(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136311
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】誘電体フィルム、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車両
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230922BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20230922BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20230922BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230922BHJP
【FI】
H01G4/32 511G
H01G4/32 511L
H01G4/38 A
H01G2/02 101E
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041849
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷川 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】大河内 亮
【テーマコード(参考)】
5E082
5H770
【Fターム(参考)】
5E082AB03
5E082AB04
5E082BB03
5E082BC31
5E082BC35
5E082CC03
5E082CC04
5E082EE07
5E082EE24
5E082EE25
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG06
5E082FG16
5E082FG34
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG27
5E082JJ02
5E082JJ12
5E082JJ22
5E082PP09
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770JA11W
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】 フィルムコンデンサの耐電圧性および耐衝撃性を向上させる誘電体フィルムを提供する。
【解決手段】 本開示の誘電体フィルム4a,4bは、有機樹脂およびテトラヒドロフランを含み、内部に複数の空隙8を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂およびテトラヒドロフランを含み、内部に複数の空隙を有している、誘電体フィルム。
【請求項2】
断面視において、前記複数の空隙の円相当径の平均値が0.1μm以上1.0μm以下である、請求項1に記載の誘電体フィルム。
【請求項3】
断面視において、1μm四方の領域当たりの空隙の数が0.8個以上1.2個以下である、請求項1または2に記載の誘電体フィルム。
【請求項4】
前記有機樹脂は、ポリアリレート樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の誘電体フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの第1面に位置する金属膜と、を有する金属化フィルムを含む、フィルムコンデンサ。
【請求項6】
複数のフィルムコンデンサと、前記複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を含み、前記フィルムコンデンサは、請求項5に記載のフィルムコンデンサを含む、連結型コンデンサ。
【請求項7】
スイッチング素子を有するブリッジ回路と、前記ブリッジ回路に接続された容量部と、を含み、前記容量部は、請求項5に記載のフィルムコンデンサを含む、インバータ。
【請求項8】
