(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136266
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】メルトブロー不織布
(51)【国際特許分類】
D06M 13/152 20060101AFI20230922BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20230922BHJP
D06M 13/238 20060101ALI20230922BHJP
D06M 13/256 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
D06M13/152
D04H3/16
D06M13/238
D06M13/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041790
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安島 岳彦
【テーマコード(参考)】
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
4L033AA05
4L033AB07
4L033AC10
4L033BA13
4L033BA28
4L047AA14
4L047BA09
4L047BB02
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、捕集濾材であるメルトブロー不織布の表層にタンニン酸層が存在していながらも、圧力損失の上昇が抑えられたメルトブロー不織布を提供することである。
【解決する手段】表層にタンニン酸を含有するタンニン酸層を有するメルトブロー不織布において、該タンニン酸の含有量が0.1g/m2以上3.0g/m2以下であり、該タンニン酸層が界面活性剤を含有することを特徴とするメルトブロー不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層にタンニン酸を含有するタンニン酸層を有するメルトブロー不織布において、該タンニン酸の含有量が0.1g/m2以上3.0g/m2以下であり、該タンニン酸層が界面活性剤を含有することを特徴とするメルトブロー不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブロー不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルスの蔓延により、抗菌・抗ウイルスに対する意識が高まってきており、空気清浄機の使用やマスクの着用が常態化している。
【0003】
菌及びウイルスによる感染症に対しては、室内の換気に加えて、日常の手洗い、うがいが有効と考えられるが、それ以外にも空気中に浮遊する菌やウイルスを何らかの方法で除去することができれば、感染症の罹患を抑えることができると考えられる。空気中に浮遊する菌やウイルスを効果的に除去できなければそれらを吸引し、感染症を引き起こすこととなる。
【0004】
また、生活環境の変化により、くしゃみ、鼻水、咳、喘息といったアレルギー症状を発症する人が増加している。アレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン、アレルギー物質)としては、杉、檜、ブタクサ、セイタカアワダチソウ、稲等の花粉といった植物由来の物質、ダニの死骸や糞、動物の体毛といった動物由来の物質が注目されている。
【0005】
これらアレルギー症状の多くは、空気中に浮遊するアレルゲンを吸引し、体内で起こる激しい抗原抗体反応により生じるものであり、空気中に浮遊するアレルゲンを何らかの方法で除去することができれば、アレルギー症状を緩和できると考えられる。
【0006】
空気中の菌、ウイルス、アレルゲン等を、フィルターによって物理的に捕捉することができる。捕捉された菌等は活性を保持しているため、使用中のフィルターから、又はフィルターを交換する際に、菌等が再飛散すると、感染症やアレルギー症状を発症する可能性がある。そのため、捕集したウイルス等の活性を低減化、不活性化することができる抗菌フィルター、抗ウイルスフィルター、抗アレルゲンフィルター等の技術が求められている。
【0007】
例えば、特許文献1には、捕集した物質に紫外線を照射して不活化する方法が挙げられているが、装置自体が大掛かりとなってしまい、エネルギー消費量が増えてしまう問題がある。
【0008】
また、古くから植物由来のエキスには多くの生理活性作用が報告されており、健康食品や飲料に用いられている。特許文献2には、茶の抽出成分を用いた抗アレルゲンフィルター等が示されている。植物由来のエキス中でもタンニン酸については、抗アレルゲン性以外でも各種薬理作用が報告されている。タンニン酸をフィルターに担持させることで、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を発現させる方法が提案されている(特許文献3)。
【0009】
通常フィルターには、捕集濾材として、メルトブロー不織布が使用される。メルトブロー不織布の原材料としては、メルトブロー不織布の生産性や原材料価格から、ポリプロピレンが多く用いられる。
【0010】
メルトブロー不織布にタンニン酸等の植物由来のエキスを担持した場合、圧力損失が高くなる場合や捕集効率が低下する場合がある。そのため、特許文献4では、メルトブロー不織布に機能性を付与するのではなく、支持体として貼合されるスパンボンド不織布に機能性を持たせている。支持材としては、できるだけ圧力損失が高くならないように、スパンボンド不織布、網状構造体等の目の粗い材料を用いるのが一般的である。ただし、菌等は、目の粗い支持材を通過する確率が高く、支持材に付着した菌等や支持材と境界線上にあるメルトブロー不織布に捕捉された菌等に対してのみ、タンニン酸は効果を発揮することとなり、菌等を効率的に不活性化することができない。
【0011】
