(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136233
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】法面ブロックの搬送装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041743
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(71)【出願人】
【識別番号】598025511
【氏名又は名称】ユニパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 茂之助
(72)【発明者】
【氏名】城井 光雄
(72)【発明者】
【氏名】村野 光英
(72)【発明者】
【氏名】綱木 一郎
(72)【発明者】
【氏名】神岡 敬祐
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DB52
(57)【要約】
【課題】構成の簡素化及び載置面の傾斜角の低減を図ることが可能な法面ブロックの搬送装置を提供する。
【解決手段】法面ブロックの搬送装置100は、法面Aに積み上げる法面ブロックBを搬送する装置であって、間隔を開けて互いに平行に上下方向に延びるように法面Aに設置される2本のガイドレール10と、2本のガイドレール10にそれぞれ上下動自在に案内される摺動部20と、摺動部20を各ガイドレール10に沿って昇降させる昇降手段30と、水平方向に延びる回転軸を中心として回転自在な第1のローラ52を複数個有し、摺動部40にそれぞれ連結される第1の荷重受け部50と、法面ブロックBを載置することが可能な載置面Sを有し、前部が第1の荷重受け部50の前部に支持される載置部40と、載置部40の後部と第1の荷重受け部50との後部とを上下方向に連結する支持部80とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に積み上げる法面ブロックを搬送する装置であって、
間隔を開けて互いに平行に上下方向に延びるように前記法面に設置される2本のガイドレールと、
前記2本のガイドレールにそれぞれ上下動自在に案内される摺動部と、
前記摺動部を各前記ガイドレールに沿って昇降させる昇降手段と、
水平方向に延びる回転軸を中心として回転自在なローラを複数個有し、前記摺動部にそれぞれ連結される荷重受け部と、
前記法面ブロックを載置することが可能な載置面を有し、前部が前記荷重受け部の前部に支持される載置部と、
前記載置部の後部と前記荷重受け部との後部とを上下方向に連結する支持部と、を備えることを特徴とする法面ブロックの搬送装置。
【請求項2】
前記載置部又は前記荷重受け部と前記支持部との連結位置が変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の法面ブロックの搬送装置。
【請求項3】
前記載置面の周囲に、前記載置面に載置された前記法面ブロックの脱落を防止する脱落防止手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の法面ブロックの搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面ブロックを搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリートからなるブロック(法面ブロック)を積み上げて、切土や盛土などの法面を保護することがある。この際、法面ブロックは、作業者による手作業やレッカー車などの移動クレーンを用いて、1個ずつ設置位置まで移動させていた。このような移動作業は重労働であって煩雑であり、作業時間が長くかかっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そこで、特許文献2には、法面ブロックを据え付け位置まで搬送する搬送装置が開示されている。この搬送装置は、法面に設置される2本のガイドレールと、巻き上げ機によりガイドレールを昇降可能な昇降手段と、ローラを有する荷重受け部と、昇降手段と荷重受け部の間及び荷重受け部同士の間を水平方向に接続するように設けられ、載置板を載置する枠体とを備えている。この搬送装置を用いて、載置板に載置した法面ブロックを設置位置付近に搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-218348号公報
