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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136267
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】シートパレット
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20230922BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 19/22 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/32
B65D19/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041791
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白石 雅人
(72)【発明者】
【氏名】北川 澄人
【テーマコード(参考)】
3E063
4F100
【Fターム(参考)】
3E063AA05
3E063BA05
3E063CA01
4F100AA20
4F100AA20D
4F100AA20E
4F100AJ02
4F100AJ02B
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK05
4F100AK05A
4F100AK05C
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK06C
4F100AK52
4F100AK52C
4F100AK52D
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100DG10
4F100DG10B
4F100EJ17
4F100EJ28
4F100EJ30
4F100EJ42
4F100GB15
4F100GB31
4F100JA13
(57)【要約】
【課題】取り扱い性、シートパレットとして使用できる強度及び耐水性を有し、プラスチック製のシートパレットよりも軽量であり、並びに廃棄の際にプラスチック廃棄物を軽減したシートパレットを提供することである。
【解決手段】課題は、ポリオレフィン樹脂層と紙基材層とを組み合わせて積層し、最終的な表面及び裏面がポリオレフィン樹脂層である積層板であって、前記積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂がポリエチレンを含み、前記ポリエチレンが低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである該積層板から成るシートパレットによって解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂層と紙基材層とを組み合わせて積層し、最終的な表面及び裏面がポリオレフィン樹脂層である積層板であって、前記積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂がポリエチレンを含み、前記ポリエチレンが低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである該積層板から成るシートパレット。
【請求項2】
前記ブレンドが、含有質量比で、低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=1:9~3:7である請求項1に記載のシートパレット。
【請求項3】
前記積層板が、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層に対してコロイダルシリカ層を有する請求項1又は2に記載のシートパレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を輸送及び保管するためのシートパレットに関し、JIS Z0607:1995「シートパレット」に適するシートパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、物流輸送の際に荷物(「積載物」ともいう)を積載するパレットとして、木製のパレット、段ボール製のパレット若しくはシートパレット又はプラスチック製のパレット若しくはシートパレットを使用する。しかし、木製のパレットでは病害虫対策の燻蒸処理問題、段ボール製のパレット若しくはシートパレットでは耐水性及び強度の問題、及びプラスチック製のパレット若しくはシートパレットでは廃棄プラスチック及び廃棄合成樹脂の問題を有する。
そこで、従来の合成樹脂から形成されたシートパレットと同等の性能を備え、かつ石油資源由来のプラスチックの使用量を極力低減させたシートパレットとして、石化資源由来の第1の熱可塑性樹脂と、植物由来の第2の熱可塑性樹脂と、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂の双方に対して相溶性又は分散性を示す第3の熱可塑性樹脂とからなるコンパウンド樹脂層を有するシートパレットが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-001055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、シートパレットに積載された積載物をフォークリフトで扱う際には、プッシュプルアタッチメントを備えたフォークリフトが用いられる。フォークリフトのプラテン上への積載物の積み下ろしは、シートパレットのタブ部をプッシュプルアタッチメントで把持し、プッシュプルアタッチメントをプラテン上で進退動作させることで行う。従って、シートパレットには、プラテンが積載物を載せたシートパレットに対して滑らかに挿入及び抜去できる取り扱い性が要求される。
また、シートパレットは、シートパレットとして使用できる強度を有する必要がある。
以上から、本発明の目的は、取り扱い性、シートパレットとして使用できる強度及び耐水性を有し、プラスチック製のシートパレットよりも軽量であり、並びに廃棄の際にプラスチック廃棄物量を低減したシートパレットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の目的は、以下によって達成される。
【0006】
