(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136309
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】金属化フィルムおよびこれを用いたフィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230922BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01G4/32 511G
H01G4/32 511L
B32B15/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041847
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】大河内 亮
【テーマコード(参考)】
4F100
5E082
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AK02A
4F100AK07A
4F100AK42A
4F100AK43A
4F100AK49A
4F100AK54A
4F100AK57A
4F100BA02
4F100BA07
4F100GB41
4F100JG05A
4F100JK14A
5E082AB04
5E082BC35
5E082BC38
5E082EE07
5E082EE15
5E082EE24
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG19
5E082FG34
5E082PP04
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】 耐電圧性とハンドリング性との両方を十分に良好にする金属化フィルムおよびフィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】 第1面とその反対側の第2面とを有する膜厚1~4μmの誘電体フィルムと、前記第1面に位置する金属膜とを含む金属化フィルムであって、前記第1面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9であり、前記第2面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであることを特徴とする金属化フィルム、およびこの金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、該本体部に設けられた外部電極部と、を備えるフィルムコンデンサである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその反対側の第2面とを有する膜厚1~4μmの誘電体フィルムと、前記第1面に位置する金属膜とを含む金属化フィルムであって、
前記第1面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9であり、前記第2面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmである、金属化フィルム。
【請求項2】
前記金属膜は、10nm以上30nm以下の膜厚を有する、請求項1記載の金属化フィルム。
【請求項3】
前記誘電体フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、およびシクロオレフィンポリマーから選ばれた1種から成る、請求項1または2に記載の金属化フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、
前記本体部に設けられた外部電極部と、を備えるフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属化フィルムおよびこれを用いたフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルムコンデンサの耐電圧性とハンドリング性の向上を図るものとして、たとえば、金属化フィルムとして二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの表面に金属膜を蒸着して成るものを用いたフィルムコンデンサが提案されている。このOPPフィルムは、両面に突起を有し、両面が異なる平均粗さになるように制御し、耐電圧性の観点から片面の表面をより平滑に、ハンドリング性の観点から別の片面の表面をより粗くする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載される従来技術では、OPPフィルムの両面の突起の高さ、個数を制御して表面の平均粗さを異なるようにするだけでは、耐電圧性とハンドリング性の両方が十分に向上しないという問題がある。そのため、従来から、耐電圧性とハンドリング性との両方を十分に良好にする金属化フィルムおよびフィルムコンデンサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の金属化フィルムは、第1面とその反対側の第2面とを有する膜厚1~4μmの誘電体フィルムと、前記第1面に位置する金属膜とを含む金属化フィルムであって、前記第1面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9であり、前記第2面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであることを特徴とする金属化フィルムである。
【0006】
