(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013645
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】レーザ積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20230119BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230119BHJP
B23K 26/14 20140101ALI20230119BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230119BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20230119BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20230119BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20230119BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20230119BHJP
B29C 64/141 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/14
B33Y30/00
B29C64/268
B29C64/371
B33Y40/00
B29C64/209
B29C64/141
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117980
(22)【出願日】2021-07-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昌樹
【テーマコード(参考)】
4E168
4F213
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168BA81
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA23
4E168EA17
4E168FB03
4F213AC04
4F213AM26
4F213AM30
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL74
4F213WL76
(57)【要約】
【課題】粉末材料の供給路を形成する供給路形成部材を含み、該供給路を介して積層予定面に向けて粉末材料を供給する粉末材料供給部と、粉末材料供給部より積層予定面に供給された粉末材料にレーザ光を照射するレーザ照射部と、供給路形成部材の外周面を囲むように配置され、該外周面との間にシールドガス供給路を形成する外筒部と、シールドガス供給路を通じて、積層予定面における粉末材料が供給される領域の外側を囲むようにシールドガスを供給するシールドガス供給部とを備えたレーザ積層造形装置において、シールドガスの広がりを抑制することで、シールドガスによる外気のシールド性及び粉末材料の直進案内性を向上させる。
【解決手段】外筒部24におけるシールドガスの吐出側の端部である先端部に、該外筒部24の径方向内側のシールドガス供給路24aと該外筒部24の径方向外側の外部空間とを連通する連通孔24cを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料の供給路を形成する供給路形成部材を含み、該供給路を介して積層予定面に向けて粉末材料を供給する粉末材料供給部と、該粉末材料供給部より積層予定面に供給された前記粉末材料にレーザ光を照射することで、前記粉末材料を溶融固化させて硬化層を形成するレーザ照射部と、前記供給路形成部材の外周面を囲むように配置され、該外周面との間にシールドガス供給路を形成する外筒部と、前記シールドガス供給路を通じて、前記積層予定面における粉末材料が供給される領域の外側を囲むようにシールドガスを供給するシールドガス供給部とを備えたレーザ積層造形装置であって、
前記外筒部における前記シールドガスの吐出側の端部である先端部には、該外筒部の径方向内側のシールドガス供給路と該外筒部の径方向外側の外部空間とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とするレーザ積層造形装置。
【請求項2】
前記外筒部は、第1外筒部と、該第1外筒部の外側を囲む第2外筒部とからなる二重筒構造であり、
前記供給路形成部材と前記第1外筒部との間の空間、及び、前記第1外筒部と前記第2外筒部との間の空間がそれぞれ前記シールドガス供給路を構成し、
前記連通孔は、前記第2外筒部の先端部に形成されて、該第2外筒部及び前記第1外筒部間に形成されたシールドガス供給路と、該第2外筒部の外側の外部空間とを連通するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ積層造形装置。
【請求項3】
前記連通孔は複数設けられており、
