(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136288
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】測定方法及び測定システム
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H02H9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041816
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 伸二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義晋
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕紀
【テーマコード(参考)】
5G013
【Fターム(参考)】
5G013AA05
5G013AA08
5G013BA02
5G013CA06
5G013CB20
5G013DA11
(57)【要約】
【課題】状態が使用状態に近い放電装置の特性を測定することができる測定方法及び測定システムを提供する。
【解決手段】放電装置12では、4つの通信用導線2a,2b,3a,3bそれぞれに4つの第1ダイオードDaのアノードが接続されている。4つの通信用導線2a,2b,3a,3bそれぞれに4つの第2ダイオードDbのカソードが接続されている。放電器Fの第1電極は4つの第1ダイオードDaのカソードに接続されている。放電器Fの第2電極は、4つの第2ダイオードDbのアノードに接続されている。放電器Fは、4つの通信用導線2a,2b,3a,3b中の1つの電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合、放電用導線Bを介して電流を流す。測定方法では、充電されたコンデンサCが第1電極及び第2電極間に電圧を印加する。第1測定器61及び第2測定器62は、2つの通信用導線を介した通信に関する通信特性を測定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導線それぞれにアノードが接続される複数の第1ダイオードと、前記複数の導線それぞれにカソードが接続される複数の第2ダイオードと、第1電極が前記複数の第1ダイオードのカソードに接続され、第2電極が前記複数の第2ダイオードのアノードに接続され、前記導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合に、前記複数の導線とは異なる第2の導線を介して電流を流す放電器とを備える放電装置の特性を測定する測定方法であって、
前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加するステップと、
前記複数の導線に含まれる2つの導線を介した通信に関する通信特性を測定するステップと
を含む測定方法。
【請求項2】
前記第1電極及び第2電極間にコンデンサを接続するステップと、
前記コンデンサを充電するステップと
を含み、
前記コンデンサが前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加する
請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記2つの導線を介して伝播する信号を構成する複数の周波数成分それぞれに関して、伝播によって生じる損失を測定するステップ
を含む請求項1又は請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記2つの導線を介して伝播する信号を構成する複数の周波数成分それぞれの反射率を測定するステップ
を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項5】
複数の導線それぞれにアノードが接続される複数の第1ダイオードと、前記複数の導線それぞれにカソードが接続される複数の第2ダイオードと、第1電極が前記複数の第1ダイオードのカソードに接続され、第2電極が前記複数の第2ダイオードのアノードに接続され、前記導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合に、前記複数の導線とは異なる第2の導線を介して電流を流す放電器とを有する放電装置と、
前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と、
前記複数の導線に含まれる2つの導線を介した通信に関する通信特性を測定する測定部と
を備える測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は測定方法及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大地の電位を基準電位とした導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合に、第2の導線を介して電流を流す放電器を備える放電装置が開示されている。この放電装置では、複数の導線それぞれに複数の第1ダイオードのアノードが接続されている。複数の導線それぞれには、更に、複数の第2ダイオードのカソードが接続されている。第2の導線は大地に接続されている。放電器の第1電極は複数の第1ダイオードのカソードに接続されている。放電器の第2電極は複数の第2ダイオードのアノードに接続されている。
【0003】
