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特開2023-13643車両用シートのヘッドレストおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013643
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】車両用シートのヘッドレストおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/80 20180101AFI20230119BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20230119BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20230119BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B60N2/80
A47C7/38
B68G7/06 A
B29C39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117977
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】松川 了士
(72)【発明者】
【氏名】岩本 剛
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
4F204
【Fターム(参考)】
3B084DD07
3B087DC05
3B087DE03
4F204AA31
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD03
4F204AD08
4F204AD16
4F204AD35
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH27
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EB22
4F204EF05
4F204EK13
4F204EK17
(57)【要約】
【課題】ハードスポットの発生を抑制することができる車両用シートのヘッドレストおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ヘッドレスト1のフレーム10は、一対の主部10c,10dを有する。一対の主部10c,10d同士の間には、張設テープ13が調節されている。表皮11は、袋体の構成を有し、フレーム10の主部10c,10dおよび連結部と、張設テープ13とを内方に収容するように形成されている。パッド12は、表皮11における原料注入孔11dから流動性を有する原料を注入し、フレーム10の主部10c,10dおよび連結部と、張設テープ13が埋設されるように形成されている。表皮11の原料注入孔11dは、張設テープ13における張設部13cに対して、Z方向に間隔を空けて対向する位置に設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに第1方向に間隔を空けて配され、それぞれが前記第1方向に交差する第2方向に延びる一対のメインフレーム部を有するフレームと、
前記一対のメインフレーム部同士の間に張設される張設部を有する張設部材と、
袋体に構成され、当該袋体の内方に前記一対のメインフレーム部および前記張設部材を収容する表皮と、
前記表皮における特定の箇所であって、前記張設部に対して前記第1方向および前記第2方向の双方向に交差する第3方向に間隔を空けて対向する箇所から前記袋体の内方へ注入される流動性を有する原料からなり、前記一対のメインフレーム部および前記張設部材が埋設されるように形成されたパッドと、
を備える、
車両用シートのヘッドレスト。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのヘッドレストにおいて、
前記張設部材は、前記一対のメインフレーム部のそれぞれに固定される固定部を有する、
車両用シートのヘッドレスト。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートのヘッドレストにおいて、
前記張設部材は、一方の主面が粘着面で構成された帯状部材であり、
前記固定部は、前記粘着面からなり、前記一対のメインフレーム部のそれぞれに対して前記粘着面が貼付されることにより前記張設部材が前記一対のメインフレーム部に固定されている、
車両用シートのヘッドレスト。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートのヘッドレストにおいて、
前記張設部材は、前記粘着面を内側に前記一対のメインフレーム部同士の間を少なくとも1周巻回されている、
車両用シートのヘッドレスト。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用シートのヘッドレストにおいて、
前記張設部材における巻回方向の一方の端縁部は、前記張設部材における前記一方の端縁部とは異なる他部に対して重なる状態で配されるとともに、当該重なる部分で前記粘着面により貼付されている、
車両用シートのヘッドレスト。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の車両用シートのヘッドレストにおいて、
前記フレームは、前記第3方向に垂下する姿勢のU字形状を有し、前記一対のメインフレームのそれぞれの端部同士を繋ぐ連結部をさらに有し、