複数の前記連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の周方向において、互いに間隔を空けて全周に亘って配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ積層造形装置。
【請求項4】
前記複数の連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の軸方向に長い長孔状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のレーザ積層造形装置。
【請求項5】
前記複数の連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の周方向に長い長孔状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のレーザ積層造形装置。
【請求項6】
前記連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の径方向外側から内側に向かって前記先端部側に傾斜していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のレーザ積層造形装置。
【請求項7】
前記シールドガス供給路は、前記レーザ照射部より前記積層予定面に向けて出射されるレーザ光の光学路として兼用されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載のレーザ積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層予定面に向けて粉末材料を供給する粉末材料供給部と、粉末材料供給部より積層予定面に供給された前記粉末材料に光ビームを照射することで、粉末材料を溶融固化させて硬化層を形成するレーザ照射部とを備えたレーザ積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なレーザ積層造形装置では、粉末材料供給部とレーザ照射部とを1つの加工ヘッドに搭載し、該加工ヘッドを移動機構部により所定経路に沿って移動させつつ、粉末材料供給部から積層予定面に向けて粉末材料を供給するとともに、レーザ照射装置から積層予定面における粉末材料の供給領域に向けてレーザ光を照射することで粉末材料を溶融固化して所望の形状の硬化層を形成する。粉体供給部の構成として、例えば、加工ヘッドの中心部を囲む環状の粉体吐出口から粉末材料を噴射する構成、加工ヘッドの中心軸回りに等間隔に配置した複数の粉体吐出口から粉末材料を噴射する構成、及び、加工ヘッドの中心部に配置した粉体吐出口から粉末材料を噴射する構成が採用される。
【0003】
この種のレーザ積層造形装置では、例えば、特許文献1及び2に示すように、積層予定面における粉末材料の供給箇所を囲むようにシールドガスを供給する場合がある。シールドガスは、レーザ光により加熱、溶融される粉末材料(金属)の酸化を防止するとともに該粉末材料の飛散を防止してその直進性を確保する役割を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-055484号公報
【特許文献2】特開2015-196265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1及び2に示すレーザ積層造形装置では、シールドガスの外側に誘起された空気流が積層予定面に衝突した後、上方に巻き上がる渦流となってシールドガスを径方向外側に引き寄せるように作用する。シールドガスが径方向外側に引き寄せされると、シールドガスが積層予定面に到達するまでに径方向外側に広がってしまうため、シールドガスによる外気のシールド性及び粉末材料の直進案内性が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、シールドガスの広がりを抑制することで、シールドガスによる外気のシールド性及び粉末材料の直進案内性を向上させることが可能なレーザ積層造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の一局面は、
粉末材料の供給路を形成する供給路形成部材を含み、該供給路を介して積層予定面に向けて粉末材料を供給する粉末材料供給部と、該粉末材料供給部より積層予定面に供給された前記粉末材料にレーザ光を照射することで、前記粉末材料を溶融固化させて硬化層を形成するレーザ照射部と、前記供給路形成部材の外周面を囲むように配置され、該外周面との間にシールドガス供給路を形成する外筒部と、前記シールドガス供給路を通じて、前記積層予定面における粉末材料が供給される領域の外側を囲むようにシールドガスを供給するシールドガス供給部とを備えたレーザ積層造形装置であって、
前記外筒部における前記シールドガスの吐出側の端部である先端部には、該外筒部の径方向内側のシールドガス供給路と該外筒部の径方向外側の外部空間とを連通する連通孔が形成されているレーザ積層造形装置に係る。
【0008】
