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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136183
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20230922BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20230922BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C02F1/32
B01J19/12 C
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041662
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊範
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔
【テーマコード(参考)】
4C180
4D037
4G075
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH19
4D037AA01
4D037AA09
4D037AB03
4D037BA18
4G075AA13
4G075AA15
4G075BB10
4G075BD09
4G075CA33
4G075DA02
4G075EB31
4G075FA05
4G075FB01
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC04
(57)【要約】
【課題】光源の点灯状態を外部から視認できる紫外線照射装置を提供すること。
【解決手段】紫外線照射装置は、流体を貯留するための空間を規定する貯留壁と、空間に紫外線および可視光線を同時に照射するための光源と、を有する。貯留壁は、貯留壁の他の領域よりも薄肉に形成され、光源から空間に照射された可視光線の一部を透過させるための第1透過部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に紫外線を照射するための紫外線照射装置であって、
前記流体を貯留するための空間を規定する貯留壁と、
前記空間に紫外線および可視光線を同時に照射するための光源と、
を有し、
前記貯留壁は、前記貯留壁の他の領域よりも薄肉に形成され、前記光源から前記空間に照射された可視光線の一部を透過させるための第1透過部を含む、
紫外線照射装置。
【請求項2】
前記第1透過部の少なくとも一部は、前記空間の重心を通り、前記光源から出射される紫外線および可視光線の光軸に垂直な仮想平面よりも前記光源側の前記貯留壁に配置されている、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第1透過部は、前記貯留壁の外面に配置された凹部と、前記貯留壁の内面との間の領域である、請求項1または請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記貯留壁を覆うカバーをさらに有し、
前記カバーは、前記第1透過部を透過した可視光線を透過または拡散させるための第2透過部を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記第2透過部を含む前記カバーは、1種類の材料で形成されている、請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記凹部の内部には、封止部材が前記貯留壁および前記カバーに接触するように配置されている、請求項3に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体に紫外線を照射する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を用いて液体などの流体を殺菌処理できることは広く知られている。例えば、特許文献1には、軸方向に延びる流路を流れる流体に対して軸方向に紫外線を照射して流体を殺菌する流体殺菌装置が記載されている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の流体殺菌装置は、紫外線を出射する半導体発光素子を含む光源と、殺菌対象の流体が軸方向に流れる流路を有する筐体と、を有する。光源は、筐体の軸方向の一端部に配置される。筐体は、ステンレス鋼製であり、一端部から他端部に向けて流路の断面積が徐々に大きくなるテーパ構造を有する。テーパ構造は、半導体発光素子の配向角に合わせた傾斜を有している。また、上記筐体の他端部に、流体の流れを整える整流手段が設けられている。
【0004】
