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特開2023-136364通球試験体及び通球試験体の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136364
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】通球試験体及び通球試験体の使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230922BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
E03C1/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041948
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】517307692
【氏名又は名称】山本設備機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517307706
【氏名又は名称】三光設備工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517307717
【氏名又は名称】中山建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517307810
【氏名又は名称】中村工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517307728
【氏名又は名称】イグロ電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517307739
【氏名又は名称】宮本電気工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】別納 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】中邨 浩司
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝義
(72)【発明者】
【氏名】松田 欣也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 知見
(72)【発明者】
【氏名】浜本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】波頭 賢昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
【テーマコード(参考)】
2D061
2G024
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AB10
2G024AD01
2G024CA30
2G024FA01
2G024FA06
2G024FA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】識別媒体の落下を予防し、かつ水損を回避しやすい排水管の通球試験体を提供することにある。
【解決手段】試験体Tは、球状の浮力体T1と、浮力体T1の全周を覆う球状かつ中空状の第1容器T2とを備え、浮力体T1は、全体の重心を低くするように取り付けられた錘T11と、上記重心より高く位置するように取り付けられたシート状の識別媒体T12とを有し、第1容器T2は、内部に浸水した水を抜く脱水孔T21を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管の通球試験体であって、
球状の浮力体と、浮力体を覆う球状かつ中空状の第1容器とを備え、
浮力体は、全体の重心を低くするように取り付けられた錘と、前記重心より高く位置するように取り付けられた識別媒体とを有し、
第1容器は、内部に浸水した水を抜く脱水孔を有する
ことを特徴とする通球試験体。
【請求項2】
第1容器を覆う球状かつ中空状の第2容器をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の通球試験体。
【請求項3】
請求項2に記載の排水管の通球試験体の使用方法であって、
排水管は、排水立て管と、居室内の各排水器具に接続される個別排水管と、最下階の居室用の単独排水系統とを含み、
個別排水管及び単独排水系統は、排水立て管より細い配管で構成され、
排水立て管を主とする通球試験に使用し、
個別排水管又は単独排水系統を主とする通球試験に使用する
ことを含む通球試験体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集合住宅の排水管における通水状況の適否を確認する通球試験用の試験体及びこの試験体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅等の建築物では、居室等の空間毎に生活用水を排水する排水管が設けられていた。排水管の上流側は、空間の場所・種類・用途や空間毎のレイアウトに応じて配管され、複数の経路(系統)を有していた。そのため、排水管の系統毎に試験体を流し、入口から出口までの配管状況を検査していた。具体的には、入口から流した試験体が出口に到着しなかったり、到着する時間が遅過ぎたりした系統の有無を確認していた。
【0003】