導線の電圧が正値である場合において、導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となったとき、放電器は、第1ダイオード、第2の導線及び大地の順に電流を流す。導線の電圧が負値である場合において、導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となったとき、放電器は、大地、第2の導線及び第2ダイオードの順に電流を流す。これにより、導線の電圧の絶対値は所定電圧以下に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複数の導線に含まれる2つの導線を介して通信が行われる。特許文献1では、この通信に関する放電装置の特性を測定する方法に関しては考慮されていない。状態が使用状態に近い放電装置の特性を測定することが好ましい。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、状態が使用状態に近い放電装置の特性を測定することができる測定方法及び測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る測定方法は、複数の導線それぞれにアノードが接続される複数の第1ダイオードと、前記複数の導線それぞれにカソードが接続される複数の第2ダイオードと、第1電極が前記複数の第1ダイオードのカソードに接続され、第2電極が前記複数の第2ダイオードのアノードに接続され、前記導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合に、前記複数の導線とは異なる第2の導線を介して電流を流す放電器とを備える放電装置の特性を測定する測定方法であって、前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加するステップと、前記複数の導線に含まれる2つの導線を介した通信に関する通信特性を測定するステップとを含む。
【0008】
本開示の一態様に係る測定システムは、複数の導線それぞれにアノードが接続される複数の第1ダイオードと、前記複数の導線それぞれにカソードが接続される複数の第2ダイオードと、第1電極が前記複数の第1ダイオードのカソードに接続され、第2電極が前記複数の第2ダイオードのアノードに接続され、前記導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合に、前記複数の導線とは異なる第2の導線を介して電流を流す放電器とを有する放電装置と、前記第1電極及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と、前記複数の導線に含まれる2つの導線を介した通信に関する通信特性を測定する測定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、放電装置の通信特性が測定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における通信システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】逆バイアス電圧と接合容量の大きさとの関係の説明図である。
【
図5】実施の形態2における使用状態の放電装置の回路図である。
【
図9】実施の形態3における測定状態の放電装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における通信システム1の要部構成を示すブロック図である。通信システム1は、第1通信装置A1、第2通信装置A2及び放電装置12を備える。第1通信装置A1は第1通信回路10及び給電回路11を有する。第2通信装置A2は受電回路13及び第2通信回路14を有する。第2通信装置A2は、通信を行う電気機器であり、例えば防犯カメラである。第1通信回路10及び第2通信回路14間には、2つの通信線2,3が接続されている。通信線2には、2つの通信用導線2a,2bが含まれている。通信線3には、2つの通信用導線3a,3bが含まれている。通信線2,3それぞれは、例えばツイストペア線である。この場合、2つの通信用導線2a,2bは撚り合されている。2つの通信用導線3a,3bも撚り合されている。
【0012】
第1通信回路10は、通信線2を介して第2通信回路14に差動信号を送信する。第2通信回路14は、通信線3を介して第1通信回路10に差動信号を送信する。通信線2を介して伝播する差動信号は、通信用導線2a,2b間の電圧差を種々の信号レベルに調整することによって生成される。同様に、通信線3を介して伝播する差動信号は、通信用導線3a,3b間の電圧差を種々の信号レベルに調整することによって生成される。
【0013】
給電回路11、放電装置12及び受電回路13は、通信線2,3の中途に配置されている。給電回路11、放電装置12及び受電回路13は、第1通信回路10側(左側)から第2通信回路14側(右側)に向かってこの順に配置されている。通信線2,3それぞれは放電装置12の内部を通っている。
【0014】
第1通信装置A1の給電回路11は、直流電源41及び2つの通信用トランス42,43を有する。通信用トランス42は2つの巻線42a,42bを有する。2つの巻線42a,42bそれぞれは、例えば、環状の鉄心に巻き付いている。鉄心は磁性体である。2つの巻線42a,42bそれぞれの一端は、通信用導線2aに接続されている。2つの巻線42a,42bそれぞれの他端は、通信用導線2bに接続されている。従って、通信用トランス42は、通信線2の中途に配置されている。
【0015】
同様に、通信用トランス43は2つの巻線43a,43bを有する。2つの巻線43a,43bは、例えば環状の鉄心に巻き付いている。2つの巻線43a,43bそれぞれの一端は、通信用導線3aに接続されている。2つの巻線43a,43bそれぞれの他端は、通信用導線3bに接続されている。従って、通信用トランス43は、通信線3の中途に配置されている。
【0016】
直流電源41の正極は巻線42bの中途に接続されている。直流電源41の負極は巻線43bの中途に接続されている。巻線42a,43aそれぞれは、通信線2,3を介して第1通信回路10に接続されている。
【0017】
第2通信装置A2の受電回路13は、DCDCコンバータ51及び2つの通信用トランス52,53を有する。通信用トランス52は2つの巻線52a,52bを有する。2つの巻線52a,52bそれぞれは、例えば、環状の鉄心に巻き付いている。2つの巻線52a,52bそれぞれの一端は、通信用導線2aに接続されている。2つの巻線52a,52bそれぞれの他端は、通信用導線2bに接続されている。従って、通信用トランス52は、通信線2の中途に配置されている。