【特許文献2】特開2021-156138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の搬送装置においては、法面ブロックの荷重を受ける枠体が昇降手段と荷重受け部の間及び荷重受け部同士の間を水平方向に接続するように設けられるので、枠体とこれら部材との接続構造を頑強なものとする必要があり、構造が複雑化し、重量化するという問題があった。
【0006】
また、載置面は傾斜する法面とほぼ平行である。そのため、法面ブロックが載置板から滑り落ちることを防止するための構成を設ける必要があるという問題もあった。また、斜めに載置されている法面ブロックを載置板から持ち上げることは、作業者の体勢などの観点から困難であるという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、構成の簡素化及び載置面の傾斜角の低減を図ることが可能な法面ブロックの搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の法面ブロックの搬送装置は、法面に積み上げる法面ブロックを搬送する装置であって、間隔を開けて互いに平行に上下方向に延びるように前記法面に設置される2本のガイドレールと、前記2本のガイドレールにそれぞれ上下動自在に案内される摺動部と、前記摺動部を各前記ガイドレールに沿って昇降させる昇降手段と、水平方向に延びる回転軸を中心として回転自在なローラを複数個有し、前記摺動部にそれぞれ連結される荷重受け部と、前記法面ブロックを載置することが可能な載置面を有し、前部が前記荷重受け部の前部に支持される載置部と、前記載置部の後部と前記荷重受け部との後部とを上下方向に連結する支持部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の法面ブロックの搬送装置によれば、法面ブロックが載置される載置面を有する載置部は、その前部が荷重受け部の前部に支持され、その後部が支持部を介して荷重受け部の後部に支持される。そのため、法面ブロックの荷重は、荷重受け部に対して下方に向かって作用するので、上記特許文献2の技術のように水平方向に間に挟むように支持する場合と比較して、荷重受け部自体の構造並びに荷重受け部と載置部との接続構造の簡素化、ひいては軽量化を図ることが可能となる。
【0010】
また、上方に向かって傾斜する法面上にローラが接触した状態で移動する荷重受け部において、後部が支持部を介して載置部を支持するので、法面の傾斜角と比較して載置面の傾斜を水平に近づけることが可能となる。
【0011】
本発明の法面ブロックの搬送装置において、前記載置部又は前記荷重受け部と前記支持部との連結位置が変更可能であることが好ましい。
【0012】
この場合、法面の傾斜角に応じて、載置部又は荷重受け部と支持部との連結位置を変更することができるので、載置面の傾斜角をさらに水平に近づけることが可能となる。
【0013】
また、本発明の法面ブロックの搬送装置において、前記載置面の周囲に、前記載置面に載置された前記法面ブロックの脱落を防止する脱落防止手段を有することが好ましい。
【0014】
この場合、脱落防止手段により載置面に載置された法面ブロックの脱落を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る法面ブロックの搬送装置を法面に設置した状態を示す概略正面図。
【
図2】法面ブロックの搬送装置を法面に設置した状態において、第1の荷重受け部及び接続部などを拡大して示す概略部分正面図。
【
図5】法面ブロックを積み上げる方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る法面ブロックの搬送装置100(以下、単に搬送装置100ともいう)について図面を参照して説明する。なお、各図はデフォルメされており、細かな構造は省略されている。
【0017】
搬送装置100は、
図1及び
図2に示すように、切土や盛土の法面Aを保護するため、プレキャストコンクリートからなるブロック(法面ブロック)Bを、設置位置又はその近傍まで搬送する装置である。搬送装置100は、2本のガイドレール10、2つの摺動部20、2つの昇降手段30、3つの載置部40、2つの第1の荷重受け部50、2つの第2の荷重受け部60、2つの接続部70及び6つの支持部80を備えている。なお、第1の荷重受け部50は本発明の荷重受け部に相当する。
