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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136379
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H01F27/29 125
H01F27/29 F
H01F27/29 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041969
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】本田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】大坪 睦泰
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043EA01
5E043EB01
5E043EB05
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070DA13
5E070EA02
5E070EB03
(57)【要約】
【課題】耐振性が高く、かつ実装性にもすぐれた電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】成形体11と、成形体11に埋設された導体12と、成形体の底面11aと両端面11c、11dを取り囲むように取り付けられた金属板13と、を有する電子部品であって、一方の端面11cに重なる金属板13と導体の端部12aとは電気的機械的に接合され、金属板の他方の端面11dに重なる部分には貫通孔13aが設けられ一方の端面11cには凸部11eが設けられて、貫通孔13aに凸部11eを係止したものであり、貫通孔13aと凸部11eとの間の隙間15のうち、少なくとも成形体の天面11b側の隙間15には樹脂製の充填材14が充填されている電子部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体と、前記成形体に埋設された導体と、前記成形体の底面と両端面を取り囲むように取り付けられた金属板と、を有する電子部品であって、前記金属板は前記導体の端部が突出した前記成形体の一方の端面から前記成形体の底面、前記成形体の一方の端面とは反対側の他方の端面にかけて設けられたものであり、前記一方の端面に重なる前記金属板と前記導体の端部とは電気的機械的に接合され、前記金属板の前記他方の端面に重なる部分には貫通孔が設けられ、前記他方の端面には凸部が設けられて、前記貫通孔に前記凸部を係止したものであり、前記貫通孔と前記凸部との間の隙間のうち、少なくとも前記成形体の底面とは反対側の天面側の前記隙間には樹脂製の充填材が充填されている電子部品。
【請求項2】
前記金属板が重なる部分の前記成形体の底面には凹部が設けられ、前記金属板が前記凹部に向かって変形されることにより、前記金属板が前記成形体に固定されている請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記充填材のヤング率は、前記成形体のヤング率の0.08倍以上である請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記充填材は熱硬化性のエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の板を実装面として用いて、電子回路基板上に実装する電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電動化がすすめられており、電気自動車やハイブリッド車向けの大電流対応の電子部品の需要が高まっている。車載部品においては自動車の走行時の振動に耐えられるように設計することが求められている。なお、耐振性の高い電子部品に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-150093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大電流対応の電子部品は必然的に製品サイズが大きくなるため、製品重量も大きくなる傾向にある。製品重量が大きい電子部品は、とくに基板に接合される金属端子部位において、振動時の負荷が大きくなるため、より高い耐振性を確保することが課題となる。
【0005】
