(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136310
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】硬貨処理装置および硬貨処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20230922BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20230922BHJP
G07D 11/20 20190101ALI20230922BHJP
【FI】
G07D1/00 A
G07G1/00 331A
G07D11/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041848
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 和晃
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141GA06
3E141JA10
3E141KA06
3E141KC14
3E141LA07
3E141LA23
3E141LA46
3E141LA47
3E142GA24
(57)【要約】
【課題】硬貨をカセットに移す作業を短時間で完了させることができる貨幣処理装置および貨幣処理方法を提供する。
【解決手段】硬貨処理装置は、カセットが着脱自在に取り付けられるカセット取付部と、前記カセットに硬貨を供給する硬貨供給部と、前記カセット取付部に取り付けられた前記カセットが所定条件を満たしていない場合、前記カセットに硬貨が残留していることを確認する動作である第1確認動作を前記カセットに行わせ、前記カセット取付部に取り付けられた前記カセットが前記所定条件を満たしている場合、前記第1確認動作を前記カセットに行わせることなく、前記カセットに硬貨を供給するように前記硬貨供給部を作動させる制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセットが取り付けられるカセット取付部と、
前記カセットに硬貨を供給する硬貨供給部と、
前記カセット取付部に取り付けられた前記カセットが所定条件を満たしていない場合、前記カセットに硬貨が残留していることを確認する動作である第1確認動作を前記カセットに行わせ、前記カセット取付部に取り付けられた前記カセットが前記所定条件を満たしている場合、前記第1確認動作を前記カセットに行わせることなく、前記カセットに硬貨を供給するように前記硬貨供給部を作動させる制御部と、を備える
硬貨処理装置。
【請求項2】
前記カセットは、前記カセット内の硬貨を搬送するコンベヤ、および、前記カセットの中の硬貨を検出するセンサを備え、
前記第1確認動作は、硬貨を前記センサの検知領域に搬送する前記コンベヤの動作である、
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記硬貨供給部から前記カセットに硬貨を供給している途中で前記硬貨供給部または前記カセットでエラーが発生した場合、前記制御部は、前記第1確認動作とは異なる前記カセットに硬貨が残留していることを確認する第2確認動作を前記カセットに行わせる、
請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記第2確認動作は、硬貨を前記センサの検知領域に向けて第1方向に搬送する前記コンベヤの動作と、硬貨を前記第1方向とは異なる第2方向に搬送する前記コンベヤの動作と、を含む、
請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記カセットの在高を取得することができるように構成されており、
前記在高が0であるにもかかわらず、前記第1確認動作によって前記センサが硬貨を検知した場合、前記制御部は、硬貨が検知されたことを報知する信号を生成する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記カセットが備えるメモリから前記在高を取得することができるように構成されている、
請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記所定条件は、前記カセットが、前記カセットを最後に空にしてから所定時間以内に前記カセット取付部に取り付けられた、という条件である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記所定条件は、前記カセットが、最後に前記カセットを空にした前記硬貨処理装置の前記カセット取付部に取り付けられている、という条件である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