【0018】
同様に、通信用トランス53は2つの巻線53a,53bを有する。2つの巻線53a,53bは、例えば環状の鉄心に巻き付いている。2つの巻線53a,53bそれぞれの一端は、通信用導線3aに接続されている。2つの巻線53a,53bそれぞれの他端は、通信用導線3bに接続されている。従って、通信用トランス53は、通信線3の中途に配置されている。
【0019】
DCDCコンバータ51は、第1入力端、第2入力端及び第1出力端及び第2出力端を有する。DCDCコンバータ51の第1入力端及び第2入力端それぞれは、巻線52a,53aの中途に接続されている。DCDCコンバータ51の第1出力端及び第2出力端は第2通信回路14に各別に接続されている。巻線52b,53bそれぞれは通信線2,3を介して第2通信回路14に接続されている。
【0020】
給電回路11の直流電源41は、通信線2,3を介して電力を受電回路13に送る。受電回路13は、給電回路11の直流電源41が送った電力を受け、受けた電力を第2通信回路14に供給する。直流電源41の正極から、電流は、2つの通信用導線2a,2bを介してDCDCコンバータ51の第1入力端に流れる。通信用導線2a,2bそれぞれでは、電流は、給電回路11から受電回路13に向かう方向に流れる。DCDCコンバータ51の第2入力端から、電流は、2つの通信用導線3a,3bを介して直流電源41の負極に流れる。通信用導線3a,3bそれぞれでは、電流は、受電回路13から給電回路11に向かう方向に流れる。
【0021】
これにより、DCDCコンバータ51の第1入力端及び第2入力端には、直流電源41の出力電圧が入力される。DCDCコンバータ51は、入力された直流電源41の出力電圧を、一定の目標電圧に変圧し、第1出力端及び第2出力端から目標電圧を第2通信回路14に印加する。結果、直流電源41から第2通信回路14に電力が供給される。直流電源41は、例えば、商用電源から出力される交流電圧を用いて出力電圧を生成する。具体的には、直流電源41は、商用電源から出力される交流電圧を直流電圧に整流し、整流した直流電圧を平滑する。直流電源41は、平滑した直流電圧を出力電圧として出力する。
【0022】
給電回路11が行う給電は、例えばPoE給電である。PoEはPower over Ethernetの略語である。イーサネット(Ethernet)は登録商標である。PoE給電は、LANケーブルを介した給電である。LANはLocal Area Networkの略語である。
【0023】
前述したように、第1通信回路10は、通信線2を介して差動信号を送信する。通信用トランス42の巻線42aに差動信号が入力された場合、巻線42bは通信線2を介して差動信号を通信用トランス52の巻線52aに出力する。巻線52aに差動信号が入力された場合、巻線52bは通信線2を介して差動信号を第2通信回路14に出力する。これにより、第2通信回路14は差動信号を受信する。通信用トランス42,52それぞれでは絶縁が行われている。
【0024】
前述したように、第2通信回路14は、通信線3を介して差動信号を送信する。通信用トランス53の巻線53bに差動信号が入力された場合、巻線53aは通信線3を介して差動信号を通信用トランス43の巻線43bに出力する。巻線43bに差動信号が入力された場合、巻線43aは通信線3を介して差動信号を第1通信回路10に出力する。これにより、第1通信回路10は差動信号を受信する。通信用トランス43,53それぞれでは絶縁が行われている。通信用トランス42,43,52,53それぞれは、所謂パルストランスである。
【0025】
放電装置12は、4つの第1ダイオードDa、4つの第2ダイオードDb、放電器F及び2つの端子T1,T2を有する。放電器Fは第1電極及び第2電極を有する。放電器Fには、放電用導線Bが接続されている。放電用導線Bは、通信用導線2a,2b,3a,3bとは異なっており、第2の導線として機能する。
【0026】
4つの第1ダイオードDaそれぞれのアノードは、4つの通信用導線2a,2b,3a,3bに接続されている。4つの第2ダイオードDbそれぞれのカソードは、4つの通信用導線2a,2b,3a,3bに接続されている。4つの第1ダイオードDaのカソードは、放電器Fの第1電極に接続されている。4つの第2ダイオードDbのアノードは、放電器Fの第2電極に接続されている。端子T1,T2それぞれは、放電器Fの第1電極及び第2電極に接続されている。放電用導線Bは接地されている。接地は、例えば大地への接続によって実現される。
【0027】
放電器Fでは、第1電極及び放電用導線B間の電圧が一定の閾値電圧以上となった場合、第1電極及び放電用導線B間でアークが発生する。結果、第1電極及び放電用導線Bを介して電流が流れ、接地電位を基準電位とした第1電極の電圧の絶対値は閾値電圧以下に維持される。第2電極及び放電用導線B間の電圧が閾値電圧以上となった場合、第2電極及び放電用導線B間でアークが発生する。結果、第2電極及び放電用導線Bを介して電流が流れ、接地電位を基準電位とした第2電極の電圧の絶対値は閾値電圧以下に維持される。
【0028】
以下では、通信用導線2a,2b,3a,3bに含まれる1つの導線を対象導線と記載する。対象導線は、通信用導線2a,2b,3a,3bのいずれであってもよい。接地電位を基準電位とした対象導線の電圧が正値である場合において、対象導線の電圧が所定電圧以上となったとき、第1電極及び放電用導線B間の電圧が一定の閾値電圧以上となる。結果、放電器Fでは、第1電極及び放電用導線B間でアークが発生する。電流は、対象導線、第1ダイオードDa、放電器F、放電用導線B及び大地の順に流れる。
【0029】
接地電位を基準電位とした対象導線の電圧が負値である場合において、対象導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となったとき、第2電極及び放電用導線B間の電圧が一定の閾値電圧以上となる。結果、放電器Fでは、第2電極及び放電用導線B間でアークが発生する。電流は、大地、放電用導線B、放電器F、第2ダイオードDb及び対象導線の順に流れる。
【0030】
