(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136355
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】排気システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20230922BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20230922BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230922BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20230922BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F01N3/08 C
F01N3/08 A
F01N3/18 F
F01N3/24 E
F01N3/24 A
B01D53/92 280
B01D53/92 ZAB
B01D53/92 352
B01D53/92 300
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041935
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松山 翔
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】間所 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】島村 遼一
(72)【発明者】
【氏名】玉木 竜太郎
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB03
3G091AB10
3G091AB14
3G091BA03
3G091BA15
3G091CA12
3G091CA13
3G091EA05
3G091EA17
4D002AA40
4D002AC10
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4D002CA07
4D002CA13
4D002CA20
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4D148AA06
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4D148CA01
4D148CD01
4D148CD10
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA13
4D148DA20
(57)【要約】
【課題】エンジン始動直後の炭化水素の排出を抑制できる排気システムを提供する。
【解決手段】
排気システム1は、エンジン101と接続される触媒コンバーター2と、触媒コンバーター2の下流側に接続される排気管3であって、途中で第1排気管31と第2排気管32とに分岐する排気管3と、第1排気管3の途中に介在されるプラズマリアクター5と、第1排気管31の途中に介在され、かつ、触媒コンバーター2とプラズマリアクター5との間に配置され、排気ガス中の炭化水素を吸着可能な吸着部材4と、第1排気管31を通過する排気ガスの量と、第2排気管32を通過する排気ガスの量とのバランスを調節するためのバルブ6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと接続される触媒コンバーターと、
前記触媒コンバーターの下流側に接続される排気管であって、途中で第1排気管と第2排気管とに分岐する排気管と、
前記第1排気管の途中に介在されるプラズマリアクターと、
前記第1排気管の途中に介在され、かつ、前記触媒コンバーターと前記プラズマリアクターとの間に配置され、排気ガス中の炭化水素を吸着可能な吸着部材と、
前記第1排気管を通過する排気ガスの量と、前記第2排気管を通過する排気ガスの量とのバランスを調節するためのバルブと
を備える、排気システム。
【請求項2】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記触媒コンバーター内の温度が、前記触媒コンバーター内の触媒が活性化する温度である第1温度未満である場合、排気ガスの全部が前記第1排気管を通過するように、前記バルブを制御する、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記触媒コンバーター内の温度が前記第1温度以上であり、前記吸着部材の温度が、前記吸着部材から炭化水素が脱離する温度である第2温度未満である場合、前記第1排気管を通過する排気ガスの量が所定量以下になるように、前記バルブを制御する、請求項2に記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)などの有害成分を分解する装置として、プラズマリアクターを備える排気浄化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この排気浄化装置では、排気浄化触媒の上流側に、主流路をバイパスするバイパス流路を備え、そのバイパス流路に、HC吸着触媒を内蔵するプラズマリアクターが配置されている。