カセットに硬貨を供給する硬貨処理装置によって行われる硬貨処理方法であって、
カセット取付部に取り付けられたカセットが所定条件を満たしているか否かを判断し、
前記カセットが前記所定条件を満たしていない場合、前記カセットに硬貨が残留していることを確認する動作である第1確認動作を前記カセットに行わせ、
前記カセットが前記所定条件を満たしている場合、前記第1確認動作を前記カセットに行わせることなく、前記カセットに硬貨を供給する
ことを含む、硬貨処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬貨処理装置および硬貨処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、硬貨を処理する硬貨処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、複数の硬貨処理装置の間で硬貨を受け渡しする際に、硬貨を収納するカセットを使用することが提案されている。硬貨処理装置からカセットに硬貨を移す作業に要する時間は短ければ短いほどよい。
【0005】
本開示は、硬貨をカセットに移す作業を短時間で完了させることができる貨幣処理装置および貨幣処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる貨幣処理装置は、カセットが取り付けられるカセット取付部と、前記カセットに硬貨を供給する硬貨供給部と、前記カセット取付部に取り付けられた前記カセットが所定条件を満たしていない場合、前記カセットに硬貨が残留していることを確認する動作である第1確認動作を前記カセットに行わせ、前記カセット取付部に取り付けられた前記カセットが前記所定条件を満たしている場合、前記第1確認動作を前記カセットに行わせることなく、前記カセットに硬貨を供給するように前記硬貨供給部を作動させる制御部と、を備える。第1確認動作は、カセットに硬貨が残留しているか否かを確認する動作であってもよい。
【0007】
カセットは、カセット内の硬貨を搬送するコンベヤ、および、カセットの中の硬貨を検出するセンサを備えてもよい。
【0008】
第1確認動作は、硬貨をセンサの検知領域に搬送するコンベヤの動作であってもよい。
【0009】
硬貨供給部からカセットに硬貨を供給している途中で硬貨供給部またはカセットでエラーが発生した場合、制御部は、第1確認動作とは異なるカセットに硬貨が残留していることを確認する第2確認動作をカセットに行わせてもよい。第2確認動作は、カセットに硬貨が残留しているか否かを確認する動作であってもよい。
【0010】
第2確認動作は、硬貨をセンサの検知領域に向けて第1方向に搬送する前記コンベヤの動作と、硬貨を前記第1方向とは異なる第2方向に搬送する前記コンベヤの動作の組み合わせであってもよい。
【0011】
制御部は、カセットの在高を取得することができるように構成されていてもよい。
【0012】
在高が0であるにもかかわらず、第1確認動作によってセンサが硬貨を検知した場合、制御部は、硬貨が検知されたことを報知する信号を生成してもよい。
【0013】
制御部は、カセットが備えるメモリから在高を取得することができるように構成されていてもよい。
【0014】
所定条件は、前記カセットが、カセットを最後に空にしてから所定時間以内にカセット取付部に取り付けられた、という条件であってもよい。また、所定条件は、カセットが、最後にカセットを空にした硬貨処理装置のカセット取付部に取り付けられている、という条件であってもよい。所定条件は、これらの条件を両方満たしている、という条件であってもよい。
【0015】
本開示にかかる硬貨処理方法は、カセットに硬貨を供給する硬貨処理装置によって行われる硬貨処理方法であって、カセット取付部に取り付けられたカセットが所定条件を満たしているか否かを判断し、前記カセットが前記所定条件を満たしていない場合、前記カセットに硬貨が残留していることを確認する動作である第1確認動作を前記カセットに行わせ、前記カセットが前記所定条件を満たしている場合、前記第1確認動作を前記カセットに行わせることなく、前記カセットに硬貨を供給することを含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、硬貨をカセットに移す作業を短時間で完了させることができる貨幣処理装置および貨幣処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一態様に係る実施形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、硬貨処理システム100の模式図である。硬貨処理システム100は、釣銭機1と、硬貨処理装置2とカセット3とを備える。
【0020】