電源と、前記電源に接続された、請求項7に記載のインバータと、前記インバータに接続されたモータと、前記モータにより駆動する車輪とを含む、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電体フィルム、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサは、誘電体フィルムと金属膜とを有する金属化フィルムを含んで構成される(例えば、特許文献1を参照)。フィルムコンデンサは、自己回復性を有し、絶縁破壊しにくいため、ハイブリッド自動車または電気自動車のモータ駆動、太陽電池装置のインバータシステム等に用途が拡大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルムコンデンサの耐電圧性(絶縁破壊電界ともいう)および耐衝撃性の向上が求められている。従来のフィルムコンデンサは、耐電圧性および耐衝撃性の向上の点で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の誘電体フィルムは、有機樹脂およびテトラヒドロフランを含み、内部に複数の空隙を有している。
【0006】
本開示のフィルムコンデンサは、上記の誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの第1面に位置する金属膜と、を有する金属化フィルムを含む。
【0007】
本開示の連結型コンデンサは、複数のフィルムコンデンサと、前記複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を含み、前記フィルムコンデンサは、上記のフィルムコンデンサを含む。
【0008】
本開示のインバータは、スイッチング素子を有するブリッジ回路と、前記ブリッジ回路に接続された容量部と、を含み、前記容量部は、上記のフィルムコンデンサを含む。
【0009】
本開示の電動車両は、電源と、前記電源に接続された、上記のインバータと、前記インバータに接続されたモータと、前記モータにより駆動する車輪とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の誘電体フィルムによれば、フィルムコンデンサの耐電圧性および耐衝撃性を向上させることができる。また、本開示の誘電体フィルムによれば、フィルムコンデンサを軽量化することができる。本開示のフィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車両によれば、信頼性に優れたフィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る誘電体フィルムを示す断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を示す展開斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るフィルムコンデンサの他の例を示す斜視図である。
【
図4】
図3の切断面線IV-IVで切断した断面図である。
【
図5】誘電体フィルムの作製手順を説明するフロー図である。
【
図6】誘電体フィルムの作製装置を示す外観図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る連結型コンデンサを示す斜視図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るインバータを示す回路図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る電動車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態の誘電体フィルム、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車両について説明する。以下で参照する各図は、模式的なものであり、本開示の実施形態の誘電体フィルム、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車両を必ずしも正確に図示したものではない。また、一部の図面において、便宜的に、直交座標系XYZを定義する。X方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ、第1方向、第2方向および第3方向とも称される。
【0013】
図1は、本開示の実施形態に係る誘電体フィルムを示す断面図であり、
図2は、本開示の実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を示す展開斜視図であり、
図3は、本開示の実施形態に係るフィルムコンデンサの他の例を示す斜視図であり、
図4は、
図3の切断面線IV-IVで切断した断面図である。
図1は、誘電体フィルムを厚み方向に沿って切断した断面を示している。
図4は、
図3のフィルムコンデンサの断面の一部を示している。
【0014】
本実施形態の誘電体フィルム4a,4bは、第1面4aa,4baと、第1面4aa,4baとは反対側の第2面4ab,4bbとを有している。第1面4aa,4baと第2面4ab,4bbとは、誘電体フィルム4a,4bの厚み方向(
