(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136225
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】リン酸アンモニウム鉄の製造方法、及びリン酸鉄リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041729
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(71)【出願人】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多條 鮎子
(72)【発明者】
【氏名】尾脇 凌之介
(57)【要約】
【課題】電池性能に優れるリン酸鉄リチウムを製造することができるリン酸アンモニウム鉄の製造方法、及びリン酸鉄リチウムの製造方法を提供する。
【解決手段】リン酸アンモニウム鉄の製造方法であって、リン酸水素二アンモニウム水溶液と、アンモニア水とを混合し、液(1)を得る工程(A)、及び液(1)と、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種を含む溶液(S)とを混合して、リン酸アンモニウム鉄を含む液(2)を得る工程(B)を含み、液(2)のpHが9~11であり、液(2)の鉄濃度が0.10mol/L以上1.0mol/L以下であり、工程(B)において、液(1)と溶液(S)を一気に混合して前記液(2)を得る、リン酸アンモニウム鉄の製造方法、及び上記製造方法により得られたリン酸アンモニウム鉄を用いるリン酸鉄リチウムの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸アンモニウム鉄の製造方法であって、
リン酸水素二アンモニウム水溶液と、アンモニア水とを混合し、液(1)を得る工程(A)、及び
前記液(1)と、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種を含む溶液(S)とを混合して、リン酸アンモニウム鉄を含む液(2)を得る工程(B)を含み、
前記液(2)のpHが9~11であり、
前記液(2)の鉄濃度が0.10mol/L以上1.0mol/L以下であり、
前記工程(B)において、前記液(1)と前記溶液(S)を一気に混合して前記液(2)を得る、リン酸アンモニウム鉄の製造方法。
【請求項2】
前記液(2)の鉄濃度が0.20mol/L以上0.80mol/L以下である、請求項1に記載のリン酸アンモニウム鉄の製造方法。
【請求項3】
前記液(1)に含まれるリン酸水素二アンモニウムの物質量をM1とし、前記溶液(S)に含まれる塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の合計の物質量をM3とした場合、M1/M3が1.0以上1.5以下である、請求項1又は2に記載のリン酸アンモニウム鉄の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のリン酸アンモニウム鉄の製造方法により製造されたリン酸アンモニウム鉄と、炭酸リチウムとを用いる、リン酸鉄リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記リン酸アンモニウム鉄と、前記炭酸リチウムとを混合し、得られた混合物を焼成する、請求項4に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸アンモニウム鉄の製造方法、及びリン酸鉄リチウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸鉄リチウムは、リチウムイオン電池の正極材料として使用することができる。また、リン酸アンモニウム鉄は、リン酸鉄リチウムを製造するための原料(前駆体)として使用することができる。
リン酸鉄リチウムを合成する手法として、例えば特許文献1に記載のような共沈法や、特許文献2に記載のような固相法が挙げられる。
特許文献3には、リン酸アンモニウム鉄とリチウム源を粉砕・混合、焼成することによってリン酸鉄リチウムを合成する固相法が記載されている。
また、リン酸アンモニウム鉄を合成する手法としては、特許文献4に、鉄強化食品としてのリン酸アンモニウム鉄の合成手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-117831号公報
【特許文献2】特開2000-294238号公報
【特許文献3】特開2006-56754号公報
【特許文献4】特表2003-526356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような共沈法では、液中の鉄源、リン酸源、リチウム源を水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を添加することでリン酸鉄リチウムの前駆体を得た後、それを焼成することでリン酸鉄リチウムを得ることができる。しかしながら、この手法においてはアルカリ剤として水酸化ナトリウムを選択した際にはナトリウム塩も同時に前駆体として含有するため、電池性能を悪化させてしまう。
特許文献2に記載のような固相法では、固体の鉄源、リン酸源、リチウム源を粉砕・混合後、焼成することによってリン酸鉄リチウムを合成するが、固相法によって得られたリン酸鉄リチウムは粒径が大きくバラつきがあるため、均一にするためには煩雑な粉砕工程が必要となる。
特許文献3に記載された方法では、焼成する際に反応性が高いリン酸アンモニウム鉄を用いることによって、上記の固相法の問題である粒径の粗大化を抑止させることができるが、特許文献3の方法で得られたリン酸鉄リチウムは電池性能の観点で更なる改善が求められる。
また、特許文献4には電池性能に関する記載はない。
【0005】
本発明の課題は、電池性能に優れるリン酸鉄リチウムを製造することができるリン酸アンモニウム鉄の製造方法、及びリン酸鉄リチウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの検討により、電池性能に優れるリン酸鉄リチウムを製造するためには、リン酸鉄リチウムの前駆体であるリン酸アンモニウム鉄の粒子の粒径や形状が重要であることが分かった。より具体的には、前駆体であるリン酸アンモニウム鉄の粒子が、粒径1~10μm程度の微粒子で、形状が球状であり、かつ比表面積が大きい粒子であると、その前駆体から生成されるリン酸鉄リチウム一次粒径が均一で、それが凝集して二次粒子を形成するようなものにすることができ、電池を組んだ際に不可逆容量を小さくすることができることが分かった。