特許文献1では、筐体が半導体発光素子の配向角に合わせた傾斜を有するテーパ構造を有することにより、光源から遠い位置まで紫外線を到達させることができ、かつ、整流手段で流れを整えた流体に紫外線を照射することで、流体に万遍なく紫外線が照射されるので、殺菌効果を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-98055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の流体殺菌装置では、筐体がステンレス鋼製であるため、半導体発光素子が点灯しているか否かを外部から確認できず、流体を適切に殺菌できているのか否かの判断ができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、光源の点灯状態を外部から視認できる紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る紫外線照射装置は、流体に紫外線を照射するための紫外線照射装置であって、前記流体を貯留するための空間を規定する貯留壁と、前記空間に紫外線および可視光線を同時に照射するための光源と、を有し、前記貯留壁は、前記貯留壁の他の領域よりも薄肉に形成され、前記光源から前記空間に照射された可視光線の一部を透過させるための第1透過部を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光源の点灯状態を外部から視認できる紫外線照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る紫外線照射装置の断面斜視図である。
図2図2A、Bは、厚みが異なる第1透過部における、光の波長と光の透過率または反射率との関係を示すグラフである。
図3図3は、PP、PC、PMMAにおける、光の波長と光の透過率との関係を示すグラフである。
図4図4は、実施の形態2に係る紫外線照射装置の断面斜視図である。
図5図5A~Cは、実施の形態3に係る紫外線照射装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置について、添付した図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、紫外線照射装置を流体を殺菌するための殺菌装置に適用した例について説明する。
【0012】
[実施の形態1]
(紫外線照射装置の構成)
図1は、実施の形態1に係る紫外線照射装置100の断面斜視図である。
【0013】
図1に示されるように、紫外線照射装置100は、流体に紫外線を照射するための装置であって、流体を貯留するための空間S1を規定する貯留壁110と、空間S1に紫外線および可視光線を照射するための光源130とを有する。なお、本実施の形態では、紫外線照射装置100は、貯留壁110を覆うカバー120をさらに有する。
【0014】
貯留壁110は、流体を収容するための空間S1を規定する。この後説明するように、本実施の形態に係る紫外線照射装置100では、貯留壁110は、第1透過部113を含む。貯留壁110は、主として光源130から出射された光のうち紫外線は空間S1に向けて反射させ、可視光線の一部は第1透過部113を介して外部に透過させる。貯留壁110の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。貯留壁110は、1つの部材でもよいし、2以上の部材でもよい。本実施の形態では、貯留壁110は、第1壁111と、第2壁112との2つの部材を有する。貯留壁110(第1壁111および第2壁112)により規定される空間S1の形状の例には、球形状、円柱形状、角柱形状、その他の形状が含まれる。本実施の形態では、貯留壁110(第1壁111および第2壁112)により規定される空間S1の形状は、略球形状である。第1壁111は、空間S1の一方の略半球形状を規定し、第2壁112は、空間S1の他方の略半球形状を規定する。なお、本実施の形態では、第1壁111は、後述する供給流路114の一部も規定し、第2壁112は、後述する排出流路115の一部も規定する。本実施の形態では、第1壁111は、流体の流動方向において上流側に配置されており、第2壁112は、流体の流動方向において下流側に配置されている。略球形状の空間S1は、第1壁111および第2壁112を接合することで形成される。
【0015】
貯留壁110の材料は、紫外線により劣化しにくく、かつ上記の機能を発揮できれば特に限定されない。第1壁111および第2壁112の材料は、同じでもよいし、異なっていてもよい。本実施の形態では、第1壁111および第2壁112の材料は、同じ材料である。第1壁111および第2壁112の材料の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が含まれる。第1壁111および第2壁112の材料は、紫外線を効率的に反射する観点から、PTFEが好ましい。本実施の形態では、第1壁111と、第2壁112とは、いずれもPTFEで構成されている。貯留壁110の内径は、特に限定されないが、例えば20~60mm程度である。貯留壁110の内径を20~60mm程度とすることにより、光源130として1個のUV-C LEDのみを用いた場合であっても、貯留壁110内の流体を十分に殺菌できる。
