇降装置用保護カバー
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/12 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
A61G13/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041645
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 清徳
(72)【発明者】
【氏名】原 靖
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 尉人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341MM04
(57)【要約】
【課題】昇降装置の周囲の物品との接触を防ぎつつ、昇降装置による自身の破損も防ぐ。
【解決手段】昇降装置用の保護カバー1は、昇降装置の周囲を囲うように配置されると共に、その内面は、周方向に沿って複数の平坦面を含む環状の壁部2と、壁部2に対して連続する位置に設けられると共に、昇降装置の下降方向に向かうにつれて内方に突出する傾斜部13,23と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降装置の周囲を囲うように配置されると共に、その内面は、周方向に沿って複数の平坦面を含む環状の壁部と、
前記壁部に対して連続する位置に設けられると共に、前記昇降装置の下降方向に向かうにつれて内方に突出する傾斜部と、
を有する、昇降装置用保護カバー。
【請求項2】
昇降装置の周囲を囲うように配置されると共に、その内面は、周方向に沿って複数の平坦面を含む環状の壁部と、
前記壁部に対して連続する位置に設けられると共に、前記昇降装置の下降方向に向かうにつれて前記壁部の中心との距離が小さくなるように傾斜する傾斜部と、
を有する、昇降装置用保護カバー。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記複数の平坦面のそれぞれに設けられる、請求項1または2に記載の昇降装置用保護カバー。
【請求項4】
前記傾斜部は、1つの前記平坦面に対して複数設けられる、請求項1または2に記載の昇降装置用保護カバー。
【請求項5】
前記壁部は、互いに分離可能な周方向に並ぶ複数の板状部材によって構成され、
1つの前記板状部材が、1つの前記平坦面を形成する、請求項1または2に記載の昇降装置用保護カバー。
【請求項6】
前記板状部材は、周方向の両端に係合部を有し、前記係合部と前記壁部との間にスリットが設けられており、
隣接する前記板状部材同士は、一方の前記板状部材の前記スリットに他方の前記板状部材の前記壁部が差し込まれて前記係合部同士が係合することによって連結される、請求項5に記載の昇降装置用保護カバー。
【請求項7】
前記壁部の下端から下方に突出する複数の突出部をさらに有し、
前記昇降装置の周囲に配置した際に、前記壁部の下端は、前記突出部の接地面から離間している、請求項1~6のいずれか一項に記載の昇降装置用保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降装置用保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降装置によって寝台が昇降する手術台では、昇降装置の動作時に周辺に置かれた物品等を挟み込み破損する可能性がある。これに対して、特許文献1では、昇降装置の周囲に保護部材を配置する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10610435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保護部材が移動して昇降装置と保護部材との位置関係が変化した場合、昇降装置と保護部材とが干渉する可能性がある。この場合、昇降装置または保護部材が破損する可能性がある。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、昇降装置の周囲の物品との接触を防ぎつつ、昇降装置による自身の破損も防ぐことが可能な昇降装置用保護カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る昇降装置用保護カバーは、昇降装置の周囲を囲うように配置されると共に、その内面は、周方向に沿って複数の平坦面を含む環状の壁部と、前記壁部に対して連続する位置に設けられると共に、前記昇降装置の下降方向に向かうにつれて内方に突出する傾斜部と、を有する。
【0007】
上記の昇降装置用保護カバーによれば、環状の壁部が昇降装置の周囲を囲うように配置されるため、昇降装置と周囲の物品との接触が防がれる。また、昇降装置の下降方向に向かうにつれて内方に突出する傾斜部が設けられていることで、仮に昇降装置に含まれる可動部品が下方に移動し、傾斜部と接触した場合に、可動部品から受ける下方向への力を横方向へ分散させることができ、カバーの破損を防ぐことができる。
【0008】
また、本開示の別の形態に係る昇降装置用保護カバーは、昇降装置の周囲を囲うように配置されると共に、その内面は、周方向に沿って複数の平坦面を含む環状の壁部と、前記壁部に対して連続する位置に設けられると共に、前記昇降装置の下降方向に向かうにつれて前記壁部の中心との距離が小さくなるように傾斜する傾斜部と、を有する。
【0009】
上記の昇降装置用保護カバーによれば、環状の壁部が昇降装置の周囲を囲うように配置されるため、昇降装置と周囲の物品との接触が防がれる。また、昇降装置の下降方向に向かうにつれて壁部の中心との距離が小さくなるように傾斜する傾斜部が設けられていることで、仮に昇降装置に含まれる可動部品が下方に移動し、傾斜部と接触した場合に、可動部品から受ける下方向への力を横方向へ分散させることができ、カバーの破損を防ぐことができる。
【0010】
ここで、前記傾斜部は、前記複数の平坦面のそれぞれに設けられる態様としてもよい。
【0011】
複数の平坦面のそれぞれに傾斜部が設けられている場合、可動部品と昇降装置用保護カバーの位置関係がどのように変化した場合でも傾斜部が可動部品と接触する状態を実現できるため、カバーの破損をより確実に防ぐことができる。
【0012】
前記傾斜部は、1つの前記平坦面に対して複数設けられる態様としてもよい。
【0013】
このような構成であっても、平坦面に対して複数設けられた傾斜部のうちの1つが可動部品と接触する状態を実現できるため、カバーの破損をより確実に防ぐことができる。
【0014】
前記壁部は、互いに分離可能な周方向に並ぶ複数の板状部材によって構成され、1つの前記板状部材が、1つの前記平坦面を形成する態様としてもよい。
【0015】
