(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136181
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】モータ及びファン装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20230922BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230922BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02K5/10 A
H02K5/22
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041660
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永元 里司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信吾
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB19
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC04
5H605CC10
5H605DD09
5H605DD16
5H605DD32
5H605EA06
5H605EB17
5H605EB34
5H605EC01
5H605EC02
5H605EC08
5H605EC18
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB17
5H607BB25
5H607CC05
5H607FF04
5H607JJ10
(57)【要約】
【課題】モータの大型化及び複雑化を避けつつ、少なくともロータヨークを回転自在に支持する軸受の被水を防止したモータを提供する。
【解決手段】前記モータブラケットは、ベース壁と、前記ベース壁の表面側で前記シャフトを支持するシャフト支持部と、前記シャフト支持部を囲む位置において、前記ベース壁から前記ステータに向けて突出し、内部にシール材が充填された円筒形状の周壁とを備え、前記ステータは、前記シャフトを囲む位置で前記シャフトの軸方向に延びて、先端が前記周壁の内部に充填された前記シール材に進入する円筒形状の円筒部と、前記円筒部の外周面の周方向に離間した位置から径方向外向きに突出して、各々に前記コイルが巻装された複数のティースとを備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータブラケットと、
前記モータブラケットの表面側に固定されたシャフトと、
ベアリングを介して前記シャフトに回転自在に支持されたロータヨークと、
周方向に間隔を隔てて前記ロータヨークに固定された複数の永久磁石と、
複数の前記永久磁石の内側で前記モータブラケットの表面側に固定されて、前記ロータヨークを回転させるための磁界を発生する複数のコイルが巻装されたステータとを備えるモータにおいて、
前記モータブラケットは、
ベース壁と、
前記ベース壁の表面側で前記シャフトを支持するシャフト支持部と、
前記シャフト支持部を囲む位置において、前記ベース壁から前記ステータに向けて突出し、内部にシール材が充填された円筒形状の周壁とを備え、
前記ステータは、
前記シャフトを囲む位置で前記シャフトの軸方向に延びて、先端が前記周壁の内部に充填された前記シール材に進入する円筒形状の円筒部と、
前記円筒部の外周面の周方向に離間した位置から径方向外向きに突出して、各々に前記コイルが巻装された複数のティースとを備えることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記モータブラケットの裏面側に配置されて、複数の前記コイルによる磁界の発生を制御するドライバ回路と、
前記モータブラケットを厚み方向に貫通して、複数の前記コイルそれぞれを前記ドライバ回路に接続する複数のターミナルとを備え、
前記周壁の内側の前記ベース壁には、複数の前記ターミナルそれぞれを通過させる複数の貫通孔が形成され、
前記ステータは、前記円筒部の内周面の周方向に離間した位置において、複数の前記ターミナルそれぞれを保持する複数のターミナル保持部を備え、
前記ターミナルは、
前記貫通孔を通じて前記モータブラケットの裏面側に突出して、前記ドライバ回路に接合されるドライバ側接合部と、
前記貫通孔を通じて前記モータブラケットの表面側に突出して、前記ターミナル保持部に保持される被保持部と、