図1における上下方向)において対向している。誘電体フィルム4a,4bの厚みは、例えば1μm~10μm程度であってもよい。誘電体フィルム4a,4bは、第1面4aa,4baまたは第2面4ab,4bbに金属膜が形成された後、巻回または複数積層されることによって、フィルムコンデンサとなる。以下では、特に断ることなく、誘電体フィルム4a,4bはフィルムコンデンサの誘電体層を構成するものとする。
【0015】
誘電体フィルム4a,4bは、有機樹脂および有機成分を含む。有機樹脂は、例えばポリアリレート(PAR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、シクロオレフィンポリマー等であってもよい。有機成分は、テトラヒドロフラン(THF)である。誘電体フィルム4a,4bにおけるテトラヒドロフランの含有量は、例えば0.01~9質量%であってもよい。
【0016】
誘電体フィルム4a,4bは、有機成分(THF)の揮発性が有機樹脂の揮発性よりも高くされていてもよい。これにより、誘電体フィルム4a,4bを含むフィルムコンデンサに局所的な絶縁破壊が生じたとき、絶縁破壊に伴い生じる熱によって、有機成分が有機樹脂よりも先に揮発し、絶縁破壊が生じた箇所周辺の金属膜を飛散させ、絶縁破壊が生じた箇所を絶縁化することができる。このように、有機成分(THF)の揮発性が有機樹脂の揮発性よりも高い場合、自己回復性能が高いフィルムコンデンサを提供することができる。
【0017】
誘電体フィルム4a,4bは、
図1に示すように、内部に複数の空隙8を有している。誘電体フィルムにおいては、一般に、誘電率の分布(誘電率分布ともいう)が局所的に傾斜または変化する等して、誘電率分布に偏りが生じることがある。誘電率分布に偏りが生じると、誘電体フィルム中に電界が集中する部位が生じ、該部位の絶縁破壊をもたらすことがある。誘電体フィルム4a,4bにおいては、内部に有機樹脂と空隙8内の気体(例えば空気)との界面が存在し、該界面は、誘電率の局所的な変化をもたらす。誘電体フィルム4a,4bが複数の空隙8を有することで、誘電体フィルム4a,4bにおける誘電率分布の偏りが緩和されるため、電界集中が起こりにくくなる。その結果、フィルムコンデンサの耐電圧性を向上させることができる。
【0018】
また、誘電体フィルム4a,4bは、外部から衝撃が加えられた際、誘電体フィルム4a,4bにおける空隙8の周囲の部位が変形しやすい。これにより、外部から加えられた衝撃を分散させることができるため、フィルムコンデンサの耐衝撃性を向上させることができる。
【0019】
また、誘電体フィルム4a,4bは、内部に空隙8を有し、単位体積当たりの重量が減少するため、フィルムコンデンサを軽量化することができる。例えば、誘電体フィルム4a,4bの任意の断面における複数の空隙8の開口の面積比率が3%である場合、誘電体フィルム4a,4bが空隙8を有していない場合と比べて、誘電体フィルム4a,4bを3%軽量化することができ、その結果、フィルムコンデンサを3%軽量化することができる。また、誘電体フィルム4a,4bによれば、原材料(有機樹脂)の使用量を削減することができるため、フィルムコンデンサを低コスト化することができる。
【0020】
誘電体フィルム4a,4bの厚み方向に沿う断面を見たとき、複数の空隙8は、円相当径の平均値が、0.1μm以上かつ1.0μm以下であってもよい。円相当径の平均値が0.1μm未満である場合、複数の空隙8による上記効果が発揮されにくい。また、円相当径の平均値が1.0μmを超える場合、複数の空隙8に起因する誘電率分布の偏りが発生したり、誘電体フィルム4a,4bの機械的強度が低下したりする。円相当径の平均値が、0.1μm以上1.0μm以下であることで、フィルムコンデンサの耐電圧性および耐衝撃性を効果的に向上させることができる。なお、空隙8の円相当径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、誘電体フィルム4a,4bの断面を観察することによって算出することができる。空隙8の円相当径を算出する際、市販の画像解析ソフトウエアを用いて、誘電体フィルム4a,4bの断面の画像解析を行ってもよい。
【0021】