【0016】
なお、本実施の形態では、第2壁112に第1透過部113が配置されており、第2壁112および第1透過部113は一体として成形されている。また、空間S1には、供給流路114および排出流路115が接続されている。
【0017】
第1透過部113は、貯留壁110の他の領域よりも薄肉に形成された領域である。すなわち、第1透過部113は、貯留壁110の一部である。第1透過部113は、光源130から空間S1に照射された可視光線の一部を外部に透過させる。より具体的には、第1透過部113は、光源130から出射された紫外線を反射し、光源130から出射された可視光線の一部を透過させる。第1透過部113の位置は、特に限定されない。第1透過部113の少なくとも一部は、空間S1の重心を通り、かつ光源130から出射される紫外線および可視光線の光軸に垂直な仮想平面よりも光源130側の貯留壁110に配置されていることが好ましい。すなわち、第1透過部113は、光源130から照射された紫外線のうち、低い強度の紫外線が到達する位置に配置されていることが好ましい。本実施の形態では、第1透過部113は、第2壁112で規定された略半球状の空間S1を取り囲むように、第2壁112のうちの第1壁111との境界近傍に配置されている。これにより、光源130から出射された紫外線のうち、強度の高い紫外線は、第1透過部113以外の領域に直接到達するため、第1透過部113に起因する殺菌作用の減少を抑制することができる。また、第1透過部113が第2壁112の中で厚みが薄い部分に配置されているため、切削加工の加工量も減らせ、製造コストを低くすることもできる。
【0018】
第1透過部113の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、第1透過部113は、貯留壁110(第2壁112)の外面に配置された第1凹部116の内面と、貯留壁110(第2壁112)の内面との間の領域である。第1凹部116の数は特に限定されない。第1凹部116の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。本実施の形態では、第1凹部116の数は、1つである。第1凹部116の形状は、第2壁112の一部を薄肉に形成すれば特に限定されない。第1凹部116の例には、溝、窪みが含まれる。本実施の形態では、第1凹部116は、溝である。
【0019】
溝の形状は、特に限定されない。溝の形状の例には、2つの内側面と、1つの底面で構成された溝を含む。本実施の形態では、溝は、2つの内側面と、1つの底面を含む。すなわち、本実施の形態では、第1透過部113は、溝の底面と第2壁112の内面との間の領域である。なお、第1透過部113の厚みと、紫外線および可視光線の反射率、または紫外線および可視光線の透過率との関係については後述する。
【0020】
供給流路114は、貯留壁110の内部(空間S1)に流体を供給する。供給流路114は、その一端が空間S1に開口している。供給流路114の空間S1への開口部が、供給口117である。供給流路114は、貯留壁110の内部(空間S1)に貯留壁110の内面に沿って滑らかに流体を供給できるように配置されていることが好ましい。本実施の形態では、供給流路114における流体の流動方向に沿い、かつ空間S1の重心を含む断面における、供給流路114の内面と貯留壁110の内面との接続部において、供給流路114の内面の一部は、接続部における貯留壁110の内面の接線と一致するように、貯留壁110の内面と滑らかに連続して配置されている。本実施の形態では、供給流路114は、貯留壁110(第1壁111)の一部と、カバー120(第1カバー121)の一部とにより構成されている。
【0021】
排出流路115は、貯留壁110の内部(空間S1)の流体を排出する。排出流路115は、その一端が空間S1に開口している。排出流路115の空間S1への開口部が、排出口118である。排出流路115は、貯留壁110の内部(空間S1)に貯留壁110の壁に沿って滑らかに流体を排出できるように配置されていることが好ましい。本実施の形態では、排出流路115における流体の流動方向に沿い、かつ貯留壁110の重心を含む断面における、排出流路115の内面と貯留壁110の内面との接続部において、排出流路115の内面の一部は、接続部における貯留壁110の内面の接線と一致するように、貯留壁110の内面と滑らかに連続して配置されている。本実施の形態では、排出流路115は、貯留壁110(第2壁112)の一部と、カバー120(第2カバー122)の一部とにより構成されている。
【0022】