【0018】
2本のガイドレール10は、間隔を開けて互いに平行に上下方向に延びるように法面Aに設置される。2本のガイドレール10は、水平方向に連続して並べて積み上げられる法面ブロックBが複数個連続した間隔よりも大きな間隔、例えば5m~10mの間隔を開けて設置されている。ガイドレール10はアンカーなどで地盤に固定された支台11上に固定されている。
【0019】
ガイドレール10は、載置部40に複数個の法面ブロックBが載置されても、載置部40が横ぶれなく安定して昇降できるような強度を有しており、ここでは、梯子状に補強されて構成されている。そして、ガイドレール10は、搬送装置100の運搬を簡素化する観点から、例えばアルミニウム材を素材として軽量化を図ることが好ましい。
【0020】
各摺動部20は、各ガイドレール10に対して、ガイドレール10の長手方向に沿って摺動自在に設けられている。ここでは、各摺動部20は、詳細は図示しないが、2列計8個の車輪を有した台車21として構成されている。そして、一方の列の車輪がガイドレール10の外側のコの字のレール上を、他方の列の車輪がガイドレール10の内側のコの字のレール上を転動することにより、摺動部20がガイドレール10に沿って摺動自在となっている。
【0021】
さらに、各摺動部20は、図示しないが、各車輪の下方にそれぞれ位置するガイドローラを備えており、このガイドローラが、ガイドレール10の上記コの字状のレールのコの字状の内方及び上面に位置してガイドしている。これにより、各摺動部20は、位置ずれせずにガイドレール10に沿って摺動可能となっている。
【0022】
各昇降手段30は、摺動部20をそれぞれガイドレール10に沿って昇降させる。ここでは、昇降手段30として、巻き上げ機(ウインチ)31が用いられているが、これに限定されない。
【0023】
各巻き上げ機31は、それぞれガイドレール10の上部に設置されている。巻き上げ機31は、ガイドレール10とは別個にアンカーなどを用いて地盤に固定されていることが好ましい。これにより、ガイドレール10に作用する応力が軽減でき、ガイドレール10の軽量化を図ることが可能となる。ただし、巻き上げ機31はガイドレール10に固定されていてもよい。巻き上げ機31は、既存品を用いればよい。
【0024】
各巻き上げ機31にはワイヤ32の一端が接続されており、このワイヤ32は摺動部20の台車21に設置されたプーリ22を介して、他端が巻き上げ機31又はガイドレール10の上端部に固定されている。これにより、巻き上げ機31がワイヤ32を巻き上げると摺動部20がガイドレール10に沿って上昇し、巻き上げ機31がワイヤ32を巻き出すと摺動部20がガイドレール10に沿って下降する。なお、巻き上げ機31と摺動部20との接続はこれに限定されず、例えば、ワイヤ32の他端を摺動部20の台車21に固定するものであってもよい。
【0025】
そして、2台の巻き上げ機31の巻き上げ作動を同時に開始させると、2つの摺動部20がガイドレール10に沿って位置ずれなく上昇する。2台の巻き上げ機31の巻き出し作動を同時に開始すると、2つの摺動部20がガイドレール10に沿って位置ずれなく下降する。摺動部20の昇降速度は、例えば、1m/秒~10m/秒である。
【0026】
2台の巻き上げ機31の作動の開始又は停止は、各巻き上げ機31に設置されている作動ボタンなどを2人の作業者が同時に操作してもよいし、各巻き上げ機31の2台のリモコンなどを1人の作業が同時に操作してもよい。また、2台の巻き上げ機31を同時に作動する制御装置などを設けてもよい。
【0027】
載置部40は、それぞれ、法面ブロックBを載置することが可能な載置面Sを有している。載置部40は、ここでは、上面視で水平方向を長手方向とする細長い矩形状の矩形状の枠体41を有しており、この枠体41はトラス構造などによって下部が補強されており、この補強構造の上に、載置面Sを上面に有する載置板42が載置されている。 載置部40の枠体41及び補強構造は、アルミニウムや鉄鋼などの素材からなるH型材などの棒材を用いて構成されている。
【0028】
載置板42は、例えば、エキスパンドメタルなどの金属板や木造板などからなっている。そして、枠体41の上部41aは載置面Sより上方に位置しており、これにより、載置面Sに載置された法面ブロックBが落下することが防止されている。なお、枠体41の上部41aは、本発明の脱落防止手段に相当する。