【0004】
そして、この排気浄化装置では、排気浄化触媒の活性が十分ではないときに、排気をバイパス流路に流して、炭化水素をHC吸着触媒で吸着するとともに、プラズマリアクターで炭化水素の浄化を補助している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されるような排気浄化装置では、排気をバイパス流路に流した場合、排気浄化触媒よりも上流側にHC吸着触媒が配置されているので、排気浄化触媒の温度が低い状態で、HC吸着触媒の温度が上がってしまう可能性がある。
【0007】
そのため、排気浄化触媒の活性が十分ではない状態で、HC吸着触媒の温度が上がって、HC吸着触媒に吸着した炭化水素が脱離してしまう可能性がある。
【0008】
その場合、排気中の炭化水素と、HC吸着触媒から脱離した炭化水素とをプラズマリアクターだけで処理することとなり、炭化水素の排出を抑制することが困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、エンジン始動直後の炭化水素の排出を抑制できる排気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、エンジンと接続される触媒コンバーターと、前記触媒コンバーターの下流側に接続される排気管であって、途中で第1排気管と第2排気管とに分岐する排気管と、前記第1排気管の途中に介在されるプラズマリアクターと、前記第1排気管の途中に介在され、かつ、前記触媒コンバーターと前記プラズマリアクターとの間に配置され、排気ガス中の炭化水素を吸着可能な吸着部材と、前記第1排気管を通過する排気ガスの量と、前記第2排気管を通過する排気ガスの量とのバランスを調節するためのバルブとを備える、排気システムを含む。
【0011】
このような構成によれば、触媒コンバーター内の触媒が活性化するまでの間、触媒コンバーターを通過した排気ガスを第1排気管に通して、吸着部材およびプラズマリアクターによって、排気ガス中の炭化水素を処理できる。
【0012】
このとき、エンジンからの排気ガスは、触媒コンバーター、吸着部材、プラズマリアクターの順に通過する。
【0013】
そのため、触媒コンバーターの温度を、吸着部材よりも早く上昇させることができる。その結果、吸着部材に吸着された炭化水素が吸着部材から脱離する前に、触媒コンバーター内の触媒を活性化できる。
【0014】
そして、触媒コンバーター内の触媒が活性化した後は、排気ガス中の炭化水素を触媒コンバーターで処理しつつ、吸着部材から脱離した炭化水素をプラズマリアクターで処理できる。
【0015】
その結果、エンジン始動直後の炭化水素の排出量を抑制できる。
【0016】
本発明[2]は、制御装置をさらに備え、前記制御装置が、前記触媒コンバーター内の温度が、前記触媒コンバーター内の触媒が活性化する温度である第1温度未満である場合、排気ガスの全部が前記第1排気管を通過するように、前記バルブを制御する、上記[1]の排気システム。
【0017】
このような構成によれば、触媒コンバーター内の触媒が活性化するまで、吸着部材とプラズマリアクターとによって、炭化水素を処理できる。
【0018】
そのため、触媒コンバーター内の触媒が活性化するまで、炭化水素の排出を抑制できる。
【0019】
本発明[3]は、前記制御装置が、前記触媒コンバーター内の温度が前記第1温度以上であり、前記吸着部材の温度が、前記吸着部材から炭化水素が脱離する温度である第2温度未満である場合、前記第1排気管を通過する排気ガスの量が所定量以下になるように、前記バルブを制御する、上記[2]の排気システムを含む。
【0020】
このような構成によれば、触媒コンバーター内の温度が第1温度以上になることにより、触媒コンバーター内の活性化した触媒によって、排気ガス中の炭化水素を分解できる。
【0021】
そこで、バルブを制御して、触媒コンバーターを通過した排気ガスのうち、所定量以下を第1排気管に流し、所定量を超えた分を、第2排気管に流す。
【0022】
これにより、吸着部材の温度を上昇させつつ、第2排気管を使用して、排気ガスを効率よく車外に排出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の排気システムによれば、エンジン始動直後の炭化水素の排出量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の排気システムの一実施形態を備える車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す排気システムの制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.排気システムの構成
