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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136452
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】座席付き育児器具
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20230922BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230922BHJP
【FI】
B60N2/28
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042130
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】西川 直志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE06
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】幌の着脱を容易に行うことが可能な座席付き育児器具を提供すること。
【解決手段】幌は、座席本体に対して着脱可能に取り付けられる幌基部(5)と、幌基部が座席本体に対して取り付けられた状態で座席本体に対して係止する係止状態と係止を解除する係止解除状態との間を変位可能な係止部材(54)と、幌基部に固定されている持ち手(9)と、持ち手に対して変位可能に設けられ、係止部材の変位を生じさせるように係止部材に当接する当接部(82)を含む力伝達部材(8)と、力伝達部材に設けられ、力伝達部材を操作することにより、係止部材を係止解除状態にもたらすようにする操作部(81)とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子供を受け入れる座席を形成する座席本体に着脱可能に取り付けられる座席付き育児器具の幌であって、
前記座席本体に対して着脱可能に取り付けられる幌基部と、
前記幌基部が前記座席本体に対して取り付けられた状態で前記座席本体に対して係止する係止状態と係止を解除する係止解除状態との間を変位可能な係止部材と、
前記幌基部に固定されている持ち手と、
前記持ち手に対して変位可能に設けられ、前記係止部材の変位を生じさせるように前記係止部材に当接する当接部を含む力伝達部材と、
前記力伝達部材に設けられ、前記力伝達部材を操作することにより、前記係止部材を係止解除状態にもたらすようにする操作部とを備える、座席付き育児器具。
【請求項2】
前記力伝達部材は、前記幌基部に設けられる軸を支点として回動可能に設けられる、請求項1に記載の座席付き育児器具。
【請求項3】
前記係止部材は、前記幌基部から離れる方向に延びる延出部材を含み、
前記延出部材は、前記当接部の当接により、前記延出部材の起点を支点として撓み変形可能に設けられる、請求項2に記載の座席付き育児器具。
【請求項4】
前記力伝達部材の当接部と前記係止部材とが接触する接触点と前記軸との距離は、前記係止部材の起点と前記軸との距離よりも大きくなるように設定されている、請求項3に記載の座席付き育児器具。
【請求項5】
前記力伝達部材は、前記延出部材の撓み変形による弾性力により元の位置に復帰可能に設けられる、請求項3または4に記載の座席付き育児器具。
【請求項6】
前記座席付き育児器具は、自動車に用いられるチャイルドシートである、請求項1~5のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座席付き育児器具に関し、特に子供を受け入れる座席を形成する座席本体に着脱可能に取り付けられる座席付き育児器具の幌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乳母車、チャイルドシートなどの座席付き育児器具には、座席に着座した子供へ直接日光が当たらないようにするために、座席の上方空間を覆う幌が設けられている。そのような幌は、座席に対して着脱自在に設けられていることが知られている。
【0003】
特開2020-199857号公報(特許文献1)には、幌装置をチャイルドシートの本体に対して着脱可能に設けることが開示されている。チャイルドシートの本体に設けられている第1開口および第2開口に対して、幌アタッチメントに設けられている第1取付ピンおよび第2取付ピンを挿着することで、幌装置を本体に対して着脱可能に設けることが開示されている。
【0004】
特開2006-103410号公報(特許文献2)には、幌を乳母車の手摺支持部材に対して着脱可能に設けることが開示されている。手摺支持部材に設けられる嵌合穴に対して、幌骨下端に設けられるピンを係合させることで、幌を着脱可能に設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-199857号公報