例えば、特許文献1で開示されている試験体は、ゴム製のボールといった浮力体と、浮力体の表面に設けられたRFタグといった識別媒体と、識別媒体より重く浮力体の表面又は裏面に設けられた錘とを備えている。これによれば、試験体が水面に浮いた状態で、錘が識別媒体を水面より上にするように働くため、識別媒体が水没しにくく、検出装置により探知されやすい効果がある。
【0004】
また、特許文献2では、密閉された中空状の容器と、容器内の上部に設けられたRFタグと、容器内の下部に設けられた錘とを備えている。容器は半割可能に形成されており、一方にRFタグ、他方に錘を装着し、それぞれの周縁部分を接着して一体化することで、密閉空間が形成される。これによれば、特許文献1の試験体と同様の効果のみならず、密閉空間内を水密に保つ効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-162391号公報
【特許文献2】特開2021-191653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献2の密閉構造を特許文献1の試験体に採用することは、技術的に困難と言えず、いわゆる当業者であれば容易に想到し得る。しかしながら、試験体が通球試験中に排管内を落下したり転がったりすることで、試験体に衝撃が加わり、半割れした一方と他方との接着面に亀裂が生じれば、そこから水が浸入して密閉空間が滞水するため、特許文献2の密閉構造は識別媒体の破損を誘発するおそれがある。
【0007】
識別媒体の脱落を予防するには、外側から容器で覆うのが好ましいが、識別媒体の水没を回避するには、容器内が滞水しないようにすることが必要である。そのため発明者等は、試験中に衝撃を受けやすい容器を密閉構造にするより、浸水しても脱水しやすい構造にするほうが、内部が滞水せずに識別媒体が水損しにくいため、探知しやすいことに辿り着いた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、識別媒体の脱落を予防し、かつ水損を回避しやすい排水管の通球試験体及び通球試験体の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、排水管の通球試験体であって、球状の浮力体と、浮力体を覆う球状かつ中空状の第1容器とを備え、浮力体は、全体の重心を低くするように取り付けられた錘と、前記重心より高く位置するように取り付けられた識別媒体とを有し、第1容器は、内部に浸水した水を抜く脱水孔を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記通球試験体は、第1容器を覆う球状かつ中空状の第2容器をさらに備えていることが望ましい。
【0011】
また、本発明は、排水管の通球試験体の使用方法であって、排水管は、排水立て管と、排水立て管より細い配管で構成された最下階の居室用の単独排水系統とを含み、排水立て管に関する通球試験に使用し、単独排水系統の通球試験に使用することを含む。
【0012】
また、本発明は、コンピュータによって実行される排水管の通球試験システムに用いられる通球試験体であって、上記通球試験システムは、上記通球試験体を識別する識別情報を読み取る認識部と、上記識別情報が認識された時点における認識情報を生成する生成部と、排水管の属性情報と上記識別情報とを紐付けて記憶する記憶部と、上記認識部に認識された識別情報と上記記憶部に記憶された識別情報とが同一か否かを判定する判定部と、上記判定部に同一と判定された場合、上記生成部に生成された認識情報を上記属性情報に付与する付与部とを備えている。
【0013】
上記認識部は、上記通球試験体の移動前における上記識別情報と、上記通球試験体の移動後における上記識別情報とを認識し、上記生成部は、上記通球試験体の移動前における上記認識情報と、上記通球試験体の移動後における上記識別情報とを生成し、上記付与部は、上記通球試験体の移動前における上記認識情報と、上記通球試験体の移動後における上記識別情報とを上記属性情報に付与することが望ましい。
【0014】
上記付与部に付与された上記認識情報を含む上記属性情報を表示する表示部を備え、上記認識部は、上記通球試験体の移動前における上記識別情報を認識し、上記通球試験体の移動後における上記識別情報を認識しない場合、上記表示部は、上記通球試験体の移動前における上記認識情報を含み上記通球試験体の移動後における上記認識情報を含まない上記属性情報を表示することが望ましい。
【0015】
上記通球試験システムは、端末装置と、上記端末装置と相互通信を行うサーバ装置とを備え、上記端末装置は、上記認識部と、上記生成部と、上記表示部と、を備え、上記サーバ措置は、上記記憶部と、上記判定部と、上記付与部と、上記表示部と、を備えていることが望ましい。
【0016】
上記記認識情報は、上記識別情報が認識された時刻を含むことが望ましい。
【0017】
また、本発明は、コンピュータによって実行される排水管の通球試験方法に用いられる通球試験体であって、上記通球試験方法は、上記通球試験体を識別する識別情報を認識し、上記識別情報が認識された時点における認識情報を生成し、認識された上記識別情報と、排水管の属性情報と紐付けて記憶された上記識別情報とが同一か否かを判定し、同一と判定された場合、生成された上記認識情報を上記属性情報に付与することを特徴とする。
【0018】
上記通球試験体の移動前における上記識別情報と、上記通球試験体の移動後における上記識別情報とを認識し、上記試験体の移動前における上記認識情報と、上記通球試験体の移動後における上記識別情報とを生成し、上記通球試験体の移動前における上記認識情報と、上記通球試験体の移動後における上記識別情報とを上記属性情報に付与することが望ましい。