さらに本開示のフィルムコンデンサは、上記金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、該本体部に設けられた外部電極部と、を備えるフィルムコンデンサである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、耐電圧性とハンドリング性との両方を十分に良好にする金属化フィルムおよびフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る金属フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明における一実施形態の、誘電体フィルムの第1面の表面を制御する方法を概念的に説明する図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す、一部が切り欠かれた斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のフィルムコンデンサの基礎となる構成のフィルムコンデンサは、ポリプロピレン樹脂等から成る誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る金属化フィルムを、巻回または所定方向に複数枚積層することによって形成される。
【0010】
本開示の金属化フィルムについて、図面を参照しつつ説明するが、これに限定されない。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る金属フィルムを模式的に示す断面図である。本実施形態の金属化フィルム10は、誘電体フィルム1および金属膜2を有する。誘電体フィルム1は、第1面1aおよび第1面1aとは反対側の第2面1bを有している。
【0012】
誘電体フィルム1は、絶縁性の樹脂から成る。誘電体フィルム1に用いられる樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びシクロオレフィンポリマー等から選ばれた1種であってもよい。
【0013】
誘電体フィルム1の膜厚は、1~4μmである。膜厚が1μm未満であれば、ハンドリング時の誘電体フィルムの破断が生じやすくなり、膜厚が4μmを超えると、金属化フィルムを巻回することによってまたは所定方向に複数層積層することによって形成したフィルムコンデンサ素子の体格が大きくなる。
【0014】
誘電体フィルム1の第1面1aは、蒸着面であり、金属膜が蒸着して電極面となる。第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9である。
【0015】
第1面1aの算術平均高さSaが10nm未満であると、電極面にシワが発生し耐電圧性が低下する。逆に第1面1aの算術平均高さSaが60nmを超えると、電極間距離の局所低下が起こり耐電圧性が低下する。
【0016】
第1面1aの表面テクスチャー比Strが0.26未満であると、表面形態が過度に異方性となりレベリング不良が生じ耐電圧性が低下する。逆に第1面1aの表面テクスチャー比Strが0.9を超えると、表面形態が過度に等方性となり、レベリングが非常に良く、第1面1aの算術平均高さSaが10nm以上にならない。
【0017】
また、誘電体フィルム1の第2面1bは、非蒸着面である。第2面1bの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmである。第2面1bの算術平均高さSaが10nm未満であると、ハンドリング性が低下し、シワ発生の要因となり、耐電圧性が低下する。逆に第2面1bの算術平均高さSaが60nmを超えると、電極間距離の局所低下が起こり耐電圧性が低下する。
【0018】
上記の表面テクスチャー比「Str」は、三次元表面を説明するためだけに用いられる三次元空間パラメーターである。Strパラメーターの値は0~1の間の範囲であり、単位はない。0又は0に近いStr値は、極端な異方性の表面を表し、非常に規則的なパターンを反映しており、逆に1又は1に近いStr値は、極端な等方性の表面を表し、非常にランダムなパターンを反映している。
【0019】
誘電体フィルムは、以下のようにして作製することができる。
【0020】
基材の表面に絶縁性の樹脂溶液を塗布し、溶媒を除去すると誘電体フィルムとなる。その後、溶媒を除去した後、誘電体フィルムを基材から剥離し、樹脂または金属から成る巻芯に巻回し回収して誘電体フィルムが得られる。
【0021】
そうすると誘電体フィルムの基材側の表面(第2面1b)は、基材の表面を写しとるので、誘電体フィルムの片面の表面形態は塗布される側の基材の表面形態と同じである。したがって、基材の表面の算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであるのが好ましい。
【0022】
基材側とは反対側である表面の第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9であるが、これは、たとえば、以下のようにして制御される。
【0023】
まず、上記絶縁性の樹脂を溶媒に溶解して樹脂溶液を準備する。溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、またはこれらから選択された2種以上の混合物を用いることができる。
【0024】
そして、例えばPET製の基材の表面が算術平均高さSa10nm≦Sa≦60nmになるように調整する。これは、基材の一方主面(第3面ともいう)にアルミナ粒子等を用いたブラスト処理を施し、基材の表面を調整して得ることができる。
【0025】
次に、基材の第3面に塗布された樹脂溶液を乾燥して溶媒を除去(揮発)させることによって、基材の第3面上に誘電体フィルムを形成し、その後基材から剥離するので、第2面1bは、基材の表面状態に近い表面となり、10nm≦Sa≦60nmの範囲に算術平均高さSaを制御することができる。
【0026】
基材とは反対側の表面(第2面1b)は、そのままでは基材の表面とは同じにはならないが、塗装条件を制御することにより、目的とする表面形態(算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9)の誘電体フィルムを得ることができる。すなわち、基材とは反対側の表面を、塗布する基材の表面輪郭に沿った成形フィルム形態とすることで得られる。塗装条件、たとえば、適切なレベリング状態にすること、およびウエット膜(Wet膜)を乾燥膜(Dry膜)にするまでの状態を成形速度やスラリーの性状をコントロールすることで第2面1bを基材の表面輪郭に沿った誘電体フィルムとすることができる。
