(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136370
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 7/06 20060101AFI20230922BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F16F7/06
F16F15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041957
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】室田 桃果
(72)【発明者】
【氏名】稲満 和隆
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 功
(72)【発明者】
【氏名】中村 輔
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AC01
3J048BE13
3J048CB21
3J048EA16
3J066AA07
3J066AA26
3J066CA03
3J066CB05
(57)【要約】
【課題】車体の振動状況に応じて摩擦力を変化させて車両における乗心地を向上できる緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における緩衝器Dは、周方向に回転可能なシャフト1と、シャフト1に周方向回転不能に取り付けられてシャフト1とともに周方向に回転可能な第1摩擦ディスク2と、周方向への回転が不能であって第1摩擦ディスク2に当接して第1摩擦ディスク2が回転すると第1摩擦ディスク2との間でシャフト1の回転を抑制する摩擦力を発生する第2摩擦ディスク3と、環状のカム15とカム15に対してシャフト1の軸方向へ相対移動可能なカムフォロア16とを有してカム15がシャフト1に取り付けられるとともにシャフト1の回転によって軸方向長さが変化する第1カムユニットC1とを備え、第1カムユニットC1の軸方向長さの変化によって第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3の接触面圧を変化させている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転可能なシャフトと、
前記シャフトに周方向へ回転不能に取り付けられて前記シャフトとともに周方向に回転可能な第1摩擦ディスクと、
周方向への回転が不能であって前記第1摩擦ディスクに当接して前記第1摩擦ディスクが回転すると前記第1摩擦ディスクとの間で前記シャフトの回転を抑制する摩擦力を発生する第2摩擦ディスクと、
環状のカムと、前記カムに対して前記シャフトの軸方向へ相対移動可能なカムフォロアとを有して、前記カムと前記カムフォロアとの一方が前記シャフトに取り付けられるとともに、前記シャフトの回転によって軸方向長さが変化する第1カムユニットとを備え、
前記第1カムユニットの軸方向長さの変化によって前記第1摩擦ディスクと前記第2摩擦ディスクの接触面圧を変化させる
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
周方向への回転が不能であって前記第1摩擦ディスクの反第2摩擦ディスク側面に当接して前記第1摩擦ディスクが回転すると前記第1摩擦ディスクとの間で前記シャフトの回転を抑制する摩擦力を発生する第3摩擦ディスクと、
環状のカムと、前記カムに対して前記シャフトの軸方向へ相対移動可能なカムフォロアとを有して、前記カムと前記カムフォロアとの一方が前記シャフトに取り付けられて前記第1摩擦ディスクの反第1カムユニット側に配置されるとともに、前記シャフトの回転によって軸方向長さが変化する第2カムユニットとを備え、
前記第2カムユニットの軸方向長さの変化によって前記第1摩擦ディスクと前記第3摩擦ディスクの接触面圧を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記第1カムユニットと前記第2摩擦ディスクとの間に配置されて前記第2摩擦ディスクを前記第1摩擦ディスクへ向けて付勢する第1弾性体を備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記第2カムユニットと前記第3摩擦ディスクとの間に配置されて前記第3摩擦ディスクを前記第1摩擦ディスクへ向けて付勢する第2弾性体とを備えた
ことを特徴とする請求項2または請求項2に従属する請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記カムは、前記カムフォロアの可動範囲に対向する円弧状のカム面を有し、
前記カム面は、平坦部と、前記平坦部の周方向の両側のそれぞれ設けられて軸方向に隆起するように傾斜する一対の傾斜部とを有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記傾斜部のうち一方の傾斜部における前記平坦部に対する傾斜角度と、他方の傾斜部における前記平坦部に対する傾斜角度とが異なっている
ことを特徴とする請求項5に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
振動エネルギを吸収して制振対象の振動を減衰させる緩衝器としては、作動油の粘性抵抗を利用する油圧緩衝器の他、慣性質量を抵抗として利用するものや、摩擦力を抵抗として利用するものがある。
【0003】
一般的に、車両のサスペンションには油圧緩衝器が多く利用されるが、作動油の圧縮性による応答性の問題から応答性に優れる摩擦力を利用した緩衝器をサスペンションに利用する試みが見られる。
【0004】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるロッド状のピストンと、シリンダ内に軸方向への移動が規制されて挿入されてピストンの側面に摺接する摩擦パッドと、摩擦パッドをピストンの側面に向けて押圧する弾性体とを備えており、ピストンがシリンダに対して軸方向へ移動する際にピストンと摩擦パッドとの間に生じる摩擦力によってピストンの移動を妨げる減衰力を発生する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、サスペンションに利用される油圧緩衝器は、伸縮速度の増加とともに減衰力を増加させる減衰力特性を備えており、車体の振動状況に応じて車体の振動を抑制して車両における乗心地を良好に維持する。
【0007】
ところが、従来の摩擦力を利用した緩衝器は、油圧緩衝器に比較して応答性よく減衰力を発生できる点で優れるものの、摩擦パッドとピストンとの間の摩擦力が不変であるため、車輪に対する車体が上下方向に変位するストロークに対して常に一定の減衰力しか出力できない。
【0008】
よって、従来の摩擦力を利用した緩衝器の減衰力を、小振幅でストローク(小ストローク)する際の車体振動に適するように小さな値に設定する場合、当該緩衝器は、大振幅でストローク(大ストローク)する際に要求される減衰力を発生できず、車体振動を十分に抑制できない。
【0009】
そうかと言って、従来の摩擦力を利用した緩衝器の減衰力を大ストローク時の車体振動に適するように大きな値に設定する場合、小ストローク時に当該緩衝器が発生する減衰力が過剰となるため、車両における乗心地を損なってしまう。
【0010】
このように、従来の摩擦力を利用した緩衝器は、車体の振動の状況に応じた減衰力の発生ができないので、車両における乗心地を損なってしまうという問題を抱えている。
【0011】
そこで、本発明は、車体の振動状況に応じて減衰力を変化させて車両における乗心地を向上可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、周方向に回転可能なシャフトと、シャフトに周方向回転不能に取り付けられてシャフトとともに周方向に回転可能な第1摩擦ディスクと、周方向への回転が不能であって第1摩擦ディスクに当接して第1摩擦ディスクが回転すると第1摩擦ディスクとの間でシャフトの回転を抑制する摩擦力を発生する第2摩擦ディスクと、環状のカムとカムに対してシャフトの軸方向へ相対移動可能なカムフォロアとを有してカムとカムフォロアとの一方がシャフトに取り付けられるとともにシャフトの回転により軸方向長さが変化する第1カムユニットとを備え、第1カムユニットの軸方向長さの変化によって第1摩擦ディスクと第2摩擦ディスクの接触面圧を変化させている。このように構成された緩衝器は、シャフトの中立位置からの回転角度に応じて第2摩擦ディスクを第1摩擦ディスクへ向けて軸方向へ移動させて第1摩擦ディスクと第2摩擦ディスクとの間の接触面圧を変化させて第1摩擦ディスクと第2摩擦ディスクとの間の摩擦力を変化させるので、シャフトの中立位置からの回転角度に応じて減衰力を変化させ得る。