前記フレームにおける前記連結部は、前記袋体の内方に収容されているとともに、前記パッドに埋設されており、
該ヘッドレストは、鞍型ヘッドレストである、
車両用シートのヘッドレスト。
【請求項7】
車両用シートに取り付けられるヘッドレストの製造方法であって、
互いに第1方向に間隔を空けて配され、それぞれが前記第1方向に交差する第2方向に延びる一対のメインフレーム部を有するフレームに対して、前記一対のメインフレーム部同士の間に張設される張設部を有する張設部材を前記一対のメインフレーム部の少なくとも一方に固定するステップと、
表皮が袋状に加工されてなる袋体と、当該袋体の内方に収容された前記一対のメインフレーム部および前記張設部材とを、成形型にセットするステップと、
前記表皮における特定の箇所であって、前記張設部材に対して前記第1方向および前記第2方向の双方向に交差する第3方向に間隔を空けて対向する箇所から前記袋体の内方へ、流動性を有する原料を注入して、前記一対のメインフレーム部および前記張設部材が埋設されるようにパッドを形成するステップと、
を備える、
ヘッドレストの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のヘッドレストの製造方法において、
前記張設部材は一方の主面が粘着面で構成された帯状部材であり、
前記固定するステップでは、前記粘着面を前記一対のメインフレーム部のそれぞれ対して貼付することにより、前記張設部材を前記一対のメインフレーム部に対して固定する、
ヘッドレストの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドレストの製造方法において、
前記固定するステップでは、前記粘着面を内側にして前記張設部材を前記一対のメインフレーム部同士の間を少なくとも1周巻回し、前記張設部材における巻回方向の一方の端縁部を当該一方の端縁部とは異なる他部に対して重なる状態で配するとともに、当該重なる部分で前記粘着面により貼付する、
ヘッドレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのヘッドレストおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートには、着座者の頸部や頭部を保護するために、上部にヘッドレストが取り付けられている。ヘッドレストは、金属製パイプが曲折加工されてなるフレームと、フレームの周囲を覆うように設けられたパッドと、パッドの外表面を覆う表皮とを備える。
【0003】
ここで、ヘッドレストの製造においては、表皮一体発泡成形法が用いられることがある。表皮一体発泡成形法は、袋状の表皮とフレームの一部とを成形型内にセットし、当該袋体の内方にパッド形成用の原料を注入することでヘッドレストを製造する方法である。表皮一体発泡成形法を用いてヘッドレストを製造した場合には、袋体内に注入された原料が、表皮における注入方向の先方の部分に対して高い圧力のまま衝突することにより、当該部分に浸み込み過ぎてしまうという問題を生じる場合がある。このように、パッド形成用の原料が浸み込み過ぎた部分は、表皮における他の部分よりも硬くなってしまい(ハードスポットが発生してしまい)、品質低下をもたらすこととなる。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1~4には、表皮により形成された袋体内に、メッシュ状の部材を設ける構成が開示されている。特許文献1,2に開示の技術では、パッド形成用の原料を注入するために設けられた袋体の原料注入孔の内方近傍部分において、表皮にメッシュ状の帯状部材を配設した構成が採用されている。そして、特許文献1,2に開示の技術では、製造時におけるパッド形成用の原料の注入に際しては、原料注入孔が鉛直上方を向くようにパッド形成前の中間部材を配置し、ノズルを上方から原料注入孔を通過させて袋体の内側まで挿入して原料を注入するようにしている。
【0005】
また、特許文献3,4に開示の技術では、表皮により形成された袋体内に挿入したノズルの吐出口を囲むように、メッシュ状の袋状部材を配設した構成が採用されている。特許文献3,4に開示の技術では、製造時におけるパッド形成用の原料の注入に際しては、原料注入孔が横方向(略水平後方)を向くように、パッド形成前の中間部材を配置し、ノズルを横方向から原料注入孔を通過させて袋体の内側まで挿入して原料を注入するようにしている。
【0006】
特許文献1~4では、注入ノズルから吐出された原料がメッシュ状の部材(帯状部材、袋状部材)を通過することにより、注入圧力が緩和され、表皮の一部分に原料が浸み込み過ぎることを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3451562号公報
【特許文献2】特許第6796001号公報
【特許文献3】特許第6431812号公報
【特許文献4】特許第6660948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1~4に開示の技術では、パッド形成用の原料を注入する際にメッシュ状の部材をノズル先端部分で破ってしまったり、メッシュ状の帯状部材と表皮との接合が外れてしまったりすることが考えられる。即ち、特許文献1,2に開示の技術では、原料注入孔に対して上方からノズルを挿入するが、ノズルの挿入角度のズレや挿入深さが深くなった場合には、ノズル先端部分によりメッシュ状の帯状部材が破れてしまったり、表皮から外れてしまったりすることが生じ得る。
【0009】