【特許文献2】特開2006-103410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のチャイルドシートは、幌を着脱する際に、幌全体が前方へ傾いてしまうため、操作性が悪く、幌の着脱を容易に行うことができない。また、上記特許文献2の乳母車は、幌を取り外すには、ピンを直接押圧し、さらにその状態のままで上方に引き抜く必要があるため、幌の着脱を容易に行うことができない。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、幌の着脱を容易に行うことが可能な座席付き育児器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の一態様に係る座席付き育児器具は、子供を受け入れる座席を形成する座席本体に着脱可能に取り付けられる座席付き育児器具の幌であって、座席本体に対して着脱可能に取り付けられる幌基部と、幌基部が座席本体に対して取り付けられた状態で座席本体に対して係止する係止状態と係止を解除する係止解除状態との間を変位可能な係止部材と、幌基部に固定されている持ち手と、持ち手に対して変位可能に設けられ、係止部材の変位を生じさせるように係止部材に当接する当接部を含む力伝達部材と、力伝達部材に設けられ、力伝達部材を操作することにより、係止部材を係止解除状態にもたらすようにする操作部とを備える。
【0009】
好ましくは、力伝達部材は、幌基部に設けられる軸を支点として回動可能に設けられる。
【0010】
好ましくは、係止部材は、幌基部から離れる方向に延びる延出部材を含み、延出部材は、当接部の当接により、延出部材の起点を支点として撓み変形可能に設けられる。
【0011】
好ましくは、力伝達部材の当接部と係止部材とが接触する接触点と軸との距離は、係止部材の起点と軸との距離よりも大きくなるように設定されている。
【0012】
好ましくは、力伝達部材は、延出部材の撓み変形による弾性力により元の位置に復帰可能に設けられる。
【0013】
好ましくは、座席付き育児器具は、自動車に用いられるチャイルドシートである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、幌の着脱を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るチャイルドシートを示す斜視図であり、(A)は幌を座席本体に取り付けている状態を示し、(B)は幌を座席本体に取り付けて、幌を広げている状態を示し、(C)は幌を座席本体から取り外している状態を示している。
図2】同実施形態における幌を取り外して示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は(A)の状態から持ち手および力伝達部材を取り外した状態を示す側面図である。
図3図2の一部分を拡大して幌布を取り除いた状態を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は斜視図である。
図4】幌基部、持ち手、および力伝達部材の分解斜視図である。
図5】幌基部、持ち手、および力伝達部材の分解斜視図である。
図6】幌の一部分を拡大して示す側面図であり、(A)は操作部を操作していない状態を示し、(B)は操作部を操作した状態を示している。
図7図6に対応する幌基部だけを取り出して示した側面図であり、(A)は操作部を操作していない状態を示し、(B)は操作部を操作した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
まず、幌4を備えた座席付き育児器具の一例について説明する。幌4が用いられる座席付き育児器具としては、たとえばチャイルドシート、乳母車、ベビーラック、ハイローベッド、育児椅子などが挙げられるが、チャイルドシートに適用した例を説明する。
【0018】
<チャイルドシートの概要について>
図1(A)~図1(C)を参照して、本実施の形態に係る座席付き育児器具としてのチャイルドシート1の概要について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1に着座する子供の前後方向に対応する。幅方向は、チャイルドシート1に着座する子供の左右方向に対応する。また、内側は、チャイルドシート1に着座する子供に向かう側に対応する。外側は、チャイルドシート1に着座する子供とは反対側に対応する。
【0019】
本実施形態に係るチャイルドシート1の基本構造としては、一般的なチャイルドシートの構造と同様であってよく、自動車に用いられ、特に自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体2および座席本体3を備える。
【0020】
ベース本体2は、乗用自動車の座席シート上に載置され、座席本体3を下方から支持する。図示は省略するが、ベース本体2の前方端には、乗用自動車の床面に向かって伸びるレッグサポートが設けられ、ベース本体2の後方端には、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結するISOFIXが設けられていてもよい。ベース本体2の上方には、ベース本体2に対して回転可能に支持される座席本体3が設けられている。