【0013】
また、緩衝器は、周方向への回転が不能であって第1摩擦ディスクの反第2摩擦ディスク側面に当接して第1摩擦ディスクが回転すると第1摩擦ディスクとの間でシャフトの回転を抑制する摩擦力を発生する第3摩擦ディスクと、環状のカムとカムに対してシャフトの軸方向へ相対移動可能なカムフォロアとを有してカムとカムフォロアとの一方がシャフトに取り付けられて第1摩擦ディスクの反第1カムユニット側に配置されるとともにシャフトの回転により軸方向長さが変化する第2カムユニットとを備え、第2カムユニットの軸方向長さの変化によって第1摩擦ディスクと第3摩擦ディスクの接触面圧を変化させてもよい。
【0014】
このように構成された緩衝器では、1つの第1摩擦ディスクを第2摩擦ディスクと第3摩擦ディスクとで挟み込んで、第1摩擦ディスクと第2摩擦ディスクとの間、および第1摩擦ディスクと第3摩擦ディスクとの間でそれぞれ摩擦力を発生できるので、少ない部品点数で大きな減衰力の発生が可能である。また、1つの第1摩擦ディスクを第2摩擦ディスクと第3摩擦ディスクとで挟み込んで、第1摩擦ディスク2に荷重を与える構造を採用しているため、第1摩擦ディスクを径方向で撓ませるようなモーメントが負荷されず、緩衝器の耐久性能も向上する。
【0015】
また、緩衝器は、第1カムユニットと第2摩擦ディスクとの間に配置されて第2摩擦ディスクを第1摩擦ディスクへ向けて付勢する第1弾性体を備えていてもよい。このように構成された緩衝器は、シャフトの中立位置からの回転角度に応じて第2摩擦ディスクを第1摩擦ディスクへ向けて付勢する第1弾性体の付勢力を変化させるので、シャフトの中立位置からの回転角度に応じて減衰力を変化させ得るとともに、減衰力のチューニングも容易となる。
【0016】
そして、緩衝器は、第2カムユニットと第3摩擦ディスクとの間に配置されて第3摩擦ディスクを第1摩擦ディスクへ向けて付勢する第2弾性体を備えてもよい。このように構成された緩衝器は、シャフトの中立位置からの回転角度に応じて第3摩擦ディスクを第1摩擦ディスクへ向けて付勢する第2弾性体の付勢力を変化させるので、シャフトの中立位置からの回転角度に応じて減衰力を変化させ得るとともに、減衰力のチューニングも容易となる。
【0017】
さらに、カムがカムフォロアに対応する円弧状のカム面を有し、カム面が平坦部と平坦部の周方向の両側のそれぞれ設けられて軸方向に隆起するように傾斜する一対の傾斜部とを備えていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、シャフトが中立位置から時計回りに回転しても反時計回りに回転しても減衰力が大きくなるので、車両に設置されると車体が車輪に対して接近する収縮側と、車体が車輪に対して離間する伸長側の双方でストロークが大きくなると大きな減衰力を発生できる。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明の緩衝器によれば、車体の振動状況に応じて減衰力を変化させて車両における乗心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施の形態における緩衝器の断面図である。
【
図2】車体に設置した状態の一実施の形態における緩衝器を示した図である。
【
図3】車体に設置した状態の一実施の形態における緩衝器の側面図である。
【
図5】一実施の形態の緩衝器の第1カムユニットにおけるカムの展開図である。
【
図6】一実施の形態の緩衝器の第2カムユニットにおけるカムの展開図である。
【
図7】一実施の形態の緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。なお、本明細書中で、単に軸方向と言う場合、緩衝器Dにおけるシャフト1の軸方向に沿う方向を指す。
【0021】
図1から
図3に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、筒状のケース7内に周方向に回転可能に挿入されたシャフト1と、シャフト1周方向へ回転不能に取り付けられてシャフト1とともに周方向に回転可能な第1摩擦ディスク2と、第1摩擦ディスク2に当接する第2摩擦ディスク3と、第1摩擦ディスク2の反第2摩擦ディスク3側面に当接する第3摩擦ディスク4と、第1カムユニットC1および第2カムユニットC2と、第1カムユニットC1と第2摩擦ディスク3との間に配置される第1弾性体5と、第2カムユニットC2と第3摩擦ディスク4との間に配置される第2弾性体6とを備えている。そして、この緩衝器Dは、たとえば、ケース7が車両における車体Bに取り付けられるとともに、シャフト1がシャフト1の両端に取り付けられたアーム8a,8bを介して車両における車輪Wを支持するロッドAに連結されて、車体Bと車輪Wとの間に介装されている。そして、緩衝器Dは、車体Bと車輪Wとが上下方向で接近或いは離間するとシャフト1を回転させて、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間、および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間でシャフト1の回転を抑制する摩擦力を発生して、車体Bと車輪Wとの相対変位を抑制する減衰力を発揮する。
【0022】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1から
図4に示すように、ケース7は、筒状であって、内周に軸方向に沿って形成された8条のキー溝7aが設けられている。ケース7の
図1中左右端には、それぞれ環状のキャップ9,10が装着されている。
【0023】
シャフト1は、両端がキャップ9,10の内周を通じてケース7外へ突出しており、キャップ9,10の内周に設けられたベアリング11,12によって周方向への回転が許容された状態で支持されている。また、シャフト1の中央の外周には、環状の第1摩擦ディスク2が固定的に装着されている。第1摩擦ディスク2は、円環状であって、シャフト1の軸方向において両側に摩擦抵抗が大きな摩擦面2a,2bを備えている。第1摩擦ディスク2は、外径がケース7の内径よりも小径であって、ケース7に対してシャフト1とともに周方向に回転可能となっている。第1摩擦ディスク2は、シャフト1に軸方向に沿って設けたキー1aに嵌合するキー溝2cを備えており、シャフト1に対して周方向への回転が規制されるもののシャフト1の軸方向へ沿って移動できる。なお、第1摩擦ディスク2は、シャフト1に対して周方向の回転だけではなく、軸方向への移動も規制されるように取り付けられてもよい。
【0024】
第2摩擦ディスク3は、円環状であって第1摩擦ディスク2の
図1中右側の摩擦面2aに当接するとともに、環状のホルダ13に保持されている。ホルダ13は、環状であって、
図1中左端に第2摩擦ディスク3が装着されている他、外周に等間隔に設けられてケース7のキー溝7a内に挿入される8個のキー13aを備えている。
【0025】
第2摩擦ディスク3およびホルダ13の内径は、シャフト1の外径よりも大径であって、第2摩擦ディスク3およびホルダ13の内周には、シャフト1が挿通されている。ホルダ13は、ケース7内に収容されると、キー13aがキー溝7a内に摺動可能に挿入されるため、ケース7に対して周方向への回転が不能ではあるが、軸方向への移動が許容される。よって、第2摩擦ディスク3は、ケース7に対して周方向へ回転が規制されるものの軸方向への移動が可能となっており、また、シャフト1は、第2摩擦ディスク3の内周とホルダ13の内周に干渉せずにケース7内で周方向に回転できる。なお、本実施の形態では、第2摩擦ディスク3をホルダ13に保持させて、キー13aとキー溝7aとで第2摩擦ディスク3のケース7に対する回転を規制しているが、第2摩擦ディスク3の周方向への回転を他の手段によって規制してもよく、また、第2摩擦ディスク3の周方向への回転を抑制できればホルダ13を省略してもよい。