【0029】
載置面Sは、法面ブロックBが少なくも1つ載置可能であり、好ましくは複数個のブロックBを水平方向に並べて載置可能であるだけの広さを有している。載置面Sは、例えば、幅が数m、奥行きが1m程度となっている。
【0030】
1個の法面ブロックBの重量は例えば10~30kgであり、例えば、このような法面ブロックBが数個から20個など載置面Sに載置可能な強度を載置部40は有している。
【0031】
第1の荷重受け部50は、摺動部20の内側にそれぞれ接続されており、第2の荷重受け部60は、2つの第1の荷重受け部50に間に位置しており、ここでは2つ存在している。
【0032】
そして、接続部70が、摺動部20と第1の荷重受け部50とを接続している。載置部40が、第1の荷重受け部50の前部と第2の荷重受け部60の前部とを、また、第2の荷重受け部60の前部同士を接続している。支持部80が、第1の荷重受け部50及び第2の荷重受け部60の後部と載置部40の後部と接続している。
【0033】
なお、ここでは、搬送装置100は、2つの第2の荷重受け部60を備えている。しかし、これに限定されず、例えば、第2の荷重受け部60が3つ以上存在するものであっても、第2の荷重受け部60が存在せず、第1の荷重受け部50同士が載置部40により直接的に接続されているのものであってもよい。
【0034】
第1の荷重受け部50は、
図3に示すように、それぞれ、アルミニウムや鉄鋼などの素材からなる棒材から構成された枠体51と、枠体51に回転自在に設けられた2個の第1のローラ52とを備えている。第1のローラ52は、それぞれの回転軸が水平方向に延びており、上下方向に間隔をあけて平行に並設されている。
【0035】
そして、枠体51は、接続部70を介して摺動部40に連結されている。ここでは、接続部70は、アルミニウムや鉄鋼などの素材からなる棒材からなる構造体71を有し、この構造体71の内側端部が枠体51に固定されている。そして、摺動部20の台車21にワイヤ72の一端が連結されており、このワイヤ72の他端と構造体71の外側端部とが連結されている。
【0036】
これらの連結は、ここでは、ワイヤ72の両端にリングを設け、台車21及び構造体71にそれぞれ形成された貫通孔とこれらリングとにそれぞれピン73を挿通させることにより、摺動部40と第1の荷重受け部50とを着脱自在に連結している。ただし、これらの連結の手段はこれに限定されず、例えば、台車21と構造体71とをボルトや溶接などを用いて直接的に連結してもよい。ただし、ピン73を用いて連結することにより、第1の荷重受け部50の挙動が直接的に摺動部40に伝達されないという利点を有する。
【0037】
第1の荷重受け部50において、載置部40の枠体41の前部を支持するように、この前部が枠体41の前部に回動可能に連結されている。ここでは、具体的には、第1の荷重受け部50の枠体51の前部に水平方向に延在する丸棒51aが設けられ、枠体41の外端部に位置する部材の前部の下面に固定された部材43に下方が開放された円状の孔43aが形成されている。そして、この孔43aが丸棒51aに支持されることにより、枠体41の前部は枠体51の前部に対して回動可能となっている。なお、過度に回動して孔33aが丸棒51aから外れないように、ストッパ44が部材43に設けられている。
【0038】
また、第1の荷重受け部50は、それぞれ、その枠体51の後部に支持部80の下部が連結されている。ここでは、具体的には、枠体51の後部に水平方向に延在するように丸棒51bが設けられている。そして、支持部80は、長尺に延びる支持部本体81を有し、支持部本体81の下部に固定された部材82に下方が開放された円状の孔82aが形成されている。そして、この孔82aが丸棒51bに支持されることにより、支持部80の下部は枠体51の後部に対して回動自在となっている。なお、過度に回動して孔82aが丸棒51bから外れないように、ストッパ83が部材82に設けられている。
【0039】
そして、支持部本体81の上部には調整部材84が固定されている。この調整部材84は、水平方向に貫通し、支持部本体81の長手方向に離間する複数の貫通孔84aが形成されている。一方、枠体41の外端部に位置する部材の後部に部材45が固定されており、この部材45に水平方向に貫通孔45aが形成されている。そして、複数の貫通孔84aのうちの1つと貫通孔45aとをピン85を挿通させることにより、支持部80の上部は枠体51の後部に対して回動自在となっている。なお、支持部80を構成する支持部本体81、部材82、ストッパ83及び調整部材84は、アルミニウムや鉄鋼などの素材からなる棒材から構成されている。
