(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136203
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法、および製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 55/06 20060101AFI20230922BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B29C55/06
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041696
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】吉田 涼
【テーマコード(参考)】
4F210
4F211
【Fターム(参考)】
4F210AA11
4F210AA24
4F210AA26
4F210AA40
4F210AC03
4F210AD25
4F210AD29
4F210AG01
4F210AJ08
4F210AJ09
4F210AK04
4F210AR06
4F210AR12
4F210AR20
4F210QA03
4F210QC02
4F210QD21
4F210QD36
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QM15
4F210QM20
4F210QW21
4F211AD08
4F211AG01
4F211SA07
4F211SC06
4F211SD01
4F211SJ15
4F211SP04
4F211SW26
4F211SW45
(57)【要約】
【課題】原反を延伸するときに、シワが発生する。
【解決手段】熱可塑性フィルム(F)の製造方法であって、搬送される原反(S)の両端部(14,16)の各々に片面粘着テープ(T1,T2)を貼り合わせる工程と、原反(S)を加熱して搬送方向に延伸する工程と、をこの順で原反(S)に施す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの製造方法であって、
(1)搬送される原反の両端部の各々に片面粘着テープを貼り合わせる工程と、
(2)前記原反を加熱して搬送方向に延伸する工程と、をこの順で前記原反に施すことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)における延伸方式は、駆動ロールによる1軸延伸であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記片面粘着テープの幅は、6mm以上30mm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記片面粘着テープの伸び率は、65%以上であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記片面粘着テープは、基材の片面に粘着剤が設けられたものであり、
前記基材は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、およびポリエステルを含む群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤は、シリコーン,アクリルを含む群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記原反のガラス転移温度は、摂氏60度以上370度以下であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記原反は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、およびポリエステルを含む群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記工程(2)において加熱された前記原反の表面温度が、前記原反のガラス転移温度よりも摂氏30度低い温度から前記原反の軟化温度よりも摂氏20度高い温度までの範囲にあることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記工程(2)において加熱された前記原反の表面温度が、前記原反のガラス転移温度よりも摂氏20度低い温度から前記原反の軟化温度までの範囲にあることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記工程(2)における加熱方式は、遠赤外線ヒータを用いることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記工程(2)における加熱方式はさらに、前記原反に対して前記遠赤外線ヒータと反対側に設けられた反射板を用いることを特徴とする請求項11に記載のフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記工程(1)における貼り合わせ方式は、前記原反を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロール上で前記原反に前記片面粘着テープを圧接するニップロールとを用いることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記工程(1)において、前記両端部の各々の片面に前記片面粘着テープを貼り合わせることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記工程(1)において、前記両端部の各々の両面に前記片面粘着テープを貼り合わせることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記工程(1)~(2)を連続的に行い、長尺のフィルムを製造することを特徴とする請求項1~15の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項17】