カバー120は、貯留壁110を覆って貯留壁110を保持する。カバー120は、第1透過部113を透過した可視光線を透過または拡散させる第2透過部123を有する。カバー120の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。カバー120は、1つの部材でもよいし、2つ以上の部材でもよい。本実施の形態では、カバー120は、第1カバー121と、第2カバー122との2つの部材で構成されている。第1カバー121の材料と、第2カバー122の材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施の形態では、第1カバー121と、第2カバー122との材料は、それぞれ異なる。本実施の形態では、第1カバー121で可視光線を透過させる。第1カバー121の材料の例には、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、が含まれる。本実施の形態では、第1カバー121の材料は、半透明のPPである。このように、第1カバー121がPPで形成されているため、第1透過部113を透過した可視光線を拡散できる。また、第1カバー121の内面または外面には、紫外線を透過させないために、ポリカーボネート(PC)やポリメチルメタクリレート(PMMA)などでコーティングされていることが好ましい。詳細は後述するが、PCおよびPMMAは、主として紫外線は透過させないが、主として可視光線は透過させる。このように、第1カバー121は、PPで可視光線を拡散、透過させ、PCまたはPMMAで紫外線を反射する。第2カバー122の材料の例には、各種金属、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)が含まれる。本実施の形態では、第2カバー122の材料は、光源130に対するヒートシンクとして機能させる観点から、アルミニウムである。
【0023】
第1カバー121は、第2透過部123を有し、第1壁111を覆う。本実施の形態では、第1カバー121は、第1壁111の全体および第2壁112の一部を覆う。より具体的には、本実施の形態では、第1カバー121は、第1壁111の全体および第2壁112のうち第1透過部113が配置されている部分を覆う。また、本実施の形態では、第1カバー121は、供給流路114の一部を規定する。具体的には、第1カバー121は、供給流路114の上流側を規定する。
【0024】
第2透過部123は、第1透過部113を透過した可視光線を透過または拡散させる。第2透過部123の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、第2透過部123は、第1カバー121のうち第1透過部113に対向した部分である。すなわち、本実施の形態では、第2透過部123は、第1透過部113を取り囲むように配置された第1カバー121の一部の領域である。よって、第1カバー121と、第2透過部123とは、同じ部材で形成されていることが好ましい。本実施の形態では、第2透過部123の厚みは、第1カバー121の他の部分と同じである。
【0025】
第2カバー122は、第2壁112を覆う。本実施の形態では、第2カバー122は、第2壁112の一部および第1壁111の一部を覆う。また、本実施の形態では、第2カバー122は、排出流路115の一部を規定する。具体的には、第2カバー122は、排出流路115の下流側を規定する。第2カバー122には、光源130が配置される第2凹部124が配置されている。
【0026】
光源130は、貯留壁110の内部(空間S1)の流体に紫外線を照射する。本実施の形態では、光源130は、空間S1に紫外線および可視光線を同時に出射する。光源130は、空間S1の流体に直接紫外線および可視光線を照射してもよいし、窓やミラーなどの他の部材を介して空間S1の流体に紫外線および可視光線を照射してもよい。本実施の形態では、貯留壁110壁は、紫外線および可視光線を透過させる窓131を含み、光源130は、窓131を通して空間S1に紫外線および可視光線を照射する。
【0027】
光源130の種類は、紫外線および可視光線を同時に出射できれば特に限定されない。光源130の例には、発光ダイオード(LED)、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、レーザーダイオード(LD)が含まれる。本実施の形態では、光源130は、発光ダイオード(LED)である。光源130が照射する紫外線の波長は、特に限定されない。光源130が出射する紫外線の波長は、効果的に殺菌する観点から、200nm以上350nm以下が好ましく、200nm以上280nm以下がより好ましい。すなわち、光源130から出射される紫外線は、紫外線C波(UVC)が好ましい。光源130が照射する可視光線の波長は、特に限定されない。光源130が照射する可視光線には、波長が360nm以上830nm以下の光が含まれ、400nm以上480nm以下の光が含まれる。すなわち、光源は、紫色から青色の範囲の可視光線も照射する。市販されている光源130の例には、ピーク波長が280nmの紫外線発光ダイオードであるNCSU334A(日亜化学工業株式会社)が含まれる。また、ピーク波長が280nmの紫外線発光ダイオードの他の例には、KLARAN(旭化成株式会社)、ZEU110BEAE(スタンレー電気株式会社)が含まれる。
