(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136173
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法、アクリル系合成繊維の処理方法、及びアクリル系合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/402 20060101AFI20230922BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20230922BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20230922BHJP
D06M 13/188 20060101ALI20230922BHJP
D06M 101/28 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
D06M13/402
D06M13/17
D06M15/53
D06M13/188
D06M101:28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041647
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA05
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA17
4L033BA71
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】製剤安定性及び臭気低減効果を向上できるとともに、アクリル系合成繊維用処理剤が付着された繊維の膠着低減効果を向上できるアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物等を提供する。
【解決手段】本発明の一つであるアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、下記の脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記の有機カルボン酸(C)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有する。脂肪酸アミド化合物(A):炭素数12以上22以下の脂肪酸と有機アミンとをアミド化させた化合物。有機カルボン酸(C):炭素数3以上22以下の脂肪酸。溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記の有機カルボン酸(C)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
脂肪酸アミド化合物(A):炭素数12以上22以下の脂肪酸と有機アミンとをアミド化させた化合物。
有機カルボン酸(C):炭素数3以上22以下の脂肪酸。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項2】
前記溶媒(S)が、水である請求項1に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項3】
前記アクリル系合成繊維用処理剤中において、前記脂肪酸アミド化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記有機カルボン酸(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸アミド化合物(A)を20質量部以上80質量部以下、前記ノニオン界面活性剤(B)を10質量部以上50質量部以下、及び前記有機カルボン酸(C)を2質量部以上40質量部以下の割合で含有する請求項1又は2に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項4】
前記アクリル系合成繊維用処理剤100質量部に対して、前記溶媒(S)を150質量部以上1000質量部以下の割合で含有する請求項1~3のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項5】
溶媒に、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上9質量%以下にすることを特徴とするアクリル系合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法。
【請求項6】
溶媒に、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加して得られたアクリル系合成繊維用処理剤の希釈液をアクリル系合成繊維に付与することを特徴とするアクリル系合成繊維の処理方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアクリル系合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とするアクリル系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の脂肪アミド化合物、所定の有機カルボン酸等を含むアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物、アクリル系合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法、アクリル系合成繊維の処理方法、及びアクリル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系合成繊維は、例えば湿式紡糸法で製造される場合、ゲル膨潤状態の繊維束にアクリル系合成繊維用処理剤を付着させて、その後、乾燥緻密化工程を経て製造される。ここで使用されるアクリル系合成繊維用処理剤は、製剤の安定性が優れるものであり、繊維束を構成している単繊維同士の膠着を低減するものであることが要求される。また、近年のアクリル系合成繊維の製造では、生産環境の負荷低減の対策が求められている。
【0003】
