(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136342
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】コイルユニット、及びこれを備えた空調機、同空調機による空調管理システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/044 20060101AFI20230922BHJP
F24F 1/0073 20190101ALI20230922BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230922BHJP
F24F 11/83 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F1/0073
F24F5/00 101Z
F24F11/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041913
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】390001568
【氏名又は名称】昭和鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】村山 稔
【テーマコード(参考)】
3L051
3L053
3L054
3L260
【Fターム(参考)】
3L051BA01
3L051BB05
3L053BB05
3L054BE02
3L260AA11
3L260AB06
3L260BA04
(57)【要約】
【課題】コイルに不具合が生じた場合であっても同コイルに流れる冷媒を一定流量で流通させつつ冷却空気を安定して連続生成する冗長機能を備え、省スペースで設置できると共に、経済性と修理作業等のメンテナンス性を良好とするコイルユニットを提供する。
【解決手段】コイルユニットケースと、冷媒の循環流路となるコイルと、を有したコイルユニットであって、コイルは、ユニットケース内で循環流路を複数の独立流路部に分割する複数のコイル要素を一定方向に配設することにより構成し、コイルに流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置を備えてなることとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルユニットケースと、前記コイルユニットケース内で冷媒の循環流路となるコイルと、を有したコイルユニットであって、
前記コイルは、前記ユニットケース内で前記循環流路を複数の独立流路部に分割する複数のコイル要素を一定方向に配設することにより構成し、
複数の前記コイル要素は、
それぞれ始端で複数の分岐供給管を介して冷媒を分流供給する供給ヘッダに連通して合流すると共に、それぞれ終端で複数の分岐排出管を介して冷媒を集流排出する排出ヘッダに連通して合流し、
前記供給ヘッダは、複数の前記分岐供給管が接続する位置よりも上流側位置に、
前記コイルに流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置を備えることを特徴とするコイルユニット。
【請求項2】
最大熱負荷Qが定められた空間の熱負荷を処理すべく、前記コイルを構成する必要な前記コイル要素数をn、前記定流量装置による冷媒の最大流量をq、各コイル要素の熱負荷処理能力をP(q×1/n)とした場合、
P(q×1/(n-1))>Q/(n-1)
又は
P(q×1/(n-2))>Q/(n-2)
となるように各コイル要素の熱負荷処理能力を設定したことを特徴とする請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記分岐供給管と前記分岐排出管とはそれぞれ、連通対応する前記コイル要素への前記冷媒の供給停止を可能とする止水手段を有すると共に、前記コイル要素に着脱可能な着脱ジョイントを有し、
前記分岐供給管及び前記分岐排出管の前記止水手段は、それぞれ少なくとも前記着脱ジョイントが設けられる位置より前記供給ヘッダ側及び前記排出ヘッダ側に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
空調機本体と、
冷媒を冷却する冷却装置と、
前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記冷却装置により冷却された冷媒を前記空調機本体の前記コイルユニットへ送る流入管と、
前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記コイルユニットを流通して熱交換された冷媒を前記冷却装置に戻す流出管と、を備え、
前記空調機本体は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のコイルユニットと、空気を前記コイルユニットへ送風して前記コイルユニットの外表面に接触通過させる送風ファンと、前記送風ファンにより送風される空気を浄化する浄化フィルタと、により構成し、
前記コイルユニットと前記送風ファンと前記浄化フィルタとは、それぞれ前記送風ファンによる空気の通風路上に沿って並設したことを特徴とする空調機。
【請求項5】
前記コイルユニットは、一定方向に配設された複数の前記コイル要素により表面積が最大となる最大外表面を有し、前記最大外表面を前記送風ファンによる空気の通風路に対向して配置したことを特徴とする請求項4に記載の空調機。
【請求項6】
前記空調機本体は、一定間隔で複数並設され、
各空調機本体の前記コイルユニットはそれぞれ、前記供給ヘッダを介して前記流入管から分岐して連通接続すると共に、前記排出ヘッダを介して前記流出管から分岐して連通接続することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の空調機。
【請求項7】
情報通信データを管理するデータセンターにおいて、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の空調機を備えた空調管理システムであって、
前記データセンターは、最大熱負荷が定められた空間としてのサーバ室と、複数のサーバが収められ、前記サーバ室内で立設した複数のラックと、を有し、
前記空調機は、前記送風ファンによる空気の通風方向を前記ラック方向に向けて前記サーバ室内に配置したことを特徴とする空調管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルユニット、及びこれを備えた空調機、同空調機による空調管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば24時間、常時連続的に稼働するサーバなどの精密機器が複数設置されたサーバ室などの管理室内は、精密機器の稼働に伴い発生する熱が蓄積する。
【0003】