微粒子で、形状が球状であり、かつ比表面積の大きなリン酸アンモニウム鉄を合成するためには、初期過飽和度を大きくし、かつ瞬時にリン酸アンモニウム鉄を析出させるような条件(後述するpH値)にする必要がある。これらの条件を満たさない場合、すなわち初期過飽和度が低い場合や、pH値が低い場合には板状のリン酸アンモニウム鉄が析出する。
そして、本発明者らは、本発明のリン酸アンモニウム鉄の製造方法により、粒径1~10μm程度の微粒子で、形状が球状であり、かつ比表面積が大きい粒子のリン酸アンモニウム鉄を製造できることを見出した。後述するように、本発明のリン酸アンモニウム鉄の製造方法により製造されたリン酸アンモニウム鉄は、針状粒子が一次粒子となり、これらが凝集して球状の粒子(二次粒子)を形成しているため、比表面積が大きい。
【0007】
すなわち、上記課題は下記手段により解決することができる。
【0008】
〔1〕
リン酸アンモニウム鉄の製造方法であって、
リン酸水素二アンモニウム水溶液と、アンモニア水とを混合し、液(1)を得る工程(A)、及び
前記液(1)と、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種を含む溶液(S)とを混合して、リン酸アンモニウム鉄を含む液(2)を得る工程(B)を含み、
前記液(2)のpHが9~11であり、
前記液(2)の鉄濃度が0.10mol/L以上1.0mol/L以下であり、
前記工程(B)において、前記液(1)と前記溶液(S)を一気に混合して前記液(2)を得る、リン酸アンモニウム鉄の製造方法。
〔2〕
前記液(2)の鉄濃度が0.20mol/L以上0.80mol/L以下である、〔1〕に記載のリン酸アンモニウム鉄の製造方法。
〔3〕
前記液(1)に含まれるリン酸水素二アンモニウムの物質量をM1とし、前記溶液(S)に含まれる塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の合計の物質量をM3とした場合、M1/M3が1.0以上1.5以下である、〔1〕又は〔2〕に記載のリン酸アンモニウム鉄の製造方法。
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のリン酸アンモニウム鉄の製造方法により製造されたリン酸アンモニウム鉄と、炭酸リチウムとを用いる、リン酸鉄リチウムの製造方法。
〔5〕
前記リン酸アンモニウム鉄と、前記炭酸リチウムとを混合し、得られた混合物を焼成する、〔4〕に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池性能に優れるリン酸鉄リチウムを製造することができるリン酸アンモニウム鉄の製造方法、及びリン酸鉄リチウムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率2000倍)。
【
図2】実施例1のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率10000倍)。
【
図3】実施例4のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率2000倍)。
【
図4】実施例7のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率2000倍)。
【
図5】比較例3のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率1000倍)。
【
図6】比較例5のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率1000倍)。
【
図7】比較例9のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率1000倍)。
【
図8】比較例10のリン酸アンモニウム鉄のSEM写真(倍率2000倍)。
【
図9】実施例9、実施例10、比較例11及び比較例12の電池の充放電曲線。
【
図10】比較例14、比較例13及び比較例11の電池の充放電曲線。
【
図11】実施例9のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率10000倍)。
【
図12】実施例9のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率30000倍)。
【
図13】実施例9のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率100000倍)。
【
図14】比較例11のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率10000倍)。
【
図15】比較例11のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率30000倍)。
【
図16】比較例11のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率100000倍)。
【
図17】比較例12のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率10000倍)。
【
図18】比較例12のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率30000倍)。
【
図19】比較例12のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率100000倍)。
【
図20】比較例11のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率10000倍)。
【
図21】比較例13のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率10000倍)。
【
図22】比較例14のリン酸鉄リチウムのSEM写真(倍率10000倍)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<リン酸アンモニウム鉄の製造方法>
本発明のリン酸アンモニウム鉄の製造方法は、
リン酸水素二アンモニウム水溶液と、アンモニア水とを混合し、液(1)を得る工程(A)、及び