また、特許文献3,4に開示の技術では、原料注入孔に対して横方向からノズルを挿入するのであるが、当該ノズルの挿入時点では、袋体の内部においてメッシュ状の袋状部材が自重で下方に垂下していると考えられる。この状態でノズルが挿入される場合にも、ノズル先端部分によりメッシュ状の袋状部材が破れてしまったり、表皮との固定部分が外れてしまったりすることが生じ得る。
【0010】
上記のように、ノズルの挿入に際してメッシュ状の部材(帯状部材、袋状部材)が破れたり、表皮との固定部分が外れてしまったりした場合には、ノズルからの原料の注入圧力が緩和されることなく表皮の一部に衝突してハードスポットが発生する場合が起こり得る。
【0011】
本発明は、ハードスポットの発生を抑制することができる車両用シートのヘッドレストおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る車両用シートのヘッドレストは、フレームと、張設部材と、表皮と、パッドとを備える。前記フレームは、互いに第1方向に間隔を空けて配され、それぞれが前記第1方向に交差する第2方向に延びる一対のメインフレーム部を有する。前記張設部材は、前記一対のメインフレーム部同士の間に張設される張設部を有する。前記表皮は、袋体に構成され、当該袋体の内方に前記一対のメインフレーム部および前記張設部材を収容する。前記パッドは、前記表皮における特定の箇所であって、前記張設部に対して前記第1方向および前記第2方向の双方向に交差する第3方向に間隔を空けて対向する箇所から、前記袋体の内方へ注入される流動性を有する原料からなり、前記一対のメインフレーム部および前記張設部材が埋設されるように形成されている。
【0013】
上記態様に係るヘッドレストでは、張設部材が一対のメインフレーム部同士の間に張設されている。そして、張設部材における張設部は、表皮におけるパッド形成用の原料が注入される箇所(注入箇所)に対して間隔を空けて対向する位置を含むように設定されている。このため、上記態様に係るヘッドレストでは、その製造時におけるパッド形成用の原料を注入する際に、上記注入箇所からノズルを挿入した場合にも、当該ノズルの先端部分により張設部材が破れるおそれがない。よって、上記態様に係るヘッドレストでは、パッド形成用の原料の注入に際して、当該原料が表皮の一部に対して高い注入圧力のまま到達するのが張設部材で防がれ、ハードスポットの発生が防がれる。
【0014】
また、上記特許文献1~4に係る技術では、表皮における原料注入孔の周囲にメッシュ状部材が固定されているため、パッド形成用の原料を注入した際に当該原料がメッシュ状に当たり、注入圧力によってメッシュ状部材とともに表皮における原料注入孔の周囲の部分が袋体の内方に向けて引き込まれることが考えられる。この場合、完成したヘッドレストにおいて、原料注入孔およびその周囲の部分が凹んだ状態となり外観品質が低下することも考えられる。
【0015】
しなしながら、上記態様に係るヘッドレストでは、張設部材を剛性の高いフレームのメインフレーム部同士の間で張設しているので、パッド形成用の原料の注入時に当該原料の注入圧力が張設部材に作用しても、当該張設部材が破れたり外れたりすることがなく、上記特許文献1~4に開示の技術のような外観品質の低下を招くことはない。
【0016】
上記態様に係る車両用シートのヘッドレストにおいて、前記張設部材は、前記一対のメインフレーム部のそれぞれに固定される固定部を有する、としてもよい。
【0017】
上記態様に係るヘッドレストでは、張設部材の固定部は一対のメインフレーム部のそれぞれに固定されている。このため、上記態様に係るヘッドレストでは、パッド形成用の原料を注入する際に、原料の注入圧力を受けても張設部材がフレームから外れたり位置ズレを起こしたりすることが抑制される。よって、上記態様に係るヘッドレストでは、表皮にハードスポットが生じるのをより確実に抑制することができる。
【0018】
上記態様に係る車両用シートのヘッドレストにおいて、前記張設部材は、一方の主面が粘着面で構成された帯状部材であり、前記固定部は、前記粘着面からなり、前記一対のメインフレーム部のそれぞれに対して前記粘着面が貼付されることにより前記張設部材が前記一対のメインフレーム部に固定されている、としてもよい。
【0019】
上記態様に係るヘッドレストでは、一方の主面が粘着面で構成された帯状部材(リボン状部材)が張設部材として採用されているので、フレームに対して張設部材を固定する際に煩雑な作業が必要なく、製造時における工数の低減を図ることができる。
【0020】
上記態様に係る車両用シートのヘッドレストにおいて、前記張設部材は、前記粘着面を内側に前記一対のメインフレーム部同士の間を少なくとも1周巻回されている、としてもよい。
【0021】
上記態様に係るヘッドレストでは、一方の主面が粘着面で構成された帯状部材が一対のメインフレーム部同士の間を少なくとも1周巻回されているので、フレームに対する帯状部材の固定強度を高くすることができる。よって、上記態様に係るヘッドレストでは、パッド形成用の原料を注入する際に、帯状部材(張設部材)がフレームから外れたり位置ズレを起こしたりするのをより確実に抑制することができ、表皮にハードスポットが発生するのをさらに確実に抑制することができる。
【0022】
上記態様に係る車両用シートのヘッドレストにおいて、前記張設部材における巻回方向の一方の端縁部は、前記張設部材における前記一方の端縁部とは異なる他部に対して重なる状態で配されるとともに、当該重なる部分で前記粘着面により貼付されている、としてもよい。
【0023】
上記態様に係るヘッドレストでは、帯状部材における一方の端縁部が他部と重なる部分において上記粘着面により貼付されているので、帯状部材(張設部材)に対してパッド形成用の原料を注入する際の注入圧力が作用しても帯状部材がフレームから外れたり位置ズレを起こしたりするのをさらに確実に抑制することができる。
