(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136408
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】シーブ装置格納展開方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B66C23/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042064
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】江藤 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】宮 英司
(72)【発明者】
【氏名】清水 忠宏
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205DA01
3F205JA01
3F205JA10
(57)【要約】
【課題】吊上側シーブ装置の格納および展開の際に、ロープの張力が過大になることを抑制する。
【解決手段】シーブ装置格納展開ステップS12は、吊上側シーブ装置Dbがアシストクレーン80に吊り上げられた状態で、ウインチWがロープRを巻き取りおよび繰り出しする。張力情報検出ステップS21は、シーブ装置格納展開ステップS12が行われるときのロープRのロープ状態情報を検出する。張力情報利用ステップS30は、張力情報検出ステップS21で検出されたロープ状態情報に基づいて、作業者への通知、およびウインチWの駆動制御の少なくともいずれかを行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープと、
前記ロープを巻き取りおよび繰り出しするウインチと、
前記ロープが掛けられるシーブを有する吊上側シーブ装置と、
を備えるクレーンにおけるシーブ装置格納展開方法であって、
前記吊上側シーブ装置がアシストクレーンに吊り上げられた状態で、前記ウインチが前記ロープを巻き取りおよび繰り出しするシーブ装置格納展開ステップと、
前記シーブ装置格納展開ステップが行われるときの前記ロープのロープ状態情報を検出する張力情報検出ステップと、
前記張力情報検出ステップで検出された前記ロープ状態情報に基づいて、作業者への通知、および前記ウインチの駆動制御の少なくともいずれかを行う張力情報利用ステップと、
を備える、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記張力情報検出ステップで検出される前記ロープ状態情報は、前記ロープの張力である、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記張力情報検出ステップで検出される前記ロープの張力は、前記ロープが掛けられるシーブの軸に作用する力を検出する張力センサに検出される、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項4】
請求項1に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記張力情報検出ステップで検出される前記ロープ状態情報は、前記アシストクレーンの吊荷重である、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記張力情報利用ステップは、前記張力情報検出ステップで検出された前記ロープ状態情報の値が所定の警告不要範囲外である場合に、前記作業者に警告を行う、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記張力情報利用ステップは、前記張力情報検出ステップで検出された前記ロープ状態情報の値が所定の制限不要範囲外である場合に、前記クレーンのコントローラが前記ウインチの駆動を制限する、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記吊上側シーブ装置は、前記クレーンの構造物に起伏可能に取り付けられる起伏部材を起伏させる上部スプレッダである、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記吊上側シーブ装置は、ブームに起伏可能に取り付けられるジブを起伏させるストラットである、
シーブ装置格納展開方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のシーブ装置格納展開方法であって、
前記張力情報利用ステップは、前記張力情報検出ステップで検出される前記ロープ状態情報の値が所定の適切張力範囲に収まるように、前記クレーンのコントローラが前記ウインチの駆動を制御する、
シーブ装置格納展開方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのシーブ装置を格納展開するためのシーブ装置格納展開方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、吊上側シーブ装置(同文献では上部スプレッダ)の格納について記載されている(同文献の段落0007)。同文献に記載の技術では、吊上側シーブ装置(上部スプレッダ)がアシストクレーンに吊り上げられた状態で、ウインチがロープに張力を掛けながら、ウインチがロープを徐々に巻き取る。これにより、吊上側シーブ装置(上部スプレッダ)が格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吊上側シーブ装置を格納する際に、アシストクレーンによる吊上側シーブ装置の移動速度に対して、ウインチによるロープの巻き取りの速度を適切に調整しなければ、ロープの張力が過大になるおそれがある。また、吊上側シーブ装置を格納状態から展開する際にも同様の問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、吊上側シーブ装置の格納および展開の際に、ロープの張力が過大になることを抑制することができる、シーブ装置格納展開方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
シーブ装置格納展開方法は、クレーンに用いられる。前記クレーンは、ロープと、前記ロープを巻き取りおよび繰り出しするウインチと、前記ロープが掛けられるシーブを有する吊上側シーブ装置と、を備える。シーブ装置格納展開方法は、シーブ装置格納展開ステップと、張力情報検出ステップと、張力情報利用ステップと、を備える。前記シーブ装置格納展開ステップは、前記吊上側シーブ装置がアシストクレーンに吊り上げられた状態で、前記ウインチが前記ロープを巻き取りおよび繰り出しする。前記張力情報検出ステップは、前記シーブ装置格納展開ステップが行われるときの前記ロープのロープ状態情報を検出する。前記張力情報利用ステップは、前記張力情報検出ステップで検出された前記ロープ状態情報に基づいて、作業者への通知、および前記ウインチの駆動制御の少なくともいずれかを行う。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、吊上側シーブ装置の格納および展開の際に、ロープの張力が過大になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】シーブ装置格納展開方法を行うシーブ装置格納展開システム1などのクレーン10を横方向から見た図である。
【
図2】
図1に示す吊上側シーブ装置Dbが格納展開されるときのクレーン10を横方向から見た図である。
【
図3】
図1に示すシーブ装置格納展開システム1などを示すブロック図である。
【
図4】
図1に示すシーブ装置格納展開システム1などの作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1~
図4を参照して、第1実施形態のシーブ装置格納展開システム1について説明する。
【0010】
シーブ装置格納展開システム1は、
図1に示すシーブ装置Dの格納および展開の少なくともいずれかを補助するシステムである。シーブ装置格納展開システム1は、シーブ装置Dの格納および展開の少なくともいずれかを自動的に行うシステムでもよい。シーブ装置格納展開システム1は、クレーン10と、
図3に示すコントローラ71と、通知部73と、アシストクレーン80と、を備える。
【0011】
クレーン10は、
図1に示すように、ブーム20(起伏部材)などを用いて作業を行う機械である。クレーン10は、例えば建設作業を行う建設機械である。クレーン10は、下部本体11と、上部旋回体13と、ブーム20と、ブーム起伏装置30と、を備える。なお、