図1に示すように、排気システム1は、例えば、車両100に搭載される。
【0026】
車両100は、エンジン101と、バッテリー102を含む電気システムと、エンジン101に吸気するための図示しない吸気システムと、エンジン101に燃料を供給するための図示しない燃料噴射システムと、エンジン101から排気するための排気システム1とを備える。
【0027】
排気システム1は、触媒コンバーター2と、排気管3と、吸着部材4と、プラズマリアクター5と、バルブ6と、電源装置7と、制御装置8と、第1温度センサ9と、第2温度センサ10と、エアフローメーター11とを備える。
【0028】
(1)触媒コンバーター
触媒コンバーター2は、エンジン101と接続される。具体的には、触媒コンバーター2は、触媒の一例としての三元触媒を内部に有する三元触媒コンバーターである。触媒コンバーター2は、内部の触媒により、排気ガスに含まれる有害成分(炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO))を分解する。
【0029】
(2)排気管
排気管3は、触媒コンバーター2と接続される。排気管3は、排気ガスが流れる方向において、触媒コンバーター2の下流側に接続される。エンジン101から排出され、触媒コンバーター2を通過した排気ガスは、排気管3を通過して車外に排出される。排気管3は、途中で第1排気管31と第2排気管32とに分岐する。言い換えると、排気管3は、第1排気管31と第2排気管32とを有する。
【0030】
第1排気管31は、排気ガスを吸着部材4およびプラズマリアクター5に導くための配管である。第1排気管31の途中には、吸着部材4とプラズマリアクター5とが介在される。
【0031】
第2排気管32は、吸着部材4およびプラズマリアクター5を迂回して排気ガスを排出するための配管である。第2排気管32は、排気ガスが流れる方向において、上流端32Aと、下流端32Bとを有する。上流端32Aは、吸着部材4と触媒コンバーター2との間において、第1排気管31と接続される。下流端32Bは、プラズマリアクター5に対して触媒コンバーター2の反対側において、第1排気管31と接続される。排気ガスが第2排気管32内を通過する場合の圧力損失は、排気ガスが第1排気管31内を通過する場合の圧力損失よりも小さい。好ましくは、第2排気管32の途中には、介在される部材が無い。第2排気管32は、好ましくは、第1排気管31よりも下方に配置される。第2排気管32が第1排気管31よりも下方に配置されることにより、エンジン101から排出される水等から第1排気管31内の吸着部材4およびプラズマリアクター5を保護することができる。
【0032】
(3)吸着部材
吸着部材4は、第1排気管31の途中に介在される。吸着部材4は、排気ガスが流れる方向において、触媒コンバーター2よりも下流に配置される。吸着部材4は、排気ガスが流れる方向において、触媒コンバーター2とプラズマリアクター5との間に配置される。吸着部材4は、排気ガス中の炭化水素を吸着可能である。
【0033】
詳しくは、吸着部材4は、円筒形状を有する。吸着部材4は、第1排気管31が延びる方向に延びる。吸着部材4は、内部に、担体と吸着層とを有する。担体は、吸着部材4が延びる方向に延びる。担体は、吸着層を担持する。担体は、網目状またはハニカム状であり、排気ガスが通過する複数の穴を有する。吸着層は、担体の穴の内面を覆う。吸着層は、例えば、ゼオライトなどから作られる。排気ガスが担体の穴内を通過するときに、吸着層は、排気ガス中の炭化水素を吸着する。
【0034】
(4)プラズマリアクター
プラズマリアクター5は、第1排気管31の途中に介在される。プラズマリアクター5は、排気ガスが流れる方向において、吸着部材4よりも下流に配置される。プラズマリアクター5は、吸着部材4を通過した排気ガスに含まれる有害成分を分解する。プラズマリアクター5は、誘電体バリア放電型のプラズマリアクターである。
【0035】
詳しくは、プラズマリアクター5は、複数の電極パネル51を有する。複数の電極パネル51は、第1排気管31が延びる方向と直交する方向において、互いに間隔を隔てて並ぶ。各電極パネル51は、第1排気管31が延びる方向に延びる。各電極パネル51は、平板形状を有する。排気ガスは、各電極パネル51の間を通過する。
【0036】
各電極パネル51は、導体層と、導体層を覆う誘電体層とを有する。導体層は、例えば、タングステンなどの金属(導体)から作られる。誘電体層は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックス(誘電体)から作られる。
【0037】