特許文献5には、メルトブロー不織布最表層の繊維間にタンニン酸等の機能薬剤の薄膜層が0.1~6g/m2の担持量で分散して存在している濾材が開示されているが、薄膜層によって圧力損失が高くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6-154298号公報
【特許文献2】特開2000-5531号公報
【特許文献3】特開2015-62451号公報
【特許文献4】特開平10-174823号公報
【特許文献5】特開2013-121556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、捕集濾材であるメルトブロー不織布の表層にタンニン酸層が存在していながらも、圧力損失の上昇が抑えられたメルトブロー不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る課題は、下記手段によって解決することができる。
【0015】
(1)表層にタンニン酸を含有するタンニン酸層を有するメルトブロー不織布において、該タンニン酸の含有量が0.1g/m2以上3.0g/m2以下であり、該タンニン酸層が界面活性剤を含有することを特徴とするメルトブロー不織布。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、メルトブロー不織布がその表層にタンニン酸層を有していることから、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を発現することができる。また、タンニン酸の含有量が0.1g/m2以上3.0g/m2以下であり、該タンニン酸層が界面活性剤を含有することによって、圧力損失の上昇が抑えられたメルトブロー不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のメルトブロー不織布を具体的に説明する。本発明のメルトブロー不織布は、表層にタンニン酸を含有するタンニン酸層を有し、該タンニン酸の含有量が0.1g/m2以上3.0g/m2以下であり、該タンニン酸層が界面活性剤を含有するメルトブロー不織布である。
【0018】
ベースとなるメルトブロー不織布の材料は、使用目的に合わせて選択することができるが、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ゴム補強ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等のエンジニアリング樹脂;熱可塑性エポキシ樹脂;熱可塑性エラストマーなどが例示される。これらの熱可塑性樹脂は、1種を使用しても良いし、2種以上を使用しても良い。本発明で使用できる熱可塑性樹脂は、上記の熱可塑性樹脂に限定されるものではない。
【0019】
安価で入手しやすく、軽量であること、融点が180℃程度と低いこと、減成により流動性の高い樹脂を作りやすいため、より細い繊維を紡糸しやすいという観点から、熱可塑性樹脂はポリプロピレンであることが好ましい。また、後述するエレクトレット加工を行った場合、帯電しやすく、高捕集効率の機能性不織布を作りやすいという観点からも、熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが最も好ましい。
【0020】
タンニン類は加水分解型タンニンと縮合型タンニンに分類される。加水分解型タンニンとは、酸、アルカリ、酵素で多価フェノール酸と多価アルコール(糖など)に加水分解される。多価フェノール酸としては、主に没食子酸及びその二量体(遊離状態では脱水環化して四環性のエラグ酸となる)の二つのタイプがあり、それぞれをガロタンニン、エラジタンニンと総称される。ガロタンニンの例として、ウコギ科ヌルデの葉にヌルデノミミフシアブラムシが寄生してできる虫こぶである五倍子に含まれるタンニン酸がある。エラジタンニンの例としてフウロソウ科ゲンノショウコに含まれるゲラニインが挙げられる(富士化学工業(株)カタログ。http://www.fujichem.co.jp/relays/download/31/69/3/90/?file=/files/libs/90/201705021803326615.pdf)。
【0021】
本発明では、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を発現させるために、生理活性が報告されている加水分解型タンニンの中でも、特に多くの生理活性が報告されているタンニン酸を使用する。タンニン酸は、五倍子、没食子などのタンニン酸を含有する材料から温水で抽出し、有機溶媒にて不純物を除去する方法で得ることができるが、市販されているものを購入して用いてもよい。市販品としては、例えば、富士化学工業(株)、商品名:タンニン酸ALが挙げられる。
【0022】
タンニン酸の含有量としては、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を発現する量が必要であり、また、圧力損失が大幅に上昇しない量でなければならない。本発明では、該含有量が0.1g/m2以上3.0g/m2以下であり、より好ましくは、0.2g/m2以上2.0g/m2以下であり、さらに好ましくは0.3g/m2以上1.5g/m2以下である。該含有量が少な過ぎる場合、十分な抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性が得られない。また、該含有量が多過ぎる場合、抗菌性等は発現するものの、メルトブロー不織布の目が詰まり、圧力損失が高くなる。また、過剰に含有させても、抗菌性等は頭打ちとなり、コストアップとなる等の弊害が発生する。これら問題を発生させない量を設定する必要がある。
【0023】
