(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136307
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01M 1/02 20060101AFI20230922BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20230922BHJP
F01M 9/10 20060101ALI20230922BHJP
F16F 15/26 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F01M1/02 A
F02B77/00 L
F01M9/10 M
F16F15/26 Z
F16F15/26 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041845
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上川 将洋
【テーマコード(参考)】
3G313
【Fターム(参考)】
3G313BC10
3G313FA02
(57)【要約】
【課題】クランクギヤとバランサギヤの間での歯打ち音の発生を抑制すること。
【解決手段】一端部10aから第1回転負荷(変速機500)に回転トルクを伝達し、かつ、他端部10bから第2回転負荷(補機30及びカムシャフト)に回転トルクを伝達するクランクシャフト10と、クランクシャフト10の一端部10aに同心上に設けたクランクギヤ20と、一端部60aを第1回転負荷側に配置すると共に他端部60bを第2回転負荷側に配置して、クランクシャフト10に並べたバランスシャフト60と、バランスシャフト60の一端部60aに同心上に設け、クランクギヤ20に噛み合わせたバランサギヤ70と、機関内でオイルを供給するオイルポンプ80と、を備え、オイルポンプ80は、バランスシャフト60におけるバランサギヤ70よりも他端部60b側に設けること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部から第1回転負荷に回転トルクを伝達し、かつ、他端部から第2回転負荷に回転トルクを伝達するクランクシャフトと、
前記クランクシャフトの前記一端部に同心上に設けたクランクギヤと、
一端部を前記第1回転負荷側に配置すると共に他端部を前記第2回転負荷側に配置して、前記クランクシャフトに並べたバランスシャフトと、
前記バランスシャフトの前記一端部に同心上に設け、前記クランクギヤに噛み合わせたバランサギヤと、
機関内でオイルを供給するオイルポンプと、
を備え、
前記オイルポンプは、前記バランスシャフトにおける前記バランサギヤよりも前記他端部側に設けることを特徴とした内燃機関。
【請求項2】
前記クランクギヤと前記バランサギヤには、そのギヤ比が1:1のものを用いることを特徴とした請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記第1回転負荷は、前記クランクシャフトの前記一端部の回転トルクを駆動輪側に伝える変速機であり、
前記第2回転負荷は、前記クランクシャフトの前記他端部から回転トルクが伝達されて、補機及びカムシャフトを駆動させる動力伝達機構であることを特徴とした請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記バランスシャフトは、変速機用オイルポンプを駆動させるポンプ駆動軸と同じ軸径であることを特徴とした請求項3に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関においては、その気筒数と気筒配列に応じて発生する振動を抑えるべく、クランクシャフトの回転に連動させて慣性偶力を打ち消すための所謂バランスシャフトが備えられている。例えば、下記の特許文献1には、この種の内燃機関について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の内燃機関におけるクランクシャフトの回転トルクは、一端部から変速機に伝えられ、かつ、他端部から補機やカムシャフトに伝えられる。一方、バランスシャフトにおいては、クランクシャフトの回転トルクが歯車群を介して伝えられる。