【0024】
上記態様に係る車両用シートのヘッドレストにおいて、前記フレームは、前記第3方向に垂下する姿勢のU字形状を有し、前記一対のメインフレームのそれぞれの端部同士を繋ぐ連結部をさらに有し、前記フレームにおける前記連結部は、前記袋体の内方に収容されているとともに、前記パッドに埋設されており、該ヘッドレストは、鞍型ヘッドレストである、としてもよい。
【0025】
上記態様に係るヘッドレストは、所謂、鞍型ヘッドレストであって、一対のメインフレーム部が配された部分における第3方向の厚みが、連結部が配された部分における第3方向の厚みに対して薄い構造を有する。このような構造を有する場合においても、注入されたパッド形成用の原料の流れが張設部材で分散され、また、原料の注入圧力が張設部材で緩和されるので、高い注入圧力のまま表皮の一部に到達するのが抑制され、ハードスポットの発生が抑制される。
【0026】
本発明の一態様に係るヘッドレストの製造方法は、車両用シートに取り付けられるヘッドレストを製造する方法であって、次のステップを備える。
【0027】
(i) 互いに第1方向に間隔を空けて配され、それぞれが前記第1方向に交差する第2方向に延びる一対のメインフレーム部を有するフレームに対して、前記一対のメインフレーム部同士の間に張設される張設部を有する張設部材を前記一対のメインフレーム部の少なくとも一方に固定するステップ
(ii) 表皮が袋状に加工されてなる袋体と、当該袋体の内方に収容された前記一対のメインフレーム部および前記張設部材とを、成形型にセットするステップ
(iii) 前記表皮における特定の箇所であって、前記張設部材に対して前記第1方向および前記第2方向の双方向に交差する第3方向に間隔を空けて対向する箇所から前記袋体の内方へ、流動性を有する原料を注入して、前記一対のメインフレーム部および前記張設部材が埋設されるようにパッドを形成するステップ
【0028】
上記態様に係るヘッドレストの製造方法では、袋体(表皮が袋状に加工されてなる部材)および当該袋体の内方に収容されたフレームの一部を成形型にセットした状態において、表皮におけるパッド形成用の原料を注入する箇所(注入箇所)に対して張設部材が間隔をあけて対向するように張設されているので、注入箇所からノズルを挿入した場合にも、当該ノズルの先端により張設部材が破れたり外れたりするおそれがない。そして、パッドを形成するステップにおいて、注入された原料は張設部材に当たることで流れが分散されるので、高い注入圧力のまま表皮の一部に対して原料が到達するのが防がれ、ハードスポットの発生が防がれる。
【0029】
また、上述のように、上記特許文献1~4では、メッシュ状部材が表皮における原料注入孔の周囲に固定されているため、注入された原料がメッシュ状部材に当たり、注入圧力によってメッシュ状部材とともに表皮における原料注入孔の周囲の部分が袋体の内方に向けて引き込まれることが考えられる。この場合、完成したヘッドレストにおいて、原料注入孔およびその周囲の部分が凹んだ状態となり外観品質の低下を招いてしまうことになる。
【0030】
これに対して、上記態様に係るヘッドレストの製造方法では、張設部材を剛性の高いフレームに固定することとしているので、パッド形成用の原料を注入した際にも注入箇所およびその周囲の部分が袋体の内方に向けて引き込まれるおそれがなく、上記のような外観品質上の問題を生じることはない。
【0031】
上記態様に係るヘッドレストの製造方法において、前記張設部材は一方の主面が粘着面で構成された帯状部材であり、前記固定するステップでは、前記粘着面を前記一対のメインフレーム部のそれぞれ対して貼付することにより、前記張設部材を前記一対のメインフレーム部に対して固定する、としてもよい。
【0032】
上記態様に係るヘッドレストの製造方法では、フレームにおける一対のメインフレーム部のそれぞれに対して固定する張設部材として、一方の主面が粘着面で構成された帯状部材(リボン状部材)を採用するので、縫合などで固定する場合に比べてフレームへの張設部材の固定に際して煩雑な作業が必要なく、製造時における工数の低減を図ることができる。
【0033】
上記態様に係るヘッドレストの製造方法において、前記固定するステップでは、前記粘着面を内側にして前記張設部材を前記一対のメインフレーム部同士の間を少なくとも1周巻回し、前記張設部材における巻回方向の一方の端縁部を当該一方の端縁部とは異なる他部に対して重なる状態で配するとともに、当該重なる部分で前記粘着面により貼付する、としてもよい。
【0034】
上記態様に係るヘッドレストの製造方法では、一方の主面が粘着面で構成された帯状部材を一対のメインフレーム部同士の間を少なくとも1周巻回して固定するので、フレームに対する帯状部材の固定強度を高くすることができる。
【0035】
また、上記態様に係るヘッドレストの製造方法では、帯状部材における一方の端縁部が他部と重なる部分において上記粘着面により貼付することとしているので、帯状部材(張設部材)に対してパッド形成用の原料の注入圧力が作用しても帯状部材がフレームから外れたり位置ズレを起こしたりするのをさらに確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0036】
上記の各態様では、煩雑な作業を必要とせずに製造できるとともに、ハードスポットの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係るヘッドレストの外観構成を示す斜視図である。
図2】ヘッドレストを下方から見た下面図である。