従来より、例えば特許文献1に開示のアクリル系合成繊維用処理剤が知られている。かかるアクリル系合成繊維用処理剤は、所定のポリオキシアルキレンブロック共重合体、油脂エチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレングリコールアルケニルエーテル、及び有機リン酸エステル塩を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1は、アクリル系合成繊維用処理剤と溶媒を含むアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の製剤安定性及び臭気低減効果、並びにアクリル系合成繊維用処理剤が付着された繊維の膠着低減効果が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、所定の脂肪アミド化合物、ノニオン界面活性剤、所定の有機カルボン酸、及び所定の溶媒を含むアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物が正しく好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物は、下記の脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記の有機カルボン酸(C)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤と、下記の溶媒(S)とを含有することを要旨とする。
【0008】
脂肪酸アミド化合物(A):炭素数12以上22以下の脂肪酸と有機アミンとをアミド化させた化合物。
有機カルボン酸(C):炭素数3以上22以下の脂肪酸。
【0009】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
前記アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、水であってもよい。
【0010】
前記アクリル系合成繊維用処理剤中において、前記脂肪酸アミド化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記有機カルボン酸(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸アミド化合物(A)を20質量部以上80質量部以下、前記ノニオン界面活性剤(B)を10質量部以上50質量部以下、及び前記有機カルボン酸(C)を2質量部以上40質量部以下の割合で含有してもよい。
【0011】
前記アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物において、前記アクリル系合成繊維用処理剤100質量部に対して、前記溶媒(S)を150質量部以上1000質量部以下の割合で含有してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のアクリル系合成繊維用処理剤の希釈液の調製方法は、溶媒に、前記アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上9質量%以下にすることを要旨とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のアクリル系合成繊維の処理方法は、溶媒に、前記アクリル系合成繊維用処理剤含有組成物を添加して得られたアクリル系合成繊維用処理剤の希釈液をアクリル系合成繊維に付与することを要旨とする。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のアクリル系合成繊維は、前記アクリル系合成繊維用処理剤が、付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるとアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物の製剤安定性及び臭気低減効果を向上できるとともに、アクリル系合成繊維用処理剤が付着された繊維の膠着低減効果を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係るアクリル系合成繊維用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)を具体化した第1実施形態について説明する。処理剤含有組成物は、下記の脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記の有機カルボン酸(C)を含有するアクリル系合成繊維用処理剤(以下、「処理剤」という)と、下記の溶媒(S)とを含有する。
【0017】
(脂肪酸アミド化合物(A))
本実施形態の処理剤含有組成物に供される脂肪酸アミド化合物(A)は、炭素数12以上22以下の脂肪酸と有機アミンとをアミド化させた化合物である。かかる化合物を使用することにより、特にアクリル系合成繊維用処理剤が付着された繊維の膠着低減効果を向上できる。脂肪酸アミド化合物(A)の原料となる炭素数12以上22以下の脂肪酸としては、後述する有機アミンとのアミド結合により縮合した脂肪酸アミド化合物を生成できるものであれば、特に限定されない。脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0018】
飽和脂肪酸の具体例としては、例えばドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)等が挙げられる。
【0019】
不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0020】
なお、脂肪酸は、実際の有機アミンとの縮合反応時において、活性化させた酸成分、例えばカルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、カルボン酸アジド、活性エステル等として適用されてもよい。
【0021】
脂肪酸アミド化合物(A)の原料となる有機アミンは、上述した脂肪酸とのアミド結合により縮合した脂肪酸アミド化合物を形成できる化合物であれば特に限定されない。有機アミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。また、モノアミンであっても、ジアミン、トリアミン等のポリアミンであってもよい。