【0019】
上記通球試験体の移動前における上記識別情報を認識し、上記通球試験体の移動後における上記識別情報を認識せず、上記通球試験体の移動前における上記認識情報を含み上記通球試験体の移動後における上記識別情報を含まない上記属性情報を表示することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の通球試験体によれば、識別媒体の脱落を予防し、かつ水損を回避しやすいため、上記通水試験システム及び上記通水試験方法において極めて有益となる。すなわち、本発明の通球試験体を用いた上記通水試験システム及び上記通水試験方法によれば、排水管及び試験に関する情報を一括管理し、上記情報の利活用及び更新に手間がかからず、結果に基づく状況判断及び対応を行いやすい。すなわち、コンピュータにより上記通球試験体と一括管理している情報とを紐付け、上記通球試験体に関する最新情報に基づき上記情報を更新すれば、試験の結果を上記コンピュータの種類・機能・場所等に限定されずに把握でき、かつ上記結果に基づき迅速に対応できるため、少なくとも従来の試験と比べて相対的に高い費用対効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における通球試験体が用いられる排水管の通球試験システムの概念図である。
図2】上記通球試験体の概要図(a)(b)である。
図3】上記システムの構成図である。
図4】上記システムを構成する端末装置におけるアプリケーション画面の一例である。
図5】上記システムを構成する端末装置におけるアプリケーション画面の一例である。
図5F】上記アプリケーション画面の遷移に伴う動作のフローチャートの一例である。
図6】上記システムを構成する端末装置におけるアプリケーション画面の一例である。
図6F】上記アプリケーション画面の遷移に伴う動作のフローチャートの一例である。
図7】上記システムを構成する端末装置におけるアプリケーション画面の一例である。
図8】上記システムを構成するサーバ装置におけるアプリケーション画面の一例である。
図9】本発明の一実施形態における排水管の通球試験システムの別の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態における通球試験体(以下、単に「試験体」ともいう。)と、この試験体が用いられる排水管の通球試験体システムとについて説明する。これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの部位の引き出し線をかくれ線(破線)で示した部分もある。説明において、上、下、縦、横、垂直方向等の向きを示す用語は、基本的に通常の建築物を基準とし、これ以外を基準にする場合は適宜説明する。
【0023】
<本通球試験体の概要>
図1に示すように、試験体Tは、例えば、集合住宅の各居室に備わるトイレ・キッチン・バス・バルコニー等の系統における排水管の通水に異常がないかどうか確認するものであり、コンピュータである端末装置1と、端末装置1と相互通信を行うサーバ装置2とに対して、電子的な情報を提供するものである。端末装置1は、試験の開始前及び完了後に、試験体Tの識別情報を認識するだけでよく、サーバ装置2は、上記識別情報を含めて排水管の属性情報を管理しており、端末装置1及びサーバ装置2は、通球試験に関する情報を入力及び出力してもよい。
【0024】
排水管は、例えば、居室内の各排水器具に接続される個別排水管と、集合住宅の各階に配されて個別排水管と接続される排水横枝管、集合住宅の各階を縦断して排水横枝管と接続される排水立て管、排水立て管の下端と接続される排水横主管を含み、集合住宅の設計に基づき直線部分や屈曲部分で構成された経路を伴う配管で、居室を含む集合住宅内に入口、集合住宅外かつ所定の箇所に設けられた桝側に出口を有するものであればいずれでもよく、距離・管径・素材・形状等の仕様を限定せず、少なくとも排水立て管とは別系統である最下階の居室用の単独排水系統を含んでもよい。個別排水管及び単独排水系統は、排水立て管より細い配管で構成されている。
【0025】
すなわち、排水管の通球試験は、排水立て管単独の通球試験や排水立て管から排水横主管に渡る通球試験といった排水立て管を主とする通球試験、個別排水管単独の通球試験や個別排水管から排水横枝管及び排水立て管を介して排水横主管に渡る通球試験といった個別排水管を主とする通球試験、単独排水系統を主とする通球試験を含み、各通球試験に応じて同種類の試験体Tが使用されても、異種類の試験体Tが使用されてもよい。
【0026】
排水管の属性情報は、例えば、集合住宅等の物件名・上記物件における棟名・居室毎の部屋番号・排水管の系統名・試験体Tの識別情報・試験開始時刻・試験終了時刻・試験所要時間・試験状況であり、排水管の仕様等の登録済みマスターデータと連携してもよく、データベース化されていてもよい。
【0027】
図2(a)に示すように、試験体Tは、球状の浮力体T1と、浮力体T1の全周を覆う球状かつ中空状の第1容器T2とを備え、浮力体T1は、全体の重心を低くするように取り付けられた錘T11と、上記重心より高く位置するように取り付けられたシート状の識別媒体T12とを有し、第1容器T2は、内部に浸水した水を抜く脱水孔T21を有する。
【0028】
この構成によれば、排水管内に水が流れていたり水溜まりがあったりしても、錘T11が重心となって識別媒体T12が常に水面より上になるばかりでなく、第1容器T2内に水が浸水しても脱水孔T21から抜けて識別媒体T12が水浸しになりにくく水損を回避しやすく、また、錘T11や識別媒体T12が第1容器T2に保護されて脱落しにくいため、端末装置1やその他の検出装置が発する電波に識別媒体T12が常時反応できるため、排水管内で滞留して所在不明になっても探知しやすい効果を期待できる。