図3】ヘッドレストにおけるフレームと張設テープとを示す斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面を示す断面図である。
図5図1のV-V線断面を示す断面図である。
図6図1のVI-VI線断面を示す断面図である。
図7】ヘッドレストの製造における原料注入工程を示す断面図である。
図8】変形例1に係るヘッドレストにおけるフレームと張設テープとを示す正面図である。
図9】変形例2に係るヘッドレストにおけるフレームと張設成形体とを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0039】
図面において、X方向が「第2方向」、Y方向が「第1方向」、Z方向が「第3方向」にそれぞれ該当する。
【0040】
1.ヘッドレスト1の構成
本発明の実施形態に係るヘッドレスト1の構成について、図1および図2を用いて説明する。なお、ヘッドレスト1は、車両用シートに装着される。
【0041】
図1に示すように、ヘッドレスト1は、フレーム10と表皮11とパッド12とを備える。パッド12は、発泡樹脂(例えば、発泡ウレタン)で形成されており、フレーム10の一部を包み込むよう形成されている。表皮11は、パッド12の外表面を覆うように形成されている。
【0042】
なお、本実施形態に係るヘッドレスト1は、車両用シートに装着した場合に、シートの上部に位置する後部1aの方が、シートの前部に沿って位置する前部1bよりもパッド12におけるZ方向の厚みが薄い、所謂、鞍型のヘッドレストである。
【0043】
図2に示すように、ヘッドレスト1を下面側から見た場合に、表皮11の下面11aには、3つの孔11b~11dが設けられている。3つの孔11b~11dは、ヘッドレスト1の後部1aに設けられている。3つの孔11b~11dの内、孔11bと孔11cとは、フレーム10の脚部が挿通する孔である(フレーム挿通孔)。そして、孔11dは、パッド12を形成する原料を表皮11内に注入する孔である(注入箇所)。
【0044】
図2に示すように、フレーム挿通孔11bとフレーム挿通孔11cとは、ヘッドレスト1の後部1aにおいて、X方向の後方側部分に設けられ、Y方向に互いに間隔を空けて設けられている。原料注入孔11dは、ヘッドレスト1の後部1aにおいて、フレーム挿通孔11b,11cよりもX方向の前方側部分であって、Y方向におけるフレーム挿通孔11bとフレーム挿通孔11cとの中間部分に設けられている。
【0045】
2.フレーム10および張設テープ13の構成
フレーム10および張設テープ13の構成について、図3および図4を用いて説明する。
【0046】
図3に示すように、フレーム10は、一対の脚部10a,10bと、一対の主部(メインフレーム部)10c,10dと、連結部10eと、が一体形成されている。フレーム10は、金属パイプにより構成されている。一対の脚部10a,10bは、それぞれがZ方向に延びるとともに、Y方向に互いに間隔を空けて配されている。
【0047】
主部10cは、脚部10aにおけるZ方向の上端部分で当該脚部10aに連続し、X方向に延びるように設けられている。主部10dは、脚部10bにおけるZ方向の上端部分で当該脚部10bに連続し、X方向に延びるとともに、主部10cに対してY方向に間隔を空けて設けられている。
【0048】
連結部10eは、X方向からの正面視でU字形状を有するように曲折加工されている。連結部10eの一端部は、主部10cの前端部に連続し、連結部10eの他端部は、主部10dの前端部に連続する。そして、連結部10eは、主部10c,10dと連続する部分からZ方向の下方に垂下した姿勢で設けられている。
【0049】
張設テープ13は、例えば、不織布を基材として形成されており、一方の主面(Z方向の下側の主面)が粘着面で構成された帯状(リボン状)部材(不織布基材粘着テープ)である。図3に示すように、張設テープ13は、フレーム10の主部10cと主部10dとの間に張設されている。
【0050】
なお、張設テープ13には、基材の表面(粘着面で構成された側とは反対側の主面)にシリコーン樹脂等を含む剥離層が形成されていないテープが用いられている。これは、後述するパッド12の形成に際して、パッド形成用の原料が張設テープ13で弾かれないようにするためである。
【0051】
図4に示すように、張設テープ13は、貼付部(固定部)13a,13bと、張設部13cと、を有する。貼付部13aは、粘着面により主部10cの外周面に接着固定されている。貼付部13bは、粘着面により主部10dの外周面に接着固定されている。張設部13cは、貼付部13aおよび貼付部13bに連続し、主部10cと主部10dとの間に張設されている。
【0052】
3.表皮11の原料注入孔11dと張設テープ13との位置関係
表皮11の原料注入孔11dと張設テープ13との位置関係について、図5および図6を用いて説明する。
【0053】
図5に示すように、張設テープ13の張設部13cは、X方向において、表皮11の下面11aに設けられた原料注入孔11d(原料の注入箇所)と矢印Aで示すようにZ方向に対向する位置を含み配設されている。本実施形態では、X方向における主部10c,10d(図5では、主部10cの図示を省略。)の長手方向の略全域を包含するように張設部13cが配設されている。
【0054】
なお、表皮11における原料注入孔11dと張設テープ13の張設部13cとは、互いに間隔を空けて配置されている。原料注入孔11dと張設部13cとのZ方向における間隔は、パッド12の形成時に原料を注入するためのノズルの挿入深さよりも大きく設定されている。即ち、パッド12を形成する際に原料注入孔11dから挿入されるノズルの先端が張設部13cに到達しないように設定されている。例えば、ノズルを原料注入孔11dからXmm挿入する場合には、原料注入孔11dと張設部13cとのZ方向における間隔を、(X+α)mmに設定される。この場合に、“α”は、製造時におけるノズルの挿入深さやヘッドレスト1の各部の製造バラツキなどを考慮して規定される。一例として、ノズルの挿入深さが32~33mmであると仮定した場合には、原料注入孔11dと張設部13cとのZ方向における間隔は、35~40mmあるいはそれ以上に設定される。
