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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136249
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ハードキャンディ
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20230922BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20230922BHJP
   A23J 1/14 20060101ALI20230922BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23L11/00 Z
A23J1/14
A23J3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041767
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】391004218
【氏名又は名称】カンロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】塩松 洋造
(72)【発明者】
【氏名】木ノ本 桃子
(72)【発明者】
【氏名】小沼 麻美
(72)【発明者】
【氏名】島田 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 圭太
【テーマコード(参考)】
4B014
4B020
【Fターム(参考)】
4B014GB09
4B014GG06
4B014GG09
4B014GG13
4B014GG14
4B014GG18
4B014GL07
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP23
4B014GQ09
4B020LB27
4B020LC01
4B020LC03
4B020LG04
4B020LG05
4B020LK04
4B020LK05
4B020LK07
4B020LK08
4B020LP03
4B020LP10
4B020LP11
4B020LP15
4B020LP19
4B020LP20
4B020LP24
(57)【要約】
【課題】
本発明は、まろやかな後味を有し、豆乳による青臭さが少ないキャンディを提供することを課題とする。
【解決手段】
豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、
豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、
脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、
ハードキャンディ。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、
豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、
脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、
ハードキャンディ。
【請求項2】
前記ハードキャンディは、動物性原料を含まないことを特徴とする、
請求項1に記載のハードキャンディ。
【請求項3】
以下の撮影条件により前記ハードキャンディの写真を撮影し、
撮影した写真を以下の変換方法によって8bitグレースケール変換して得られる画像において、該画像上のハードキャンディ表面における2以上の画素の画素値の平均値が180以上であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のハードキャンディ;
[撮影条件]
照明:白色光のLEDリングライト照明によって、ハードキャンディから鉛直方向に15cm離れた位置から落射照明によって照射
カメラ:顕微鏡用カメラ
レンズ倍率:1倍
露光時間:97.09ms
ISO感度:400
キャンディ撮影位置における照明をつけた時の照度:5560lux
キャンディ撮影位置における照明を消した時の照度:430lux
[変換方法]
各画素のR(赤)値、G(緑)値、B(青)値を平均して、各画素のグレースケールの値を算出する。
【請求項4】
前記ハードキャンディは、豆乳パウダーを含まないことを特徴とする、
請求項1~3の何れか一項に記載のハードキャンディ。
【請求項5】
前記ハードキャンディは、豆乳以外の原料を由来とする脂質を含むことを特徴とする、
請求項1~4の何れか一項に記載のハードキャンディ。
【請求項6】
前記豆乳以外の原料は、カカオバター、大豆油、ココナッツオイルから選ばれる、
請求項5に記載のハードキャンディ。
【請求項7】
前記ハードキャンディの固形分値は、96.5質量%以上である、
請求項1~6の何れか一項に記載のハードキャンディ。
【請求項8】
前記ハードキャンディは、香料を含まないことを特徴とする、
請求項1~7の何れか一項に記載のハードキャンディ。
【請求項9】
豆乳を含む原料を加熱濃縮する濃縮工程と、
濃縮工程で得られたキャンディ生地を冷却する冷却工程とを備え、
前記濃縮工程におけるキャンディ生地の最高品温が120℃以下であることを特徴とする、
豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、
豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、
脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、ハードキャンディの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
<豆乳>
近年、食事における健康志向や自然志向が強まり、また、持続可能な社会を目指すという倫理観も影響し、動物性の食品を植物性の食品に代替する傾向が拡大している。宗教的な食事制限ばかりではなく、独自の思想やファッションとしてのベジタリアンが増加しており、動物食を全く食べないビーガン、動物食を控える程度のフレキシタリアンなど、ベジタリアンの中でも動物食の制限レベルがあり、多様な食事への価値観が広がっている。その価値観の背景には、動物愛護の思想、栄養に関する健康影響への多様な解釈、あるいは、家畜の育成に多大な水や牧草を必要とするための環境負荷、家畜が排出する二酸化炭素やメタンガスによる温室効果に対する不安など、様々な動機があるという。特に欧米においては、ベジタリアンに向けて、植物性の肉製品模造品(ハンバーガーやフリットなど)、乳製品では、ひよこ豆の植物性アイスクリーム、豆乳ヨーグルトなどが増加している。また、もはや牛乳の代替品という扱いではないという考えもあるが、ミルク類では、豆乳、ライスミルク、アーモンドミルク、オーツミルクなどの市場も成長している。
【0003】
日本市場においては、豆乳市場が堅調な状況であり、小売業における売場面積が年々拡大している。豆乳が初めて発売された際、大豆由来の青臭い風味等が原因で、消費者の受容は低かった。しかし、蒸気を直接吹き込んで短時間で加熱し、臭みの原因であるリポキシゲナーゼ活性を制御するなどの様々な技術開発により、豆乳は美味しくて健康的な清涼飲料となった。豆乳の中でも、現在最も売上げの大きいものは調整豆乳であり、次に豆乳、豆乳飲料と続く。
【0004】
更に、飲料としての豆乳ばかりではなく、豆乳鍋や豆乳アイスクリーム、豆乳ヨーグルトも市場に定着しており、原料として使用される業務用の豆乳も併せて成長している。もともと日本においては、醤油、味噌、豆腐などから馴染みの深い大豆であったが、大豆の利用の幅が、豆乳の進化によって広がっている。
【0005】
大豆は植物の中でも、良質なタンパク質と脂質を多く含むため、様々な食品に有効利用されるべきものである。大豆タンパク質は血中コレステロールの低下、サポニンはコレステロール吸収抑制、イソフラボンは骨粗しょう症予防やホルモンバランス調和、レシチンは動脈硬化予防、オリゴ糖は腸内の悪玉菌を抑えて便通改善を促進するなど、様々な生理機能も報告されている。豆乳は美味しさと健康が両立する食品として受け入れられている。
【0006】
また、国内外で店舗を増やしている植物性食材のレストランでは、植物性の料理ばかりではなく、スイーツにおいても、ティラミスやプリンのように、本来は牛乳で作られるものが大豆原料により美味しく作られ、特に健康意識、自然派志向の高い女性ユーザーの間で人気が上昇している。スイーツの世界でも、豆乳を用いたスイーツは、牛乳の代替品という見方ではなく、植物性スイーツとして、オリジナルな美味しさを開拓し、新しいスイーツのジャンルとして発展している。
【0007】
しかしながら、牛乳由来の生クリームや練乳などを多く配合したスイーツは昔から非常に多く存在し、上記のような豆乳を利用したプリン、ヨーグルト、アイスクリームなどのスイーツは発展してきているものの、キャンディにおいては、ほとんど開発されていない。
【0008】
<キャンディ>
キャンディは、大きく分類すると、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミ、ゼリー、乾燥物、マシュマロ、ボンボン、掛け物に分類される。
ハードキャンディは、硬い食感のキャンディを指す。一般的には、主に砂糖、水あめをベースとし、水分3%程度まで加熱濃縮したものを成形、冷却して製造される(製菓辞典 朝倉書店、菓子の辞典 朝倉書店)。