図1に示すジブ340(起伏部材)およびジブ起伏装置350については後述する。ジブ340およびジブ起伏装置350は、本実施形態では設けられなくてもよい。
【0012】
下部本体11は、上部旋回体13を支持する。下部本体11は、地面に対して固定された構造物でもよく、走行可能でもよい。クレーン10は、固定式クレーンでもよく、移動式クレーンでもよい。下部本体11が走行可能である場合(下部走行体である場合)、下部本体11は、クローラを備えてもよく、ホイールを備えてもよい。
【0013】
上部旋回体13は、下部本体11に旋回可能に搭載される。上部旋回体13には、ブーム20などが取り付けられる。上部旋回体13は、運転室13aと、カウンタウエイト13bと、を備える。運転室13aは、作業者(オペレータ)がクレーン10を操作することが可能な部分である。クレーン10は、運転室13a内のオペレータに操作されてもよく、クレーン10の外部のオペレータに遠隔操作されてもよく、コントローラ71(
図3参照)により自動運転されてもよい。カウンタウエイト13bは、クレーン10の前後方向のバランスをとるための、おもりである。下部本体11に対する上部旋回体13の回転軸が延びる方向を上下方向とする。上部旋回体13に対するブーム20の回転軸が延びる方向を横方向とする。上下方向および横方向のそれぞれに直交する方向を前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、カウンタウエイト13bから、上部旋回体13へのブーム20の取付部に向かう側を前側X1とし、その逆側を後側X2とする。
【0014】
ブーム20(起伏部材)は、上部旋回体13に起伏可能(上下方向に回転可能)に取り付けられる。「起伏部材」は、クレーン10の構造物(例えば上部旋回体13など)に起伏可能に取り付けられる部材である。ブーム20は、ブーム20の長手方向に延びるブーム20の中心軸が水平方向または略水平方向に延びるように伏せられた姿勢(倒伏姿勢)になることが可能である(
図2参照)。ブーム20が倒伏姿勢のときのブーム20の上面を、ブーム背面20bとする。ブーム20は、下部ブーム21と、中間ブーム23と、上部ブーム25と、を備える。下部ブーム21は、ブーム20の基端部(上部旋回体13に取り付けられる側の端部)に配置される。中間ブーム23は、下部ブーム21の先端部(上部旋回体13に取り付けられる側とは反対側の端部)に連結される。上部ブーム25は、中間ブーム23の先端部に連結され、ブーム20の先端部に配置される。上部ブーム25は、略六面体状の部材(ブームヘッド、タワーキャップ)でもよく、ブーム20の軸方向に長い部材でもよい。
【0015】
ブーム起伏装置30は、上部旋回体13に対してブーム20を起伏させる装置である。ブーム起伏装置30は、ガントリ31と、ブーム起伏スプレッダ33と、ブームガイライン35と、ブーム起伏ロープ37(ロープR)と、ブーム起伏ウインチ39(ウインチW)と、を備える。
【0016】
ガントリ31は、コンプレッションメンバ31aと、テンションメンバ31bと、を備える。コンプレッションメンバ31aは、上部旋回体13に取り付けられる。テンションメンバ31bは、コンプレッションメンバ31aの先端部と、上部旋回体13の後側X2端部と、に接続される。
【0017】
ブーム起伏スプレッダ33(後述するシーブ装置Dの一例)は、ブーム起伏ロープ37が掛けられるシーブを有する装置である。ブーム起伏スプレッダ33は、ブーム起伏下部スプレッダ33a(後述する支持側シーブ装置Daの一例)と、ブーム起伏上部スプレッダ33b(後述する吊上側シーブ装置Dbの一例、上部スプレッダ)と、を備える。ブーム起伏下部スプレッダ33aは、シーブ(例えば複数のシーブ)を有する装置であり、コンプレッションメンバ31aの先端部に設けられる。ブーム起伏上部スプレッダ33bは、シーブ(例えば複数のシーブ)を有する装置である。ブーム起伏上部スプレッダ33bは、クレーン10が作業姿勢(作業可能な姿勢)のときには、コンプレッションメンバ31aの先端部とブーム20の先端部との間に配置される。
【0018】
ブームガイライン35は、クレーン10が作業姿勢のときには、ブーム起伏上部スプレッダ33bと、ブーム20の先端部と、に接続される。
【0019】
ブーム起伏ロープ37(ロープR)は、ブーム起伏下部スプレッダ33aのシーブと、ブーム起伏上部スプレッダ33bのシーブと、に掛けられる(掛け回される)。
【0020】
ブーム起伏ウインチ39(ウインチW)は、上部旋回体13に搭載される。ブーム起伏ウインチ39が、ブーム起伏ロープ37を、巻き取りおよび繰り出しする。すると、ブーム起伏下部スプレッダ33aとブーム起伏上部スプレッダ33bとの間隔が変わる。クレーン10が作業姿勢のときには、ブーム起伏上部スプレッダ33bとブーム20の先端部とがブームガイライン35で接続されている。よって、ブーム起伏下部スプレッダ33aとブーム起伏上部スプレッダ33bとの間隔が変わると、上部旋回体13に対してブーム20が起伏する。
【0021】
なお、ブーム起伏装置30の構成は、様々に変更可能である。例えば、ガントリ31に代えてマスト531(
図7参照)(後述する吊上側シーブ装置Dbの一例)が設けられてもよい(後述)。また、ブーム起伏装置30は、ガントリ31とマスト531(
図7参照)とを備えてもよく、複数のマスト531を備えてもよい。
【0022】
(シーブ装置D、ロープR、およびウインチW)
シーブ装置Dは、ロープRが掛けられるシーブを有する装置である。シーブ装置Dは、支持側シーブ装置Daと、吊上側シーブ装置Dbと、を備える。
図2に示すように、吊上側シーブ装置Dbは、シーブ装置Dのうち、シーブ装置Dの格納および展開(後述)の際にアシストクレーン80に吊り上げられる部分である。支持側シーブ装置Daは、シーブ装置Dのうち、吊上側シーブ装置Dbとは異なる部分である。支持側シーブ装置Daは、シーブ装置Dの格納および展開の際にクレーン10の構造物(例えばガントリ31など)に保持される部分である。
【0023】
ロープRは、支持側シーブ装置Daのシーブと吊上側シーブ装置Dbのシーブとをつなぐように、これらのシーブに掛けられる(掛け回される)。
【0024】
ウインチWは、ロープRを巻き取りおよび繰り出しする。ウインチWは、クレーン10の構造物(例えば上部旋回体13、下部ブーム21など)に搭載される。ウインチWは、ロープRを巻き取りおよび繰り出しすることで、支持側シーブ装置Daと吊上側シーブ装置Dbとの間隔を変え、その結果、起伏部材(例えば
図1に示すブーム20、ジブ340など)を起伏させる。
図3に示すように、ウインチWは、ドラムWdと、モータWmと、を備える。ドラムWdは、ロープRが巻かれる部材(例えば筒状部材)である。モータWmは、ウインチWが搭載された構造物(例えば上部旋回体13(
図2参照))に対して、ドラムWdを回転させる(回転駆動する)。モータWmは、例えば油圧モータでもよく、電動モータでもよい。
【0025】
張力センサ61(ロープ状態情報検出部RS)は、後述するロープ状態情報を検出する。張力センサ61は、ロープRの張力を検出する。例えば、張力センサ61は、ロープRが掛けられるシーブの軸に作用する力を検出する。上記「ロープRが掛けられるシーブの軸」は、支持側シーブ装置Daのシーブの軸でもよく、吊上側シーブ装置Dbのシーブの軸でもよく、ロープRが掛けられるシーブであってシーブ装置D以外のシーブの軸でもよい。また、例えば、張力センサ61は、ロープRが掛けられるシーブの軸以外の力を検出してもよい。張力センサ61は、例えば、ウインチWに作用する荷重を検出してもよく、例えば、ドラムWdの軸に作用する荷重を検出してもよい。張力センサ61が軸に作用する荷重を検出する場合は、張力センサ61は、例えばロードセルなどである。
【0026】
なお、張力センサ61は、モータWmに掛かる負荷を検出することで、ロープRの張力を検出してもよい。例えば、モータWmが油圧モータである場合、張力センサ61は、モータWmを駆動させる油圧を検出する油圧センサでもよい。また、例えば、モータWmが電動モータである場合、張力センサ61は、モータWmを駆動させる電力を検出する電力センサなどでもよい。そして、コントローラ71が、張力センサ61の検出値(油圧や電力など)を、ロープRの張力に換算してもよい。この場合、コントローラ71は、張力センサ61の一部でもよい。
【0027】
ウインチ駆動部63は、ウインチWを駆動させる。例えば、モータWmが油圧モータである場合、ウインチ駆動部63は、油圧モータを駆動するための油圧回路を備える。例えば、モータWmが電動モータである場合、ウインチ駆動部63は、電動モータを駆動するための電気回路を備える。ウインチ駆動部63は、例えば上部旋回体13(