前記モータブラケットの表面側の一部が折り返されて、前記シール材の内部で前記コイルに接合されるコイル側接合部とを備えることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記ターミナルを通過させると共に、前記貫通孔を閉塞するグロメットを備えることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のモータにおいて、
前記周壁の内側の前記ベース壁は、
複数の前記貫通孔が形成された第1壁と、
前記第1壁より前記周壁の先端に近い第2壁とを備えることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のモータと、
前記モータにより回転駆動されて、冷却風を生成するファンとを備えることを特徴とするファン装置。
【請求項6】
請求項5に記載のファン装置において、
前記ロータヨークは、
前記ステータより径方向の外側に配置されて、複数の前記永久磁石を内周面で支持する円筒形状の外周壁と、
前記ステータより径方向の内側に配置されて、前記ベアリングを介して前記シャフトに回転自在に支持された円筒形状の内周壁と、
前記モータブラケットと反対側において前記ステータと軸方向に対向配置されて、前記外周壁及び前記内周壁を連結すると共に、前記ファンに連結される円盤形状の連結壁とを備え、
前記内周壁を囲む位置において、前記ファン及び前記連結壁の間を封止する封止部材を備えることを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及びモータを搭載したファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物や不良品の削減などを目指す技術が知られている。
【0003】
ステータの外側に配置されたロータヨークを回転させるアウターロータ型のブラシレスモータは、例えば、車載の冷却ファンを駆動するファンモータとして利用される。このような用途で使用されるモータには、外部からの液滴(例えば、雨水)の浸入を防止する対策が必要になる(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-40934号公報
【特許文献2】特開2017-11791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一例として、ファン、ブラケット、ロータをラップさせてラビリンスシールを形成する方法では、構成部品の形状が複雑になってコストが増加すると共に、モータが大型化するという課題がある。他の例として、液滴の浸入経路にパッキンを配置する方法では、パッキンが内部で捩じれないための追加の対策が必要になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、モータの大型化及び複雑化を避けつつ、少なくともロータヨークを回転自在に支持する軸受の被水を防止したモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、モータブラケットと、前記モータブラケットの表面側に固定されたシャフトと、ベアリングを介して前記シャフトに回転自在に支持されたロータヨークと、周方向に間隔を隔てて前記ロータヨークに固定された複数の永久磁石と、複数の前記永久磁石の内側で前記モータブラケットの表面側に固定されて、前記ロータヨークを回転させるための磁界を発生する複数のコイルが巻装されたステータとを備えるモータにおいて、前記モータブラケットは、ベース壁と、前記ベース壁の表面側で前記シャフトを支持するシャフト支持部と、前記シャフト支持部を囲む位置において、前記ベース壁から前記ステータに向けて突出し、内部にシール材が充填された円筒形状の周壁とを備え、前記ステータは、前記シャフトを囲む位置で前記シャフトの軸方向に延びて、先端が前記周壁の内部に充填された前記シール材に進入する円筒形状の円筒部と、前記円筒部の外周面の周方向に離間した位置から径方向外向きに突出して、各々に前記コイルが巻装された複数のティースとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータの大型化及び複雑化を避けつつ、少なくともロータヨークを回転自在に支持する軸受の被水を防止したモータを得ることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るファン装置の一構成例を示す外観斜視図である。
【
図4】ロータの表面側(A)及び裏面側(B)の斜視図である。