以上のように、放電器Fは、対象導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合、放電用導線Bを介して電流を流す。これにより、接地電位を基準電位とした4つの通信用導線2a,2b,3a,3bの電圧の絶対値は所定電圧以下に維持される。例えば、給電回路11及び放電装置12間の2つの通信線2,3は屋外に配置される。この場合において落雷が発生したとき、接地電位を基準電位とした対象導線の電圧の絶対値が上昇する可能性がある。放電装置12は、接地電位を基準電位とした対象導線の電圧の絶対値を所定電圧以下に維持するので、受電回路13を、絶対値が所定電圧を超える過電圧の印加から保護することができる。放電装置12は、例えばSPD(Surge protective device)である。
【0031】
図1では、使用状態の放電装置12が示されている。直流電源41の出力電圧に関して、通信用導線2a,2bの電位は、通信用導線3a,3bの電位よりも高い。このため、通信用導線2a,2bそれぞれに接続されている2つの第2ダイオードDb、及び、通信用導線3a,3bそれぞれに接続されている2つの第1ダイオードDaには、逆バイアス電圧が印加されている。残りの第1ダイオードDa及び第2ダイオードDbには、逆バイアス電圧は印加されていない。
【0032】
図1では、逆バイアス電圧が印加されているダイオードは黒のダイオードで示されている。逆バイアス電圧が印加されていないダイオードは白抜きのダイオードで示されている。なお、以下で説明する
図3、
図5、
図8及び
図9においても、逆バイアス電圧が印加されているダイオードを黒のダイオードで示し、逆バイアス電圧が印加されていないダイオードを白抜きのダイオードで示している。ダイオードは、接合容量を有し、コンデンサとしても作用する。接合容量の大きさは逆バイアス電圧に応じて異なる。
【0033】
図2は、逆バイアス電圧と接合容量の大きさとの関係の説明図である。ダイオードにおいてアノードの電位を基準電位とした正の電圧がカソードに印加された場合、ダイオードに逆バイアス電圧が印加される。ダイオードでは、N型半導体及びP型半導体が接続されている。逆バイアス電圧がダイオードに印加された場合、電子及び正孔それぞれは、カソード側及びアノード側に移動する。結果、ダイオードの中央部に、電子又は正孔が存在しない空乏層が形成させる。空乏層が絶縁層として機能するため、接合容量が形成される。
【0034】
逆バイアス電圧が大きい程、空乏層の幅が大きい。空乏層の幅は、
図2における左右方向の長さである。空乏層の幅が大きい程、接合容量の大きさは小さい。結果、
図2の上側に示すように、逆バイアス電圧が大きい程、接合容量の大きさは小さい。周波数をfで表す。接合容量の大きさをCで表す。接合容量のインピーダンスの絶対値は、1/(2・π・f・C)で表される。「・」は積を表す。従って、インピーダンスの絶対値は、周波数が大きい程小さく、接合容量の大きさが大きい程、小さい。
【0035】
図1に示すように、2つの第1ダイオードDaを含む第1直列回路と、2つの第2ダイオードDbを含む第2直列回路とが2つの通信用導線2a,2b間に接続されている。2つの通信用導線3a,3b間にも第1直列回路及び第2直列回路が接続されている。従って、通信線2を介した通信に関する通信特性は、2つの通信用導線2a,2b間の第1直列回路に含まれる2つの第1ダイオードDaの接合容量の大きさと、2つの通信用導線2a,2b間の第2直列回路に含まれる2つの第2ダイオードDbの接合容量の大きさとに依存する。通信線3を介した通信に関する通信特性は、2つの通信用導線3a,3b間の第1直列回路に含まれる2つの第1ダイオードDaの接合容量の大きさと、2つの通信用導線3a,3b間の第2直列回路に含まれる2つの第2ダイオードDbの接合容量の大きさとに依存する。
【0036】
給電回路11が電力を送っている状態を使用状態と記載する。使用状態の放電装置12では、2つの第1ダイオードDa及び2つの第2ダイオードDbに逆バイアス電圧が印加されている。使用状態の放電装置12の通信特性は、全ての第1ダイオードDa及び全ての第2ダイオードDbに逆バイアス電圧が印加されてない状態での放電装置12の通信特性とは異なる。通信システム1の設計者は、状態が使用状態に近い放電装置12の通信特性を把握しておくことが好ましい。以下では、状態が使用状態に近い放電装置12の通信特性の測定方法を示す。
【0037】
図3は通信特性の測定方法の説明図である。通信特性の測定方法では、測定者は、まず、
図3の上側に示すように、2つの端子T1,T2間にコンデンサCを接続する。この状態で、測定者は、放電装置12の通信線2,3に第1通信装置A1及び第2通信装置A2を接続する。接続が行われた後、給電回路11は、放電装置12を介して受電回路13に電力を送るとともに、コンデンサCが充電される。
【0038】
電流は、通信用導線2a,2bの一方から、第1ダイオードDa、端子T1、コンデンサC、端子T2、第2ダイオードDb、及び、通信用導線3a,3bの一方の順に流れる。コンデンサCが充電された後、測定者は、放電装置12から第1通信装置A1及び第2通信装置A2を外す。この状態では、
図3の下側に示すように、コンデンサCは、4つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧を印加する。コンデンサCは、2つの端子T1,T2間に電圧を印加する。コンデンサCは電圧印加部として機能する。
【0039】
測定者は、放電装置12から第1通信装置A1及び第2通信装置A2を外した後、放電装置12の通信線2,3に第1測定器61及び第2測定器62を接続する。第1測定器61及び第2測定器62は、放電装置12の内部を通っている通信線2,3を介して差動信号の送受信を行い、通信線2,3それぞれを介した通信に関する通信特性を測定する。第1測定器61及び第2測定器62の全体は測定部として機能する。
【0040】
通信特性が測定される状態を測定状態と記載する。