【0009】
これらのキャンディの製法においては、原料として、砂糖、水あめが主であるが、マルトース、トレハロース、ラクトースのような砂糖以外の2糖類を用いて風味をさっぱりさせたり、香気を生じるメイラード反応の反応性の高いキシロースを用いることで、乳原料とキシロースをメイラード反応させてキャラメルの独特な風味を作り出したり、あるいは、糖アルコールの水あめを使用して低カロリーで虫歯になりにくいノンシュガーキャンディを作るなど、糖の使い分けには様々な技術がある。
【0010】
キャンディ生産における砂糖や水あめの加熱濃縮の方法も様々であり、直火釜、蒸気釜、オイル釜、IH釜、熱交換率がよく短時間で加熱できるコイルクッカー、フィルムクッカー、遠心薄膜クッカー、バッチ式、連続生産式などがある。高温加熱によってメイラード反応を促進させ、焙焼香気を付ける黒飴やキャラメルのようなものや、逆に、減圧加熱により低温で濃縮することでメイラード反応を抑えて、フレッシュな香りを残すような製法でミルクキャンディを生産するものもある。目的に応じて、原料や生産設備、加熱濃縮方法などは選択される。
【0011】
<カラメル化反応>
カラメル化反応とは、糖を高温加熱すると脱水分解反応を起こし、甘いカラメル様香気の生成とともに褐色化する複雑な経路の反応である。この着色物質がカラメルであり、カラメルはpH2.3~3.0においては着色が少なく、pH5.5~6.2において完全に褐色になる。配合された糖の種類、あるいは、原料配合後の処理操作によって生成される構成糖、加熱温度により風味の違いや着色程度に濃淡が生じる。香気成分としては、脂肪族カルボニル化合物、脂肪族アルコール、脂肪族飽和炭化水素、フラン化合物、芳香族化合物などがあげられる。
プリン用のような一般的なカラメルは、砂糖を品温180℃程度まで加熱し、加水し、目的に応じて、固形にしたり液状にしたりすることができる。加熱温度を高くし、ビターな風味を強くすることもできる。また、目的に応じて、増粘剤、pH調整、蛋白質原料、乳化剤などを配合して、香りや物性を調整することができる。
例えば、べっこう飴は、砂糖を高温加熱することで、カラメル化反応によって独特の甘い香気を生じるものである。
【0012】
<メイラード反応>
メイラード反応とは、L.C.Maillardが1912年に見出したアミノカルボニル反応の一種である。アミノ酸のアミノ基と還元糖の還元末端が結合することから始まる複雑な経路をもち、褐色変化して様々な香気成分を発する反応である。
反応に伴って褐色変化(ブラウニング)も生じ、その褐色の高分子物質をメラノイジンという。昨今の研究によると、メラノイジンは、糖とアミノ酸の結合から生じるが、糖にもアミノ酸にも重合体が存在し、更には、糖分子の構成単位が常に安定しているわけではなく、加熱中に脱水、開裂、縮合、重合をし、アミノ酸分子もカルボキシル基以外は骨格を保っているが様々な分子構造に変動するものであるため、メラノイジンとは不定形な混合物であり、昨今はかなり低分子のメラノイジンも多く見つかっている(日本食品科学工学会誌 第67巻 第1号 2020年1月)。
香気成分としては、フラン類、フラノン類、マルトール、ピロール類、イミダゾール類、オキサゾール類、チアゾール類、チオフェン類、ピリジン類、ピラジン類、アルデヒド類、スルフィド類、ジカルボニル化合物類、メルカプタン類、ジスルフィド類などが挙げられる(藤田明 蛋白質の糖化 1997年)。
アミノ基を2つ有するリジン、オルニチン、アルギニンと、還元末端が反応性に富むキシロースを組み合わせることで、メイラード反応は促進される。アミノ基を少なくし、還元糖を減らすことでメイラード反応による褐色変化を抑えることもできる。また、加熱温度を低くすることによってもメイラード反応を抑制することができる。メイラード反応のコントロールは食品には欠かせない加工技術であり、一般的には褐色変化を、褐色の吸光測定によって数値化して評価する。
【0013】
ほとんどのアミノ酸は、それ自体で味を呈するものであり、甘味、苦味、酸味、Na塩では塩味、旨味を呈し5源味の全てを持っている物質である。アミノ酸が数個つながったペプチドでは、アスパルテームのような強い甘味のもの、チーズの苦味であるカゼインペプチド、酸味、Na塩では旨味、他にも、オルニチルタウリン塩酸塩のような塩味ペプチドも報告されている。
ただし、これらの呈味は、キャンディのような糖が主原料であり、甘味が強い基材の中では、その呈味の特長を発揮できず、むしろ、糖と加熱することにより生じるメラノイジンの風味のほうが強く呈される。メイラード反応の香気は、アミノ酸の種類によって様々であることは多くの文献で報告されている(木村進ら編 食品変化の化学 P415 光琳 1995年)。
【0014】
<油脂>
完全に精製された油脂は無味無臭であるとされるが、天然の油脂は様々な微量成分を含み、これが異味異臭の原因となったり、酸化により複雑な酸化臭とともに刺激味を呈したりすると言われている。大豆から作られる豆乳の場合は、植物体を粉砕して加工することでリポキシゲナーゼが作用し、油脂が酸化され、不快な青臭さを発生する場合もある。
乳製クリームのように油脂が脂肪球として存在する場合は、エマルジョンやコロイドの状態のいかんで物性的に口当たりに影響し、油脂も直接的にあるいは間接的に味覚に多大な影響を与えていることが知られている(油化学 第19巻第8号1970 東北大学 薄木ら 612-619)。
油脂は固形の状態で食す場合は、その融点の違いや液化する速度の違いで、くちどけの速さの挙動も変わり、味の伝わり方に影響を及ぼす。また、舌が油で被覆されると水溶性の呈味物質の味受容体および臭受容体への移動が影響され、その結果知覚が弱められたり、妨げられたりする場合もある。一方で、味覚ではないが、舌の奥では油の存在を認識し、脳内へエネルギー源であることをシグナル伝達し、βエンドルフィンのような快感物質の発現にも影響していると言われており、(社団法人日本酪農乳業協会 メディアミルクセミナー No.28京都大学 伏木ら)味覚とは異なる次元で食欲を満たす作用もあるという。
油脂の味覚自体は極めて弱いが、油脂は食品の香りに影響するところが多い。そもそも天然の油脂では、牛乳由来の生クリームや柑橘由来の精油においても、油脂中にそれぞれの食品の特徴的な香気成分が含まれている場合が多い。爽やかな香りを呈する米油やアーモンド油に関しては、酸化して戻り臭、変敗臭が生じやすいものであり、香りが良いからといって、食品に安易に配合できるものではない。食品の香味付けに油脂を配合する場合は、油脂の戻り臭、変敗臭が発生しないように、抗酸化剤を併用したり、包装工程で窒素充填したりするなどの配慮が求められる。
【0015】
先行文献1には、脂肪分を含有するノンシュガーハードキャンディ部を調製し、該ノンシュガーハードキャンディ部の温度を100℃以上、135℃以下に調温した後に、分子量5000~50000の画分を50重量%以上含有する乳たんぱく質分解物を添加する工程を含むノンシュガーミルクハードキャンディの製造方法が記載されている。
【0016】
先行文献2には、飴基材に粉末豆乳を配合したことを特徴とする豆乳キャンディが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2012-70685号公報
【特許文献2】特開2003-274863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、まろやかな後味を有し、豆乳による青臭さが少ないキャンディを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、脂質の含有率を一定範囲内とすることで、まろやかな後味を有する豆乳キャンディが得られることを見出した。また、豆乳由来タンパク質及び豆乳由来脂質の含有率を一定範囲内とすることで、豆乳による青臭さが少ない豆乳キャンディが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、ハードキャンディである。
【0020】
また、本発明の好ましい形態では、前記ハードキャンディは、動物性原料を含まないことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の好ましい形態では、以下の撮影条件により前記ハードキャンディの写真を撮影し、撮影した写真を以下の変換方法によって8bitグレースケール変換して得られる画像において、該画像上のハードキャンディ表面における2以上の画素の画素値の平均値が180以上であることを特徴とする;
[撮影条件]
照明:白色光のLEDリングライト照明によって、キャンディから鉛直方向に15cm離れた位置から落射照明によって照射
カメラ:顕微鏡用カメラ
レンズ倍率:1倍
露光時間:97.09ms
ISO感度:400
キャンディ撮影位置における照明をつけた時の照度:5560lux
キャンディ撮影位置における照明を消した時の照度:430lux
[変換方法]
各画素のR(赤)値、G(緑)値、B(青)値を平均して、各画素のグレースケールの値を算出する。
【0022】
また、本発明の好ましい形態では、前記ハードキャンディは、豆乳パウダーを含まないことを特徴とする。
豆乳パウダーを含まないことによって、豆乳の濃厚な風味を有するキャンディが得られる。
【0023】
また、本発明の好ましい形態では、前記ハードキャンディは、豆乳以外の原料を由来とする脂質を含むことを特徴とする。
豆乳以外の原料を由来とする脂質を含むことによって、後味のまろやかさを増強することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい形態では、前記豆乳以外の原料は、カカオバター、大豆油、ココナッツオイルから選ばれる。