前記液(1)と、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種を含む溶液(S)とを混合して、リン酸アンモニウム鉄を含む液(2)を得る工程(B)を含み、
前記液(2)のpHが9~11であり、
前記液(2)の鉄濃度が0.10mol/L以上1.0mol/L以下であり、
前記工程(B)において、前記液(1)と前記溶液(S)を一気に混合して前記液(2)を得る、リン酸アンモニウム鉄の製造方法である。
【0012】
[工程(A)]
工程(A)は、リン酸水素二アンモニウム水溶液と、アンモニア水とを混合し、液(1)を得る工程である。
工程(A)で用いられるリン酸水素二アンモニウム水溶液は、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)を含む水溶液であれば特に限定されない。
【0013】
工程(A)で用いられるアンモニア水は、アンモニアを含む水溶液であれば特に限定されない。
【0014】
工程(A)では、リン酸水素二アンモニウム水溶液と、アンモニア水とを混合し、液(1)を得る。
液(1)は、少なくとも、リン酸水素二アンモニウムとアンモニアとを含む液である。
【0015】
アンモニア水の使用量は、工程(B)で得られる液(2)のpHが9~11となるように調整することが好ましい。
【0016】
[工程(B)]
工程(B)は、液(1)と、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種を含む溶液(S)とを混合して、リン酸アンモニウム鉄を含む液(2)を得る工程である。
工程(B)で用いられる液(1)は、前述の工程(A)で得られるものである。
工程(B)では、液(1)中のリン酸水素二アンモニウムとアンモニアと、溶液(S)中の塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種とからリン酸アンモニウム鉄が合成される。
【0017】
工程(B)で用いられる溶液(S)は、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の少なくとも1種を含む溶液であれば特に限定されないが、塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)のいずれかのみの水溶液のほうが好ましい。
塩化鉄(II)を含む溶液は、エッチング廃液に由来する溶液であってもよい。エッチング廃液に由来する溶液とは、エッチング廃液又はエッチング廃液に対して何らかの処理(例えば酸化処理や還元処理)を行った後の溶液である。エッチング廃液に由来する溶液は通常は鉄以外の金属などの不純物を含有している。
【0018】
液(2)は、少なくとも、リン酸アンモニウム鉄を含む液である。
【0019】
液(2)のpHは9~11である。その際の温度は10℃~50℃が好ましく、15℃~40℃であることがより好ましい。
液(2)のpHが7.5以下ではリン酸アンモニウム鉄の生成よりもリン酸第一鉄(Fe3(PO4)2・8H2O)の生成が優先され、かつ球状の粒子を得ることができない。また、pHが8以上9未満の領域では一日程度の熟成時間を設けることでリン酸アンモニウム鉄を生成することができるが、微粒子で球状にならない場合がある。これはpHが8以上9未満の領域では、まずリン酸第一鉄が生成され、熟成させることでリン酸アンモニウム鉄に変わっていくためであると考えられる。すなわち、瞬時にリン酸アンモニウム鉄が析出されないため微粒子で球状にならないと考えられる。
【0020】
液(2)の鉄(Fe)濃度は0.10mol/L以上1.0mol/L以下であり、0.20mol/L以上0.80mol/L以下であることが好ましい。液(2)のFe濃度が0.10mol/L未満の場合、過飽和度が低いため粒子が球状になりにくい。一方で液(2)のFe濃度が1.0mol/L超の場合、Fe濃度が濃すぎるため混合液の粘性が上がり、攪拌が困難となるため好ましくない。
【0021】
工程(B)では、液(1)と溶液(S)を一気に混合して液(2)を得るが、具体的には、液(1)に溶液(S)を一気に添加して液(2)を得るか、溶液(S)に液(1)を一気に添加して液(2)を得るか、又は、液(1)と溶液(S)とを同一の容器に同時に投入して液(2)を得ることが好ましい。このようにすることで、初期過飽和度を大きくすることができ、微粒子で、形状が球状であり、かつ比表面積の大きなリン酸アンモニウム鉄を製造することができる。
液(1)に溶液(S)を一気に添加して液(2)を得る場合は、液(1)に溶液(S)を10秒以内に添加することが好ましい。
溶液(S)に液(1)を一気に添加して液(2)を得る場合は、溶液(S)に液(1)を10秒以内に添加することが好ましい。
液(1)と溶液(S)とを同一の容器に同時に投入して液(2)を得る場合、もともと液(1)が入っていた容器及び溶液(S)が入っていた容器から、これらとは別の容器に液(1)と溶液(S)とを同時に投入することが好ましい。投入する際の単位時間当たりの量は特に限定されない。また、容器も特に限定されない。
【0022】
液(1)に含まれるリン酸水素二アンモニウムの物質量をM1とし、溶液(S)に含まれる塩化鉄(II)及び硫酸鉄(II)の合計の物質量をM3とした場合、M1/M3が1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.3以下であることがより好ましい。
【0023】
液(2)がリン酸アンモニウム鉄を含む沈殿物を含む場合、公知の手段により固液分離を行い、リン酸アンモニウム鉄を回収することができる。具体的には沈殿物を含むスラリーを吸引ろ過し、必要に応じて水洗し、乾燥することで、リン酸アンモニウム鉄を得ることができる。
【0024】
<リン酸鉄リチウムの製造方法>
本発明のリン酸鉄リチウムの製造方法は、
前述のリン酸アンモニウム鉄の製造方法により製造されたリン酸アンモニウム鉄と、炭酸リチウムとを用いる、リン酸鉄リチウムの製造方法である。
【0025】
本発明のリン酸鉄リチウムの製造方法では、リン酸アンモニウム鉄と、炭酸リチウムとを混合し、得られた混合物を焼成することが好ましい。
焼成は、仮焼成と本焼成の2段階で行うことが好ましい。
【0026】
1段目の焼成工程(仮焼成)では、リン酸アンモニウム鉄と炭酸リチウムを遊星ボールミルで混合、粉砕し、400~600℃で、アルゴン水素下で、3~10時間焼成するのが好ましい。炭酸リチウムは鉄源に対して1.0~1.5モル当量のリチウム量が好ましい。1.0モル当量以上であれば、Fe2P2O7等のような酸化物が形成しにくく、1.5モル当量以下であればLi2O等のような酸化物が形成しにくいためである。遊星ボールミルでの混合は、300~600rpmで10~60分程度の混合が好ましい。