【
図5】ステータの表面側(A)及び裏面側(B)の斜視図である。
【
図6】モータブラケット、ターミナル、グロメットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るファン装置の一態様として、例えば自動車などの車両に搭載され、ラジエータ内を流れるエンジンの冷却水などを冷却するファン装置について説明する。
【0011】
(ファン装置1の全体構成)
まず、
図1および
図2を参照して、ファン装置1の全体構成を説明する。
図1は、実施形態に係るファン装置1の一構成例を示す外観斜視図である。
図2は、モータ2とファン3との分解斜視図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、ファン装置1は、駆動源であるモータ2と、モータ2により回転駆動されて冷却風を生成するファン3とを備える。ファン装置1は、例えば、エンジンルーム内において、ラジエータと対向するように配設されている。例えば車体が水平面上に位置しているとき、ファン装置1は、モータ2のシャフト21が水平方向に延設されるように、エンジンルーム内に配置される。但し、車体が傾くと、シャフト21の延設方向も水平方向から傾くことになる。
【0013】
ファン3は、複数のネジによってモータ2に締結される。ネジは、ファン3の表側(モータ2と対向する側とは反対側)から、ファン3の中心部となるボス部31に形成されたネジ孔を通って、モータ2のロータヨーク232に締結される。なお、ファン3をモータ2に締結する締結部材として必ずしもネジを用いる必要はなく、ファン3がモータ2に締結可能であれば、ネジの数や締結部材の種類については特に制限はない。
【0014】
ファン3は、シャフト21の軸心上を回転中心としてロータ23と一体に回転するボス部31と、ボス部31の外周から放射状に張り出された複数(本実施形態では7枚)の羽根32と、隣り合う羽根32同士を先端部の側で連結する複数(本実施形態では7つ)の連結部材33とを有する。
【0015】
ボス部31は、円盤形状の円盤部311と、円盤部311の外縁からモータ2に向けて突出すると共に、複数の羽根32が取り付けられた円筒形状の周壁部312とを含む。ファン3がモータ2に取り付けられると、円盤部311はロータヨーク232の連結壁232Cに対面し、周壁部312はロータヨーク232の外周壁232Aを囲む。
【0016】
(モータ2の構成)
次に、
図3~
図6を参照して、モータ2の構成を説明する。
図3は、モータ2の縦断面図である。
図4は、ロータ23の表面側(A)及び裏面側(B)の斜視図である。
図5は、ステータ24の表面側(A)及び裏面側(B)の斜視図である。
図6は、モータブラケット13、ターミナル25U、25V、25W、グロメット26U、26V、26Wの分解斜視図である。
【0017】
図3に示すように、モータ2は、アウターロータ型のブラシレスモータ11と、ブラシレスモータ11(コイル243による磁界の発生)を制御するドライバ回路12とを含む電動モータである。
【0018】
ブラシレスモータ11は、モータブラケット13に支持されている。ブラシレスモータ11は、モータブラケット13の厚み方向の一方側(表面側)に配置されている。モータブラケット13の厚み方向の他方側(裏面側)には、複数のネジによって、ドライバケース14A、14Bが締結されている。これにより、モータブラケット13及びドライバケース14A、14Bの間には、ドライバ回路12を収容する収容空間が形成される。すなわち、ドライバ回路12は、モータブラケット13を挟んでブラシレスモータ11の構成部品21~24と反対側(モータブラケット13の裏面側)に配置されている。
【0019】
また、モータブラケット13の端部には、外部ハーネスが接続されるコネクタ15が取り付けられている。ブラシレスモータ11、ドライバ回路12、及びコネクタ15は、電気的に接続されている。
【0020】
ブラシレスモータ11は、シャフト21と、シャフト21の外周に設けられた複数のベアリング22と、シャフト21の軸心周りにベアリング22を介して回転自在に支持されたロータ23と、ロータ23と径方向に所定の間隔を隔てて固定された環状のステータ24とを有する。
【0021】
シャフト21は、モータブラケット13の表面側に固定された固定軸である。以下、モータ2の構成要素に関する説明において、シャフト21の軸方向を単に「軸方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした径方向を単に「径方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした周方向を単に「周方向」とする。