上記の構成とすることで、昇降装置用保護カバーの形状を昇降装置の形状に応じた形とすることができ、昇降装置用保護カバーをコンパクトに形成することができる。
【0016】
前記板状部材は、周方向の両端に係合部を有し、前記係合部と前記壁部との間にスリットが設けられており、隣接する前記板状部材同士は、一方の前記板状部材の前記スリットに他方の前記板状部材の前記壁部が差し込まれて前記係合部同士が係合することによって連結される態様としてもよい。
【0017】
このような構成とすることで、昇降装置の周囲へのカバーの設置を容易に行うことができる。
【0018】
前記壁部の下端から下方に突出する複数の突出部をさらに有し、前記昇降装置の周囲に配置した際に、前記壁部の下端は、前記突出部の接地面から離間している態様としてもよい。
【0019】
上記の構成とすることで、接地面に対してカバーが移動しやすくなるため、昇降装置に含まれる可動部品が下方に移動し、傾斜部と接触した場合に、可動部品から受ける横方向の力を利用してカバーが移動しやすくなり、カバーの破損の可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、昇降装置の周囲の物品との接触を防ぎつつ、昇降装置による自身の破損も防ぐことが可能な昇降装置用保護カバーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る保護カバーを手術台の昇降装置の周囲に配置した例を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る保護カバーを手術台の昇降装置の周囲に配置した状態を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る保護カバーの概略構成図である。
図4図4(a)、図4(b)、図4(c)は、第1壁板を説明する図である。
図5図5(a)、図5(b)、図5(c)は、第2壁板を説明する図である。
図6図6は、第1壁板及び第2壁板の配置例を示す図である。
図7図7(a)、図7(b)は、第1壁板と第2壁板の連結について説明する図である。
図8図8(a)、図8(b)は、手術台への保護カバーの取り付けを説明する図である。
図9図9(a)~図9(f)は、昇降装置の下降動作に対する保護カバーの動作を説明する図である。
図10図10(a)、図10(b)は、昇降装置の下降動作に対する保護カバーの動作を説明する図である。
図11図11(a)、図11(b)は、保護カバーの変形例を説明する図である。
図12図12(a)、図12(b)は、保護カバーの変形例を説明する図である。
図13図13(a)、図13(b)は、保護カバーの変形例を説明する図である。
図14図14は、保護カバーの変形例を説明する図である。
図15図15は、保護カバーの要部の一例を示す図であり、実線で表した部分が保護カバーの要部に相当する。
図16図16は、保護カバーの要部の一例を示す図であり、実線で表した部分が保護カバーの要部に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
[保護カバーの概略構成]
図1図3は、一実施形態に係る昇降装置用保護カバーの概略構成について説明する図である。保護カバー1は、昇降装置用の保護カバーである。図1及び図2では、昇降式の手術台の昇降装置の周囲に保護カバー1を配置した例を示している。以下の実施形態では昇降装置が手術台に適用される例について説明するが、昇降装置を適用する装置の種類等は、特に限定されない。
【0024】
図1及び図2に示されるように、手術台9は、基台91と、基台91上に設けられる昇降装置92と、昇降装置92上に配置されるテーブル93と、を含んで構成される。
【0025】
基台91上に設けられた昇降装置92は、テーブル93を上下方向に昇降させる機能を有する。テーブル93は患者を載置する領域である。
【0026】
基台91は、床上に設けられる。基台91の下方には、手術台9の移動時に使用されるキャスタ94が取り付けられる。また、基台91内には油圧発生装置が収納されていてもよい。
【0027】
昇降装置92は、基台91上で垂直方向に伸縮可能に組み合わされる複数本のロッド(図示せず)と、ロッドを伸縮させる液圧シリンダ装置である油圧シリンダ装置(図示せず)と、ロッド及び油圧シリンダ装置等を囲む複数の角筒体92a,92b,92cを具備する。油圧シリンダ装置の駆動でロッドが伸縮することにより、角筒体92a,92bは垂直方向に高さを変え、テーブル93は所望の高さの位置へと昇降する。テーブル93寄りから順に(すなわち上方から)、四角形の筒状である角筒体92a,92b,92cがこの順に同一の軸線上に並んでいる。また、角筒体92a,92b,92cの順に外径が小さくなっている。したがって、ロッドが縮む場合には、角筒体92a,92b,92cは互いに重なるように移動する。
【0028】
患者を支持するテーブル93は、人体の腰、脚、背等に対応して複数の支持板に分割され、互いに連結手段(図示せず)によって連結されている。連結手段は、連結する支持板同士を回動可能となっている。これにより、テーブル93は患者が保つべき姿勢に応じた形状とすることができる。
【0029】
テーブル93は、昇降装置92に対して連結される。テーブル93は昇降装置92に対して回転可能であってもよい。その場合、テーブル93と昇降装置92との間には、テーブルを回動可能に支持する回動軸が設けられてもよく、テーブル93を回動させるための駆動装置が設けられていてもよい。
【0030】
保護カバー1は、手術台9の基台91上において、昇降装置92の周囲の全周を囲うように設けられる。保護カバー1は、例えば、樹脂材料によって形成される。
【0031】
図1及び図2に示されるように、保護カバー1は、角筒体92c等と同様に平面視において四角形の筒状とされていて、角筒体92cを構成する4つの外面に沿って延びる4つの平面を有する形状とされている。より詳細には、図2及び図3等に示されるように、保護カバー1は、対向配置される一対の第1壁板10A,10Bと、同じく対向配置される一対の第2壁板20A,20Bと、を組み合わせて構成されている。第1壁板10A,10Bは同一形状の板状部材である第1壁板10によって構成され、第2壁板20A,20Bは同一形状の板状部材である第2壁板20によって構成されている。以下の実施形態では、第1壁板10及び第2壁板20について個別に説明した後、これらを組み合わせて構成される保護カバー1の詳細構成について説明する。
【0032】
[第1壁板]
図4(a)、図4(b)、図4(c)に示されるように、第1壁板10は、本体部11と、本体部11から突出する一対の係合部12と、を含んで構成される。
【0033】
本体部11は、一部に凹凸を有する板状の部材である。本体部11は、一対の主面11a,11bを有している。一対の主面11a,11bは、上下方向に対して左右方向が長い矩形状とされている。なお、本体部11の左右方向の長さは、昇降装置92の角筒体の大きさに応じて設定される。この点は後述する。