[1]ポリオレフィン樹脂層と紙基材層とを組み合わせて積層し、最終的な表面及び裏面がポリオレフィン樹脂層である積層板であって、前記積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂がポリエチレンを含み、前記ポリエチレンが低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである該積層板から成るシートパレット。
【0007】
[2]前記ブレンドが、低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=1:9~3:7である上記[1]に記載のシートパレット。
ここで、上記の1:9~3:7は、ポリオレフィン樹脂層における低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの含有質量比である。
【0008】
[3]前記積層板が、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のそれぞれ外側に対してコロイダルシリカ層を有する上記[1]又は[2]に記載のシートパレット。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、取り扱い性、シートパレットとして使用できる強度及び耐水性を有し、プラスチック製のシートパレットよりも軽量であり、並びに廃棄の際にプラスチック廃棄物量を低減したシートパレットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
シートパレットは、ポリオレフィン樹脂層と紙基材層とを組み合わせて積層した積層板から成り、前記積層板の最外に現れる最終的な表面及び裏面がポリオレフィン樹脂層である。いくつかの実施態様において、紙基材層と紙基材層との間、すなわち各紙基材層の間にはポリエチレン樹脂層を必ず有する。この理由は、シートパレットのシートパレットとして使用できる強度が良化するからである。いくつかの実施態様において、シートパレットは、「ポリオレフィン樹脂層/紙基材層/ポリオレフィン樹脂層」を一構成単位として前記構成単位を積層したような構造を有する積層板から成る。少なくとも1つの実施態様において、シートパレットは、前記構成単位が3部又は4部以上を積層したような構造を有する積層板から成る。また、いくつかの実施態様において、シートパレットは、紙基材層が3層又は4層以上有し、各紙基材層の間にポリオレフィン樹脂層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層が1層又は2層以上であり、並びに積層板の最外に現れる最終的な表面及び裏面がポリオレフィン樹脂層である積層板から成る。少なくとも1つの実施態様において、シートパレットは、紙基材層を3層又は4層以上有し、各紙基材層の間にポリオレフィン樹脂層を有し、前記ポリオレフィン樹脂層が2層であり、並びに積層板の最外に現れる最終的な表面及び裏面がポリオレフィン樹脂層である積層板から成る。これらの理由は、シートパレットとして使用できる強度が良化するからである。
【0011】
紙基材層は、LBKP(広葉樹晒しクラフトパルプ、Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ、Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ、Groundwood Pulp)、PGW(加圧式破木パルプ、Pressure Groundwood Pulp)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ、Refiner Mechanical Pulp)、TMP(サーモメカニカルパルプ、ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ、ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ケミメカニカルパルプ、ChemiMechanical Pulp)、CGP(ケミグランドパルプ、ChemiGroundwood Pulp)などの機械パルプ、又はDIP(脱墨パルプ、DeInked Pulp)などの古紙パルプに、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、カチオン性樹脂や多価陽イオン塩などのカチオン化剤、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤などの各種添加剤を必要に応じて配合した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性に調整して抄造した原紙である。前記紙料中には、その他の添加剤として顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、及び乾燥紙力増強剤などの一種又は二種以上を、必要に応じて適宜配合することができる。
【0012】
また、紙基材層としては、製紙分野で従来公知のカレンダー装置でカレンダー処理した原紙を含む。また、紙基材層としては、前記原紙に澱粉やポリビニルアルコールなどの表面サイズ剤によってサイズプレス処理を施した上質紙、前記原紙又は上質紙に対して下塗り層を設けた下塗り紙、前記原紙、上質紙又は下塗り紙に対して塗工層を設けた塗工紙を含む。さらに、紙基材層としては、製紙分野で従来公知のカレンダー装置でカレンダー処理した上質紙、下塗り紙及び塗工紙を含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、紙基材層の坪量は、紙として廃棄できる観点から、100g/m以上である。また、いくつかの実施態様において、紙基材層の坪量は、積層化のし易さの観点から、300g/m以下である。少なくとも1つの実施態様において、紙基材層の坪量は、100g/m以上300g/m以下である。
【0014】