【0028】
光源130の位置は、空間S1の流体に紫外線および可視光線を照射できれば特に限定されない。光源130は、第1壁111に配置してもよいし、第2壁112に配置してもよい。本実施の形態では、流体が第1壁111に接続された供給流路114から、第2壁112に接続された排出流路115に向かって流れるように構成されている、第2壁112に光源130を配置している。より具体的には、光源130は、第2カバー122に設けられた第2凹部124の内部に、光源130の光軸が供給口117および排出口118のいずれにも交差しないように配置されている。
【0029】
窓131は、貯留壁110(第2壁112)の壁面の一部として配置されており、光源130から出射された紫外線および可視光線を貯留壁110の内部(空間S1)へ透過させる。窓131の材料は、紫外線および可視光線を透過させることができ、かつ必要な強度を有していれば、特に限定されない。殺菌性能を向上させる観点からは、窓131の材料は、波長200nm以上830nm以下の紫外線および可視光線を透過させる材料であることが好ましい。窓131の材料の例には、石英ガラス、サファイアガラス、フッ化バリウム、フッ化カルシウムが含まれる。
【0030】
また、窓131の形状は、光源130から出射された紫外線および可視光線を空間S1に到達させることができれば特に限定されず、平板状であってもよいし、貯留壁110の内面に合わせた形状であってもよい。本実施の形態では、窓131は、平板状であり、第2壁112に設けられた凹部の内部に配置されている。窓131の外径は、光源130から出射された紫外線および可視光線を空間S1に到達させることができれば特に限定されない。例えば、窓131の外径は、貯留壁110の内径の大きさに対して、20~50%の大きさであることが好ましい。窓131の外径を大きくすることで、空間S1の広い範囲に紫外線を直接照射することができる。一方、窓131の外径を小さくすることで、空間S1の内面に占める紫外線反射面の割合を大きくすることができる。
【0031】
次いで、第1透過部113の厚みと光の透過率および反射率との関係を調べた。ここでは、貯留壁110の材料として、PTFEを使用した。図2Aは、厚みが異なる第1透過部113における、光の波長と光の透過率との関係を示すグラフであり、図2Bは、厚みが異なる第1透過部113における、光の波長と光の反射率との関係を示すグラフである。図2Aの横軸は光の波長であり、縦軸は光の透過率である。図2Bの横軸は光の波長であり、縦軸は光の反射率である。
【0032】
図2Aの実線は、第1透過部113の厚みが1mmの結果を示しており、破線は、第1透過部113の厚みが2mmの結果を示しており、一点鎖線は、第1透過部113の厚みが5mmの結果を示しており、二点鎖線は、第1透過部113の厚みが7mmの結果を示している。図2Bの破線は、第1透過部113の厚みが2mmの結果を示しており、一点鎖線は、第1透過部113の厚みが5mmの結果を示しており、二点鎖線は、第1透過部113の厚みが7mmの結果を示している。
【0033】
図2Aに示されるように、第1透過部113の厚みを薄くすると光の透過率が高くなり、第1透過部113の厚みを厚くすると光の透過率が低くなることがわかる。また、光の波長が長くなるほど、光の透過率が高くなることがわかる。
【0034】
図2Bに示されるように、第1透過部113の厚みを薄くすると光の反射率が高くなり、第1透過部113の厚みを厚くすると光の反射率が低くなることがわかる。また、光の波長が長くなるほど、光の反射率が低くなることがわかる。
【0035】
このように、第1透過部113が薄くなると、光の透過率が高くなり、光の反射率が低下する。逆に、第1透過部113が厚くなると、光の透過率が低くなり、光の反射率が高くなる。このように、第1透過部113を薄くすることにより、紫外線の反射を維持しつつ、可視光線を透過させることができる。
【0036】
次いで、第2透過部123における光の透過率について調べた。ここでは、PP、PCおよびPMMAに対する光の透過率について調べた。図3は、光の波長と、光の透過率との関係を示すグラフである。図3の横軸は光の波長であり、縦軸は光の透過率である。図3の太い実線は、PPの結果を示しており、細い実線は、PCの結果を示しており、破線は、PMMAの結果を示している。なお、PP、PCおよびPMMAの厚みは、いずれも2mmとした。
【0037】
図3に示されるように、PP、PCおよびPMMAは、波長が280nm程度の紫外線を透過させないことがわかる。また、PCおよびPMMAは、波長が400nm以上480nm以下の紫色から青色の範囲の可視光線を透過させることがわかる。よって、半透明のPPの表面または外面をPCおよびPMMAでコーティングすることで紫外線は透過させずに、可視光線を拡散、透過させうることがわかる。
【0038】
(紫外線照射装置の使用方法)
次に、本実施の形態に係る紫外線照射装置の使用方法について説明する。
