(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136282
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】把持装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/12 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B25J15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041809
(22)【出願日】2022-03-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】310010575
【氏名又は名称】地方独立行政法人北海道立総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】川島 圭太
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY36
3C707DS01
3C707ES03
3C707EV12
3C707EV14
(57)【要約】
【課題】 肉厚が薄くても把持部材を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に強度や耐久性を向上させ、狭い空間における作業や細かい作業を行うことができる把持装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 対象物を把持可能な把持装置1であって、内部に気室22を備えた複数の突起21が隣接配置されているとともに、気室22のそれぞれに連通する通気路23を備え、柔軟材料によって形成された把持部材2と、気室22および通気路23の少なくとも一部に封入された骨格部材3と、を有し、通気路23に気体を圧入すると、気室22または気室22の内壁面と骨格部材3との隙間に気体が流入し、突起21が膨張することによって湾曲する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持可能な把持装置であって、
内部に気室を備えた複数の突起が隣接配置されているとともに、前記気室のそれぞれに連通する通気路を備え、柔軟材料によって形成された把持部材と、
前記気室および前記通気路の少なくとも一部に封入された骨格部材と、
を有し、
前記通気路に気体を圧入すると、前記気室または前記気室の内壁面と前記骨格部材との隙間に気体が流入し、前記突起が膨張することによって湾曲する、把持装置。
【請求項2】
前記把持部材と前記骨格部材とは、互いに接着しない材料によって形成されている、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記把持部材と前記骨格部材との接触面には、互いに接着するのを防止する接着防止剤が塗布されている、請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
前記骨格部材は、前記気室および前記通気路の全てを充填する形状を有している、請求項1から請求項3のいずれかに記載の把持装置。
【請求項5】
内部に気室を備えた複数の突起が隣接配置されているとともに、前記気室のそれぞれに連通する通気路を備え、柔軟材料によって形成された把持部材の一側面を開放した状態で形成する把持部材形成工程と、
前記気室および前記通気路の少なくとも一部に封入可能な骨格部材を形成する骨格部材形成工程と、
前記気室および前記通気路の少なくとも一部に骨格部材を充填する骨格部材充填工程と、
前記骨格部材を充填した前記把持部材の一側面に液状の前記柔軟材料を流し込んで硬化させ前記骨格部材を封入する骨格部材封入工程と、
を有する、把持装置の製造方法。
【請求項6】
前記把持部材と前記骨格部材とは、互いに接着しない材料によって形成されている、請求項5に記載の把持装置の製造方法。
【請求項7】
前記骨格部材充填工程の前に、前記把持部材と前記骨格部材との接触面に、互いに接着するのを防止する接着防止剤を塗布する接着防止剤塗布工程を有している、請求項5に記載の把持装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を把持可能な把持装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットハンド等に代表される把持装置として、柔軟な材料によって形成され、空気圧によって湾曲するものが知られている。例えば、特開昭61-203287号公報には、柔軟な材料から成る管状体の一側壁に蛇腹部分を設け、その対向する側壁に板状部分を設け、内圧を高めることによって湾曲するロボットハンド用指が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたロボットハンド用指を含め、従来の把持装置は、指先を曲げ把持できる程度の圧力で空気を圧入しても破裂や破損しないように、厚めの肉厚に形成されている。このため、狭い空間における作業や細かい作業には不向きであり、また把持力の制御が難しいという問題がある。