本発明では耐振性が高く、なおかつ実装性にもすぐれた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品は、成形体と、成形体に埋設された導体と、成形体の底面と両端面を取り囲むように取り付けられた金属板と、を有する電子部品であって、金属板は導体の端部が突出した成形体の一方の端面から成形体の底面、成形体の一方の端面とは反対側の他方の端面にかけて設けられたものであり、一方の端面に重なる金属板と導体の端部とは電気的機械的に接合され、金属板の他方の端面に重なる部分には貫通孔が設けられ、他方の端面には凸部が設けられて、貫通孔に凸部を係止したものであり、貫通孔と凸部との間の隙間のうち、少なくとも成形体の底面とは反対側の天面側の隙間には樹脂製の充填材が充填されているように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
樹脂製の充填材が凸部と金属板の隙間を埋めることにより、成形体底面と金属板の間の隙間の発生を抑制する。これにより成形体と金属板の密着性が高まり、高い耐振性を確保することができる。また金属板底面の平面度が保たれるため、金属板底面を回路基板に対する実装面として活用することにより、すぐれた実装性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態における電子部品の斜視図
図2】本発明の一実施の形態における金属板をかしめつける前の状態の外観図
図3】本発明の一実施の形態における金属板と凸部との隙間に充填材を充填した状態の図
図4】本発明の一実施の形態における充填材を硬化させたのちに金属板を凹部に沿ってかしめた状態の図
図5】本発明の一実施の形態における電子部品の共振周波数と充填材のヤング率の関係性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における電子部品について、インダクタを一例として図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明における電子部品の斜視図、図2は同電子部品の側面図である。図1(a)は一方の端面側から見た外観斜視図、図1(b)は他方の端面側から見た透視斜視図である。
【0011】
成形体11は金属磁性体粉と樹脂材料とを混合したものを金型に投入して圧力をかけて押し固めたものである。成形体11は矩形形状で天面サイズが40mm×40mm、高さは20mm程度である。
【0012】
成形体11の内部には導体12として絶縁被覆された導線を巻いて形成されたコイルが封入されている。コイルは銅製の平角状の導線をエッジワイズ巻にしたものである。導体の端部12aは成形体11の一方の端面11cから引き出され、成形体11の外部に露出している。コイルの両端部である導体の端部12aは露出面において直角に曲げられている。
【0013】
図1に示す2枚の金属板13は、それぞれ厚さ1mmの銅板の表面にニッケルメッキとスズメッキを施したもので、メッキにより半田濡れ性を確保している。金属板13はコの字型に折り曲げられて、導体の端部12aが突出した成形体の一方の端面11cから成形体の底面11a、成形体の一方の端面11cとは反対側の他方の端面11dにかけて設けられている。
【0014】
成形体の一方の端面11cでは成形体11から突出した導体の端部12aが溶接により、金属板13と接合され、電気的機械的に接続されている。また成形体の他方の端面11dには凸部11eが設けられ、成形体の他方の端面11dに重なる部分の金属板13には貫通孔13aが設けられている。この貫通孔13aに凸部11eを入れることにより、金属板13を成形体11に係止している。
【0015】
ここで成形体の底面11aから凸部11eの天面11b側の位置は、成形体の一方の端面11cから引き出されている導体の端部12aの底面側の位置に合わせることが望ましい。このようにすることにより上下金型の分割ラインを底面と平行にすることができ、製造が容易となる。
【0016】
また一方の端面11cに重なる金属板13にも貫通孔13bを設けて観音開き形状に折り曲げて、導体の端部12aと溶接して電気的機械的に接続しても良い。
【0017】
さらに金属板13が重なる部分の成形体の底面11aに凹部11fを設け、凹部11fに重なる部分の金属板13を凹部11fに向かって押し込むことにより、金属板13を成形体11にかしめつけても良い。このようにすることにより、成形体11に金属板13を密着させることができ、電子部品の耐振性を向上させることができる。
【0018】
貫通孔13aと凸部11eとの間の隙間15のうち、少なくとも成形体の底面11aとは反対側の天面11b側の隙間15にはエポキシ樹脂製の充填材14が充填されている。
【0019】
上記の成形体、コイル、金属板、充填材を含めた製品重量は210g程度となる。
【0020】
以上のように構成された電子部品は金属板が成形体の底面に密着するため、振動において金属板の変形が抑制されることにより、高い耐振性を有する。また金属板は凹部に向かって凹まされた以外の部分で平面度が保たれるため、基板への実装性も優れている。
【0021】
上記の効果について、以下、金属板のとりつけ方法を踏まえながらより詳しく説明する。
【0022】