このレーザ積層造形装置によれば、粉末材料供給部より積層予定面に供給された粉末材料が、レーザ照射部より照射されたレーザ光により溶融固化されることでレーザ積層造形が行われる。レーザ積層造形に際しては、粉末材料の供給路形成部材と外筒部との間に形成されたシールドガス供給路を介してシールドガス供給部より積層予定面に向けてシールドガスが供給され、積層予定面における粉末材料の供給箇所が該シールドガスによって囲まれる。これにより、粉末材料が外気と反応して溶融効率が低下するのを防止することができるとともに、粉末材料の直進性が低下して積層造形精度が低下するのを防止することができる。シールドガス供給部によって供給されるシールドガスの外側にはその慣性力によって誘起された外部空気流が発生する。この外部空気流は積層予定面に衝突した後、上方に巻き上げて渦流を発生する。このため、この巻き上げた渦流によってシールドガスの吐出先端側の端部が径方向外側に引き寄せられて、シールドガス全体が径方向外側に広がる虞がある。これに対して、本発明では、外筒部の先端部に、シールドガス供給路と外部空間とを連通する連通孔を形成するようにしたので、シールドガスの外側に誘起される外部空気流を、前記渦流に発展する前に前記連通孔から前記シールドガス供給路内に吸い込むことができる。したがって、前記渦流の発生を抑制し、延いては該渦流によるシールドガスの広がりを抑制して、シールドガスによる外気のシールド性を確保するとともに粉末材料の直進性を向上させることができる。
【0009】
前記外筒部は、第1外筒部と、該第1外筒部の外側を囲む第2外筒部とからなる二重筒構造であり、前記供給路形成部材と前記第1外筒部との間の空間、及び、前記第1外筒部と前記第2外筒部との間の空間がそれぞれ前記シールドガス供給路を構成し、前記連通孔は、前記第2外筒部の先端部に形成されて、該第2外筒部及び前記第1外筒部間に形成されたシールドガス供給路と、該第2外筒部の外側の外部空間とを連通するように形成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、外筒部を第1外筒部と第2外筒部との二重筒構造とすることで、シールドガス供給路を径方向において二重に形成することができる。内側のシールドガス供給路は、前記粉末材料の供給路形成部材と前記第1外筒部との間の空間により構成され、外側のシールドガス供給路は、第1外筒部と第2外筒部との間の空間により構成される。この第2外筒部には連通孔が形成されているので、第2外筒部の外側の外部空気流は、前記渦流に発展する前にこの連通孔から前記外側のシールドガス供給路に吸い込まれることとなる。したがって、上述した渦流の発生に起因するシールドガスの広がりの問題を回避することができる。また、連通孔から吸い込まれた外部空気流は、外側のシールドガス供給路内に流入するが、内側のシールドガス供給路には流入しない。したがって、粉末材料の供給箇所に近い側である内側のシールドガス供給路内のシールドガスに空気が混入するのを防止することができる。よって、シールドガスに混入した空気と粉末材料(金属)との酸化反応を確実に防止することができる。
【0011】
前記連通孔は複数設けられており、複数の前記連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の周方向において、互いに間隔を空けて全周に亘って配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、外筒部の外側の外部空気流を、周方向の全周に亘って形成された複数の連通孔からシールドガス供給路内に吸引することができる。よって、外筒部の外側の外部空気流が渦流に発展することに起因するシールドガスの広がりを確実に防止することができる。
【0013】
前記複数の連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の軸方向に長い長孔状に形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、連通孔が該外筒部の軸方向、つまり径方向から見て外部空気流の流れる方向に長く形成されている。よって外筒部の外側の外部空気流を、円滑に且つ確実に連通孔から外筒部に導くことができる。
【0015】
前記複数の連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の周方向に長い長孔状に形成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、各連通孔を単なる円孔に形成した場合に比べて、隣接する連通孔同士の間隔を狭くすることができる。これにより、外筒部の外側の外部空気流を、周方向の全域において効率良く連通孔内に導くことができる。
【0017】
前記連通孔は、該連通孔が形成される外筒部の径方向外側から内側に向かって前記先端部側に傾斜していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、連通孔は、外筒部の径方向外側から内側に向かって先端部側(つまりシールドガスの吐出側)に傾斜している。したがって、外筒部の外側の外部空気流を、シールドガスの流れに逆らうことなくシールドガス供給路内にスムーズに吸い込むことができる。
【0019】