【0005】
一方、肉厚を薄めに形成すると、強度や耐久性が低下し、破裂や破損のおそれがあるため、内圧を低くせざるを得ない。しかしながら、内圧が低いと把持力が低下したり、自重によって撓みが生じ易くなり、対象物の把持が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、肉厚が薄くても把持部材を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に強度や耐久性を向上させ、狭い空間における作業や細かい作業を行うことができる把持装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る把持装置は、肉厚が薄くても把持部材を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に強度や耐久性を向上させ、狭い空間における作業や細かい作業を行うという課題を解決するために、対象物を把持可能な把持装置であって、内部に気室を備えた複数の突起が隣接配置されているとともに、前記気室のそれぞれに連通する通気路を備え、柔軟材料によって形成された把持部材と、前記気室および前記通気路の少なくとも一部に封入された骨格部材と、を有し、前記通気路に気体を圧入すると、前記気室または前記気室の内壁面と前記骨格部材との隙間に気体が流入し、前記突起が膨張することによって湾曲する。
【0008】
また、本発明の一態様として、前記把持部材と前記骨格部材とが接着してしまうのを防止し、両者の隙間に確実に気体を流入させるという課題を解決するために、前記把持部材と前記骨格部材とは、互いに接着しない材料によって形成されていてもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様として、前記把持部材と前記骨格部材とが接着してしまうのを防止し、両者の隙間に確実に気体を流入させるという課題を解決するために、前記把持部材と前記骨格部材との接触面には、互いに接着するのを防止する接着防止剤が塗布されていてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様として、前記骨格部材による強度および耐久性の向上の効果をより一層高めるという課題を解決するために、前記骨格部材は、前記気室および前記通気路の全てを充填する形状を有していてもよい。
【0011】
本発明に係る把持装置の製造方法は、肉厚が薄くても把持部材を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に強度や耐久性を向上させ、狭い空間における作業や細かい作業を行える把持装置を製造するという課題を解決するために、内部に気室を備えた複数の突起が隣接配置されているとともに、前記気室のそれぞれに連通する通気路を備え、柔軟材料によって形成された把持部材の一側面を開放した状態で形成する把持部材形成工程と、前記気室および前記通気路の少なくとも一部に封入可能な骨格部材を形成する骨格部材形成工程と、前記気室および前記通気路の少なくとも一部に骨格部材を充填する骨格部材充填工程と、前記骨格部材を充填した前記把持部材の一側面に液状の前記柔軟材料を流し込んで硬化させ前記骨格部材を封入する骨格部材封入工程と、を有する。
【0012】
また、本発明の一態様として、前記把持部材と前記骨格部材とが接着してしまうのを防止し、両者の隙間に確実に気体を流入させるという課題を解決するために、前記把持部材と前記骨格部材とは、互いに接着しない材料によって形成されていてもよい。
【0013】
さらに、本発明の一態様として、前記把持部材と前記骨格部材とが接着してしまうのを防止し、両者の隙間に確実に気体を流入させるという課題を解決するために、前記骨格部材充填工程の前に、前記把持部材と前記骨格部材との接触面に、互いに接着するのを防止する接着防止剤を塗布する接着防止剤塗布工程を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、肉厚が薄くても把持部材を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に強度や耐久性を向上させ、狭い空間における作業や細かい作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る把持装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の把持部材の(a)正面図、(b)正面図の下方から見た側面図および(c)正面図中央横断面図である。