【0022】
図3及び
図4に示すように、ロータ23は、ステータ24の外周を囲むように周方向に等間隔に並んで配置された複数の永久磁石231と、複数の永久磁石231を支持すると共に、シャフト21に回転自在に支持されたロータヨーク232とを有する。
【0023】
ロータヨーク232は、シャフト21の軸心と同心になるようにモータブラケット13の表面側に配置されている。また、ロータヨーク232は、複数のベアリング22を介してシャフト21に回転自在に支持されている。さらに、
図4に示すように、ロータヨーク232は、外周壁232Aと、内周壁232Bと、連結壁232Cとを備える。
【0024】
外周壁232Aは、円筒形状の外形を呈する。また、外周壁232Aは、ステータ24より径方向の外側に配置される。さらに、
図4(B)に示すように、外周壁232Aは、複数の永久磁石231を内周面で支持している。換言すれば、複数の永久磁石231は、周方向に所定の間隔を隔てて外周壁232Aの内周面に固定されている。
【0025】
内周壁232Bは、円筒形状の外形を呈する。また、内周壁232Bは、ステータ24より径方向の内側に配置される。さらに、内周壁232Bは、複数のベアリング22を介してシャフト21に回転自在に支持される。
【0026】
連結壁232Cは、円盤形状の外形を呈する。また、連結壁232Cは、外周壁232A及び内周壁232Bの軸方向の一端同士を接続する。さらに、連結壁232Cは、ステータ24を挟んでモータブラケット13と反対側に配置される。そして、連結壁232Cは、軸方向に所定の間隔を隔ててステータ24に対向配置される。
【0027】
ステータ24は、外周壁232A、内周壁232B、連結壁232C、及びモータブラケット13で囲まれた空間に収容されている。また、
図3に示すように、ステータ24は、複数の永久磁石231より径方向の内側において、モータブラケット13の表面側に固定されている。さらに、ステータ24は、径方向に所定の隙間を隔てて複数の永久磁石231に対面している。
【0028】
図3及び
図5に示すように、ステータ24は、円筒形状の円筒部241と、複数のティース242と、複数のコイル243とで構成される。複数のティース242は、円筒部241の外周面において、周方向に離間した位置から径方向外向きに突出する。複数のコイル243は、複数のティース242それぞれに巻装される。円筒部241及び複数のティース242は、軸方向に積層された複数の鋼板で構成されるステータコアと、ステータコアの外表面を覆う絶縁性のインシュレータとで構成される。
【0029】
ステータ24は、コイル243に電流が流れることにより磁界を発生する。そして、コイル243で発生した磁界と、複数の永久磁石231との間に生じる引力及び斥力によって、ロータヨーク232がシャフト21の軸心を中心として回転する。
【0030】
円筒部241は、軸方向の両端が開放された円筒形状の外形を呈する。円筒部241の内周面には、後述するターミナル25U、25V、25Wを保持するターミナル保持部244U、244V、244Wが設けられている。ターミナル保持部244U、244V、244Wは、円筒部241の内周面に、周方向に所定の間隔を隔てて取り付けられている。そして、ターミナル保持部244U、244V、244Wは、円筒部241の内側に進入するターミナル25U、25V、25Wの被保持部252U、252V、252Wを保持(固定)する。
【0031】
モータブラケット13は、ブラシレスモータ11の構成部品21~24を表面側で支持し、裏面側に取り付けられたドライバケース14A、14Bとの間に形成された収容空間にドライバ回路12を収容する。
図6に示すように、モータブラケット13は、ベース壁131と、シャフト支持部132と、周壁133とを主に備える。
【0032】
ベース壁131は、概ね平板状の部分である。シャフト支持部132は、ベース壁131の表面からステータ24に向けて突出し、シャフト21の端部を支持する。周壁133は、シャフト支持部132及び貫通孔134U、134V、134Wを囲む位置において、ベース壁131の表面からステータ24に向けて突出し、且つ周方向に連続する円筒形状の外形を呈する。すなわち、シャフト支持部132の外周面と周壁133の内周面との間には、周方向に連続する円周溝が形成されている。さらに、周壁133の内径寸法は、ステータ24の円筒部241の外形寸法より大きい。
【0033】