【0021】
座席本体3は、ベース本体2の上側に取り付けられ、ベース本体2に対して回転自在に支持される。座席本体3は、座席フレーム31と、座席フレーム31上に設けられた座席クッション32とを含む。
【0022】
座席フレーム31は、たとえば硬質な材質で形成されており、座席クッション32を外方から覆っている。座席フレーム31の両側部には、挿入孔36(図1(C))が設けられている。この挿入孔36には、幌4が着脱自在に取り付けられる。幌4は、座席本体3の上方を覆うものである。幌4は、図1(A)および図1(B)に示すように、座席本体3に取り付けた状態で、閉じた状態または展開させた(広げた)状態に変位可能であり、図1(C)に示すように、座席本体3から取り外すことができる。
【0023】
座席クッション32は、子供が着座する。そのため、座席クッション32は、子供の臀部を支持する座面部33と、座面部33の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する背もたれ部34とを有する。図1(A)~図1(C)では、座席本体3において、柔らかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されている状態が示されている。
【0024】
背もたれ部34の上方には、子供の頭部を支持するヘッドレスト35が設けられていてもよい。上述した幌4を取り付けるための挿入孔36は、背もたれ部34の両側部にそれぞれ設けられることが好ましい。背もたれ部34は、座面部33に対して傾斜することでリクライニング可能に設けられていてもよいし、座面部33に対する傾斜角度が固定されていてもよい。この場合、座席本体3は、ベース本体2に対してスライド可能に設けられていてもよい。座面部33および背もたれ部34には、子供の体を拘束するベルトが複数設けられている。
【0025】
上述のように、本実施の形態のチャイルドシート1は、座席本体3の座席フレーム31に対して、幌4が着脱可能に設けられる。以下、本実施の形態の幌4について詳細に説明する。
【0026】
<幌について>
図2は、幌4を取り外して示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は(A)の状態から持ち手8および力伝達部材9を取り外した状態の側面図であり、係止部材54が露出した状態を示している。図3は、図2の一部分を拡大して幌布45を取り除いた状態を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は斜視図である。図4および図5は、幌基部5、持ち手8、および力伝達部材9の分解斜視図である。図4および図5では、幌基部5から第2幌基部60および第3幌基部70を取り外し、第1幌基部50だけを図示した状態を示している。図6は、幌4の一部分を外側から見た側面図であり、図7図6に対応した第1幌基部50だけを取り出して示した図であり、(A)は操作部91を操作していない状態を示し、(B)は91操作部を操作した状態を示している。図2図7をさらに参照して、幌4について説明する。
【0027】
図2に示すように、幌4は、複数の幌骨41,42,43,44と、幌骨41,42,43,44間に掛け渡される幌布45とを備える。幌骨41,42,43,44は、逆U字形状であり、長尺状の部材で形成されている。各幌骨41,42,43,44の一端および他端は、互いの角度が可変となるよう、幌基部5によって回動可能に連結されている。幌骨41,42,43,44は、互いに近づくことで閉状態となり(図1(A))、互いに離れることで開状態となる(図1(B))。
【0028】
幌布45は、複数の幌骨41,42,43,44の間に掛け渡され、ドーム型の立体形状を形成する。幌布45は、典型的には布製であるが、ビニール製またはビニールコーティングされた布地であってもよく、たとえば日差し、埃、雨水、およびウィルスなどを遮断する。
【0029】
なお、本実施の形態の幌4は、複数の幌骨41,42,43,44と幌布45とで形成されているとしたが、座席本体3の上方を覆うものであればよく、たとえばプラスチックなどで一体的にドーム状に形成されるものであってもよく、必ずしも幌骨41,42,43,44および幌布45が設けられていなくてもよい。
【0030】
本実施の形態の幌4は、座席本体3に対して着脱可能に取り付けるために、幌基部5と、持ち手8と、力伝達部材9とを備える。以下、それぞれの構成について詳細に説明する。
【0031】
(幌基部について)