【
図3】本実施形態の把持装置の製造方法における(a)把持部材形成工程、(b)骨格部材形成工程、(c)骨格部材充填工程および(d)骨格部材封入工程を示す図である。
【
図4】本実施形態の把持装置において、(a)把持部材で対象物を挟み込んだ状態を示す図、(b)気体を圧入された突起の模式図、および(c)把持部材で対象物を把持した状態を示す図である。
【
図5】実施例1のモデルBで用いた骨格部材を示す図である。
【
図6】実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】実施例2において、(a)モデルC、(b)モデルDおよび(c)モデルEで用いた骨格部材を示す図である。
【
図8】実施例2におけるモデルAのシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】実施例2におけるモデルBのシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】実施例2におけるモデルCのシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】実施例2におけるモデルDのシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】実施例2におけるモデルEのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る把持装置およびその製造方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
本実施形態の把持装置1は、対象物を把持可能なものであり、
図1に示すように、主として、対象物を把持する把持部材2と、把持部材2の骨格となる骨格部材3と、把持部材2を固定する装置本体4とを有している。以下、各構成について説明する。なお、本発明において、対象物とは、食品等の柔らかいものや、壊れやすいものの他、把持しうる全てのものを含む概念である。
【0018】
把持部材2は、対象物を把持するものであり、可撓性のある柔軟材料によって形成されている。本実施形態において、把持部材2は、
図2(a)に示すように、テーパー状の先端部を有し、肉厚の薄い略平板状に形成されている。また、把持部材2の外側面には、
図2(b)、(c)に示すように、内部に気室22を備えた複数の突起21が隣接配置されているとともに、気室22のそれぞれに連通する通気路23と、この通気路23に気体を圧入する気体圧入口24とを備えている。さらに、本実施形態では、把持部材2を横向きにした際の撓みを防止する撓み防止部25を有している。
【0019】
なお、本実施形態では、
図2(a)に示すように、複数の突起21が略直方体形状に形成されており、把持部材2の長手方向に沿って各突起21の長手方向が直交するように並列して配置されている。この構成によれば、後述するとおり、気体を圧入したとき、把持部材2の先端部が内側面側に湾曲する。しかしながら、突起21の形状や配置は、上記構成に限定されるものではなく、適宜変更しうる。
【0020】
例えば、把持部材2の長手方向に対して各突起21の長手方向が平行となるように並列して配置すれば、把持部材2の側辺部(
図2(a)における上下端辺)が内側面側に湾曲する。このように、隣接配置される突起21の向きや配置に応じて、把持部材2を所望の方向に湾曲させることが可能となる。
【0021】
また、把持部材2を構成する柔軟材料としては、シリコン樹脂等の熱硬化性エラストマーや、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane:TPU)等の熱可塑性エラストマーの他、ゴムのような弾性を有する柔軟な材料であれば、特に限定されるものではない。ただし、撓み防止部25については、ポリ乳酸樹脂(Poly-Lactic Acid:PLA)等のように、硬めの材料を埋め込むことが好ましい。
【0022】
骨格部材3は、把持部材2の内部に封入されて、把持部材2の骨格のように機能するものである。本実施形態において、骨格部材3は可撓性のある柔軟材料によって形成されており、気室22および通気路23の全てを充填する形状を有している。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、実施例2で後述するとおり、骨格部材3は、少なくとも気室22および通気路23の少なくとも一部に封入される形状であればよい。また、骨格部材3は柔軟材料に限らず、金属材料等であってもよい。これにより、把持部材2の湾曲具合を調節することも可能である。
【0023】