これらの原料は、長期保管をしても酸化臭を発生しにくい。
【0025】
また、前記ハードキャンディの固形分値は、96.5質量%以上である。
固形分値を上記上限以下とすることによって、ハードキャンディのべたつきを抑制することができる。
【0026】
また、本発明の好ましい形態では、前記ハードキャンディは、香料を含まないことを特徴とする。
本発明に係るキャンディは、香料を含まなくとも、十分な豆乳の濃厚な風味を有する。
【0027】
また、本発明は、豆乳を含む原料を加熱濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られたキャンディ生地を冷却する冷却工程とを備え、前記濃縮工程におけるキャンディ生地の最高品温が120℃以下であることを特徴とする、豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、ハードキャンディの製造方法に関する。
脂質の含有量を上記範囲内とすることで、まろやかな後味を有するキャンディが得られる。また、豆乳由来タンパク質及び豆乳由来脂質の含有量を上記範囲内とすることで、豆乳による青臭さが少ないキャンディが得られる。
【0028】
また、濃縮工程におけるキャンディ生地の最高品温を上記上限以下にすることによって、メイラード反応を抑制することができ、着色を抑制し、加熱臭を抑制することができる。また、加熱臭による豆乳の風味のマスキングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係るキャンディの外観
図2】製造フロー
図3】比較例1のキャンディの写真
図4】比較例2のキャンディの写真
図5】比較例3のキャンディの写真
図6】比較例4のキャンディの写真
図7】比較例5のキャンディの写真
【発明を実施するための形態】
【0030】
<ハードキャンディ>
本発明に係るキャンディは、ハードキャンディである。
【0031】
<キャンディの固形分値>
本明細書において、キャンディの固形分値とは、キャンディ全体の重量に対するキャンディに含まれる固形分の重量の割合を指す。
本発明に係るキャンディの固形分値は、好ましくは96.5質量%以上、より好ましくは97.0質量%以上である。
固形分値が上記下限以上であるキャンディは、べたつきが抑制されている。
【0032】
キャンディの固形分値は、例えばカールフィッシャー法によって水分を測定し、水分以外の部分を固形分値として測定することができる。
カールフィッシャー法は、電解液中に含まれるヨウ化物イオンを電解させることでヨウ素を発生させる。発生したヨウ素は、塩基とアルコールの存在下で、水と二酸化硫黄と反応して消費される。そのため、ヨウ素の発生に要した電気量から水分量及び固形分値を求めることができる。
【0033】
<植物性キャンディ>
本発明に係るキャンディは、動物性原料を含まないことが好ましい。例えば、本発明に係るキャンディは、牛乳を含まないことが好ましい。
動物性原料を含まないキャンディは、環境負荷が少ない他、様々な食文化や倫理観を持つ人に受け入れられやすい。
【0034】
<キャンディに含まれる豆乳由来の成分>
本発明に係るキャンディは、豆乳を含む。
本発明においては、キャンディに含まれる豆乳由来の成分として、豆乳由来タンパク質と、豆乳由来脂質の含有率に着目した。
【0035】
本発明に係るキャンディは、豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上、好ましくは1.2質量%以上、より好ましくは1.4質量%以上、さらに好ましくは1.6質量%以上含む。
豆乳由来タンパク質を上記下限以上含むことによって、豆乳の濃厚な風味が感じられるキャンディが得られる。
【0036】
また、本発明に係るキャンディは、豆乳由来タンパク質を2.5質量%以下、より好ましくは2.2質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下含む。
豆乳由来タンパク質を上記上限以下とすることで、豆乳由来タンパク質のエグ味を抑えることができる。
また、タンパク質は糖とともに加熱することによってメイラード反応を起こす。メイラード反応によって、加熱臭が生じ、その加熱臭によって豆乳の濃厚な風味がマスキングされてしまう。また、メイラード反応によるブラウニングによって着色してしまう。
豆乳由来タンパク質を上記上限以下とすることで、メイラード反応を抑制し、加熱臭、加熱臭による豆乳の濃厚な風味のマスキング、ブラウニングによる着色を抑制することができる。
【0037】
また、本発明に係るキャンディは、豆乳由来タンパク質以外のタンパク質を含んでもよい。豆乳由来タンパク質以外のタンパク質を含めた全てのタンパク質の含有率の上限は、上記の豆乳由来タンパク質の上限に準ずる。
【0038】
キャンディ中のタンパク質含有率は、キャンディ中に含まれる、タンパク質を含む各原料由来のタンパク質含有率の和として求めることができる。例えば、タンパク質を含む原料A、原料B、原料C、・・・を含むキャンディにおいて、キャンディのタンパク質含有率は、以下の式で求められる。
キャンディのタンパク質含有率(質量%)
=キャンディの原料A由来のタンパク質含有率(質量%)
+キャンディの原料B由来のタンパク質含有率(質量%)
+キャンディの原料C由来のタンパク質含有率(質量%)
+・・・
【0039】
キャンディに配合するタンパク質を含む各原料由来のタンパク質含有率は、例えば、タンパク質を含む原料Aについて、以下の式で求められる。
キャンディの原料A由来のタンパク質含有率(質量%)
=(((原料Aのタンパク質含有率(質量%)/100)×キャンディの単位量あたりの原料Aの含有量)/単位量)×100
【0040】
上記式によって、豆乳由来のタンパク質含有率を算出することもできる。
なお、本明細書において、豆乳由来タンパク質とは、原料として直接用いる豆乳に由来する脂質だけでなく、豆乳加工品を原料として用いた場合、豆乳加工品に由来するタンパク質を含む。
【0041】
また、キャンディのタンパク質含有率は、食品のタンパク質定量法として一般的に用いられる、ケルダール法または燃焼法によって測定することもできる。
【0042】
本発明に係るキャンディは、豆乳由来脂質を0.8質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上含む。
豆乳由来脂質を上記下限以上含むことにより、後味のまろやかなキャンディが得られる。
また、豆乳は、大豆を粉砕して加工することでリポキシゲナーゼが作用し、油脂が酸化され、不快な青臭さを発生する場合もある。豆乳の青臭さは、豆乳を少量配合した場合に感じられるものであるが、豆乳由来脂質を上記上限以上含むことによって、まろやかさで青臭さがマスキングされ、青臭さを感じにくくなる。
【0043】
また、本発明に係るキャンディは、豆乳由来脂質を7.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下含む。
【0044】
<キャンディに含まれる脂質>
本発明に係るキャンディは、脂質を含む。
本発明に係るキャンディは、上記の豆乳由来脂質の他に、豆乳以外の原料に由来する脂質を含むことができる。
【0045】
本発明に係るキャンディは、脂質を3.0質量%以上、好ましくは4.0質量%以上含む。
脂質を上記下限以上含むことにより、後味のまろやかなキャンディが得られる。
また、豆乳は、大豆を粉砕して加工することでリポキシゲナーゼが作用し、油脂が酸化され、不快な青臭さを発生する場合もある。豆乳の青臭さは、豆乳を少量配合した場合に感じられるものであるが、脂質を上記上限以上含むことによって、まろやかさで青臭さがマスキングされ、青臭さを感じにくくなる。
また、脂質を多く含むほど、色がより白に近いキャンディが得られる。これは、キャンディないに脂質を多く含むほどエマルジョン(油滴)による白濁が強まるためである。
【0046】
また、本発明に係るキャンディは、脂質を7.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下含む。
脂質の含有量を上記上限以下とすることにより、油の風味がきつくなりすぎず、程よい後味のキャンディが得られる。また、長期保存時に油脂の酸化臭が発生しにくくなる。
【0047】
本発明に係るキャンディに含まれる脂質は、好ましくは植物性脂質であり、動物性脂質は実質的に含まないことが好ましい。
植物性脂質を含む原料として、豆乳の他に、各種植物性油脂を用いることができる。植物性油脂として、特にカカオバター、大豆油、ココナッツオイルを好ましく用いることができる。その他に、植物性油脂として、パーム、米油、ごま油、アーモンド油等を用いることもできるが、これらの油脂は豆乳の濃厚な風味をマスキングすることに加え、長期保存時に油脂の酸化臭が発生してしまう。カカオバター、大豆油、ココナッツオイルは、豆乳の風味のマスキング、長期保存時の油脂の酸化臭が比較的発生しづらい。
【0048】
本発明に係るキャンディは、豆乳以外の原料に由来する脂質を含むことが好ましく、その含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上である。
豆乳以外の原料に由来する脂質を上記下限以上とすることで、後味のまろやかさを増強することができる。
【0049】
また、本発明に係るキャンディの、豆乳以外の原料に由来する脂質の含有率の上限は6.2質量%であり、好ましくは5.2質量%、より好ましくは4.2質量%である。