【0022】
モノアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族モノアミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(4)アンモニア等が挙げられる。本発明においては、有機アミンにはアンモニアも含まれるものとする。
【0023】
ポリアミンの具体例としては、例えば(1)エチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、フェニレンジアミン、ピペラジン等のジアミン、(2)スペルミジン、ジエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等のトリアミン、(3)スペルミン、トリエチレンテトラミン等のテトラアミン等が挙げられる。
【0024】
脂肪酸アミド化合物(A)は、上述した炭素数12以上22以下の脂肪酸と有機アミンとの縮合反応させることによって得られる。縮合反応は、公知の方法により行うことができる。また、縮合反応時において、必要により酸又はアルカリ等の触媒を使用してもよく、反応が促進する温度まで加熱してもよい。
【0025】
脂肪酸アミド化合物(A)の具体例としては、例えばラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、ジエチレントリアミンのモノラウリン酸アミド、ジエチレントリアミンのジラウリン酸アミド、ジエチレントリアミンのジパルミチン酸アミド、ジエチレントリアミンのモノステアリン酸アミド、ジエチレントリアミンのジステアリン酸アミド、ジエチレントリアミンのジオレイン酸アミド、ジエチレントリアミンのジベヘニン酸アミド等が挙げられる。
【0026】
これらの脂肪酸アミド化合物(A)は、一種類の脂肪酸アミド化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上の脂肪酸アミド化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸アミド化合物(A)の含有割合の下限は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。かかる含有割合が15質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維の膠着低減効果をより向上できる。かかる脂肪酸アミド化合物(A)の含有割合の上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。かかる含有割合が85質量%以下の場合、処理剤含有組成物の製剤安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
(ノニオン界面活性剤(B))
ノニオン界面活性剤(B)は、処理剤に配合されることにより処理剤含有組成物の製剤安定性を向上できる。
【0028】
ノニオン界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として脂肪族アミン類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と炭素数3以上6以下の環状構造を有する多価アルコール等との部分エステル化合物、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とのブロック共重合体等が挙げられる。
【0029】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0030】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)レシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
ノニオン界面活性剤(B)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0032】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0033】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪族アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0034】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド等が挙げられる。
【0035】
ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とのブロック共重合体は、親水性の低いポリオキシプロピレン鎖及び親水性の高いポリオキシエチレン鎖を有し、界面活性作用を有するものであれば特に限定されない。分子中におけるポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の数は特に限定されず、例えば1つのポリオキシプロピレン鎖と1つのポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体であってもよく、ポリオキシプロピレン鎖とそれを挟む2つのポリオキシエチレン鎖からなるポロキサマー系界面活性剤であってもよい。ポリオキシエチレン鎖を形成するエチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上200モル以下が挙げられる。ポリオキシプロピレン鎖を形成するプロピレンオキサイドの付加モル数は特に限定されず、例えば5モル以上100モル以下が挙げられる。
【0036】