前記シールドガス供給路は、前記レーザ照射部より前記積層予定面に向けて出射されるレーザ光の光学路として兼用されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、シールドガス供給路がレーザ光の光学路として兼用されているので、レーザ光の光学路とシールドガス供給路とを別々に設ける場合に比べて装置全体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係るレーザ積層造形装置によれば、粉末材料の供給路形成部材を囲むように配置された外筒部の先端部に、該外筒部の径方向内側のシールドガス供給路と径方向外側の外部空間とを連通する連通孔を形成するようにしたことで、シールドガス流により誘起された外部空気流が渦流に発展する前に、該外部空気流を連通孔からシールドガス流路内に吸い込んでシールドガスの広がりを抑制することができる。延いては、シールドガスによる外気のシールド性及び粉末材料の直進案内性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係るレーザ積層造形装置の構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態1に係るレーザ積層造形装置の照射ハウジングの先端部を示す拡大側面図である。
【
図4】実施形態1のレーザ積層造形装置におけるシールドガスの流れを説明するための説明図である。
【
図5】変形例1に係るレーザ積層造形装置における照射ハウジングの先端部の拡大断面図である。
【
図9】他の実施形態に係るレーザ積層造形装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態のレーザ積層造形装置1は、加工ヘッド2、移動機構部3及び制御装置40を備えていて、制御装置40による制御の下、移動機構部3により加工ヘッド2を積層予定面Sに沿って移動させながらレーザ積層造形を行う。尚、
図1の例では、積層予定面SはワークW(被積層体の一例)の表面とされているが、これに限ったものではなく、例えば既に積層された硬化層の表面や装置の基台であってもよい。
【0025】
前記移動機構部3は、加工ヘッド2をX軸、Y軸、及びZ軸方向に直線移動させるためのボールネジ機構や、加工ヘッド2を揺動させるためのチルト機構などから構成され、ワークWに対する加工ヘッド2の3次元の相対位置を変更可能に構成されている。
【0026】
前記加工ヘッド2は、積層予定面Sに粉末材料Pを供給する粉末材料供給部10と、積層予定面Sに向けてレーザ光Lを照射するレーザ照射部20と、シールドガスを供給するシールドガス供給部30と、レーザ光Lが通過する光学路及びシールドガス供給路を形成する照射ハウジング24とを有している。粉末材料供給部10、レーザ照射部20、シールドガス供給部30及び照射ハウジング24は、筐体等を介してユニット化されていて前記移動機構部3により一体で駆動される。
【0027】
レーザ照射部20は、レーザ発振器21、変換光学系22、及び集光レンズ23を有している。
【0028】
レーザ発振器21は、レーザ光Lを出力する発振器で、一般的には、CO
2レーザ発振器が採用されるが、これに限られるものではない。
図1の例では、レーザ発振器21は、加工ヘッド2に搭載されているが、これに限ったものではなく、加工ヘッド2とは別の場所に固定しておき、レーザ発振器21から出射されるレーザ光Lを光ファイバー等の光学伝送路を介して加工ヘッド2に導くようにしてもよい。
【0029】
変換光学系22は、レーザ発振器21から出射されたレーザ光Lを環状光に変換する光学要素からなる。変換光学系22については、例えば特開2019-098373号公報に記載の周知の構成を採用することができるため、その詳細な説明を省略する。
【0030】
集光レンズ23は、変換光学系22にて環状に変換されたレーザ光Lを、後述する照射ハウジング24内の空間24aに導くとともに、積層予定面Sにおける粉末材料Pの供給箇所を囲むように集光する。集光レンズ23の軸心部には、後述する粉末材料供給部10の一部である供給ノズル11が上下方向に貫通している。
【0031】
照射ハウジング24(外筒部の一例)は、供給ノズル11と同軸に配置された逆円錐台状の筒状部材からなる。照射ハウジング24は、供給ノズル11(供給路形成部材の一例)を囲むように配置されており、供給ノズル11の外周面と照射ハウジング24の内周面との間には、下側に向かうほど外径が小さくなる空間24aが設けられている。この空間24aは、集光レンズ23を通過したレーザ光Lの光学路を構成するとともにシールドガス供給路としても兼用される。照射ハウジング24の下端部には、空間24aの内外を連通する複数の連通孔24cが形成されている。連通孔24cの詳細については後述する。
【0032】
斯くして、前記加工ヘッド2によれば、レーザ発振器21から出力されたレーザ光Lは変換光学系22を介して環状光に変換された後、集光レンズ23を通過して照射ハウジング24の上端開口24dから照射ハウジング24内の空間24aに進入し、照射ハウジング24の下端開口24bから積層予定面Sに向けて照射される。尚、集光レンズ23は、下端開口24bから所定距離離れた点で焦点が合うように前記レーザ光Lを集光する。
【0033】