豆乳以外の原料に由来する脂質の含有率が高すぎると、豆乳の濃厚な風味をマスキングしたり、長期保管による酸化臭の発生の原因となったりする。豆乳以外の原料に由来する脂質の含有量を上記上限以下とすることで、豆乳の濃厚な風味を有し、酸化臭の発生も抑制されたキャンディが得られる。
【0050】
キャンディ中の脂質含有率は、キャンディに配合する脂質を含む各原料由来の脂質含有率の和として求めることができる。例えば、脂質を含む原料A、原料B、原料C、・・・を含むキャンディにおいて、キャンディの脂質含有率は、以下の式で求められる。
【0051】
キャンディの脂質含有率(質量%)
=キャンディの原料A由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディの原料B由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディの原料C由来の脂質含有率(質量%)
+・・・
【0052】
キャンディに配合する脂質を含む各原料由来の脂質含有率は、例えば、脂質を含む原料Aについて、以下の式で求められる。
キャンディの原料A由来の脂質含有率(質量%)
=(((原料Aの脂質含有率(質量%)/100)×キャンディの単位量あたりの原料Aの含有量)/単位量)×100
【0053】
上記式によって、豆乳由来脂質の含有率を算出することもできる。
なお、本明細書において、豆乳由来脂質とは、原料として直接用いる豆乳に由来する脂質だけでなく、豆乳加工品を原料として用いた場合、豆乳加工品に由来するタンパク質、脂質を含む。
【0054】
また、キャンディの脂質含有率は、食品の脂質定量法として一般的に用いられる、エーテル抽出法によって測定することもできる。
【0055】
<キャンディに含まれる炭水化物>
本発明に係るキャンディは、炭水化物を含む。炭水化物として、好ましくは糖質を含む。糖質として、例えば、砂糖、水あめ、オリゴ糖、糖アルコール、乳糖、ブドウ糖、果糖が挙げられるが、中でも砂糖、及び水あめを含むことが好ましい。
水あめの種類は特に限定されないが、酵素糖化水あめ、酸糖化水あめ等を用いることができる。
【0056】
本発明に係るキャンディの炭水化物の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは83質量%以上、さらに好ましくは87質量%以上である。
また、本発明に係るキャンディの炭水化物の含有率は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは91質量%以下である。
【0057】
<キャンディの色について>
本発明に係るキャンディは、色が白いことが好ましい。
具体的には、以下の撮影条件によりキャンディの写真を撮影し、撮影した写真を以下の変換方法によって8bitグレースケール変換して得られる画像において、該画像上のキャンディ表面における2以上の画素の画素値の平均値が180以上であることが好ましく、より好ましくは190以上、さらに好ましくは200以上である。
[撮影条件]
照明:白色光のLEDリングライト照明によって、キャンディから鉛直方向に15cm離れた位置から落射照明によって照射
カメラ:顕微鏡用カメラ
レンズ倍率:1倍
露光時間:97.09ms
ISO感度:400
キャンディ撮影位置における照明をつけた時の照度:5560lux
キャンディ撮影位置における照明を消した時の照度:430lux
[変換方法]
各画素のR(赤)値、G(緑)値、B(青)値を平均して、各画素のグレースケールの値を算出する。
【0058】
ここで、8bitグレースケールに変換された画像は、各ピクセルを256段階の画素値によって、色を表すことができる。画素値が0の時は黒で、最大値(8bitでは255)では白であることを示す。
本発明に係るキャンディの色は、この画素値によって評価することができる。すなわち、キャンディの写真を撮影し、撮影した写真を8bitグレースケールに変換し、画像内のキャンディ表面上の各ピクセルの画素値を測定し、平均値を出すことで、キャンディ表面上の色の濃淡の客観的な評価指標することができる。
測定には、ImageJを用いることができる。
測定箇所は、好ましくは2箇所以上、より好ましくは5箇所以上である。
【0059】
キャンディの写真を撮影する際に用いるカメラは、高解像度の1倍率のレンズ及び白色光LEDリングライトを使用した高級実態顕微鏡にて顕微鏡用カメラで撮影することが好ましい。
また、ISO白色度82%のコピー/プリンター紙(富士フィルム株式会社)を10枚重ねたものを、上記と同様の撮影条件で撮影し、撮影した写真を上記と同様の変換方法にて8bitグレースケール変換して得られる画像において、該画像上のコピー/プリンター紙表面における2以上の画素の画素値の平均値が240以上になるよう、カメラの種類、設定等を調整することが好ましい。このようにカメラの種類、設定等を調整することで、キャンディの色を精確に評価することができる。
例えばオリンパス式デジタルマイクロスコープDSX110(オリンパス株式会社))のスナップモードで撮影すれば、上記の条件を満たす。
【0060】
なお、本発明に係るキャンディの着色の主な原因はメイラード反応である。メイラード反応が進行すると、ブラウニングによる着色が見られる他、加熱臭が発生し、豆乳の濃厚な風味をマスキングしてしまう。
キャンディの色は、メイラード反応の進行の指標とすることができる。すなわち、8bitのグレースケールの画像上の2以上の画素の画素値の平均値が、上記下限以上であるキャンディは、メイラード反応が十分に抑制されていると評価することができる。
【0061】
<香料・着色料>
一般的なキャンディは、香料によって風味付けされる。
特に、豆乳は牛乳などと比較してもコクや風味、香味が弱く、豆乳の含有率が低いとキャンディに含まれる糖の甘さに豆乳の風味が負けてしまう。このため、既存の豆乳キャンディは、風味、香味を強化するために、香料をはじめとした食品添加物が使用されることが一般的である。
【0062】
しかし、本発明に係るキャンディは、香料を含まなくても、豆乳の濃厚な風味と後味のまろやかさを有する。
本発明に係るキャンディの香料の含有率は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは、香料を実質的に含まない。
【0063】
また、本発明に係るキャンディは、着色料を含んでもよいが、その含有量は極力少ないことが好ましい。
本発明に係るキャンディの着色料の含有率は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは、着色料を実質的に含まない。
【0064】
<製造方法>
本発明におけるキャンディの製造方法は、豆乳を含む原料を加熱濃縮する濃縮工程と、濃縮工程で得られたキャンディ生地を冷却する冷却工程とを含む。
本発明におけるキャンディの製造方法は、好ましくは、砂糖、水あめ、水を含む原料を混合して加熱溶解する溶解工程と、溶解工程で得られた溶解液に豆乳及び/又は豆乳加工品を添加して撹拌工程と、得られた混合液を加熱濃縮する濃縮工程と、得られたキャンディ生地を冷却する冷却工程と、冷却後にキャンディを成形する成形工程を含む。簡単なフロー図を図2に示す。
【0065】
・原料
ここでは、原料全体の重量に占める各原料の重量割合について説明する。なお、後述する濃縮工程で水分が減少するため、完成するキャンディの各原料の含有率と、原料全体の重量に占める各原料の重量割合とは異なる。
原料全体の重量に対する各原料の重量割合を以下の範囲に調整することで、完成するキャンディにおける各原料の含有率を調整することができる。
【0066】
本発明に係るキャンディは、原料として豆乳を含む。
本明細書において、豆乳とは、大豆を原料とするものであれば特に制限されず、日本農林規格にて定義される「豆乳」に限定されるものではない。
豆乳としては、日本農林規格において定義される「豆乳類」を好ましく用いることができる。
日本農林規格によれば、「豆乳類」は、「豆乳」、「調整豆乳」、「豆乳飲料」に分類され、これら3種の「豆乳類」の定義は以下の通りである。
【0067】
日本農林規格において定義される「豆乳」とは、大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く。)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料(以下「大豆豆乳液」という。)であって大豆固形分が8%以上のものをいう。
【0068】
日本農林規格において定義される「調整豆乳」とは、[1]大豆豆乳液に大豆油その他の植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料であって大豆固形分が6%以上のもの、または、[2]脱脂加工大豆(大豆を加えたものを含む。)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られたものに大豆油その他の植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料(以下「調製脱脂大豆豆乳液」という。)であって大豆固形分が6%以上のものをいう。
【0069】