こうした精密機器からの発生熱は機器自体に過大な熱負荷となって故障の原因となるため、管理室内に冷却用の空調機を設置して冷却空気を送ることにより精密機器を常時冷却して故障を抑制している。
【0004】
具体的には、管理室内には精密機器が複数納められたラックが複数立設しており、かかる複数のラックに対応して大型空調機をあてがい、同空調機により冷却空気をラックへ送風しつつ、室内空気を空冷循環することで熱負荷の問題に対応している。
【0005】
この空調機は、基本的に、冷媒が流通するコイルと、同コイルに対して空気を吹き付けるように送風する送風ファンと、を備えて構成している。これにより、空調機のコイルに接触した空気が熱交換されて冷却空気へ変わり、同冷却空気がラックに載置された複数の精密機器周辺を通風して精密機器の発生熱を奪い、同精密機器の温度を下げる。
【0006】
しかしながら、コイルに亀裂や詰まりなどの経年劣化による不具合が生じて空調機が停止してしまうと、これに相対するラックに載置した精密機器の温度が下がらずに、精密機器が熱負荷過大となってダウンする虞がある。
【0007】
このような空調機の不具合に伴う精密機器の故障の問題に対応すべく、コイルと送風ファンとで構成した複数の小型空調機を密集して構成した空調機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる空調機によれば、仮に一つの小型空調機に不具合が生じても、他の小型空調機が独立して稼働するため冷却空気を生成できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の空調機は、その構造上、必然的に全体が大型化して設置スペースを余分に必要とするばかりか、必要部材が多く装置コストやエネルギーコストなどのコスト面で不利となる問題があった。
【0010】
すなわち、従来の空調機は、これを構成する各小型空調機がそれぞれコイルと送風ファンとを組み合わせて構成したものであることから、空調機としては全体的に大型化して重量が大きくなり、設置に際しては牽引重機や耐荷重の広い設置スペースを必要とし、さらに稼働に要する電気的エネルギーや各送風ファンの部材コストが嵩む問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、コイルに不具合が生じた場合であっても同コイルに流れる冷媒を一定流量で流通させつつ冷却空気を安定して連続生成する冗長機能を備え、省スペースで設置できると共に、経済性と修理作業等のメンテナンス性を良好とするコイルユニット、同コイルユニットを備えた空調機、及び同空調機による空調管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、以下(1)~(3)の点で特徴を有するコイルユニットを提供する。
(1)コイルユニットケースと、前記コイルユニットケース内で冷媒の循環流路となるコイルと、を有したコイルユニットであって、前記コイルは、前記ユニットケース内で前記循環流路を複数の独立流路部に分割する複数のコイル要素を一定方向に配設することにより構成し、複数の前記コイル要素は、それぞれ始端で複数の分岐供給管を介して冷媒を分流供給する供給ヘッダに連通して合流すると共に、それぞれ終端で複数の分岐排出管を介して冷媒を集流排出する排出ヘッダに連通して合流し、前記供給ヘッダは、複数の前記分岐供給管が接続する位置よりも上流側位置に、前記コイルに流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置を備えること。
(2)最大熱負荷Qが定められた空間の熱負荷を処理すべく、前記コイルを構成する必要な前記コイル要素数をn、前記定流量装置による冷媒の最大流量をq、各コイル要素の熱負荷処理能力をP(q×1/n)とした場合、P(q×1/(n-1))>Q/(n-1)又はP(q×1/(n-2))>Q/(n-2)となるように各コイル要素の熱負荷処理能力を設定したこと。
(3)前記分岐供給管と前記分岐排出管とはそれぞれ、連通対応する前記コイル要素への前記冷媒の供給停止を可能とする止水手段を有すると共に、前記コイル要素に着脱可能な着脱ジョイントを有し、前記分岐供給管及び前記分岐排出管の前記止水手段は、それぞれ少なくとも前記着脱ジョイントが設けられる位置より前記供給ヘッダ側及び前記排出ヘッダ側に設けたこと。
【0013】
また、本発明は、以下(4)~(6)の点で特徴を有する空調機についても提供する。
(4)空調機本体と、冷媒を冷却する冷却装置と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記冷却装置により冷却された冷媒を前記空調機本体の前記コイルユニットへ送る流入管と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記コイルユニットを流通して熱交換された冷媒を前記冷却装置に戻す流出管と、を備え、前記空調機本体は、上記(1)~(3)のいずれかに記載のコイルユニットと、空気を前記コイルユニットへ送風して前記コイルユニットの外表面に接触通過させる送風ファンと、前記送風ファンにより送風される空気を浄化する浄化フィルタと、により構成し、前記コイルユニットと前記送風ファンと前記浄化フィルタとは、それぞれ前記送風ファンによる空気の通風路上に沿って並設したこと。
(5)前記コイルは、一定方向に配設された複数の前記コイル要素により表面積が最大となる最大外表面を有し、前記最大外表面を前記送風ファンによる空気の通風路に面対向させて配設したこと。
(6)前記空調機本体は、一定間隔で複数並設され、各空調機本体の前記コイルユニットはそれぞれ、前記供給ヘッダを介して前記流入管から分岐して連通接続すると共に、前記排出ヘッダを介して前記流出管から分岐して連通接続すること。
【0014】
また、本発明は、(7)情報通信データを管理するデータセンターにおいて、上記(4)~(6)のいずれかに記載の空調機を備えた空調管理システムであって、前記データセンターは、一定空間のサーバ室と、複数のサーバが収められ、前記サーバ室内で立設した複数のラックと、を有し、前記空調機は、前記送風ファンによる空気の通風方向を前記ラック方向に向けて前記サーバ室内に配置したことを特徴とする空調管理システムについても提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコイルユニットによれば、コイルユニットケースと、前記コイルユニットケース内で冷媒の循環流路となるコイルと、を有したコイルユニットであって、前記コイルは、前記ユニットケース内で前記循環流路を複数の独立流路部に分割する複数のコイル要素を一定方向に配設することにより構成し、複数の前記コイル要素は、それぞれ始端で複数の分岐供給管を介して冷媒を分流供給する供給ヘッダに連通して合流すると共に、それぞれ終端で複数の分岐排出管を介して冷媒を集流排出する排出ヘッダに連通して合流し、前記供給ヘッダは、複数の前記分岐供給管が接続する位置よりも上流側位置に、前記コイルに流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置を備えることとしたため、コイルに不具合が生じた場合であっても同コイルに流れる冷媒を一定流量で流通循環させつつ冷却空気を安定して連続生成することができる冗長機能を備え、省スペースで設置できると共に、交換作業や修理作業などのメンテナンス性と経済性とを良好とすることができる。