このため、従来の内燃機関では、クランクシャフトに対してバランスシャフトが軽負荷での回転体となり、その相互間の歯車群で歯打ち音が発生してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、クランクシャフトとバランスシャフトの間の歯車群での歯打ち音の発生を抑制し得る内燃機関を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、一端部から第1回転負荷に回転トルクを伝達し、かつ、他端部から第2回転負荷に回転トルクを伝達するクランクシャフトと、前記クランクシャフトの前記一端部に同心上に設けたクランクギヤと、一端部を前記第1回転負荷側に配置すると共に他端部を前記第2回転負荷側に配置して、前記クランクシャフトに並べたバランスシャフトと、前記バランスシャフトの前記一端部に同心上に設け、前記クランクギヤに噛み合わせたバランサギヤと、機関内でオイルを供給するオイルポンプと、を備え、前記オイルポンプは、前記バランスシャフトにおける前記バランサギヤよりも前記他端部側に設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る内燃機関は、クランクギヤとバランサギヤの間での歯打ち音の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の内燃機関について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る内燃機関の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係る内燃機関は、クランクシャフトで発生する振動を低減させるためのバランスシャフトを備え、その相互間が歯車群で繋がれているものである。よって、この内燃機関については、その範疇にあるものであれば、直列型やV型等の気筒配列の型式、その気筒数を問わない。つまり、この内燃機関は、歯車群でクランクシャフトに繋がれたバランスシャフトを備えるものであれば、単気筒であってもよく、直列型等の複数の気筒が配列されたものであってもよい。
【0011】
本発明に係る内燃機関の実施形態の1つを
図1に基づいて説明する。
【0012】
図1に示す符号1は、本実施形態の内燃機関を示す。ここで示す内燃機関1は、複数の気筒を備える直列型レイアウトを採るものである。ここでは、直列3気筒の内燃機関1を例示する。
【0013】
この内燃機関1は、図示しないが、筒内に空気を供給する吸気経路と、筒内への吸入空気量や吸気タイミングを調整する吸気バルブと、筒内に直接的又は間接的に燃料を供給するインジェクタと、筒内の燃焼ガスによって往復動するピストンと、ピストンの往復動に連動して往復動するコネクティングロッドと、筒内の燃焼後のガスを排出させる排気経路と、そのガスの排気タイミングを調整する排気バルブと、吸気バルブや排気バルブを駆動させる少なくとも1本のカムシャフトと、を備える。更に、この内燃機関1は、コネクティングロッドの往復動を回転運動に変えて出力トルク(回転トルク)を出力させるクランクシャフト10と、このクランクシャフト10に対して同心上に設けたクランクギヤ20と、機関始動時にクランクギヤ20を軸周りに回転させるスタータモータ(図示略)と、を備える。また更に、この内燃機関1は、少なくとも1つの補機(オルタネータ、ウォーターポンプ等)30を備え、かつ、この補機30とカムシャフトを駆動させる動力伝達機構40を備える。
【0014】
この内燃機関1は、クランクシャフト10の一端部10aから第1回転負荷に回転トルクを伝達し、かつ、クランクシャフト10の他端部10bから第2回転負荷に回転トルクを伝達する。例えば、この内燃機関1は、動力源として自動車等の車両に搭載される。この車両においては、内燃機関1の出力トルク(回転トルク)が変速機500等を介して駆動輪(図示略)に伝達され、かつ、その出力トルクで補機30とカムシャフトを駆動させる。よって、ここでは、クランクシャフト10の一端部10aの回転トルクを駆動輪側に伝える変速機500が第1回転負荷となる。そして、ここでは、補機30及びカムシャフトと、クランクシャフト10の他端部10bから回転トルクが伝達されて、補機30及びカムシャフトを駆動させる動力伝達機構40とが第2回転負荷となる。
【0015】
クランクシャフト10は、主軸11と、この主軸11の軸心から偏心させた位置でコネクティングロッドのビッグエンドを回転自在に軸支する気筒毎のクランクピン12と、を有する。このクランクシャフト10においては、その主軸11がクランクケース50の軸受51で回転自在に軸支されている。この内燃機関1においては、コネクティングロッドの往復動に伴い主軸11を軸周りに回転させ、この主軸11に回転トルクを発生させる。また、このクランクシャフト10においては、主軸11の一端部が先の一端部10aとなり、主軸11の他端部が先の他端部10bとなる。クランクギヤ20は、その一端部10aに対して同心上に設けられている。機関始動時には、スタータモータの出力トルクをクランクギヤ20に伝えて主軸11を軸周りに回転させ、コネクティングロッドを往復動させる。