図3の上側及び下側それぞれには、使用状態及び測定状態の放電装置12が示されている。使用状態の放電装置12では、通信線2,3それぞれに関して、第1直列回路及び第2直列回路中の一方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されており、他方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されていない。測定状態の放電装置12でも、通信線2,3それぞれに関して、第1直列回路及び第2直列回路中の一方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されており、他方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されていない。このため、通信線2,3それぞれに関して、測定状態は使用状態に近い。従って、第1測定器61及び第2測定器62が測定する通信特性は、状態が使用状態に近い放電装置12の通信特性である。
【0041】
図4は通信特性の内容の説明図である。第1測定器61及び第2測定器62は、通信線2を介して伝播する差動信号を構成する複数の周波数成分それぞれに関して、伝播によって生じる損失を測定する。同様に、第1測定器61及び第2測定器62は、通信線3を介して伝播する差動信号を構成する複数の周波数成分それぞれに関して、伝播によって生じる損失を測定する。第1測定器61又は第2測定器62は、
図4の左側に示すように、周波数と損失との関係を示すグラフを作成し、作成したグラフを表示する。
【0042】
第1測定器61及び第2測定器62は、通信線2を介して伝播する差動信号を構成する複数の周波数成分それぞれの反射率を測定する。1つの周波数成分の反射率は、送信方向に伝播する波の強度を、送信方向とは異なる逆方向に伝播する波の強度で除算することによって得られる値である。通信線2に関しては、第1通信装置A1から第2通信装置A2に向かう方向、即ち、
図3の右方向が送信方向である。逆方向は、第2通信装置A2から第1通信装置A1に向かう方向、即ち、
図3の左方向である。
【0043】
第1測定器61及び第2測定器62は、通信線3を介して伝播する差動信号を構成する複数の周波数成分それぞれの反射率を測定する。通信線3に関しては、第2通信装置A2から第1通信装置A1に向かう方向が送信方向である。逆方向は、第1通信装置A1から第2通信装置A2に向かう方向である。第1測定器61又は第2測定器62は、
図4の右側に示すように、周波数と反射率との関係を示すグラフを作成し、作成したグラフを表示する。
【0044】
以上のように、損失及び反射率それぞれは通信特性の1つである。なお、第1測定器61及び第2測定器62は、通信特性として、更に漏話を測定してもよい。通信線3を介して信号を送信していない状態で通信線2を介して差動信号を送信する。このとき、通信線3で発生する雑音の強度が漏話である。通信線2を介して差動信号が送信された場合、通信線2から発生する電磁波が通信線3に干渉し、通信線3において雑音が発生する。漏話に関して、複数の周波数成分それぞれの雑音の強度を示してもよい。同様に、通信線2を介して信号を送信していない状態で通信線3を介して差動信号を送信する。この場合において、第1測定器61及び第2測定器62は、更に、通信線2において発生する雑音の強度である漏話を測定してもよい。
【0045】
なお、通信線2,3それぞれに関して、差動信号が送信される方向は一方向に限定されず、双方向に差動信号が送信されてもよい。従って、第1測定器61及び第2測定器62は、通信線2に関して、送信方向に差動信号を送信する場合の通信特性だけではなく、逆方向に差動信号を送信する場合の通信特性を測定してもよい。同様に、第1測定器61及び第2測定器62は、通信線3に関して、送信方向に差動信号を送信する場合の通信特性だけではなく、逆方向に差動信号を送信する場合の通信特性を測定してもよい。
【0046】
前述した通信特性の測定方法では、充電されたコンデンサCが4つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧を印加するので、第1測定器61及び第2測定器62は、状態が使用状態に近い放電装置12の通信特性を測定することができる。
なお、放電装置12、第1測定器61、第2測定器62及びコンデンサCを含むシステムは測定システムとして機能する。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態1では、第1通信装置A1の給電回路11は、4つの通信用導線2a,2b,3a,3bを介して電力を第2通信装置A2の受電回路13に送っている。しかしながら、給電回路11は、4つの通信用導線2a,2b,3a,3bとは異なる4つの導線を介して電力を受電回路13に送ってもよい。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図5は、実施の形態2における使用状態の放電装置12の回路図である。
図6は給電回路11の回路図である。
図7は受電回路13の回路図である。実施の形態2では、2つの通信線2,3に加えて、給電に用いられる2つの給電線7,8が放電装置12の内部を通っている。
図5~
図7に示すように、第1通信回路10は、実施の形態1と同様に、2つの通信線2,3によって、第2通信回路14に接続されている。実施の形態2における給電回路11は、更に、2つの給電線7,8によって受電回路13に接続されている。給電線7には、2つの給電用導線7a,7bが含まれている。給電線8には、2つの給電用導線8a,8bが含まれている。給電線7,8それぞれは、例えばツイストペア線である。この場合、2つの給電用導線7a,7bは撚り合されている。2つの給電用導線8a,8bも撚り合されている。
【0049】
図6に示すように、給電用導線7aの一端は給電用導線7bの一端に接続されている。直流電源41の正極は、2つの給電用導線7a,7bの一端を接続する接続線の中途に接続されている。給電用導線8aの一端は、給電用導線8bの一端に接続されている。直流電源41の負極は、2つの給電用導線8a,8bの一端を接続する接続線の中途に接続されている。通信用トランス42,43には、直流電源41は接続されていない。
【0050】