【0034】
また、本体部11には、主面11aにおいて一部が突出するように凹凸が形成されていて、図4(c)に示すように、上方から下方に向かうにつれて徐々に主面11aから突出するように形成された傾斜部13として構成されている。傾斜部13は、主面11aを左右方向で見たときの中央付近に設けられ、左右方向の長さが本体部11の長さに対して2/3程度とされている。また、傾斜部13は、上方ではその幅が狭く、下方に向かうにつれて徐々に広がる形状となっている。なお、傾斜部13の幅とは、本体部11の平坦な主面11aに対して突出している部分を主面11aに対向する方向から見たときの左右方向の長さである。図4(a)に示されるように、傾斜部13は、左右方向において中央に平坦な傾斜面が設けられている。平坦な傾斜面の法線N11は、平面視において主面11aの法線N10と重なる方向に延びる。傾斜面は、上方ではその幅が狭く、下方に向かうにつれて徐々に広がる台形状となっている。また、傾斜部13の左右方向の両端には、上述の平坦な傾斜面から連続した曲面の傾斜面が形成されている。両端に設けられる曲面は、それぞれ平面視における法線N12が主面11aの法線N10とは異なる方向(外方)に広がり、且つ、傾斜面が本体部11の端部寄りを向くように設けられる。また、端部の曲面の左右方向についても、上方ではその幅が狭く、下方に向かうにつれて徐々に広がる形状となっている。
【0035】
傾斜部13の傾斜角度(垂直方向に対する傾斜角度)は、例えば、1°~45°程度とされる。ただし、傾斜角度は、保護カバー1の重量、保護カバー1の表面の特性(滑りやすさ)、保護カバー1の基台91上での移動のしやすさ等に基づいても調整され得る。
【0036】
本体部11は、厚みが一様な部材として構成されている。そのため、図4(b)に示すように、本体部11の主面11bは、傾斜部13の傾斜に対応したくぼみの凹部14が形成されている。ただし、本体部11の厚みが一様ではなく、凹部14が設けられない構成であってもよい。
【0037】
また、本体部11の左右方向の両端部は、傾斜面15が形成されている。傾斜面15の角度は、主面11a,11bの延在方向に対して45°とされている。
【0038】
係合部12は、主面11aの左右方向の両端部において、傾斜面15よりも中央寄りに設けられる。係合部12は、主面11aから突出するように設けられる概略矩形状の部材である。ただし、係合部12と主面11aとの境界部分には、図4(c)に示すように上方から延びるスリット16が形成されている。また、スリット16の下方は係合部12と主面11aとの接続部12aとなる。また、図4(b)に示すように、係合部12の主面11aの中央寄りの端面は、係合部12の端部(図4(b)において上方に位置する端部)から主面11aに向かうにつれて徐々に係合部12の厚みが大きくなるように形成された曲面12bと、曲面12bの中央寄りの端部からさらに主面11aに向かうにつれて徐々に係合部12の厚みが小さくなるように形成された平坦な傾斜面12cとによって形成されている。傾斜面12cの角度は、主面11a,11bの延在方向に対して45°とされている。
【0039】
本体部11の主面11aには、傾斜部13と一対の係合部12それぞれとの間に凸状の凸部17が設けられる。すなわち、主面11aには2つの凸部17が設けられる。凸部17は、第2壁板20の係合部と対向する位置に設けられていて、第1壁板10と第2壁板20とを連結する際にこれらの連結を強固にするロック部として機能するが、この点は後述する。
【0040】
[第2壁板]
図5(a)、図5(b)、図5(c)に示されるように、第2壁板20は、本体部21と、本体部21から突出する一対の係合部22と、を含んで構成される。
【0041】
本体部21は、一部に凹凸を有する板状の部材である。本体部21は、一対の主面21a,21bを有している。一対の主面21a,21bは、上下方向に対して左右方向が長い矩形状とされている。なお、本体部21の左右方向の長さは、昇降装置92の角筒体の大きさに応じて設定される。この点は後述する。本体部21の上下方向の長さは、後述の突出部28が設けられる部分を除いて、第1壁板10の本体部11と同一とされている。本実施形態では、第1壁板10のほうが、第2壁板20よりも左右方向に長い形状である場合について説明する。
【0042】
本体部21には、主面21aにおいて一部が突出するように凹凸が形成されていて、図5(c)に示すように、上方から下方に向かうにつれて徐々に主面21aから突出するように形成された傾斜部23として構成されている。傾斜部23は、主面21aを左右方向で見たときに中央付近に設けられ、左右方向の長さが本体部21の長さに対して2/3程度とされている。また、傾斜部23は、上方ではその幅が狭く、下方に向かうにつれて徐々に広がる形状となっている。なお、傾斜部23の幅とは、本体部21の平坦な主面21aに対して突出している部分を主面21aに対向する方向から見たときの左右方向の長さである。図5(a)に示されるように、傾斜部23は、左右方向において中央に平坦な傾斜面が設けられている。平坦な傾斜面の法線N21は、平面視において主面21aの法線N20と重なる方向に延びる。傾斜面は、上方ではその幅が狭く、下方に向かうにつれて徐々に広がる台形状となっている。また、傾斜部23の左右方向の両端には、上述の平坦な傾斜面から連続した曲面の傾斜面が形成されている。両端に設けられる曲面は、それぞれ平面視における法線N22が主面21aの法線N20とは異なる方向(外方)に広がり、且つ、傾斜面が本体部21の端部寄りを向くように設けられる。また、端部の曲面の左右方向についても、上方ではその幅が狭く、下方に向かうにつれて徐々に広がる形状となっている。
【0043】
傾斜部23の傾斜角度(垂直方向に対する傾斜角°)は、例えば、1°~45°程度とされる。ただし、傾斜角度は、保護カバー1の重量、保護カバー1の表面の特性(滑りやすさ)、保護カバー1の基台91上での移動のしやすさ等に基づいても調整され得る。
【0044】
本体部21は、厚みが一様な部材として構成されている。そのため、図5(b)に示すように、本体部21の主面21bは、傾斜部23の傾斜に対応したくぼみの凹部24が形成されている。ただし、本体部21の厚みが一様ではなく、凹部24が設けられない構成であってもよい。
【0045】
また、本体部21の左右方向の両端部は、傾斜面25が形成されている。傾斜面25の角度は、主面21a,21bの延在方向に対して45°とされている。
【0046】
本体部21の左右方向の両端部近傍には、傾斜部23を含む本体部21よりも下方に突出する突出部28が設けられる。さらに突出部28の下面28aは曲面とされている。突出部28は、保護カバー1を設置した際に、保護カバー1の設置面(例えば基台91の表面)と当接する接地部として機能する。
【0047】