【0016】
このクランクシャフト10は、一端部10aから変速機500に回転トルクを伝達し、かつ、他端部10bから動力伝達機構40に回転トルクを伝達する。
【0017】
変速機500は、手動変速機であってもよく、自動変速機であってもよく、所謂オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション(AMT)であっもてもよい。また、この変速機500は、自動変速機の場合、有段自動変速機であってもよく、無段自動変速機であってもよい。ここで示す変速機500は、ベルト式無段自動変速機である。
【0018】
この変速機500は、クランクシャフト10の一端部10aから出力された回転トルクを入力させるインプットシャフト511と、このインプットシャフト511に対して同心上に設けた第1ギヤ512と、この第1ギヤ512に噛み合わせる第2ギヤ513と、を備える。内燃機関1と変速機500の間では、図示しないが、クランクシャフト10の一端部10aとインプットシャフト511の一端部511aが動力伝達機構(クラッチ及びフライホイール、又は、トルクコンバータ等)を介して接続される。第1ギヤ512は、インプットシャフト511の他端部511bに設ける。
【0019】
更に、この変速機500は、第2ギヤ513に対して同心上に設けたプライマリシャフト514と、このプライマリシャフト514に対して同心上に設けたプライマリプーリ515と、このプライマリプーリ515と対になるセカンダリプーリ(図示略)と、セカンダリプーリに対して同心上に設けたセカンダリシャフト(図示略)と、プライマリプーリ515とセカンダリプーリに巻き掛けたベルト(図示略)と、を備える。この変速機500においては、プライマリプーリ515側でのベルトとの接触半径とセカンダリプーリ側でのベルトとの接触半径との比(変速比)を無段階に変化させ、出力トルクをセカンダリシャフトから駆動輪側に伝達させる。
【0020】
また更に、この変速機500は、インプットシャフト511の他端部511bから同軸上で延在させたポンプ駆動軸516と、このポンプ駆動軸516に対して同心上に設けたオイルポンプ(以下、「変速機用オイルポンプ」という。)517と、を備える。ポンプ駆動軸516は、インプットシャフト511と一緒に軸周りに回転して、変速機用オイルポンプ517を駆動させる。このポンプ駆動軸516は、その軸径がインプットシャフト511の軸径よりも小径のものとして形成されている。
【0021】
動力伝達機構40は、クランクシャフト10の他端部10bに対して同心上に設けた第1スプロケット41と、補機30の入力軸31に対して同心上に設けた補機30毎の第2スプロケット42と、カムシャフトに対して同心上に設けた第3スプロケット(図示略)と、を備える。そして、この動力伝達機構40は、その第1スプロケット41と第2スプロケット42と第3スプロケットに巻き掛けて、クランクシャフト10の回転トルクを第2スプロケット42と第3スプロケットに伝えるタイミングチェーン43を備える。
【0022】
この内燃機関1は、ピストンの往復動に伴いクランクシャフト10で振動を発生させてしまうので、その振動を低減させるバランスシャフト60を備える。このバランスシャフト60は、クランクシャフト10に並べて配置され、クランクケース50の軸受52で回転自在に軸支される。ここで示すクランクシャフト10とバランスシャフト60は、互いの軸方向を同じ向きに合わせて平行に並べられている。そして、バランスシャフト60は、一端部60aを変速機500側に配置すると共に、他端部60bを動力伝達機構40側に配置している。
【0023】
更に、この内燃機関1は、クランクシャフト10の回転トルクをバランスシャフト60に伝えるべく、このバランスシャフト60の一端部60aに同心上に設け、クランクギヤ20に噛み合わせたバランサギヤ70を備える。例えば、この内燃機関1においては、バランスシャフト60をクランクシャフト10に対して等速で逆回転させることで、1次の慣性偶力を打ち消して、1次の慣性偶力振動を低減させる。そこで、クランクギヤ20とバランサギヤ70には、そのギヤ比が1:1のものを用いる。
【0024】
尚、内燃機関が直列2気筒レイアウトにおける所謂360度クランク同爆エンジンの場合、1次の慣性偶力振動を低減させるべく、クランクギヤとバランサギヤには、内燃機関1のクランクギヤ20及びバランサギヤ70と同じギヤ比(1:1)のものを用いる。一方、内燃機関が直列4気筒レイアウトの場合には、バランスシャフト60をクランクシャフト10に対して倍速で逆回転させることで、2次の慣性偶力を打ち消して、2次の慣性偶力振動を低減させる。そこで、クランクギヤ20とバランサギヤ70には、そのギヤ比が1:2のものを用いる。