図7に示すように、受電回路13は、実施の形態1と同様に、DCDCコンバータ51及び2つの通信用トランス52,53を有する。実施の形態2における受電回路13は、更に、第1ブリッジ回路G1及び第2ブリッジ回路G2を有する。第1ブリッジ回路G1及び第2ブリッジ回路G2それぞれは、4つの回路ダイオードH1,H2,H3,H4を有する。第1ブリッジ回路G1及び第2ブリッジ回路G2それぞれでは、回路ダイオードH1のアノードに回路ダイオードH2のカソードが接続されている。回路ダイオードH1のカソードに回路ダイオードH3のカソードが接続されている。回路ダイオードH2のアノードは回路ダイオードH4のアノードが接続されている。回路ダイオードH3のアノードは、回路ダイオードH4のカソードに接続されている。第1ブリッジ回路G1及び第2ブリッジ回路G2それぞれは、交流電圧の全波整流を行うダイオードブリッジ回路と同様に構成されている。
図7では、回路ダイオードH1,H2,H3,H4に関して、逆バイアス電圧が印加されているか否かは示されていない。
【0051】
第1ブリッジ回路G1に関して、回路ダイオードH1,H2間の接続ノードは、通信用トランス52の巻線52aの中途に接続されている。回路ダイオードH3,H4間の接続ノードは、通信用トランス53の巻線53aの中途に接続されている。回路ダイオードH1,H3間の接続ノードは、DCDCコンバータ51の第1入力端に接続されている。回路ダイオードH2,H4間の接続ノードは、DCDCコンバータ51の第2入力端に接続されている。
【0052】
給電用導線7aの他端は給電用導線7bの他端に接続されている。同様に、給電用導線8aの他端は給電用導線8bの他端に接続されている。第2ブリッジ回路G2に関して、回路ダイオードH1,H2間の接続ノードは、2つの給電用導線7a,7bの他端を接続する接続線の中途に接続されている。回路ダイオードH3,H4間の接続ノードは、2つの給電用導線8a,8bの他端を接続する接続線の中途に接続されている。回路ダイオードH1,H3間の接続ノードは、DCDCコンバータ51の第1入力端に接続されている。回路ダイオードH2,H4間の接続ノードは、DCDCコンバータ51の第2入力端に接続されている。
【0053】
実施の形態1と同様に、給電回路11の巻線42b,43b間に直流電源41が接続されたと仮定する。通信用導線2a,2bの電位が、通信用導線3a,3bの電位よりも高い場合、電流は、回路ダイオードH1、DCDCコンバータ51及び回路ダイオードH4の順に流れる。従って、DCDCコンバータ51に関して、第1入力端の電位は第2入力端の電位よりも高い。通信用導線3a,3bの電位が、通信用導線2a,2bの電位よりも高い場合、電流は、回路ダイオードH3、DCDCコンバータ51及び回路ダイオードH2の順に流れる。この場合においても、DCDCコンバータ51に関して、第1入力端の電位は第2入力端の電位よりも高い。従って、巻線42bに接続される直流電源41の電極が正極であるか否かに無関係に、第2入力端の電位を基準電位として第1入力端の電圧は正の電圧である。DCDCコンバータ51は、巻線42bに接続される直流電源41の電極が正極であるか否かに無関係に正常に動作する。
【0054】
実施の形態2では、給電回路11の巻線42b,43b間に直流電源41が接続されていない。しかしながら、給電回路11の巻線42b,43b間に直流電源41が接続された場合、DCDCコンバータ51は、実施の形態1と同様に、第2通信回路14に電力を供給する。
【0055】
実施の形態2では、給電用導線7a,7bの電位が、給電用導線8a,8bの電位よりも高い。従って、電流は、回路ダイオードH1、DCDCコンバータ51及び回路ダイオードH4の順に流れる。従って、DCDCコンバータ51に関して、第1入力端の電位は第2入力端の電位よりも高い。直流電源41の正極が給電用導線8a,8bの一端間の接続ノードに接続され、直流電源41の負極が給電用導線7a,7b間の一端間の接続ノードに接続ノードに接続されたと仮定する。
【0056】
この場合、給電用導線8a,8bの電位が、給電用導線7a,7bの電位よりも高い。この場合、電流は、回路ダイオードH3、DCDCコンバータ51及び回路ダイオードH2の順に流れる。この場合においても、DCDCコンバータ51に関して、第1入力端の電位は第2入力端の電位よりも高い。従って、直流電源41の正極及び負極の接続に無関係に、第2入力端の電位を基準電位として第1入力端の電圧は正の電圧である。DCDCコンバータ51は、直流電源41の正極及び負極の接続に無関係に正常に動作する。
【0057】
DCDCコンバータ51は、第1入力端及び第2入力端間に印加された電圧を目標電圧に変圧し、目標電圧を第2通信回路14に印加する。これにより、第2通信回路14に電力が供給される。
【0058】
実施の形態1では、給電回路11は通信線2,3を介して電力を送っている。実施の形態2では、給電回路11は、通信線2,3を介した実施の形態1の給電と同様に、給電線7,8を介して電力を受電回路13に送る。直流電源41の正極から、電流は、2つの給電用導線7a,7bを介してDCDCコンバータ51に流れる。給電用導線7a,7bそれぞれでは、電流は、給電回路11から受電回路13に向かう方向に流れる。DCDCコンバータ51から、電流は、2つの給電用導線8a,8bを介して直流電源41の負極に流れる。給電用導線8a,8bそれぞれでは、電流は、受電回路13から給電回路11に向かう方向に流れる。これにより、DCDCコンバータ51には、直流電源41の出力電圧が入力される。
【0059】
直流電源41の正極が給電用導線8a,8bの一端間の接続ノードに接続され、直流電源41の負極が給電用導線7a,7b間の一端間の接続ノードに接続ノードに接続されたと仮定する。この場合、直流電源41の正極から、電流は、2つの給電用導線8a,8bを介してDCDCコンバータ51に流れる。給電用導線8a,8bそれぞれでは、電流は、給電回路11から受電回路13に向かう方向に流れる。DCDCコンバータ51から、電流は、2つの給電用導線7a,7bを介して直流電源41の負極に流れる。給電用導線7a,7bそれぞれでは、電流は、受電回路13から給電回路11に向かう方向に流れる。これにより、DCDCコンバータ51には、直流電源41の出力電圧が入力される。
【0060】