ノニオン界面活性剤(B)の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(n=5:エチレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ))ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=14)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(n=20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(n=8)ステアラート、ポリオキシエチレン(n=14)オレアート、ポリオキシエチレン(n=30)オレアート、ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルアミンエーテル、ポリオキシエチレン(n=19)ステアリルアミンエーテル、ポリオキシエチレン(n=14)オレイルアミンエーテル、ポリオキシエチレン(n=30)オレイルアミンエーテル、ポリオキシエチレン(n=16)ステアリン酸アミドエステル、ポリオキシエチレン(n=24)ステアリン酸アミドエステル、ポリオキシエチレン(n=17)オレイン酸アミドエステル、ポリオキシエチレン(n=28)オレイン酸アミドエステル、ポリオキシエチレン(n=10)ノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン(n=200)ひまし油エステル、数平均分子量5000のポリオキシアルキレンブロック共重合体(エチレンオキサイド(以下「EO」という)/プロピレンオキサイド(以下、「PO」という)=30/70、モル比)、数平均分子量10000のポリオキシアルキレンブロック共重合体(EO/PO=70/30、モル比)等が挙げられる。
【0037】
これらのノニオン界面活性剤(B)は、一種類のノニオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は二種以上のノニオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。かかる含有割合が5質量%以上の場合、処理剤含有組成物の製剤安定性をより向上できる。かかるノニオン界面活性剤(B)の含有割合の上限は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。かかる含有割合が55質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維の膠着低減効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0038】
(有機カルボン酸(C))
本実施形態の処理剤含有組成物に供される有機カルボン酸(C)は、炭素数3以上22以下の脂肪酸である。かかる化合物を使用することにより、処理剤の臭気を低減しながら製剤安定性を向上できる。脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、一価の脂肪酸であっても多価カルボン酸であってもよい。また、水酸基を有するオキシカルボン酸であってもよい。
【0039】
一価の飽和脂肪酸の具体例としては、例えばプロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)等が挙げられる。一価の不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0040】
炭素数3以上22以下の多価カルボン酸の具体例としては、例えば(1)マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸、(2)アコニット酸等のトリカルボン酸、(3)安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、(4)トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、(5)ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0041】
オキシカルボン酸の具体例は、例えばクエン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、リシノール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
これらの有機カルボン酸(C)は、一種類の有機カルボン酸を単独で使用してもよいし、又は二種以上の有機カルボン酸を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0042】
処理剤中において、有機カルボン酸(C)の含有割合の下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。かかる含有割合が1質量%以上の場合、処理剤含有組成物の製剤安定性をより向上できる。かかる有機カルボン酸(C)の含有割合の上限は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。かかる含有割合が45質量%以下の場合、処理剤の臭気低減効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0043】
前記処理剤中において、脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び有機カルボン酸(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸アミド化合物(A)を20質量部以上80質量部以下、前記ノニオン界面活性剤(B)を10質量部以上50質量部以下、及び前記有機カルボン酸(C)を2質量部以上40質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0044】
(溶媒(S))
本実施形態の処理剤含有組成物に供される溶媒(S)は、大気圧下における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。脂肪族アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。これらの溶媒は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0045】
これらの中で、処理剤含有組成物の製剤安定性及び取り扱い性に優れる観点から水を含むものが好ましい。