図2参照)に搭載される。
【0028】
コントローラ71は、信号の入出力、演算(処理)、情報の記憶などを行うコンピュータである。例えば、コントローラ71の機能は、コントローラ71の記憶部(図示なし)に記憶されたプログラムが演算部(図示なし)で実行されることにより実現される。コントローラ71は、例えばクレーン10(
図2参照)に搭載されてもよく、例えば上部旋回体13(
図2参照)に搭載されてもよい。コントローラ71は、クレーン10(
図2参照)の外部に配置されてもよい。
【0029】
通知部73は、作業者(例えばオペレータなど)に対して通知を行う。通知部73による通知の内容は後述する。通知部73は、例えば
図2に示すクレーン10に搭載されてもよく、例えば運転室13aの内部に配置されてもよく、クレーン10のうち運転室13aの内部とは異なる位置に配置されてもよい。
図3に示す通知部73は、クレーン10(
図2参照)の外部に配置されてもよく、例えばクレーン10の遠隔操作を行う遠隔操作部(図示なし)などに配置されてもよい。通知部73が通知を伝える作業者は、クレーン10のオペレータ(運転室13aまたは遠隔操作部で操作するオペレータ)でもよく、アシストクレーン80のオペレータでもよく、作業監督者でもよく、その他の作業者でもよい。通知部73が通知を伝える作業者は、複数人でもよい。例えば、クレーン10のオペレータ以外の作業者が通知部73の通知を受け取った場合に、通知を受け取った作業者が、通知の内容をクレーン10(
図2参照)のオペレータなどに伝達(連絡など)してもよい(アシストクレーン80のオペレータについても同様)。通知部73は、光による通知を行ってもよく、例えば画面表示(モニタ表示)を行うものでもよい。通知部73は、音による通知を行ってもよく、例えば音声による通知を行ってもよい。通知部73は、クレーン10に通常備えられている装置を利用したものでもよい。具体的には例えば、通知部73は、モーメントリミッタのモニタなどでもよい。
【0030】
アシストクレーン80は、
図2に示すクレーン10の組立および分解を行うための、クレーン10とは別の機械(補助クレーン)である。アシストクレーン80は、例えば移動式クレーンである。アシストクレーン80は、アシストクレーン吊荷重センサ81(
図3参照)(ロープ状態情報検出部RS)と、フック83と、を備える。アシストクレーン吊荷重センサ81は、後述するロープ状態情報を検出する。アシストクレーン吊荷重センサ81は、アシストクレーン80の吊荷重(後述)を検出する。フック83は、吊上側シーブ装置Dbが掛けられる部材である。フック83は、例えば玉掛ロープSlや継ぎ手(図示しないシャックルなど)などを介して吊上側シーブ装置Dbが掛けられる。アシストクレーン80(さらに詳しくはアシストクレーン80の図示しないコントローラ)は、クレーン10のコントローラ71(
図3参照)と通信(例えば無線通信)可能に構成される。なお、アシストクレーン80は、シーブ装置格納展開システム1に含まれなくてもよい。
【0031】
(作動)
シーブ装置格納展開システム1では(クレーン10では)、シーブ装置Dの格納展開の作業(シーブ装置格納展開方法)が行われる。シーブ装置Dの格納展開の作業は、例えば、クレーン10の組立分解の作業の一部として行われる。シーブ装置Dの格納展開の作業には、シーブ装置Dの格納(例えばクレーン10の分解作業の一部)と、シーブ装置Dの展開(例えばクレーン10の組立作業の一部)と、がある。
【0032】
シーブ装置Dの格納展開の作業が行われる前に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Dbを吊り上げた状態とされる。ここでは、吊上側シーブ装置Dbがブーム起伏上部スプレッダ33bであり、シーブ装置D(ブーム起伏スプレッダ33)が格納される場合について説明する。
図2に示す状態では、ブーム20は、倒伏姿勢とされる。ブーム20の先端部は、地面に下から支持された状態とされる。ブーム起伏上部スプレッダ33bは、ブームガイライン35(
図1参照)から切り離された状態で、下部ブーム21の先端部のブーム背面20bに配置される。この状態で、ブーム起伏上部スプレッダ33bは、アシストクレーン80に吊り上げられる。ブーム起伏上部スプレッダ33bは、下部ブーム21の先端部のブーム背面20bから、ガントリ31の真上または略真上の位置(例えばブーム起伏下部スプレッダ33aの真上または略真上)の位置に、アシストクレーン80により移動させられる。
【0033】
(シーブ装置Dの格納展開)
シーブ装置Dの格納展開の作業は、
図4に示す作業開始ステップS11と、シーブ装置格納展開ステップS12と、張力情報検出ステップS21と、張力情報利用ステップS30と、完了判定ステップS41と、を備える。以下では、各ステップ(S11~S41)については
図4を参照して説明する。
【0034】
作業開始ステップS11では、
図2に示すシーブ装置Dの格納展開の作業(
図4では「格納」)が開始される。このとき、例えば、コントローラ71(
図3参照)において、シーブ装置Dの格納展開作業のモードが「オン」に設定されてもよい。シーブ装置Dの格納展開作業のモードには、格納作業のモードと、展開作業のモードと、が設定されてもよい。例えば、オペレータの操作(スイッチ操作など)に基づいて、シーブ装置Dの格納展開作業のモードが「オン」に設定されてもよい。なお、コントローラ71(
図3参照)には、シーブ装置Dの格納展開作業のモードなどが設定されなくてもよい。
【0035】
シーブ装置格納展開ステップS12では、吊上側シーブ装置Dbがアシストクレーン80に吊り上げられた状態で、ウインチWがロープRを巻き取りおよび繰り出しする(
図4では「巻き取る」)。具体的には例えば、クレーン10のオペレータの操作に応じて、ウインチWが、ロープRを巻き取る。
【0036】
ウインチWがロープRを巻き取りおよび繰り出しするのと同時に、アシストクレーン80のフック83が巻き上げ(上側に移動)または巻き下げ(下側に移動)される。具体的には例えば、アシストクレーン80のオペレータの操作に応じて、フック83が巻き上げまたは巻き下げされる。
【0037】
ウインチWがロープRを巻き取りおよび繰り出しし、アシストクレーン80のフック83が巻き上げまたは巻き下げされることで、吊上側シーブ装置Dbが移動し、吊上側シーブ装置Dbと支持側シーブ装置Daとの間隔が変わる。
【0038】
[例A1]例えば、シーブ装置Dの格納時には、ウインチWがロープRを巻き取るのと同時に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Dbを巻き下げる。すると、吊上側シーブ装置Dbが、支持側シーブ装置Daに近づき、吊上側シーブ装置Dbと支持側シーブ装置Daとの間隔が、狭くなる。
【0039】
[例A2]シーブ装置Dの展開時には、シーブ装置Dの格納時とは逆の作動が行われる。例えば、ウインチWがロープRを繰り出すのと同時に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Dbを巻き上げる。すると、吊上側シーブ装置Dbが、支持側シーブ装置Daから離れ、吊上側シーブ装置Dbと支持側シーブ装置Daとの間隔が、広くなる。
【0040】
(同調)
シーブ装置Dの格納展開時には、ロープRの張力を適切な範囲に保つために、クレーン10とアシストクレーン80とが連携することが重要である。具体的には、ロープRの張力を適切な範囲に保つために、ウインチWによるロープRの巻き取り(または繰り出し)と、アシストクレーン80のフック83の巻き下げ(または巻き上げ)と、を適切に同調させることが重要である。さらに詳しくは、ウインチWによるロープRの巻き取り(または繰り出し)のスピードSpwと、アシストクレーン80によるフック83の巻き下げ(または巻き上げ)のスピードSpaと、を適切に同調させることが重要である。ロープRの張力が過大または過小になると、次の問題が生じ得る。
【0041】