図2は本発明における金属板13を成形体の底面11aでかしめつける前の状態の図である。図3(a)は一方の端面側から見た図、図3(b)は側面から見た図、図3(c)は他方の端面から見た図である。金属板13はコの字型に折り曲げられて、成形体の底面11aと両端面11c、11dを取り囲むように成形体11にとりつけられている。金属板13は、片側に貫通孔13aが設けられ、貫通孔13aを成形体11の凸部11eにひっかけるようにして金属板13がとりつけられる。貫通孔13aと凸部11eとの間には隙間15が設けられている。
【0023】
金属板13のもう片側にも貫通孔13bが設けられており、貫通孔13bに導体の端部12aを通す構成になっている。貫通孔13bの周辺の金属板13は、観音開き形状に折り曲げて導体の端部12aに溶接され、導体の端部12aと電気的に導通している。
【0024】
図3は上記で説明した金属板13と凸部11eの周辺との隙間15に充填材14を充填する方法を説明する図である。他方の端面11dを上に向けた状態で治具16により成形体11を固定した状態で充填材14を隙間15に充填する。このようにすることにより充填材が隙間15から流れ出るのを防ぐことができる。金属板13と凸部11eの間の隙間15は、金属板13の取付け性を良くするため、0.2mm~0.5mm程度のサイズとなっている。この金属板13と凸部11eの隙間15のうち、とくに成形体の天面11b側に樹脂製の充填材14を充填する。充填材14は硬化後のヤング率が約1.2GPaのエポキシ性の熱硬化性樹脂材を用いる。上記の隙間15に液状のエポキシ材を充填し100℃以上の加熱温度で硬化させる。充填を開始してから硬化が完了するまでは、成形体の天面11bと金属板13の底面を治具16で両側から抑え込んで、金属板13と成形体の底面11aとの間に隙間が発生しないように固定する。
【0025】
図4は上記で説明した充填材14を硬化させたのちに金属板13を凹部11fに沿ってかしめた状態の図である。先端が円形形状の治具17を上から押しこんで金属板13を凹部11fに沿った形に変形させる。この際、金属板13と凸部11eの間の隙間15は充填材14によって充填されているため、かしめ工程の最中に金属板13が浮きあがることがなく、成形体の間の隙間の発生が抑制される。これにより、金属板13と成形体11との密着性が高まり、耐振性が高まる。また、金属板の平面度が保たれるため、実装基板への実装も安定する。
【0026】
以上のように金属板13と凸部11eとの間の隙間15に樹脂を充填して樹脂を硬化させたのちに金属板13をかしめることにより、樹脂が圧縮された状態で金属板13が成形体11に固定される。そのため充填材14の硬化した後のヤング率を、成形体11のヤング率よりも小さいものとしておくことが望ましい。
【0027】
本発明における電子部品の金属板の底面を、回路基板へ実装した場合、回路基板の面に垂直な方向(鉛直方向)に対する振動特性は、充填材のヤング率に影響される。
【0028】
図5は本発明の回路基板に実装した電子部品の共振周波数を縦軸にとり、充填材のヤング率と成形体のヤング率の比αを横軸にとったグラフである。たとえばαが0.1のときは充填材のヤング率が成形体のヤング率の0.1倍であることを示す。成形体天面サイズ40mm×40mm、厚み20mm、金属板の厚みは1mmである。成形体の密度は5.7g/cm、ヤング率は13GPaである。金属板の密度は8.93g/cm、ヤング率は112GPaである。これらの条件に対して充填材のヤング率を変化させて共振周波数を求め、充填材のヤング率と成形体のヤング率の比αとの関係を示したものである。
【0029】
図5に示す通り、鉛直方向に対する共振周波数は、αの値が0.08以上の領域で安定的に高く保つことができる。安定的というのはαの値にバラつきがあっても共振周波数にたいする変化が少ないということである。これは充填材のサイズが成形体のサイズよりも小さいため、充填材のヤング率が成形体のヤング率に近づくにつれて、充填材の共振にたいする影響度が小さくなっていることが考えられる。なお、一般的に車載用部品では10~2000Hzの振動周波数範囲において耐振性を確保することが求められており、この範囲で共振を避けるように設計されることが求められる。上記のαを0.08以上とすることで上記の周波数範囲を超える共振周波数とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の電子部品は、高い耐振性と実装性を有するため、自動車部品などの分野において、産業上有用である。
【符号の説明】
【0031】
11 成形体
11a 底面
11b 天面
11c 一方の端面
11d 他方の端面
11e 凸部
11f 凹部
12 導体
12a 導体の端部
13 金属板
13a 貫通孔
13b 貫通孔
14 充填材
15 隙間
16 治具
17 治具
図1
図2
図3
図4
図5