特に図3(A)および図3(B)に示すように、幌基部5は、第1幌基部50と、第2幌基部60と、第3幌基部70とを含む。第1幌基部50、第2幌基部60、および第3幌基部70は、平面形状はそれぞれ若干異なるが、いずれも平板状である。幅方向内側から外側に向かって第1幌基部50、第2幌基部60、第3幌基部70の順で並べられ、軸方向(幅方向)に重ね合わされて、回動軸53で回動可能に軸支されている。回動軸53は、たとえばラチェット機構であることが好ましい。これにより、幌骨41,42,43の開閉角度を調節することができる。さらに、前後方向後方から前方に向かって第1幌基部50、第2幌基部60、第3幌基部70の順で並べられる。以下の説明では、4本の幌骨をそれぞれ第1幌骨41、第2幌骨42,第3幌骨43、第4幌骨44として説明する。
【0032】
第1幌基部50は、座席本体3に対して着脱可能に取り付けられている。第1幌基部50については、後述する。第2幌基部60は、上方位置に第2幌骨42の端部を挿入可能な差し込み部61aが設けられる。第3幌基部70は、第2幌基部60と略同一形状であり、上方に第3幌骨43の端部を差し込み可能な差し込み部71aが設けられる。さらに、第3幌基部70は、下方に第4幌骨44の端部がピン部72を介して取り付けられている。つまり、第3幌基部70には、2本の幌骨の端部が取り付けられている。
【0033】
図4および図5をさらに参照して、第1幌基部50について詳細に説明する。第1幌基部50は、幌基部本体51と、幌基部本体51の後方(紙面上の右方)に設けられる穴部52と、幌基部本体51の前方(紙面上の左方)に設けられる回動軸53と、幌基部本体51から下方に突出する係止部材54とを含む。
【0034】
幌基部本体51は、上方位置に第1幌骨41の端部を挿入可能な差し込み部51aが設けられる。穴部52には、後述する持ち手8の固定軸82が貫通する。穴部52は、平面視円形状であるが、一部分が凹んでいる凹部52a(図5)が設けられている。回動軸53は、上述のように、幅方向に重ね合わされた第1幌基部50、第2幌基部60、および第3幌基部70を軸支する。
【0035】
係止部材54は、第1幌基部50が座席本体3に対して取り付けられた状態で座席本体3に対して係止する係止状態(図7(A))と係止を解除する係止解除状態(図7(B))との間を変位可能に設けられる。具体的には、係止部材54は、座席本体3の側部に設けられる挿入孔36(図1(C))に差し込み可能な挿入部55と、第1幌基部50から離れる方向(下方)に延びる延出部材56と、延出部材56から離れる方向(前方)に延び、後述する力伝達部材9の当接部92に押圧される押圧部57とを含む。
【0036】
挿入部55は、幌基部本体51から下方に向かって突出する部材であり、穴部52の下方に位置する。さらに、挿入部55は、上下方向途中位置において、幅方向寸法が狭い段差部55aが設けられている。これにより、図7(B)に示すように、延出部材56が段差部55a側に移動することを可能とする。
【0037】
延出部材56は、挿入部55の延在方向に沿って平行に延びている。延出部材56は、幌基部本体51から下方に延びる棒状部材である。そのため、延出部材56は、延出部材56の起点C(図7)を支点として撓み変形する。起点Cは、幌基部本体51の下端と延出部材56の上端とが交わる交点である。延出部材56の下端部は、フック形状のフック部56aとなっている。図7(A)に示すように、フック部56aは、座席本体3に設けられる挿入孔36の爪部36aと係合する。延出部材56のフック部56aが挿入孔36の爪部36aと係合することで、幌4は座席本体3に取り付けられて保持される。延出部材56のうち、少なくともフック部56aは挿入穴36内に位置する。
【0038】
押圧部57は、延出部材56の延在方向の途中位置に設けられ、延出部材56から分岐するように設けられる。押圧部57は、前方に向かって突出する。具体的には、押圧部57は、略水平方向に延びており、延出部材56と押圧部57とのなす角が略直角になるように設けられる。また、押圧部57の先端は、上方に向かってやや傾斜することが好ましい。押圧部57の厚さは、延出部材56よりも薄い。そのため、延出部材56のように撓み変形することはない。押圧部57は、後述する力伝達部材9の当接部92に当接する。
【0039】
押圧部57は、力伝達部材9の当接部92の変位を延出部材56に伝える部分である。図7(A)に示すように、力伝達部材9の当接部92が押圧部57に当接し、当接部92により押されることで、図7(B)に示すように、延出部材56が延出部材56の起点Cを支点として撓み変形する。つまり、力伝達部材9の操作部91を操作することで、力伝達部材9の当接部92が押圧部57を押して、延出部材56が挿入部55側に移動するため、フック部56aと爪部36aの係合を解除することができる。
【0040】
(持ち手について)
図4および図5を参照して、持ち手8について説明する。持ち手8は、幌4を着脱する際に、使用者が手で掴む部分であり、第1幌基部50に固定されている。
【0041】
持ち手8は、持ち手本体80と、持ち手本体80から第1幌基部50に向かって幅方向に突出する固定軸82とを含む。持ち手本体80は、正面視において上下に細長い矩形形状であり、角部が面取りされている。持ち手本体80は、幅方向に厚みを有する。これにより、持ち手本体80は、片手で持ちやすくなるように設計されている。なお、持ち手本体80は、片手で持ちやすければよく、たとえば側面視において円形状などであってもよい。