【0016】
すなわち、コイルを複数のコイル要素で構成したことにより循環流路部を複数の独立流路にすることができるため、上流側の定流量装置によりコイルに流れ込む冷媒量を調整するだけで、その支流に相当する各コイル要素に一定量の冷媒を略均等に分配して流すことができる。
【0017】
また、複数のコイル要素のうち一部のコイル要素に不具合が生じた場合であっても、不具合のあるコイル要素への冷媒の供給を停止することで、コイルの管圧を全体的に上昇させて他のコイル要素へ分圧作用させる。
【0018】
この際、定流量装置によりコイル全体に流入する冷媒の総流量が一定に保たれているため、他の正常な各コイル要素に流れる冷媒の流量が安定して一定量増加することとなる。
【0019】
その結果、コイル全体に流れ込む冷媒量を連続的に安定して流通させることができ、コイル全体としての冷却機能、すなわちコイルユニットの熱負荷処理能力を補完して連続稼働を行うことができる。また、不具合のあったコイル要素の交換作業や修理作業を可及的速やかに簡単に行うことができ、作業負担を軽減化しつつ交換・修理作業時間と空調機の稼働停止時間を大幅に短縮化できる効果がある。
【0020】
また、本発明のコイルユニットにおいて、最大熱負荷Qが定められた空間の熱負荷を処理すべく、前記コイルを構成する必要な前記コイル要素数をn、前記定流量装置による冷媒の最大流量をq、各コイル要素の熱負荷処理能力をP(q×1/n)とした場合、各コイル要素の熱負荷処理能力が、P(q×1/(n-1))×(n-1)>Q又はP(q×1/(n-2))×(n-2)>Qを満たすこととすれば、故障したコイル要素が1つの場合の設定条件をP(q×1/(n-1))×(n-1)>Qとし、故障したコイル要素が2つの場合の設定条件をP(q×1/(n-2))×(n-2)>Qとし、不具合の生じたコイル要素の数に応じて冗長性を確実に担保できる効果がある。
【0021】
また、本発明のコイルユニットにおいて、前記分岐供給管と前記分岐排出管とはそれぞれ、連通対応する前記コイル要素への前記冷媒の供給停止を可能とする止水手段を有すると共に、前記コイル要素に着脱可能な着脱ジョイントを有し、前記分岐供給管及び前記分岐排出管の前記止水手段は、それぞれ少なくとも前記着脱ジョイントが設けられる位置より前記供給ヘッダ側及び前記排出ヘッダ側に設けたため、一部のコイル要素に不具合が生じても同コイル要素に流れ込む冷媒を止水手段により停止遮断させつつ他のコイル要素でコイルユニットの熱負荷処理能力を安定して維持して冗長性を保持することができる。また、交換・修理作業時には、不具合のあったコイル要素のみを迅速かつ簡単に交換・修理することができるため、作業負担を軽減化でき、交換・修理作業時間と空調機の稼働停止時間を大幅に短縮化できる。
【0022】
また、本発明に係る空調機によれば、空調機本体と、冷媒を冷却する冷却装置と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記冷却装置により冷却された冷媒を前記空調機本体の前記コイルユニットへ送る流入管と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記コイルユニットを流通して熱交換された冷媒を前記冷却装置に戻す流出管と、を備え、前記空調機本体は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のコイルユニットと、空気を前記コイルユニットへ送風して前記コイルユニットの外表面に接触通過させる送風ファンと、前記送風ファンにより送風される空気を浄化する浄化フィルタと、により構成し、前記コイルユニットと前記送風ファンと前記浄化フィルタとは、それぞれ前記送風ファンによる空気の通風路上に沿って並設したため、送風ファンにより空気をコイルユニットに吹き当てて効果的に熱交換作用を生起させ、冷却空気を安定して生成することができる。
【0023】
また、浄化フィルタにより空気中に含まれる塵挨をトラップして清潔な冷却空気を常時生成することができるため、例えば精密機器を冷却する際には精密機器の稼働に伴い発生する静電気により空気中の塵挨が電気回路部に付着して故障するなどの機器故障リスクを可及的回避することができる効果がある。
【0024】
また、本発明の空調機において、前記コイルは、一定方向に配設された複数の前記コイル要素により表面積が最大となる最大外表面を有し、前記最大外表面を前記送風ファンによる空気の通風路に面対向させて配設することとすれば、送風ファンにより送風されてきた空気とコイルとの接触面積を可及的拡大させて空気と冷媒との間の熱交換効率を向上でき、したがって冷却空気の生成効率を向上させることができる効果がある。
【0025】
また、本発明の空調機において、前記空調機本体は、一定間隔で複数並設され、各空調機本体の前記コイルユニットはそれぞれ、前記供給ヘッダを介して前記流入管から分岐して連通接続すると共に、前記排出ヘッダを介して前記流出管から分岐して連通接続することとすれば、冷却装置で冷却された冷媒を各空調機本体へ個々独立して均等に分配することができるため冷媒の冷媒が有する吸熱エネルギーを保持しつつ、各空調機本体で冷却空気を安定して生成することができる効果がある。また、不具合のあるコイル要素の交換・修理時には、不具合のない他の空調機本体B1を正常に連続稼働させつつ、不具合のあるコイル要素を含む空調機本体の送風ファンのみを稼働停止して、同コイル要素を新たなコイル要素に交換したり修理したりする交換・修理作業を迅速に行うことができる効果がある。
【0026】
また、本発明に係る空調管理システムによれば、情報通信データを管理するデータセンターにおいて、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の空調機を備えた空調管理システムであって、前記データセンターは、最大熱負荷が定められた空間としてのサーバ室と、複数のサーバが収められ、前記サーバ室内で立設した複数のラックと、を有し、前記空調機は、前記送風ファンによる空気の通風方向を前記ラック方向に向けて前記サーバ室内に配置したため、略密閉されたサーバ室内を全体的に冷却空気で充満させつつ、ラックに収められた複数のサーバを空調機からの冷却空気に効果的に接触させて冷却することができる。
【0027】
しかも、上述したように空調機本体において冷却中心となるコイルが分割した複数のコイル要素で構成されているため、複数のコイル要素のうち一部のコイル要素に不具合が生じた場合であっても、定流量装置により他のコイル要素に流れる冷媒量を増加してコイル全体としての冷却機能、すなわちコイルユニットの熱負荷処理能力を補完することができる。