図5に示すように、放電装置12が有する第1ダイオードDa及び第2ダイオードDbそれぞれの数は8である。放電用導線Bは通信用導線2a,2b,3a,3b及び給電用導線7a,7b,8a,8bとは異なっている。8つの第1ダイオードDaそれぞれのアノードは、4つの通信用導線2a,2b,3a,3b及び4つの給電用導線7a,7b,8a,8bに接続されている。8つの第2ダイオードDbそれぞれのカソードは、4つの通信用導線2a,2b,3a,3b及び4つの給電用導線7a,7b,8a,8bに接続されている。8つの第1ダイオードDaのカソードは、放電器Fの第1電極に接続されている。8つの第2ダイオードDbのアノードは、放電器Fの第2電極に接続されている。
【0061】
実施の形態2では、通信用導線2a,2b,3a,3b及び給電用導線7a,7b,8a,8bに含まれる1つの導線を対象導線と記載する。対象導線は、通信用導線2a,2b,3a,3b及び給電用導線7a,7b,8a,8bのいずれであってもよい。放電器Fは、実施の形態1と同様に、対象導線の電圧の絶対値が所定電圧以上となった場合、放電用導線Bを介して電流を流す。これにより、接地電位を基準電位とした4つの通信用導線2a,2b,3a,3b及び4つの給電用導線7a,7b,8a,8bの電圧の絶対値は所定電圧以下に維持される。
【0062】
例えば、給電回路11及び放電装置12間の2つの通信線2,3及び2つの給電線7,8は屋外に配置される。この場合において、落雷が発生したとき、接地電位を基準電位とした対象導線の電圧の絶対値が上昇する可能性がある。放電装置12は、接地電位を基準電位とした対象導線の電圧の絶対値を所定電圧以下に維持するので、第2通信装置A2を、絶対値が所定電圧を超える過電圧の印加から保護することができる。
【0063】
図5では、使用状態の放電装置12が示されている。直流電源41の出力電圧に関して、給電用導線7a,7bの電位は、給電用導線8a,8bの電位よりも高い。このため、給電用導線7a,7bそれぞれに接続されている2つの第2ダイオードDb、及び、給電用導線8a,8bそれぞれに接続されている2つの第1ダイオードDaには、逆バイアス電圧が印加されている。
【0064】
給電用導線7a,7bの電圧は、逆バイアス電圧として、通信用導線2a,2b,3a,3bそれぞれに接続されている4つの第1ダイオードDaに印加される。通信線2,3及び給電線8それぞれに関して、第1直列回路に含まれる2つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧が印加されている。第2直列回路に含まれる2つの第2ダイオードDbには逆バイアス電圧は印加されていない。給電線7に関して、第2直列回路に含まれる2つの第2ダイオードDbには逆バイアス電圧が印加されている。第1直列回路に含まれる2つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧は印加されていない。
【0065】
なお、給電用導線8a,8bの電位が、給電用導線7a,7bの電位よりも高い場合、給電用導線8a,8bそれぞれに接続されている2つの第2ダイオードDb、及び、給電用導線7a,7bそれぞれに接続されている2つの第1ダイオードDaには、逆バイアス電圧が印加される。
【0066】
給電用導線8a,8bの電圧は、逆バイアス電圧として、通信用導線2a,2b,3a,3bそれぞれに接続されている4つの第1ダイオードDaに印加される。通信線2,3及び給電線7それぞれに関して、第1直列回路に含まれる2つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧が印加されている。第2直列回路に含まれる2つの第2ダイオードDbには逆バイアス電圧は印加されていない。給電線8に関して、第2直列回路に含まれる2つの第2ダイオードDbには逆バイアス電圧が印加されている。第1直列回路に含まれる2つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧は印加されていない。
【0067】
図8は測定状態の放電装置12の回路図である。実施の形態2においても、測定者は、端子T1,T2間にコンデンサCを接続し、放電装置12の通信線2,3及び給電線7,8に第1通信装置A1及び第2通信装置A2を接続する。これにより、第1通信装置A1の給電回路11は、実施の形態1と同様に、コンデンサCを充電する。コンデンサCが充電された後、測定者は、放電装置12から第1通信装置A1及び第2通信装置A2を外す。この状態では、
図8に示すように、コンデンサCは8つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧を印加する。
【0068】
測定者は、放電装置12から第1通信装置A1及び第2通信装置A2を外した後、放電装置12の通信線2,3及び給電線7,8に第1測定器61及び第2測定器62を接続する。第1測定器61及び第2測定器62は、放電装置12の内部を通っている通信線2,3を介して差動信号の送受信を行い、通信線2,3それぞれを介した通信に関する通信特性を測定する。
【0069】
使用状態の放電装置12では、通信線2,3及び給電線7,8それぞれに関して、第1直列回路及び第2直列回路中の一方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されており、他方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されていない。測定状態の放電装置12でも、通信線2,3及び給電線7,8それぞれに関して、第1直列回路及び第2直列回路中の一方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されており、他方の直列回路に含まれる2つのダイオードに逆バイアス電圧が印加されていない。このため、通信線2,3及び給電線7,8それぞれに関して、測定状態は使用状態に近い。従って、第1測定器61及び第2測定器62が測定する通信特性は、状態が使用状態に近い放電装置12の通信特性である。
【0070】