(3)前記片面粘着テープを除去する工程を、前記工程(2)より後に前記原反に施すことを特徴とする請求項1~16の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記工程(3)において、刃を用いて前記原反から前記両端部を切り離すことによって、前記片面粘着テープを除去することを特徴とする請求項17に記載のフィルムの製造方法。
【請求項19】
前記フィルムは、50μm厚さあたりの全光線透過率が80%以上である透明ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1~18の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記フィルムは、熱可塑性フィルムであることを特徴とする請求項1~19の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項21】
フィルムの製造装置であって、
搬送される原反の両端部の各々に片面粘着テープを貼り合わせる圧接部と、
前記原反を加熱するヒータと、
前記原反を搬送方向に延伸する延伸部と、を備えることを特徴とするフィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はフィルムの製造方法、および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4は、原反を延伸する工程を含むフィルムの製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-090650号公報
【特許文献2】特開2007-070514号公報
【特許文献3】特開2019-211787号公報
【特許文献4】特開2017-211580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原反を搬送方向に延伸すると、原反が幅方向に収縮しようとする。この収縮によって、フィルムにシワが発生する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、(1)搬送される原反の両端部に片面粘着テープを貼り合わせる工程と、(2)前記原反を加熱して搬送方向に延伸する工程と、をこの順で前記原反に施す方法である。
【0006】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(2)における延伸方式は、駆動ロールによる1軸延伸である方法であってよい。
【0007】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記片面粘着テープの幅は、6mm以上30mm未満である方法であってよい。
【0008】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記片面粘着テープの伸び率は、65%以上である方法であってよい。
【0009】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記片面粘着テープは、基材の片面に粘着剤が設けられたものであり、前記基材は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、およびポリエステルを含む群から選択された少なくとも1つを含む方法であってよい。
【0010】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記粘着剤は、シリコーン,アクリルを含む群から選択された少なくとも1つを含む方法であってよい。
【0011】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記原反のガラス転移温度は、摂氏60度以上370度以下である方法であってよい。
【0012】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記原反は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、およびポリエステルを含む群から選択された少なくとも1つを含む方法であってよい。
【0013】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(2)において加熱された前記原反の表面温度が、前記原反のガラス転移温度よりも摂氏30度低い温度から前記原反の軟化温度よりも摂氏20度高い温度までの範囲にある方法であってよい。好ましくは、当該表面温度が、前記原反のガラス転移温度よりも摂氏20度低い温度から前記原反の軟化温度までの範囲にある方法であってよい。
【0014】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(2)における加熱方式は、遠赤外線ヒータを用いる方法であってよい。
【0015】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(2)における加熱方式はさらに、前記原反に対して前記遠赤外線ヒータと反対側に設けられた反射板を用いる方法であってよい。
【0016】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(1)における貼り合わせ方式は、前記原反を搬送する搬送ロールと、前記搬送ロール上で前記原反に前記片面粘着テープを圧接するニップロールとを用いる方法であってよい。
【0017】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(1)において、前記両端部の各々の片面に前記片面粘着テープを貼り合わせる方法であってよい。