誘電体フィルム4a,4bの厚み方向に沿う断面を見たとき、1μm四方の領域(単位面積ともいう)当たりの空隙8の数が、0.8個以上かつ1.2個以下であってもよい。単位面積当たりの空隙8の数が0.8個未満である場合、複数の空隙8による上記効果が発揮されにくい。また、単位面積当たりの空隙8の数が1.2個を超える場合、複数の空隙8に起因する誘電率分布の偏りが発生したり、誘電体フィルム4a,4bの機械的強度が低下したりする。単位面積当たりの空隙8の数が0.8個以上1.2個以下であることで、フィルムコンデンサの耐電圧性および耐衝撃性を効果的に向上させることができる。なお、単位面積当たりの空隙8の数は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、誘電体フィルム4a,4bの断面を観察することによって計測することができる。単位面積当たりの空隙8の数を計測する際、市販の画像解析ソフトウエアを用いて、誘電体フィルム4a,4bの断面の画像解析を行ってもよい。
【0022】
複数の空隙8は、
図1に示すように、平面方向(すなわち第1面4aa,4baの面方向)に偏平な形状を有していてもよい。これにより、誘電体フィルム4a,4bの厚み方向から見たときに、空隙8同士が重なりやすくなる。その結果、誘電体フィルム4a,4bの機械的強度を、平面方向において略一様に高めることができるため、誘電体フィルム4a,4bを用いてフィルムコンデンサを製造する際、誘電体フィルム4a,4bにしわが発生することを抑制できる。ひいては、誘電体フィルム4a,4bのしわに起因する誘電率分布の偏りを緩和でき、フィルムコンデンサの耐電圧性を向上させることができる。また、外部から加えられた衝撃、特に厚み方向に沿って加えられた衝撃を効果的に分散させることができ、フィルムコンデンサの耐衝撃性をより向上させることができる。
【0023】
複数の空隙8は、平面方向の寸法が、厚み方向(
図1における上下方向)の寸法の4倍程度以上であってもよい。これにより、誘電体フィルム4a,4bにおける複数の空隙8の体積比率が過度に大きくなることなく、空隙8同士が重なりやすくなる。その結果、誘電体フィルム4a,4bの機械的強度を、平面方向において略一様に効果的に高めることができるため、誘電体フィルム4a,4bを用いてフィルムコンデンサを製造する際、誘電体フィルム4a,4bにしわが発生することをより抑制できる。ひいては、誘電体フィルム4a,4bのしわに起因する誘電率分布の偏りを効果的に緩和でき、フィルムコンデンサ1の耐電圧性をより向上させることができる。また、また、外部から加えられた衝撃、特に厚み方向に沿って加えられた衝撃を効果的に分散させることができ、フィルムコンデンサの耐衝撃性をより向上させることができる。
【0024】
複数の空隙8は、誘電体フィルム4a,4bの内部に均一に分布していてもよく、厚み方向に偏って分布していてもよい。複数の空隙8は、例えば
図1に示すように、第1面4aa,4ba側に多く分布していてもよい。これにより、誘電体フィルム4a,4bの機械的強度を維持しつつ、フィルムコンデンサの耐衝撃性を向上させることができる。
【0025】
誘電体フィルム4a,4bは、
図1に示すように、第2面4ab,4bbを含む緻密領域9を有していてもよい。これにより、誘電体フィルム4a,4bの機械的強度を効果的に維持しつつ、フィルムコンデンサの耐衝撃性を向上させることができる。緻密領域9は、誘電体フィルム4a,4bの厚み方向に沿う断面を見たときに、単位面積当たりの空隙8の数が所定個数未満である領域であってもよい。所定個数は、例えば、0.8であってもよく、0.5であってもよい。緻密領域9は、誘電体フィルム4a,4bの厚み方向に沿う断面を見たときに、空隙8が存在しない領域であってもよい。緻密領域9の厚みは、誘電体フィルム4a,4bの厚みの10~30%程度であってもよく、20%程度であってもよい。
【0026】
本実施形態のフィルムコンデンサ1は、金属化フィルム2a,2bを備える。フィルムコンデンサ1は、
図2に示すように、金属化フィルム2a,2bが巻回されてなる本体部3を含んでいてもよく、あるいは
図3,4に示すように、金属化フィルム2a,2bが積層されてなる本体部3を含んでいてもよい。本体部3は、
図2~4に示すように、第1端面3aと、第1端面3aとは反対側の第2端面3bとを有している。第1端面3aおよび第2端面3bには、外部電極としてのメタリコン電極6a,6bが位置している。
【0027】
図2に示すフィルムコンデンサ1は、巻回型フィルムコンデンサ1とも称される。
図2では、巻回型フィルムコンデンサ1の金属化フィルム2a,2bの一部を引き出し、引き出した金属化フィルム2a,2bの厚みが手前に向かって厚くなるように描いている。また、
図2では、引き出した金属化フィルム2a,2bの幅方向を第1方向(X方向)とし、長さ方向を第2方向(Y方向)とし、厚み方向を第3方向(Z方向)として示している。引き出した金属化フィルム2a,2bは、第3方向(Z方向)に積層されている。以下では、引き出した金属化フィルム2a,2bの構成を参照し、巻回型フィルムコンデンサ1について説明することがある。なお、