各電極パネル51に電力が供給されると、各電極パネル51の間で放電(誘電体バリア放電)が生じる。これにより、各電極パネル51の間の気体が、プラズマ状態となる。すなわち、プラズマリアクター5内にプラズマが発生する。すると、排気ガスに含まれる有害成分は、プラズマによって分解される。プラズマリアクター5を通過した排気ガスは、排気管3を通過して、車外に排出される。
【0038】
(5)バルブ
バルブ6は、第1排気管31を通過する排気ガスの量と、第2排気管32を通過する排気ガスの量とのバランスを調節する。バルブ6は、第2排気管32の下流端32Bと第1排気管31との接続部分に配置される。なお、バルブ6の位置は、限定されない。例えば、バルブ6は、第2排気管32の上流端32Aと第1排気管31との接続部分に配置されてもよい。また、バルブ6は、第1排気管31と第2排気管32とに、それぞれ設けられてもよい。バルブ6は、電磁バルブである。
【0039】
以下の説明において、バルブ6の開度に言及する場合、第1排気管31側の開度を基準とする。例えば、バルブ6の開度が100%である場合、排気ガスの全部が第1排気管31を通過する。バルブ6の開度が100%である場合、排気ガスは、第2排気管32を通過しない。バルブ6の開度が0%である場合、排気ガスの全部が第2排気管32を通過する。バルブ6の開度が0%である場合、排気ガスは、第1排気管31を通過しない。
【0040】
(4)電源装置
電源装置7は、バッテリー102からの電力をプラズマリアクター5の各電極パネル51に供給可能である。電源装置7は、バッテリー102と電気的に接続される。また、電源装置7は、各電極パネル51と電気的に接続される。電源装置7は、オン状態またはオフ状態に切り替え可能である。電源装置7がオン状態である場合、電源装置7は、電極パネル51に電力を供給可能である。また、電源装置7がオフ状態である場合、電源装置7は、電極パネル51に電力を供給しない。
【0041】
(5)制御装置
制御装置8は、車両100における電気的な制御を実行するECU(Electronic Control Unit)であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを備える。制御装置8は、バッテリー102と電気的に接続される。制御装置8は、車両100のイグニッションスイッチがオンされたときに、バッテリー102から電力が供給されることにより、起動する。
【0042】
制御装置8は、電源装置7に電気的に接続される。制御装置8は、電源装置7に所定の電気信号を送ることにより、電源装置7をオン状態またはオフ状態に切り替える。すなわち、制御装置8は、電源装置7を制御する。言い換えると、制御装置8は、電源装置7を介して、プラズマリアクター5を制御する。
【0043】
また、制御装置8は、バルブ6に電気的に接続される。制御装置8は、バルブ6の開度を制御する。
【0044】
また、制御装置8は、図示しないアクセルペダルと電気的に接続される。制御装置8は、アクセルペダルの位置に応じた電気信号(アクセル指示値)を受信可能である。また、制御装置8は、第1温度センサ9、第2温度センサ10、および、エアフローメーター11と電気的に接続される。
【0045】
(6)センサ
第1温度センサ9は、触媒コンバーター2に取り付けられる。第1温度センサ9は、触媒コンバーター2内の温度T(S/C)を測定する。
【0046】
第2温度センサ10は、第1排気管31に取り付けられる。第2温度センサ10は、吸着部材4の温度T(U/F)を測定する。
【0047】
エアフローメーター11は、第1排気管31に取り付けられる。エアフローメーター11は、第1排気管31を通過する排気ガスの流量を測定する。
【0048】
2.排気システムの制御
次に、排気システム1の制御について説明する。
【0049】
車両100のイグニッションスイッチがオンされると、制御装置8が起動する。さらに、セルモーターが回ると、エンジン101が始動する。エンジン101が始動すると、エンジン101からの排気ガスが、触媒コンバーター2に流入する。
【0050】
しかし、エンジン101が始動した直後では、触媒コンバーター2内の触媒は、活性化しておらず、有害成分を分解する能力が低い。そのため、排気ガス中の有害成分が、触媒コンバーター2で分解されずに、排気管3に流入する。
【0051】
エンジン101が始動した直後において、触媒コンバーター2を通過した排気ガス中の炭化水素の割合は、例えば、1体積%以上である。
【0052】
(1)エンジン始動直後のバルブ制御
図2に示すように、エンジン101が始動すると、制御装置8は、電源装置7をオフ状態からオン状態に切り替えて(プラズマリアクター5:オン状態)、バルブ6の開度を100%にする(S1)。
【0053】
すると、排気ガスの全部は、第1排気管31を通過する。排気ガス中の炭化水素は、吸着部材4に吸着する。また、吸着部材4を通過した排気ガス中の炭化水素は、プラズマリアクター5によって分解される。そのため、触媒コンバーター2内の触媒が活性化していない状態で、炭化水素の排出を抑制できる。
【0054】