係合部22は、主面21aの左右方向の両端部において、傾斜面25よりも中央寄りに設けられる。係合部22は、主面21aから突出するように設けられる概略矩形状の部材である。ただし、係合部22と主面21aとの境界部分には、図5(c)に示すように下方から延びるスリット26が形成されている。また、スリット26の上方は係合部22と主面21aとの接続部22aとなる。また、図5(b)に示すように、係合部22の主面21aの中央寄りの端面は、係合部22の端部(図5(b)において上方に位置する端部)から主面21aに向かうにつれて徐々に係合部22の厚みが大きくなるように形成された曲面22bと、曲面22bの中央寄りの端部からさらに主面21aに向かうにつれて徐々に係合部22の厚みが小さくなるように形成された平坦な傾斜面22cとによって形成されている。傾斜面22cの角度は、主面21a,21bの延在方向に対して45°とされている。
【0048】
[保護カバー]
上述の第1壁板10及び第2壁板20を組み合わせることによって、保護カバー1が形成される。保護カバー1の組み立て方法及び組み立て後の状態について、説明する。
【0049】
図6に示すように、一対の第1壁板10A,10Bを対向配置すると共に、一対の第2壁板20A,20Bを対向配置した状態で連結させた状態が保護カバー1となる。組み立てる際には、第1壁板10A,10Bは、それぞれの主面11a同士が対向するように、すなわち、傾斜部13同士が対向するように配置される。また、第2壁板20A,20Bについても、それぞれの主面21a同士が対向するように、すなわち、傾斜部23同士が対向するように配置される。このように4枚の壁板は、それぞれの傾斜部が内側を向くような状態で矩形環状に配置される。この状態で隣接する壁板同士を連結する。
【0050】
図7(a)及び図7(b)は、隣接する壁板同士の連結例として、第1壁板10Aと第2壁板20Aとを連結する状態を説明する図である。壁板同士の連結には、それぞれの係合部のスリットが用いられる。
【0051】
上述したように、第1壁板10Aの係合部12と主面11aとの間には、上方にスリット16が設けられている。一方、第2壁板20Aの係合部22と主面21aとの間には、下方にスリット26が設けられている。そこで、まず、図6等に示すように、第1壁板10Aに対して第2壁板20Aが上方になり、且つ、第1壁板10Aの主面11aと第2壁板20Aの主面21aとのなす角度が90°となるように配置する。このとき、上方から見たときに、第1壁板10Aのスリット16と第2壁板20Aのスリット26とが重なる位置とする。この状態で、上下方向において第1壁板10Aに対して第2壁板20Aが近付くように移動させると、図7(a)に示すように、第1壁板10Aのスリット16に対して第2壁板20Aの接続部22aが入り込み、第2壁板20Aのスリット26に対して第1壁板10Aの接続部12aが入り込む状態となる。
【0052】
図7(a)に示す状態から、さらに、上下方向において第1壁板10Aと第2壁板20Aとが同じ高さとなるように移動させると、図7(b)に示すように、第1壁板10Aのスリット16に対して第2壁板20Aの接続部22aが完全に入り込み、第2壁板20Aのスリット26に対して第1壁板10Aの接続部12aが完全に入り込む状態となる。この状態で、第1壁板10Aと第2壁板20Aとが連結された状態となる。なお、図7(a)に示す状態から、図7(b)に示す状態に変化する過程において、第2壁板20Aの係合部22が第1壁板10Aの主面11aに設けられた凸部17に対して乗り上げた状態となる。このため、凸部17が係合部22を押圧することになる。
【0053】
図7(b)に示す状態では、第1壁板10Aの係合部12の傾斜面12cと、第2壁板20Aの係合部22の傾斜面22cとが当接した状態となっている。このとき、傾斜面12c,22cの当接面は、主面11a,21aのどちらからも45°傾斜した状態となっている。また、凸部17によって係合部22が押圧されている力を受けて、傾斜面22cは傾斜面12cへ向かう力がかかっている状態となる。このように、凸部17によって係合部22が押圧されている力を受けて、係合部12,22間が実質的に押し合う状態となる。さらに、第1壁板10Aの本体部11の傾斜面15と第2壁板20Aの本体部21の傾斜面25とも対向した状態となり、互いに押し合う状態となっている。これらの力の作用から、第1壁板10Aと第2壁板20Aとが強固に連結された状態となる。
【0054】
なお、第1壁板10Aと第2壁板20Aとの連結を解除する場合には、上述の手順と逆の手順を辿ればよい。すなわち、第1壁板10Aに対して第2壁板20Aが上方となるように、相対位置を変化させる。このとき、第2壁板20Aの係合部22が凸部17に対して乗り上げた状態から、凸部17と重ならない位置となるまで、第1壁板10Aを下方へ押し下げることによって、第1壁板10Aを移動させると、凸部17による係合部22への押圧がなくなるため、第1壁板10Aと第2壁板20Aとを容易に分離させることができる。第2壁板20Aの下方には接地部として機能する突出部28が設けられている一方、第1壁板10Aの下方には突出部に対応する部分が設けられていないため、第1壁板10Aと第2壁板20Aとを連結した状態で接地させると、第1壁板10Aの下端よりも下方に隙間が存在することになる。この隙間を利用して、第2壁板20Aに対して第1壁板10Aが下方へ移動するように第1壁板10Aを移動させることで、凸部17が係合部22を押圧する状態を解除することができる。
【0055】
図7では、第1壁板10Aと第2壁板20Aとの連結について示しているが、第2壁板20Aと第1壁板10Bとの連結も同様に行うことができる。この結果、第1壁板10A、第2壁板20A、及び第1壁板10Bを連結することができる。図8(a)、図8(b)では、上記の3枚の壁板を連結した状態で昇降装置92の周囲に配置した状態を示している。3枚の壁板を連結した状態では、残り1枚の第2壁板20Bが連結されていない状態であるため、平面視において略コの字状となっている。そこで、図8(a)に示すように、第1壁板10A,10Bの間の空間を昇降装置92が通るように、連結後の3枚の壁板を移動させることで、第1壁板10A、第2壁板20A、及び第1壁板10Bに囲われた空間に昇降装置92を配置した状態を形成することができる。この状態で、図8(b)に示すように、第1壁板10A及び第1壁板10Bそれぞれの係合部12に対して第2壁板20Bの一対の係合部22が係合するように、第2壁板20Bを上方から移動させて、第2壁板20Bを第1壁板10A及び第1壁板10Bに対して連結させる。これにより、図3に示すように、平面視で矩形且つ環状の保護カバー1が構成され、図2に示すように、第1壁板10A,10B及び第2壁板20,20Bが昇降装置92の角筒体92cの周囲に配置される状態が形成される。
【0056】