ポリオレフィン樹脂層は、ポリオレフィン樹脂を主成分とする層である。ここで主成分とは、ポリオレフィン樹脂層を構成する乾燥固形分量に対して50質量%超を占めることを指す。ポリオレフィン樹脂は、従来公知のものであって特に限定されない。ポリオレフィン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリペンテンなどオレフィンのホモポリマー、生分解性ポリエチレン及び生分解性ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体など2種以上のオレフィンの共重合体、並びに前記ホモポリマー及び前記共重合体から成る群から選ばれる二種以上のブレンドなどである。さらに、前記ホモポリマー及び前記共重合体は、各種の密度及び溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独又はブレンドして使用できる。
【0015】
また、ポリオレフィン樹脂層は、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ及びアルミナ水和物などの白色顔料、ステアリン酸アミド及びアラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、ヒンダードフェノール系化合物などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなど青系の着色顔料若しくは着色染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫など紫系の着色顔料若しくは着色染料、蛍光増白剤、界面活性剤、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂、並びに紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて含有することができる。
【0016】
シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂がポリエチレンを含み、前記ポリエチレンが低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである。低密度ポリエチレンは密度0.93g/cm以下のポリエチレンを、高密度ポリエチレンは密度0.94g/cm以上のポリエチレンを指す。積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂が低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドを含まない場合、シートパレットは、取り扱い性の悪化及び/又はポリオレフィン樹脂層の層強度が低下することにより耐水性が悪化する恐れがある、あるいは、シートパレットは、シートパレットに積載した積載物の荷滑りを起こす場合がある。荷滑りは、フォークリフトで扱う際にシートパレットの取り扱い性の低下になる。
【0017】
いくつかの実施態様において、シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置する各々ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂について、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドが含有質量比で低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=1:9~3:7である。また、いくつかの実施態様において、シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置する各々ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂について、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計含有量がそれぞれポリオレフィン樹脂層中のポリオレフィン樹脂に対して80質量%以上を占める。少なくとも1つの実施態様において、シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置する各々ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂について、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドが含有質量比で低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=1:9~3:7であり、かつ低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計含有量がそれぞれポリオレフィン樹脂層中のポリオレフィン樹脂に対して80質量%以上を占める。これらの理由は、シートパレットの取り扱い性及び耐水性が良化するからである。ここで、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの前記ブレンドの含有質量比は、積層板の表面及び裏面で同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
シートパレットは、積層板において紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂を特に限定しない。いくつかの実施態様において、シートパレットは、各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂が低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンである。少なくとも1つの実施態様において、シートパレットは、各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂が低密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである。これらの理由は、シートパレットとして使用できる強度が良化するからである。
【0019】