【0026】
つづいて、第1カムユニットC1は、環状のカム15と、カム15に対してシャフト1の軸方向へ相対移動可能なカムフォロア16とを備えている。カム15とカムフォロア16は、カム15をキャップ9側へ向けて、カムフォロア16を第2摩擦ディスク3側へ向けて配置されている。
【0027】
そして、カム15は、環状であって、
図1中で左端に4つの円弧状のカム面15aが周方向に連続して設けられている。なお、カム15に対して設置可能なカム面15aの最大設置数は、シャフト1の可動角度に応じて決定され、本実施の形態の緩衝器Dでは、シャフト1がケース7の周方向に対して90度の範囲で揺動するように設定されているので、カム面15aの最大設置数は、360度を90度で割った値である4となる。カム面15aの設置数は、最大設置数以下であれば幾つ設けてもよい。よって、たとえば、シャフト1の可動範囲を120度に設定する場合は、カム面15aの設置数は、3以下であればよい。
【0028】
4つのカム面15aは、円環を4分割した円弧状となっており、
図5に示したカム15の展開図に示したように、それぞれ最も低い面である平坦部15a1と、平坦部15a1の周方向の両側のそれぞれに連続して設けられて軸方向に隆起するように傾斜する一対の傾斜部15a2,15a3とを備えている。
【0029】
また、平坦部15a1の面と各傾斜部15a2,15a3の面とは、滑らかに連なっており、平坦部15a1と傾斜部15a2とで成す傾斜角度θ1は、平坦部15a1と傾斜部15a3とで成す傾斜角度θ2より大きく、両傾斜角度θ1,θ2は互いに異なっている。
【0030】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、傾斜部15a2と傾斜部15a3の平坦部15a1の最も低い部分からの最大高さは同じとなっており、4つのカム面15aは、カム15の周方向で連続して設けられているので、
図5に示したように、隣り合うカム面15a同士の傾斜部15a2の終端と傾斜部15a3の終端とが互いに接続されており、カム15の形状は、カム面15a同士の傾斜部15a2と傾斜部15a3とで形成された山が周方向に4つ現れる形状となっている。カム面15aは、カム15に対して互いに連続せず独立して設けられていてもよい。また、傾斜部15a2と傾斜部15a3との平坦部15a1とは反対側の終端部分の最大高さに到達して以降の形状は平坦面となっていてもよい。さらに、傾斜部15a2と傾斜部15a3の最大高さが異なっている場合、隣り合うカム面15aの傾斜部15a2と傾斜部15a3の境に段が形成されてもよい。
【0031】
さらに、カム15の外周はケース7の内径よりも小径とされており、本実施の形態の緩衝器Dでは、カム15は、シャフト1の外周に固定されていてシャフト1がケース7に対して回転するとシャフト1とともに回転するようになっている。
【0032】
カムフォロア16は、環状であって内径がシャフト1よりも大径であって内周にシャフト1が挿通されるとともに外周に等間隔をもって設けられる8個のキー17aを備えた円環状のベース17に設けられている。
【0033】
具体的には、カムフォロア16は、ベース17のカム15に対向する端部に周方向で等間隔に4つ設けられている。各カムフォロア16は、ベース17から立ち上がるブラケット16aと、ブラケット16aに回転可能に装着されたローラ16bとを備えている。各カムフォロア16におけるローラ16bは、カム15における対応するカム面15aに当接しており、カム面15a上を滑らかに走行できる。なお、カムフォロア16がカム面15a上を滑らかに走行することができれば、ローラ16bを廃止してもよい。
【0034】
また、ベース17は、ケース7内に収容されると、キー17aがキー溝7a内に摺動可能に挿入されるため、ケース7に対して周方向への回転が不能ではあるが、軸方向への移動が許容される。よって、カムフォロア16は、ベース17とともにケース7に対して周方向への回転が不能ではあるが、軸方向への移動が許容される。ベース17は、4つのカムフォロア16が設けられたカム15を向く端部とは反対側の端部の内周に軸方向に突出する環状の突条17bを備えている。
【0035】
そして、シャフト1の回転によってカム15が回転して、カムフォロア16のローラ16bがカム面15a上を走行して平坦部15a1から傾斜部15a2,15a3上に乗り上げるとカムフォロア16を保持するベース17がカム15から軸方向で離間する方向に移動し、反対に、ローラ16bが傾斜部15a2,15a3から平坦部15a1へ走行すると後述する第1弾性体5によって付勢されるためベース17がカム15へ軸方向で接近する方向に移動する。つまり、第1カムユニットC1は、シャフト1が回転すると、軸方向でカム15の端面からベース17の端面までの全長を変化させる。なお、なるべく周方向で均等にベース17に荷重を負荷したいので、カム面15aとカムフォロア16の設置数は、可能な限り多い方が好ましい。
【0036】
本実施の形態の緩衝器Dでは、各カムフォロア16がカム面15aの平坦部15a1の中央に当接している状態をシャフト1が中立位置にあるとして、シャフト1が中立位置から
図1中左方から見て時計回りに回転すると、各カムフォロア16がカム面15aの平坦部15a1の
図5中左側の傾斜部15a2に乗り上げ、シャフト1が中立位置から
図1中左方から見て反時計回りに回転すると、各カムフォロア16がカム面15aの平坦部15a1の
図5中右側の傾斜部15a3に乗り上げる。
【0037】
そして、カム15の平坦部15a1と傾斜部15a2とで成す傾斜角度θ1は、平坦部15a1と傾斜部15a3とで成す傾斜角度θ2より大きいため、シャフト1が中立位置から同じ速度で
図1中左方から見て時計回りに回転した場合と反時計回りに回転した場合とで、ベース17がカム15から離間する際の移動速度が異なる。より詳細には、シャフト1が中立位置から同じ速度で
図1中左方から見て時計回りに回転した場合の方が、シャフト1が中立位置から同じ速度で
図1中左方から見て反時計回りに回転した場合よりも、ベース17がカム15から離間する際の移動速度が速くなる。
【0038】
さらに、カムフォロア16を保持するベース17と、第2摩擦ディスク3を保持するホルダ13との間には、環状の皿ばねで構成された第1弾性体5が介装されている。第1弾性体5は、内周がベース17に設けられた突条17bの外周に嵌合して、ベース17とホルダ13との間に撓んだ状態で介装され、常時、第2摩擦ディスク3を第1摩擦ディスク2へ向けて付勢しており、荷重を負荷して第2摩擦ディスク3と第1摩擦ディスク2とを密着させている。なお、第1弾性体5は、複数枚の積層された皿ばねによって構成されてもよい。
【0039】
第1弾性体5は、内周がベース17に設けられた突条17bの外周に嵌合しているので、ベース17に対して径方向へずれることなく位置決めされるので、第2摩擦ディスク3と第1摩擦ディスク2とに対して周方向で偏りのなく荷重を負荷できる。
【0040】
よって、シャフト1が中立位置にある場合、カムフォロア16がカム15のカム面15aにおける最も低い平坦部15a1に当接して第2摩擦ディスク3から最も離間するので、第1弾性体5である皿ばねの撓み量が最も小さくなって、第1弾性体5が第2摩擦ディスク3に与える荷重が最小となる。よって、シャフト1が中立位置にある場合、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力が最も小さくなる。対して、シャフト1が中立位置から回転してカムフォロア16が傾斜部15a2,15a3に乗り上げる状態となると、カムフォロア16が第2摩擦ディスク3へ向けて軸方向に接近して第1弾性体5である皿ばねの撓み量を増加させるため、シャフト1が中立位置にある場合よりも第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力が大きくなる。
【0041】