上述のように4枚の壁板を組み合わせた結果、図3に示すように、保護カバー1は内面に周方向に沿って複数の平坦面を含む環状の壁部2を有する。すなわち、第1壁板10A,10B、第2壁板20A,20Bによって、保護カバー1における壁部2が形成される。このとき、第1壁板10A,10Bそれぞれの主面11a、及び、第2壁板20A,20Bそれぞれの主面21aのうち、各面に形成される傾斜部を除く領域が壁部2における平坦面となる。また、第1壁板10A,10Bそれぞれにおける傾斜部13と、第2壁板20A,20Bそれぞれにおける傾斜部23と、が壁部2に設けられた傾斜部となる。このとき、傾斜部13,23は、昇降装置92の下降方向に向かうにつれて徐々に内方に突出するといえる。また、傾斜部13,23は、昇降装置92の下降方向に向かうにつれて壁部2の中心との距離が小さくなるように傾斜しているともいえる。なお、壁部2の中心とは、平面視における壁部2の中心であり壁部2の外形を基準とした図形における幾何中心に相当する。
【0057】
なお、保護カバー1を昇降装置92から取り外す際には、上述の手順とは逆の手順を辿る。具体的には、第1壁板10A及び第1壁板10Bを第2壁板20A,20Bと比べて下方へ押し下げることによって、第2壁板20A(または第2壁板20B)をその他の壁板から分離することができる。その後、略コの字状に連結された状態の3枚の壁板を昇降装置92の周囲から移動させる。その上で、第1壁板10A,10Bに対して第2壁板20B(または第2壁板20A)を上方に移動させることによって、3枚の壁板の連結を解除することによって、保護カバー1を4枚の壁板に分離することができる。
【0058】
保護カバー1における基台91との接地位置は、第2壁板20A,20Bのそれぞれに設けられている突出部28となる。換言すると、突出部28以外の壁部の下端、すなわち、第1壁板10A,10Bそれぞれの本体部11の下端、及び、第2壁板20A,20Bの本体部21の下端は、いずれも、保護カバー1の載置面、つまり基台91の上面から離間した状態となる。さらに、突出部28の下面28aは曲面とされているため、下面28a全体が基台91の上面と接するのではなく、その一部のみが接地する状態となっている。保護カバー1は、ある程度軽量となるように設計される。そのため、載置面に対する保護カバー1と接地位置が少なくされていることで、保護カバー1と接地面に対して移動しやすくなる。
【0059】
なお、保護カバー1の寸法は、昇降装置92のうち保護カバー1と干渉し得る部位の大きさによって決定される。テーブル93が最も低くなるように昇降装置92が最大下降位置となるように下降動作を行ったとき、角筒体92cの外周を囲うように角筒体92bが下降した状態となる。本実施形態で説明する例では、昇降装置92の角筒体92aは、保護カバー1と同じ高さ位置となるまでは下降しない条件とするが、必ずしもこの条件とは限らない。本実施形態で説明する条件では、昇降装置92が最大下降位置となるように下降動作を行ったときに、角筒体92b,92cが保護カバー1と同じ高さ位置となり得る。このような場合、保護カバー1において対向配置される第1壁板10A,10Bの傾斜部13同士の距離は角筒体92bの短辺における外径よりも大きく、第2壁板20A,20Bの傾斜部23同士の距離は角筒体92bの長辺における外径よりも大きくされる。このような大きさとなるように、保護カバー1の各部の大きさを設定した場合、テーブル93が上昇するように昇降装置92が動作した状態、すなわち、角筒体92bが上方に移動した状態では、保護カバー1と角筒体92cとの間に空間がある程度できることになる。
【0060】
ここで、図9及び図10を参照しながら、保護カバー1の機能について説明する。図1,2等に示すように、保護カバー1は、昇降装置92の設置場所でもある基台91上において、昇降装置92の周囲に設けられる。テーブル93が上昇するように昇降装置92が動作した状態では、昇降装置92の角筒体92cの外面と保護カバー1とが対向する状態となる。上述したように、保護カバー1と角筒体92cとの間に空間がある程度形成され、且つ、保護カバー1が軽量であるため、保護カバー1は、昇降装置92との相対位置が変化しやすい状態となっている。本実施形態で説明するように手術台9の基台91上に保護カバー1を配置した場合、基台91付近には、手術台9の動作用のフットステップやその他の機材が設けられることも多く、周囲の機材の移動等に伴って保護カバー1の位置も変化し得る。これに対して、保護カバー1は、昇降装置92の下降動作を利用して、その位置を調整することが可能となっている。なお、テーブル93を下降させるための動作を昇降装置92の下降動作といい、具体的には、角筒体92bが下降する動作を示す。
【0061】
図9は、角筒体92bの下降動作に対する保護カバー1の動作の一例として、第1壁板10Bの動作を模式的に示したものである。図9(a)及び図9(b)は角筒体92bの下降前を示し、図9(c)及び図9(d)は角筒体92bの下降途中を示し、図9(e)及び図9(f)は角筒体92bの下降後を示している。
【0062】
図9(a)及び図9(b)に示すように、角筒体92bが下降する前は、角筒体92cが第1壁板10Bと対向している。上述のように、保護カバー1は角筒体92cに対してはある程度余裕がある寸法で設計がされているため、角筒体92cの中心と保護カバー1の中心とが同じ位置になるように保護カバー1を配置した条件では、保護カバー1と角筒体92cとの間には空間ができるはずである。ただし、保護カバー1が基台91上で移動した場合には、図9(b)に示すように、例えば、第1壁板10Bの傾斜部13の下端(最も突出している部分)と角筒体92cとが接触した状態となることが想定される。
【0063】
上記の状態で、角筒体92bが下降してくると、角筒体92bと傾斜部13とが干渉し得る。昇降装置92は上述のように油圧シリンダ装置等によって駆動されるため、角筒体92bとの接触によって上方から保護カバーが押し込まれて変形する可能性がある。これに対して、図9(c)に示すように保護カバー1と角筒体92bとが接触した場合、第1壁板10Bの傾斜部13が角筒体92bの下方へ向かう力を受ける。ただし、第1壁板10Bの傾斜部13は、角筒体92bの移動方向である上下方向に対して傾斜しているため、図9(d)に示すように、下方向への力F1と、横方向の力F2とを受けることになる。力F2を受けた第1壁板10Bは、基台91上を水平方向へ移動する。第1壁板10Bが水平方向へ移動することによって、傾斜部13との接触位置が変化しながら角筒体92bが下降する。その結果、図9(e)、図9(f)に示すように、角筒体92bによって保護カバー1が押し潰されることなく、角筒体92bの下降動作を完了させることができる。
【0064】