処理剤含有組成物において、前記処理剤の全質量100質量部に対して、溶媒(S)を好ましくは100質量部以上1000質量部以下、より好ましくは150質量部以上1000質量部以下の割合で含有する。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる範囲に規定することより、処理剤含有組成物の製剤安定性をより向上できる。また、処理剤含有組成物をさらに溶媒で希釈する際の均質性、操作性を向上できる。
【0046】
上記第1実施形態の処理剤含有組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)第1実施形態の処理剤含有組成物では、上述した脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び上述した有機カルボン酸(C)を含有する処理剤と、上述した溶媒(S)とを含有するよう構成した。したがって、処理剤含有組成物の製剤安定性及び臭気低減効果を向上できる。また、処理剤が付着された繊維の膠着低減効果を向上できる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、本発明に係るアクリル系合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態のアクリル系合成繊維は、第1実施形態の処理剤が、アクリル系合成繊維に付着している。かかるアクリル系合成繊維は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤含有組成物を添加して得られたアクリル系合成繊維用処理剤の希釈液(以下、「希釈液」という)をアクリル系合成繊維に付与するアクリル系合成繊維の処理方法により得られる。
【0049】
希釈液の調製方法は、溶媒に、第1実施形態の処理剤含有組成物を添加し、希釈液中の不揮発分濃度を好ましくは0.01質量%以上9質量%以下にする方法である。なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる。また、溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。
【0050】
希釈液をアクリル系合成繊維に付与する工程としては、紡糸工程、延伸工程、更には延伸後の各工程が挙げられる。湿式紡糸して延伸及び水洗した後のゲル膨潤状態にある繊維束に付着することが好ましい。付着方法は、浸漬法、スプレー法、ローラー給油法、ガイド給油法等のいずれでもよいが、浸漬法又はスプレー法が好ましい。処理剤をゲル膨潤状態にある繊維束に付着する場合には通常、処理剤を付着した後、熱処理して乾燥緻密化が行われる。このときの熱処理は、好ましくは120℃以上180℃以下の温度で1分以上7分以下の条件で行われる。繊維は、乾燥緻密化された後、通常は再度熱処理を行ってもよい。このときの熱処理の温度は、乾熱の場合は180℃以下、湿熱の場合は130℃以下である。処理剤の付着量は、アクリル系合成繊維に対して好ましくは0.02質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上1質量%以下である。
【0051】
処理剤を付着するアクリル系合成繊維としては、特に限定されないが本発明においては、例えば(1)アクリロニトリルを40質量%以上、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アリルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩等の非ハロゲン系ビニルモノマーを60質量%以下の割合で共重合したアクリル繊維、(2)塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲン系ビニルモノマーと、アクリロニトリルとを共重合したモダアクリル繊維、(3)モダアクリル繊維にハロゲン系化合物等を添加したもの等が含まれる。
【0052】
上記第2実施形態のアクリル系合成繊維の効果について説明する。
(2-1)第2実施形態のアクリル系合成繊維は、上述した脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び上述した有機カルボン酸(C)を含有する処理剤が付着している。したがって、繊維の膠着低減効果を向上できる。
【0053】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・処理剤、処理剤含有組成物、及び希釈液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、品質保持のための安定化剤や制電剤、上記以外の油性成分、上記以外の界面活性剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の通常用いられる成分を含有してもよい。なお、溶媒以外のその他成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から処理剤中において20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0054】
・上記実施形態のアクリル系合成繊維が適用される分野は、特に限定されない。例えばセーター等のニット製品、毛布、クッション、毛糸、カーペット、かつら、ウィッグ等が挙げられる。
【実施例0055】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0056】
試験区分1(処理剤含有組成物の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、脂肪酸アミド化合物(A)としてラウリン酸アミド(A-1)45部(%)、ノニオン界面活性剤(B)としてポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテル(B-1)22部(%)及びポリオキシエチレン(n=14)オレイルエーテル(B-2)22部(%)、有機カルボン酸(C)としてラウリン酸(C-2)7部(%)及びクエン酸(C-10)4部(%)含む処理剤を調製した。さらに処理剤100部と溶媒(S)として水(S-1)435部を混合し、実施例1の処理剤含有組成物を調製した。
【0057】
(実施例2~23、比較例1~7)