【0039】
光源130から紫外線および可視光線を同時に出射させた状態で、殺菌対象の流体(例えば水)を供給口117から空間S1に導入するとともに、空間S1の流体を排出口118から取り出す。このとき、供給口117導入された流体は、直接排出口118に移動するわけではなく、螺旋状に回って空間Sに滞在する。なお、供給口117(供給流路114)側を加圧して流体を移動させてもよいし、排出口118(排出流路115)側を減圧して流体を移動させてもよい。光源130から出射された紫外線および可視光線は、光源130の光軸(発光面に対する法線)に対する出射角度が小さいほど強度が高く、出射角度が大きいほど強度が低くなる。よって、強度が高い紫外線(出射角が小さい紫外線)は、流体に直接照射され、かつ貯留壁110の内面で反射する。このとき、強度が高い紫外線は、第1透過部113に到達しにくいため、第1透過部113を通って外部に透過されにくい。一方、出射角度が小さい可視光線の一部は、第1透過部113を透過し、第2透過部123を拡散しつつ透過する。このように、本実施の形態では、可視光線の一部が第1透過部113および第2透過部123を透過するため、作業者が目視で光源130の点灯状態を確認できる。
【0040】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る紫外線照射装置100によれば、可視光線を透過する第1透過部113と、可視光線を透過または拡散させる第2透過部123を有するため、光源の点灯状態を外部から視認できる。
【0041】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2に係る紫外線照射装置200について説明する。本実施の形態に係る紫外線照射装置200は、封止部材217の有無のみが実施の形態1に係る紫外線照射装置100と異なる。そこで、実施の形態1に係る紫外線照射装置100と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
(紫外線照射装置の構成)
図4は、実施の形態2に係る紫外線照射装置200の断面斜視図である。
【0043】
図4に示されるように、紫外線照射装置200は、流体に紫外線を照射するための装置であって、流体を貯留するための空間S1を規定する貯留壁210と、貯留壁110を覆うカバー120と、空間S1に紫外線および可視光線を照射するための光源130とを有する。
【0044】
貯留壁210は、第1透過部113を含み、流体を収容するための空間S1を規定する。貯留壁210は、主として光源130から出射された光のうち紫外線は空間S1に向けて反射させ、可視光線の一部は第1透過部113を介して外部に透過させる。貯留壁210は、第1壁111と、第2壁112との2つの部材を有する。第2壁112に第1透過部113が配置されており、第2壁112および第1透過部113は一体として成形されている。本実施の形態でも、第1透過部113の少なくとも一部は、空間S1の重心を通り、光源130で照射される紫外線および可視光線の光軸に垂直な仮想平面よりも光源130側の貯留壁210に配置されていることが好ましい。第1透過部113は、貯留壁210の外面に配置された第1凹部116の内面と、貯留壁210の内面との間の領域である。本実施の形態でも、第1凹部116は、溝である。
【0045】
第1凹部116の内部には、封止部材217が配置されている。封止部材217は、貯留壁210(第2壁112)およびカバー120(第1カバー121)に接触するように配置されており、貯留壁210(第2壁112)とカバー120(第1カバー121)との間を封止する。封止部材217の形状は上記の機能を発揮できれば特に限定されない。封止部材217の形状の例には、第1凹部116と相補的な形状でもよいし、Oリングでもよい。本実施の形態では、封止部材217は、Oリングである。なお、第1凹部116の内部に封止部材217が配置されているため、液密に封止できる。
【0046】
カバー120は、第2透過部123を有し、貯留壁210を覆う。本実施の形態では、カバー120は、第1カバー121と、第2カバー122との2つの部材で構成されている。
【0047】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る紫外線照射装置200は、実施の形態1に係る紫外線照射装置100と同様の効果を有する。また、本実施の形態に係る紫外線照射装置200は、流体が漏れることを抑制できる。さらに紫外線の外部への漏れを防止できるため、さらに安全性が高い。
【0048】
[実施の形態3]
次に、実施の形態3に係る紫外線照射装置300について説明する。実施の形態1に係る紫外線照射装置100と同様の構成については、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
(紫外線照射装置の構成)
図5Aは、実施の形態3に係る紫外線照射装置300の斜視図であり、図5Bは、正面図であり、図5Cは、図5Bに示されるA-A線の断面図である。