実施の形態2における通信特性の測定方法は、実施の形態1における通信特性の測定方法が奏する効果を同様に奏する。実施の形態2においても、放電装置12、第1測定器61、第2測定器62及びコンデンサCを含むシステムは測定システムとして機能する。
【0071】
なお、実施の形態2において、給電線7,8それぞれを介して差動信号が送信されてもよい。この場合、第1測定器61及び第2測定器62は、通信線2,3及び給電線7,8それぞれを介した通信に関する通信特性を測定する。
【0072】
(実施の形態3)
実施の形態1では、給電回路11がコンデンサCを充電している。しかしながら、コンデンサCを充電する装置は、給電回路11とは異なる装置であってもよい。
以下では、実施の形態3について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図9は、実施の形態3における測定状態の放電装置12の回路図である。実施の形態3における放電装置12は、実施の形態1における放電装置12が有する構成部に加えて、充電回路9を有する。充電回路9は、充電用ダイオード91,92、抵抗93、直流電源94及びスイッチ95を有する。充電用ダイオード91のカソードは、放電器Fの第1電極に接続されている。充電用ダイオード91のアノードは、抵抗93の一端に接続されている。抵抗93の他端は、直流電源94の正極に接続されている。直流電源94の負極はスイッチ95の一端に接続されている。スイッチ95の他端は充電用ダイオード92のカソードに接続されている。充電用ダイオード92のアノードは放電器Fの第2電極に接続されている。なお、充電回路9が配置される場所は、放電装置12の内部に限定されず、放電装置12の外部に配置されてもよい。
【0074】
スイッチ95は、通常、オフである。実施の形態3において通信特性を測定する場合、測定者は、端子T1,T2間にコンデンサCを接続し、放電装置12の通信線2,3に第1測定器61及び第2測定器62を接続する。次に、測定者は、スイッチ95をオフからオンに切換える。これにより、直流電源94の正極から、電流は、抵抗93、充電用ダイオード91、端子T1、コンデンサC、端子T2、充電用ダイオード92、スイッチ95及び直流電源94の負極の順に流れる。これにより、コンデンサCが充電される。コンデンサCが充電された後、測定者はスイッチ95をオフに切換える。この状態では、
図9に示すように、コンデンサCは4つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧を印加する。
【0075】
実施の形態1と同様に、第1測定器61及び第2測定器62は、コンデンサCが4つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧を印加している状態で、通信線2,3それぞれに関する通信の通信特性を測定する。
【0076】
実施の形態3における通信特性の測定方法は、実施の形態1における通信特性の測定方法が奏する効果を同様に奏する。実施の形態2においても、放電装置12、第1測定器61、第2測定器62及びコンデンサCを含むシステムは測定システムとして機能する。
【0077】
なお、実施の形態3においては、端子T1,T2間にコンデンサCを接続しない場合であっても、第1測定器61及び第2測定器62は、4つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧が印加されている状態で通信特性を測定することができる。この場合、端子T1,T2間にコンデンサCが接続されていない状態で、測定者はスイッチ95をオフからオンに切換える。この状態では、端子T1の電位は端子T2の電位よりも高い。4つの第1ダイオードDaに逆バイアス電圧が印加される。第1測定器61及び第2測定器62は、スイッチ95がオンである状態で通信特性を測定する。
【0078】
スイッチ95がオンである場合、充電回路9が2つの端子T1,T2間に電圧を印加する。コンデンサCを接続していない構成では、充電回路9が電圧印加部として機能する。
充電回路9の構成は2つの端子T1,T2間に電圧を印加する構成であれば問題はない。従って、充電回路9のスイッチ95は常にオンであってもよい。更に、充電回路9の構成は、スイッチ95が除かれた構成であってもよい。この場合、直流電源41の負極は充電用ダイオード92のカソードに接続される。
【0079】
実施の形態2において、放電装置12の構成は、実施の形態3と同様に、充電回路9を有する構成であってもよい。この場合、実施の形態3と同様に、コンデンサCを充電するために、第1通信装置A1及び第2通信装置A2の接続を行う必要はない。また、コンデンサCを接続することなく、通信特性を測定してもよい。
【0080】
実施の形態1~3において、通信線の数は2に限定されず、1又は3以上であってもよい。また、コンデンサCを接続する構成では、コンデンサCは、常時、端子T1,T2間に接続されていてもよい。この場合、コンデンサCは放電装置12に含まれる。
【0081】
実施の形態1~3において、放電器Fは下記のように作用すれば問題はない。第1電極及び放電用導線B間の電圧が閾値電圧以上となった場合、第1電極及び放電用導線Bを介して電流が流れる。第2電極及び放電用導線B間の電圧が閾値電圧以上となった場合、第2電極及び放電用導線Bを介して電流が流れる。従って、放電器Fの構成は、第1電極及び放電用導線B間に第1素子が接続され、かつ、第2電力及び放電用導線B間に第2素子が接続される構成であってもよい。第1素子及び第2素子それぞれは、2端子の放電管、ツェナーダイオード又はバリスタ等である。
【0082】
実施の形態1~3で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
開示された実施の形態1~3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
2a,2b,3a,3b 通信用導線、9 充電回路(電圧印加部)、11 給電回路、12 放電装置、13 受電回路、C コンデンサ(電圧印加部)、61 第1測定器(測定部の一部)、62 第2測定器(測定部の一部)、Da 第1ダイオード、Db 第2ダイオード、F 放電器