図2は、円柱形状の本体部3を含む巻回型フィルムコンデンサ1を示しているが、巻回型フィルムコンデンサ1の本体部3は、例えば楕円柱形状等であってもよい。なお、本明細書において、円柱形状は円筒形状を含み、楕円柱形状は楕円筒形状を含むものとする。
【0028】
図3,4に示すフィルムコンデンサ1は、積層型フィルムコンデンサ1とも称される。
図3,4では、フィルムコンデンサ1の幅方向を第1方向(X方向)とし、長さ方向を第2方向(Y方向)とし、高さ方向を第3方向(Z方向)として示している。金属化フィルム2a,2bは、第3方向(Z方向)に積層されている。なお、
図3は、直方体形状の本体部3を含む積層型フィルムコンデンサ1を示しているが、積層型フィルムコンデンサ1の本体部3は、例えば立方体形状等であってもよい。
【0029】
金属化フィルム2a,2bは、誘電体フィルム4a,4bと、金属膜5a,5bとを有している。誘電体フィルム4a,4bは、第1側面4ac,4bcと、第1側面4ac,4bcとは反対側の第2側面4ad,4bdとを有している。第1側面4ac,4bcと第2側面4ad,4bdとは、第1方向(X方向)において対向している。金属膜5a,5bは、誘電体フィルム4a,4bの第1面4aa,4baに位置している。金属膜5a,5bは、例えばアルミニウム、亜鉛等の金属を含んでいる。
【0030】
巻回型フィルムコンデンサ1では、
図2に示すように、金属化フィルム2a(第1金属化フィルムともいう)と、金属化フィルム2b(第2金属化フィルムともいう)とが、重ねられ巻回されている。積層型フィルムコンデンサ1では、
図4に示すように、第1金属化フィルム2aと、第2金属化フィルム2bとが、重ねられ積層されている。
【0031】
第1金属化フィルム2aは、
図2,4に示すように、誘電体フィルム(第1誘電体フィルムともいう)4aと、第1誘電体フィルム4aの第1面4aaに位置する金属膜(第1金属膜ともいう)5aとを有している。第1金属膜5aは、第1端面3aに位置するメタリコン電極6aと電気的に接続されている。第1金属化フィルム2aは、第1面4aaにおける第2側面4ad近傍に、第2方向(Y方向)に連続して延びる絶縁マージン7aを有している。絶縁マージン7aは、第1誘電体フィルム4aの第1面4aaが露出した部分である。
【0032】
第2金属化フィルム2bは、
図2,4に示すように、誘電体フィルム(第2誘電体フィルムともいう)4bと、第2誘電体フィルム4bの第1面4baに位置する金属膜(第2金属膜ともいう)5bとを有している。第2金属膜5bは、第2端面3bに位置するメタリコン電極6bと電気的に接続されている。第2金属化フィルム2bは、第1面4baにおける第1側面4bc近傍に、第2方向(Y方向)に連続して延びる絶縁マージン7bを有している。絶縁マージン7bは、第2誘電体フィルム4bの第1面4baが露出した部分である。
【0033】
第1金属化フィルム2aと第2金属化フィルム2bとは、
図2,4に示すように、第1方向(X方向)において僅かにずれた状態で、巻回または積層されている。第1金属膜5aと第2金属膜5bとの間に電位差があると、第1金属膜5aと第2金属膜5bとが第1誘電体フィルム4aまたは第2誘電体フィルム4bを挟んで重なり合う有効領域に、静電容量が発生する。
【0034】
フィルムコンデンサ1は、メタリコン電極6a,6bと外部機器とを接続するリード線を備えていてもよい。リード線は、はんだ等の接合材を介して、メタリコン電極6a,6bに接合されていてもよい。フィルムコンデンサ1は、本体部3、メタリコン電極6a,6bおよびリード線の一部を覆う外装部材を備えていてもよい。これにより、フィルムコンデンサ1の耐環境性を向上させることができる。
【0035】
フィルムコンデンサ1は、誘電体フィルム4a,4bを含むことにより、耐電圧性および耐衝撃性が向上し、信頼性に優れたものとなる。また、フィルムコンデンサ1は、誘電体フィルム4a,4bを含むことにより、軽量化されたものとなる。
【0036】
次に、誘電体フィルム4a,4bの作製方法について説明する。
図5は、誘電体フィルムの作製手順を説明するフロー図であり、
図6は、誘電体フィルムの作製装置を示す外観図である。
【0037】
まず、有機樹脂の粉末を有機溶剤に溶解させ、スラリー状の樹脂溶液を作製する(ステップS1)。樹脂溶液は、例えば、有機樹脂の粉末と有機溶剤とを撹拌容器に投入し、室温において12時間撹拌することによって作製されてもよい。有機樹脂としては、例えば例えばポリアリレート(PAR)等を用いることができる。有機溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF)を用いる。