図9では、第1壁板10Bと角筒体92bとの動作のみを示しているが、ほかの壁板についても角筒体92bと接触した際には、角筒体92bと傾斜部13との接触によって生じる横方向の力を受けて移動し得る。上述したように、保護カバー1は、対向配置される第1壁板10A,10Bの傾斜部13同士の距離、及び、第2壁板20A,20Bの傾斜部23同士の距離は、いずれも角筒体92bの外径よりも大きく設定されている。したがって、保護カバー1が適切な位置に配置されている場合には、角筒体92bと保護カバー1とは干渉しない条件とされる。保護カバー1の一部が角筒体92bとの接触によってその位置を変更すると、保護カバー1の他の部分も当然ながら移動することになる。このとき、どの傾斜部13,23が角筒体92bと接触したとしても、上述のように横方向への力F2に対応する力を受けて移動し得るので、最終的には全ての傾斜部13,23が角筒体92bと接触しない状態になる。また、仮にこれらが接触していたとしても下向きの力F1を受けない状態となる。したがって、角筒体92bの下向きの力F1を受けて保護カバー1が押し潰されることなく、保護カバー1が適切な位置に移動する。
【0065】
図10は上述のように角筒体92bとの接触に応じて保護カバー1が移動する例を示している。図10(a)は、角筒体92bの下降前の状態を示している。このとき、保護カバー1と同じ高さ位置には角筒体92cしか存在しないため、保護カバー1は、角筒体92cと接触して変形しない範囲で自由に移動し得る。図10(a)に示す例では、第1壁板10Aの傾斜部13、第1壁板10Bの傾斜部13、及び、第2壁板20Bの傾斜部23が角筒体92cと接触している状態を示している。
【0066】
ただし、図10(a)に示す傾斜部13,23の配置は、平面視において角筒体92bと重なる位置となっている。そのため、保護カバー1がこの位置から移動できない場合、角筒体92bの下降によって傾斜部13,23が押し潰されることが想定される。
【0067】
これに対して、上述したように、保護カバー1は傾斜部13,23と角筒体92bとが接触した場合に、横方向の力F2を受けて基台91上を移動可能とされている。その結果、角筒体92bの下降に伴って保護カバー1が移動し、図10(b)に示すように、第1壁板10Aの傾斜部13、第1壁板10Bの傾斜部13、及び、第2壁板20Bの傾斜部23がそれぞれ角筒体92bと接触した状態ではあるものの、角筒体92bとは重ならない位置まで移動する。その結果、保護カバー1は角筒体92bに押し潰されることなく保護カバー1としての機能を発揮し続けることができる。
【0068】
上述したように、傾斜部13,23が上方から下方に向かうにつれて左右の幅が広くなっていて、且つ、傾斜部13の左右方向の両端には、上述の平坦な傾斜面から連続した曲面による傾斜面が形成されている。傾斜面は、それぞれ本体部11,21の端部寄りを向くように設けられている。このような構成を有することで、角筒体92bが下降して傾斜部13,23の曲面に当接した際に、曲面のカーブを利用して横方向の力F2(図9(d)参照)が働く方向を調整することができる。すなわち、傾斜部13,23と角筒体92bとが当接した際には、横向きの力F2がどのように保護カバー1に働くかは、平面視における傾斜部13,23の表面が横向きの力F2をどのような角度で受けるかによって変化する。端部の曲面が横向きの力を受けた際には、そのカーブに沿って保護カバー1が受ける力が変化するため、角筒体92bに対して保護カバー1の角度が変化しやすくなり、平面視における角筒体92bに対する保護カバー1の回転(図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態への変化)が促進される。
【0069】
なお、角筒体92bが上昇した場合には、保護カバー1は再び図10(a)に示すように平面視で角筒体92bと重なるような位置に移動する可能性もある。その場合も、角筒体92bが下降する際に保護カバー1が移動し、図10(b)に示すように角筒体92bと重ならない状態に戻る。
【0070】
保護カバー1の寸法としては、昇降装置92の周囲に保護カバー1を配置した際に、昇降装置92に対して保護カバー1が回転しないように設定され得る。例えば、本実施形態に示す例では、昇降装置92の周囲に保護カバー1を配置した際、保護カバー1の1つの壁板(例えば、第1壁板10A)は、昇降装置92の角筒体92b,92cの特定の面と対向した状態となる、保護カバー1を構成する特定の壁板と、昇降装置92を構成する角筒体の特定の面とが対面した状態が継続する寸法を設定してもよい。すなわち、特定の壁板が角筒体の他の面と対面した状態まで保護カバー1が移動できない程度に保護カバー1の各部の寸法を設定してもよい。このような構成とすることで、図9及び図10に示したように、保護カバー1と角筒体との接触による保護カバー1の位置の調整が可能となることに加えて、昇降装置92と周囲の物品との接触をより確実に防ぐことができる。
【0071】
保護カバー1の寸法が上述の構成より大きい場合、昇降装置92に対して保護カバー1が回転する可能性がある。保護カバー1が回転したとしても、下降する角筒体92bと保護カバー1の傾斜部とが接触した場合には、上述したように保護カバー1は角筒体92bに押し潰されないような位置へ移動することが可能である。ただし、保護カバー1が昇降装置92に対して回転可能な程度の大きさであるということは、保護カバー1と昇降装置92の角筒体92cとの間の空間が大きくなっている。そのため、隙間に想定外の物品等が入り込むリスクが生じる。このような観点から、保護カバー1の寸法が大きすぎると、昇降装置92に対して保護カバー1が回転しない程度に設定されることで、保護カバー1としての性能がより高められ得る。
【0072】
また、保護カバー1において接地部として機能する突出部28が全て基台91上にある間は、保護カバー1は基台91上を水平移動する。しかし、いずれかの突出部28が基台91上から外れた位置に移動してしまった場合には、保護カバー1が基台91に対して傾いてしまい、下降する角筒体92bと保護カバー1の傾斜部とが接触した場合に、適切な位置に保護カバー1が移動できなくなる可能性がある。これに対して、上記実施形態で説明したように、保護カバー1が基台91上、すなわち、床面とは異なる接地面上に配置される場合、昇降装置92の周囲の保護カバー1が最大限移動した場合であっても、接地面から外れない程度の大きさに保護カバー1を設定することで、保護カバー1の想定外の移動を防ぐことができ、角筒体92bによって保護カバー1が押し潰される可能性を低減させることができる。
【0073】
[保護カバーの変形例]
上述のように、保護カバー1は、傾斜部13,23を有していることで、角筒体92bが下降した際に角筒体92bから受ける力を横方向にも分散させることで、保護カバー1が自律的に位置を調節することを実現している。このように、保護カバーは少なくとも角筒体が下降する際の下向きの力を横方向へ分散させることが可能な傾斜部を有していればよい。このような観点で、図11図14を参照しながら、保護カバーの変形例を説明する。
【0074】