前記粉末材料供給部10は、照射ハウジング24の軸心部に配置された供給ノズル11を有している。供給ノズル11は、上下方向に延びる中空管により構成されていて、供給ノズル11の内側の中空部が粉末材料Pの供給路11aとして機能する。そして、粉末材料供給部10は、供給ノズル11の供給路11aを介して、積層予定面S上における硬化層を形成する領域に、粉末材料(具体的には、金属粉末)Pをアルゴン等の不活性ガスからなるキャリアガスとともに供給する。前記レーザ光Lは、この粉末材料Pの収束箇所に焦点が位置するように集光レンズ23により集光される。キャリアガスとともに積層予定面Sに供給された金属粉末は、レーザ光Lのエネルギによって加熱、溶融されて溶融池が形成され、加工ヘッド2の移動によりレーザ光Lが照射されなくなった溶融池の溶融金属が凝固することにより所望の形状の硬化層が積層される(このような加工現象を「レーザ積層造形」という)。
【0034】
前記シールドガス供給部30は、積層予定面Sにおける粉末材料Pの供給箇所を囲むようにシールドガスを供給する。具体的には、シールドガス供給部30は、照射ハウジング24の上端開口24dから照射ハウジング24内の空間24aを経由して積層予定面Sにシールドガスを供給する。シールドガスは、粉末材料Pの供給箇所を囲むことによりその外側の空気が粉末材料Pと反応するのを防止する役割と、粉末材料Pの飛散を防止してその直線性を確保する役割とを担っている。シールドガスとしては、例えばアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスが一般的に用いられる。
【0035】
前記制御装置40は、加工プログラムを記憶する加工プログラム記憶部41と、この加工プログラム記憶部41に記憶された加工プログラムを基に、移動機構部3、粉末材料供給部10、レーザ発振器21、及びシールドガス供給部30を制御する制御部42とを備えている。
【0036】
前記加工プログラムは、レーザ発振器21のON,OFFなどの動作、前記加工ヘッド2を位置制御する前記移動機構部3の動作などをコードによって指令したものであり、この加工プログラムにより、ワークWに対する加工ヘッド2の移動軌跡が画定される。
【0037】
制御部42は、不図示の操作盤より加工サイクルの実行指令を受け付けると、前記加工プログラムを実行、即ち、加工プログラム中に指令されたコードを解釈してこれに応じた制御信号を出力することでレーザ積層造形制御を実行する。レーザ積層造形制御では、移動機構部3、粉末材料供給部10、レーザ発振器21、及びシールドガス供給部30を動作させて積層予定面Sに所望の形状の硬化層を形成する。
【0038】
以上の構成を備えた本実施形態のレーザ積層造形装置1によれば、加工プログラム記憶部41に格納された加工プログラムが制御部42によって実行され、この加工プログラムに従って、前記制御部42によって前記レーザ発振器21、移動機構部3、粉末材料供給部10、及びシールドガス供給部30の動作が制御され、加工ヘッド2と前記ワークWとが相対的に移動しながら、当該加工ヘッド2によりワークWに対してレーザ積層造形が実行される。
【0039】
即ち、前記レーザ発振器21から出力されたレーザ光Lは変換光学系22を介して環状光に変換された後、集光レンズ23を通過して照射ハウジング24内の空間24aに導入され、照射ハウジング24の下端開口24bから所定距離離れた焦点位置に集光される。また、照射ハウジング24内の空間24aには、シールドガス供給部30からシールドガスが供給されており、このシールドガスが照射ハウジング24の下端開口24bから噴出している。
【0040】
そして、この状態で、前記照射ハウジング24から照射されるレーザ光Lの焦点領域に、前記供給ノズル11を介して粉末材料供給部10からレーザ積層造形用の粉末材料(金属粉末)Pがキャリアガスとともに供給される。斯くして、金属粉末がレーザ光Lの焦点領域に供給されると、これがレーザ光Lにより加熱、溶融されて、ワークWの積層予定面S上に堆積される。その際、レーザ光Lにより加熱、溶融される金属粉末はシールドガスによってその酸化が防止されるとともに、径方向への広がりが抑制されて直進性が確保される。そして、加工ヘッド2の照射ハウジング24とワークWとは移動機構部3によって3次元空間内で相対移動するように位置制御されており、このような相対移動によって、ワークWの積層予定面S上に所定形状の積層造形物が堆積される。
【0041】
ところで、従来のレーザ積層造形装置では、シールドガス供給部によって供給されるシールドガスが径方向外側に広がってしまうために該シールドガスによる外気のシールド性の低下及び粉末材料Pの直進案内性の低下を招くという問題がある。
【0042】
図10は、この問題を説明するための説明図であって従来のレーザ積層造形装置におけるシールドガス流g及び外部空気流hを模式的に示している。尚、
図10では、本実施形態のレーザ積層造形装置1と同じ構成要素には、本実施形態で使用した各構成要素の符号に100を加算して示す。
【0043】