吸着部材4およびプラズマリアクター5を通過した排気ガス中の炭化水素の割合は、例えば、0.5体積%以下である。触媒コンバーター2が活性化していないエンジン始動直後でも、吸着部材4およびプラズマリアクター5によって、排気ガス中の炭化水素の割合を半減できる。
【0055】
次に、制御装置8は、触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1未満である場合(S2:NO)、バルブ6の開度を100%に維持する(S1)。つまり、制御装置8は、触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1未満である場合(S2:NO)、排気ガスの全部が第1排気管31を通過するように、バルブ6を制御する。
【0056】
第1温度T1は、触媒コンバーター2内の触媒が活性化する温度である。第1温度T1は、例えば、300℃である。
【0057】
触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1未満である場合に排気ガスの全部を第1排気管31に流入させることにより、触媒コンバーター2内の触媒が活性化するまで、吸着部材4とプラズマリアクター5とによって、炭化水素を処理できる。これにより、触媒コンバーター2内の触媒が活性化するまで、炭化水素の排出を抑制できる。
【0058】
(2)第1バルブ制御
次に、制御装置8は、触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1以上になった場合(S2:YES)、第1バルブ制御を実行する(S3)。
【0059】
第1バルブ制御(S3)において、制御装置8は、第1排気管31に流入する排気ガスの量が第1所定量以下になるように、バルブ6を制御する。言い換えると、第1バルブ制御(S3)において、制御装置8は、第1排気管31に流入する排気ガスの量が第1所定量以下になるように、バルブ6の開度を調節する。なお、排気ガスのうち、第1所定量を超えた分は、第2排気管32に流入する。
【0060】
第1所定量は、例えば、5g/秒である。
【0061】
制御装置8は、吸着部材4の温度T(U/F)が第2温度T2未満である場合(S4:NO)、第1バルブ制御を続行する(S3)。つまり、制御装置8は、触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1以上であり(S2:YES)、吸着部材4の温度T(U/F)が第2温度T2未満である場合(S4:NO)、第1排気管31を通過する排気ガスの量が第1所定量以下になるように、バルブ6を制御する(S3)。
【0062】
第2温度は、吸着部材4から炭化水素が脱離する温度である。第2温度T2は、例えば、300℃である。
【0063】
触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1以上になると、触媒コンバーター2内の触媒が活性化する。そのため、触媒コンバーター2内の触媒によって、排気ガス中の炭化水素を分解できる。
【0064】
そのため、触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1以上である場合、触媒コンバーター2を通過した排気ガスは、炭化水素をほとんど含有しない。触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1以上である場合、触媒コンバーター2を通過した排気ガス中の炭化水素の割合は、例えば、0.01体積%以下である。
【0065】
そこで、第1バルブ制御(S3)では、バルブ6の開度を調節して、触媒コンバーター2を通過した排気ガスのうち、第1所定量以下を第1排気管31に流し、第1所定量を超えた分を、第2排気管32に流す。
【0066】
これにより、吸着部材4の温度を上昇させつつ、第1排気管31よりも圧力損失が低い第2排気管32を使用して、排気ガスを効率よく車外に排出できる。
【0067】
(3)第2バルブ制御
次に、制御装置8は、吸着部材4の温度T(U/F)が第2温度T2以上になった場合(S4:YES)、第2バルブ制御を実行する(S5)。
【0068】
吸着部材4の温度T(U/F)が第2温度T2以上である場合、吸着部材4に吸着された炭化水素が、吸着部材4から脱離する。吸着部材4から脱離した炭化水素は、プラズマリアクター5によって分解される。
【0069】
第2バルブ制御(S5)において、制御装置8は、第1排気管31に流入する排気ガスの量が第2所定量以下になるように、バルブ6を制御する。言い換えると、第2バルブ制御(S5)において、制御装置8は、第1排気管31に流入する排気ガスの量が第2所定量以下になるように、バルブ6の開度を調節する。なお、排気ガスのうち、第2所定量を超えた分は、第2排気管32に流入する。
【0070】
第2所定量は、第1所定量よりも多い。第2所定量は、吸着部材4から脱離した炭化水素をプラズマリアクター5によって分解可能な範囲で、設定される。第2所定量は、例えば、20g/秒である。