【0028】
また、交換・修理作業時には、不具合のあったコイル要素のみを迅速かつ簡単に交換・修理することができるため、作業負担を軽減化でき、交換・修理作業時間と空調機本体の稼働停止時間を大幅に短縮化できる。したがって、サーバが熱負荷過大となってダウンするなどして発生する通信障害リスクを可及的回避でき、データセンターにおける情報通信データの安定した管理性を堅実とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施例に係る空調管理システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】本実施例に係る空調機の構成を示す模式的側面図である。
【
図3】本実施例に係るコイルユニットの構成を示す模式的説明図である。
【
図4】本実施例に係る分岐供給管又は分岐排出管の構成を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の要旨は、コイルユニットケースと、前記コイルユニットケース内で冷媒の循環流路となるコイルと、を有したコイルユニットであって、前記コイルは、前記ユニットケース内で前記循環流路を複数の独立流路部に分割する複数のコイル要素を一定方向に配設することにより構成し、複数の前記コイル要素は、それぞれ始端で複数の分岐供給管を介して冷媒を分流供給する供給ヘッダに連通して合流すると共に、それぞれ終端で複数の分岐排出管を介して冷媒を集流排出する排出ヘッダに連通して合流し、前記供給ヘッダは、複数の前記分岐供給管が接続する位置よりも上流側位置に、前記コイルに流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置を備えることを特徴とするコイルユニットを提供することである。
【0031】
また、最大熱負荷Qが定められた空間の熱負荷を処理すべく、前記コイルを構成する必要な前記コイル要素数をn、前記定流量装置による冷媒の最大流量をq、各コイル要素の熱負荷処理能力をP(q×1/n)とした場合、P(q×1/(n-1))>Q/(n-1)又はP(q×1/(n-2))>Q/(n-2)となるように各コイル要素の熱負荷処理能力を設定したことに特徴を有する。
【0032】
また、前記分岐供給管と前記分岐排出管とはそれぞれ、連通対応する前記コイル要素への前記冷媒の供給停止を可能とする止水手段を有すると共に、前記コイル要素に着脱可能な着脱ジョイントを有することに特徴を有する。
【0033】
また、本発明では、空調機本体と、冷媒を冷却する冷却装置と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記冷却装置により冷却された冷媒を前記空調機本体の前記コイルユニットへ送る流入管と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記コイルユニットを流通して熱交換された冷媒を前記冷却装置に戻す流出管と、を備え、前記空調機本体は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のコイルユニットと、空気を前記コイルユニットへ送風して前記コイルユニットの外表面に接触通過させる送風ファンと、前記送風ファンにより送風される空気を浄化する浄化フィルタと、により構成し、前記コイルユニットと前記送風ファンと前記浄化フィルタとは、それぞれ前記送風ファンによる空気の通風路上に沿って並設したことを特徴とする空調機についても提供する。
【0034】
また、前記コイルユニットは、一定方向に配設された複数の前記コイル要素により表面積が最大となる最大外表面を有し、前記最大外表面を前記送風ファンによる空気の通風路に面対向させて配設したことに特徴を有する。
【0035】
また、前記空調機本体は、一定間隔で複数並設され、各空調機本体の前記コイルユニットはそれぞれ、前記供給ヘッダを介して前記流入管から分岐して連通接続すると共に、前記排出ヘッダを介して前記流出管から分岐して連通接続することに特徴を有する。
【0036】
また、本発明では、情報通信データを管理するデータセンターにおいて、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の空調機を備えた空調管理システムであって、前記データセンターは、最大熱負荷が定められた空間としてのサーバ室と、複数のサーバが収められ、前記サーバ室内で立設した複数のラックと、を有し、前記空調機は、前記送風ファンによる空気の通風方向を前記ラック方向に向けて前記サーバ室内に配置したことを特徴とする空調管理システムについても提供する。
【0037】
本発明のコイルユニットは、冷媒が循環する空気冷却用コイルがコイル要素として複数の小型コイルを集合してユニット化されたものであり、冗長性と交換・修理作業性とを担保するように工夫されたものである。
【0038】
換言すれば、コイルを複数のコイル要素に分割してモジュール化することにより、空調機内に冷媒が流通する独立流路を複数形成して、不具合が生じても熱負荷処理能力を補いつつ冗長性を担保し、交換・修理作業時には不具合箇所を短時間で可及的速やかに交換できるように構成している。
【0039】
また、本発明に特筆すべき点は、一部のコイル要素への冷媒の流通供給を停止しても、冷媒の循環流路の上流側に他の正常なコイル要素への冷媒の流通量を増加させる定流量装置を備えて、コイル全体としての熱負荷処理能力を担保することにある。
【0040】
すなわち、循環流路において、電気的制御に依存することなく冷媒の流量を定流量装置により熱負荷処理能力を担保補完するように制御する特別の設計をしたものであり、コイル要素が小型であるために不具合が生じても交換部材搬入出用の大型の重機や労力を要さずに空調機の稼働停止状態を可及的短縮化して素早く完全復旧できる画期的発明である。
【0041】
以下、本発明に係るコイルユニット、同コイルユニットを備えた空調機、及び同空調機を備えた空調管理システムの実施例について説明する。
図1は本実施例の空調管理システムの全体構成を示す概念図、
図2は本実施例の空調機の構成を示す模式的側面図、
図3は本実施例のコイルユニットの構成を示す模式的説明図、
図4(a)及び
図4(b)は本実施例の分岐供給管又は分岐排出管の構成を示す模式的説明図である。
【0042】
本実施例に係る空調管理システムCは、概略的には、
図1に示すように、情報通信データを管理するデータセンターC1において、空調機Bを複数備えている。
【0043】
データセンターC1は、最大熱負荷が定められた空間としてのサーバ室C10と、複数のサーバが収められ、サーバ室C10内で立設した複数のラックC11と、を有し、空調機Bは、送風ファンB10による空気の通風方向をラック方向に向けてサーバ室C10内に複数(本実施例では3つ)配置している。
【0044】