シートパレットは、積層板において各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層がポリオレフィン樹脂の組成から区別される1層又は2層以上である。いくつかの実施態様において、シートパレットは、各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層が、シートパレットとして使用できる強度及び製造コストの観点から、2層である。シートパレットは、積層板において各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層が2層以上である場合、各々層のポリオレフィン樹脂は同種の樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。少なくとも1つの実施態様において、シートパレットは、積層板において各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層が2層であり、ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂が2層共に低密度ポリエチレンである。少なくとも1つの実施態様において、シートパレットは、積層板において紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層が2層であり、ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂が一方が低密度ポリエチレンで他方が低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドである。これらの理由は、シートパレットのシートパレットとして使用できる強度が良化するからである。
【0020】
いくつかの実施態様において、シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層に対してコロイダルシリカ層を有する。この理由は、シートパレットの取り扱い性が良化するからである。コロイダルシリカ層は、主成分としてコロイダルシリカを有する層である。ここで主成分とは、コロイダルシリカ層を構成する乾燥固形分量に対して50質量%超を占めることを指す。
【0021】
コロイダルシリカ層は、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層に対して、従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いてコロイダルシリカ層用塗工液を塗工及び乾燥することによって得ることができる。又は、コロイダルシリカ層は、積層する前に、積層後に積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層に対して予め、従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いてコロイダルシリカ層用塗工液を塗工及び乾燥することによって得ることができる。コロイダルシリカ層の形態としては、コロイダルシリカがポリオレフィン樹脂層に対して塗工層として存在する状態及び/又はポリオレフィン樹脂層の内部にコロイダルシリカが浸透した内部層として存在する状態である。コロイダルシリカ層の前記形態は、エネルギー分散形X線分光器などの元素分析機能付の電子顕微鏡で断面を観察し、元素分布を解析することによって確認することができる。
【0022】
前記塗工装置は、従来公知であって、例えば、エアナイフコーター、ロッドブレードコーターなど各種ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーターなどを挙げることができる。前記乾燥装置は、従来公知であって、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、及びマイクロ波などを利用した乾燥機などを挙げることができる。
【0023】
いくつかの実施態様において、シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層に対する、表面及び裏面の各コロイダルシリカ層の塗工量がコロイダルシリカ量として乾燥固形分量で0.1g/m以上0.3g/m以下である。この理由は、シートパレットの表面及び裏面の耐水性が劣化することなく、シートパレットの取り扱い性が良化するからである。
【0024】
コロイダルシリカとは、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩水溶液に、硫酸などの酸を作用させるか、陽イオン交換樹脂により金属イオンを除去した後に、熟成などの工程を経るなどの方法で製造される超微粒子シリカゾルである。コロイダルシリカは、グレース社、扶桑化学工業社及び日産化学工業社などから市販される。
【0025】
コロイダルシリカ層は、バインダー、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤など各種の添加剤を適宜添加することができる。
バインダーの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどのアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、並びにポリエチレンオキシドなどを挙げることができる。さらに、バインダーの例としては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉及び種々澱粉をフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなど天然多糖類、並びにこれらの変性体を挙げることができる。また、バインダーの例としては、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質又はこれらの変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子を挙げることができる。バインダーは、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0026】
積層板は、紙基材層、ポリオレフィン樹脂層を片面に有する紙基材層、及びポリオレフィン樹脂層を両面に有する紙基材層から選ばれる構成単位を、紙基材層の間にポリオレフィン樹脂層が存在するように重ね合わせて加圧及び加熱して得ることができる。加圧及び加熱は、従来公知の方法であって、例えば、プレス機などの加圧加熱装置を用いる方法を挙げることができる。また、加圧及び加熱には、2本の熱ロール間に加圧状態でポリオレフィン樹脂被覆紙を通過させる方法も可能である。
加圧及び加熱の条件は、例えば、加圧が10kg/cm以上45kg/cm以下の範囲、加熱が70℃以上150℃以下の範囲、処理時間が30分以上60分以下の範囲である。この様な条件であれば、紙基材層を傷めること無く、ポリオレフィン樹脂が溶融して接着剤として作用する。