釣銭機1は、チェックアウトカウンタ101に配置されている。チェックアウトカウンタ101には複数の釣銭機1が配置されていてもよい。釣銭機1は、POS端末またはキオスク端末等に接続されており、商品購入代金の決済に必要となる釣銭として紙幣および硬貨を払い出す。
【0021】
硬貨処理装置2は、バックオフィス102に配置されている。硬貨処理装置2は、釣銭機1から回収した硬貨を収納したり、釣銭機1で必要となる釣銭準備金を払い出したりする。
【0022】
カセット3は、釣銭機1と硬貨処理装置2との間で、硬貨を受け渡す際に使用される容器である。硬貨処理システム100を構成するカセット3の数は1つでもよいし、2以上でもよい。また、1つのカセット3が複数の釣銭機1の間で共用されてもよい。
【0023】
例えば、一日の営業が終了し、その日の売上金を釣銭機1から硬貨処理装置2に移すときには、カセット3が釣銭機1に取り付けられて、釣銭機1の中の硬貨がカセット3に移される。そして、硬貨を収納した状態のカセット3が硬貨処理装置2に取り付けられて、カセット3から硬貨処理装置2に硬貨が移される。このとき、カセット3は空になる。
【0024】
また、例えば、一日の営業の開始前に、釣銭準備金を硬貨処理装置2から釣銭機1に移すときは、硬貨処理装置2にカセットが取り付けられて、硬貨処理装置2の中の硬貨がカセット3に移される。そして、硬貨を収納した状態のカセット3が釣銭機1に取り付けられて、カセット3から釣銭機1に硬貨が移される。
【0025】
図2は、硬貨処理装置2の模式図である。硬貨処理装置2は、入金部21、回転円盤22および搬送部23を備える。入金部21は、カセット3を着脱自在に取り付けることができ、かつ、カセット3から硬貨を受け入れることができるように構成されている。入金部21は、手作業で入金されるバラ硬貨も受け入れることができるように構成されていてもよい。回転円盤22は、入金部21から入金された硬貨を1枚ずつ、搬送部23に供給することができるように構成されている。搬送部23は、硬貨を1枚ずつ搬送することができるように構成されている。
【0026】
硬貨処理装置2は、複数の分岐部24,識別部25および制御部26を備えている。複数の分岐部24は、搬送部23によって搬送されている硬貨の搬送経路を切り替えることができるように構成されている。識別部25は、搬送部23によって搬送されている硬貨を識別する。識別部25は、例えば、硬貨の真偽、金種および正損を識別する。制御部26は、識別部25の識別結果に基づいて、分岐部24を制御し、硬貨の搬送先を金種ごとに切り替える。
【0027】
硬貨処理装置2は、複数の収納部27および排出部28を備えている。各収納部27は、分岐部24によって搬送経路が切り替えられた硬貨を収納するように構成されている。複数の収納部27は、金種ごとに分けた状態で硬貨を収納する。また、各収納部27は、収納している硬貨を1枚ずつ排出部28の上に排出できるように構成されている。排出部28は例えばベルトコンベヤで構成されており、収納部27から排出された硬貨を搬送する。
【0028】
硬貨処理装置2は、カセット取付部29を備えている。カセット取付部29は、カセット3を取り付けることができ、また、カセット3を取り外すことができるように構成されている。つまり、カセット取付部29は、カセット3が着脱自在に取り付けられるように構成されている。カセット取付部29は、硬貨処理装置2の下部ユニットに含まれていてもよい。下部ユニットは、硬貨処理装置2から引き出したり、硬貨処理装置2に押し込んだりすることができるように構成されていてもよい。
【0029】
収納部27と排出部28は硬貨供給部20を構成している。硬貨供給部20は、カセット取付部29に取り付けられた状態のカセット3に硬貨を供給する。
【0030】
図3は、カセット3の模式図である。カセット3は、収納空間30を取り囲む筐体31を備えている。筐体31の上面には入金口32が形成されている。カセット3は入金口32を開閉する入金口シャッター33を備えている。また、筐体31の側面には出金口34が形成されている。カセット3は出金口34を開閉する出金口シャッター35を備えている。入金口シャッター33は、カセット3に硬貨が供給されるときに入金口32を開き、それ以外の時には入金口32を閉じる。出金口シャッター35は、カセット3から硬貨が排出されるときに出金口34を開き、それ以外の時には出金口34を閉じる。
【0031】
カセット3は、コンベヤ36、落下防止板37およびセンサ38を備えている。コンベヤ36は、収納空間30の底部を構成しており、入金口32から収納空間30内に入ってきた硬貨を下から支持する。コンベヤ36は無端ベルトを備え、正逆両方向に回転することができるように構成されている。コンベヤ36が正方向に回転すると、硬貨は正方向(
図3中のA方向)に移動し、逆方向に回転すると、硬貨は逆方向(