【0040】
第2の荷重受け部60は、
図4に示すように、それぞれ、アルミニウムや鉄鋼などの素材からなる棒材から構成された枠体61と、枠体61に回転自在に設けられた4個の第2のローラ62とを備えている。第2のローラ62は、それぞれの回転軸は水平方向に延びており、上下方向に間隔をあけて2個ずつ近接して平行に並設されている。
【0041】
第2の荷重受け部60と載置部40との接続は、第1の荷重部50と載置部40と同様に接続されている。
【0042】
すなわち、第2の荷重受け部60の枠体61の前部に設けられた丸棒61aが、載置部40の枠体41の部材43に形成されている孔43aに支持されることにより、載置部40の枠体41の前部は第2の荷重受け部60の枠体61の前部に対して回動可能となっている。また、第2の荷重受け部60の後部に設けられた丸棒61bが、支持部80の部材82に形成されている孔82aに支持されることにより、支持部80の下部は第2の荷重受け部60の枠体61の後部に対して回動自在となっている。
【0043】
さらに、支持部80の調整部材84に形成されている複数の貫通孔84aのうちの1つと貫通孔45aとをピン85を挿通させることにより、支持部80の上部は第2の荷重受け部60の枠体61の後部に対して回動自在となっている。
【0044】
第1及び第2のローラ52,62は、載置面Sに載置された複数個の法面ブロックBによる荷重を支持するので、大きな耐荷重性能を有することが好ましい。そこで、特に第2のローラ62は、軸受けにローラベアリングを使用し、外周にウレタンなどの高強度樹脂を直接焼き付けてなる高荷重ローラを用いることが好ましい。また、このようなローラを用いることにより、法面ブロックBの傷付きを抑制することが可能となる。
【0045】
さらに、第2の荷重受け部60においては、第2のローラ62は4個存在し、これら4個の第2のローラ62は第1のローラ52と比較して幅広のものが用いられている。これにより、1個の第2のローラ62が法面ブロックBの凹部に落ち込んでも、他の3個の第2のローラ62が法面ブロックBの凸部との接触が維持されることにより、載置部40の撓みなどの変形を抑制し、載置部40の滑らかな昇降が図られる。
【0046】
ただし、第1のローラ52の個数は、2個に限定されず、1個であっても、3個以上であってもよい。また、第2のローラ62の個数は、4個に限定されず、3個以下であっても、5個以上であってもよい。
【0047】
このように、載置部40は、その左右方向の両端部がそれぞれ支持部80を介して第1の荷重受け部50と第2の荷重受け部60に、又は、共に第2の荷重受け部60に支持される。支持部80は、第1及び第2の荷重受け部50,60の後部と載置部40の後部とを間を連結し、載置部40にブロックBが載置されたときに作用する荷重を第1及び第2の荷重受け部50,60に伝達する。
【0048】
そして、複数の貫通孔84aのうち何れにピン85を挿通するか選択することにより、載置部40の載置面Sの傾斜角を調整することができる。これにより、搬送装置100を設置する法面Aの傾斜角が相違しても、載置面Sを水平又は略水平とすることが可能となる。なお、載置面Sに載置したブロックBが法面Aを落下し難いように、載置面Sは少し前下がりに傾斜するように調整することが好ましい。
【0049】
以下、上述した搬送装置100を用いて法面ブロックBを積み上げる方法について
図5も参照して説明する。
【0050】
まず、間隔を開けて上下方向に平行に延びるように2本のガイドレール10を法面Aに設置するガイドレール設置工程(S1)を行う。このとき、法面Aに積み上げるべき最下列の法面ブロックBは予め積み上げておくことが好ましい。また、搬送作業が左程大変でなければ、法面Aに積み上げるべき下から2列などの法面ブロックBも予め積み上げておいてもよい。
【0051】
次に、載置部40及び昇降手段30を設置して搬送装置100を完成させる載置部設置工程(S2)を行う。この載置部設置工程(S2)後に、法面Aに積み上げるべき最下列の法面ブロックBなどを積み上げてもよい。
【0052】