シーブ装置Dの格納時に、アシストクレーン80側の巻き下げのスピードSpaに対して、ウインチW側の巻き取りのスピードSpwが速すぎる場合、ロープRの張力が過大(過張力)になり、次の問題が生じ得る。[例B1]ロープRの張力が過大になると、シーブ装置Dが破損するおそれがある。例えば、吊上側シーブ装置Dbおよび支持側シーブ装置Daの少なくともいずれかが破損するおそれがある。[例B2]ロープRの張力が過大になると、アシストクレーン80のフック83と吊上側シーブ装置Dbとをつなぐ部材(吊具)が破損するおそれがある。具体的には例えば、玉掛ロープSlが破損(例えば切断)するおそれや、玉掛ロープSlが接続される継ぎ手(図示しないシャックルなど)が破損するおそれがある。吊具が破損すると、吊上側シーブ装置Dbが落下するおそれがある。[例B3]ロープRの張力が過大になると、アシストクレーン80が破損するおそれがある。例えば、フック83が破損するおそれがある。フック83が破損した場合は、吊上側シーブ装置Dbが落下するおそれがある。上記[例B1]~[例B3]と同様の問題は、シーブ装置Dの展開時に、アシストクレーン80側の巻き上げのスピードSpaに対して、ウインチW側の繰り出しのスピードSpwが遅すぎる場合にも生じ得る。
【0042】
シーブ装置Dの格納時に、アシストクレーン80側の巻き下げのスピードSpaに対して、ウインチW側の巻き取りのスピードSpwが遅すぎる場合、ロープRの張力が過小(ゆるみすぎ)になる。すると、ウインチWにおいてロープRが乱巻きの状態になるおそれや、ロープRが掛けられるシーブからロープRが外れるおそれがある。これらの問題は、シーブ装置Dの展開時に、アシストクレーン80側の巻き上げのスピードSpaに対して、ウインチW側の繰り出しのスピードSpwが速すぎる場合にも生じ得る。
【0043】
ロープRの張力は、外観からは分かり難い。そこで、ロープRの張力の過大や過小の問題を抑制するために、シーブ装置格納展開システム1は、下記の作動を行う。
【0044】
張力情報検出ステップS21では、シーブ装置格納展開ステップS12が行われるときの、ロープ状態情報を検出する。ロープ状態情報は、ロープRの張力に関する情報である。ロープ状態情報は、ロープ状態情報検出部RS(
図3参照)に検出される。
【0045】
[例C1]ロープ状態情報は、ロープRの張力でもよい。この場合、例えば、張力センサ61(
図3参照)が、ロープRの張力を検出し、検出値をコントローラ71(
図3参照)に出力する。
【0046】
[例C2]ロープ状態情報は、アシストクレーン80の吊荷重でもよい。この場合、アシストクレーン吊荷重センサ81(
図3参照)が、アシストクレーン80の吊荷重を検出し、検出値をコントローラ71(
図3参照)に出力する。具体的には例えば、アシストクレーン吊荷重センサ81が検出した吊荷重が、アシストクレーン80のコントローラ(図示なし)に入力される。そして、アシストクレーン80のコントローラが、吊荷重の情報を、クレーン10のコントローラ71に送信(転送)する。アシストクレーン吊荷重センサ81が検出した吊荷重は、そのまま張力情報利用ステップS30に用いられてもよく、ロープRの張力に換算された上で張力情報利用ステップS30に用いられてもよい。例えば、吊上側シーブ装置Dbの質量による荷重が、予め分かっている場合や、算出可能である場合などには、アシストクレーン80の吊荷重から、ロープRの張力を算出することができる。
【0047】
[例C3]ロープ状態情報は、ロープRの形状の情報でもよい。例えば、ロープ状態情報は、ロープRが張力により直線状に延びた形状であるか、ロープRが湾曲している(ゆるんでいる、たるんでいる)状態であるか、を示す情報でもよい。ロープ状態情報は、ロープRの湾曲の程度を示す情報を含んでもよい。例えば、ロープRの形状は、カメラ(ロープ状態情報検出部RS(
図3参照)の一例)などで撮影されたロープRの画像が画像処理されることで検出されてもよい。
【0048】
張力情報利用ステップS30では、ロープRの張力が過大になることを抑制するための処理(対処)が行われる。張力情報利用ステップS30では、ロープRの張力が過小になることを抑制するための処理(対処)が行われる場合があってもよい。具体的には、張力情報利用ステップS30では、張力情報検出ステップS21で検出されたロープ状態情報に基づいて、作業者(例えばクレーン10のオペレータ)への通知、および、ウインチWの駆動制御の少なくともいずれかが行われる。張力情報利用ステップS30は、張力情報通知ステップS31と、張力判定ステップS32と、警告ステップS33と、ウインチ駆動制限ステップS34と、を備える。
【0049】
張力情報通知ステップS31では、
図3に示すコントローラ71は、ロープ状態情報(
図4では「張力」)を通知部73に通知させる。通知部73は、上記のように、光(画面表示など)による通知を行ってもよく、音(音声など)による通知を行ってもよい。張力情報通知ステップS31での通知部73の通知の内容は、例えば次の通りである。[例D1]通知部73は、ロープ状態情報の値(ロープ張力情報値)を通知してもよい。具体的には例えば、通知部73は、張力センサ61が検出したロープRの張力を通知してもよく、アシストクレーン吊荷重センサ81が検出した吊荷重を通知してもよく、この吊荷重に基づいて算出されたロープRの張力を通知してもよい。また、例えば、通知部73は、ロープRの湾曲の程度を示す値を通知してもよい。[例D2]通知部73は、アシストクレーン80側のスピードSpa(
図2参照)とウインチW側のスピードSpw(
図2参照)とが適切に同調するように、作業者(例えばクレーン10のオペレータ)を促す通知を行ってもよい。例えば、通知部73は、ウインチW側のスピードSpwを遅く、または速くするように促す通知を行ってもよい。
【0050】
張力判定ステップS32では、コントローラ71は、張力情報検出ステップS21で検出されたロープ状態情報の値(ロープ張力情報値)(
図4では「張力」)が、所定範囲(通知不要範囲、制限不要範囲)内か否かを判定する。上記「所定範囲」には、上限(閾値)が設定されてもよく、下限(閾値)が設定されてもよく、上限および下限が設定されてもよい。コントローラ71は、ロープ張力情報値が上限を超えたか(張力が過大か)否かを判定してもよい。コントローラ71は、ロープ張力情報値が下限未満であるか(張力が過小か)否かを判定してもよい。上記「所定範囲」は、コントローラ71に予め(この判定が行われる前に)設定される。ロープ張力情報値が所定範囲内である場合(NOの場合)は、コントローラ71は、処理のフローを完了判定ステップS41に進ませる。ロープ張力情報値が所定範囲外である場合(YESの場合)は、コントローラ71は、警告ステップS33を行ってもよく、ウインチ駆動制限ステップS34を行ってもよい。
【0051】
警告ステップS33では、ロープ張力情報値が所定範囲外(所定の警告不要範囲外)である場合に、コントローラ71は、通知部73に、作業者(例えばクレーン10(
図2参照)のオペレータ)に対する警告を行わせる。通知部73が行う「警告」は、通知部73が行う「通知」に含まれる。警告ステップS33での通知部73の警告の内容は、例えば次の通りである。
【0052】
[例E1]通知部73は、ロープ張力情報値に関する警告を行ってもよい。例えば、通知部73は、ロープRの張力が、過大または過小であることを警告してもよい。具体的には、通知部73は、ロープRの張力が、所定範囲外(警告不要範囲外)であることを警告してもよい。また、例えば、通知部73は、アシストクレーン80の吊荷重が、所定範囲外(警告不要範囲外)であることを警告してもよい。
【0053】
[例E2]通知部73は、ロープRの張力が過大または過小にならないように、ウインチWを操作するように促す警告を行ってもよい。
【0054】
[例E2a]例えば、通知部73は、アシストクレーン80側のスピードSpa(
図2参照)に対してウインチW側のスピードSpw(
図2参照)が速すぎる場合は、ウインチW側のスピードSpwを遅くする、またはウインチWを停止させるように促す通知を行ってもよい。例えば、通知部73は、アシストクレーン80側のスピードSpaに対してウインチW側のスピードSpwが速すぎる場合は、アシストクレーン80側のスピードSpaを速くするように促す通知を行ってもよい。
【0055】
[例E2b]また、例えば、通知部73は、アシストクレーン80側のスピードSpa(
図2参照)に対してウインチW側のスピードSpw(
図2参照)が遅すぎる場合は、ウインチW側のスピードSpwを速くするように促す通知を行ってもよい。例えば、通知部73は、アシストクレーン80側のスピードSpaに対してウインチW側のスピードSpwが遅すぎる場合は、アシストクレーン80側のスピードSpaを遅くする、または停止するように促す通知を行ってもよい。
【0056】
[例E3]通知部73は、ウインチ駆動制限ステップS34でのウインチWの駆動制限に関する警告を行ってもよい。例えば、通知部73は、ウインチWの駆動制限を行うことを警告してもよく、ウインチWの駆動制限の内容を警告してもよい。
【0057】