【0055】
図6に示すように、張設テープ13の張設部13cは、Y方向において、フレーム10における主部10cと主部10dとの間に張設されている。そして、表皮11の下面11aにおいては、Y方向におけるフレーム10の主部10cと主部10dとの中間部分に原料注入孔11dが設けられている。このため、Y方向においても、張設テープ13の張設部13cは、表皮11に設けられた原料注入孔11dと矢印Bで示すようにZ方向に対向する位置を含み配設されていることになる。
【0056】
4.ヘッドレスト1の製造方法
ヘッドレスト1の製造方法について、図3図4および図7を用いて説明する。
【0057】
〈フレーム形成ステップ〉
金属パイプを曲折加工して、図3に示すような、脚部10a,10bと主部10c,10dと連結部10eとを有するフレーム10を形成する。
【0058】
〈張設テープ張設ステップ〉
次に、図4に示すように、フレーム10の主部10c,10dに不織布基材粘着テープを貼付する。これにより、主部10cと主部10dとの間に張設された張設部13cを有する張設テープ13の固定が完了する。
【0059】
〈表皮被覆ステップ〉
図7に示すように、袋状に加工した表皮11をフレーム10の主部10c,10dおよび連結部10eとの周囲を覆うように被せる。このように袋状に加工してなる袋体の表皮11をフレーム10に被せることにより、表皮11に設けられた原料注入孔11dと張設テープ13の張設部13cの一部とが対向することになる。
【0060】
なお、表皮11をフレーム10に被せた状態において、原料注入孔11dと張設部13cとのZ方向における間隔は、35~40mmあるいはそれ以上となるようにフレーム10、表皮11、および含浸防止テープ13は設けられている。
【0061】
そして、フレーム10、表皮11、および含浸防止テープ13を成形型100の内方空間(キャビティ)100aに挿入する。
【0062】
なお、詳細な図示を省略しているが、成形型100は、複数の(例えば、2つの)型を組み合わせて構成されている。
【0063】
〈原料充填ステップ〉
成形型100にノズル101を挿入して、その先端開口101aから内方空間100a(表皮11の内方)にパッド形成用の原料(例えば、ウレタン)を充填する(矢印C1)。なお、ノズル101は、原料注入孔11dから内方に向けて、一例として32~33mm程度挿入される。
【0064】
ノズル101の先端開口101aから吐出されたパッド形成用の原料は、原料注入孔11dと対向する部分(矢印Dで示す部分)に向けて進むが、途中に設けられた張設テープ13の張設部13cにより流れが分散される(矢印C2)。これにより、原料の注入圧力が緩和され、表皮11における矢印Dで示す部分への局所的な浸み込みが抑制され、ハードスポットの発生が防がれる。
【0065】
パッド形成用の原料の注入は、予め定められた容量、即ち、表皮11の内方の容量に達するまで行われる。これにより、表皮11は、成形型100の内面100bに対して隙間なく密着する。
【0066】
最後に成形型100から取り出すことで、ヘッドレスト1の製造が完了する。
【0067】
5.効果
本実施形態に係るヘッドレスト1およびその製造方法では、張設テープ13がフレーム10における主部10cと主部10dとの間に張設されている。そして、張設テープ13における張設部13cが張設された主部10cと主部10dとの間の領域は、表皮11における原料注入孔11dから間隔を空けて対向する位置を含むように設定されている。このため、ヘッドレスト1およびその製造方法では、パッド12の形成用の原料を注入する際に、原料注入孔11dからノズルを挿入した場合にも、当該ノズルの先端により張設テープ13が破れたり外れたりするおそれがない。よって、ヘッドレスト1およびその製造方法では、パッド形成用の原料の注入に際して、当該原料が表皮11の一部に対して高い注入圧力のまま到達するのが張設テープ13の張設部13cで防がれ、表皮11に局所的なハードスポットが発生するのが防がれる。
【0068】
また、上記特許文献1~4に係る技術では、表皮における原料注入孔の周囲にメッシュ状部材が固定されているため、パッド形成用の原料を注入した際に当該原料がメッシュ状に当たり、注入圧力によってメッシュ状部材とともに表皮における原料注入孔の周囲の部分が袋体の内方に向けて引き込まれることが考えられる。この場合、完成したヘッドレストにおいて、原料注入孔およびその周囲の部分が凹んだ状態となり外観品質の低下を招く。
【0069】
しなしながら、本実施形態に係るヘッドレスト1およびその製造方法では、張設テープ13を表皮11ではなく表皮11よりも剛性の高いフレーム10に固定しているので、パッド形成用の原料の注入時に当該原料の注入圧力が張設テープ13に作用しても、上記特許文献1~4に開示の技術のような外観品質上の問題を生じることはない。
【0070】