【0038】
次に、樹脂溶液をろ過し、樹脂溶液中の未溶解樹脂を除去する(ステップS2)。樹脂溶液のろ過には、ろ過精度が0.1μm程度以下であるフィルタを用いてもよい。
【0039】
次に、減圧脱泡機を用いて、ろ過した樹脂溶液中の気泡を除去する(ステップS3)。
【0040】
次に、気泡が除去された樹脂溶液を用いて、誘電体フィルム4a,4bを基材フィルム12上に作製する(ステップS6)。まず、
図6に示すように、成形機(ダイコータ)10を用いて、樹脂溶液11を、基材フィルム12の表面に塗布する。基材フィルム12としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等からなるフィルムを用いることができる。続いて、樹脂溶液11が塗布された基材フィルム12を乾燥炉13に搬送し、樹脂溶液11に含まれる有機溶剤を部分的に除去する。乾燥時の温度を25~40℃程度とし、乾燥時の相対湿度を50%RHとし、乾燥時間を120秒程度とすることによって、内部に複数の空隙8を有する誘電体フィルム4a,4bを基材フィルム12上に作製することができる。
【0041】
その後、誘電体フィルム4a,4bを基材フィルム12から剥離し、ロール状に回収する(ステップS5)。以上のようにして、内部に複数の空隙8を有する誘電体フィルム4a,4bを作製することができる。
【0042】
次に、誘電体フィルム4a,4bを用いて、フィルムコンデンサ1を製造する方法について説明する。
【0043】
まず、第1面4aa,4baにおける所定部位にテープ等を用いてマスクを施す。続いて、第1面4aa,4baにおけるマスクが施されていない部位に金属膜5a,5bを形成した後、マスクを除去することによって、絶縁マージン7a、7bを有する金属化フィルム2a,2bを作製する。金属膜5a,5bは、アルミニウム、亜鉛等の金属を第1面4aa,4baに蒸着することによって形成されてもよい。なお、金属膜5a,5bは、誘電体フィルム4a,4bの第2面4ab,4bbに形成されてもよい。
【0044】
次に、第1金属化フィルム2aと第2金属化フィルム2bとを、2枚を一組として、巻回または積層することによって、
図2または
図3,4に示すような本体部3を作製する。
【0045】
その後、本体部3の第1端面3aおよび第2端面3bにメタリコン電極6a,6bを形成することによって、フィルムコンデンサ1を製造することができる。メタリコン電極6a,6bは、例えば溶射法、スパッタ法、メッキ法等を用いて形成されていてもよい。メタリコン電極6a,6bは、アルミニウム、亜鉛、錫、銅等の金属またはこれらの合金で構成されていてもよい。
【0046】
第1端面3aおよび第2端面3bに形成したメタリコン電極6a,6bに、はんだ等の接合材を用いて、外部機器との電気的接続のためのリード線を接続してもよい。外部機器は、他のフィルムコンデンサ1であってもよく、この場合、メタリコン電極6a,6bには、リード線の代わりに、他のフィルムコンデンサ1との電気的接続のためのバスバーが接合されてもよい。
【0047】
次に、本開示の実施形態に係る連結型コンデンサについて説明する。
図7は、本開示の実施形態に係る連結型コンデンサを示す斜視図である。
【0048】
本実施形態の連結型コンデンサ20は、複数のフィルムコンデンサ1と、複数のフィルムコンデンサ1を接続するバスバー21,22とを備える。連結型コンデンサ20は、
図7に示すように、複数のフィルムコンデンサ1がバスバー21,22によって並列接続された構成である。バスバー21,22は、外部機器との電気的接続のための端子部21a,22a、および引出端子部21b,22bを有している。引出端子部21b,22bは、各フィルムコンデンサ1のメタリコン電極6a,6bと接続されている。バスバー21とバスバー22とは、絶縁部材23によって、電気的に絶縁されている。
【0049】
複数のフィルムコンデンサ1は、ケースに収容されていてもよい。また、各フィルムコンデンサ1は、外装樹脂で被覆されていてもよい。
【0050】
図7は、4つのフィルムコンデンサ1を備えた連結型コンデンサ20を示しているが、連結型コンデンサ20は、2つ以上のフィルムコンデンサ1を備えていればよい。また、
図7は、巻回型フィルムコンデンサ1を備えた連結型コンデンサ20を示しているが、連結型コンデンサ20は、積層型フィルムコンデンサ1を備えていてもよい。
【0051】
図7は、複数のフィルムコンデンサ1が水平面に沿って配列された例を示しているが、複数のフィルムコンデンサ1の配列は、
図7に示す配列に限定されない。複数のフィルムコンデンサ1は、例えば、鉛直方向に積み上げられていてもよい。また、各フィルムコンデンサ1は、