【0029】
浮力体T1は、例えば発泡スチロール製の球体であり、排水管の管径より小さく、水面に浮き、水流と共に流れやすければ、サイズ・形状・重量・素材を限定しないが、軟性で錘T11や識別媒体T12の留め具を埋め込みやすいものが好ましい。
【0030】
錘T11は、浮力体T1及び識別媒体T12より重く、識別媒体T12の重さが加わった浮力体T1の浮力を越えない重さであればよく、鉛玉のような金属製や石製や粘土製でもよく、浮力体T1に対する位置・大きさ・範囲を限定しないが、全体の重心が浮力体T1の末端になる位置が好ましい。
【0031】
識別媒体T12は、例えばRFIDのRFタグ・QRコード(登録商標)・バーコードであり、サイズ・形状・重量・素材を限定しないが、電子情報の上書き等により再利用可能な媒体であることが好ましい。識別媒体T12は、錘T11により低い位置になった浮力体T1の重心より高い位置にあればよく、位置・大きさ・範囲を限定しないが、例えば浮力体T1を上下二等分した上側半分のみにあっても、上側半分から下側半分の一部にまで渡っていても、上側半分から下側半分の錘T11の両脇付近にまで渡っていてもよい。
【0032】
第1容器T2は、例えばプラスチック製のボールであり、排水管の管径より小さく、水面に浮き、水流と共に流れやすく、半割れした半球体の切断面同士を接着して球状かつ中空状に形成されたものでもよく、有色でも無色透明でもよく、サイズ・形状・重量・素材を限定しないが、排水管内を転がりやすいよう表面に突起物を有さないものが好ましい。
【0033】
脱水孔T21は、第1容器T2の表面に形成された孔であり、1つでも2つ以上でもよく、位置・大きさ・範囲を限定しないが、内部に浸水した水を抜きやすいように少なくとも下部に形成されていると好ましい。脱水孔T21は、第1容器T2の成形と共に形成されても、第1容器T2の成形後に別途形成されてもよい。
【0034】
試験体Tの製造方法は、例えば浮力体T1の下側に該当する一端に錘T11を埋め込む工程と、上側に該当する他端に浮力体T1の表面を覆うように識別媒体T12を取り付ける工程と、これらの外側から半割れした一方と他方とで全周を覆うように第1容器T2を装着する工程とを含んでもよい。このように通球試験現場でも簡単に手作りできるため、特別な工程や器具も不要で製造コストを抑える効果も期待できる。
【0035】
試験体Tの識別情報は、試験体Tに備わる識別媒体T3の固有情報であり、非接触型のリーダー・スキャナー・ゲートで読み込んで認識したり、所定の入力欄に文字入力して認識したりしてもよい。識別媒体T3の固有情報は、例えば、はじめから識別媒体T3に備わるIDでも、登録済みマスターデータであり、かつ識別媒体毎に別途付与したシリアルナンバーでもよい。
【0036】
通球試験に関する情報とは、例えば、通球試験の年月日時や回数、通球試験の開始から完了までに生じた所定の情報の入力エラー、通球試験の結果の一覧及び詳細であり、端末装置1及びサーバ装置2が処理する通球試験の実行又は管理するための情報の全てを含んでもよい。
【0037】
図2(b)に示すように、試験体Tは、第1容器T2を覆う球状かつ中空状の第2容器T3をさらに備えている。第2容器T3は、例えば排水立て管の管径の2分の1以上の直径であるが、サイズを除いて第1容器T2の仕様と同等でもよく、脱水孔を有していなくてもよい。第1容器T2の直径が35~45mmであり、第2容器T3の直径が65~75mmである。第1容器T2は、第2容器T3内を移動自在である。
【0038】
この構成によれば、排水立て管のような太めの排水管の通球試験に試験体Tが小さ過ぎて不適切な場合、第2容器T3をケースにすることにより、排水立て管内の通球試験にも適用することができることから、排水管の管径の大小に応じて試験体を代える手間を省ける効果を期待できる。
【0039】
すなわち、試験体Tの使用方法は、排水立て管を主とする通球試験に使用しても、個別排水管又は単独排水系統を主とする通球試験に使用してもよく、各通球試験をスムーズに行いやすい効果を期待できる。
【0040】
<本通球試験システムを構成する基本的なハードウェア・ソフトウェア>
本通球試験システムは、1つ又は2つ以上のコンピュータで構成されたコンピュータシステムであって、例えば、OS(Operating System)・ミドルウェア・ファームウェア・アプリケーション等のソフトウェアやプログラムの実行を制御したり命令に基づいて演算したりするCPU(Central Processing Unit)を含むマイクロプロセッサ、上記ソフトウェア・プログラム・静止画像・動画像・音声・文字等の電子データを記憶する内部ストレージを含むROM(Read Only Memory)、マイクロプロセッサによる演算処理に伴い一時的に上記電子データを記憶するRAM(Random Access Memory)、加速度センサ・モーションセンサ・深度センサ・ジャイロセンサ・GPS・タッチセンサ・3次元センサ・RGBセンサ・赤外線センサ・レーザーセンサ・バッテリー監視センサ・温度/湿度センサ等のセンサ機器、RFチップ・ベースバンドチップ・その他通信モジュール等の通信機器、バッテリー等の電源機器、モーター等の稼働機器、キーボード・マウス・タッチパネル・マイク・カメラ・ボイスレコーダー・接触型又は非接触型のリーダー等の入力機器、液晶や有機EL製のディスプレイ・スピーカー等の出力機器等のハードウェアを適宜組み合わせて形成されてもよく、上記ハードウェアの各々はバスやUSB等の入出力インタフェースを介して相互に接続されてもよい。