日本農林規格において定義される「豆乳飲料」とは、[1]調製豆乳液又は調製脱脂大豆豆乳液に粉末大豆たん白(大豆豆乳液、調製豆乳液若しくは調製脱脂大豆豆乳液を乾燥して粉末状にしたもの又は大豆を原料とした粉末状植物性たん白のうち繊維質を除去して得られたものをいう。)を加えた乳状の飲料(調製豆乳液又は調製脱脂大豆豆乳液を主原料としたものに限る。以下「調製粉末大豆豆乳液」という。)であって大豆固形分が4%以上のもの、または、[2]調製豆乳液、調製脱脂大豆豆乳液又は調製粉末大豆豆乳液に果実の搾汁(果実ピユーレー及び果実の搾汁と果実ピユーレーとを混合したものを含む。以下同じ。)、野菜の搾汁、乳又は乳製品、殻類粉末等の風味原料を加えた乳状の飲料(風味原料の固形分が大豆固形分より少なく、かつ、果実の搾汁を加えたものにあっては果実の搾汁の原材料に占める重量の割合が10%未満であり、乳又は乳製品を加えたものにあっては乳固形分が3%未満であり、かつ、乳酸菌飲料でないものに限る。)であって大豆固形分が4%以上(果実の搾汁の原材料に占める重量の割合が5%以上10%未満のものにあっては2%以上)のもの、をいう。
【0070】
本発明において原料として用いる豆乳は、香料、着色料を実質的に含まないことが好ましい。市販品としては、例えば無調整豆乳(キッコーマンソイフーズ株式会社)を使用することができる。
【0071】
本発明において原料として用いる豆乳の大豆固形分料は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、特に好ましくは8質量%以上である。また、本発明において豆乳として用いる原料の大豆固形分料は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
また、本発明において原料として用いる豆乳は、大豆の繊維質が除去されているものであることが好ましい。大豆の繊維質が除去されていることにより、ざらつきの少ない、なめらかなキャンディが得られる。
【0072】
本発明において豆乳として用いる原料のタンパク質含有率は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上である。また、本発明において豆乳として用いる原料のタンパク質含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0073】
本発明において豆乳として用いる原料の脂質含有率は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。また、本発明において豆乳として用いる原料の脂質含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0074】
本発明において、原料全体の重量に占める豆乳の重量割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、本発明において、原料全体の重量に占める豆乳の重量割合は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0075】
また、本発明においては、濃縮豆乳、濃縮加糖豆乳ペースト、豆乳クリーム、脱脂豆乳、豆乳パウダーなど、豆乳加工品を原料として用いることもできる。
【0076】
濃縮豆乳とは、豆乳を濃縮したものである。また、濃縮加糖豆乳ペーストとは、豆乳に加糖して濃縮したものである。
本発明において、濃縮豆乳、濃縮加糖豆乳ペーストを使用すると、キャンディの製造における濃縮工程において、蒸発させなければならない水分が少量で済む。従って、大量に豆乳原料を配合する際には、このような濃縮豆乳や濃縮加糖豆乳ペーストを配合することが生産効率向上につながる場合がある。
原料全体の重量に占める濃縮豆乳、濃縮加糖豆乳ペーストの重量割合は、濃縮豆乳、濃縮加糖豆乳ペーストの固形分値、タンパク質含有率、脂質含有率に応じて適宜調整することができる。
【0077】
豆乳クリームとは、大豆のみを原料として製造された、無調整豆乳よりも脂質含有率が高く成分が調整されたものである。
豆乳クリームは無調整豆乳よりも固形分含量が多いため、キャンディへ配合時に蒸発させる水分が少なくて済み、効率的に製造を行うことができる。また、豆乳由来脂質含有率が高いため、キャンディに豆乳由来脂質を多く含有させることができる。
原料全体の重量に占める豆乳クリームの重量割合は、豆乳クリームの固形分値、タンパク質含有率、脂質含有率に応じて適宜調整する。
【0078】
脱脂豆乳とは、無調整豆乳から脂質を一定量除去したものである。
脱脂豆乳は豆乳由来タンパク質の含有率が相対的に高く、キャンディに豆乳由来タンパク質を多く含有させることができる。
原料全体の重量に占める脱脂豆乳の重量割合は、脱脂豆乳の固形分値、タンパク質含有率、脂質含有率に応じて適宜調整する。
【0079】
また、本発明においては、豆乳、もしくは豆乳と炭水化物系の賦形剤などの混合物をスプレードライ製法にて乾燥させ、パウダー状に加工した、豆乳パウダーを用いることもできるが、その量は極力少ないことが好ましい。
豆乳パウダーの固形分量は90%以上と非常に高いため、キャンディベースの水分量を増加させることなく、豆乳由来の固形分をキャンディに含有させることが出来る。一方で、豆乳パウダーはフレッシュな豆乳風味が弱く、むしろ豆乳の風味をマスキングしてしまう。
また、ダマになりやすい性質があるため、溶け残りが生じた場合は、キャンディのざらつきの原因となる。キャンディの美味しさにおいて、舐め心地は非常に重要な要素であり、ざらつきの強いキャンディは舌、上あごなどの口内に強い不快感を与えるため、キャンディの滑らかさは重要である。
原料全体の重量に占める豆乳パウダーの重量割合は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは実質的に含まない。
すなわち、本発明においては、液状の豆乳及び/又は豆乳加工品を使用することが好ましい。
【0080】
本発明に係るキャンディは、炭水化物を含む。炭水化物として、糖質を好ましく用いることがでる。糖質として、例えば、砂糖、水あめ、オリゴ糖、糖アルコール、乳糖、ブドウ糖、果糖が挙げられるが、中でも砂糖、及び水あめを好ましく用いることができる。
水あめの種類は特に限定されないが、酵素糖化水あめ、酸糖化水あめ等を用いることができる。
さらに、炭水化物として、オリゴ糖、糖アルコールを用いてもよい。
【0081】
原料全体の重量に占める砂糖の重量割合は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。また、原料全体の重量に占める砂糖の重量割合は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0082】
原料全体の重量に占める水あめの重量割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。また、原料全体の重量に占める砂糖の重量割合は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0083】
本発明に係るキャンディは、豆乳以外の原料に由来する脂質を含んでもよい。すなわち、本発明において、原料として油脂を含んでもよい。
油脂を含むことによって、キャンディの後味のまろやかさを増強することができる。
油脂は、好ましくは植物性油脂である。植物性油脂として、カカオバター、大豆油、ココナッツオイルを好ましく用いることができる。
その他に、植物性油脂として、パーム油、米油、ごま油、アーモンド油等を用いることもできるが、豆乳の風味をマスキングすることに加え、長期保存時に油脂の酸化臭が発生してしまう。カカオバター、大豆油、ココナッツオイルは、豆乳の風味のマスキング、長期保存時の油脂の酸化臭が比較的発生しづらい。
【0084】
原料全体の重量に占める油脂の重量割合は、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下である。
また、原料全体の重量に占める油脂の重量割合は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上である。
【0085】
本発明に係るキャンディは、香料や着色料を実質的に含まないことが好ましい。本発明に係るキャンディは、香料や着色料を含まなくとも、豆乳本来の風味や外観を有するものである。
【0086】
原料全体の重量に占める香料の重量割合は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは、香料を実質的に含まない。
原料全体の重量に占める着色料の重量割合は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは、着色料を実質的に含まない。
【0087】
以下、本発明に係るキャンディの製造方法における各工程について説明する。
・溶解工程
溶解工程においては、砂糖、水あめ、水を含む原料を混合し、加熱溶解する。
溶解工程における品温は、砂糖及び水あめを溶解することができれば特に制限されないが、溶解工程における最高品温は、好ましくは120℃以下、より好ましくは115℃以下である。また、溶解工程における最高品温は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。
溶解工程における加熱時間は特に限定されないが、砂糖及び水あめを溶解した後は速やかに次の工程にうつる。
【0088】
溶解液の品温、加熱時間を上記範囲内とすることで、水分が減りすぎず、粘性が低い溶解液が得られるため、撹拌工程で添加する原料と容易に混合することができる。また、カラメル化反応による着色、苦みの発生を抑えることができる。
【0089】
・撹拌工程
撹拌工程においては、溶解工程で得られた溶解液に豆乳及び/又は豆乳加工品を添加して撹拌する。豆乳、豆乳加工品、砂糖、水あめ以外の原料を含む場合、それらの原料も撹拌工程の際に添加して撹拌する。