図11に示す保護カバー1Aは、第1壁板10A,10Bにおいて、複数の傾斜部として3つの傾斜部13が設けられ、第2壁板20A,20Bにおいて2つの傾斜部23が設けられている例である。上述したように傾斜部13,23は、角筒体92bと接触した際に下向きの力の一部を横方向へ変換することが可能となるように設けられていればよい。したがって、傾斜部13,23を設ける位置、数は適宜変更することができる。図10に示す保護カバー1では、角筒体92bと傾斜部13,23とが干渉する位置は、例えば、各壁板の横方向の端部の近傍となり得る。したがって、保護カバー1のように、大きな傾斜部13,23を各壁板に1つずつ設けることに変えて、保護カバー1Aのように各壁板の周縁部近傍毎に傾斜部13,23を個別に設けることとしてもよい。また、保護カバー1Aのように傾斜部13,23を各壁板の中央付近に設ける構成をさらに追加することで、傾斜部13,23と角筒体92bとの接触に伴う保護カバー1Aの横方向の移動だけでは保護カバー1Aが適切な位置に移動できない程度まで、保護カバー1Aの位置が大きく変化することを防ぐことができる。なお、保護カバー1Aの過度な移動を抑制するという観点では、中央に設けるのは傾斜部13,23とは異なる形状の凸部であってもよい。
【0075】
なお、1つの壁板に対して傾斜部を複数設ける場合、その高さ位置は互いに異なっていてもよいが、角筒体92bと接触した際に保護カバーが角筒体92bに押し潰されない位置に移動できるような配置であることが求められる。そのため、一例として、図11に示す例のように、複数の傾斜部は略同一の高さ位置に設けることが想定される。
【0076】
図12に示す保護カバー1Bは、第1壁板10A,10B、第2壁板20A,20Bの全てにおいて、傾斜部13,23に代えて、複数の傾斜部として機能する球状突起部19,29が設けられている例である。球状突起部19,29は、半球状の突起であって、第1壁板10A,10Bの本体部11の主面11aにおいてそれぞれ3つずつ、第2壁板20A,20Bの本体部21の主面21aにおいてそれぞれ2つずつ同じ高さ位置に設けられている。
【0077】
上述の保護カバー1,1Aでは、傾斜部13,23は、角筒体92bと接触した際に下向きの力の一部を横方向へ変換する。図12に示す球状突起部19,29の上方は、傾斜部13,23と同様の傾斜面を有しているといえる。つまり、球状突起部19,29は傾斜部13,23と同様の機能を有し、傾斜部13,23と同様に角筒体92bと接触した際に下向きの力の一部を横方向へ変換する機能を有する。したがって、保護カバー1Bについても保護カバー1,1Aと同様に、角筒体92bが下降する際の下向きの力を横方向へ分散させることができ、角筒体92bによって押し潰されることを防ぐことができる。
【0078】
なお、球状突起部19,29についても、その大きさ及び配置は適宜変更することができる。また、球状であることに代えて、例えば、上下方向で見たときには断面が略球状であり、左右方向は長尺状に延びる突起等を傾斜部の代わりに設ける構成としてもよい。
【0079】
図13に示す保護カバー1Cは、隣接する壁板同士の境界部分に傾斜部を設ける構成を示している。具体的には、第1壁板10Aと第2壁板20Aとの間、第2壁板20Aと第1壁板10Bとの間、第1壁板10Bと第2壁板20Bとの間、第2壁板20Bと第1壁板10Aとの間、に、それぞれ傾斜部31が設けられている。傾斜部31は、例えば、保護カバー1等に示す係合部12,22の形状を変更することによって形成することができる。傾斜部31は、上方では幅が狭く、下方に向かうにつれて広くなっている。なお、傾斜部31の幅とは、第1壁板と第2壁板とを連結した場合に、第1壁板の主面と第2壁板の主面とによって形成される2面よりも壁部2の中心との距離が小さくなっている部分の左右方向の長さである。なお、傾斜部31の幅は、水平方向であり、且つ、第1壁板及び第2壁板の主面に対して45°となる角度から傾斜部31を見たときの左右方向の長さである。また、図13(a)等に示すように、傾斜部31と本体部11,21等の境界面はなめらかな曲面によって連続するように形成されている。このように、壁板同士の境界部分に傾斜部31を設ける場合であっても、角筒体92bと傾斜部31とが接触した際には、角筒体92bによる下向きの力の一部を横方向へ変換することができるので、上述の保護カバー1等と同様に、角筒体92bによってカバーが押し潰されることを防ぐことができる。
【0080】
図14に示す保護カバー1Dは、第1壁板10A,10B、第2壁板20A,20Bの上方に傾斜部32が設けられている例を示している。傾斜部32は、第1壁板10A,10Bの本体部11及び第2壁板20A,20Bの本体部21のそれぞれから連続して上方に伸び、且つ、上方に向かうにつれて本体部21よりも外方に広がるように伸びている。換言すると、傾斜部32は、下方の壁板との接続位置へ向かうにつれて、壁部2の中心との距離が小さくなるように傾斜しているといえる。また、傾斜部32は、徐々に内方に突出するように伸びている。このように傾斜部32は、本体部11,21よりも内方に突出している必要はなく、保護カバーにおいて本体部11,21が最も内方となるように配置されていてもよい。このような保護カバー1Dの場合は、角筒体92bが上方から下降してくる際に、まず、上方の傾斜部32と接触する。このとき、傾斜部32によって角筒体92bによる下向きの力の一部を横方向へ変換することができるので、保護カバー1Dの位置が適切に調整される。傾斜部32の下方の第1壁板10A,10Bの本体部11及び第2壁板20A,20Bの本体部21は、それぞれ垂直方向に延びているので、傾斜部32と角筒体92bとの接触によって保護カバー1Dの位置が調整された後は、保護カバー1Dが角筒体92bからより強い力を受けることは防がれる。そのため、保護カバー1Dのように壁部の上方に傾斜部32が設けられている場合であっても、上述の保護カバー1等と同様に、角筒体92bによってカバーが押し潰されることを防ぐことができる。
【0081】
[作用]
上記の保護カバー1によれば、環状の壁部2が昇降装置92の周囲を囲うように配置されるため、昇降装置92と周囲の物品との接触が防がれる。また、壁部2には、上方から下方に向けて、すなわち、昇降装置92の可動部品(上記実施形態では、角筒体92b)の下降方向に向かうにつれて徐々に内方に突出する傾斜部13,23、または、壁部2の中心との距離が小さくなるように傾斜している傾斜部13,23が設けられている。そのため、仮に昇降装置92に含まれる可動部品が下方に移動し、傾斜部13,23と接触した場合に、可動部品から受ける下方向への力を横方向へ分散させることができる。そのため、上記の保護カバー1によれば、昇降装置との接触に由来するカバーの破損を防ぐことができる。
【0082】