図3中のB方向)に移動する。コンベヤ36は、硬貨を正方向に移動させることにより、硬貨を出金口34を介してカセット3の外に排出する。落下防止板37は、コンベヤ36を挟んで出金口34の逆側の位置に配置されている。落下防止板37は、上側ほど出金口34から離れるように傾斜し、かつ、下端がコンベヤ36の表面に硬貨が通過できない隙間を介して対向するように配置されている。落下防止板37は、硬貨がコンベヤ36の上から落下することを防止する。センサ38は、コンベヤ36の上に載っている硬貨を検知するセンサであり、例えば発光部と受光部を有する光学式センサである。センサ38は、センサ38の検知領域39が、コンベヤ36を挟んで出金口34の逆側の位置に位置するように配置されている。コンベヤ36は、硬貨を逆方向に移動させることにより、支持している硬貨を検知領域39の中に移動させる。
【0032】
コンベヤ36と落下防止板37は、
図3に示されるようにV字状の凹部を形成するように対向していてもよい。また、センサ38はこのV字状の凹部を検知領域39が含むように配置されてもよい。このようにすることによって、以下の利点が得られる。すなわち、コンベヤ36の上に少数(例えば1枚)の硬貨が載っている場合にコンベヤ36を逆回転させることで、この硬貨をV字状の凹部で起立させる(硬貨とコンベヤ36との面接触を解く)ことができる。そして、センサ38は、硬貨を確実に検知することができる。
【0033】
カセット3は、カセット取付部29に取り付けられると、硬貨処理装置2から電力の供給を受けることができるように構成されている。この電力によって入金口シャッター33,出金口シャッター35、コンベヤ36、および、センサ38が作動する。また、カセット3は、カセット取付部29に取り付けられると、硬貨処理装置2,具体的には制御部26によって制御される。つまり、センサ38は制御部26に検知結果を送信し、入金口シャッター33,出金口シャッター35、および、コンベヤ36は制御部26から制御信号を受信する。
【0034】
カセット3は、メモリ40を備えている。メモリ40は、カセット3の在高、つまり、カセット3に収納されている硬貨の額面の合計額を記憶する。また、メモリ40は、カセット3の状態を示す情報を記憶する。カセット3の在高およびカセット3の状態を示す情報は、カセット3が釣銭機1または硬貨処理装置2に取り付けられているときに、釣銭機1の制御部または硬貨処理装置2の制御部26によってメモリ40に書き込まれる。なお、カセット3の状態を示す情報とは、例えば、カセット3が精査を必要とする状態にあるか否かを示す情報、カセット3を最後に空にした装置を特定する情報、および、カセット3を最後に空にした時間を示す情報である。
【0035】
続いて、硬貨処理装置2からカセット3に硬貨を供給するときの硬貨処理装置2の動作について
図4を参照しながら説明する。
図4は硬貨処理装置2からカセット3に硬貨を供給するときに行われる硬貨処理方法のフローチャートである。
【0036】
カセット取付部29にカセット3が取り付けられると、制御部26は、カセット3の在高が0であるか否かを判別する(S1)。つまり、カセット3が空であるか否かを判別する。カセット3の在高は、メモリ40から取得することができる。
【0037】
メモリ40から取得されたカセット3の在高が0である場合(S1でYes)、硬貨処理装置2の制御部26は、所定条件が満たされているか否かを判断する(S2)。所定条件とは、カセット3が空である蓋然性が高いと判断できる条件である。なお、在高が0であるカセット3、つまり、空のカセット3に硬貨を供給する動作は、例えば、カセット3に釣銭準備金としての硬貨を入金する場合に実行される。なお、所定条件が満たされているか否かの判断は、カセット取付部29を含む下部ユニットが硬貨処理装置2から、引き出され、カセット取付部29にカセット3が取り付けられ、下部ユニットの位置が元に戻されたとき(下部ユニットが硬貨処理装置2に押し込まれたとき)に行われてもよい。また、所定条件が満たされているか否かの判断は、硬貨供給部20からカセット3に硬貨が供給されるときに行われてもよい。
【0038】
所定条件が満たされていない場合(S2でNo)、カセット3が空ではない可能性があるので、カセット3に硬貨が残留しているか否かを確認するための簡易チェックが行われる。つまり、制御部26は、カセット3に第1確認動作を行わせる(S3)。第1確認動作は、例えば、コンベヤ36を逆回転させる動作である。カセット3内に硬貨が残留している場合、コンベヤ36を逆回転させて、コンベヤ36上の硬貨をセンサ38の検知領域39の中に移動させることで、センサ38によって硬貨を検知することができる。コンベヤ36を逆回転させる時間は、コンベヤ36が備える無端ベルトが約半周するのに要する時間(例えば2秒)であってもよい。無端ベルトが半周すると、出金口34付近に存在していた硬貨も検知領域39の中に入ることができる。つまり、コンベヤ36に硬貨が残留している場合、無端ベルトを半周させることで、確実に硬貨を検知領域39の中に移動させることができる。なお、検知領域39の中に移動した硬貨は、落下防止板37によって、コンベヤ36の上かつ検知領域39の中にとどまり続ける。