また、本実施形態に係るヘッドレスト1およびその製造方法では、張設テープ13の固定部13a,13bは主部10cおよび主部10dのそれぞれに固定されている。このため、ヘッドレスト1およびその製造方法では、パッド形成用の原料の注入時において、原料の注入圧力を受けても張設テープ13がフレーム10から外れたり主部10c,10dに対して位置ズレを起こしたりすることが抑制される。よって、ヘッドレスト1およびその製造方法では、表皮11にハードスポットが生じるのをより確実に抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るヘッドレスト1およびその製造方法では、一方の主面が粘着面で構成された張設テープ(帯状部材)13を張設部材として採用しているので、フレーム10の主部10c,10dに対して張設テープ13を固定する際に煩雑な作業が必要なく、製造時における工数の低減を図ることができる。これより製造コストの低減を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態に係るヘッドレスト1およびその製造方法は、所謂、鞍型ヘッドレストであって、後部1aにおけるZ方向の厚みが、前部1bにおけるZ方向の厚みに対して薄い構造を有する。このような構造を有する場合においても、注入されたパッド形成用の原料の流れが張設テープ13で分散され、また、原料の注入圧力が張設テープ13で緩和されるので、高い注入圧力のまま表皮11の一部に到達するのが抑制され、ハードスポットの発生が抑制される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るヘッドレスト1およびその製造方法では、煩雑な作業を必要とせずに製造できるとともに、ハードスポットの発生を抑制することができる。
【0074】
[変形例1]
変形例1に係るヘッドレストについて、図8を用いて説明する。なお、図8では、ヘッドレストの構成の内、フレーム10と含浸防止テープ23のみを抜き出して図示している。図8において、上記実施形態と同じ符号を付している部材については、上記実施形態と同じ構成を有する。
【0075】
図8に示すように、本変形例に係るヘッドレストにおいても、フレーム10の主部10cと主部10dとの間に張設テープ23が張設されている。張設テープ23は、上記実施形態の張設テープ13と同様に、一方の主面が粘着面で構成されたテープであり、一例として、不織布基材粘着テープである。
【0076】
張設テープ23は、主部10cと主部10dとの間を少なくとも1周巻回されている。張設テープ23は、主部10cおよび主部10dのそれぞれと当接する領域において、粘着面により貼付されている(貼付部23a,23b)。本変形例に係るヘッドレストにおいても、張設テープ23の貼付部23a,23bが「固定部」に該当する。
【0077】
また、張設テープ23は、Y方向における貼付部23aと貼付部23bとの間の部分に、2層の張設部23c、23dを有する。2層の張設部23c,23d同士は、粘着面により互いに貼付されている。2層の張設部23c,23dは、表皮11に設けられた原料注入孔11d(注入箇所)に対向する位置を含む領域を覆うように配設されている。
【0078】
また、2層の張設部23c,23dの内のZ方向の下側の張設部23dは、当該張設テープ23の一方の端縁部と他方の端縁部とが重なる重複部23eを有する。重複部23eでは、粘着面により端縁部同士が貼付されている。
【0079】
以上のような構成の張設テープ23を備えるヘッドレストにおいても、上記実施形態に係るヘッドレスト1と同様に、当該ヘッドレストの製造時において、原料注入孔11dから注入されたパッド形成用の原料の流れは、張設テープ23の張設部23dに衝突することにより分散される。よって、本変形例に係るヘッドレストでも、表皮11にハードスポットが形成されてしまうのが抑制される。
【0080】
また、本変形例に係るヘッドレストでは、張設テープ23が主部10cと主部10dとの間を1周巻回した形態を採用するので、主部10c,10d同士の間での張設部23c,23dの張設姿勢がより確実に維持される。さらに、張設テープ23の張設部23c,23d同士が貼付されているので、原料注入時において主部10c,10dから張設テープ23が外れたり、位置ズレを生じたりするのをより確実に抑制することができる。
【0081】
なお、本変形例では、フレーム10の主部10cと主部10dとの間を張設テープ23が1周巻回した構成を採用しているが、2周以上巻回した構成を採用することも可能である。
【0082】
[変形例2]
変形例2に係るヘッドレストについて、図9を用いて説明する。なお、図9でも、ヘッドレストの構成の内、張設成形体33を除き上記実施形態と同じ構成を有する。
【0083】
本変形例に係るヘッドレストは、上記実施形態および上記変形例1のような張設テープ(帯状部材)13,23を張設部材として用いるのではなく、樹脂成形により得られた張設成形体33を採用する。張設成形体33は、パッド形成用の原料を弾かない樹脂材料(例えば、ポリスチレン、ABS樹脂など)で形成されている。
【0084】
図9に示すように、張設成形体33は、係止部33a,33bと張設部33cとが一体形成されている。なお、張設成形体33は、図9における紙面の手前側-奥側に向けての方向(X方向)の長さが、フレーム10における主部10c,10dの長さと略同一か若干短く設定されている。ただし、張設成形体33の長さは、表皮11に設けられた原料注入孔11d(注入箇所)に対向する位置を少なくとも包含する範囲を覆うことができる長さに設定されている。
【0085】
係止部33aおよび係止部33bのそれぞれは、Z方向の上側部分が開口したC字状の断面形状を有する。係止部33aおよび係止部33bにおけるそれぞれの断面形状は、フレーム10の主部10c,10dに対して係止した場合に、主部10c,10dから係止が外れ難いように、上側部分の開口が180°未満の角度で形成されている。
【0086】