【0027】
紙基材層に対してポリオレフィン樹脂層を設ける方法は、例えば、ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂組成物を加熱溶融した状態で流延して紙基材層に対して押出しする押出塗工法を挙げることができる。また、押出塗工法前には、紙基材層にコロナ放電処理及び火炎処理などの活性化処理を施すことができる。いくつかの実施態様において、表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂の質量は、それぞれ10g/m以上35g/m以下である。いくつかの実施態様において、各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂の質量は、10g/m以上70g/m以下である。各紙基材層の間に位置するポリオレフィン樹脂層が2層以上の場合、ポリオレフィン樹脂の質量は、それらの合計である。これらの理由は、シートパレットとして使用できる強度が良化しつつ、紙として廃棄できる可能性を有するからである。
【0028】
上記押出塗工法は、加熱溶融したポリオレフィン樹脂組成物を、紙基材層とクーリングロールとの間にフィルム状に押出して圧着及び冷却して行う。前記クーリングロールは、ポリオレフィン樹脂層の表面形状、例えば、鏡面加工、微粗面加工、及び各種パターン化された凹凸面などエンボス加工などに用いることができる。いくつかの実施態様において、シートパレットに積載された積載物の荷滑りを防止する観点から、シートパレットは、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層が凹凸面を有する。
【0029】
いくつかの実施態様において、シートパレットは、積層板の最終的な表面、すなわち積載物を載せる側の面に対して従来公知の滑り止め加工を有する。従来公知の滑り止め加工の例としては、サンドブラスト加工、滑り止めテープの貼り付け、及び滑り止め塗料の塗工などを挙げることができる。
【実施例0030】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限られるものではない。なお、質量%及び質量部は、乾燥固形分量あるいは実質成分量に対する値を示す。また、塗工量は乾燥固形分量を示す。
【0031】
<実施例1>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)とを1:1で混合し、濾水度300mlcsfになるまで叩解してパルプスラリーを調製した。前記パルプスラリーにパルプ100質量部あたり、アルキルケテンダイマーサイズ剤0.5質量部、ポリアクリルアミド歩留り剤1.0質量部、カチオン化殿粉乾燥紙力剤2.0質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン湿潤紙力剤0.5質量部を添加し、最終的に1質量%パルプスラリーとした。前記パルプスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造して、紙基材層を得た。
次に、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレンと密度0.96g/cmの高密度ポリエチレンとのブレンドから成るポリオレフィン樹脂組成物を調製した。低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの含有質量比を低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=0.5:9.5とした。紙基材層の表面に対して、前記ポリオレフィン樹脂組成物を320℃で溶融して押出塗工した。ポリオレフィン樹脂の質量は約20g/mとした。さらに、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレン100質量部に対してアナターゼ型二酸化チタン10質量部を添加してポリオレフィン樹脂組成物を調製した。紙基材層の裏面に対して、前記ポリオレフィン樹脂組成物を表面同様に押出塗工した。ポリオレフィン樹脂の質量は約25g/mとした。
得られたポリオレフィン樹脂層を両面に有する紙基材層を大きさ1.5m×1.4mに断裁した。ポリオレフィン樹脂層を両面に有する紙基材層を4枚用いて、最終的な積層板について表面及び裏面のポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂が低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドになるように組み合わせて、重ね合わせ体を得た。
積層板の作製は、前記重ね合わせ体に対して、圧力30kg/cm、温度95℃、時間45分の条件で加圧及び加熱によって実施した。得た積層板を1.35m×1.225mに断裁し、少なくとも一方の1.225m辺側の端部から0.75m内側のところに折り目を付け及び幅0.75mの部分を斜め45度に折り曲げてシートパレットとした。
【0032】
<実施例2>
実施例1において、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンと質量比(低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン)は1:9とした以外は実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0033】
<実施例3>
実施例1において、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンと質量比(低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン)は2:8とした以外は実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0034】
<実施例4>
実施例1において、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンと質量比(低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン)は3:7とした以外は実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0035】
<実施例5>