【0027】
その一例の方法を
図2によって説明するがこれに限定されない。
【0028】
図2は、本発明における一実施形態の、誘電体フィルムの第1面の表面を制御する方法を概念的に説明する図である。
【0029】
図2には、塗工直後、乾燥ゾーン直前、乾燥ゾーン直後の3つの塗工膜のレベリング状態が記載されている。突起を2つ有する基材の表面に樹脂溶液が塗工され(塗工直後)、乾燥前は18μmである膜厚(乾燥ゾーン直前)が乾燥によって溶剤が除去され膜厚が2μmにまで減少(乾燥ゾーン直後)している。乾燥ゾーンにおけるフィルムの走行速度は20m/minまたは30m/minが記載されている。乾燥ゾーン直前のレベリング状態が、次の乾燥工程における溶剤揮発により最終のレベリング状態に影響を与えている。
図2によれば、(乾燥ゾーン直後)の列の上から3番目のコースが判定が(〇)となっている。このコースは、初期のWet膜3のレベリング状態が良好であって、次の乾燥工程によりDry膜4のレベリング状態が不良になることにより、塗膜の表面が基材5の表面状態に最も近くなる、すなわち、塗工して乾燥前までにWet膜3の表面のレベリング状態を良好にした後、乾燥工程によってDry膜4のレベリングを不良の状態にすることが、基材5の表面に近い表面状態となりやすいことを示している。この方法においては、このコースが最良のコースの一つである。
【0030】
この場合において、塗工後乾燥ゾーン前までは、表面状態は、溶媒の種類、濃度、スラリーの粘度、塗工温度、走行速度などにより影響を受け、乾燥工程では、乾燥温度、風速、乾燥ゾーンでのフィルムの走行速度などにより影響を受けるので、上記の条件を調整して、基材5の表面に近い表面状態とすることができる。このようにすれば、基材5とは反対側の面の表面は算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmとなり、表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9となることができる。この範囲の状態は極端に異方性でもなく極端に等方性でもない状態であり、上記の操作条件を調整検討することにより達成することができる。算術平均高さSaと表面テクスチャー比が上記の数値を満たせばよいので、上記の方法は一態様であり、これに限定されない。
【0031】
従来は、基材に表面粗化を行った場合、局所的に誘電体フィルムが極端に薄くなる部分が生じ、誘電体フィルムの耐電圧特性が低下するという問題があった。局所膜厚低下は、塗工後のレベリング状態の不良によるリビング(畝)などの残存や、凹凸のある基材上での過度に良好なレベリング状態に起因する。しかし、その一方で、フィルムのハンドリング性を担保するためにはフィルムに凹凸を形成する必要がある。上記のようにフィルムの成形速度やスラリー性状を制御することで、基材とは反対側の面(第1面)を基材の輪郭に沿った表面形状とすることができる。これにより凹凸によるハンドリング性の向上と面内欠陥低減(局所膜厚低減)により耐電圧の向上を図ることができるようになった。
【0032】
誘電体フィルム1は、基材から剥離し、樹脂または金属から成る巻芯に巻回して回収する。回収された誘電体フィルム1の第1面1aに金属膜2を蒸着することによって、金属化フィルム10を製造することができる。
【0033】
金属膜2は、金属材料から成り、誘電体フィルム1の基材とは反対側の面である第1面1aに掲載されている。金属膜2に用いられる金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金等が挙げられる。金属膜の膜厚は、例えば、10nm以上30nm以下であってもよい。
【0034】
金属化フィルム10は、誘電体フィルム1の幅方向(
図1における紙面に垂直な方向)の一端側に、金属膜が蒸着されず、誘電体フィルム1の第1面1aが露出する部分である金属膜非形成部10aを有していてもよい。金属膜非形成部10aは、誘電体フィルムの長さ方向(
図1における左右方向)に連続して延びていてもよい。
【0035】
金属化フィルム10の製造方法では、基材の第3面上に形成された誘電体フィルムを、基材と一緒に巻芯に巻回して回収するのではなく、上記のように、基材から剥離し、基材とは別個に巻芯に巻回して回収する。このため、誘電体フィルム1の基材面側である第2面1bに、基材の他方主面の圧痕が生じることを抑制できる。
【0036】
金属化フィルム10では、誘電体フィルム1の、金属膜2が蒸着されない第2面1bが、算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmを満たすことにより、これにより凹凸によるハンドリング性の向上と面内欠陥低減(局所膜厚低減)により耐電圧の向上を図ることができる。
【0037】
また、金属化フィルム10では、誘電体フィルム1の、金属膜2が蒸着される第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmであり、かつ表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9である。これにより、電極面にシワが発生せず、表面形態が過度に異方性や等方性を示さず、電極間距離の局所低下が低減し耐電圧性が向上できる。
【0038】
次に、本開示のフィルムコンデンサについて、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す、一部が切り欠かれた斜視図であり、
図4は、本開示の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す展開斜視図である。
【0039】
本実施形態のフィルムコンデンサ20は、金属化フィルム10を複数枚積層して成る本体部6と、本体部6に設けられた外部電極7とを備えている。フィルムコンデンサ20は、外部電極7と外部装置(図示せず)とを電気的に接続するリード線8を有していてもよい。
【0040】
フィルムコンデンサ20は、本体部6と、外部電極7と、リード線8の一部とを覆う外装部材9を有していてもよい。これにより、本体部6と、外部電極7と、リード線8の糸部とを、外部環境から電気的に絶縁し、外部環境から保護することが可能になる。