張設部33cは、略平板形状を有する。ただし、張設部33cの形状については、平板以外にも、Z方向上向きに凸や下向きに凸の張出した板形状や、波型の板形状などを採用することもできる。
【0087】
図9に示すような形状を有する張設成形体33をフレーム10に取り付けるには、係止部33a,33bのそれぞれを主部10c,10dに係止する。なお、主部10c,10dへの係止部33a,33bの係止は、図9に示すようにZ方向の下方から行うことがパッド形成用の原料を注入する際に外れ難いという点で望ましいが、係止の強さによってはZ方向の上方から行うことも可能である。
【0088】
以上のような構成の張設成形体33を備えるヘッドレストにおいても、上記実施形態に係るヘッドレスト1および上記変形例1に係るヘッドレストと同様に、当該ヘッドレストの製造時において、原料注入孔11dから注入されたパッド形成用の原料の流れは、張設成形体33の張設部33cに衝突することにより分散される。よって、本変形例に係るヘッドレストでも、表皮11にハードスポットが形成されてしまうのが抑制される。
【0089】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1では、張設部材の一例として、一方の主面が粘着面で構成された粘着テープ(張設テープ13,23)を採用したが、本発明では、粘着面を有さない帯状部材(リボン状部材)を採用することも可能である。この場合には、フレーム10の主部10c,10dとの固定や帯状部材同士の接合のために接着剤を用いることができる。また、図8で示したように帯状部材の端縁部同士を接合するのには、例えば、ステープラーを用いることも可能である。
【0090】
上記実施形態では、図4などに示したように、張設テープ13の張設部13cを主部10c,10dのそれぞれに対してZ方向の上部で外接するように張設された構成を採用したが、本発明では、主部10c,10dのZ方向の下部で外接するように張設された構成を採用することも可能である。
【0091】
上記実施形態および上記変形例1,2では、フレーム10の構成部材としてパイプを採用することとしたが、本発明では、中実の金属棒材などを用いることも可能である。
【0092】
上記実施形態および上記変形例1,2では、表皮11の構成材料については特に言及をしなかったが、本発明では、例えば、塩化ビニル、ファブリック、合成皮革・人工皮革、本革など種々の材料を用いることができる。
【0093】
上記実施形態および上記変形例1では、張設テープ13,23の幅についての具体的な寸法については特に言及しなかったが、ヘッドレスト1におけるフレーム10の主部10c,10dと表皮11の原料注入孔11dとの間の距離などに応じて適宜に設定すればよく、例えば、30mm~50mm程度とすることができる。張設テープ13,23の厚みについても、パッド形成用の原料の注入圧力との関係で適宜に設定すればよく、例えば、0.1mm以上あれば十分であり、1mm以下程度とすることが可能である。
【0094】
なお、張設テープについては、細幅のテープあるいは紐を主部10cと主部10dとの間でスパイラル状に複数周巻回して、原料注入孔11dに対向する位置を含む領域を覆うようにすることも可能である。
【0095】
上記実施形態および上記変形例1では、張設テープ13,23として不織布基材粘着テープを採用することとしたが、本発明では、和紙や布やパルプなどから構成された基材を有する粘着テープを採用することも可能である。ただし、この場合においても、基材の表面側に剥離層(シリコーン樹脂を含む層)が形成されていないテープ(具体的には、フレーム10への貼付前の状態で粘着面が剥離紙で覆われているテープ)を用いることが、パッド形成用の原料を注入した際に当該原料が張設テープで弾かれないようにするうえで重要である。これは、原料がテープの剥離層で弾かれてしまうと、完成品においてテープの周囲に空洞などが生じるおそれがあるためである。
【0096】
上記実施形態および上記変形例1,2では、表皮11の下面11aに円形の原料注入孔11dが完成後のヘッドレスト1でも残っている構成を一例として採用したが、本発明では、パッド形成後に原料注入孔を塞いでもよい。なお、このようにパッド形成後に原料注入孔を塞いだ場合には、当該塞いだ孔跡が「注入箇所」に推定される。
【0097】
上記実施形態では、図2に示したように、X方向においてフレーム挿通孔11b、11cよりも前方側部分に原料注入孔11dを設けることとしたが、本発明では、フレーム挿通孔11bとフレーム挿通孔11dとを結ぶ直線上に原料注入孔11dを設けることとしてもよい。この場合にも、主部11cと主部11dとの間に張設部材の張設部を設けることで、上記実施形態および上記変形例1,2と同様の効果を得ることができる。
【0098】
上記実施形態および上記変形例1では、主部10cと主部10dとに張設テープ13,23を貼付し、上記変形例2では、主部10cと主部10dとに張設成形体33を係止することとしたが、本発明では、主部10cと主部10dとに金属製の板材などを接合(溶接、ロウ付け)するようにしてもよい。この場合にも、上記実施形態および上記変形例1,2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ヘッドレスト
1a 後部
1b 前部
10 フレーム
10c,10d 主部(メインフレーム部)
11 表皮
11d 原料注入孔
12 パッド
13,23 張設テープ(張設部材)
13a,13b,23a,23b 貼付部(固定部)
13c,23c,23d,33c 張設部
33 張設成形体(張設部材)
33a,33b 係止部(固定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9