実施例1において、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンと質量比(低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン)は4:6とした以外は実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0036】
<実施例6>
密度0.92g/cmの低密度ポリエチレンと密度0.96g/cmの高密度ポリエチレンとのブレンドから成るポリオレフィン樹脂組成物を調製した。低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンと含有質量比を低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=2:8とした。実施例1の紙基材層の表面に対して、前記ポリオレフィン樹脂組成物を320℃で溶融して押出塗工した。ポリオレフィン樹脂の質量は約20g/mとした。さらに、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレン100質量部に対してアナターゼ型二酸化チタン10質量部を添加してポリオレフィン樹脂組成物を調製した。紙基材層の裏面に対して、前記ポリオレフィン樹脂組成物を表面同様に押出塗工した。ポリオレフィン樹脂の質量は約25g/mとした。
得られたポリオレフィン樹脂層を両面に有する紙基材層の2枚において、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドから成るポリエチレン樹脂層に対して、下記のコロイダルシリカ層用塗工液をロッドコーター及び熱風乾燥機を用いて塗工及び乾燥してコロイダルシリカ層を設けた。コロイダルシリカの塗工量は、0.14g/mとした。
【0037】
(コロイダルシリカ層用塗工液)
コロイダルシリカ 100質量部
アクリル系分散剤 5質量部
スチレン-マレイン酸共重合体 13質量部
水を媒体に濃度6質量%とした。
【0038】
コロイダルシリカ層を有する上記のポリオレフィン樹脂層を両面に有する紙基材層2枚と、実施例1のポリオレフィン樹脂層を両面に有する紙基材層2枚との4枚用いて、最終的な積層板について表面及び裏面のポリオレフィン樹脂層がコロイダルシリカ層を有する側になるように組み合わせて、重ね合わせ体を得た。
積層板の作製は、前記重ね合わせ体に対して、圧力30kg/cm、温度95℃、時間45分の条件で加圧及び加熱によって実施した。得た積層板を実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0039】
<比較例1>
実施例1において、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレンと密度0.96g/cmの高密度ポリエチレンとのブレンドから成るポリオレフィン樹脂組成物を、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレンから成るポリオレフィン樹脂組成物に変更する以外は実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0040】
<比較例2>
実施例1において、密度0.92g/cmの低密度ポリエチレンと密度0.96g/cmの高密度ポリエチレンとのブレンドから成るポリオレフィン樹脂組成物を、密度0.96g/cmの高密度ポリエチレンから成るポリオレフィン樹脂組成物に変更する以外は実施例1と同様に行い、シートパレットとした。
【0041】
<比較例3>
市販の厚さ2mmのポリプロピレン製シートパレットを用いた。
【0042】
<比較例4>
市販の厚さ3mmの段ボール製シートパレットを用いた。
【0043】
<評価>
シートパレットの取り扱い性については、フォークリフトのプラテンが2tの積載物を載せたシートパレットに対して滑らかに挿入及び抜去できるか否か、並びに荷滑りが認められるか否かの観点から評価した。本発明では、プラテンが滑らかに挿入及び抜去並びに積載物の荷滑りが抑えられたシートパレットを、取り扱い性を有するものとした。評価では、良好な側からA、B、C及びDとランク付けした。
シートパレットの強度については、最大積載質量2tに対応できるか否かの観点から評価した。本発明では、対応できたシートパレットを、シートパレットとして使用できる強度を有するものとした。評価では、良好な側からA及びBとランク付けした。
シートパレットの耐水性については、シートパレットの表面(積載物側の面)の耐水性及びフォークリフトのプラテンが2tの積載物を載せたシートパレットに対して挿入及び抜去した後のシートパレットの裏面(プラテン側の面)を段ボール製のシートパレットと対比して評価した。本発明では、段ボール製のシートパレットよりも耐水性が認められたシートパレットを、耐水性を有するものとした。評価では、良好な側からA、B、C及びDとランク付けした。
シートパレットの軽量さについては、プラスチック製のシートパレットと対比して評価した。本発明では、プラスチック製のシートパレットよりも軽量であるシートパレットを軽いものとした。
シートパレットの廃棄については、プラスチックごみに該当するか否かの観点から評価した。
【0044】
評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から、本発明に相当する実施例1~6のシートパレットは、取り扱い性、シートパレットとして使用できる強度及び段ボール製のシートパレットよりも耐水性を有し、プラスチック製のシートパレットよりも軽量であり、並びに紙として廃棄ができてプラスチック廃棄物を低減できると分かる。本発明の構成を満足しない比較例1~4は、これら効果の少なくとも1つが不十分であると分かる。
実施例1及び5と実施例2~4との対比から、積層板の表面及び裏面に位置するポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂において低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドが含有質量比で低密度ポリエチレン:高密度ポリエチレン=1:9~3:7であると、シートパレットの取り扱い性及び耐水性が良化すると分かる。
実施例1~5と実施例6との対比から、積層板の表面及び裏面に対してコロイダルシリカ層を有すると、シートパレットの取り扱い性が向上すると分かる。