【0027】
2段目の焼成工程(本焼成)では1段目の焼成工程で得られた焼成物と炭素源(例えばキチン)を遊星ボールミルで混合、粉砕して焼成する。これにより、リン酸鉄リチウム粒子がカーボンコートされる。炭素源の使用量は、1段目の焼成工程で得られた焼成物に対して0.1~0.5重量倍であることが好ましい。
遊星ボールミルでの混合は、300~600rpmで10~60分程度の混合が好ましい。2段目(本焼成)の焼成温度は、600~800℃が好ましく、600℃~650℃がより好ましい。温度が上昇するにつれて一次粒子が結着し、二次粒子が粗大化するため、電池性能が低下する傾向がある。また、600℃未満ではリン酸鉄リチウムを合成させるための温度が不足しているため、600℃以上が好ましい。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<リン酸アンモニウム鉄の合成(共沈工程)>
【0030】
(実施例1)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで20mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L塩化鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.52mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRD(X線回折)で同定し、SEM(走査電子顕微鏡)で粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0031】
(実施例2)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが10となるように、4.0mol/Lで100mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L塩化鉄(II)水を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.37mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0032】
(実施例3)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが11となるように、4.0mol/Lで150mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L塩化鉄(II)水を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.31mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0033】
(実施例4)
試薬硫酸鉄(II)7水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度1.0mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで20mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.52mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0034】
(実施例5)
試薬硫酸鉄(II)7水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度1.0mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが10となるように、4.0mol/Lで100mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.37mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0035】
(実施例6)
試薬硫酸鉄(II)7水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度1.0mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが11となるように、4.0mol/Lで150mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.31mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0036】
(実施例7)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで20mL調製した。
リン酸水素二アンモニウム水溶液とアンモニア水を混合し、混合液(液(1))を得た。
上記混合液(液(1))125mLを10mL/秒の速度で、塩化鉄(II)水溶液を8mL/秒の速度で別のビーカーに添加しながら撹拌機を用いて混合させ、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.52mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表1にその結果を示す。
【0037】
(比較例1)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが8となるように、4.0mol/Lで5mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L塩化鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.56mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定を行ったところ、リン酸第一鉄とリン酸アンモニウム鉄が混在していたため、SEMでは観察しなかった。
【0038】
(比較例2)
試薬硫酸鉄(II)7水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度1.0mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが8となるように、4.0mol/Lで5mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.56mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定を行ったところ、リン酸第一鉄とリン酸アンモニウム鉄が混在していたため、SEMでは観察しなかった。