撹拌工程において、豆乳原料等を添加する前に、溶解液を100℃以下まで冷却することが好ましい。
撹拌の回転数は3000rpm以上、より好ましくは5000rpm以上である。また、撹拌の回転数は7000rpm以下、より好ましくは10000rpm以下である。
また、撹拌時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上である。また、撹拌時間は好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下である。
撹拌は、原料が均一に混ざるまで行う。
なお、本発明に係るキャンディは、タンパク質を含むことにより、撹拌工程において乳化が促進されやすい。
【0090】
・濃縮工程
濃縮工程においては、豆乳を含む原料を加熱濃縮する。濃縮工程においては、好ましくは、前記撹拌工程で得られたキャンディベースを加熱濃縮する。濃縮工程には、減圧機付属の加熱装置を用いることができる。
【0091】
濃縮工程における最高品温は、好ましくは120℃以下である。また、濃縮工程における最高品温は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。
濃縮工程における最高品温を上記上限以下とすることによって、メイラード反応の進行を抑制することができる。メイラード反応は、加熱臭の原因となり、その加熱臭によって豆乳の濃厚な風味がマスキングされてしまうが、濃縮工程における最高品温を上記上限以下とすることによって、加熱臭が抑制され、豆乳の濃厚な風味が感じられるキャンディが得られる。
【0092】
また、加熱を止めた後に、減圧乾燥処理を行うことが好ましい。減圧乾燥処理においては、好ましくは500mmHg以上、より好ましくは580mmHg以上の減圧を行う。
上記範囲にて減圧を行うことによって、効率的に水分量を減少させることができる。
【0093】
濃縮工程は、固形分値が、好ましくは96.5質量%以上、より好ましくは97.0質量%以上になるまで行う。
固形分値はカールフィッシャー法によって測定することができる。
【0094】
豆乳、豆乳加工品などの原料の一部を、濃縮工程で得られたキャンディベースに添加してもよい。その他、豆乳以外の風味付けとして、濃縮果汁、はちみつ、抹茶ペースト、チョコレート、コーヒー等を添加しても良い。また塩などの鉱物などを添加してもよい。
これらの原料を添加した後の固形分値は、好ましくは96.5質量%以上、より好ましくは97.0質量%以上である。
【0095】
・冷却工程、成形工程
キャンディは常法によって冷却及び成形することができる。
例えば、濃縮工程後のキャンディ生地を、即座に冷却し、ロープ状にして型押し成型する方法や、板状にしてカットする成型法などによって、成型して一粒のキャンディにすることができる。
【0096】
キャンディの外側にパウダー状の食品をコーティングしてもよい。また、カラメルやチョコレートなどを練りこんだキャンディと組み合わせ、マーブル状のキャンディにしても良い。
【実施例0097】
<原料>
実施例、及び比較例で用いた原料は以下の通りである。
・無調整豆乳
固形分値:8質量%
たんぱく質含有率:4.15質量%
脂質含有率:3.65質量%
・豆乳クリーム
固形分値:18質量%
たんぱく質含有率:5.6質量%
脂質含有率:12.3質量%
・豆乳パウダー
固形分値:94質量%
たんぱく質含有率:49.9質量%
脂質含有率:20.3質量%
・濃縮加糖豆乳ペースト
固形分値:75質量%
たんぱく質含有率:5.23質量%
脂質含有率:11.5質量%
・脱脂豆乳
固形分値:9質量%
たんぱく質含有率:5.3質量%
脂質含有率:0.5%質量%
・砂糖
固形分値:99.9質量%
・水あめ
固形分値:74.5質量%
・大豆油
固形分値:99.9%質量%
脂質含有率99.9質量%
・カカオバター
固形分値:99.8質量%
脂質含有率99.8質量%
【0098】
以上の原料のうち、濃縮加糖豆乳ペースト以外は一般的な市販品を使用した。
濃縮加糖豆乳ペーストは、市販品の上記の豆乳クリームに水あめを加えて真空下で加熱濃縮したものである。この際、品温は120℃以下とした。
【0099】
<試験例1>
表1に記載の配合にて、キャンディを製造した。
砂糖、水あめ、水を混合し、品温113℃まで加熱した。その後、得られた糖液を品温90℃まで冷却し、無調整豆乳を添加し回転数6000rpm、3分の条件で攪拌混合し、キャンディベースを得た。
得られたキャンディベースを減圧機付属の加熱装置にセットし、それぞれ表2に記載の加熱時品温に到達した時点で加熱を止めた。その後、600mmHgの減圧をして乾燥処理を行い固形分値が97.0%になるまで濃縮した。固形分値については、カールフィッシャー法によって水分値3.0%であることを測定し、それ以外が固形分値であることから97.0%という測定結果を導いている。
濃縮完了後は即座に冷却し、スタンピングで四角型に成形し常温まで冷却した。1粒の重量は3.4gとした。
【0100】
原料組成から、豆乳由来タンパク質含有率、豆乳由来脂質含有率、脂質含有率を算出した(表1)。
各算出方法は以下の通りである。
【0101】
・キャンディ中の豆乳由来タンパク質の含有率
試験例1において豆乳として含まれる原料は無調整豆乳のみである。よって、キャンディ中の豆乳由来タンパク質の含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の豆乳由来タンパク質の含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来のタンパクの質含有率(質量%)
=(((無調整豆乳のタンパク質の含有率(質量%)/100)×原料全体の重量に占める無調整豆乳の重量の割合(質量%))/((濃縮前の原料全体の固形分値(%)/濃縮後のキャンディ中の固形分値(%))×100))×100
【0102】
この式の分子は、原料100gに無調整豆乳由来のタンパク質が何g含まれるかを表す。試験例1におけるキャンディの製造工程において、水以外の成分の含有量は変化しないため、この値は原料100gから得られるキャンディに含まれる無調整豆乳由来のタンパク質の重量に等しい。
また、この式の分母は、原料100gから何gのキャンディが得られるかを表す。
すなわち、この式は、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディの無調整豆乳由来のタンパク質含有率を算出するものである。
【0103】
・キャンディ中の豆乳由来脂質の含有率(質量%)
試験例1において豆乳として含まれる原料は無調整豆乳のみである。よって、キャンディ中の豆乳由来タンパク質の含有率は、以下の式によって算出した。
【0104】
キャンディ中の豆乳由来脂質の含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来の脂質含有率(質量%)
=(((無調整豆乳の脂質含有率(質量%)/100)×原料全体の重量に占める無調整豆乳の重量の割合(質量%))/((濃縮前の原料全体の固形分値(%)/濃縮後のキャンディ中の固形分値(%))×100))×100
【0105】
この式の分子は、原料100gに無調整豆乳由来の脂質が何g含まれるかを表す。本試験例におけるキャンディの製造工程において、水以外の成分の含有量は変化しないため、この値は原料100gから得られるキャンディに含まれる無調整豆乳由来の脂質の重量に等しい。
また、この式の分母は、原料100gから何gのキャンディが得られるかを表す。
すなわち、この式は、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディの無調整豆乳由来の脂質の含有率を算出するものである。
【0106】
・脂質含有率(質量%)
試験例1において、脂質を含む原料は無調整豆乳のみであるため、脂質含有率は、豆乳由来脂質の含有率に等しい。
【0107】
また、得られたキャンディの画素値の平均値の測定、及び官能評価(豆乳の濃厚な風味、後味のまろやかさ、加熱臭)を行った(表2)。
【0108】
・画素値の平均値
得られたキャンディの色について評価した。
メイラード反応によるブラウニングの評価方法としては褐色の吸光度による測定が一般的ではあるが、本発明においてはキャンディ内に多量の脂質を含有するため、油滴の分離が困難であり、吸光度測定によるブラウニングの数値化及び評価は困難であった。
したがって、本発明では得られたキャンディの写真を撮影し、撮影した写真を8bitグレースケール変換して得られる画像において、該画像上のキャンディ表面における2以上の画素の画素値の平均値を、キャンディの色の評価の指標とした。
具体的な評価方法は以下の通りである。
【0109】
まず、以下の撮影条件により、製造したキャンディの写真を撮影した。
[撮影条件]
照明:白色光のLEDリングライト照明によって、キャンディから鉛直方向に15cm離れた位置から落射照明によって照射
カメラ:オリンパス式デジタルマイクロスコープDSX110(オリンパス株式会社))
モード:スナップモード
レンズ倍率:1倍
露光時間:97.09ms
ISO感度:400
キャンディ撮影位置における照明をつけた時の照度:5560lux
キャンディ撮影位置における照明を消した時の照度:430lux
【0110】
次に、撮影した写真を、画像解析ソフトウェアImageJを用いて、8bitグレースケールに変換した。変換方法は以下の通りである。
[変換方法]
各画素のR(赤)値、G(緑)値、B(青)値を平均して、各画素のグレースケールの値を算出した。