また、本実施形態において、把持部材2と骨格部材3とは、互いに接着しない材料によって形成されている。例えば、把持部材2がシリコン樹脂であれば、骨格部材3は熱可塑性ポリウレタン等である。これにより、把持部材2と骨格部材3とが互いに接着することがなく、両者の間には気体が流入可能な隙間が形成しうる状態となる。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、互いに接着しうる材料であっても把持部材2と骨格部材3との接触面に、互いに接着するのを防止する接着防止剤が塗布されていてもよい。この接着防止剤は、把持部材2や骨格部材3の材料に応じて適宜選択されるものであり、例えば、フッ素系の離型剤やシリコン系の離型剤などが挙げられる。
【0024】
装置本体4は、ロボットアーム等の移動装置(図示せず)に取り付けられ、把持部材2を固定するものである。本実施形態では、
図1に示すように、一対の把持部材2,2の内側面同士を向かい合わせた状態で、各把持部材2の基端部を固定板41によって固定するようになっている。本実施形態において、固定板41は、
図1に示すように、装置本体4に固定するためのネジを通すネジ孔42と、把持部材2の気体圧入口24と連通する連通孔43とを有している。また、装置本体4には、
図1に示すように、把持した対象物を載置するための載置板44が把持部材2,2の中間位置において前方に延出されている。
【0025】
なお、本実施形態では、二つの把持部材2を一対で設けているが、この構成に限定されるものではなく、対象物に応じて適宜増減してもよい。例えば、平板状の板状部材と対向するように一つの把持部材2を設け、当該把持部材2によって対象物を板状部材に押し付けることで把持するように構成してもよい。あるいは、四つの把持部材2によって四方向から対象物を把持するように構成してもよい。
【0026】
つぎに、本実施形態の把持装置1の製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態の把持装置1を製造する場合、まず、把持部材2を形成する(把持部材形成工程)。具体的には、把持部材2の形状を模った成形型に液状の柔軟材料を流し込んで硬化させる。これにより、
図3(a)に示すように、内部に気室22を備えた複数の突起21が隣接配置されているとともに、気室22のそれぞれに連通する通気路23を備えた把持部材2が、一側面を開放された状態で形成される。
【0028】
なお、本実施形態では、成形型に液状の柔軟材料を流し込む際、
図2(a)に示すように、把持部材2の基端部側における通気路23の両脇に、予め固い樹脂で成形した一対の撓み防止部25,25を成形型にセットする。これにより、撓み防止部25が埋め込まれた状態で把持部材2が形成される。
【0029】
つぎに、把持部材2の内部に封入する骨格部材3を形成する(骨格部材形成工程)。本実施形態において、骨格部材3は、把持部材2とは互いに接着しない材料によって形成されており、
図3(b)に示すように、気室22および通気路23の全てを充填する形状を有している。なお、骨格部材3は、把持部材2と同様、成形型で形成してもよく、3Dプリンター等で造形してもよい。
【0030】
つづいて、把持部材2の開放された面から、気室22および通気路23に骨格部材3を充填する(骨格部材充填工程)。本実施形態では、事前に形成した骨格部材3を把持部材2の内部に嵌め入れることによって充填する。これにより、
図3(c)に示すように、把持部材2の気室22および通気路23の内壁面に対して、骨格部材3が密着した状態で充填される。なお、把持部材形成工程で形成された把持部材2を成形型とし、これに骨格部材3の原料となる液状の柔軟材料を流し込んで硬化させることにより、把持部材2に骨格部材3を充填してもよい。この場合、骨格部材形成工程と骨格部材充填工程とが同時に行われることとなる。
【0031】
最後に、把持部材2の内部に充填された骨格部材3を封入する(骨格部材封入工程)。具体的には、
図3(d)に示すように、骨格部材3を充填した把持部材2の一側面に液状の柔軟材料を流し込んで硬化させることにより、骨格部材3を封入する。このとき、骨格部材3を封入するために流し込んだ液状の柔軟材料は、骨格部材3とは接着せず、把持部材2とのみ接着した状態で硬化する。
【0032】
このため、気室22の内壁面と骨格部材3との隙間、および通気路23の内壁面と骨格部材3との隙間には、気体が流入可能に構成される。また、一側面に流し込まれた液状の柔軟材料は、把持部材2と一体化するように硬化するため、接着剤等で接着する場合と比較して剥離し難い。さらに、実施例1で後述するとおり、気室22および通気路23に骨格部材3を内蔵させることにより、強度および耐久性が向上するため、肉厚を薄くしても把持部材を湾曲させ得る内圧の空気を圧入することが可能となる。
【0033】
つぎに、本実施形態の把持装置1による作用について説明する。なお、以下の説明では、把持装置1をロボットアーム等の移動装置(図示せず)に取り付けて使用する場合について説明する。
【0034】
まず、本実施形態の把持装置1を使用する場合、