【0039】
第1確認動作の結果、センサ38が硬貨を検知しなければ、硬貨は残留していないと判断することができ、センサ38が硬貨を検知すれば、硬貨が残留していると判断することができる。
【0040】
よって、第1確認動作中にセンサ38が硬貨を検知しなかった場合(S4でNo)、制御部26は、第1確認動作に引き続いて、硬貨供給部20を作動させ、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給する(S5)。
【0041】
第1確認動作中にセンサ38が硬貨を検知した場合(S4でYes)、制御部26は硬貨が検知されたことを報知する信号を生成し、作業者に対する注意喚起の報知をすることができる報知装置にこの信号を送信する。報知装置は、この信号を受信すると硬貨が検出されたことを報知する(S6)。報知装置は、例えば、硬貨処理装置2が備えるディスプレイ、警告灯またはスピーカ、もしくは、硬貨処理装置2と通信可能に接続されたコンピュータである。
【0042】
作業者は、報知装置による報知によってカセット3に硬貨が残留していることを知ることで、カセット取付部29からカセット3を取り外し、カセット3を空にする作業を行うことができる(S7)。また、作業者は、カセット3を空にする作業を行った後、再度、カセット取付部29にカセット3を取り付けることができる。その後、制御部26は、再び、所定条件が満たされているか否かを判断する(S2)。なお、カセット3を空にする作業は、例えば、カセット3を入金部21に取り付けて、入金部21から硬貨を硬貨処理装置2に移す作業である。
【0043】
また、所定条件が満たされている場合(S2でYes)、カセット3が空であるつまりカセット3に硬貨が残留していないと判断することができる。よって、制御部26は、カセット3に第1確認動作を行わせることなく、硬貨供給部20を作動させ、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給する(S5)。
【0044】
以上のように動作することにより、硬貨処理装置2は、カセット3が空である蓋然性が高い場合には事前チェックを全く行わずに、カセット3に硬貨を供給する。また、硬貨処理装置2は、カセット3が空でない可能性がある場合であっても、短時間で完了する簡易チェックを行うだけで、カセット3に硬貨を供給する。よって、硬貨処理装置2は、硬貨をカセット3に移す作業を短時間で完了させることができる。釣銭機1の数が増え、釣銭準備金を入れるべきカセット3の数が増えるほど、順番待ちの時間が短くなり、硬貨をカセット3に移す作業を短時間で完了させることの効果は大きくなる。
【0045】
なお、所定条件とは、上述のとおり、カセット3が空である蓋然性が高いと判断できる条件である。所定条件は、例えば、カセット3の精査が必要ではなく、カセット3を最後に空にした装置が硬貨処理装置2自身であり、かつ、カセット3を最後に空にしてから所定時間が経過していない、という条件である。
【0046】
カセット3の精査が必要ではない、という条件は、カセット3が備えるメモリ40に、カセット3の精査が必要であるという情報が書き込まれていないことで満たされる。カセット3の精査が必要であるという情報は、釣銭機1によってメモリ40に書き込まれる。書き込まれる場合の例は、カセット3から釣銭機1に硬貨を移しきったものの移している途中で搬送エラーが生じた場合、カセット3から釣銭機1に硬貨を移しきれなかった場合、または、釣銭機1からカセット3に硬貨を移している途中で搬送エラーが発生した場合である。
【0047】
カセット3を最後に空にした装置が硬貨処理装置2自身である、という条件は、カセット3が備えるメモリ40に、カセット3を最後に空にした装置を特定する番号として、硬貨処理装置2を特定する番号が書き込まれていることで満たされる。装置を特定する番号は、例えば、機体番号または装置IDである。例えば、ある日の営業終了時に、釣銭機1から売上金をカセット3に回収し、かつ、その売上金を硬貨処理装置2に入金部21から入金したとする。このとき、硬貨処理装置2はメモリ40に、自身の番号を書き込む。そして、翌朝、硬貨処理装置2から釣銭準備金をカセット3に補充するために、カセット3がカセット取付部29に取り付けられると、硬貨処理装置2は、メモリ40から、カセット3を最後に空にした装置を特定する番号を取得する。取得した番号が硬貨処理装置2の番号であった場合、カセット3を最後に空にした装置が硬貨処理装置2自身である、という条件が満たされる。
【0048】