【0018】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(1)において、前記両端部の各々の両面に前記片面粘着テープを貼り合わせる方法であってよい。
【0019】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(1)~(2)を連続的に行い、長尺のフィルムを製造する方法であってよい。
【0020】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、(3)前記片面粘着テープを除去する工程を、前記工程(2)より後に前記原反に施す方法であってよい。
【0021】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記工程(3)において、刃を用いて前記原反から前記両端部を切り離すことによって、前記片面粘着テープを除去する方法であってよい。
【0022】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記フィルムは、50μm厚さあたりの全光線透過率が80%以上である透明ポリイミドフィルムである方法であってよい。
【0023】
本開示の一態様に係るフィルムの製造方法は、前記フィルムは、熱可塑性フィルムである方法であってよい。
【0024】
本開示の一態様に係るフィルムの製造装置は、搬送される原反の両端部に片面粘着テープを貼り合わせる圧接部と、前記原反を加熱するヒータと、前記原反を搬送方向に延伸する延伸部と、を備える構成である。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様によれば、シワの発生を低減しながら原反を延伸したフィルムの製造方法および製造装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の一実施形態に係るフィルム製造装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示した概略構成のうち、原反に片面粘着テープを貼り合わせる部分を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した概略構成のうち、原反から両端部を切除する部分を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した片面粘着テープの概略構成の一例を示す断面図である
【
図5】比較例における延伸前の原反Sを示す平面図である。
【
図6】比較例における延伸後の原反Sを示す平面図である。
【
図7】本開示の一実施例における延伸後の原反を示す平面図である
【
図8】本開示の別の一実施形態に係るフィルム製造装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
(製造方法)
以下、本開示の一実施形態に係る熱可塑性フィルムFの製造方法について、
図1~
図3を参照して、説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係るフィルム製造装置2の概略構成の一例を示す模式図である。
図1は、原反Sの長さ方向に平行かつ、原反Sの幅方向に直交する面に直交する方向から見た図であり、原反Sの搬送の上流側を左側に、下流側を右側に示す。
図1において、搬送方向は原反Sの長さ方向である。
【0029】
図2は、
図1に示した概略構成のうち、原反Sに第1および第2の片面粘着テープT1,T2を貼り合わせる部分を示す斜視図である。
図2は、原反Sの搬送の上流側を手前側に、下流側を奥側に示す。
図3は、
図1に示した概略構成のうち、原反Sから両端部14,16を切除する部分を示す斜視図である。
図3は、原反Sの搬送の上流側を奥側に、下流側を手前側に示す。
【0030】
まず、片面粘着テープT1,T2が、搬送ロールR1を通って搬送ロールR3まで搬送される。同時に原反Sが、搬送ロールR2を通って搬送ロールR3まで搬送される。そして、ニップロールN1が、搬送ロールR3上で原反Sの両端部14,16の各々の片面に片面粘着テープT1,T2を圧接する。これによって、第1の片面粘着テープT1が原反Sの第1の端部14の片面に貼り合わさり、第2の片面粘着テープT2が原反Sの第2の端部16の片面に貼り合わさる。第1の端部14は原反Sの幅方向の一方側の端部であり、第2の端部16は第1の端部14は原反Sの幅方向の他方側の端部である。原反Sの幅方向は、搬送方向と交差または略直交する。
【0031】
次いで、原反Sは片面粘着テープT1,T2と共に、駆動ロールR4まで搬送される。そして、駆動ロールR4が、原反Sを片面粘着テープT1,T2と共にニップロールN2との間に把持しながら回転して、原反Sの搬送を駆動する。続いて、原反Sは片面粘着テープT1,T2と共に、別の駆動ロールR5まで搬送される。そして、駆動ロールR5が、原反Sを片面粘着テープT1,T2と共にニップロールN3との間に把持しながら回転して、原反Sの搬送を駆動する。上流側の駆動ロールR4による搬送速度よりも、下流側の駆動ロールR5による搬送速度が大きい。この速度差によって、駆動ロールR4,R5の間において原反Sに搬送方向の張力が印加される。同時に、駆動ロールR4,R5の間において、ヒータ4が原反Sを加熱する。この結果、駆動ロールR4,R5によって、原反Sが1軸延伸され、その延伸方向は搬送方向である。
【0032】
ヒータ4は、遠赤外線ヒータであってよい。ヒータ4は、原反Sの中央部18の表面温度が原反Sのガラス転移温度付近から原反Sの軟化温度付近までの範囲にあるように、原反Sを加熱する。原反Sの中央部18は、原反Sの両端部14,16の間に位置する。加熱下で原反Sの中央部18の表面温度は、原反Sのガラス転移温度よりも摂氏30度低い温度から原反Sの軟化温度よりも摂氏20度高い温度までの範囲にあってよい。加熱下での当該表面温度は、原反Sのガラス転移温度よりも摂氏20度低い温度から原反Sの軟化温度までの範囲にあることが好ましい。さらに、反射板6が原反Sに対してヒータ4の反対側に設けられてよい。反射板6は、ヒータ4から放射された熱または熱線を原反Sに向かって反射する。