シャフト1の中立位置からの回転角度が増加すると、カムフォロア16が傾斜部15a2,15a3の終端側へ移動するため、カムフォロア16の第2摩擦ディスク3側への移動量も増加して、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力が大きくなる。シャフト1の中立位置から許容される回転角度によっては、カムフォロア16が傾斜部15a2,15a3との境の最大高さ部分まで到達しないが、カム面15aの中央から離間すれば離間するほど傾斜部15a2,15a3の高さが高くなっているので、カムフォロア16の中立位置からの回転角度が許容される最大角度になると、第1弾性体5である皿ばねの撓み量が最大となって第1弾性体5が第2摩擦ディスク3に与える荷重が最大となり、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力が最大となる。
【0042】
つづいて、第1摩擦ディスク2の第2摩擦ディスク3および第1カムユニットC1とは反対側には、第3摩擦ディスク4、第2弾性体6および第2カムユニットC2が配置されている。
【0043】
第3摩擦ディスク4は、円環状であって第1摩擦ディスク2の軸方向で反第2摩擦ディスク3側となる
図1中左側の摩擦面2bに当接するとともに、環状のホルダ14に保持されている。ホルダ14は、環状であって、
図1中右端に第3摩擦ディスク4が装着されている他、外周に等間隔に設けられてケース7のキー溝7a内に挿入される8個のキー14aを備えている。
【0044】
第3摩擦ディスク4およびホルダ14の内径は、シャフト1の外径よりも大径であって、第3摩擦ディスク4およびホルダ14の内周には、シャフト1が挿通されている。ホルダ14は、ケース7内に収容されると、キー14aがキー溝7a内に摺動可能に挿入されるため、ケース7に対して周方向への回転が不能ではあるが、軸方向への移動が許容される。よって、第3摩擦ディスク4は、ケース7に対して周方向へ回転が規制されるものの軸方向への移動が可能となっており、また、シャフト1は、第3摩擦ディスク4の内周とホルダ14の内周に干渉せずにケース7内で周方向に回転できる。なお、本実施の形態では、第3摩擦ディスク4をホルダ14に保持させて、キー14aとキー溝7aとで第3摩擦ディスク4のケース7に対する回転を規制しているが、第3摩擦ディスク4の周方向への回転を他の手段によって規制してもよく、また、第3摩擦ディスク4の周方向への回転を抑制できればホルダ14を省略してもよい。。
【0045】
第2カムユニットC2は、第1カムユニットC1と同様に、環状のカム18と、カム18に対してシャフト1の軸方向へ相対移動可能なカムフォロア19とを備えている。カム18とカムフォロア19は、カム18をキャップ10側へ向けて、カムフォロア19を第3摩擦ディスク4側へ向けて配置されている。
【0046】
そして、カム18は、環状であって、
図1中で右端に4つの円弧状のカム面18aが周方向に連続して設けられている。なお、カム18に対して設置可能なカム面18aの最大設置数は、カム15におけるカム面15aと同様に、シャフト1の可動角度に応じて決定され、カム面18aの設置数は、最大設置数以下であれば幾つも受けてもよい。
【0047】
4つのカム面18aは、円環を4分割した円弧状となっており、
図6に示したカム18の展開図に示したように、それぞれ最も低い面である平坦部18a1と、平坦部18a1の周方向の両側のそれぞれに連続して設けられて軸方向に隆起するように傾斜する一対の傾斜部18a2,18a3とを備えている。本実施の形態の緩衝器Dでは、カム18におけるカム面18aは、カム15のカム面15aと第1摩擦ディスク2を中心とした対称な形状、つまり、カム面15aの鏡像と同じ形状となっている。
【0048】
よって、平坦部18a1の面と各傾斜部18a2,18a3の面とは、滑らかに連なっており、平坦部18a1と傾斜部18a2とで成す傾斜角度θ1は、平坦部18a1と傾斜部18a3とで成す傾斜角度θ2より大きく、両傾斜角度θ1,θ2は互いに異なっている。
【0049】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、傾斜部18a2と傾斜部18a3の平坦部18a1の最も低い部分からの最大高さは同じとなっており、4つのカム面18aは、カム18の周方向で連続して設けられているので、
図6に示したように、隣り合うカム面18a同士の傾斜部18a2の終端と傾斜部18a3の終端とが互いに接続されており、カム18の形状は、カム面18a同士の傾斜部18a2と傾斜部18a3とで形成された山が周方向に4つ現れる形状となっている。ただし、カム面18aは、カム面15aの鏡像と同形状であるので、平坦部18a1の
図6中で右隣に平坦部18a1となす傾斜角度θ1が大きな傾斜部18a2が配置されており、平坦部18a1の
図6中で左隣に平坦部18a1となす傾斜角度θ2が小さな傾斜部18a3が配置されている。
【0050】
なお、カム18にあっても、カム面18aは、カム18に対して互いに連続せず独立して設けられていてもよい。また、傾斜部18a2と傾斜部18a3との平坦部18a1とは反対側の終端部分の最大高さに到達して以降の形状は平坦面となっていてもよい。さらに、傾斜部18a2と傾斜部18a3の最大高さが異なっている場合、隣り合うカム面18aの傾斜部18a2と傾斜部18a3の境に段が形成されてもよい。
【0051】
さらに、カム18の外周はケース7の内径よりも小径とされており、本実施の形態の緩衝器Dでは、カム18は、シャフト1の外周に固定されていてシャフト1がケース7に対して回転するとシャフト1とともに回転するようになっている。
【0052】
カムフォロア19は、環状であって内径がシャフト1よりも大径であって内周にシャフト1が挿通されるとともに外周に等間隔をもって設けられる8個のキー20aを備えた円環状のベース20に設けられている。
【0053】
具体的には、カムフォロア19は、ベース20のカム18に対向する端部に周方向で等間隔に4つ設けられている。各カムフォロア19は、ベース20から立ち上がるブラケット19aと、ブラケット19aに回転可能に装着されたローラ19bとを備えている。各カムフォロア19におけるローラ19bは、カム18における対応するカム面18aに当接しており、カム面18a上を滑らかに走行できる。なお、カムフォロア19がカム面18a上を滑らかに走行することができれば、ローラ19bを廃止してもよい。
【0054】
また、ベース20は、ケース7内に収容されると、キー20aがキー溝7a内に摺動可能に挿入されるため、ケース7に対して周方向への回転が不能ではあるが、軸方向への移動が許容される。よって、カムフォロア19は、ベース20とともにケース7に対して周方向への回転が不能ではあるが、軸方向への移動が許容される。ベース20は、4つのカムフォロア19が設けられたカム18を向く端部とは反対側の端部の内周に軸方向へ突出する環状の突条20bを備えている。
【0055】
そして、シャフト1の回転によってカム18が回転して、カムフォロア19のローラ19bがカム面18a上を走行して平坦部18a1から傾斜部18a2,18a3上に乗り上げるとカムフォロア19を保持するベース20がカム18から軸方向で離間する方向に移動し、反対に、ローラ19bが傾斜部18a2,18a3から平坦部18a1へ走行するとカムフォロア19が後述する第2弾性体6で付勢されるためベース20がカム18へ軸方向で接近する方向に移動する。つまり、第2カムユニットC2は、シャフト1が回転すると、軸方向でカム18の端面からベース20の端面までの全長を変化させる。なお、なるべく周方向で均等にベース20に荷重を負荷したいので、カム面18aとカムフォロア19の設置数は、可能な限り多い方が好ましい。
【0056】
本実施の形態の緩衝器Dでは、各カムフォロア19がカム面18aの平坦部18a1の中央に当接している状態をシャフト1が中立位置にあるとして、シャフト1が中立位置から
図1中左方から見て時計回りに回転すると、各カムフォロア19がカム面18aの平坦部18a1の
図6中右側の傾斜部18a2に乗り上げ、シャフト1が中立位置から
図1中左方から見て反時計回りに回転すると、各カムフォロア19がカム面18aの平坦部18a1の
図6中左側の傾斜部18a3に乗り上げる。
【0057】
そして、カム18の平坦部18a1と傾斜部18a2とで成す傾斜角度θ1は、平坦部18a1と傾斜部18a3とで成す傾斜角度θ2より大きいため、シャフト1が中立位置から同じ速度で