表層にタンニン酸を含有するタンニン酸層を有するメルトブロー不織布を製造するには、タンニン酸の水溶液又は水分散液である塗液を用意し、メルトブロー不織布に該塗液を塗布して、タンニン酸層を形成する。本発明において、タンニン酸層は界面活性剤を含有する。すなわち、タンニン酸層を形成するための塗液も界面活性剤を含有する。タンニン酸層及びタンニン酸層を形成するための塗液が界面活性剤を含有することによって、メルトブロー不織布にタンニン酸層が均一に設けられやすく、また、メルトブロー不織布へのタンニン酸層の浸透性が向上するため、抗菌性等が有効に発現する。また、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0024】
界面活性剤としては、タンニン酸による抗菌性等の性能を阻害しないものであれば使用できる。界面活性剤の例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、2-エチルヘキサノール、ヒドロキシアルキルアクリレート、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエーテル、ポリエーテルポリオール、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、パラフィンワックス系乳化剤、シリコーン系界面活性剤、水溶性ウレタン、アミノシリコーン系乳化剤、アルキルアミド系乳化剤、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、鉱物油系消泡剤等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)がより好ましい。
【0025】
界面活性剤の含有量としては、タンニン酸の性能を阻害しない量であることに加え、発泡などによって、塗工時の加工適性を損なわずに、また、圧力損失が大幅に上昇しない範囲であれば良い。該含有量は、固形分で好ましくは0.001g/m2以上0.1g/m2以下であり、より好ましくは、0.002g/m2以上0.02g/m2以下であり、さらに好ましくは0.004g/m2以上0.008g/m2以下である。該含有量が少な過ぎる場合、タンニン酸層が不均一になる場合やタンニン酸層の形成ができなくなり、抗菌性等が発現しなくなる場合がある。また、該含有量が多過ぎる場合、塗工時の発泡などによって加工適性が損なわれ、抗菌性等が低下する場合がある。
【0026】
タンニン酸層を形成するための塗液をメルトブロー不織布に塗布する際は、メルトブロー不織布の片表層のみに表面塗布することが好ましい。塗布装置としては、グラビアコーター、スプレー、バーコーター等の装置が挙げられる。メルトブロー不織布がその両表層にタンニン酸層を有する場合、圧力損失の上昇を抑制できなくなる場合がある。また、塗液にメルトブロー不織布を浸漬してロールで搾って塗布する、いわゆる含浸塗布を行うと、除塵性能が低下する場合がある。また、ロールで搾ることによって、メルトブロー不織布が薄くなり、圧力損失が上昇する場合がある。
【0027】
塗液塗布後に乾燥装置にて乾燥させることで、メルトブロー不織布にタンニン酸層を定着させることができる。乾燥温度は、水分を蒸発させる必要があることから80℃以上であることが好ましい。また、タンニン酸の性能を劣化させないように、乾燥温度は130℃以下であることが好ましい。メルトブロー不織布の幅収縮やタンニン酸の性能を劣化させないように、加工速度等の塗布及び乾燥条件を適宜設定することができる。
【0028】
メルトブロー不織布の目付は、特に制限はなく、加工適性、圧力損失、捕集効率、除塵性能等を考慮して適宜選択できるが、タンニン酸層を形成する前の不織布の目付として、好ましくは5~100g/m2であり、より好ましくは5~50g/m2であり、さらに好ましくは7~30g/m2である。捕集効率や除塵性能をさらに上げるために、コロナ処理やハイドロチャージ処理でメルトブロー不織布を帯電させても良い。
【実施例0029】
以下に、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0030】
タンニン酸層を形成するための塗液の調製
タンニン酸の濃度は1質量%とする。また、界面活性剤(商品名:デノン(登録商標)5402(丸菱油化工業(株)製・有効成分ジアルキルスルホコハク酸エステル塩・固形分濃度70%))の濃度は、有効成分濃度として0.03質量%とする。具体的には、純水を990g、タンニン酸を10g、デノン(登録商標)5402を0.43g(有効成分0.3g)を採取する。まず、純水を攪拌しながらデノン(登録商標)5402を添加して分散させる。次に、タンニン酸を少しずつ添加して溶解して、タンニン酸層を形成するための塗液を調製した。
【0031】
実施例1~5、比較例1~2
塗工バーを使用して、メルトブロー不織布(三菱製紙(株)製、商品名:メルトブローンMBPP20E(材料:ポリプロピレン、目付20g/m2))の片表層に上記塗液を塗布後、80℃の熱風乾燥機で乾燥させて、表層にタンニン酸層を有するメルトブロー不織布を得た。タンニン酸及び界面活性剤の含有量を表1に記載した。
【0032】
比較例3
メルトブロー不織布(三菱製紙(株)製メルトブローンMBPP20E(材料:ポリプロピレン))を、比較例3のメルトブロー不織布とした。
【0033】
比較例4
界面活性剤を配合せずに1質量%のタンニン酸水溶液を作製し、塗工バーを使用して、メルトブロー不織布(三菱製紙(株)製、商品名:メルトブローンMBPP20E(材料:ポリプロピレン、目付20g/m2))の片表層に上記タンニン酸水溶液を塗布後、80℃の熱風乾燥機で乾燥させて、表層にタンニン酸層を有するメルトブロー不織布を得た。タンニン酸の含有量を表1に記載した。
【0034】
実施例及び比較例で得られたメルトブロー不織布の抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性及び圧力損失を評価し、結果を表1に示した。
【0035】
<抗菌性の評価>
繊維製品に適用されるJIS L 1902:2015(繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果)に定める菌液吸収法にて評価した。評価菌には大腸菌を使用した。
【0036】
1-1.