従来のレーザ積層造形装置において、レーザ積層造形を実行する際には、本実施形態と同様に、シールドガス供給部(図示省略)から照射ハウジング124内の空間124aにシールドガス流gが導入され、導入されたシールドガス流gが、照射ハウジング124の下端開口124bから積層予定面S上に粉末材料Pの収束領域を囲むように供給される。照射ハウジング124の周囲には、シールドガス流gの慣性力によって誘起される外部空気流hが発生する。この外部空気流hは、照射ハウジング124の外壁面に沿って下方に流れた後、シールドガス流gに引き寄せされるように径方向内側に僅かに進路を変えた後、積層予定面Sに衝突し、径方向外側の斜め上方に巻き上げて渦流化する。そして、この巻き上げた渦流によって、シールドガス流gの吐出先端部が径方向外側に引き寄せられ、シールドガス流gの全体が径方向外側(
図10のA方向)に広がってしまう。シールドガス流gが外側に広がると、シールドガスによる外部空気のシールド性及び粉末材料Pの直進案内性が低下するという問題が生じる。
【0044】
この問題を回避するべく、本実施形態では、照射ハウジング24に連通孔24cを形成するようにしている。
図1~
図3に示すように、連通孔24cは、照射ハウジング24におけるシールドガスの吐出側の端部である先端部に形成されている。本例では、連通孔24cは合計で6つ設けられている。6つの連通孔24cは、平面視で、照射ハウジング24の軸心を中心として放射状に形成されていて周方向に等間隔に配置されている。そして、各連通孔24cは、照射ハウジング24の内側の空間24a(シールドガス供給路)と外部空間とを連通するように照射ハウジング24の径方向に貫通している。尚、連通孔24cの数は、6つに限ったものではなく、例えば7つ以上であってもよいし、5つ以下であってもよい。
【0045】
このように、本実施形態のレーザ積層造形装置1によれば、照射ハウジング24の先端部に連通孔24cを形成するようにしたことで、
図4に示すように、シールドガス流gによって誘起された外部空気流hが、上述した渦流に発展する前に、シールドガス流gの負圧によって連通孔24cから照射ハウジング24内の空間24aに吸い込まれる。したがって、シールドガス流gが渦流の影響で径方向外側に広がるのを防止することができる。延いては、シールドガス流gによる外部空気のシールド性を確保して粉末材料Pの酸化反応を抑制するとともに、シールドガス流gによる粉末材料Pの直進案内性を向上させて積層造形物の形状精度を向上させることができる。
【0046】
また、連通孔24cは複数設けられており、該複数の前記連通孔24cは、照射ハウジング24の周方向において、互いに間隔を空けて全周に亘って配置されている。
【0047】
この構成によれば、照射ハウジング24の外側の外部空気流hを、周方向の全周に亘って形成された複数の連通孔24cから照射ハウジング24内の空間24a(シールドガス供給路内)に吸い込むことができる。よって、照射ハウジング24の外側の外部空気流hが渦流に発展するのを確実に防止することができる。
【0048】
また、照射ハウジング24内の空間24aは、シールドガス供給路としてのみでなくレーザ光Lの光学路としても使用される。
【0049】
この構成によれば、照射ハウジング24内の空間24aをシールドガス供給路とレーザ光Lの光学路との2つの用途に使用するようにしたことでレーザ積層造形装置1全体を小型化することができる。
【0050】
[変形例1]
図5は、実施形態1の変形例1を示している。この変形例1では、連通孔24cの形状が前記実施形態1とは異なっている。尚、以下の変形例及び実施形態において、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
すなわち、本変形例では、各連通孔24cは、照射ハウジング24の径方向外側から内側に向かってその先端部側(本例では下側)に傾斜している。
【0052】
この構成によれば、連通孔24cが実施形態1のように径方向に貫通している場合に比べて、外部の空気流を連通孔24c内に緩やかな角度で吸い込むことができる。また、吸込んだ空気をシールドガスの流れに沿ってスムーズに流動させることができるので、吸い込んだ空気がシールドガス内に混入するのを防止することができる。よって、混入した空気が金属粉末(粉末材料P)と反応して溶融効率が低下するのを防止することができる。
【0053】
[変形例2]
図6は、実施形態1の変形例2を示している。この変形例1では、連通孔24cの形状が前記実施形態1とは異なっている。
【0054】
すなわち、本変形例では、各連通孔24cは、照射ハウジング24の軸方向に長い長孔状に形成されている。
【0055】
この構成によれば、連通孔24cを照射ハウジング24の軸方向、つまり、径方向から見て外部空気流hの流れる方向に長く形成することができる。よって、照射ハウジング24の外壁面に沿って流れる外部空気流hを、円滑に且つ確実に連通孔24cから照射ハウジング24内に導くことができる。尚、変形例1と変形例2とを組み合わせることで連通孔24cへの外気流の導入をより一層円滑化することができる。
【0056】
[変形例3]
図7は変形例3を示している。この変形例3では、連通孔24cの形状が前記実施形態1とは異なっている。
【0057】
すなわち、本変形例では、各連通孔24cは、照射ハウジング24の周方向に長い長孔状に形成されている。
【0058】