カセット3を最後に空にしてから所定時間が経過していない、という条件は、カセット3がカセット取付部29に取り付けられた時点において、カセット3を最後に空にした日時から所定時間が経過していない、ということで満たされる。カセット3を空にした装置は、空にする度にメモリ40に空にした日時を書き込む。最後に書き込まれた日時から、つまり、カセット3が最後に空にされてからある程度長い時間が経過していると、その間に、カセット3に何らかの事象が起き、カセット3に硬貨が入り込んでいる可能性がでてくる。よって、カセット3を最後に空にしてから所定時間が経過していない、という条件が満たされることで、カセットが空のままである蓋然性が高いと判断することができる。所定時間は、例えば1ヶ月または1年とすることができる。
【0049】
続いて、メモリ40から取得されたカセット3の在高が0ではない場合の動作について説明する。この動作は、例えば、営業時間中にカセット3に釣銭準備金を追加補充する場合に実行される。
【0050】
メモリ40から取得されたカセット3の在高が0ではない場合(S1でNo)、カセット3に硬貨が残留しているか否かを確認するための簡易チェックである第1確認動作が行われてもよい(S8)。
【0051】
第1確認動作の結果、センサ38が硬貨を検知した場合(S9でYes)、検知結果はメモリ40の在高が0ではないという情報と整合する。よって、制御部26は、第1確認動作に引き続いて、硬貨供給部20を作動させ、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給する(S5)。このとき、制御部26は、カセット3に供給した硬貨の額面の合計額と、メモリ40に記憶されていた在高の和を、新たな在高として、メモリ40に書き込む。
【0052】
第1確認動作の結果、センサ38が硬貨を検知しなかった場合(S9でNo)、検知結果はメモリ40の在高が0ではないという情報と整合しない。しかしながら、第1確認動作は簡易チェック動作であるので、第1確認動作中にセンサ38が硬貨を検知しないことを根拠として、カセット3の中に硬貨が存在しないことを完全に保証することはできない。よって、この場合、メモリ40に記憶されている在高を正とする処理が行われ(S10)、その後、制御部26は、硬貨供給部20を作動させ、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給する(S5)。このとき、制御部26は、カセット3に供給した硬貨の額面の合計額と、メモリ40に記憶されていた在高の和を、新たな在高として、メモリ40に書き込む。
【0053】
なお、メモリ40から取得されたカセット3の在高が0ではない場合、制御部26は、カセット3に第1確認動作を行わせることなく、硬貨供給部20を作動させ、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給してもよい(
図4中の破線参照)。
【0054】
なお、カセット3に硬貨を供給する前のカセット3の在高に関わらず、カセット3に硬貨を供給している途中でエラーが発生した場合、カセット3に硬貨を供給するフローは以下のように継続されてもよい。なお、ここでいうエラーは、硬貨供給部20におけるまたはカセット3における硬貨詰まり等のエラーである。
【0055】
硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給している間(S5)に硬貨詰まり等のエラーが発生しなかった場合(S11でNo)、硬貨供給部20からカセット3への硬貨供給作業は終了する。
【0056】
なお、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給している間に硬貨詰まり等のエラーが発生した場合(S11でYes)、制御部26はエラーが発生したことを報知する信号を生成し、報知装置にこの信号を送信してもよい。報知装置は、この信号を受信するとエラーが発生したことを報知してもよい(S12)。
【0057】
作業者は、報知装置による報知によってエラーが発生したことを知ることで、カセット取付部29からカセット3を取り外し、カセット3を空にする作業を行うことができる(S13)。また、作業者は、カセット3を空にする作業を行った後、再度、カセット取付部29にカセット3を取り付けることができる。
【0058】
その後、制御部26は、カセット3に第1確認動作とは異なる動作である第2確認動作を行わせてもよい(S14)。第2確認動作は、硬貨を出金口34に向かわせるコンベヤ36の動作(つまり正回転)と、硬貨をセンサ38の検知領域39に向かわせるコンベヤ36の動作(つまり逆回転)の組み合わせである。第2確認動作は、複数回にわたってコンベヤ36を正回転および逆回転させる動作であってもよい。コンベヤ36の正回転と逆回転が交互に複数回行われることによって、カセット3内に残留している貨幣は、センサ38によって確実に検知される。逆に言えば、第2確認動作は、カセット3に残留している硬貨を確実に検知するための厳重チェックである。第2確認動作は例えば15秒間にわたって実施される。