【0025】
ここで、この内燃機関1は、機関内でオイルを供給するオイルポンプ80を備える。このオイルポンプ80は、バランスシャフト60におけるバランサギヤ70よりも他端部60b側に設け、このバランスシャフト60の軸周りの回転に連動して駆動させる。これにより、このオイルポンプ80は、オイルパン内のオイルを汲み上げて機関内で循環させる。ここで示すオイルポンプ80は、バランスシャフト60の他端部60bに設けている。
【0026】
以上示したように、この内燃機関1は、変速機500(第1回転負荷)側に配置したバランスシャフト60の一端部60aに、クランクシャフト10の回転トルクがクランクギヤ20から伝達されるバランサギヤ70を設け、かつ、バランスシャフト60におけるバランサギヤ70よりも他端部60b側{つまり、バランサギヤ70よりも動力伝達機構40(第2回転負荷)側}にオイルポンプ80を設けている。このため、この内燃機関1においては、従来の内燃機関(クランクシャフトにオイルポンプを設けたもの)と比較して、バランスシャフト60に掛かる負荷が従来のバランスシャフトよりも高負荷になる。よって、この内燃機関1においては、クランクギヤ20からバランサギヤ70に伝わる伝達トルクを上昇させることができるので、クランクギヤ20とバランサギヤ70の間で噛み離れが起こり難くなり、その間での歯打ち音の発生を抑えることができる。
【0027】
ところで、一端部と他端部がバランスシャフト60とは逆に配置されたバランスシャフトを用いる場合には、動力伝達機構40側の一端部にバランサギヤが設けられているので、クランクシャフト10の他端部10bにクランクギヤ20を設けて、このクランクギヤ20にバランサギヤを噛み合わせる必要がある。そして、この場合には、動力伝達機構40側に寄せて配置されるオイルポンプ80の位置に合わせて、このオイルポンプ80が設けられるバランスシャフトの他端部を動力伝達機構40側に寄せる必要がある。このため、この場合の内燃機関においては、クランクシャフト10に比べてバランスシャフトの軸長が短くなるので、このクランクシャフト10とバランスシャフトの間の歯車群で歯打ち音が発生してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態の内燃機関1は、バランスシャフト60の一端部60aを変速機500(第1回転負荷)側に配置し、かつ、バランスシャフト60の他端部60bを動力伝達機構40(第2回転負荷)側に配置しているので、一端部と他端部が逆に配置されたバランスシャフトと比較して、バランスシャフト60を変速機500と動力伝達機構40の間で延在させることができる。換言するならば、この内燃機関1は、そのようなバランスシャフト60の配置によって、クランクシャフト10と同等の長さにまでバランスシャフト60の軸長を延ばすことができる。従って、本実施形態の内燃機関1は、この点からも、クランクギヤ20とバランサギヤ70の間での歯打ち音の発生を抑えることができる。
【0028】
また、クランクシャフト10は、その強度等を確保するために小径化が難しい。このため、従来の内燃機関においては、クランクシャフトの軸径に合わせた用意したオイルポンプをそのクランクシャフトに組み付けている。これに対して、本実施形態の内燃機関1は、クランクシャフト10よりも軸径の小さいバランスシャフト60にオイルポンプ80を設ける。このため、この内燃機関1においては、バランスシャフト60の軸径又はバランスシャフト60の他端部60bの軸径を変速機500のポンプ駆動軸516の軸径と同じ大きさに形成することによって、オイルポンプ80と変速機用オイルポンプ517の共用化が可能になる。例えば、ここでは、バランスシャフト60の他端部60bとオイルポンプ80をスプライン嵌合させ、かつ、ポンプ駆動軸516と変速機用オイルポンプ517をスプライン嵌合させる。よって、ここでは、バランスシャフト60の他端部60bとポンプ駆動軸516におけるポンプ結合部を同形状のスプライン軸形状に形成し、共用のオイルポンプ(オイルポンプ80、変速機用オイルポンプ517)のロータにスプライン軸が嵌め込まれる嵌合部を設ける(図示略)。
【符号の説明】
【0029】
1 内燃機関
10 クランクシャフト
10a 一端部
10b 他端部
20 クランクギヤ
30 補機(第2回転負荷)
40 動力伝達機構(第2回転負荷)
60 バランスシャフト
60a 一端部
60b 他端部
70 バランサギヤ
80 オイルポンプ
500 変速機(第1回転負荷)
516 ポンプ駆動軸
517 変速機用オイルポンプ