また、周壁133の内側のベース壁131は、リング形状の外形を呈する。そして、周壁133の内側のベース壁131は、リング形状の周方向の一部を構成する第1壁131Aと、リング形状の周方向の他の一部を構成する第2壁131Bとで構成される。本実施形態では、第1壁131A及び第2壁131Bを180°ずつとしたが、第1壁131A及び第2壁131Bの配分は、前述の例に限定されない。
【0034】
また、第2壁131Bは、軸方向において、第1壁131Aより周壁133の先端に近い位置に配置されている。換言すれば、第2壁131Bの位置における周壁133の突出量は、第1壁131Aの位置における周壁133の突出量より小さい。これにより、第1壁131A及び第2壁131Bの間には、段差が形成される。そして、第2壁131Bの位置における周壁133の内部空間の容積は、第1壁131Aの位置における周壁133の内部空間の容積より小さい。
【0035】
さらに、第1壁131Aには、貫通孔134U、134V、134Wが形成されている。貫通孔134U、134V、134Wは、ベース壁131(第1壁131A)を厚み方向に貫通する。また、貫通孔134U、134V、134Wは、シャフト支持部132の外周面(換言すれば、周壁133の内周面)に沿って、所定の間隔を隔てて形成されている。貫通孔134U、134V、134Wは、ターミナル25U、25V、25Wを通過させる。
【0036】
また、モータ2は、複数のターミナル25U、25V、25Wを備える。ターミナル25U、25V、25Wは、ドライバ回路12とコイル243とを電気的に接続する。ブラシレスモータ11は、複数のコイル243に3相(U相、V相、W相)の電力を供給するために、3つのターミナル25U、25V、25Wを有する。すなわち、ブラシレスモータ11は、3層交流モータである。モータ側ターミナル25U、25V、25Wの構成は共通するので、以下、ターミナル25Uについて説明する。
【0037】
図6に示すように、ターミナル25Uは、軸方向に延びる長尺棒状の部材である。ターミナル25Uは、長尺棒状の一端に形成されたドライバ側接合部251Uと、他端に形成された被保持部252Uと、中央部を折り返して形成されたコイル側接合部253Uとを有する。
【0038】
ドライバ側接合部251Uは、貫通孔134Uを通じてモータブラケット13の裏面側に突出して、ドライバ回路12の配線パターンに接合(例えば、溶接)される部分である。被保持部252Uは、貫通孔134Uを通じてモータブラケット13の表面側に突出して、ステータ24のターミナル保持部244Uに保持される部分である。コイル側接合部253Uは、モータブラケット13の表面側に位置する部分の一部が折り返されて、コイル243に接合(例えば、フュージング接合)される部分である。但し、ドライバ側接合部251U及びコイル側接合部253Uの接合方法の組み合わせは、前述の例に限定されない。
【0039】
さらに、モータ2は、複数のグロメット26U、26V、26Wを備える。グロメット26U、26V、26Wは、貫通孔134U、134V、134Wに取り付けられて、貫通孔134U、134V、134Wを閉塞する。また、グロメット26U、26V、26Wには、ターミナル25U、25V、25Wを通過させる貫通孔が形成されている。
【0040】
ドライバ回路12は、複数のコイル243による磁界の発生を制御する。より詳細には、ドライバ回路12は、ターミナル25U、25V、25Wを通じて、複数のコイル243にU相、V相、W相の電流を供給する。ドライバ回路12は、例えば、基板の表面に配線パターン及び複数の電子部品が実装されたものである。
【0041】
図3に示すように、モータ2を組み立てると、ステータ24の円筒部241及びターミナル保持部244U、244V、244Wの先端(モータブラケット13側の端部)が、周壁133の内部空間に進入する。また、ターミナル25U、25V、25Wは、ドライバ側接合部251U、251V、251Wがモータブラケット13の裏面側でドライバ回路12に接合され、被保持部252U、252V、252Wが円筒部241の内側に進入してターミナル保持部244U、244V、244Wに保持され、コイル側接合部253U、253V、253Wが周壁133の内部でコイル243に接合される。
【0042】
また、モータ2を組み立てた後に、周壁133の内部空間にシール材27を充填する。シール材は、例えば、水の浸入を防ぐ防水性を有する材料(例えば、熱硬化性の接着剤)で構成される。これにより、ステータ24の円筒部241及びターミナル保持部244U、244V、244Wの先端は、シール材27に進入する。また、コイル側接合部253U、253V、253Wは、シール材27の内部でコイル243に接合される。