【0039】
(比較例3)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで5mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L塩化鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10mL/30秒で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.52mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表2にその結果を示す。
【0040】
(比較例4)
試薬硫酸鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度1.0mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を75mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで5mL調製した。
1.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10mL/30秒で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.52mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表2にその結果を示す。
【0041】
(比較例5)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度0.2mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を125mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、0.2mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を140mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、0.1mol/Lで200mL調製した。
0.2mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、0.1mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
0.2mol/L塩化鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.05mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表2にその結果を示す。
【0042】
(比較例6)
試薬硫酸鉄(II)7水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度0.2mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を125mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、0.2mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を140mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、0.1mol/Lで200mL調製した。
0.2mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、0.1mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
0.2mol/L塩化鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は0.05mol/Lであった。
得られた混合液(液(2))を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表2にその結果を示す。
【0043】
(比較例7)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度5.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、2.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を220mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで100mL調製した。
2.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
5.0mol/L塩化鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は1.2mol/Lであった。
しかしながら、液(2)は粘性が高く攪拌が困難となったため実験を中止した。
【0044】
(比較例8)
試薬硫酸鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeSO4濃度5.0mol/Lの硫酸鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸水素二アンモニウムが、硫酸鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、2.5mol/Lのリン酸水素二アンモニウム水溶液を220mL調製した。
アンモニア水は後の工程でpHが9となるように、4.0mol/Lで100mL調製した。
2.5mol/Lリン酸水素二アンモニウム水溶液と、4.0mol/Lアンモニア水を攪拌機で均一になるよう撹拌し、混合液(液(1))を得た。
5.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液を上記混合液(液(1))に10秒以内で添加し、混合液(液(2))を得た。