この構成によれば、各連通孔24cを単なる円孔で形成した場合に比べて、隣接する連通孔24c同士の間隔を狭くすることができる。これにより、照射ハウジング24の外側の外部空気流hを、周方向の全域において効率良く各連通孔24c内に導くことができる。
【0059】
[実施形態2]
図8は実施形態2を示している。この実施形態2では、照射ハウジング24の構成が実施形態1及び各変形例とは異なっている。
【0060】
すなわち、本実施形態では、照射ハウジング24は、第1ハウジング241と、該第1ハウジング241の外側を囲む第2ハウジング242とからなる二重筒構造を有している。そうして、第1ハウジング241が第1外筒部に相当し、第2ハウジング242が第2外筒部に相当する。第1及び第2ハウジング241,242は共に逆三角錐状の筒状部材からなり、第1ハウジング241内の空間24aと、第1及び第2ハウジング241,242間の空間24eとがそれぞれシールドガス供給路を構成している。第1ハウジング241内の空間24aは、実施形態1と同様に、集光レンズ23を通過したレーザ光Lの光学路としても兼用されている。
【0061】
そして、第2ハウジング242の先端部には複数の連通孔24cが形成されている。各連通孔24cの形状及び配置は実施形態1と同様である。そして、各連通孔24cは、第2ハウジング242及び第1ハウジング241間に形成されるシールドガス供給路としての空間24eと、第2ハウジング242の径方向外側の外部空間とを連通するように形成されている。
【0062】
この構成によれば、第2ハウジング242の外側の外部空気流hは、前記渦流に発展する前に、外側の空間24e内を流れるシールドガス流g2の負圧によって連通孔24cから該空間24e内に吸い込まれる。したがって、上述した渦流の発生に起因するシールドガス流g1の広がりの問題を回避することができる。よって、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。また、連通孔24cから吸い込まれた外部空気流hは、内側(粉末材料Pの供給箇所に近い側)の空間24aに進入することはない。よって、内側の空間24a内を流れるシールドガス流g2に外部空気流hが混入して粉末材料Pと反応するのを防止することができる。
【0063】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0064】
前記各施形態及び変形例では、供給ノズル11の外側を囲むように照射ハウジング24を配置して、供給ノズル11の外周面と照射ハウジング24の内壁面との間の空間24aをレーザ光Lの光学路及びシールドガス供給路として利用する構成を説明したが、これに限ったものではなく、例えば、
図9に示すように、シールドガス供給路と光学路とを別々に設けるようにしてもよい。この例では、環状の粉末供給路12aを有する供給ノズル12を使用し、供給ノズル12(供給路形成部材の一例)の外側を囲むように外筒ハウジング26(外筒部の一例)を配置している。そして、供給ノズル12の内側の空間26aをレーザ光Lの光学路として利用し、供給ノズル12の外周面と外筒ハウジング26との間の空間26bをシールドガス供給路として利用している。この外筒ハウジング26の下端部には各実施形態と同様に連通孔26cが形成されている。これにより、外筒ハウジング26の外側に誘起された外部空気流hを、渦流に発展する前に連通孔26cからシールドガス流路としての外側の空間26b内に吸い込むことができる。よって、前記各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。尚、供給ノズル12は、環状の粉末供給路12aを有する構成に限らず、例えば、周方向に並ぶ複数の吐出口を有するマルチノズルであってもよい。
【0065】
また、前記各実施形態では、移動機構部3は、加工ヘッド2を移動させることでワークWと加工ヘッド2との相対位置を変更可能に構成されているが、これに限ったものではない。すなわち、移動機構部3は、加工ヘッド2及びワークWの双方を移動させるか、又は、固定された加工ヘッド2に対してワークWを移動させることで両者の相対位置を変更するように構成されていてもよい。また、ワークWと加工ヘッド2との相対位置の変更は三次元空間内に限らず、二次元平面内で行うものであってもよい。
【0066】
また、本発明は、前記各実施形態及び各変形例の任意の組合せを含む。
【0067】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0068】
P 粉末材料
L レーザ光
S 積層予定面
1 レーザ積層造形装置
10 粉末材料供給部
11 供給ノズル(供給路形成部材)
11a 粉末材料の供給路
12 供給ノズル(供給路形成部材)
12a 粉末材料の供給路
20 レーザ照射部
24 照射ハウジング(外筒部)
24a 空間(光学路、シールドガス供給路)
24c 連通孔
24e 空間(シールドガス供給路)
26 外筒ハウジング(外筒部)
26a 空間(光学路)
26b 空間(シールドガス供給路)
26c 連通孔
30 シールドガス供給部
241 第1ハウジング(第1外筒部)
242 第2ハウジング(第2外筒部)