図1中左方から見て時計回りに回転した場合と反時計回りに回転した場合とで、ベース20がカム18から離間する際の移動速度が異なる。より詳細には、シャフト1が中立位置から同じ速度で
図1中左方から見て時計回りに回転した場合の方が、シャフト1が中立位置から同じ速度で
図1中左方から見て反時計回りに回転した場合よりも、ベース20がカム18から離間する際の移動速度が速くなる。
【0058】
さらに、カムフォロア19を保持するベース20と、第3摩擦ディスク4を保持するホルダ14との間には、環状の皿ばねで構成された第2弾性体6が介装されている。第2弾性体6は、内周がベース20に設けられた突条20bの外周に嵌合して、ベース20とホルダ14との間に撓んだ状態で介装され、常時、第3摩擦ディスク4を第1摩擦ディスク2へ向けて付勢しており、荷重を負荷して第3摩擦ディスク4と第1摩擦ディスク2とを密着させている。なお、第2弾性体6は、複数枚の積層された皿ばねによって構成されてもよい。
【0059】
第2弾性体6は、内周がベース20に設けられた突条20bの外周に嵌合しているので、ベース20とホルダ14とに対して径方向へずれることなく位置決めされるので、第3摩擦ディスク4と第1摩擦ディスク2とに対して周方向で偏りのなく荷重を負荷できる。
【0060】
よって、シャフト1が中立位置にある場合、カムフォロア19がカム18のカム面18aにおける最も低い平坦部18a1に当接して第3摩擦ディスク4から最も離間するので、第2弾性体6である皿ばねの撓み量が最も小さくなって、第2弾性体6が第3摩擦ディスク4に与える荷重が最小となる。よって、シャフト1が中立位置にある場合、第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が最も小さくなる。対して、シャフト1が中立位置から回転してカムフォロア19が傾斜部18a2,18a3に乗り上げる状態となると、カムフォロア19が第3摩擦ディスク4へ向けて軸方向に接近して第2弾性体6である皿ばねの撓み量を増加させるため、シャフト1が中立位置にある場合よりも第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が大きくなる。
【0061】
シャフト1の中立位置からの回転角度が増加すると、カムフォロア19が傾斜部18a2,18a3の終端側へ移動するため、カムフォロア19の第3摩擦ディスク4側への移動量も増加して、第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が大きくなる。シャフト1の中立位置から許容される回転角度によっては、カムフォロア19が傾斜部18a2,18a3との境の最大高さ部分まで到達しないが、カム面18aの中央から離間すれば離間するほど傾斜部18a2,18a3の高さが高くなっているので、カムフォロア19の中立位置からの回転角度が許容される最大角度になると、第2弾性体6である皿ばねの撓み量が最大となって第2弾性体6が第3摩擦ディスク4に与える荷重が最大となり、第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が最大となる。
【0062】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下に緩衝器Dの作動について説明する。緩衝器Dは、ケース7が車体Bに取り付けられ、シャフト1が両端に取り付けられたアーム8a,8bを介して車輪Wを支持するロッドAに連結されて、車体Bと車輪Wとの間に懸架ばねSと並列に介装される。なお、ケース7は、前述したように、シャフト1を支持するキャップ9,10の保持と、第2摩擦ディスク3、第3摩擦ディスク4、カムフォロア16,19の周方向への回転の規制に利用されているが、ケース7以外を利用して第2摩擦ディスク3、第3摩擦ディスク4、カムフォロア16,19の周方向への回転を規制してもよい。なお、ケース7が筒状であることによってケース7内に収容される緩衝器Dを構成する各部が保護されるが、ケース7の代わりに連結棒等によってキャップ9,10を連結してもよく、当該連結棒を第2摩擦ディスク3、第3摩擦ディスク4、カムフォロア16,19の周方向への回転の規制に利用してもよい。また、アーム8a,8bとシャフト1との間に減速機を設けてもよい。
【0063】
懸架ばねSは、車体Bの重量を受けて圧縮されて車体Bを支える弾発力を発生して、車体Bを弾性支持しており、車体Bが振動しない状態では車高を所定の高さに維持する。本実施の形態の緩衝器Dは、懸架ばねSによって車高が所定の高さに維持された状態で、シャフト1が前述の中立位置に位置するように、車両に設置してある。
【0064】
車両が走行する際に、車輪Wが路面の凹凸を走行することによって、車体Bと車輪Wとが上下方向で接近すると、シャフト1が中立位置にある状態からケース7に対して
図1中左方から見て反時計回りに回転する。
【0065】
シャフト1の中立位置からの反時計回りの回転によって、第1カムユニットC1および第2カムユニットC2におけるカム15、18が回転するので、カムフォロア16、19がカム15,18のカム面15a,18a上を平坦部15a1,18a1から傾斜部15a3,18a3側へ向けて移動する。このようなシャフト1の回転に対して、緩衝器Dは、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間で生じる摩擦力と、第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間で生じる摩擦力との合計の摩擦力をシャフト1の回転を抑制する減衰力として発生する。
【0066】
ここで、シャフト1の中立位置からの反時計回りへの回転角度が小さく、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3に乗り上げずに平坦部15a1,18a1上のみを移動する場合、カムフォロア16,19がカム15,18によって第1摩擦ディスク2側へ押し上げられないので、第1カムユニットC1および第2カムユニットC2の軸方向長さが変化せず、第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力は変化しない。このように、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1上のみを移動する場合、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力と第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力との合計の摩擦力は最小となる。
【0067】
よって、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに接近するように変位しても、シャフト1の回転角度が小さく、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1上のみを移動する場合、緩衝器Dが発生する減衰力は最小となる。換言すれば、緩衝器Dは、車体Bと車輪Wとの接近方向の相対ストロークが小さい場合、最小の減衰力を発生する。
【0068】
対して、シャフト1の中立位置からの回転角度が先程よりも大きく、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3に乗り上げるようになる場合、カムフォロア16,19がカム15,18によって第1摩擦ディスク2側へ押し上げられて、第1カムユニットC1および第2カムユニットC2の軸方向長さが長くなり、第1弾性体5および第2弾性体6をカムフォロア16,19の第1摩擦ディスク2側への変位分だけ押し縮める。よって、シャフト1の回転角度が先程よりも大きく、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3に乗り上げるようになると、第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力は、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1上のみを移動する場合よりも大きくなり、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の接触面圧および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の接触面圧が大きくなる。また、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3上を走行する場合、シャフト1の中立位置からの回転角度が増加すると第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力も増加する。