【0033】
ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、原反Sの動的粘弾性を測定し、原反Sの貯蔵弾性率と測定温度との相関関係をプロットし、その変曲点の温度を意味する。原反Sの動的粘弾性測定は、セイコー電子工業(株)製DMS-200を用い、測定治具間隔20mm、周波数5Hzで、測定する。また、当該変曲点における貯蔵弾性率の1/1000の貯蔵弾性率を有する温度を、軟化温度(Tm)とする。
【0034】
次いで、原反Sは放熱しながら、片面粘着テープT1,T2と共に搬送ロールR6まで搬送される。そして、搬送ロールR6上で、または搬送ロールR6と次の搬送ロールR7との間で、原反Sから片面粘着テープT1,T2を除去して、熱可塑性フィルムFを得る。例えば、搬送ロールR6上、または搬送ロールR6と次の搬送ロールR7との間に刃8を設け、刃8を用いて原反Sから両端部14,16を片面粘着テープT1,T2と共に切り離す。
【0035】
次いで、熱可塑性フィルムFが搬送ロールR7を経てさらに搬送される。一方、除去された片面粘着テープT1,T2および両端部14,16は回収部12に回収される。例えば回収部12は、第1の端部14を第1の片面粘着テープT1と共に巻き取る巻取り装置と、第2の端部16を第2の片面粘着テープT2と共に巻き取る巻取り装置とを含んでよい。
【0036】
上述のプロセスを連続的に行うことによって、長尺の熱可塑性フィルムFを製造できる。
【0037】
(製造装置)
図1~
図3に示すように、本実施形態に係るフィルム製造装置2は、熱可塑性フィルムFの製造装置であって、搬送される原反Sの両端部14,16の片面に片面粘着テープT1,T2を貼り合わせる搬送ロールR3およびニップロールN1(圧接部)と、原反Sを加熱するヒータ4と、原反Sを搬送方向に延伸する駆動ロールR4,R5およびニップロールN2,N3(延伸部)と、を備える。フィルム製造装置2はさらに、片面粘着テープT1,T2を除去する刃8(除去部)、片面粘着テープT1,T2の捲回体を回転可能に支持する支持軸10、その他の搬送ロールR1,R2,R6,R7、および回収部12を備えて良い。
【0038】
(片面粘着テープおよび原反)
以下、片面粘着テープT1,T2および原反Sについて、
図4を参照して、説明する。
図4は、
図1に示した片面粘着テープT1,T2の概略構成の一例を示す断面図である。
【0039】
片面粘着テープT1,T2はそれぞれ、原反Sの両端部14,16に補強すると共に、原反Sと共に延伸できるように選択される。このため、片面粘着テープT1,T2の各々の幅W1は、原反Sの幅W2(
図5参照)が300mmのときに6mm以上30mm以下が好ましい。すなわち、原反Sの幅W2に対する片面粘着テープT1,T2の幅W1の割合(W1/W2)が、2%以上10%以下が好ましい。また、断面積は、W1*D1であるが、0.036mm
2以上4.00mm
2以下が好ましい。また、長さ方向および幅方向に何れについても、断面積あたりの引張強度は300MPa以上が好ましい。伸び率および引張強度は、破断限界まで引っ張った際の伸び率および印加張力であり、JIS規格のK7127:1999に準拠して測定されたい。
【0040】
片面粘着テープT1,T2はそれぞれ、基材B1,B2の片面に粘着剤A1,A2が設けられたものである。基材B1,B2は例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、およびポリエステルを含む群から選択された少なくとも1つを含んで良い。粘着剤A1,A2は例えば、耐熱性シリコーン系粘着剤およびアクリル系粘着剤を含む群から選択された少なくとも1つを含んで良い。片面粘着テープT1,T2は、互いに同じであることが好ましいが、互いと異なってもよい。
【0041】
原反Sのガラス転移温度は例えば、摂氏60度以上370度以下であってよい。原反Sは例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、およびポリエステルを含む群から選択された少なくとも1つを含んで良い。熱可塑性フィルムFが50μm厚さあたりの全光線透過率が80%以上である透明ポリイミドフィルムであるように、原反Sはポリイミドを含むことが好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS規格のK7361-1:1997に準拠して測定されたい。
【0042】
原反Sの両端部14,16の片面に片面粘着テープT1,T2を貼りあわせることによって、両端部14,16の剛性が向上する。このため、大きな張力を原反Sに印加して、原反Sを延伸することで、延伸に起因する原反Sの幅方向の収縮を低減できる。加えて、原反Sの搬送方向の破断が防止される。
【実施例0043】
以下、本開示の比較例および実施例について、
図5~
図7を参照して、説明する。
【0044】
〔比較例1〕
図5は、比較例1における延伸前の原反Sを示す平面図である。
図6は、比較例1における延伸後の原反Sを示す平面図である。
【0045】
比較例1において、片面粘着テープT1,T2として、いわゆるカプトン(登録商標)粘着テープを用いた。片面粘着テープT1,T2の基材B1,B2は、有色透明のポリイミドフィルムであり、幅W1が5mmであり、厚さD1が0.05mmであり、長さ方向の幅あたりの引張り強度が4904N/mであった。片面粘着テープT1,T2の粘着剤A1,A2は耐熱性シリコーン系粘着剤であった。また、原反Sは、無色透明のポリイミドフィルムであり、幅W2が300mmであり、厚さが50μmであり、長さ方向の幅あたりの引張り強度が17000N/mであり、ガラス転移温度が摂氏300度であった。このときの原反Sの幅W2を「延伸前の幅W2b」とした。
【0046】