ウインチ駆動制限ステップS34では、ロープ張力情報値が所定範囲外(所定の制限不要範囲外)である場合に、コントローラ71は、ウインチWの駆動を制限(自動的に制限、制御)する。このとき、コントローラ71は、ウインチWの駆動を制限するように、ウインチ駆動部63に指令を出力する。コントローラ71は、ロープRの張力が過大または過小である状態が解消される側に、ウインチWの駆動を制限する。例えば、コントローラ71は、ロープ張力情報値が所定範囲内(所定の制限不要範囲内)に収まる側に、ウインチWの駆動を制限する。
【0058】
[例F1]アシストクレーン80側のスピードSpa(
図2参照)に対してウインチW側のスピードSpw(
図2参照)が速すぎる場合は、コントローラ71は次の制御を行う。[例F1a]例えば、コントローラ71は、ウインチW側のスピードSpwを減速させてもよい。[例F1b]例えば、コントローラ71は、ウインチWを停止させてもよい。[例F1c]例えば、コントローラ71は、ウインチWの駆動を制限しないとき(非制限時)よりも、ウインチW側のスピードSpwの上限値を小さく設定してもよい。例えば、コントローラ71は、ウインチW側のスピードSpwの上限値よりも小さい速度では、オペレータの操作に応じてウインチWを駆動させてもよい。
【0059】
[例F2]アシストクレーン80側のスピードSpa(
図2参照)に対してウインチW側のスピードSpw(
図2参照)が遅すぎる場合は、コントローラ71は次の制御を行う。[例F2a]例えば、コントローラ71は、ウインチW側のスピードSpwを加速させてもよい。[例F2b]例えば、コントローラ71は、ウインチWの駆動を制限しないとき(非制限時)よりも、ウインチW側のスピードSpwの下限値を小さく設定してもよい。例えば、コントローラ71は、ウインチW側のスピードSpwの下限値よりも小さい速度では、オペレータの操作に応じてウインチWを駆動させてもよい。
【0060】
ロープ張力情報値が所定範囲外(所定の制限不要範囲外)である場合に、コントローラ71は、アシストクレーン80側のスピードSpa(
図2参照)を制御してもよい。アシストクレーン80側のスピードSpaに対してウインチW側のスピードSpw(
図2参照)が速すぎる場合は、コントローラ71は、アシストクレーン80側のスピードSpaを増速させてもよい。具体的には例えば、コントローラ71は、アシストクレーン80のコントローラ(図示なし)に、フック83(
図2参照)の巻き下げを行うウインチ(図示なし)を増速させる指示を送信する。そして、アシストクレーン80のコントローラが、フック83の巻き下げを行うウインチ(図示なし)を増速させる。また、アシストクレーン80側のスピードSpaに対してウインチW側のスピードSpwが遅すぎる場合は、コントローラ71は、アシストクレーン80側のスピードSpaを減速させてもよい。
【0061】
(警告不要範囲と制限不要範囲との関係)
警告ステップS33での警告を行うか否かを判定するための所定範囲(警告不要範囲)と、ウインチ駆動制限ステップS34でのウインチWの駆動制限をするか否かを判定するための所定範囲(制限不要範囲)と、の関係は、例えば次の通りである。[例G1]警告不要範囲と制限不要範囲とは、同じ範囲でもよい。例えば、ロープ張力情報値が所定範囲外になった場合、警告ステップS33での警告が行われるとともに、ウインチ駆動制限ステップS34でのウインチWの駆動制限が行われてもよい。[例G2]警告不要範囲と制限不要範囲とは、異なる範囲でもよい。例えば、警告不要範囲は、制限不要範囲内に設定されてもよい。[例G2a]さらに詳しくは、警告不要範囲の上限(閾値)は、制限不要範囲の上限(閾値)よりも小さく設定されてもよい。この場合、ロープ張力情報値が警告不要範囲内から警告不要範囲の上限を超えた場合に、警告ステップS33での警告が行われる。そして、ロープ張力情報値がさらに大きくなり、制限不要範囲の上限を超えると、ウインチ駆動制限ステップS34でのウインチWの駆動制限が行われてもよい。[例G2b]警告不要範囲の下限(閾値)は、制限不要範囲の下限(閾値)よりも大きく設定されてもよい(詳細は[例G2a]を参照)。
【0062】
完了判定ステップS41では、コントローラ71は、シーブ装置Dの格納展開の作業が完了したか(
図4ではロープRの巻き取りが完了したか)否かを判定する。例えば、シーブ装置Dの格納展開の作業の完了は、
図2に示す支持側シーブ装置Daの位置に基づいて判定されてもよく、支持側シーブ装置Daと吊上側シーブ装置Dbとの間隔の大きさに基づいて判定されてもよい。例えば、シーブ装置Dの格納展開の作業の完了は、コントローラ71(
図3参照)においてシーブ装置Dの格納展開作業のモードが「オフ」にされたか否かに基づいて判定されてもよい。シーブ装置Dの格納展開の作業が完了した場合(YESの場合)、フローは終了する。シーブ装置Dの格納展開の作業が完了していない場合(NOの場合)、フローはシーブ装置格納展開ステップS12に戻り、ウインチWの駆動などが継続される。
【0063】
この完了判定ステップS41は、ロープ張力情報値が所定範囲内の場合(張力判定ステップS32でNOの場合)に行われる。ロープ張力情報値が所定範囲外の場合(張力判定ステップS32でYESの場合)、警告ステップS33およびウインチ駆動制限ステップS34の少なくともいずれかの処理が行われる場合に、完了判定ステップS41が行われてもよい。なお、完了判定ステップS41は行われなくてもよい(シーブ装置Dの格納展開の作業が完了したことをコントローラ71が把握しなくてもよい)。
【0064】
(第1の発明の効果)
図2に示すクレーン10におけるシーブ装置格納展開方法による効果は、次の通りである。クレーン10は、ロープRと、ウインチWと、吊上側シーブ装置Dbと、を備える。ウインチWは、ロープRを巻き取りおよび繰り出しする。吊上側シーブ装置Dbは、ロープRが掛けられるシーブを有する。シーブ装置格納展開方法は、シーブ装置格納展開ステップS12(
図4参照、以下の各ステップも同様)と、張力情報検出ステップS21と、張力情報利用ステップS30と、を備える。シーブ装置格納展開ステップS12は、吊上側シーブ装置Dbがアシストクレーン80に吊り上げられた状態で、ウインチWがロープRを巻き取りおよび繰り出しする。
【0065】
[構成1]張力情報検出ステップS21は、シーブ装置格納展開ステップS12が行われるときのロープRのロープ状態情報を検出する。張力情報利用ステップS30は、張力情報検出ステップS21で検出されたロープ状態情報に基づいて、作業者への通知、およびウインチWの駆動制御の少なくともいずれかを行う。
【0066】
上記[構成1]では、ロープ状態情報に基づいて、作業者への通知、およびウインチWの駆動制御の少なくともいずれかが行われる。ロープ状態情報に基づく、作業者への通知(例えば、張力情報通知ステップS31、警告ステップS33)が行われる場合は、ロープRの張力が過大にならないような通知を作業者に対して行うことができる。その結果、吊上側シーブ装置Dbの格納および展開の際に、ロープRの張力が過大になることを抑制することができる。また、ロープ状態情報に基づく、ウインチWの駆動の制御(例えば、ウインチ駆動制限ステップS34)が行われる場合、ロープRの張力が過大にならないようなウインチWの駆動の制御を行うことができる。その結果、吊上側シーブ装置Dbの格納および展開の際に、ロープRの張力が過大になることを抑制することができる。
【0067】
(第2の発明の効果)
[構成2]張力情報検出ステップS21で検出されるロープ状態情報は、ロープRの張力である。
【0068】
上記[構成2]により、ロープ状態情報が、ロープRの張力を間接的に表す情報(例えばアシストクレーン80の吊荷重など)である場合に比べて、次の効果が得られる。ロープRの張力が過大になることを抑制できるような、通知およびウインチWの駆動の制御の少なくともいずれかを、精度良く行うことができる。
【0069】
(第3の発明の効果)
[構成3]張力情報検出ステップS21で検出されるロープRの張力は、ロープRが掛けられるシーブの軸に作用する力を検出する張力センサ61(
図3参照)に検出される。
【0070】
上記[構成3]により、例えばウインチWに作用する負荷などをロープRの張力に換算する場合などに比べ、ロープRの張力を精度良く検出することができる。その結果、ロープRの張力が過大になることを抑制できるような、通知およびウインチWの駆動の制御の少なくともいずれかを、より精度良く行うことができる。
【0071】
(第4の発明の効果)
[構成4]張力情報検出ステップS21で検出されるロープ状態情報は、アシストクレーン80の吊荷重である。
【0072】