得られた混合液(液(2))のFe濃度は1.2mol/Lであった。
しかしながら、液(2)は粘性が高く攪拌が困難となったため実験を中止した。
【0045】
(比較例9)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸(H3PO4)が、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.2mol/Lのリン酸水溶液を90mL調製した。
アンモニア水は4.0mol/Lの濃度に調整した。
1.0mol/L塩化鉄(II)水溶液と、1.2mol/Lリン酸水溶液を撹拌機で均一になるよう撹拌し、pH9となるように、60mLの4.0mol/Lアンモニア水を徐々に添加した。
得られた混合液のFe濃度は0.39mol/Lであった。
得られた混合液を10分ほど熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表2にその結果を示す。
【0046】
(比較例10)
試薬塩化鉄(II)4水和物を純水で溶解し、FeCl2濃度1.0mol/Lの塩化鉄(II)水溶液を100mL調製した。
リン酸(H3PO4)が、塩化鉄(II)水溶液の鉄源の1.1モル当量のリン酸源となるように、1.2mol/Lのリン酸水溶液を90mL調製した。
アンモニア水は4.0mol/Lの濃度に調整し、後の工程でpHが9となる60mL調製した。
調製したリン酸水溶液とアンモニア水を混合して、リン酸-アンモニア混合溶液を作成した。
1.0mol/L塩化鉄(II)水溶液を撹拌機で混合し、作成したリン酸-アンモニア混合溶液を2.5mL/minで滴下した。
得られた混合液のFe濃度は0.39mol/Lであった。
得られた混合液を10分程度熟成させた後、スラリーを吸引ろ過し、水洗し、乾燥機で乾燥させ、乾燥物を得た。得られた乾燥物をXRDで同定し、SEMで粒子形状の確認を行った。表2にその結果を示す。
【0047】
【0048】
【0049】
<リン酸鉄リチウムの合成>
塩化鉄(II)水溶液を出発原料として合成した実施例1のリン酸アンモニウム鉄、硫酸鉄(II)水溶液を出発原料として合成した実施例4のリン酸アンモニウム鉄、比較例9と比較例10のリン酸アンモニウム鉄からリン酸鉄リチウムを合成する。また、リン酸鉄リチウム表面上にどの程度カーボンコートされているかを確認するため、有機元素分析装置で炭素分を測定したところ概ね3.5%程度の炭素量を確認した。
【0050】
(実施例9)
実施例1で得られたリン酸アンモニウム鉄と、リン酸アンモニウム鉄の鉄源に対して1.0モル当量のリチウム源となる炭酸リチウムとを遊星ボールミルで400rpm、30分粉砕・混合し、混合物を得た。混合物を管状電気炉で500℃アルゴン水素雰囲気下で5時間仮焼成した。得られた焼成物の重量に対して0.25重量倍のキチンを添加し、遊星ボールミルで400rpm、30分粉砕・混合させ管状電気炉で600℃24時間本焼成することでカーボンコートされたリン酸鉄リチウムを合成した。
【0051】
(実施例10)
実施例1で得られたリン酸アンモニウム鉄に代えて、実施例4で得られたリン酸アンモニウム鉄を使用した以外は実施例9と同様の操作を行い、カーボンコートされたリン酸鉄リチウムを合成した。
【0052】
(比較例11)
実施例1で得られたリン酸アンモニウム鉄に代えて、比較例9で得られたリン酸アンモニウム鉄を使用した以外は実施例9と同様の操作を行い、カーボンコートされたリン酸鉄リチウムを合成した。
【0053】
(比較例12)
実施例1で得られたリン酸アンモニウム鉄に代えて、比較例10で得られたリン酸アンモニウム鉄を使用した以外は実施例9と同様の操作を行い、カーボンコートされたリン酸鉄リチウムを合成した。
【0054】
(比較例13)
本焼成温度を600℃から690℃に変更した以外は比較例11と同様の操作を行い、カーボンコートされたリン酸鉄リチウムを合成した。
【0055】
(比較例14)
本焼成温度を600℃から800℃に変更した以外は比較例11と同様の操作を行い、カーボンコートされたリン酸鉄リチウムを合成した。
【0056】
<電池性能評価>
実施例9~10、比較例11~14で得られたリン酸鉄リチウムを正極材料として以下のようにコインセルを作成し電池性能を評価した。
【0057】
(コインセルの作成)
リン酸鉄リチウムとアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の比率が重量比90:5:5となるように調整し、溶媒としてN-メチルピロリドンを添加後、分散させることによってスラリーを得た。得られたスラリーをアルミ箔上に塗布し、乾燥した後、プレス機にかけ正極シートを得た。
得られた正極シートと負極にリチウム金属、電解液に1mol/L LiPF6/エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)(1:1容積比)を用いて2032コインタイプ電池を作成した。
【0058】
(充放電試験)
充放電試験結果を
図9及び
図10に示す。また表3に実験条件をまとめたものを記載する。実施例及び比較例の正極材料を備えたリチウムイオン電池を使用し、以下の条件で充放電を繰り返し、各充放電サイクルの充電、放電容量を測定した。
充電電流密度:0.1C rate (17mA/g)
放電電流密度:0.1C rate (17mA/g)
電圧 :2.0-4.5V (vs.Li+/Li)
充放電温度:25℃
【0059】
【0060】
図9の充放電曲線より、実施例9は比較例11及び12より不可逆容量が低いことが分かる。これは本焼成後に得られるリン酸鉄リチウムの粒径に起因していると考える。
図11~19にそれぞれのSEM写真を示す。
図11~13より実施例9のリン酸鉄リチウムは100~200nm程度の一次粒径を持つ粒子が4~10μmの二次粒子を形成していることが分かる。一方、
図14~16より、比較例11のリン酸鉄リチウムは1μm程度の一次粒径を持つ粒子が多く存在していることが分かる。
図17~19より、比較例12のリン酸鉄リチウムは100~200nm程度の一次粒径を持つ粒子が4~10μmの二次粒子を形成しているものの、粒径にバラツキが見られる。一般的に一次粒径が小さいほうが不可逆容量を小さくできるため、実施例9で不可逆容量を小さくできたと考えられる。
【0061】
なお、
図20~22より、比較例11と比較例13、14とを比較すると、本焼成温度を上げるに従い、初回放電容量が顕著に下がることが分かった。これは焼成温度を上げるに従い、一次粒子が肥大化したためであると考えられる。