図4(a)に示すように、把持装置1を移動させ、一対の把持部材2,2が対象物を挟み込むように配置する。このとき、各把持部材2は、肉厚の薄い略平板状に形成されているため、狭い空間や密集した部分に差し込み易く、細かい作業に適している。このため、例えば、異なる種類のカットケーキを把持して小さな箱に密に箱詰めするといった作業も可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、把持部材2の内部に封入された骨格部材3や撓み防止部25が、把持部材2の自重による撓みを防止する。このため、対象物の形状や作業内容に応じて、把持部材2を様々な向きで使用することが可能となる。
【0036】
つぎに、気体供給チューブ(図示せず)に接続された気体圧入口24から通気路23に気体が圧入されると、
図4(b)に示すように、気室22の内壁面と骨格部材3との隙間に気体が流入し、各突起21が膨張する。これにより、互いに隣接する突起21同士の干渉や、外側面と内側面における膨張率の違い等に起因して、把持部材2が内側に湾曲し対象物を把持する。
【0037】
このとき、本実施形態では、把持部材2の内部に封入された骨格部材3が、肉厚が薄くても把持部材2を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に把持部材2の強度や耐久性を向上する。このため、従来より高圧な気体を圧入しても把持部材2が破損することなく、把持部材2の先端部に至るまで硬くなり、把持力が向上する。よって、重たい対象物や微細な対象物でも容易に把持する。
【0038】
以上のような本実施形態の把持装置1およびその製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.肉厚が薄くても把持部材2を湾曲させ得る内圧に耐えられる程度に強度や耐久性を向上させ、狭い空間における作業や細かい作業を行うことができる。
2.把持部材2と骨格部材3とが接着してしまうのを防止し、両者の隙間に確実に気体を流入させることができる。
3.骨格部材3による強度および耐久性の向上の効果をより一層高めることができる。
4.肉厚の薄い把持部材2であれば、把持力を精密に制御しやすく、柔らかい食品等であっても密に箱詰め等することができる。
5.対象物の把持・整列・箱詰め等の作業を自動化でき、従来、人手による作業工程が多かった食品工場等を省人化し、人手不足の解消や稼働率の向上を図ることができる。
【0039】
つぎに、本発明に係る把持装置1およびその製造方法の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
【実施例0040】
本実施例1では、骨格部材3によって把持部材2の強度や耐久性がどの程度向上するかを確認するシミュレーションを行った。
【0041】
本実施例1におけるシミュレーション条件としては、以下のとおりである。
・シミュレーションソフト:SolidWorks2011 Simulation
・負荷条件:把持部材2の内部に0.04MPaを加圧する。
【0042】
また、シミュレーションに用いた把持部材2のモデルは、以下のとおりである。
A:骨格部材3が封入されていない中空の把持部材2
B:気室22および通気路23の全てを充填する形状の骨格部材3(
図5)を封入した把持部材2
【0043】
以上の条件下で、把持部材2の内部を加圧した際に発生した応力のシミュレーション結果を
図6に示す。
図6に示すように、骨格部材3が封入されていないモデルAでは、気室22および通気路23において、最大0.05MPa程度の大きな応力が発生しており、強い負荷がかかっていた。一方、骨格部材3を封入したモデルBでは、気室22および通気路23において、モデルAの半分程度の応力しか発生しておらず、全体的に強い負荷がかかっていなかった。
【0044】
以上の本実施例1によれば、把持部材2の気室22および通気路23に骨格部材3を封入することにより、強度や耐久性が向上しうることが示された。
以上の本実施例2によれば、把持部材2の気室22および通気路23の少なくとも一部に骨格部材3を封入することにより、強度や耐久性が向上することが示された。また、把持部材2の気室22および通気路23の全てを充填する形状を有する骨格部材3を封入することにより、骨格部材3による強度および耐久性の向上の効果をより一層高められることが示された。
例えば、上述した本実施形態では、一対の把持部材2,2を横方向に向けた状態で使用していたがこの構成に限定されるものではない。クレーンゲームのように、把持部材2を下方向に向けた状態で使用してもよい。
また、上述した本実施形態では、肉厚の薄い略平板状の把持部材2を用いているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、既存のロボットハンドのように、肉厚の厚い把持部材2であっても、上述した本実施形態と同様の構造を有していれば、強度、耐久性および把持力の向上が見込まれる。