【0069】
よって、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに接近するように変位し、シャフト1の中立位置からの回転角度が大きくなって、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3上を走行するようになると、第1カムユニットC1および第2カムユニットC2の軸方向長さが長くなって、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の接触面圧および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の接触面圧が大きくなるので、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が大きくなる。よって、緩衝器Dが発生する減衰力はカムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1上を走行する際の減衰力よりも大きくなり、シャフト1の中立位置からの回転角度の増加に応じて増加する。
【0070】
したがって、シャフト1が中立位置を起点として車体Bと車輪Wとが接近する方向へストロークする場合の緩衝器Dの減衰力の特性は、
図7に示すように、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3に到達するまでは減衰力が一定し、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3に到達してからはシャフト1の回転角度の増加に対して減衰力が増加する特性となる。
【0071】
車体Bと車輪Wとが最大限に接近した後、車体Bと車輪Wとが上下方向で離間する方向へストロークするようになると、シャフト1の回転方向が
図1中左方から見て反時計回りから時計回りへと逆転して、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3の高い部分から低い部分へ移動していく。このようにシャフト1の回転方向が時計回りへ切り換わり、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3上を走行する状況では、カムフォロア16,19が第1摩擦ディスク2から軸方向で離間する方向へ変位する。よって、第1カムユニットC1および第2カムユニットC2の軸方向長さが短くなり、シャフト1の中立位置からの回転角度の減少に伴って、第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力は減少し、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の接触面圧および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の接触面圧が小さくなり、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が小さくなる。
【0072】
よって、車体Bと車輪Wとが最大限に接近した後、上下方向に互いに離間するように変位し、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3上を走行する状況では、緩衝器Dが発生する減衰力は、シャフト1の中立位置からの回転角度の減少に伴って減少する。
【0073】
さらに、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに離間するように変位し続けて、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3から平坦部15a1,18a1を走行するようになると、カムフォロア16,19が第1摩擦ディスク2から最大限に離間するため、緩衝器Dが発生する減衰力が最小になる。緩衝器Dは、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに離間するように変位し続けて、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1を挟んで反対側の傾斜部15a2,18a2に到達するまでは、カムフォロア16,19が第1摩擦ディスク2から最大限に離間した状態を維持するので、発生する減衰力を最小とする。
【0074】
したがって、車体Bと車輪Wとが最大限に接近した状態から互いに離間する方向へストロークする場合の緩衝器Dの減衰力の特性は、
図7に示すように、カムフォロア16,19が傾斜部15a3,18a3上を走行する状況ではシャフト1の中立位置からの回転角度の減少に対して減衰力が減少し、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1に到達して平坦部15a1,18a1を走行する状況ではシャフト1の中立位置からの回転角度によらず減衰力が一定となる特性となる。
【0075】
さらに、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに離間するように変位し続けて、シャフト1が
図1中左方から見て時計回りに回転し、シャフト1の中立位置からの時計回りの回転角度が大きくなり、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1から傾斜部15a2,18a2に乗り上げるようになる。このように、シャフト1の中立位置から時計回りに回転して、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2に乗り上げると、カムフォロア16,19がカム15,18によって第1摩擦ディスク2側へ押し上げられる。すると、第1弾性体5および第2弾性体6をカムフォロア16,19の第1摩擦ディスク2側への変位分だけ押し縮める。よって、シャフト1の中立位置からの時計回りへの回転角度が大きく、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2に乗り上げるようになると、第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力は、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1上のみを移動する場合よりも大きくなる。また、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2上を走行する場合、シャフト1の中立位置からの時計回りへの回転角度が増加すると第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力も増加する。
【0076】
よって、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに離間するように変位し、シャフト1の中立位置からの時計回りへの回転角度が大きくなって、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2上を走行するようになると、緩衝器Dが発生する減衰力はカムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1上を走行する際の減衰力よりも大きくなり、シャフト1の中立位置から時計回りへの回転角度の増加に応じて増加する。
【0077】
したがって、シャフト1が中立位置を起点として車体Bと車輪Wとが離間する方向へストロークする場合の緩衝器Dの減衰力の特性は、