【0059】
第2確認動作の結果、センサ38が硬貨を検知しなければ、硬貨は確実に残留していないと判断することができ、センサ38が硬貨を検知すれば、硬貨が残留していると判断することができる。
【0060】
よって、第2確認動作中にセンサ38が硬貨を検知しなかった場合(S15でNo)、制御部26は、第2確認動作に引き続いて、硬貨供給部20を作動させ、硬貨供給部20からカセット3に硬貨を供給する(S5)。
【0061】
第2確認動作中にセンサ38が硬貨を検知した場合(S15でYes)、制御部26は硬貨が検知されたことを報知する信号を生成し、報知装置にこの信号を送信する。報知装置は、この信号を受信すると硬貨が検出されたことを報知する(S12)。以降の動作は先に説明したとおりである。
【0062】
以上のように動作する本開示に係る硬貨処理装置2によれば、例えば、営業開始準備が行われる時間帯等、複数の空のカセット3に連続的に釣銭準備金を出金する必要がある場合に、各カセット3への硬貨供給を短時間で完了させることができる。具体的には、所定条件が満たされていれば、カセット3が空であるか否かを確認するための動作が一切行わずに、また、所定条件が満たされていなくても、厳重チェックに対して遙かに短時間で完了する簡易チェックが行われるだけで、硬貨供給作業が開始される。よって、各カセット3の順番待ち時間を短くし、営業開始準備を迅速に行うことができる。硬貨を供給すべき空のカセット3が1つしかない場合であっても、硬貨を供給している途中でエラーが発生しない限り、厳重チェックを行うことなく硬貨を供給することができるので、やはり、硬貨供給を短時間で完了させることができる。
【0063】
本開示は、これまでに説明された実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることができる。
【0064】
例えば、
図5に示されるように、硬貨処理システム100は管理装置4をさらに備えてもよい。管理装置4は、釣銭機1および硬貨処理装置2とネットワーク等を介して通信可能に接続されたサーバ等のコンピュータである。管理装置4は、カセット3に代えてメモリ40を備えている。この場合、カセット3から硬貨処理装置2に硬貨が移されてカセット3が空になったときに、カセット3を空にする作業を行った日時と硬貨処理装置2を特定する番号を、管理装置4が硬貨処理装置2から受信しメモリ40に書き込んでもよい。そして、硬貨処理装置2の制御部26は、所定条件が満たされているか否かを判断する場合に、判断に必要な情報を管理装置4から取得してもよい。また、管理装置4は、釣銭機1または硬貨処理装置2からカセット3のIDおよび在高を取得し、メモリ40にカセット3のIDと在高を関連付けて記憶させてもよい。硬貨処理装置2の制御部26は、カセット3の在高が0であるか否かを判別する際、取り付けられたカセット3からIDを取得し、取得したIDに関連付けられている在高を、管理装置4のメモリ40から取得してもよい。
【0065】
また、釣銭機1は、カセット3に硬貨を移す際、カセット3のIDと在高を互いに関連付けて、釣銭機1が備えるメモリに記憶させてもよい。また、硬貨処理装置2は釣銭機1と通信可能に接続されていてもよい。この場合、硬貨処理装置2の制御部26は、カセット3の在高が0であるか否かを判別する際、取り付けられたカセット3からIDを取得し、取得したIDに関連付けられている在高を、釣銭機1のメモリから取得してもよい。また、釣銭機1は、カセット3に硬貨を移す際、カセット3のIDと在高を互いに関連付けて、硬貨処理装置2に送信してもよい。硬貨処理装置2は、受信したカセット3のIDと在高を互いに関連付けて、硬貨処理装置2が備えるメモリに記憶させてもよい。この場合、硬貨処理装置2の制御部26は、カセット3の在高が0であるか否かを判別する際、取り付けられたカセット3からIDを取得し、取得したIDに関連付けられている在高を、硬貨処理装置2のメモリから取得してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示は、流通、金融等、硬貨を取り扱う各種産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 釣銭機
2 硬貨処理装置
3 カセット
4 管理装置
20 硬貨供給部
21 入金部
22 回転円盤
23 搬送部
24 分岐部
25 識別部
26 制御部
27 収納部
28 排出部
29 カセット取付部
30 収納空間
31 筐体
32 入金口
33 入金口シャッター
34 出金口
35 出金口シャッター
36 コンベヤ
37 落下防止板
38 センサ
39 検知領域
40 メモリ
100 硬貨処理システム
101 チェックアウトカウンタ
102 バックオフィス