【0041】
フィルムコンデンサ20は、例えば
図4に示すように、1つの金属化フィルム10の金属膜非形成部10aと、該1つの金属化フィルム10に隣り合う金属化フィルム10の金属膜非形成部10aとが、誘電体フィルム1の幅方向(
図3における左右方向)における異なる端部に位置するように構成されていてもよい。
【0042】
フィルムコンデンサ20は、金属化フィルム10を備えることにより、フィルムコンデンサを製造する際の歩留まり、フィルムコンデンサの耐電圧性をさらに向上させることができる。また、フィルムコンデンサ20によれば、隣り合う金属化フィルムが密着することを抑制し、絶縁欠陥部で短絡が生じた際のガス抜け性を確保することができるため、自己回復性を向上させることができる。
【0043】
フィルムコンデンサ20は、例えば
図4に示すように巻回型のフィルムコンデンサであってもよい。フィルムコンデンサ20は、巻回型のフィルムコンデンサである場合でも、金属化フィルム10を備えることによって、絶縁欠陥部で短絡が生じた際のガス抜け性を確保することができるため、自己回復性を向上させることができる。
【0044】
(実施例)
以下、実施例によって本開示をさらに説明するが、これに限定されない。
【0045】
(実施例1~7、比較例1~9)
有機樹脂としてポリアリレート樹脂を用い、溶媒トルエンを用いて樹脂溶液を得た。樹脂溶液を基材に塗布した後、乾燥して溶媒を除去して誘電体フィルム1を得た。
【0046】
この場合、
図2で記載されているように、塗工して乾燥前までに表面のレベリング状態を良好にした後、乾燥工程によってレベリングを不良の状態にする方法を採用した。その際の塗工条件である、基材の塗工面における算術平均高さSa、溶媒の種類、樹脂溶液のスラリー粘度、乾燥ゾーンにおける金属化フィルムの走行速度を表1に示した。
【0047】
これらの塗工条件に加えて、塗工液の濃度、走行速度、乾燥時の風速などの条件を調整して、実施例1~7、比較例1~9の誘電体フィルムを得た。
【0048】
得られた誘電体フィルムを基材から剥離し、巻芯に基材とは別個に巻回して回収した。次に、回収された誘電体フィルム1の基材面とは反対側の面(第1面1a)に、アルミニウムを真空蒸着法により蒸着し、金属化フィルムを得た。実施例1~7、比較例1~9の膜厚はすべて1~4μmの範囲内であった。
【0049】
実施例1~7および比較例1~9のそれぞれの金属化フィルムについて、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、視野100μm×100μmの表面を観察し、第1面1a、第2面1bの算術平均高さSaを測定した。また、株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡(VK-X1000)を用いて、第1面1aの表面テクスチャー比Strを測定した。測定結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
電気的欠陥数の評価方法:JIS C 2151(2019)21.4記載のC2法に準拠し、300V/μm印加時の絶縁破壊個数をカウントした。20個/m2以下を良(〇)とし、21個以上を×と判定した。
ハンドリング性の評価方法:ロールtoロール搬送時のフィルム上のシワを目視にて観察を行った。
シワ無し:〇、シワ有り:×
総合判定:電気的欠陥数が20個以下、ハンドリング性が〇であるものを〇(良)とした。電気的欠陥数が21個以上、および/またはハンドリング性が×であるものを×(不良)とした。
【0052】
実施例1~7については、第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nm、表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9、第2面1bの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmを満たしており、電気的欠陥数も20以下で少なく、ハンドリング性も良好であり、耐電圧性とハンドリング性の両方が良好であった。
【0053】
これに対して、比較例1~9については、第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nm、表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9、第2面1bの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmの内、少なくとも一つは満たしておらず、電気的欠陥数も20個を超えるか、および/またはハンドリング性が不良であり、耐電圧性とハンドリング性の両方が良好であることはなかった。
【0054】
上記の結果から、耐電圧性とハンドリング性を良好とするには、第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nm、表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9、第2面1bの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmのすべてを満たすことが必要であることがわかった。
【0055】
したがって、第1面1aの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nm、表面テクスチャー比Strが0.26≦Str≦0.9、第2面1bの算術平均高さSaが10nm≦Sa≦60nmのすべてを満たしている金属化フィルムが積層または巻回されてなる本体部と、該本体部に設けられた外部電極と、を備えるフィルムコンデンサは、耐電圧性とハンドリング性の両方が良好であることが確認できた。
【符号の説明】
【0056】
1 誘電体フィルム
1a 第1面
1b 第2面
2 金属膜
3 Wet膜
4 Dry膜
5 基材
6 本体部
7 外部電極
8 リード線
9 外装部材
10 金属化フィルム
10a 金属膜非形成部
20 フィルムコンデンサ