図7に示すように、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2に到達するまでは減衰力が一定し、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2に到達してからはシャフト1の回転角度の増加に対して減衰力が増加する特性となる。
【0078】
また、傾斜部15a2,18a2と平坦部15a1,18a1とがなす傾斜角度θ1は、傾斜部15a3,18a3と平坦部15a1,18a1とがなす傾斜角度θ2よりも大きいので、車体Bと車輪Wとのストローク量に対する減衰力の増加割合は、
図7に示したように、シャフト1が反時計回りに回転する場合と比較して時計回りに回転する場合の方が大きくなる。
【0079】
車体Bと車輪Wとが最大限に離間した後、車体Bと車輪Wとが上下方向で接近する方向へストロークするようになると、シャフト1の回転方向が時計回りから反時計回りへと逆転して、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2の高い部分から低い部分へ移動していく。このようにシャフト1の回転方向が反時計回りへ切り換わり、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2上を走行する状況では、カムフォロア16,19が第1摩擦ディスク2から軸方向で離間する方向へ変位する。また、シャフト1の中立位置からの回転角度の減少に伴って、第1弾性体5の第2摩擦ディスク3を付勢する付勢力と第2弾性体6の第3摩擦ディスク4を付勢する付勢力は減少する。
【0080】
よって、車体Bと車輪Wとが最大限に離間した後、上下方向に互いに接近するように変位し、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2上を走行する状況では、緩衝器Dが発生する減衰力は、シャフト1の中立位置までの回転角度の減少に伴って減少する。
【0081】
さらに、車体Bと車輪Wとが上下方向に互い接近するように変位し続けて、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2から平坦部15a1,18a1を走行するようになると、カムフォロア16,19が第1摩擦ディスク2から最大限に離間するため、緩衝器Dが発生する減衰力が最小になる。緩衝器Dは、車体Bと車輪Wとが上下方向に互いに離間するように変位し続けて、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1を挟んで反対側の傾斜部15a3,18a3に到達するまでは、カムフォロア16,19が第1摩擦ディスク2から最大限に離間した状態を維持するので、発生する減衰力を最小とする。
【0082】
したがって、車体Bと車輪Wとが最大限に離間した状態から互いに接近する方向へストロークする場合の緩衝器Dの減衰力の特性は、
図7に示すように、カムフォロア16,19が傾斜部15a2,18a2上を走行する状況ではシャフト1の中立位置からの回転角度の減少に対して減衰力が減少し、カムフォロア16,19が平坦部15a1,18a1に到達して平坦部15a1,18a1を走行する状況ではシャフト1の中立位置からの回転角度によらず減衰力が一定となる特性となる。
【0083】
以上のように、本実施の形態の緩衝器Dは、周方向に回転可能なシャフト1と、シャフト1に周方向回転不能に取り付けられてシャフト1とともに周方向に回転可能な第1摩擦ディスク2と、周方向への回転が不能であって第1摩擦ディスク2に当接して第1摩擦ディスク2が回転すると第1摩擦ディスク2との間でシャフト1の回転を抑制する摩擦力を発生する第2摩擦ディスク3と、環状のカム15とカム15に対してシャフト1の軸方向へ相対移動可能なカムフォロア16とを有してカム15がシャフト1に取り付けられるとともにシャフト1の回転によって軸方向長さが変化する第1カムユニットC1と、第1カムユニットC1と第2摩擦ディスク3との間に配置されて第2摩擦ディスク3を第1摩擦ディスク2へ向けて付勢する第1弾性体5とを備えている。
【0084】
このように構成された緩衝器Dは、車体Bが前記車高を中心として車輪Wに対して上下方向へ変位した場合、変位量が小さい場合には、シャフト1の中立位置からの回転角度が小さいので、当該車体Bの変位を抑制するのに十分な減衰力を発生する一方、車体Bが車輪Wに対して大きく振動する場合には、シャフト1の中立位置からの回転角度が大きくなり、車体Bのストロークに応じて大きな減衰力を発揮するようになる。つまり、緩衝器Dは、シャフト1の中立位置からの回転角度に応じて第2摩擦ディスク3を第1摩擦ディスク2へ向けて付勢する第1弾性体5の付勢力を変化させるので、シャフト1の中立位置からの回転角度に応じて減衰力を変化させ得る。
【0085】
よって、本実施の形態の緩衝器Dは、車体Bが小さなストロークで振動する場合に車体Bの振動の抑制に適する小さな減衰力の発揮のみならず、車体Bが大きなストロークで振動される際に要求される大きな減衰力をも発生でき、車体Bの振動状況に応じて適切な減衰力を発生できる。このように、本実施の形態の緩衝器Dは、車体Bの振動状況に応じて減衰力を変化させて車両における乗心地を向上できる。
【0086】
前述したところでは、カムフォロア16と第2摩擦ディスク3との間に第1弾性体5を介装しているが、第1弾性体5とホルダ13とを廃止して、シャフト1の回転によって軸方向に移動するカムフォロア16に第2摩擦ディスク3を設置するようにしてもよい。このようにしても、シャフト1の回転によって第1カムユニットC1の軸方向長さが変化によって第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の接触面圧が変化して、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間の摩擦力が変化し、緩衝器Dは、シャフト1の中立位置からの回転角度に応じて減衰力を変化させ得る。ただし、第1弾性体5を設けると、第1弾性体5のばね定数の設定によって緩衝器Dの減衰力をチューニングできるようになるので、緩衝器Dの減衰力のチューニングが容易になる。
【0087】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1カムユニットC1におけるカム15をシャフト1に取り付けているが、カム15をシャフト1に対して軸方向へ移動可能として、カム15の代わりにベース17を介して或いは直接にカムフォロア16をシャフト1に取り付け、カム15とカムフォロア16の軸方向における配置を入れ替えて、カム15と第2摩擦ディスク3との間に第1弾性体5を介装してもよい。
【0088】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1カムユニットC1と第1摩擦ディスク2との間に第2摩擦ディスク3を配置しているが、第2摩擦ディスク3を軸方向に移動不能として、第1カムユニットC1と第2摩擦ディスク3との間にシャフト1に回転不能かつ軸方向移動可能な第1摩擦ディスク2を配置して、第1カムユニットC1で第1摩擦ディスク2を第2摩擦ディスク3へ向けて直接に押圧するか、或いは、第1カムユニットC1と第1摩擦ディスク2との間に第1弾性体5を介装して第1弾性体5で第1摩擦ディスク2を第2摩擦ディスク3へ向けて付勢する構造を採用してもよい。
【0089】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1弾性体5は、皿ばねとされているが、第1カムユニットC1と第2摩擦ディスク3との間に介装されて第2摩擦ディスク3を第1摩擦ディスク2に当接させつつ付勢できればよく、コイルばね、スプリングワッシャ、気体ばね、ゴム、合成樹脂等といった弾性体の利用も可能である。
【0090】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dは、周方向への回転が不能であって第1摩擦ディスク2の反第2摩擦ディスク3側面に当接して第1摩擦ディスク2が回転すると第1摩擦ディスク2との間でシャフト1の回転を抑制する摩擦力を発生する第3摩擦ディスク4と、環状のカム18とカム18に対してシャフト1の軸方向へ相対移動可能なカムフォロア19とを有してカム18がシャフト1に取り付けられて第1摩擦ディスク2の反第1カムユニットC1側に配置される第2カムユニットC2と、第2カムユニットC2と第3摩擦ディスク4との間に配置されて第3摩擦ディスク4を第1摩擦ディスク2へ向けて付勢する第2弾性体6とを備えている。