上記[構成4]により、次の効果が得られる。アシストクレーン80の吊荷重は、ロープRの張力と、吊上側シーブ装置Dbの質量による荷重と、の和である。よって、アシストクレーン80の吊荷重は、ロープRの張力と相関する。よって、張力情報検出ステップS21で検出されるロープ状態情報が、アシストクレーン80の吊荷重である場合も、上記「(第1の発明の効果)」と同様の効果が得られる。
【0073】
上記[構成1]の「作業者への通知」が行われ、この作業者がクレーン10のオペレータである場合は、上記[構成1]および[構成4]により、次の効果が得られる。この場合、クレーン10のオペレータに対して、このオペレータが操作しているクレーン10とは異なるアシストクレーン80の吊荷重を通知することができる。
【0074】
(第5の発明の効果)
[構成5]張力情報利用ステップS30は、張力情報検出ステップS21で検出されたロープ状態情報の値が所定の警告不要範囲外である場合に、作業者に警告を行う。
【0075】
上記[構成5]では、ロープ状態情報の値が警告不要範囲外になった場合、作業者に対して警告が行われる。その結果、警告を受けた作業者が適切な対処を行った場合、ロープRの張力が過大になることを抑制することができる。
【0076】
(第6の発明の効果)
[構成6]張力情報利用ステップS30は、張力情報検出ステップS21で検出されたロープ状態情報の値が所定の制限不要範囲外である場合に、クレーン10のコントローラ71がウインチWの駆動を制限する。
【0077】
上記[構成6]では、ロープ状態情報の値が警告不要範囲外になった場合(ロープRの張力が過大になった場合)でも、ウインチWの駆動が制限される。よって、ロープRの張力の管理を作業者(例えばクレーン10のオペレータ)任せにすることなく、ロープRの張力が過大になることをより確実に抑制することができる。
【0078】
(第7の発明の効果)
[構成7]吊上側シーブ装置Dbは、クレーン10の構造物(例えば上部旋回体13)に起伏可能に取り付けられる起伏部材(例えばブーム20)を起伏させる上部スプレッダ(例えばブーム起伏上部スプレッダ33b)を備える。
【0079】
上記[構成7]により、吊上側シーブ装置Dbが上部スプレッダ(例えばブーム起伏上部スプレッダ33b)を備える場合に、上記「(第1の発明の効果)」が得られる。
【0080】
(第2実施形態)
主に
図2を参照して、第2実施形態のシーブ装置格納展開システム201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態のシーブ装置格納展開システム201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。共通点の説明を省略することについては、後述する他の実施形態の説明も同様である。
【0081】
第1実施形態では、
図2において実線で示すように、ガントリ31の真上または略真上に吊上側シーブ装置Db(具体的にはブーム起伏上部スプレッダ33b)が配置された状態で、シーブ装置Dの格納展開の作業が行われた。一方、本実施形態での、吊上側シーブ装置Db(具体的にはブーム起伏上部スプレッダ33b)を、
図2において二点鎖線で示す。本実施形態では、吊上側シーブ装置Dbが、下部ブーム21のブーム背面20bと中間ブーム23のブーム背面20bとの間で移動させられる際に、シーブ装置Dの格納展開の作業が行われる。この場合も、第1実施形態と同様に、張力情報検出ステップS21および張力情報利用ステップS30などが行われることで、ロープRの張力が過大になることを抑制することができる。
【0082】
下部ブーム21のブーム背面20bと、中間ブーム23のブーム背面20bと、の間で吊上側シーブ装置Dbが移動させられる理由は、例えば次の通りである。例えばクレーン10が「クレーン仕様」の場合、通常は、ブームガイライン35(
図1参照)の長さは、下部ブーム21の先端部から上部ブーム25(ブーム20の先端部)までの長さである。そのため、ブーム起伏上部スプレッダ33bに対するブームガイライン35の着脱時などに、ブーム起伏上部スプレッダ33bが、下部ブーム21の先端部のブーム背面20bに置かれる場合がある。一方、クレーン10が「タワー仕様」や「ラッフィング仕様」の場合、上記の長さのブームガイライン35(
図1参照)では、次の問題が生じ得る。この場合、ブーム起伏下部スプレッダ33aとブーム起伏上部スプレッダ33bとの間隔を小さくしても、ブーム20を所望の角度まで起こせない場合がある。上記「所望の角度」は、例えば、ブーム20の長手方向に延びるブーム20の中心軸が、地面に垂直または略垂直になるような角度である。そこで、上記の長さのブームガイライン35(
図1参照)よりも短いブームガイライン35が用いられる場合がある。この場合、クレーン10の組立時に、ブーム起伏上部スプレッダ33bが、格納位置(例えば、下部ブーム21の先端部のブーム背面20b)から、ブームガイライン35との着脱位置(例えば、中間ブーム23のブーム背面20b)に移動させられる場合がある。また、クレーン10の分解時には、ブーム起伏上部スプレッダ33bが、着脱位置から、格納位置に移動させられる場合がある。このように、下部ブーム21のブーム背面20bと、中間ブーム23のブーム背面20bと、の間で吊上側シーブ装置Dbが移動させられる場合がある。
【0083】
(第3実施形態)
主に
図1および
図5を参照して、第3実施形態のシーブ装置格納展開システム301について、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0084】
図2に示す例(第1実施形態の一例)では、シーブ装置Dは、ブーム起伏スプレッダ33であり、吊上側シーブ装置Dbは、ブーム起伏上部スプレッダ33bであった。一方、
図5に示すように、本実施形態では、シーブ装置Dは、ストラット351であり、吊上側シーブ装置Dbは、リアストラット351bである。第3実施形態のシーブ装置格納展開システム301のクレーン10は、
図1に示すジブ340と、ジブ起伏装置350と、を備える。
【0085】
ジブ340(起伏部材)は、ブーム20の先端部に起伏可能(上下方向に回転可能)に取り付けられる。ジブ340は、下部ジブ341と、中間ジブ343と、上部ジブ345と、を備える。下部ジブ341は、ジブ340の基端部(ブーム20に取り付けられる側の端部)に配置される。中間ジブ343は、下部ジブ341の先端部(ブーム20に取り付けられる側とは反対側の端部)に連結される。上部ジブ345は、中間ジブ343の先端部に連結され、ジブ340の先端部に配置される。
【0086】
ジブ起伏装置350は、ブーム20に対してジブ340を起伏させる装置である。ジブ起伏装置350は、ストラット351と、ジブガイライン353と、ストラットガイライン355と、ジブ起伏ロープ357(ロープR)と、ジブ起伏ウインチ359(ウインチW)と、を備える。
【0087】
ストラット351(シーブ装置D)は、ロープR(さらに詳しくはジブ起伏ロープ357)が掛けられるシーブを有する。ストラット351は、フロントストラット351aと、リアストラット351bと、を備える。フロントストラット351a(支持側シーブ装置Da)は、ロープRが掛けられるシーブ(例えば複数のシーブ)を備える。フロントストラット351aは、ブーム20の先端部に回転可能に取り付けられてもよく、ジブ340の基端部に回転可能に取り付けられてもよい。フロントストラット351aは、クレーン10が作業可能な姿勢(クレーン姿勢)のときに、リアストラット351bよりも上側および前側X1に配置される。リアストラット351b(吊上側シーブ装置Db)は、ロープRが掛けられるシーブ(例えば複数のシーブ)を備え、ブーム20の先端部に回転可能に取り付けられる。
【0088】
ジブガイライン353は、クレーン10が作業姿勢のときには、フロントストラット351aの先端部とジブ340の先端部とに接続される。ストラットガイライン355は、クレーン10が作業姿勢のときには、リアストラット351bの先端部とブーム20とに接続される。
【0089】
ジブ起伏ロープ357(ロープR)は、リアストラット351bのシーブと、フロントストラット351aのシーブとに掛けられる(例えば掛け回される)。
【0090】
ジブ起伏ウインチ359(ウインチW)は、上部旋回体13またはブーム20(例えば下部ブーム21)に搭載される。ジブ起伏ウインチ359が、ジブ起伏ロープ357を、巻き取りおよび繰り出しする。すると、リアストラット351bの先端部とフロントストラット351aの先端部との間隔が変わる。すると、ブーム20に対してフロントストラット351aが起伏する。クレーン10が作業姿勢のときには、フロントストラット351aの先端部とジブ340の先端部とがジブガイライン353で接続されている。よって、フロントストラット351aがブーム20に対して起伏すると、ジブ340がブーム20に対して起伏する。