保護カバー1では、傾斜部13,23は、複数の平坦面のそれぞれに設けられる。この場合、可動部品と保護カバー1の位置関係がどのように変化した場合でも傾斜部13,23が可動部品と接触する状態を実現でき、横方向へ力を分散させることが可能となる。そのため、保護カバー1と昇降装置92との位置関係の変化によらず、カバーの破損をより確実に防ぐことができる。ただし、傾斜部は複数の平坦面のすべてに設けられていない構成であってもよい。例えば、昇降装置の構成によっては、昇降装置の昇降動作が行われても、昇降装置の外形が変化しない面が存在する場合がある。このような場合、外形が変化しない面に対向する壁部には傾斜部を設けない構成としてもよい。また、例えば、特定方向への保護カバーの移動が規制されている等の理由によって、保護カバーと昇降装置との干渉が発生しないような面が存在する場合にも傾斜部を設けない構成としてもよい。
【0083】
また、上記の保護カバー1は、昇降装置に対してこれまで適用されていた保護部材と比べて、設置等が容易であることに加えて、昇降装置自体への取り付け加工等が不要であるという点で優位である。従来から筒体同士の相対移動によって構成される昇降装置においても、周囲の物品との接触を防ぐための保護部材が検討されていた。しかしながら、従来検討されていた保護部材は、昇降装置またはその周辺の機材等に何らかの方法で固定することが想定されていた。そのため、昇降装置または周辺機材に対して保護部材を固定するための加工を行う必要があり、場合によってはネジ穴加工等の物理的に不可逆的な加工が必要となる場合もあった。これに対して、上記の保護カバー1は、昇降装置92を含む手術台9に対して保護カバー1を設置するための加工等は不要であり、昇降装置が設置されている環境を問わず保護カバー1を適用することが可能である。
【0084】
保護カバー1A,1Bのように、傾斜部は、1つの平坦面に対して複数設けられていてもよい。このような構成であっても、平坦面に対して複数設けられた傾斜部のうちの1つが可動部品と接触する状態を実現できるため、カバーの破損をより確実に防ぐことができる。
【0085】
また、上記の保護カバー1では、第1壁板10A,10B、第2壁板20A,20Bが環状に配置され、各壁板が1つの平坦面を形成している。このように、壁部2は、互いに分離可能な周方向に並ぶ複数の板状部材によって構成され、1つの板状部材が、1つの平坦面を形成してもよい。この場合、保護カバーの形状を昇降装置の形状に応じた形とすることができ、昇降装置用保護カバーをコンパクトに形成することができる。
【0086】
また、上記の保護カバー1では、第1壁板10A,10Bは同一形状であり、第2壁板20A,20Bは同一形状とされている。この場合、2種類の壁板によって保護カバーが形成されているため、第1壁板10A,10Bとが入れ違ってもよい。つまり、4枚の壁板を2種類の壁板として取り扱えばよいため、取り扱いが容易になり、且つ、組み立てが簡単になる。さらに、このように壁板の形状を統一しておくことで、他の保護カバーとの間での壁板の流用がしやすくなることも想定される。例えば、第1壁板及び第2壁板のいずれか一方を横方向の長さを変更した別の壁板に変更することで、保護カバー1を別の外径の昇降装置92に応じた大きさに調整することができる。したがって、壁板の種類を少なくしておくことで、別の昇降装置への適用もしやすくなる。
【0087】
また、壁板同士を連結する場合、上記のように周方向の両端に係合部12,22を有し、前記係合部12,22と前記壁部となる本体部11,21との間にスリット16,26が設けられており、隣接する壁板同士は、一方の前記壁部となる本体部11(または21)の前記スリット16(または26)に他方の前記壁部となる本体部21(または11)が差し込まれて前記係合部12,22同士が係合させることとしてもよい。このような構成とすることで、壁板同士の連結・分解が容易となるため、昇降装置92の周囲へのカバーの設置を容易に行うことができる。
【0088】
さらに、壁部2の下端から下方に突出する複数の接地部としての突出部28をさらに有していてもよい。また、このとき、昇降装置92の周囲に配置した際に、壁部2の下端は、接地面から離間していてもよい。このような構成とすることで、接地面に対してカバーが移動しやすくなるため、昇降装置に含まれる可動部品が下方に移動し、傾斜部と接触した場合であっても、可動部品から受ける横方向の力を利用してカバーが移動しやすくなることから、カバーの破損の可能性を低減することができる。特に、突出部28のように下面28aが曲面である場合、接地面に対するカバーの移動がよりスムーズになる。
【0089】
さらに、手術台9が載置される手術室などでは、床面や基台91の周囲に液体が散乱するようなことも多い。このような場合に、接地部としての突出部28を除く保護カバー1の下端が接地面から離間した状態とされていることで、保護カバー1の下端に沿って液体が流れる、または下端の周囲に液体が滞留する、という状態を回避しやすくなる。
【0090】
また、手術台9等、清浄度を高めることが求められる場所での保護カバー1の使用を考えた場合、使用前後の洗浄の容易性が重要となる。上記の保護カバー1は、傾斜部13,23の周囲が曲面によって形成されているため、傾斜部の周囲に異物等が付着する可能性を低減させることができる。
【0091】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも例示した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0092】
例えば、上記の昇降装置92は、断面が矩形状の角筒体が上下方向に移動する例について説明した。しかしながら、昇降装置において上下方向に移動する筒体は、断面形状が四角形ではなく、例えば、三角形または六角形等の四角形以外の多角形となる場合もある。このような場合、組み合わせる壁板の枚数を変更することで、上記の保護カバー1と同様の機能を有する保護カバーとすることができる。なお、組み合わせる壁板の枚数に応じて、係合部12,22の突出方向は適宜変更してもよい。
【0093】
また、保護カバー1における4枚の壁板は、全てが分離可能である必要はなく、一部が連結された状態の板状部材が準備されていてもよい。例えば、2枚の壁板(例えば、第1壁板10Aと第2壁板20A)が連結された状態の所謂L字型の壁板を組み合わせて保護カバーを構成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1,1A~1D…保護カバー、2…壁部、9…手術台、10,10A,10B…第1壁板、11…本体部、12…係合部、13…傾斜部、16…スリット、17…凸部、19…球状突起部、20,20A,20B…第2壁板、21…本体部、22…係合部、23…傾斜部、26…スリット、28…突出部、29…球状突起部、31,32…傾斜部、91…基台、92…昇降装置、92a~92c…角筒体、93…テーブル。
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