【0041】
コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータ・サーバ・スマートフォン・タブレット・カメラやマイクを含む入力機器である。コンピュータが搭載するハードウェアの数やサイズは、用途やスペックに応じて適宜決定してもよい。上記入力機器や上記出力機器は、コンピュータに内蔵されたものでも外付けされるものでもよい。
【0042】
2つ以上のコンピュータの各々は、上記入出力インタフェース又は上記通信機器から通信ネットワークを介して相互に接続され、これ以外の方式で接続されてもよい。通信ネットワークは、例えば、インターネット・イントラネット・エキストラネット・LAN・CATV通信網・VPN・電話回線・移動体通信網・衛星通信網である。通信ネットワークを構成する伝送媒体は、IEEE1394・電力線搬送・電話線等の有線やIrDA、ブルートゥース(登録商標)・IEEE802.11(wifi等)・携帯電話網・衛星回線・地上波デジタル網等の無線でもよい。コンピュータの各々は、上記通信機器から上記通信ネットワークを介して上記電子データを相互に送受信してもよい。
【0043】
<本通球試験システムの構造とハードウェアとの関係>
図3に示すように、本通球試験システムは、端末装置1と、端末装置1と通信ネットワークNを介して相互通信を行うサーバ装置2とを備えている。端末装置1は、スマートフォン又はタブレットである。サーバ装置2は、少なくともデータベースサーバであり、Webサーバ・メールサーバ・DNSサーバ・FTPサーバとしての機能を兼ね備えていてもよい。
【0044】
端末装置1は、ソフトウェアの実行や電子データの入出力を含め通球試験に関する情報を取得するために制御及び演算を行う制御部11と、試験体の識別情報を認識する認識部12と、制御部11の制御及び演算に基づいて通球試験に関する情報を表示する表示部13と、ソフトウェアや電子データを含め通球試験に関する情報を記憶する記憶部14と、制御部11の制御及び演算のための指示を含め通球試験に関する情報を取得するための指示を伝達する操作部15と、制御部11の制御及び演算に基づいて通球試験に関する情報をサーバ装置2や他のコンピュータと通信し合う通信部16とを備え、図示しない入出力部を備えていてもよく、制御部11は、識別情報が認識された時点における認識情報を生成する生成部11aとしての機能を備えている。
【0045】
識別情報が認識された時点とは、例えば、認識部12が識別情報を読み取った時点や、認識部12が識別情報を読み取ったことをサーバ装置2に通信した時点である。認識情報とは、例えば、認識部12が識別情報を読み取った事実を示すフラグ、認識部12が識別情報を読み取った時刻、又は試験体の移動に伴う所要時間であり、識別情報が認識されたことを客観的に把握できる情報の全てを含む。認識部12が識別情報を読み取った時刻は、端末装置1に内蔵の時計機能に基づいて算定してもよく、ハッシュ値を伴いデジタル認証されたタイムスタンプでもよい。
【0046】
端末装置1の一例としては、制御部11としてマイクロプロセッサやRAMと、認識部12として非接触媒体型リーダーと、表示部13としてディスプレイと、記憶部14としてROMと、操作部15としてディスプレイに表示されるタッチパネルと、通信部16として所定の通信機器と、入出力部として入出力インタフェースと、で構成されている。
【0047】
サーバ装置2は、ソフトウェアの実行や電子データの入出力を含め通球試験に関する情報を取得するために制御及び演算を行う制御部21と、排水管の属性情報と試験体を識別する識別情報とを紐付けて記憶すると共に、ソフトウェアや電子データを含め通球試験に関する情報を記憶する記憶部22と、制御部21の制御及び演算に基づいて通球試験に関する情報を表示する表示部23と、制御部21の制御及び演算に基づいて通球試験に関する情報を端末装置1や他のコンピュータと通信し合う通信部24とを備え、図示しない操作部と入出力部とを備えていてもよく、制御部21は、端末装置1の認識部12に認識された識別情報と記憶部22に記憶された識別情報とが同一か否かを判定する判定部21aと、判定部21aに同一と判定された場合、端末装置1の生成部11aに生成された認識情報を記憶部22に記憶された排水管の属性情報に付与する付与部21bとしての機能を備えている。
【0048】
サーバ装置2の一例としては、制御部21としてマイクロプロセッサやRAMと、記憶部22としてROMと、表示部23としてディスプレイと、通信部24として所定の通信機器と、操作部としてキーボードと、入出力部として入出力インタフェースと、で構成されている。
【0049】
この構成によれば、RFタグ等の識別媒体から得られる試験体の識別情報とサーバ装置2の記憶部22で記憶している系統毎の排水管の属性情報とを紐付けているため、端末装置1に備わるRFIDリーダー等の認識部12で読み取った試験体の識別情報と上記属性情報と紐付く識別情報とが同一であるとサーバ装置2の判定部21aが判定し、サーバ装置2の付与部21bが端末装置1の生成部11aに生成された認識情報を上記属性情報に付与して記憶部22を更新できるため、試験中に行われていた検査員同士のやりとり、手書きでの試験条件や試験結果の記録、及び上記記録のコンピュータへの入力といった作業の回避又は工数の削減ばかりでなく、ICチップ等に各種情報を書き込んで試験体に付与する手間を省けるため、相対的に安価なシステムを構築できる効果を期待できる。