なお、本実施例では、空調管理システムCとして、データセンターC1への適応例を挙げているが、最大熱負荷が定められた空間を備えた施設であればこれに限定されることはない。最大熱負荷が定められた空間を備えた施設としてデータセンターC1以外には、例えば、24時間稼働する旋盤機械器具が設置された作業場を備えた機器工場や、24時間稼働するRI等の分析装置が設置された分析室を備えた研究所などが挙げられる。
【0045】
また、空調管理システムCにおいて、空調機Bのサーバ室C10への設置場所は、空調機Bが通風方向をラック方向に向けた場所であればよい。例えば、空調機Bは、ラックC11近傍でサーバ室C10の天面部や床面部に埋設したり、サーバ室C10の床面から立設したりすることができる。
【0046】
かかる空調機Bは、
図1及び
図2に示すように、コイルユニットAを有する空調機本体B1と、冷媒を冷却する冷却装置B2と、空調機本体B1と冷却装置B2との間に連通介設され、冷却装置B2により冷却された冷媒を空調機本体B1のコイルユニットAへ送る流入管B3と、空調機本体B1と冷却装置B2との間に連通介設され、コイルユニットAを流通して熱交換された冷媒を冷却装置B2に戻す流出管B4と、を備えている。
【0047】
空調機本体B1は、
図2に示すように、冷却機能するコイルユニットAと、空気をコイルユニットAへ送風してコイルユニットAの外表面に接触通過させる送風ファンB10と、送風ファンB10により送風される空気を浄化する浄化フィルタB11と、により構成しており、コイルユニットAと送風ファンB10と浄化フィルタB11とは、それぞれ送風ファンB10による空気の通風路上に沿って並設している。
【0048】
空調機本体B1は、コイルユニットAを中心に、コイルユニットケース1の正面側の排気口11に対向して送風ファンB10を配置すると共に、コイルユニットケース1の背面側の吸気口10に対向して浄化フィルタB11を配置して構成している。
【0049】
ここで本発明に特筆すべき点として、空調機本体B1を構成するコイルユニットAが、空調機Bの設置性や経済性を良好し、不具合があった際には冗長性を担保しつつも、交換・修理作業時には部材交換や修理の容易化を図り空調機Bの稼働停止時間を短縮化して可及的速やかに空調機Bを完全復旧できる特別なユニット構造で構成した点にある。
【0050】
本実施例にかかるコイルユニットAは、
図1~
図3に示すように、コイルユニットケース1と、コイルユニットケース1内で冷媒の循環流路となるコイル2と、を有している。コイル2は、コイルユニットケース1内で循環流路を複数分岐した独立流路部に分割する複数のコイル要素3a~3cを一定方向に配設することにより構成している。
【0051】
なお、コイルユニットAに用いられる冷媒は、冷却サイクル効率がよいものであれば特に限定されることはないが、経済的、安全的な観点から水であることが好ましい。
【0052】
コイルユニットケース1は、
図2及び
図3に示すように、内部中空の方形箱型状であって、後部に空気を内部へ取り入れるための吸気口10を形成すると共に、排前部に内部の空気を吹き出すため排気口11を形成している。すなわち、コイルユニットケース1は、送風ファンB10による空気が前後に方向に連通する通風路を形成するダクト機能を果たす。
【0053】
循環流路としてのコイル2は、
図2及び
図3に示すように、コイルユニットケース1内において、複数(本実施例では3つ)のコイル要素3a~3cに分割されてモジュール化されており、独立流路部としての各コイル要素3a~3cを幅方向又は高さ方向に隣接して並置することにより、コイル2に流入する冷媒を各コイル要素3a~3cへ均等に分割するように構成している。
【0054】
複数のコイル要素3a~3cは、それぞれ始端で対応する複数の分岐供給管4a~4cを介して冷媒を分岐供給する供給ヘッダ5に連通して合流すると共に、それぞれ終端で対応する複数の分岐排出管6a~6cを介して冷媒を集流排出する排出ヘッダ7に連通して合流している。
【0055】
すなわち、コイル2としての循環流路は、始端で供給ヘッダ5から複数のコイル要素3a~3cへそれぞれ分岐すると共に終端で合流する複数の独立流路部に分割される。
【0056】
供給ヘッダ5と排出ヘッダ7とはそれぞれ、
図3に示すように、一端部を流入管B3と流出管B4とに連通接続するヘッダ開口部51、71に形成すると共に、他端部を閉塞端部52、72に形成し、伸延方向に一定間隔で複数の分岐口50a~50c、70a~70c(本実施例ではそれぞれ3つ)を形成した耐圧管で構成している。
【0057】
また、供給ヘッダ5の各分岐口50a~50cには対応する各分岐供給管4a~4cが始端部で連通接続すると共に、排出ヘッダ7の各分岐口70a~70cには対応する各分岐排出管6a~6cが終端部で連通接続している。
【0058】
また、各分岐供給管4の終端部には対応する各コイル要素3a~3cが始端部で連通接続すると共に、各分岐排出管6a~6cの始端部には対応する各コイル要素3a~3cが終端部で連通接続している。
【0059】
各コイル要素3a~3cはそれぞれ同じ大きさ同じ構造を有して構成している。具体的には、コイル要素3は、
図3に示すように、方形枠状のコイルフレーム31と、コイルフレーム31内で一定間隔を保持して面対向すると共に積層配置した薄板状の複数のアルミフィンと、同コイルフレーム31内のアルミフィンを貫通すると共に上下方向及び前後方向に折り曲げ伸延するサーペタイン状(蛇行曲線状)の複数の伝熱管30と、伝熱管30の始端部と終端部にそれぞれ連通連設した上下流側コイルヘッダ32、33と、により略直方状の小型フィンコイルに構成している。
【0060】
伝熱管30は、コイルフレーム31に対向して固定され、それぞれU字状に湾曲する複数のベント部と、対向するベント部同士の始端部と終端部同士の間に連設され、それぞれ直線状に伸延する複数のチューブ部と、より構成している。
【0061】
すなわち、各コイル要素3a~3cは、それぞれの始端部と終端部の上下流側コイルヘッダ32、33の間で複数の伝熱管30を連通して配設することにより、複数の独立流路を形成した小型コイルに構成したものである。
【0062】
具体的には、伝熱管30は、コイルフレーム31の対向側壁において、一側壁で奥行方向に互いに位相をずらして配設した前側ベント部と後側ベント部と、他側壁で前側ベント部の終端開口に始端開口を対向すると共に後側ベント部の始端開口に終端開口を対向して配置した中側ベント部と、各ベント部の開口にそれぞれ連通接続して略直線状に伸延する複数のチューブ部と、より構成した、いわゆる複数列状コイルで構成している。
【0063】
かかる伝熱管30が、コイルフレーム31に複数本、一定の幅方向に配設されることにより、各伝熱管がさらにコイル要素を分割して独立流路部を構成する最小の独立流路要素として機能する。なお、
図3~
図4(b)中、符号32a、33aは上下流側コイルヘッダ32、33の周壁に間接した接続口である。
【0064】