【0050】
図5A~Cに示されるように、本実施の形態に係る紫外線照射装置300は、流体に紫外線を照射するための装置であって、流体を貯留するための空間S2を規定する貯留壁310と、貯留壁310を覆うカバー320と、空間S2に紫外線および可視光線を照射するための光源130とを有する。
【0051】
貯留壁310は、第1透過部313を含み、流体を収容するための空間S2を規定する。貯留壁310は、主として光源130から出射された紫外線を反射し、可視光線を透過させる。本実施の形態では、貯留壁310は、1つの部材で構成されていている。貯留壁310により規定される空間S2の形状は、円柱形状である。
【0052】
第1透過部313は、貯留壁310の他の領域よりも薄肉に形成された領域であり、貯留壁310の一部である。第1透過部313は、光源130から照射された紫外線を反射し、光源130から出射された可視光線を透過させる。第1透過部313の少なくとも一部は、空間S2の重心を通り、光源130で照射される紫外線および可視光線の光軸に垂直な仮想平面よりも光源130側の貯留壁310に配置されていることが好ましい。本実施の形態では、第1透過部313は、貯留壁310で規定された略円柱形状の空間S2を周方向に取り囲むように配置されている。光源130から照射された紫外線のうち、強度の高い紫外線は、空間S2の軸方向に照射されるため、殺菌作用を減少させることがない。
【0053】
本実施の形態では、第1透過部113は、貯留壁110の外面に配置された第1凹部316の内面と、貯留壁310の内面との間の領域である。第1凹部316の数は特に限定されない。第1凹部316の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。本実施の形態では、第1凹部316の数は、1つである。本実施の形態では、第1凹部316は、溝であり、2つの内側面と、1つの底面を含む。
【0054】
供給流路314は、貯留壁310の内部(空間S2)に流体を供給する。本実施の形態では、供給流路314は、供給管319により規定される。供給管319は、その一端が空間S2に開口している。供給流路314の空間S2への開口部が、供給口317である。供給管319は、カバー320に螺合することで接続される。
【0055】
排出流路315は、貯留壁310の内部(空間S2)の流体を排出する。本実施の形態では、排出流路315は、カバー320により規定される。排出流路315は、その一端が空間S2に開口している。排出流路315の空間S2への開口部が、排出口318である。
【0056】
カバー320は、第2透過部323を有し、貯留壁310を覆う。カバー320は、第1透過部313を透過した可視光線を透過または拡散させる。本実施の形態では、カバー320は、第1カバー321の1つの部材で構成されている。
【0057】
第2透過部323は、第1透過部313を透過した可視光線を透過または拡散させる。本実施の形態では、第2透過部323は、第1透過部313に対向した第1カバー321の一部である。
【0058】
光源130は、貯留壁310の内部(空間S2)の流体に紫外線および可視光線を同時に照射する。光源130は、空間S2の流体に直接紫外線および可視光線を照射してもよいし、窓やミラーなどの他の部材を介して空間S2の流体に紫外線および可視光線を照射してもよい。本実施の形態では、貯留壁310壁は、紫外線および可視光線を透過させる窓331を含み、光源130は、窓331を通して空間S2に紫外線および可視光線を照射する。
【0059】
光源130の位置は、空間S2の流体に紫外線および可視光線を照射できれば特に限定されない。本実施の形態では、光源130は、貯留壁310の一端に配置されている。
【0060】
窓331は、貯留壁310の壁面の一部として配置されており、光源130から出射された紫外線および可視光線を貯留壁310の内部(空間S2)へ透過させる。
【0061】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る紫外線照射装置300は、実施の形態1に係る紫外線照射装置100と同様の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本実施の形態に係る紫外線照射装置は、例えば、浄水や農業用水、食品用洗浄水、各種洗浄水、浴場の水、プールの水などの殺菌において有用である。
【符号の説明】
【0063】
100、200、300 紫外線照射装置
110、210、310 貯留壁
111 第1壁
112 第2壁
113、313 第1透過部
114、314 供給流路
115、315 排出流路
116、316 第1凹部
117、317 供給口
118、318 排出口
120、320 カバー
121、321 第1カバー
122 第2カバー
123、323 第2透過部
124 第2凹部
130 光源
131、331 窓
217 封止部材
319 供給管
図1
図2
図3
図4
図5