【0050】
端末装置1の認識部12は、試験体の移動前における識別情報と、試験体の移動後における上記識別情報とを認識し、生成部11aは、試験体の移動前における認識情報と、試験体の移動後における上記識別情報とを生成し、サーバ装置2の付与部21bは、試験体の移動前における認識情報と、試験体の移動後における識別情報とを上記属性情報に付与する。認識情報は、識別情報が認識された時刻を含んでもよい。
【0051】
試験体の移動とは、試験体が排水管の入口から出発して出口に到着することであり、移動前とは、上記入口から出発する直前であり、移動後とは、上記出口に到着した直後である。
【0052】
この構成によれば、生成部11aに生成された認識情報に基づいて、通球試験の実行の有無のみならず、通球試験を開始した事実や時刻、及び通球試験を完了した事実や時刻を、サーバ装置2の付与部21bが排水管の属性情報に付与して記憶部22を更新するため、系統毎の通球試験の結果を正確に記録して信憑性を高められるばかりでなく、進行状況をタイムリーに把握できるため、工期を遅延しにくく施工計画を遂行しやすい効果を期待できる。
【0053】
端末装置1の表示部13及び/又はサーバ装置2の表示部23は、付与部21bに付与された認識情報を含む排水管の属性情報を表示するが、端末装置1の認識部12は、試験体の移動前における識別情報を認識し、試験体の移動後における識別情報を認識しない場合、表示部13及び/又は表示部23は、試験体の移動前における認識情報を含み試験体の移動後における認識情報を含まない排水管の属性情報を表示する。
【0054】
試験体の移動後における識別情報を認識しない状態とは、例えば、水流が滞留しやすかったり廃棄物が蓄積しやすかったりする箇所における試験体の停滞等の所定の要因により試験体が排水管の出口に到着していない状態や、到着していても認識部12が識別情報を認識していない状態である。
【0055】
この構成によれば、試験体の移動後における認識情報が排水管の属性情報に含まれていない状態を、端末装置1の表示部13及び/又はサーバ装置2の表示部23で可視化できるため、試験体の移動後における識別情報が未認識である要因の分析や解消策の検討に着手しやすい効果を期待できる。換言すれば、試験体が排水管の出口に到着していない要因となりやすい箇所は、統計的に予測しやすいことから、試験体の移動後における認識情報を含まない排水管の属性情報は、試験結果として必要十分な内容であり、かつ所望の効果を奏するものである。
【0056】
次に、図4図9を加えた各図を参照しつつ、本通球試験システムの流れの一例を説明する。図4図8は、端末装置1にインストールされて制御部11で動作し表示部13に表示されるアプリケーションの画面を示し、図9は、サーバ装置2にインストールされて制御部21で動作し表示部23に表示されるアプリケーションの画面を示す。
【0057】
前提として、排水管の入口と出口とに、それぞれ端末装置1が配置されている。端末装置1のアプリケーションは、操作部15を介して画面を遷移したり所定の情報を入力したりする。サーバ装置2の記憶部22には、排水管の属性情報と試験体の識別情報とを紐付けて記憶してある。端末装置1とサーバ装置2とは、アプリケーションを介して各種情報を授受する。
【0058】
<通球試験の実行登録>
通球試験を行うにあたり、入口側及び出口側の端末装置1では、図4(A)に示すように、物件選定画面G10aにて、物件名入力欄G110aに物件名をテキスト入力し、又は物件一覧G120aから物件を選択する。このとき、付番しない絞り込みボタンにより、物件名入力欄G110aに物件名の一部をテキスト入力して物件一覧G120aを候補の物件に絞り込んでもよい。物件一覧G120aは、サーバ装置2の記憶部2に記憶されている最新情報に基づいて表示されてもよい。
【0059】
その後、図4(B)に示すように、試験開始画面G10bには、『港区1丁目A』という物件を前提として、試験体を排水管の入口に投入する前に行う通球試験の開始登録ボタンG120b、試験体を排水管の出口から取り出した後に行う通球試験の終了登録ボタンG130b、及び試験結果のチェックを行う結果一覧ボタンG140bが表示される。以降の画面は、各ボタンのプッシュ操作に応じて、下記のように遷移する。
【0060】
<通球試験の開始登録>
入口側の端末装置1では、図5(A)及び図5FのステップS210に示すように、配管選定画面G20aにて、通球試験を行う排水管を決定するため、配管名欄入力欄G210aに配管名をテキスト入力し、又は配管一覧G220aから配管名を選択して登録する。このとき、付番しない絞り込みボタンにより、配管名欄入力欄G210aに配管名の一部をテキスト入力して配管一覧G220aを候補の配管のみに絞り込んでもよい。配管一覧G220aは、サーバ装置2の記憶部2に記憶されている最新情報に基づいて表示されてもよい。
【0061】
その後、図5(B)及び図5FのステップS220に示すように、試験体読取要求画面G20bには、『A棟 102号室 トイレ』という排水管を前提として、端末装置1の認識部12であるRFIDリーダーが試験体であるボールに付されたRFタグに書き込まれた識別情報を読み取るタグ読取枠G210bを表示する。タグ読取枠G210bは、端末装置1に内蔵されたカメラを介して表示してもよい。
【0062】
このとき、図5FのステップS230に示すように、端末装置1の生成部11aは、試験体の識別情報の認識情報として、通球試験の開始時刻(例えば、午前9時ならば、09:00:00)を生成する。換言すれば、生成部11aは、認識部12による試験体の識別情報の認識をトリガーとして、端末装置1に内蔵の時計機能に基づき上記開始時刻を記録する。