また、各コイル要素3a~3cは、厚み方向の一側において、サーペタイン状に折り曲げ配設した伝熱管30の外表面が最大面積となる最大面部34を有する。
【0065】
換言すれば、コイル2は、
図2及び
図3に示すように、コイルユニットケース1内において、それぞれ最大面部34の方向をコイルユニットケース1の吸気口10及び排気口11に向けて隣接して配設した複数のコイル要素3a~3cにより、コイルユニットケース1内の流通空気との接触面積が最大となる最大外表面20を形成して構成している。
【0066】
また、供給ヘッダ5は、
図1及び
図3に示すように、複数の分岐供給管4が接続する位置よりも上流側位置に、コイル2に流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置8を備えている。
【0067】
かかるコイル2を構成するコイル要素3a~3cの数(コイルの分割数)は、最大熱負荷Qが定められた空間の熱負荷を処理すべく、次のように決定される。必要なコイル要素数をn≧3、定流量装置8による冷媒の最大流量をq、各コイル要素の熱負荷処理能力をP(q×1/n)とした場合、P(q×1/(n-1))>Q/(n-1)又はP(q×1/(n-2))>Q/(n-2)となるように各コイル要素3の熱負荷処理能力を設定している。
【0068】
計算例として、以下具体的に説明する。熱負荷48kWの空間の熱負荷処理を行う場合であって、コイルユニットケース1内へ取り込まれる空気について温度(DB35℃、WB21.8℃)、風速2m/s、風量15000m3/hとし、冷媒のコイル2への入口温度15℃、冷媒量60L/min、コイル要素3の数を3つとした場合には、各コイル要素3a~3cではそれぞれ風量5000m3/h、負荷16kW、冷媒量20L/min、風速2m/sとなり、熱負荷に対して約110%の処理能力を有する。
【0069】
ここで、3つのコイル要素3a~3cのうち、1つのコイル要素3cが故障した場合を想定すると、定流量装置8により残り2つのコイル要素3a、3bの冷媒量が1.5倍に増量するように設定される。この場合、2つのコイル要素3a、3bではそれぞれ風量7500m3/h、負荷24kW、冷媒量30L/min、風速3m/sとなり、熱負荷に対して約105%の処理能力を発揮する。
【0070】
このように冷媒の流量を制御する定流量装置8としては、流路内で圧力変動があっても供給ヘッダ5の内径を縮径変位させて流入する冷媒を定流量化するものであれば限定されることはなく、電磁的、機械的又は物理的なものを採用できるが、機械的又は物理的なものが安定性の観点で好ましい。
【0071】
定流量装置8の一例として、供給ヘッダ5の管内上流側に配設された弁体と、弁体より下流側で供給ヘッダ5の内径よりも小さい口径を有するオリフィスと、で構成し、同弁体により下流側から下流側へ冷媒を流通可能にすると共に冷媒の逆流を防ぐ逆止弁機能を有した定流量弁80を採用することができる。
【0072】
定流量弁80は、例えば機械的なものであれば、弁体を常時上流側に付勢する付勢バネを備え、流入する冷媒の水圧の変動に応じて弁体の付勢バネが収縮し、自動的にオリフィスに弁体が近接することにより開口率を絞るものや、物理的なものであればオリフィスを弾性素材で形成することにより水圧に応じて弾性変形させて開口率を絞るものがあげられる。
【0073】
これにより、コイル2全体に流入する冷媒の総流量が一定に保たれることとなり、複数のコイル要素3a~3cのうち故障したコイル要素3cへの冷媒の供給を停止すると、必然的に他の正常な各コイル要素3a、3bに流れ込む冷媒の流量が安定して増加し、同各コイル要素3a、3bが停止したコイル要素3cの熱負荷分を補完する。その結果、コイルユニットA全体としての熱負荷処理能が確実に担保されることとなり、冗長性が向上することとなる。
【0074】
また、分岐供給管4a~4cと分岐排出管6a~6cとはそれぞれ、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、連通対応するコイル要素3a~3cへの冷媒の供給停止を可能とする止水手段430、630を有すると共に、コイル要素3a~3cに着脱可能な着脱ジョイント431、631を有している。
【0075】
具体的には、分岐供給管4と分岐排出管6とはそれぞれ、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、上流側から下流側にかけて分割可能な4つの管部からなり、供給ヘッダ5又は排出ヘッダ7に一端で連通接続する集合ヘッダ接続管部41、61と、集合ヘッダ接続管部41、61の他端に一端で連通接続するヘッダ側中間管部42、62と、ヘッダ側中間管部42、62の他端に一端で連通接続するコイル側中間管部43、63と、コイル側中間管部43、63の他端に一端で連通接続すると共にコイル要素3に他端で連通接続するコイル接続管部44、64と、で構成している。
【0076】
かかる構成の分岐供給管4及び分岐排出管6において、本実施例の止水手段430、630は、コイル側中間管部43、63の中途部にボールバルブなどの止水栓を設けることにより、分岐供給管4及び分岐排出管6からの冷媒の供給・停止を可能に構成している。
【0077】
また、本実施例の着脱ジョイント431、631は、
図4(a)に示すように、コイル側中間管部43、63とコイル接続管部44、64との接合部分で互いに嵌合する雌雄嵌合部と、雌雄嵌合部同士を螺合接続するナットと、で構成したユニオンジョイント(フランジジョイント)431a、631aとし、コイル側中間管部43、63とコイル接続管部44、64とを着脱可能に構成している。
【0078】
なお、他の実施例として、
図4(b)に示すように、着脱ジョイント431、631は、止水手段430、630と一体化したクイックジョイント431b、631bを採用することもできる。
【0079】
具体的には、クイックジョイント431b、631bとして、
図4(b)に示すように、コイル側中間管部43、63とコイル接続管部44、64との接合部分において、水密状に雌雄嵌合して連通接続すると共に離脱状態では分岐供給管4及び分岐排出管6からの冷媒の流出を停止する逆止弁を有して止水手段430、630を一体化した継手を採用することができる。
【0080】
すなわち、分岐供給管4a~4c及び分岐排出管6a~6cの止水手段430、630は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、それぞれ少なくとも着脱ジョイント431、631が設けられる位置より供給ヘッダ5側及び排出ヘッダ7側に設けて構成している。
【0081】
また、分岐供給管4及び分岐排出管6は、それぞれ止水手段430、630が設けられる位置よりも供給ヘッダ5側及び排出ヘッダ7側に、折り曲げ可能な可撓性管部420、620を有している。具体的には、可撓性管部420、620は、ヘッダ側中間管部42、62を可撓性のフレキシブルジョイント管で配管構成している。
【0082】