実施例2~23、比較例1~7の処理剤含有組成物は、実施例1と同様にして、原料として脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、有機カルボン酸(C)、溶媒(S)、その他成分(D)を使用し、表1に示した割合で含むように調製した。
【0058】
脂肪酸アミド化合物(A)の種類と含有量、ノニオン界面活性剤(B)の種類と含有量、有機カルボン酸(C)の種類と含有量、水(S-1)の含有量、その他成分(D)の種類と含有量を、表1の「脂肪酸アミド化合物(A)」欄、「ノニオン界面活性剤(B)」欄、「有機カルボン酸(C)」欄、「溶媒(S)」欄、「その他成分(D)」欄にそれぞれ示す。なお、その他成分(D)の含有量は、成分(A)~成分(C)の合計100部に対する含有量(部)を示す。また、水(S-1)の含有量は、成分(A)~成分(C)の合計100部に対する含有量(部)を示す。
【0059】
【0060】
表1の区分欄に記載する脂肪酸アミド化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、有機カルボン酸(C)、溶媒(S)、及びその他成分(D)の詳細は以下のとおりである。
(脂肪酸アミド化合物(A))
A-1:ラウリン酸アミド
A-2:パルミチン酸アミド
A-3:ステアリン酸アミド
A-4:オレイン酸アミド
A-5:ベヘニン酸アミド
A-6:ジエチレントリアミンのモノラウリン酸アミド
A-7:ジエチレントリアミンのジラウリン酸アミド
A-8:ジエチレントリアミンのジパルミチン酸アミド
A-9:ジエチレントリアミンのモノステアリン酸アミド
A-10:ジエチレントリアミンのジステアリン酸アミド
A-11:ジエチレントリアミンのジオレイン酸アミド
A-12:ジエチレントリアミンのジベヘニン酸アミド
rA-1:オクチル酸アミド
rA-2:リグノセリン酸アミド
(ノニオン界面活性剤(B))
B-1:ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテル
B-2:ポリオキシエチレン(n=14)オレイルエーテル
B-3:ポリオキシエチレン(n=20)オレイルエーテル
B-4:ポリオキシエチレン(n=8)ステアラート
B-5:ポリオキシエチレン(n=14)オレアート
B-6:ポリオキシエチレン(n=30)オレアート
B-7:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルアミンエーテル
B-8:ポリオキシエチレン(n=19)ステアリルアミンエーテル
B-9:ポリオキシエチレン(n=14)オレイルアミンエーテル
B-10:ポリオキシエチレン(n=30)オレイルアミンエーテル
B-11:ポリオキシエチレン(n=16)ステアリン酸アミドエステル
B-12:ポリオキシエチレン(n=24)ステアリン酸アミドエステル
B-13:ポリオキシエチレン(n=17)オレイン酸アミドエステル
B-14:ポリオキシエチレン(n=28)オレイン酸アミドエステル
B-15:ポリオキシエチレン(n=10)ノニルフェノールエーテル
B-16:ポリオキシエチレン(n=200)ひまし油エステル
B-17:数平均分子量5000のポリオキシアルキレンブロック共重合体(EO/PO=30/70、モル比)
B-18:数平均分子量10000のポリオキシアルキレンブロック共重合体(EO/PO=70/30、モル比)
(有機カルボン酸(C))
C-1:プロピオン酸
C-2:ラウリン酸
C-3:パルミチン酸
C-4:ステアリン酸
C-5:オレイン酸
C-6:ベヘニン酸
C-7:乳酸
C-8:リンゴ酸
C-9:酒石酸
C-10:クエン酸
rC-1:酢酸
(溶媒(S))
S-1:水
(その他成分(D))
D-1:ポリオキシエチレン(n=16)セチルエーテルのリン酸エステルのカリウム塩
試験区分2(製剤安定性)
試験区分1で得られた処理剤含有組成物について、製剤安定性を評価した。
【0061】
各処理剤含有組成物を調製後、室温で24時間放置した後、外観を目視で以下の基準で評価した。その結果を表1の「製剤安定性」欄に示す。
・製剤安定性の評価基準
◎(良好):うるみ及び分離が見られず均一である場合
○(可):若干うるみ又は分離がみられるが問題にならない場合
×(不可):製剤分離が激しく問題である場合
試験区分3(臭気低減の評価)
各処理剤含有組成物100gを密栓し25℃×65%RHで24時間温調したのち蓋をあけて臭気を嗅いだ。臭気試験は10人の試験者に対して行った。その結果を表1の「臭気低減」欄に示す。なお、「-」は、製剤安定性が劣るため評価を実施していない。
【0062】
・臭気低減の評価基準
◎(良好):2人以下が臭気有りと判定。
○(可):3~6人が臭気有りと判定。
【0063】
×(不可):7人以上が臭気有りと判定。
試験区分4(膠着低減)
・モダアクリル繊維への処理剤の付着
アクリロニトリル/塩化ビニル/塩化ビニリデン/スチレンスルホン酸ナトリウム=60/34.5/5/0.5の割合で共重合したアクリル共重合体を濃度25%になるようにジメチルスルホキシドに溶解し、紡糸原液とした。この紡糸原液を25000ホールの口金を通し、ジメチルスルホキシド/水=65/35(%)の20℃の水溶液中に紡出して、5.5倍に延伸した後、水洗してゲル膨潤状態の繊維を得た。不揮発分濃度が5%となるように、水を用いて希釈液を調製し、前記したゲル膨潤状態の繊維に各希釈液をスプレー給油法で付着した後、表面温度140℃のローラー式乾燥機で緻密化して繊維束とした。
【0064】
・膠着低減の評価
上記の繊維束を5mmにカットし、そのカットした繊維束0.5gを500mlの水溶液中に投入して、スターラーで1分間、100rpmで撹拌した後、1分間放置した。沈降した繊維の分線条体を観察して、径0.5mmの繊維の数を膠着繊維として数え、下記の基準で評価した。結果を表1の「膠着低減」欄に示す。なお、「-」は、製剤安定性が劣るため評価を実施していない。
【0065】
・膠着低減の評価基準
◎(良好):膠着繊維が0個
○(可):膠着繊維が1~10個
×(不可):膠着繊維が11個以上
以上表1の結果からも明らかなように、本発明によれば、製剤安定性及び臭気低減効果に優れる処理剤含有組成物が得られる。また、処理剤が付着された繊維の膠着低減効果を向上できる。