図2~4に示す第1方向(X方向)が鉛直方向に沿うように位置付けられてもよい。
【0052】
次に、本開示の実施形態に係るインバータについて説明する。
図8は、本開示の実施形態に係るインバータを示す回路図である。
図8は、直流電流を交流電流に変換するインバータを示している。
【0053】
本実施形態のインバータ30は、ブリッジ回路31と、容量部32とを備える。ブリッジ回路31は、スイッチング素子および整流器を含んで構成される。スイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等で構成されていてもよい。整流器は、ダイオード等で構成されていてもよい。容量部32は、ブリッジ回路31の入力端子間に配置され、電圧を安定化させる。容量部32は、フィルムコンデンサ1を含んで構成される。
【0054】
インバータ30は、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路33に接続される。ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータMに接続される。
【0055】
次に、本開示の実施形態に係る電動車両について説明する。
図9は、本開示の実施形態に係る電動車両を示す図である。
図9は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車(HEV)を示している。
【0056】
本実施形態の電動車両40は、電源41と、インバータ42と、モータ43と、車輪44a,44bとを備える。電源41は、電池で構成されていてもよい。インバータ42は、電源41に接続されている。モータ43は、電動車両40の駆動源である。電動車両40は、駆動源として、モータ43およびエンジン45を備えていてもよい。車輪44a,44bは、前輪44aおよび後輪44bを含む。駆動源の出力は、トランスミッション46を介して、前輪44aに伝達される。
【0057】
電動車両40は、車両ECU47と、エンジンECU48とを備える。車両ECU47は、電動車両40全体の統括的な制御を行う。エンジンECU48は、エンジン45の回転数を制御し、電動車両40を駆動する。また、電動車両40は、運転者等により操作されるイグニッションキー49、アクセルペダルおよびブレーキ等の運転装置(図示せず)を備えている。車両ECU47には、運転者等による運転装置の操作に応じた駆動信号が入力される。車両ECU47は、入力された駆動信号に基づいて、指示信号をエンジンECU48、電源41、および負荷としてのインバータ42に出力する。エンジンECU48は、指示信号に応答してエンジン45の回転数を制御し、電動車両40を駆動する。
【0058】
インバータ42は、容量部32にフィルムコンデンサ1を含むインバータ30である。本実施形態の電動車両40は、フィルムコンデンサ1の絶縁抵抗が低下しにくいため、電動車両40のエンジン部等の過酷な環境下においても、フィルムコンデンサ1の絶縁抵抗の低下を長期間にわたって抑制できる。その結果、電動車両40は、車両ECU47、エンジンECU48等の制御装置の電流制御を安定化させることができる。
【0059】
なお、インバータ30は、ハイブリッド自動車(HEV)だけでなく、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、電動自転車、発電機、または太陽電池等の電力変換応用製品に適用できる。
【0060】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 フィルムコンデンサ
2a 金属化フィルム(第1金属化フィルム)
2b 金属化フィルム(第2金属化フィルム)
3 本体部
3a 第1端面
3b 第2端面
4a 誘電体フィルム(第1誘電体フィルム)
4b 誘電体フィルム(第2誘電体フィルム)
4aa,4ba 第1面
4ab,4bb 第2面
4ac,4bc 第1側面
4ad,4bd 第2側面
5a 金属膜(第1金属膜)
5b 金属膜(第2金属膜)
6a,6b メタリコン電極
7a,7b 絶縁マージン
8 空隙
9 緻密領域
10 成形機
11 樹脂溶液
12 基材フィルム
13 乾燥炉
20 連結型コンデンサ
21,22 バスバー
21a,22a 端子部
21b,22b 引出端子部
23 絶縁部材
30 インバータ
31 ブリッジ回路
32 容量部
33 昇圧回路
40 電動車両
41 電源
42 インバータ
43 モータ
44a 車輪(前輪)
44b 車輪(後輪)
45 エンジン
46 トランスミッション
47 車両ECU
48 エンジンECU
49 イグニッションキー
M モータジェネレータ