次に、載置部40の載置面Sに複数個の法面ブロックBを載置する法面ブロック載置工程(S3)を行う。法面ブロックBの載置作業は、作業員が手作業で行っても、レッカー車などの移動クレーンなどを用いて行ってもよい。
【0053】
ここでは、2本のガイドレール10間の間隔にわたって法面に1列に亘って積み上げられるべき全ての法面ブロックBを載置面Sに載置することが好ましい。ただし、2列以上に亘って積み上げられるべき法面ブロックB、又は1列に積み上げられるべき法面ブロックBの一部のみを載置面Sに載置してもよい。
【0054】
次に、載置部40を2本のガイドレール10に沿って上昇させる載置部上昇工程(S4)を行う。2台の巻き上げ機31を同時に作動することにより、載置面Sに載置されている法面ブロックBの設置位置の近傍に載置面Sが位置するように、載置部40を上昇させて停止させる。
【0055】
次に、載置部40の載置面Sに載置されている法面ブロックBを法面A上に降す法面ブロック降し工程(S5)を行う。法面ブロックBの載置作業は、作業員が手作業で行えばよい。
【0056】
次に、降した法面ブロックBを法面A上に積み上げる法面ブロック積み上げ工程(S6)を行う。法面ブロックBの積み上げ作業は、作業員が手作業で行えばよい。法面ブロックBを設置位置の近傍に降すことができるので、法面ブロックBを移動させる手間の削減を図ることが可能となる。
【0057】
次に、載置部40を2本のガイドレール10に沿って下降させる載置部下降工程(S7)を行う。2台の巻き上げ機31を同時に作動することにより、載置部40を当初の下部にまで下降させて停止させる。
【0058】
その後、法面Aに所定の高さまで法面ブロックBの積み上げが完了するまで(S8:YES)、法面ブロック載置工程(S3)から載置部下降工程(S7)を繰り返し行う。
【0059】
そして、法面ブロックBの積み上げが完了したら、最後に搬送装置100を解体する解体工程(S9)を行い、作業が終了する。
【0060】
以上説明したように、法面ブロックの搬送装置100によれば、法面ブロックBが載置される載置面Sを有する各載置部40は、その前部が第1又は第2の荷重受け部50,60の前部に支持され、その後部が支持部80を介して第1又は第2の荷重受け部50,60の後部に支持される。
【0061】
そのため、法面ブロックBの荷重は、第1及び第2の荷重受け部50,60に対して下方に向かって作用するので、上記特許文献2の技術のように水平方向に間に挟むように支持する場合と比較して、第1及び第2の荷重受け部50,60自体の構造並びに第1及び第2の荷重受け部50,60と載置部40との接続構造の簡素化を図ることが可能となる。
【0062】
また、上方に向かって傾斜する法面上に第1又は第2のローラ52,62が接触した状態で移動する第1及び第2の荷重受け部50,60において、後部が支持部80を介して載置部40を支持するので、法面の傾斜角と比較して載置面Sの傾斜角を水平に近づけることが可能となる。
【0063】
なお、本発明は、上述した搬送装置100に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、本発明の脱落防止手段に相当するものとして、枠体41の上部41aは載置板42の全周に亘って設けられているが、例えば、法面ブロックBがずれ落ちないように、載置板42の後方側にのみ脱落防止手段を設けてもよい。また、脱落防止手段となる部材を枠体41に別個設置してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…ガイドレール、 11…支台、 20…摺動部、 21…台車、 22…プーリ、 30…昇降手段、 31…巻き上げ機、 32…ワイヤ、 40…載置部、 41…枠体、 41a…枠体の上部(脱落防止手段)、 42…載置板、 43…部材、 43a…孔、 44…ストッパ、 45…部材、 45a…貫通孔、 50…第1の荷重受け部(荷重受け部)、 51…枠体、 51a…丸棒、 51b…丸棒、 52…第1のローラ、 60…第2の荷重受け部、 61…枠体、 61a…丸棒、 61b…丸棒、 62…第2のローラ、 70…接続部、 71…構造体、 72…ワイヤ、 73…ピン、 80…支持部、 81…支持部本体、 82…部材、 82a…孔、 83…ストッパ、 84…調整部材、 84a…貫通孔、 85…ピン、 100…法面ブロックの搬送装置、 A…法面、 B…法面ブロック、 S…載置面。