図5に示すように、原反Sの両端部14,16に片面粘着テープT1,T2を貼り付け、原反Sの中央部18に印M1,M2を原反Sの長さ方向に離して付けた。そして、印M1,M2の間の距離D2を測定した。このときに測定した距離D2を「延伸前の長さD2b」とした。
【0047】
次に、原反Sを、駆動ロールR4およびニップロールN2の間と、駆動ロールR5およびニップロールN3の間とに挟んだ。このとき、原反Sからヒータ4までの距離は40mmであり、原反Sから反射板6までの距離は20mmであった。そして、ヒータ4および反射板6によって原反Sを加熱すると共に、駆動ロールR4,R5およびニップロールN2,N3によって原反Sを1軸延伸した。このとき、原反Sの搬送速度は0.4m/分であり、原反Sに印加される搬送方向の張力は188N/mであった。ヒータ4は遠赤外線ヒータであり、原反Sの中央部18の表面温度が摂氏300度以上摂氏350以下の温度範囲に到達した。
【0048】
原反Sが破断することなく、原反Sの延伸を完了した。延伸終了後、原反Sを、駆動ロールR4およびニップロールN2の間と、駆動ロールR5およびニップロールN3の間とから外した。
【0049】
図6に示すように次に、原反Sの幅W2が最も小さくなっている位置で原反Sの幅W2を測定し、このときに測定した幅W2を「延伸後の幅W2a」とした。また、印M1,M2の間の距離D2を測定し、このときに測定した距離D2を「延伸後の長さD2a」とした。そして、原反Sの搬送方向の延伸率(%)および原反Sの幅方向の収縮率(%)を以下のように算出した。
【0050】
搬送方向の延伸率=(D2a-D2b)/D2b*100%
幅方向の収縮率=(W2b-W2a)/W2b*100%
「*」は乗算を示す演算記号である。
【0051】
原反Sの延伸された部位の両端部14,16から片面粘着テープT1,T2は外れていた。原反Sの延伸された部位は、両端部14,16および中央部18にシワC1があった。シワC1は概ね、延伸方向および幅方向に対して斜めに延びていた。
【0052】
〔比較例2〕
比較例2を、片面粘着テープT1,T2の幅W1が30mmである点を除いて、比較例1と同様に行った。その結果、原反Sが延伸しなかった。
【0053】
〔実施例1〕
実施例1を、片面粘着テープT1,T2の幅W1が20mmである点を除いて、比較例1と同様に行った。
【0054】
図7は、実施例1における延伸後の原反Sを示す平面図である。
図7に示すように、原反Sの延伸された部位の両端部14,16に片面粘着テープT1,T2が貼り付いたままであった。原反Sの延伸された部位は、両端部14,16にのみシワC2があり、一方、中央部18にシワが無かった。シワC2は概ね、延伸方向に平行に延びていた。
【0055】
〔実施例2〕
実施例2を、片面粘着テープT1,T2の幅W1が15mmである点を除いて、比較例1と同様に行った。その結果、実施例1と同様に、原反Sの延伸された部位の両端部14,16に片面粘着テープT1,T2が貼り付いたままであり、両端部14,16にのみシワC2があった。
【0056】
〔実施例3〕
実施例3を、片面粘着テープT1,T2の幅W1が10mmである点を除いて、比較例1と同様に行った。その結果、実施例1と同様に、原反Sの延伸された部位の両端部14,16に片面粘着テープT1,T2が貼り付いたままであり、両端部14,16にのみシワC2があった。
【0057】
上述の比較例1,2および実施例1~3で算出した原反Sの搬送方向の延伸率および原反Sの幅方向の収縮率を下記の表1に示す。
【0058】
【表1】
表1に示すように、片面粘着テープT1,T2の幅が5mm超30mm未満の範囲において、原反Sの搬送方向の延伸率が0%超であり、かつ、原反Sの幅方向の収縮率が5%以下であった。また、当該範囲において、原反Sの延伸された部位の中央部18にシワが無かった。
【0059】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0060】
図8は、本実施形態に係るフィルム製造装置2の概略構成の一例を示す模式図である。
図8は、原反Sの長さ方向に平行かつ、原反Sの幅方向に直交する面に直交する方向から見た図であり、原反Sの搬送の上流側を左側に、下流側を右側に示す。
図8において、搬送方向は原反Sの長さ方向である。
【0061】
図8に示すように、本実施形態に係る熱可塑性フィルムFの製造方法は、原反Sの両端部14,16の各々の両面に片面粘着テープT1~T4が貼り合わさる点を除いて、前述の実施形態1に係る熱可塑性フィルムFの製造方法と同等である。まず、ニップロールN3が、搬送ロールR8上で原反Sの両端部14,16の片面に片面粘着テープT3,T4を圧接する。次に、別のニップロールN1が、搬送ロールR3上で原反Sの両端部14,16の片面に片面粘着テープT1,T2を圧接する。ニップロールN3が片面粘着テープT3,T4を圧接する両端部14,16の片面は、別のニップロールN1が片面粘着テープT1,T2を圧接する両端部14,16の片面の反対側である。これによって、第1および第3の片面粘着テープT1,T3が原反Sの第1の端部14の両面に貼り合わさり、第2および第4の粘着テープT2,T4が原反Sの第2の端部16の両面に貼り合わさる。
【0062】
両端部14,16の両面に片面粘着テープT1~T4を貼り合わせることによって、両端部14,16の剛性がより向上するため、延伸に起因する原反Sの幅方向の収縮をより低減できる。
【0063】
本実施形態に係るフィルム製造装置2は、前述の実施形態1に係るフィルム製造装置2が備える構成に加えて、原反Sの両端部14,16の反対側の片面に片面粘着テープT3,T4を貼り合わせる搬送ロールR8およびニップロールN4(圧接部)をさらに備える。フィルム製造装置2はさらに、片面粘着テープT3,T4の捲回体を回転可能に支持する支持軸20を備えて良い。
【0064】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。