変換に用いた式は以下の通りである。
グレースケールの値=(R(赤)値+G(緑)値+B(青)値)/3
ImageJ内で画像を表示後、Imageという項目よりtypeを選択、その後8-bitを選択することで8bitグレースケールに変換が可能である。
【0111】
8bitグレースケールに変換された画像は各ピクセルを256段階の画素値で表すことができる。値が0の時は黒で、最大値(8bitでは255)では白であることを示す。また、画像内の指定範囲の各ピクセルの画素値を測定し、平均値を出すことで、指定範囲内の色の濃淡を客観的に評価及び比較することが出来る。
本試験例においては、グレースケール変換して得られる画像上のキャンディの表面における5点の画素値を測定した。測定した5点の画素値の平均値を表2に示す。なお、数値は小数点第三位を四捨五入して記載した。
【0112】
なお、ISO白色度82%のコピー/プリンター紙(富士フィルム株式会社)を10枚重ねたものを、上記と同様の撮影条件で撮影し、撮影した写真を上記と同様の変換方法にて8bitグレースケール変換して得られる画像において、該画像上のコピー/プリンター紙表面におけ5点の画素の画素値の平均値は、245.75であった。
【0113】
また、試験例1で製造したキャンディの外観も合わせて示す。(比較例1:図3、比較例2:図4、比較例3:図5、比較例4:図6、比較例5:図7
【0114】
なお、本発明におけるキャンディの着色の主な原因はメイラード反応である。メイラード反応によって、加熱臭が発生し、その加熱臭によって豆乳の風味がマスキングされてしまうという影響がある。
画素値の平均値は、メイラード反応の進行の指標とすることができる。
【0115】
・豆乳の濃厚な風味
得られたキャンディを、官能評価の訓練を受けたパネラー5人が喫食し、以下の1~5で評価した。
1:豆乳の風味を感じない
2:豆乳の風味を弱く感じる
3:十分な豆乳の風味を感じる
4:豆乳の濃厚な風味を感じる
5:豆乳の風味が非常に強く、タンパク質由来のエグ味を感じる
パネラー5人の評価値の平均値を、表2に記載した。評価値の平均値2~4が風味として好適である。
【0116】
・後味のまろやかさ
得られたキャンディを、官能評価の訓練を受けたパネラー5人が喫食し、以下の1~5で評価した。
1:後味のまろやかさを感じない
2:後味にまろやかさを弱く感じるが、ボディー感が弱い
3:後味に十分なまろやかさ感じる
4:後味に強いまろやかさとコクを感じる
5:油の風味がきつく、後味がくどい
パネラー5人の評価値の平均値を、表2に記載した。評価値の平均値2~4が後味として好適である。
【0117】
・加熱臭
得られたキャンディを、官能評価の訓練を受けたパネラー5人が喫食し、パネラー全員が加熱臭なしと判定した場合のみ加熱臭なしとし、1人でも加熱臭ありと評価した場合は加熱臭ありとした。加熱臭なしが好適である。結果を表2に示す。
なお、加熱臭とは、食品を油で揚げた際に過度な加熱により発生するような不快な焦げ臭の香味を指す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
比較例1~5は、いずれも後味のまろやかさの評価が2以下であり、まろやかさが弱い評価となった。これは、脂質の含有量が少ないことに起因する。
【0121】
比較例1、2においては、濃縮工程の品温がいずれの温度の場合でも加熱臭は発生せず、豆乳の濃厚な風味を有していた。また、画素値の平均値は180以上であり、ブラウニングが少ないことが確認できた。
【0122】
比較例3においては、濃縮工程の品温が115℃、120℃の場合は加熱臭が発生せず、豆乳の濃厚な風味を有していた。また、画素値の平均値も180以上であった。
一方、濃縮工程の品温を125℃とした場合においては加熱臭が発生し、豆乳の濃厚な風味が弱い評価となった。また、画素値の平均値は180を下回り、ブラウニングがみられた。
これは、濃縮工程の品温を上げたことによって、メイラード反応が進行しやすくなったためである。すなわち、メイラード反応によって加熱臭が発生し、加熱臭によって豆乳の濃厚な風味がマスキングされたと考えられる。
【0123】
さらに、比較例4、5においては、濃縮工程の品温がいずれの温度の場合でも加熱臭が発生し、豆乳の濃厚な風味が弱い評価となった。また、画素値の平均値は180を下回り、ブラウニングがみられた。
これは比較例3の濃縮工程が125℃の場合と同様に、メイラード反応が進行したことに起因する。
【0124】
比較例1~5の比較より、タンパク質含有率が高いほど、低温においてもメイラード反応が進行しやすい傾向がみられる。
これは、タンパク質の含有率とメイラード反応の一般的な相関とも一致する
【0125】
<試験例2>
表3の配合にて、キャンディを製造した。
製造方法は試験例1と同様である。なお、豆乳クリーム、豆乳パウダー、濃縮加糖豆乳ペーストは試験例1における無調整豆乳と同様のタイミングにて添加した。また、濃縮工程における最高品温は120℃とした。
【0126】
原料組成から、豆乳由来タンパク質含有率、豆乳由来脂質含有率、脂質含有率を算出した(表3)。
各算出方法は以下の通りである。
【0127】
・キャンディ中の豆乳由来タンパク質の含有率
試験例2において豆乳として含まれる原料は、無調整豆乳、豆乳クリーム、豆乳パウダーである。よって、豆乳由来タンパク質の含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の豆乳由来のタンパク質含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来のタンパク質含有率(質量%)
+キャンディ中の豆乳クリーム由来のタンパク質含有率(質量%)
+キャンディ中の豆乳パウダー由来のタンパク質含有率(質量%)
+キャンディ中の濃縮加糖豆乳ペースト由来のタンパク質含有率(質量%)
【0128】
各原料由来のタンパク質含有率は、試験例1における無調整豆乳由来のタンパク質含有率と同様に、各原料のタンパク質含有率、及び原料全体の重量に占める各原料の重量の割合から算出した。
すなわち、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディの含各豆乳原料由来のタンパク質含有率を算出した。
【0129】
・キャンディ中の豆乳由来脂質含有率
試験例2において豆乳として含まれる原料は、無調整豆乳、豆乳クリーム、豆乳パウダー、濃縮加糖豆乳ペーストである。よって、キャンディ中の豆乳由来脂質含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の豆乳由来脂質含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディ中の豆乳クリーム由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディ中の豆乳パウダー由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディ中の濃縮加糖豆乳ペースト由来の脂質含有率(質量%)
【0130】
各原料由来の脂質含有率は、試験例1における無調整豆乳由来の脂質含有率と同様に、各原料の脂質含有率、及び原料全体の重量に占める各原料の重量の割合から算出した。
すなわち、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディ中の各豆乳原料由来の脂質含有率を算出した。
【0131】
また、得られたキャンディの画素値の平均値の測定、及び官能評価(豆乳の濃厚な風味、後味のまろやかさ、加熱臭)を行った(表4)。評価方法は試験例1と同様である。
【0132】
試験例2においては、官能評価としてさらに、ざらつき、長期保管による酸化臭、青臭さの評価を行った(表4)。
各評価方法は以下の通りである。
【0133】
・ざらつき
得られたキャンディを、官能評価の訓練を受けたパネラー5人が喫食し、パネラー全員がざらつきなしと判定した場合のみざらつきなしと評価し、1人でもざらつきありと評価した場合はざらつきありとした。ざらつきなしが好適である。
【0134】
・長期保管による酸化臭
脂質を多く含む食品は、長期保管によって食品中の脂質が酸化し、不快な劣化臭が発生する場合がある。劣化の速さおよび度合いは、使用する油脂の種類によって異なる。長期保管による酸化臭について、以下の方法にて評価した。
【0135】
得られたキャンディを、1袋あたり各15粒ずつガスバリア性の高いアルミ袋に入れ、袋内の空気を窒素置換し、袋内の残存酸素濃度を1%以下にしたうえで密閉し、4か月の間40℃で保管した。
4か月保管後、官能評価の訓練を受けたパネラー5人が喫食し、パネラー全員が酸化臭なしと判定した場合のみ酸化臭なしと評価し、1人でも酸化臭ありと評価した場合は酸化臭ありとした。酸化臭なしが好適である。
【0136】
・青臭さ
得られたキャンディを、官能評価の訓練を受けたパネラー5人が喫食し、パネラー全員が青臭さなしと判定した場合のみ青臭さなしとし、1人でも青臭さありと評価した場合は青臭さありとした。青臭さなしが好適である。
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
実施例1~7の通り、豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、キャンディは、後味のまろやかさ、加熱臭、ざらつき、長期保管による酸化臭、青臭さの官能評価において好ましい評価が得られた。また、画素値の平均値も190以上で、ブラウニングが少なかった。