【0063】
また、図5FのステップS240及び250に示すように、サーバ装置2の判定部21aは、入口側の端末装置1の認識部12が認識した識別番号に相当するボール番号『M1A004』と、記憶部22に記憶された排水管『A棟 102号室 トイレ』の属性情報に紐付く識別番号に相当するボール番号『M1A004』とが同一であると判定し、付与部21bは、端末装置の生成部11aに生成された通球試験の開始時刻を上記属性情報に付与することで、記憶部22は更新される。
【0064】
そして、図5(C)に示すように、試験体読取結果画面G20cには、試験体識別情報欄G210cに上記識別番号として『M1A004』というボール番号を表示し、また、開始登録が正常に行われたことを所定の文言で表記してもよい。
【0065】
なお、試験体識別情報欄G210cの表示条件は、サーバ装置2の判定部21bによる判定結果でもよい。すなわち、入口側の端末装置1の認識部12が認識したボール番号が『M1A004』以外であり、サーバ装置2の判定部21aは、記憶部22に記憶された排水管『A棟 102号室 トイレ』の属性情報に紐付くボール番号『M1A004』と同一でないと判定した場合、端末装置1は試験体識別情報欄G210cを表示しなくてもよく、また、開始登録を正常に行えなかったことを所定の文言で表記してもよい。
【0066】
最後に、図5FのステップS260に示すように、試験体の識別番号の読取を終了してもよく、同じ試験体又は別の試験体の識別番号の読取を継続する場合は、図5(B)に示す画面及び図5FのステップS220に戻ってもよい。
【0067】
<通球試験の終了登録>
出口側の端末装置1では、図6(A)及び図6FのステップS310に示すように、試験体読取要求画面G30aには、『港区1丁目A』という物件を前提として、端末装置1の認識部12であるRFIDリーダーが試験体であるボールに付されたRFタグに書き込まれた識別情報を読み取るタグ読取枠G310aを表示する。試験体読取要求画面G30aに配管名を表示しないのは、排水管の出口が複数の系統を集約する桝であることから、配管名を特定する必要がないからである。
【0068】
このとき、図6FのステップS320に示すように、端末装置1の生成部11aは、試験体の識別情報の認識情報として、通球試験の終了時刻(例えば、09:00:49)を生成する。換言すれば、生成部11aは、認識部12による試験体の識別情報の認識をトリガーとして、端末装置1に内蔵の時計機能に基づき上記終了時刻を記録する。
【0069】
また、図6FのステップS330~350に示すように、サーバ装置2の判定部21aは、出口側の端末装置1の認識部12が認識した識別番号に相当するボール番号『M1A004』と、記憶部22に記憶された排水管『A棟 102号室 トイレ』の属性情報に紐付く識別番号に相当するボール番号『M1A004』とが同一であり、かつ付与済みの開始時刻を含む認識情報に基づき開始登録していると判定し、付与部21bは、端末装置の生成部11aに生成された通球試験の終了時刻を上記属性情報に付与することで、記憶部22は更新される。
【0070】
一方、判定部21bが、出口側の端末装置1の認識部12が認識した識別情報(ボール番号)が、サーバ装置2の記憶部2に記憶された排水管の属性情報に紐付く識別情報(ボール番号)と同一ではないと判定した場合、終了登録できない旨の文章を表示してもよく、さらに、試験開始時における試験体の識別情報の認識情報(例えば、通球試験の開始時刻)が付与されていない事実等の理由に基づいて開始登録している試験体の識別番号でないと判定した場合、開始登録していない旨の文章を表示してもよい。
【0071】
そして、図6(B)に示すように、結果登録状況画面G30bには、結果登録状況一覧G310bにて、点線内で示す『A棟 102号室 トイレ ボール番号:M1A004』を表示すると共に、過去に終了登録済みの試験結果(例えば、『A棟 101号室 トイレ ボール番号:M1A001』、終了登録できなかった旨の文章(例えば、『終了登録できませんでした ボール番号:12345』、開始登録していない旨の文章(例えば、『開始登録がありません ボール番号:ABCDE』)を表示してもよい。
【0072】
最後に、図6FのステップS360に示すように、試験体の識別番号の読取を終了してもよく、同じ試験体又は別の試験体の識別番号の読取を継続する場合は、図5(A)に示す画面及び図6Fのステップ320に戻ってもよい。
【0073】
<通球試験の結果一覧>
端末装置1では、図7(A)に示すように、試験結果画面G40aには、『港区1丁目A』という物件を前提として、結果一覧G410aを表示する。結果一覧G410aには、通球試験の開始登録及び終了登録が完了している系統のみならず、開始登録のみ完了して終了登録が完了していない系統もふくまれる。
【0074】
点線G420aは、通球試験の開始登録及び終了登録が完了している系統の一例である。『A棟 102号室 トイレ M1A004 00:00:49』のうち、『00:00:49』は、通球試験の開始登録及び終了登録時に生成及び付与されたサーバ装置2の記憶部22に記憶されている排水管の属性情報に含まれる通球試験の所要時間(秒)である。通球試験の所要時間は、端末装置1の制御部11又はサーバ装置2の制御部21にて通球試験の開始時刻及び終了時刻に基づいて算定される。
【0075】