【0043】
さらに、
図3に示すように、モータ2とファン3との間にOリング28(封止部材)を配置する。Oリング28は、内周壁232Bを囲む位置において、連結壁232Cとファン3のとの間に配置される。なお、封止部材の具体例は、ロータヨーク232及びファン3の間を通じてベアリング22の設置位置(すなわち、内周壁232Bの内側)に液滴が浸入することができれば、
図3のOリング28に限定されない。
【0044】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0045】
図3に示すように、モータ2内への液滴の浸入経路の1つとして、外周壁232Aの先端とモータブラケット13の表面との間の隙間が考えられる。但し、この隙間から浸入した液滴は、周壁133の内部空間に充填したシール材27によって、ベアリング22の設置位置(内周壁232Bの内部空間)に到達しない。これにより、ベアリング22の被水を防止することができる。
【0046】
なお、モータ2内の既存の空間を利用して周壁133を配置するので、モータ2の大型化及び複雑化を避けることができる。その結果、SDGsにおける持続可能な生産消費形態の確保に寄与する。また、モータ2とファン3との間にOリング28を配置することによって、ファン3側からもベアリング22の設置位置に液滴が到達しないので、ベアリング22の被水をさらに防止できる。
【0047】
また、上記の実施形態によれば、コイル側接合部253U、253V、253Wをシール材27の内部でコイル243に接合することによって、コイル243とコイル側接合部253U、253V、253Wとの接合部分の被水を防止することができる。
【0048】
また、上記の実施形態によれば、グロメット26U、26V、26Wで貫通孔134U、134V、134Wを閉塞することによって、貫通孔134U、134V、134Wを通じてモータブラケット13の表面側から裏面側に液滴が浸入するのを防止できる。これにより、ドライバ回路12の被水を防止できる。
【0049】
また、上記の実施形態によれば、周壁133の内側のベース壁131を、第1壁131Aと、第1壁131Aより周壁133の先端に近い第2壁131Bとにすることによって、貫通孔134U、134V、134Wの形成されていない部分の周壁133の内部空間の容積を小さくすることができる。その結果、周壁133の内部に充填するシール材27の量を削減することができる。
【0050】
さらに、上記の実施形態によれば、ターミナル25U、25V、25Wの被保持部252U、252V、252Wをステータ24の円筒部241の内側に進入させるので、モータ2を短軸化することができる。さらに、被保持部252U、252V、252Wをターミナル保持部244U、244V、244Wに保持させることによって、モータ2を組み立てた後にシール材27を充填することができる。その結果、モータ2の組立作業が簡素化される。
【0051】
なお、上記の実施形態では、エンジンで駆動される車両にファン装置1を搭載した例を説明したが、ファン装置1は、モータ、蓄電池、または燃料電池などで駆動される車両に搭載されてもよい。また、ファン装置1の用途として、ラジエータに冷却風を供給する例を説明したが、ファン装置1の用途はこれに限定されない。さらに、上記の実施形態では、モータ2の用途として、ファン3を回転駆動するファンモータの例を説明したが、モータ2の用途はこれに限定されない。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 :ファン装置
2 :モータ
3 :ファン
11 :ブラシレスモータ
12 :ドライバ回路
13 :モータブラケット
14A,14B :ドライバケース
15 :コネクタ
21 :シャフト
22 :ベアリング
23 :ロータ
24 :ステータ
25U,25V,25W :ターミナル
26U,26V,26W :グロメット
27 :シール材
28 :Oリング(封止部材)
31 :ボス部
32 :羽根
33 :連結部材
131 :ベース壁
131A :第1壁
131B :第2壁
132 :シャフト支持部
133 :周壁
134U,134V,134W :貫通孔
231 :永久磁石
232 :ロータヨーク
232A :外周壁
232B :内周壁
232C :連結壁
241 :円筒部
242 :ティース
243 :コイル
244U,244V,244W :ターミナル保持部
251U,251V,251W :ドライバ側接合部
252U,252V,252W :被保持部
253U,253V,253W :コイル側接合部
311 :円盤部
312 :周壁部