【0140】
また、実施例1~6において、キャンディ中の豆乳由来タンパク質含有率、及び豆乳由来脂質含有率が高いほど、後味のまろやかさ及び豆乳の濃厚な風味が強くなる傾向がみられた。
【0141】
実施例7は、豆乳の濃厚な風味が弱い評価であった。これは、豆乳パウダーが、パウダー化の工程で加熱されていることが多く、加熱により豆乳とは異なる風味に変化してしまっているためである。このような風味は豆乳の風味へのマスキング作用があることも、豆乳の濃厚な風味が弱くなってしまったことの一因と考えられる。
【0142】
比較例6、7は、豆乳の濃厚な風味や後味のまろやかさが乏しく、また青臭さが感じられ、好ましくない風味であった。これは、含有する豆乳由来タンパク質が少なく、豆乳本来の風味が弱くなってしまったことに加え、含有する脂質が少なく、不快な香気のマスキング効果が弱かったために青臭さが際立ったと考えられる。
【0143】
比較例8は、豆乳由来タンパク質の含有率が高かったため、タンパク質由来のエグ味がきつく、キャンディの風味として不適であった。
【0144】
<試験例3>大豆油の添加
表5の配合にて、キャンディを製造した。製造方法は試験例1と同様である。なお、脱脂豆乳、大豆油は、試験例1における無調整豆乳と同様のタイミングにて添加した。
【0145】
原料組成から、豆乳由来タンパク質の含有率、豆乳由来脂質の含有率、大豆油由来脂質の含有率、脂質含有率を算出した(表5)。
各算出方法は以下の通りである。
【0146】
・キャンディ中の豆乳由来タンパク質含有率
試験例3において豆乳として含まれる原料は、無調整豆乳、脱脂豆乳である。よって、豆乳由来タンパク質の含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の豆乳由来のタンパク質含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来のタンパク質含有率(質量%)
+キャンディ中の脱脂豆乳由来のタンパク質含有率(質量%)
【0147】
キャンディ中の各原料由来のタンパク質含有率は、試験例1における無調整豆乳由来のタンパク質含有率と同様に、各原料のタンパク質含有率、及び原料全体の重量に占める各原料の重量の割合から算出した。
すなわち、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディ中の豆乳原料由来のタンパク質含有率を算出した。
【0148】
・キャンディ中の豆乳由来脂質含有率
試験例3において豆乳として含まれる原料は、無調整豆乳、脱脂豆乳である。よって、キャンディ中の豆乳由来脂質含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の豆乳由来脂質含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディ中の脱脂豆乳由来の脂質含有率(質量%)
【0149】
各原料由来の脂質含有率は、試験例1における無調整豆乳由来の脂質含有率と同様に、各原料の脂質含有率、及び原料全体の重量に占める各原料の重量の割合から算出した。
すなわち、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディの各豆乳原料由来の脂質含有率を算出した。
【0150】
・キャンディ中の大豆由来脂質含有率
キャンディ中の大豆由来脂質含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の大豆油由来脂質含有率(質量%)=(((大豆油の脂質含有率(質量%)/100)×原料全体の重量に占める大豆油の重量の割合(質量%))/((濃縮前の原料全体の固形分値(%)/濃縮後のキャンディ中の固形分値(%))×100))×100
【0151】
この式の分子は、原料100gに大豆由来の脂質が何g含まれるかを表す。本実施例におけるキャンディの製造工程において、水以外の成分の含有量は変化しないため、この値は原料100gから得られるキャンディに含まれる大豆油由来の脂質の重量に等しい。
また、この式の分母は、原料100gから何gのキャンディが得られるかを表す。すなわち、この式は、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディの大豆油由来の脂質含有率を算出するものである。
【0152】
・キャンディ中の脂質含有率
キャンディ中の脂質含有率は、以下の式によって算出した。
キャンディ中の脂質含有率(質量%)
=キャンディ中の豆乳由来脂質の含有率(質量%)
+キャンディ中の大豆由来脂質の含有率(質量%)
【0153】
また、得られたキャンディの画素値の平均値の測定、及び官能評価(豆乳の濃厚な風味、後味のまろやかさ、加熱臭、ざらつき、長期保管による酸化臭、青臭さ)を行った(表6)。評価方法は試験例2と同様である。
【0154】
【表5】
【0155】
【表6】
【0156】
実施例8~12の通り、キャンディ中の豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含む、キャンディは、後味のまろやかさ、加熱臭、ざらつき、長期保管による酸化臭、青臭さの官能評価において好ましい評価が得られた。また、画素値の平均値も190以上で、ブラウニングが少なかった。
【0157】
また、実施例8~12の比較より、原料における大豆油の量を増やし、大豆油由来の脂質の含有量、及び脂質含有量を多くするほど、後味のまろやかさが強化される傾向がみられた。
また、大豆油由来の脂質の含有量を少なくするほど、豆乳の濃厚な風味は強くなる傾向がみられた。これは、大豆油によって豆乳の濃厚な風味がマスキングされたためと考えられる。
また、脂質含有率を高くするほど、画素値の平均値が上がる、すなわち着色が少なくなる傾向がみられた。これはキャンディ内に脂質を多く含むほど、エマルジョン(油滴)による白濁が強まることに由来している。
【0158】
比較例9は、油の風味によって後味がくどい評価となった。これは、脂質含有量が多すぎたことに起因する。
また、比較例9においては、大豆油由来脂質含有量が多いことによって豆乳の濃厚な風味がマスキングされ、豆乳の濃厚な風味は弱い評価であった。
さらに、比較例9においては、長期保管後に油脂の酸化臭が感じられた。
【0159】
比較例10は、豆乳由来脂質含有量が少ないことに加え、大豆油によるマスキング効果の影響もあり、豆乳の風味が不十分であった。
【0160】
<試験例4>カカオバターの添加
表7の配合にて、キャンディを製造した。製造方法は試験例1と同様である。なお、カカオバターは、試験例1における無調整豆乳と同様のタイミングにて添加した。また、濃縮工程における最高品温は120℃とした。
【0161】
原料組成から、キャンディ中の豆乳由来タンパク質含有率、豆乳由来脂質含有率、カカオバター由来脂質含有率、脂質含有率を算出した(表7)。
キャンディ中の豆乳由来タンパク質含有率、豆乳由来脂質含有率の算出方法は試験例1と同様である。
キャンディ中のカカオバター由来脂質含有率、及び脂質含有率の算出方法は以下の通りである。
【0162】
・キャンディ中のカカオバター由来脂質含有率
キャンディ中のカカオバター由来脂質含有率は以下の式によって算出した。
キャンディ中のカカオバター由来脂質含有率(質量%)=(((カカオバターの脂質含有率(質量%)/100)×原料全体の重量に占めるカカオバターの重量の割合(質量%))/((濃縮前の原料全体の固形分値(%)/濃縮後のキャンディ中の固形分値(%))×100))×100
【0163】
これら式の分子は、原料100gにカカオバター由来の脂質が何g含まれるかを表す。本実施例におけるキャンディの製造工程において、水以外の成分の含有量は変化しないため、この値は原料100gから得られるキャンディに含まれるカカオバター由来の脂質の重量に等しい。
また、この式の分母は、原料100gから何gのキャンディが得られるかを表す。すなわち、この式は、原料100gから得られるキャンディの重量を単位量として、キャンディの含カカオバター由来の脂質含有率を算出するものである。
【0164】
・キャンディ中の脂質含有率
脂質の含有率は以下の式によって算出した。
キャンディ中の脂質含有率(質量%)
=キャンディ中の無調整豆乳由来の脂質含有率(質量%)
+キャンディ中のカカオバター由来の脂質含有率(質量%)
【0165】
また、得られたキャンディの画素値の平均値の測定、及び官能評価(豆乳の濃厚な風味、後味のまろやかさ、加熱臭、ざらつき、長期保管による酸化臭、青臭さ)を行った(表6)。評価方法は試験例2と同様である。
【0166】
【表7】
【0167】
【表8】
【0168】
実施例13~16の通り、豆乳由来タンパク質を1.0質量%以上2.5質量%以下含み、豆乳由来脂質を0.8質量%以上含み、脂質を3.0質量%以上7.0質量%以下含むキャンディは、後味のまろやかさ、加熱臭、ざらつき、長期保管による酸化臭、青臭さの官能評価において好ましい評価が得られた。また、画素値の平均値も190以上で、ブラウニングが少なかった。
【0169】
カカオバターは、試験例3で用いた大豆油と比較して豆乳の濃厚な風味をマスキングがみられず、豆乳の濃厚な風味を維持したまま、後味のまろやかさを増強することができた。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明によって、まろやかな後味を有し、豆乳による青臭さが少ないキャンディを提供することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7