【0091】
このように構成された緩衝器Dでは、1つの第1摩擦ディスク2を第2摩擦ディスク3と第3摩擦ディスク4とで挟み込んで、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3との間、および第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間でそれぞれ摩擦力を発生できるので、少ない部品点数で大きな減衰力の発生が可能である。また、1つの第1摩擦ディスク2を第2摩擦ディスク3と第3摩擦ディスク4とで挟み込んで、第1摩擦ディスク2に荷重を与える構造を採用しているため、第1摩擦ディスク2を径方向で撓ませるようなモーメントが負荷されず、緩衝器Dの耐久性能も向上する。なお、この場合、シャフト1に対して第1摩擦ディスク2が軸方向へ移動可能に装着されている場合、第1摩擦ディスク2を径方向で撓ませるようなモーメントがキャンセルされるので、緩衝器Dの耐久性能もより一層向上する。
【0092】
前述したところでは、カムフォロア19と第3摩擦ディスク4との間に第2弾性体6を介装しているが、第2弾性体6とホルダ14とを廃止して、シャフト1の回転によって軸方向に移動するカムフォロア19に第3摩擦ディスク4を設置するようにしてもよい。このようにしても、シャフト1の回転によって第2カムユニットC2の軸方向長さが変化して第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の接触面圧が変化して第1摩擦ディスク2と第3摩擦ディスク4との間の摩擦力が変化するので、緩衝器Dは、シャフト1の中立位置からの回転角度に応じて減衰力を変化させ得る。ただし、第2弾性体6を設けると、第2弾性体6のばね定数の設定によって緩衝器Dの減衰力をチューニングできるようになるので、緩衝器Dの減衰力のチューニングが容易になる。
【0093】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、第2カムユニットC2と第1摩擦ディスク2との間に第3摩擦ディスク4を配置しているが、第3摩擦ディスク4を軸方向に移動不能として、第2カムユニットC2と第3摩擦ディスク4との間にシャフト1に回転不能かつ軸方向移動可能な第1摩擦ディスク2を配置して、第2カムユニットC2で第1摩擦ディスク2を第3摩擦ディスク4へ向けて直接に押圧するか、或いは、第2カムユニットC2と第1摩擦ディスク2との間に第2弾性体6を介装して第2弾性体6で第1摩擦ディスク2を第3摩擦ディスク4へ向けて付勢する構造を採用してもよい。なお、第1摩擦ディスク2を第3摩擦ディスク4へ向けて押圧する場合、第3摩擦ディスク4を中心として軸方向の両側に第1摩擦ディスク2を配置して、第1および第2のカムユニットC1,C2によって各第1摩擦ディスク2を第3摩擦ディスク4へ向けて押圧する構造とすれば、第3摩擦ディスク4は軸方向の両側から押圧力が負荷されるので軸方向に固定されていなくともよい。
【0094】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、カム15、18は、カムフォロア16,19に対応する円弧状のカム面15a,18aを有し、カム面15a,18aは、平坦部15a1,18a1と、平坦部15a1,18a1の周方向の両側のそれぞれ設けられて軸方向に隆起するように傾斜する一対の傾斜部15a2,15a3,18a2,18a3とを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、車体Bが車輪Wに対して接近する収縮側と、車体Bが車輪Wに対して離間する伸長側の双方で、ストロークが大きくなると大きな減衰力を発生できるようになる。
【0095】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、傾斜部15a2,15a3,18a2,18a3のうち一方の傾斜部15a2,18a2における平坦部15a1,18a1に対する傾斜角度θ1と、他方の傾斜部15a3,18a3における平坦部15a1,18a1に対する傾斜角度θ2とが異なっている。このように構成された緩衝器Dによれば、車体Bが車輪Wに対して接近する収縮側と、車体Bが車輪Wに対して離間する伸長側の減衰力の特性を独立に設定して両者を異ならしめて、車両における乗心地を効果的に向上できる。
【0096】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1摩擦ディスク2の一方に第2摩擦ディスク3、第1弾性体5および第1カムユニットC1を備え、第1摩擦ディスク2の他方に第3摩擦ディスク4、第2弾性体6および第2カムユニットC2を備えいるが、第3摩擦ディスク4、第2弾性体6および第2カムユニットC2を廃止してもよい。また、第1摩擦ディスク2と第2摩擦ディスク3とを1つの摩擦力発生ユニットとして、シャフト1の軸方向に対して当該摩擦力発生ユニットを複数設けてもよい。さらには、第1カムユニットC1と第2カムユニットC2との間にシャフト1の軸方向に複数の前記摩擦力発生ユニットを設けてもよい。
【0097】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、カム15,18のカム面15a,18aは、互いに鏡像の関係となっているが、所望するストローク(シャフト1の回転角度)に対する減衰力の特性に応じて任意に設計変更可能である。よって、たとえば、傾斜部15a2,15a3,18a2,18a3の各傾斜角度θ1とθ2とを同じ角度に設定して。伸長側と収縮側とで緩衝器Dの減衰力の特性を同一にしてもよいし、車体Bが車輪Wに対して接近する収縮側で緩衝器Dが減衰力を大きくしなくてもよい場合、カム面15a(18a)における傾斜部15a2,15a3(18a2,18a3)のうち収縮側に対応する傾斜部を廃止して、カム面15a(18a)が周方向の一方のみに傾斜部を備えた形状に形成されてもよい。
【0098】
なお、シャフト1が中立位置にある状態からの回転角度が大きくなると減衰力が大きくなるようにしたい場合、カム面15a,18aの周方向の両側の高さを中央よりも高くすればよく、このようにすることで、緩衝器Dを車両に設置すれば車体Bの振動のストロークが大きくなると減衰力が大きくなって、車体Bの振動を効果的に抑制できる。よって、このような減衰力特性を得たい場合、たとえば、カム面15a,18aは、平坦部を備えずに中央が窪んで両端側が高くなるように両端側に傾斜部のみを備える形状の採用も可能であるし、傾斜部15a2と傾斜部15a3の最大高さを違えてもよい。さらに、傾斜部15a2,15a3,18a2,18a3は、途中で傾斜角度が変化する傾斜面で構成されてもよい。
【0099】
また、傾斜部15a2と傾斜部15a3の起点の位置がシャフト1が中立位置にある場合のカムフォロア16が平坦部15a1に接触する位置から等距離に設定されていなくともよい。また、本実施の形態の緩衝器Dの場合、車体Bが静止して懸架ばねSによって一定の車高に維持された状態においてシャフト1がケース7に対して周方向で位置決めされた位置を中立位置としているが、中立位置は任意に変更可能であり、中立位置は、必ずしもカム面15a,18aの周方向の中央にカムフォロア16,19が位置するようなシャフト1の回転方向の位置でなくともよい。
【0100】
なお、本実施の形態の説明では、緩衝器Dを車両の車体Bと車輪Wとの間に介装して車体Bの制振に利用する例にしているが、緩衝器Dは、車両の制振用途以外にも土木における構造物、建築物、各種機械や機器の制振にも使用可能である。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1・・・シャフト、2・・・第1摩擦ディスク、3・・・第2摩擦ディスク、4・・・第3摩擦ディスク、5・・・第1弾性体、6・・・第2弾性体、15,18・・・カム、15a,18a・・・カム面、15a1,18a1・・・平坦部、15a2,15a3,18a2,18a3・・・傾斜部、16,19・・・カムフォロア、C1・・・第1カムユニット、C2・・・第2カムユニット、D・・・緩衝器