【0071】
吸着部材4の温度T(U/F)が第2温度T2以上になった状態で、第1排気管31に流入する排気ガスの量を増加させることにより、吸着部材4に吸着された炭化水素を効率よく脱離させることができる。
【0072】
制御装置8は、第2バルブ制御を開始してから所定時間が経過するまで(S6:NO)、第2バルブ制御を続行する(S5)。
【0073】
所定時間は、吸着部材4に吸着された炭化水素をほぼ全て脱離できるように、設定される。所定時間は、例えば、10分である。
【0074】
(4)バルブ制御の終了
制御装置8は、第2バルブ制御を開始してから所定時間が経過した場合(S6:YES)、バルブ開度を0%にして(S7)、バルブ制御を終了する。また、制御装置8は、電源装置7をオン状態からオフ状態に切り替える(プラズマリアクター5:オフ状態)。
【0075】
バルブ制御が終了すると、触媒コンバーター2を通過した排気ガスの全部は、第2排気管32を通過して、車外に排出される。
【0076】
3.作用効果
(1)
図1に示すように、排気システム1によれば、触媒コンバーター2内の触媒が活性化するまでの間、触媒コンバーター2を通過した排気ガスを第1排気管31に通して、吸着部材4およびプラズマリアクター5によって、排気ガス中の炭化水素を処理できる。
【0077】
このとき、エンジン101からの排気ガスは、触媒コンバーター2、吸着部材4、プラズマリアクター5の順に通過する。
【0078】
そのため、触媒コンバーター2の温度を、吸着部材4よりも早く上昇させることができる。その結果、吸着部材4に吸着された炭化水素が吸着部材4から脱離する前に、触媒コンバーター2内の触媒を活性化できる。
【0079】
そして、触媒コンバーター2内の触媒が活性化した後は、排気ガス中の炭化水素を触媒コンバーター2で処理しつつ、吸着部材4から脱離した炭化水素をプラズマリアクター5で処理できる。
【0080】
その結果、エンジン始動直後の炭化水素の排出量を抑制できる。
【0081】
(2)
図2に示すように、排気システム1によれば、制御装置8は、触媒コンバーター2内の温度T
(S/C)が第1温度T1未満である場合(S2:NO)、排気ガスの全部が第1排気管31を通過するように、バルブ6を制御する。第1温度T1は、触媒コンバーター2内の触媒が活性化する温度である。
【0082】
これにより、触媒コンバーター2内の触媒が活性化するまで、吸着部材4とプラズマリアクター5とによって、炭化水素を処理できる。
【0083】
その結果、触媒コンバーター2内の触媒が活性化するまで、炭化水素の排出を抑制できる。
【0084】
(3)
図2に示すように、排気システム1によれば、制御装置8は、触媒コンバーター2内の温度T
(S/C)が第1温度T1以上であり(S2:YES)、吸着部材4の温度T
(U/F)が第2温度T2未満である場合(S4:NO)、第1排気管31を通過する排気ガスの量が第1所定量以下になるように、バルブ6を制御する(S3)。第2温度T2は、吸着部材4から炭化水素が脱離する温度である。
【0085】
触媒コンバーター2内の温度T(S/C)が第1温度T1以上になると、触媒コンバーター2内の触媒が活性化する。そのため、触媒コンバーター2内の触媒によって、排気ガス中の炭化水素を分解できる。
【0086】
そこで、バルブ6を制御して、触媒コンバーター2を通過した排気ガスのうち、第1所定量以下を第1排気管31に流し、第1所定量を超えた分を、第2排気管32に流す。
【0087】
これにより、吸着部材4の温度を上昇させつつ、第1排気管31よりも圧力損失が低い第2排気管32を使用して、排気ガスを効率よく車外に排出できる。
【0088】
4.変形例
(1)第1バルブ制御(S3)を開始するか否かの判断(S2)において、制御装置8は、排気ガスの流量の積算値、および、空燃比を用いてもよい。
【0089】
(2)第1バルブ制御(S3)において、エンジン101から排出される排気ガスの量に基づいて、バルブ6の開度を制御してもよい。エンジン101から排出される排気ガスの量は、例えば、吸入空気量から計算してもよい。この場合、エンジン101から排出される排気ガスの量が第1所定量以下である場合、バルブ開度を100%に制御し、エンジン101から排出される排気ガスの量が第1所定量を超える場合、バルブ開度を0%に制御してもよい。
【0090】
(3)第2バルブ制御(S5)を開始するか否かの判断(S4)において、制御装置8は、排気ガスの流量の積算値、および、空燃比を用いてもよい。
【0091】
(4)バルブ制御を終了するか否かの判断(S6)において、制御装置8は、吸着部材4の温度、および、エンジン101の運転条件を用いてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 排気システム
2 触媒コンバーター
3 排気管
4 吸着部材
5 プラズマリアクター
6 バルブ
8 制御装置
31 第1排気管
32 第2排気管
101 エンジン