【0091】
なお、ジブ起伏装置350の構成は、様々に変更可能である。例えば、フロントストラット351aとリアストラット351bとが互いに固定されたストラット451(
図6参照)が設けられてもよい(後述)。また、クレーン10の作業時に、ブーム20に対してジブ340が起伏しなくてもよい。
【0092】
(作動)
図5に示すシーブ装置格納展開システム301の作動について、第1実施形態との相違点を説明する。
【0093】
ストラット351(シーブ装置D)の格納展開の作業が行われる前に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Db(リアストラット351b)を吊り上げた状態とされる。さらに詳しくは、
図5に示す状態では、ブーム20は、倒伏姿勢とされる。ジブ340(例えば下部ジブ341)は、ブーム20から前側X1に延びるように配置され、例えば、地面に下から支持された状態とされる。フロントストラット351aは、伏せられた状態とされ、下部ジブ341に下から支持された状態とされる。フロントストラット351aは、例えば下部ジブ341に固定(格納)される。リアストラット351bは、ストラットガイライン355(
図1参照)から切り離された状態とされる。リアストラット351bは、アシストクレーン80に吊り上げられ、ブーム20の先端部から上側に突出するように配置される。
【0094】
シーブ装置格納展開ステップS12(
図4参照、他のステップについても同様)では、次の作動が行われる。
【0095】
[例A31]リアストラット351b(吊上側シーブ装置Db)の格納時には、ウインチWがロープRを巻き取るのと同時に、アシストクレーン80がリアストラット351bの先端部を前側X1に移動させながら巻き下げる。すると、リアストラット351bの先端部が、前側X1および下側に移動し、フロントストラット351aの先端部に近づく。すると、リアストラット351bが伏せられる。
【0096】
[例A32]リアストラット351b(吊上側シーブ装置Db)の展開時には、リアストラット351bの格納時とは逆の作動が行われる。例えば、ウインチWがロープRを繰り出すのと同時に、アシストクレーン80がリアストラット351bの先端部を巻き上げる。すると、リアストラット351bの先端部が、後側X2および上側に移動し、フロントストラット351aの先端部から離れる。すると、リアストラット351bが起こされる。
【0097】
(同調)
シーブ装置Dの格納展開(シーブ装置格納展開ステップS12)において、ロープRの張力が過大または過小になると、第1実施形態と同様の問題が生じ得る。さらに、ロープRの張力が過大である場合は、フロントストラット351aが持ち上がる向きの力がフロントストラット351aに作用する。そのため、例えば、フロントストラット351aと下部ジブ341との固定部分が破損するなどの問題が生じ得る。一方、シーブ装置格納展開システム301では、第1実施形態と同様に、張力情報検出ステップS21および張力情報利用ステップS30などが行われることで、ロープRの張力が過大または過小になることを抑制することができる。
【0098】
(第8の発明の効果)
[構成8]
図5に示すシーブ装置格納展開システム301におけるシーブ装置格納展開方法による効果は、次の通りである。吊上側シーブ装置Dbは、ブーム20に起伏可能に取り付けられるジブ340(
図1参照)を起伏させるストラット351(例えばリアストラット351b)を備える。
【0099】
上記[構成8]により、吊上側シーブ装置Dbがストラット351(例えばリアストラット351b)を備える場合に、上記「(第1の発明の効果)」が得られる。
【0100】
(第4実施形態)
主に
図6を参照して、第4実施形態のシーブ装置格納展開システム401について、主に第1実施形態および第3実施形態との相違点を説明する。
【0101】
図1に示す例(第3実施形態の一例)のストラット351は、フロントストラット351aとリアストラット351bとの間隔が変わることでジブ340を起伏させるものであった。一方、
図6に示すように、本実施形態では、ストラット451は、フロントストラット451aとリアストラット451bと連結部材451cとが一体的にブーム20に対して起伏(回転)することでジブ340を起伏させるものである。また、
図1に示す例(第1実施形態の一例)では、シーブ装置Dはブーム起伏スプレッダ33であり、吊上側シーブ装置Dbはブーム起伏上部スプレッダ33bであった。一方、
図6に示すように、本実施形態では、シーブ装置Dはジブ起伏スプレッダ456であり、吊上側シーブ装置Dbはジブ起伏上部スプレッダ456b(上部スプレッダ)である。
【0102】
ジブ起伏装置450は、ストラット451と、ジブガイライン453と、ストラットガイライン455と、ジブ起伏スプレッダ456と、ジブ起伏ロープ457(ロープR)と、ジブ起伏ウインチ459(ウインチW)と、を備える。
【0103】
ストラット451は、ブーム20の先端部に回転可能に取り付けられる。ストラット451は、例えば、横方向から見たときに三角形状の構造物である。ストラット451は、フロントストラット451aと、リアストラット451bと、連結部材451cと、を備える。連結部材451cは、フロントストラット451aとリアストラット451bとを互いに連結する。ジブ340が起伏する際に、フロントストラット451aとリアストラット451bとの間隔は、一定である。
【0104】
ジブガイライン453は、クレーン10が作業姿勢のときには、フロントストラット451aの先端部とジブ340の先端部とに接続される(第3実施形態と同様)。ストラットガイライン455は、クレーン10が作業姿勢のときには、リアストラット451bの先端部とジブ起伏上部スプレッダ456bとに接続される。
【0105】
ジブ起伏スプレッダ456(シーブ装置D)は、ジブ起伏下部スプレッダ456a(支持側シーブ装置Da)と、ジブ起伏上部スプレッダ456b(吊上側シーブ装置Db、上部スプレッダ)と、を備える。ジブ起伏下部スプレッダ456aは、ロープRが掛けられるシーブ(例えば複数のシーブ)を備え、ブーム20(例えばブーム背面20b)に取り付けられる。ジブ起伏上部スプレッダ456bは、ロープRが掛けられるシーブ(例えば複数のシーブ)を備える。ジブ起伏上部スプレッダ456bは、クレーン10が作業姿勢のときには、リアストラット451bとジブ起伏下部スプレッダ456aとの間に配置される。
【0106】
ジブ起伏ロープ457(ロープR)は、ジブ起伏下部スプレッダ456aのシーブとジブ起伏上部スプレッダ456bのシーブとに掛けられる(掛け回される)。
【0107】
ジブ起伏ウインチ459(ウインチW)は、ジブ起伏ウインチ359は、上部旋回体13またはブーム20に搭載される。ジブ起伏ウインチ459が、ジブ起伏ロープ457を、巻き取りおよび繰り出しする。すると、ジブ起伏下部スプレッダ456aとジブ起伏上部スプレッダ456bとの間隔が変わる。すると、ブーム20に対してストラット451が起伏する。クレーン10が作業姿勢のときには、フロントストラット451aの先端部とジブ340の先端部とがジブガイライン453で接続されている。よって、ストラット451がブーム20に対して起伏すると、ジブ340がブーム20に対して起伏する。
【0108】
なお、ストラット451は1本のみ設けられてもよい。この場合、1本のストラット451の先端部にジブガイライン453およびストラットガイライン455が接続される。
【0109】
(作動)
シーブ装置Dの格納展開の作業が行われる前に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Dbを吊り上げた状態とされる。
図6において実線で示す状態では、ブーム20は、倒伏姿勢とされる。ジブ起伏上部スプレッダ456bは、ストラットガイライン455(
図6において二点鎖線で示す)から切り離された状態とされる。ジブ起伏上部スプレッダ456bは、アシストクレーン80に吊り上げられる。
図6に示す例では、ジブ起伏上部スプレッダ456bは、ジブ起伏下部スプレッダ456aの真上または略真上に配置される。
【0110】
ジブ起伏上部スプレッダ456bがアシストクレーン80に吊り上げられた状態で、上記のシーブ装置格納展開ステップS12(
図4参照、他のステップも同様)、張力情報検出ステップS21、および張力情報利用ステップS30などが行われる。
【0111】
(第5実施形態)
図7を参照して、第5実施形態のシーブ装置格納展開システム501について、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0112】