これにより、不具合のあったコイル要素を取り換える際には、同可撓性管部420、620を介してその先端の供給ヘッダ5と排出ヘッダ7との間に位置させた新たなコイル要素に接続する分岐供給管4や分岐排出管6長さや位置の調整を容易にし、取り換え作業効率を向上させることができる。
【0083】
以上のように、コイルユニットAは、コイル2に不具合が生じた場合であっても同コイル2に流れる冷媒を一定流量で流通循環させつつ冷却空気を安定して連続生成することができる冗長機能を備え、省スペースで設置できると共に、経済性とメンテナンス性を良好とすることができる。
【0084】
かかる構成のコイルユニットAを備える空調機Bは、空気の通風路において、通風路の吸気側から排気側にかけて順番に、浄化フィルタB11、コイルユニットA、送風ファンB10を配置して構成している。
【0085】
送風ファンB10は、駆動源となる電動モータB100により回転駆動する回転軸B101の先端部に取り付けれて、回転軸B101と一体的に回転するように構成しており、同回転軸B101をコイルユニットケース1内のコイル2の最大外表面20の重心位置に配置して、コイルユニットケース1の排気口11を閉塞するように取り付けられている。
【0086】
送風ファンB10は、1つのコイル2、すなわち複数のコイル要素3a~3cに対して、1つ以上を割り当てるように構成しており、本実施例では3つのコイル要素3a~3cに対して2つを割り当てて配設している。すなわち、空調機本体B1は、送風ファンB10の数をコイル要素3a~3cの数より少なくして構成している。
【0087】
浄化フィルタB11は、吸気口10の開口面積と略同じ面積を有し、空気中の塵挨を効果的にトラップして濾過することができるものであれば特に限定されることはなく、コイルユニットケース1の吸気口10を閉塞するように取り付けられている。
【0088】
このようにして、コイルユニットAは、コイルユニットケース1内のコイル2が複数のコイル要素3a~3cによりなす最大外表面20で、送風ファンB10によりコイルユニットケース1内の送風される空気の最大風圧を受けるように、最大外表面20を送風ファンによる空気の通風路に直交するように面対向させて配設して構成している。
【0089】
これにより、送風ファンB10により流入して送風されてきた流通空気とコイル2との接触面積を可及的拡大させて空気と冷媒との間の熱交換効率を向上でき、したがって冷却空気の生成効率を向上させることができる。
【0090】
また、空調機本体B1は、送風ファンB10による風量を調節するためのダンパB12を備えて構成している。ダンパB12は、コイルユニットAのコイルユニットAと浄化フィルタB11の間に介設している。
【0091】
ダンパB12は、コイルユニットAにおけるコイル2を構成する各コイル要素3a~3cに対応して、複数のダンパ部B120a~B120cに分割して構成しており、各コイル要素3a~3cへの空気の流入量を独立して制御可能としている。
【0092】
かかる構成の空調機本体B1、すなわち空調機Bが、データセンターC1のサーバ室C10で一定間隔で複数並設されている。
【0093】
また、各空調機本体B1のコイルユニットAはそれぞれ、供給ヘッダ5を介して流入管B3から分岐して連通接続すると共に、排出ヘッダ7を介して流出管B4から分岐して連通接続している。
【0094】
冷却装置B2は、大容量の冷媒を連続的に冷却できるものであれば特に限定されなく、データセンターC1においてサーバ室C10外のボイラー室等に配設されている。
【0095】
また、空調機本体B1と冷却装置B2との間に連通介設した流入管B3の中途部には、冷却装置B2により冷却された冷媒を下流側の空調機本体B1へ一定流量で送り続けるポンプPが配設されている。
【0096】
すなわち、ポンプPからの冷媒の流圧は、各空調機本体B1の定流量装置8により整圧されることとなるため、少なくとも定流量装置8により下流側でコイル2を構成する複数のコイル要素3a~3cへ流入する冷媒の流圧よりも大きくなる。
【0097】
換言すれば、空調機Bは、各空調機本体B1の定流量装置8を境に、上流側の冷媒の流圧を下流側より常時大きくしたポンプPを備え、同ポンプPにより常時連続的に冷却装置B2により冷却された冷媒を、各空調機本体B1のコイルユニットAへ供給するように構成している。
【0098】
このように構成した空調管理システムCは、空調機Bに不具合が生じた場合であっても、次のようにして冷却空気を安定して連続生成する。なお、複数の空調機Bのうち一部の空調機Bに不具合が生じる場合とは、空調機B内のコイルユニットAにおける複数のコイル要素3a~3cのうち一部のコイル要素に不具合が生じた場合を想定している。
【0099】
すなわち、常時連続的に冷媒が流通する各コイル要素3a~3cのうち、一部のコイル要素3cに不具合が生じた場合、作業者は、不具合のあるコイル要素3cに連通接続する分岐供給管4と分岐排出管6に設けた止水手段430、630を止水操作し、同コイル要素3cの上下流側に配置した供給ヘッダ5及び排出ヘッダ7からの冷媒の流出を遮断すると共に、コイル要素3cに対応するダンパ部B120cを閉止してコイル要素3cへの通風を遮断する。
【0100】
これにより、他の正常なコイル要素3a、3bに対して、定流量装置8により一定流圧に保持した冷媒を分岐供給管4から供給すると共に風量を増加させて、空調機Bの有する熱負荷処理能力を補完することができる。
【0101】
通常、連続流体の経路においては、分岐経路の一部の流体の流れをストップした際には経路内の流圧が不用意に変動するウォーターハンマー現象を起こし、他の分岐経路へ流体の分流量が不用意に増減するなど不安定となる。
【0102】
本実施例では、各コイル要素3a、3bに冷媒が分流される前に、各分岐独立流路としてのコイル要素3a、3bよりも上流側で、流圧を一定とするように定流量装置8を配設しているためウォーターハンマー現象を生起させることなく流圧を整圧する。
【0103】
さらに、同定流量装置8で整圧された冷媒は、いったん分岐供給管4に貯溜されてさらに整圧を受け、同分岐供給管4からコイル要素3cに流れ込む分を他の正常なコイル要素3a、3bへ均等に分配して流通させる。
【0104】
その結果、他の正常なコイル要素3a、3bへの冷媒の流速と流量が増すこととなり、他の正常なコイル要素3a、3bの熱負荷機能が自動的に向上することとなる。しかも、ウォーターハンマー現象が生起せずに他の正常なコイル要素3a、3bへの不用意な圧力負荷を抑制することができる。
【0105】
すなわち、不具合のあるコイル要素3cを即座に新たなコイル要素に交換できない場合であっても、正常な残りのコイル要素3a、3bにより不具合のある不使用のコイル要素3cの熱負荷処理機能を補完して、コイルユニットAの有する熱負荷処理能力が低下することがない。
【0106】
したがって、一部のコイル要素3cに不具合があっても空調機Bを連続稼働させて最大熱負荷が定められた空間に対応した冷却空気を常時安定して補完生成することができ、データセンターC1のサーバ室C10に立設したラックC11のサーバを冷却することができる。