一方、点線G430aは、同じ排水管の系統に対して行った2回目の試験結果であり、通球試験の開始登録のみ完了して終了登録を完了していない系統の一例である。換言すれば、通球試験の終了登録を完了していない系統の試験結果は、通球試験の所要時間を含まない。すなわち、端末装置1の表示部13は、試験体の移動後における認識情報を含まない排水管の属性情報を表示する。この構成によれば、結果一覧G410aのみで排水管の系統毎に異常の有無を把握できるため、迅速な対応も実現する。
【0076】
図7(A)に示す点線G420a又は点線G430aへのプッシュ操作に応じて、図6(B)に示すように、試験結果詳細画面G40bでは、系統毎に行われた1回又は2回以上の結果詳細一覧G410bを表示する。結果詳細一覧G410bでは、試験結果画面G40aで表示された試験結果に加え、サーバ装置2の記憶部22に記憶されている排水管の属性情報に含まれる通球試験の開始時刻及び終了時刻を表示する。
【0077】
一方、点線G420bは、図7(A)に示す点線G430aに示す2回目の試験結果の詳細であり、通球試験の開始時刻『10:00:00』を表示し、通球試験の終了時刻を表示しない。この構成によれば、結果詳細一覧G410bにて排水管の系統毎に異常が発生した時間帯を把握できるため、上記時間帯に行った試験条件や他の試験状況等と併せて、要因を分析しやすくなる。
【0078】
<サーバ装置での情報管理>
サーバ装置2の記憶部22は、物件毎に排水管の属性情報を記憶しており、端末装置1との通信に伴い随時更新しているため、図8に示すように、属性情報一覧画面G50にて、通球試験の実行状況を把握できる。属性情報の項目は、左列から、検索結果の連番・棟名・部屋番号・系統名・ボール番号・開始時刻・終了時刻・所要時間(S)・試験状況・備考である。属性情報一覧画面G50に表示される一覧は、CSV形式やPDF形式でダウンロードしてもよい。
【0079】
例えば、『港区1丁目A』という物件で検索すると、検索結果として23件の排水管の属性情報が表示される。点線G510内の属性情報は、図5及び図6で示した通球試験の結果に応じて更新されたものである。すなわち、点線G510内の上段は、1回目の通球試験であり、開始登録及び終了登録されているため、開始時刻・終了時刻・所要時間と共に、試験状況を『完了』と表示している。一方、点線G510内の下段は、2回目の通球試験であり、開始登録のみされて終了登録されていないため、終了時刻・所要時間を空欄とするのみならず、試験状況を『未完了』と表示している。試験状況は、サーバ装置2の制御部21にて、終了時刻及び/又は所要時間の有無に基づき『完了』又は『未完了』を判定してもよい。
【0080】
なお、図4図8に示す流れと同等の作用及び効果を期待できる流れであれば、上述したハードウェアやソフトウェアを適宜採用して流れを変更したり新たな工程を追加したりしてもよく、限定しない。
【0081】
次に、図9を参照しつつ、本発明の一実施形態における別の通球試験システムについて、上述した通球試験システムと相違する部分を説明し、同等の部分の説明を省略する。図3で示した部品又は部位に相当するものは、参照を容易にするため、図8において一律100を加えた番号にしている。
【0082】
図9に示すように、通球試験システムの別の一例として、端末装置100は、ソフトウェアの実行や電子データの入出力を含め通球試験に関する情報を取得するために制御及び演算を行う制御部110と、試験体の識別情報を認識する認識部120と、制御部110の制御及び演算に基づいて通球試験に関する情報を表示する表示部130と、ソフトウェアや電子データを含め通球試験に関する情報を記憶する記憶部140と、制御部110の制御及び演算のための指示を含め通球試験に関する情報を取得するための指示を伝達する操作部150と、制御部110の制御及び演算に基づいて通球試験に関する情報を図示しないサーバ装置や他のコンピュータと通信し合う通信部160とを備え、図示しない入出力部を備えていてもよく、制御部110は、識別情報が認識された時点における認識情報を生成する生成部110aと、認識部120に認識された識別情報と記憶部140に記憶された識別情報とが同一か否かを判定する判定部110bと、判定部110bに同一と判定された場合、端末装置100の生成部110aに生成された認識情報を記憶部140に記憶された排水管の属性情報に付与する付与部110cとしての機能を備えている。
【0083】
具体的には、端末装置100としてスマートフォンと、認識部120として試験体であるRFタグ付きボールのRFタグを読み込む非接触型リーダーと、生成部110a・判定部110b・付与部110cを含む制御部110としてマイクロプロセッサやRAMと、記憶部140としてROMと、操作部150としてディスプレイに表示されるタッチパネルと、通信部160として所定の通信機器と、入出力部として入出力インタフェースとで、構成されている。端末装置100は、1つでも、2つ以上でもよい。
【0084】
この構成によれば、端末装置100のみで、試験開始前及び完了後における試験体の識別情報の認識から排水管の属性情報の管理まで行えるため、試験を実行しやすく、システム構築費の抑制も期待できる。
【符号の説明】
【0085】
T 試験体
T1 浮力体、T11 錘、T12 識別媒体
T2 第1容器、T21 脱水孔
T3 第2容器
1 端末装置
11 制御部、11a 生成部、12 認識部、13 表示部
2 サーバ装置
21 制御部、21a 判定部、21b 付与部、22 記憶部、23 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図5F
図6
図6F
図7
図8
図9