試験片0.4gをバイアル瓶に入れ、試験菌液0.2mlを滴下後、バイアル瓶の蓋を閉じる。
1-2.
バイアル瓶を37℃で18~24時間培養する。
1-3.
洗い出し液20mlを加えて試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法により測定する。
1-4.
下記の式に従い抗菌活性値を算出する。
抗菌活性値={log(対照試料・培養後生菌数)-log(対照試料・接種直後生菌数)}
-{log(試験試料・培養後生菌数)-log(試験試料・接種直後生菌数)}
対照試料は標準布(綿)を使用。
抗菌性 :抗菌活性値≧2.0 : 効果あり
【0037】
<抗ウイルス性の評価>
繊維製品に適用されるJIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)にて評価した。試験ウイルス株はインフルエンザウイルス(H1N1)とした。
2-1.
試料0.4gをバイアル瓶に入れ、ウイルス液0.2mlを接種し、25℃で2時間放置する。
2-2.
SCDLP培地20mlを加え試料からウイルスを洗い出し、洗い出した液のウイルス感染価をプラーク法により測定する。
2-3.
下記の式に従い抗ウイルス活性値を算出する。
抗ウイルス活性値
=log(対象試料・接種直後感染価)-log(試験試料・2時間作用後感染価)
対照試料は標準布(綿)を使用。
抗ウイルス性 :3.0>抗ウイルス活性値≧2.0 : 効果あり
抗ウイルス活性値≧3.0 : 十分な効果あり
【0038】
<抗アレルゲン性の評価>
ELISA法にて評価した。測定アレルゲンはスギ花粉アレルゲン、ダニアレルゲンとした。
3-1.
検体を2cm×3cmに裁断し、ポリエチレン製袋に採取した。
3-2.
反応開始直前にリン酸緩衝液にて約15ng/mlの濃度に調整したアレルゲン溶液を240μl加えて検体に染み込ませた後、検体サイズでヒートシールを行った。
3-3.
4℃下に静置し、24時間後にアレルゲン溶液を搾り出して回収した。
3-4.
回収した液をELISA用の溶媒組成に変換するため、交換液と等量混合した。
3-5.
この溶液のアレルゲン濃度をELISA法にて測定した。
初発アレルゲン濃度と反応後アレルゲン濃度から、アレルゲン不活性化率(%)を算出した。
抗アレルゲン性 :不活性化率≧60%: 効果あり
【0039】
<不織布の圧力損失測定>
フィルター試験装置を用い、各検体について面風速5.3cm/s時の圧力損失を測定した。
判定:比較例3のメルトブロー不織布の数値の2倍以下を「使用可」とした。
【0040】
【0041】
実施例1~5については、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性のいずれも十分な性能を有し、圧力損失の上昇も抑制できていることが判る。
【0042】
タンニン酸の含有量が4.0g/m2である比較例1では、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性は十分な効果が得られたものの、実施例1と同等レベルであり、頭打ちとなっていることが判る。また、圧力損失がかなり高く、フィルター等への実使用は難しく、使用不可と判断した。タンニン酸の含有量が0.05g/m2である比較例2では、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性が不十分であることが判る。比較例4と実施例2とは、タンニン酸含有量は同じであるが、比較例4ではタンニン酸層が界面活性剤を含有していないことから、タンニン酸層のメルトブロー不織布への浸透性が得られず、タンニン酸層を有していない比較例3と同様の状態となっている。そのため、性能評価結果も比較例3と同等の結果であることから、タンニン酸が界面活性剤を含有することが必須であることが判る。
本発明のメルトブロー不織布は、マスク、エアフィルター、液体用フィルター等に使用することができる。また、本発明のメルトブロー不織布と支持材(スパンボンド不織布、湿式不織布、網状構造体等)とを貼り合わせて複層構造として使用することができる。