【0107】
そして、不具合のあるコイル要素3cを新たなコイル要素に交換する際には、作業者は、ポンプPを稼働させた状態で、空調機本体B1の稼働停止、すなわち当該送風ファンB10を停止し、対応する分岐供給管4cと分岐排出管6cの着脱ジョイント431、631を介して不具合のあるコイル要素3cを取り外して新たなコイル要素に交換する。
【0108】
なお、空調機本体B1が複数並設されている場合には、ポンプPを稼働させた状態で、不具合のあるコイル要素3cを含む空調機本体B1の送風ファンB10を停止すると共に不具合のない他の空調機本体B1を正常に連続稼働させつつ、交換・修理作業を行うことができる。
【0109】
このように、コイル要素3cの交換作業が簡単であるため作業者は素早く同作業を行うことができ、空調機Bにおいて不具合のあるコイル要素3cを含む空調機本体B1の稼働停止状態を短縮化して空調機Bを可及的速やかに完全復旧することができる。
【0110】
以上のように、本発明のコイルユニットによれば、コイルユニットケースと、前記コイルユニットケース内で冷媒の循環流路となるコイルと、を有したコイルユニットであって、前記コイルは、前記ユニットケース内で前記循環流路を複数の独立流路部に分割する複数のコイル要素を一定方向に配設することにより構成し、複数の前記コイル要素は、それぞれ始端で複数の分岐供給管を介して冷媒を分流供給する供給ヘッダに連通して合流すると共に、それぞれ終端で複数の分岐排出管を介して冷媒を集流排出する排出ヘッダに連通して合流し、前記供給ヘッダは、複数の前記分岐供給管が接続する位置よりも上流側位置に、前記コイルに流入される冷媒の総流量を一定流量に制御する定流量装置を備えることとしたため、コイルに不具合が生じた場合であっても同コイルに流れる冷媒を一定流量で流通循環させつつ冷却空気を安定して連続生成することができる冗長機能を備え、省スペースで設置できると共に、経済性と交換作業のメンテナンス性を良好とすることができる。
【0111】
また、本発明のコイルユニットにおいて、最大熱負荷Qが定められた空間の熱負荷を処理すべく、前記コイルを構成する必要な前記コイル要素数をn、前記定流量装置による冷媒の最大流量をq、各コイル要素の熱負荷処理能力をP(q×1/n)とした場合、各コイル要素の熱負荷処理能力が、P(q×1/(n-1))×(n-1)>Q又はP(q×1/(n-2))×(n-2)>Qを満たすこととすれば、故障したコイル要素が1つの場合の設定条件をP(q×1/(n-1))×(n-1)>Qとし、故障したコイル要素が2つの場合の設定条件をP(q×1/(n-2))×(n-2)>Qとし、不具合の生じたコイル要素の数に応じて冗長性を確実に担保できる効果がある。
【0112】
また、本発明のコイルユニットにおいて、前記分岐供給管と前記分岐排出管とはそれぞれ、連通対応する前記コイル要素への前記冷媒の供給停止を可能とする止水手段を有すると共に、前記コイル要素に着脱可能な着脱ジョイントを有し、前記分岐供給管及び前記分岐排出管の前記止水手段は、それぞれ少なくとも前記着脱ジョイントが設けられる位置より前記供給ヘッダ側及び前記排出ヘッダ側に設けたため、不具合の生じたコイル要素を交換する際に、同コイル要素に流れ込む冷媒を止水手段により停止遮断させつつコイルユニットの熱負荷処理能力を安定して維持することができ、不具合のあったコイル要素の交換作業や修理作業を容易に行うことができ、冗長性が向上する効果がある。
【0113】
また、本発明に係る空調機によれば、空調機本体と、冷媒を冷却する冷却装置と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記冷却装置により冷却された冷媒を前記空調機本体の前記コイルユニットへ送る流入管と、前記空調機本体と前記冷却装置との間に介設され、前記コイルユニットを流通して熱交換された冷媒を前記冷却装置に戻す流出管と、を備え、前記空調機本体は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のコイルユニットと、空気を前記コイルユニットへ送風して前記コイルユニットの外表面に接触通過させる送風ファンと、前記送風ファンにより送風される空気を浄化する浄化フィルタと、により構成し、前記コイルユニットと前記送風ファンと前記浄化フィルタとは、それぞれ前記送風ファンによる空気の通風路上に沿って並設したため、送風ファンにより空気をコイルユニットに吹き当てて効果的に熱交換作用を生起させ、冷却空気を安定して生成することができる。
【0114】
また、本発明の空調機において、前記コイルは、一定方向に配設された複数の前記コイル要素により表面積が最大となる最大外表面を有し、前記最大外表面を前記送風ファンによる空気の通風路に面対向させて配設することとすれば、送風ファンにより送風されてきた空気とコイルとの接触面積を可及的拡大させて空気と冷媒との間の熱交換効率を向上でき、したがって冷却空気の生成効率を向上させることができる効果がある。
【0115】
また、本発明の空調機において、前記空調機本体は、一定間隔で複数並設され、各空調機本体の前記コイルユニットはそれぞれ、前記供給ヘッダを介して前記流入管から分岐して連通接続すると共に、前記排出ヘッダを介して前記流出管から分岐して連通接続することとすれば、冷却装置で冷却された冷媒を各空調機本体へ個々独立して均等に分配することができるため冷媒が有する吸熱エネルギーを保持しつつ、各空調機本体で冷却空気を安定して生成することができる効果がある。
【0116】
また、本発明に係る空調管理システムによれば、情報通信データを管理するデータセンターにおいて、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の空調機を備えた空調管理システムであって、前記データセンターは、最大熱負荷が定められた空間としてのサーバ室と、複数のサーバが収められ、前記サーバ室内で立設した複数のラックと、を有し、前記空調機は、前記送風ファンによる空気の通風方向を前記ラック方向に向けて前記サーバ室内に配置したため、略密閉されたサーバ室内を全体的に冷却空気で充満させつつ、ラックに収められた複数のサーバを空調機からの冷却空気に効果的に接触させて冷却することができる。
【0117】
すなわち、本発明ではコイルに不具合が生じた場合であっても同コイルに流れる冷媒を一定流量で流通させつつ冷却空気を安定して連続生成する冗長機能を備え、省スペースで設置できると共に、経済性と修理作業等のメンテナンス性を良好とするコイルユニット、同コイルユニットを備えた空調機、及び同空調機による空調管理システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0118】
A コイルユニット
B 空調機
C 空調管理システム
1 コイルユニットケース
2 コイル
3a~3c コイル要素
4 分岐供給管
5 供給ヘッダ