図1に示す例(第1実施形態の一例)では、ブーム起伏装置30は、ガントリ31を備えた。一方、
図7に示すように、本実施形態では、ブーム起伏装置530は、マスト531(吊上側シーブ装置Db)を備える。
【0113】
ブーム起伏装置530は、マスト531と、ブーム起伏下部スプレッダ532(支持側シーブ装置Da)と、ブームガイライン535と、ブーム起伏ロープ537(ロープR)と、ブーム起伏ウインチ539(ウインチW)と、を備える。
【0114】
マスト531(吊上側シーブ装置Db)は、上部旋回体13に起伏可能に取り付けられる。マスト531は、ロープRが掛けられるシーブ(マストシーブ531s)(例えば複数のシーブ)を備える。
【0115】
ブーム起伏下部スプレッダ532(支持側シーブ装置Da)は、上部旋回体13の後側X2端部に設けられ、ロープRが掛けられるシーブ(例えば複数のシーブ)を備える。なお、マストシーブ531sは、「上部スプレッダ」(上記[構成7]を参照)に含まれる。また、マスト531(吊上側シーブ装置Db)およびブーム起伏下部スプレッダ532(支持側シーブ装置Da)により、シーブ装置Dが構成される。
【0116】
ブームガイライン535は、クレーン10が作業姿勢のときには、マスト531の先端部とブーム20の先端部とに接続される。
【0117】
ブーム起伏ロープ537(ロープR)は、マスト531のシーブ(マストシーブ531s)と、ブーム起伏下部スプレッダ532のシーブと、に掛けられる(掛け回される)。
【0118】
ブーム起伏ウインチ539(ウインチW)は、例えば上部旋回体13などに搭載される。ブーム起伏ウインチ539がブーム起伏ロープ537を、巻き取りおよび繰り出しする。すると、ブーム起伏下部スプレッダ532とマスト531の先端部との間隔が変わる。すると、マスト531が上部旋回体13に対して起伏する。クレーン10が作業姿勢のときには、マスト531の先端部とブーム20の先端部とがブームガイライン535で接続されているので、マスト531が上部旋回体13に対して起伏すると、ブーム20が上部旋回体13に対して起伏する。
【0119】
シーブ装置格納展開ステップS12(
図4参照)では、次の作動が行われる。
【0120】
[例A51]マスト531の格納時には、ウインチWがロープRを巻き取るのと同時に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Dbを巻き下げる。すると、マスト531の先端部が、ブーム起伏下部スプレッダ532に近づく。すると、マスト531が上部旋回体13に対して伏せられる。
【0121】
[例A52]マスト531の展開時には、マスト531の格納時とは逆の作動が行われる。例えば、ウインチWがロープRを繰り出すのと同時に、アシストクレーン80が吊上側シーブ装置Dbを巻き上げる。すると、吊上側シーブ装置Dbが、支持側シーブ装置Daから離れる。すると、マスト531が上部旋回体13に対して起こされる。
【0122】
(第6実施形態)
図2などを参照して、第6実施形態のシーブ装置格納展開システム601について、主に第1実施形態との相違点を説明する。第1実施形態では、コントローラ71(
図3参照)は、ロープRの張力が過大または過小である状態が解消される側に、ウインチWの駆動を制限する場合があった(ウインチ駆動制限ステップS34(
図4参照、他のステップも同様))。一方、本実施形態では、コントローラ71(
図3参照)は、ウインチWの駆動を自動的に制御する。
【0123】
さらに詳しくは、張力情報利用ステップS30では、張力情報検出ステップS21で検出されるロープ状態情報の値が、所定の適切張力範囲に収まるように、コントローラ71(
図3参照)がウインチWの駆動を制御(自動制御)する。このとき、コントローラ71は、ウインチWによるロープRの巻き取りおよび繰り出しの速度を、制御する。
【0124】
具体的には例えば、コントローラ71は、吊上側シーブ装置Dbの位置に応じて、ウインチWの駆動を制御してもよい。具体的には例えば、地面やクレーン10の構造物(例えば上部旋回体13)などに対する吊上側シーブ装置Dbの位置が検出されてもよい。そして、例えば、コントローラ71は、ロープRの巻取量などに応じて、吊上側シーブ装置Dbの適切な位置の範囲を算出してもよい。ロープRの張力が過大または過小である場合は、吊上側シーブ装置Dbの適切な位置の範囲外となる。そこで、コントローラ71は、吊上側シーブ装置Dbが適切な位置の範囲内に配置されるように、ウインチWによるロープRの巻き取りおよび繰り出しの速度を、制御(自動制御)してもよい。
【0125】
また、例えば、コントローラ71は、ロープRの張力に応じて、ウインチWの駆動を制御してもよい。具体的には例えば、コントローラ71は、ロープRの張力の変化に基づいて、アシストクレーン80側のスピードSpaに対するウインチW側のスピードSpwが速い側に変化したか、遅い側に変化したかを判定してもよい。そして、アシストクレーン80側のスピードSpaに対してウインチW側のスピードSpwが速い側に変化したとき、コントローラ71は、ウインチW側のスピードSpwを遅い側に変化させる制御を行ってもよい。また、例えば、アシストクレーン80側のスピードSpaに対してウインチW側のスピードSpwが遅い側に変化したとき、コントローラ71は、ウインチW側のスピードSpwを速い側に変化させる制御を行ってもよい。
【0126】
上記「適切張力範囲」は、例えば上記「制限不要範囲」と同様にコントローラ71(
図3参照)に設定される。制限不要範囲と適切張力範囲との両方がコントローラ71に設定されてもよい。適切張力範囲は、制限不要範囲よりも狭い範囲でもよい。さらに詳しくは、適切張力範囲に上限が設定される場合、適切張力範囲の上限は、制限不要範囲の上限よりも低く設定されてもよい。適切張力範囲に下限が設定される場合、適切張力範囲の下限は、制限不要範囲の下限よりも高く設定されてもよい。
【0127】
コントローラ71(
図3参照)は、ロープ状態情報の値が所定の適切張力範囲に収まるように、アシストクレーン80のフック83の巻き上げおよび巻き下げを行うウインチ(図示なし)の駆動を制御(自動制御)してもよい。具体的には例えば、コントローラ71は、アシストクレーン80のコントローラ(図示なし)に、アシストクレーン80のウインチを制御するための指令を送信する。そして、アシストクレーン80のコントローラが、アシストクレーン80のフック83の巻き上げおよび巻き下げを制御してもよい。
【0128】
(第9の発明の効果)
[構成9]
図2に示すシーブ装置格納展開システム601におけるシーブ装置格納展開方法による効果は、次の通りである。張力情報利用ステップS30は、張力情報検出ステップS21で検出されるロープ状態情報の値が所定の適切張力範囲に収まるように、クレーン10のコントローラ71(
図3参照)がウインチWの駆動を制御する。
【0129】
上記[構成9]では、ロープ状態情報の値が適切張力範囲に収まるように、ウインチWが制御される。よって、ロープRの張力の管理を作業者(例えばクレーン10のオペレータ)任せにすることなく、ロープRの張力が過大になることをより確実に抑制することができる。
【0130】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素(変形例を含む)どうしが組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、上記実施形態の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、
図3に示す各構成要素の接続は変更されてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、各種パラメータ(閾値、範囲など)は、コントローラ71に予め設定されてもよく、作業者の手動操作により直接的に設定されてもよい。例えば、各種パラメータは、変えられなくてもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じてコントローラ71が自動的に変えてもよい。例えば、
図4に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0131】
10 クレーン
20 ブーム(起伏部材)
33b ブーム起伏上部スプレッダ(上部スプレッダ)
61 張力センサ
71 コントローラ
80 アシストクレーン
340 ジブ(起伏部材)
351、451 ストラット
456b ジブ起伏上部スプレッダ(上部スプレッダ)
531s マストシーブ(上部スプレッダ)
Db 吊上側シーブ装置
R ロープ
W ウインチ