【0042】
特に図5に示すように、固定軸82には、凸部82aが設けられている。固定軸82は、後述する力伝達部材9の貫通孔93を貫通し、第1幌基部50の穴部52に固定される。固定軸82の凸部82aは、穴部52の凹部52aに嵌合する。そのため、持ち手8は、第1幌基部50に固定されて、第1幌基部50に対して回転しない。図3(A)に示すように、持ち手8は、たとえば係止部材54の挿入部55の延在方向と同方向に傾斜した状態で、第1幌基部50に固定される。
【0043】
(力伝達部材について)
図4および図5を参照して、力伝達部材9について説明する。力伝達部材9は、第1幌基部50および持ち手8に対して変位可能に設けられる部分である。力伝達部材9は、第1幌基部50と持ち手8との間に設けられる。
【0044】
力伝達部材9は、力伝達本体部90と、力伝達本体部90を操作する操作部91と、力伝達本体部90から第1幌基部50に向かって突出する当接部92と、力伝達本体部90を貫通する貫通孔93とを含む。
【0045】
図4に示すように、操作部91は、力伝達本体部90の前方側に位置し、持ち手8の側壁よりも前方に突出する面を有する。操作部91は、たとえば親指などで押圧可能なレバーである。図6(B)に示すように、操作部91を操作することにより、図7(B)に示すように、係止部材54が係止解除状態となる。
【0046】
当接部92は、たとえばピンであり、第1幌基部50の幌基部本体51の下端と係止部材54の押圧部57の上端との間に位置する。具体的には、当接部92は、押圧部57に当接し、操作部91の操作により押圧部57を変位させる。
【0047】
貫通孔93は、操作部91よりも後方側に位置する。貫通孔93は、持ち手8の固定軸82が貫通する。上述のように、持ち手8の固定軸82は、幌基部本体51に設けられる穴部52に固定される。つまり、力伝達部材9は、幌基部5に設けられる軸を支点として回動可能に設けられる。また、力伝達部材9は、延出部材56の撓み変形による弾性力により元の位置に復帰可能に設けられる。具体的には、力伝達部材9の当接部92と押圧部57とが当接しているため、延出部材56が元の位置に戻ろうとする復帰力により、力伝達部材9は、元の位置に戻る。なお、力伝達部材9は、合成樹脂などで形成されているが、たとえばバネなどの付勢部材により、非係合状態に付勢されていてもよい。
【0048】
図7(A)に示すように、力伝達部材9の当接部92と係止部材54の押圧部57とが接触する接触点Bと固定軸82の軸Aとの距離L1は、係止部材54の延出部材56の起点Cと固定軸82の軸Aとの距離L2よりも大きくなるように設定されている(L2<L1)。これにより、本実施の形態は、係止部材54の延出部材56の起点C付近を直接押圧するよりも小さい力で係止部材54のフック部56aと挿入孔36の爪部36との係止状態を解除することができる。
【0049】
(幌の着脱方法について)
次に、図1図6、および図7を参照して、座席本体3に対して幌4を着脱する方法について説明する。
【0050】
幌4を座席本体3に装着するには、幌4の両端の持ち手8をそれぞれの手で持ち、座席本体3に設けられる挿入孔36(図1図7)に第1幌基部50の挿入部55を差し込む。図7(A)に示すように、挿入孔36には、内部に向かって突出する爪部36aが設けられている。第1幌基部50には係止部材54が設けられている。そのため、第1幌基部50の挿入部55を挿入孔36に差し込んでいくと、延出部材56のフック部56aが挿入孔36の爪部36aを乗り越えて、フック部56aと爪部36aが掛かり合う(図7(A))。これにより、幌を簡単に座席本体3に取り付けることができる。
【0051】
なお、幌4を座席本体3に装着する際には、4本の幌骨41~44を閉状態にし、幌4を座席本体3に装着した後に、任意の広さに広げることが好ましい。
【0052】
幌4を座席本体3から取り外すには、図6(A)で示すように、座席本体3に取り付けられている幌4の一対の持ち手8を両手で持つ。図6(B)で示すように、たとえば持ち手8を親指以外の4本の指で掴み、力伝達部材9の操作部91を親指で押さえる。図7(B)で示すように、力伝達部材9の当接部92が係止部材54の押圧部57を下方に押圧し、係止部材54の延出部材56が起点Cを支点に撓み変形し、挿入部55側に向かって傾斜する。これにより、延出部材56のフック部56aと爪部36aの係止が解除される。この状態で、持ち手8を上方に持ち上げることで、係止部材54の挿入部55を挿入孔36から引き抜き、幌4を座席本体3から取り外すことができる。
【0053】
なお、幌4を座席本体3から取り外す際には、4本の幌骨41~44を閉状態にすることが好ましい。
【0054】
従来の着脱可能に設けられるチャイルドシートの幌は、幌のフックとチャイルドシートのフックとの係合部を直接解除し、これらのフックを非係合に維持した状態で幌を引き抜く必要があり、幌の取り外しにツーアクション必要であり、操作性が悪かった。さらに、係合部を直接解除する際に、指挟みなどの懸念があり、安全性の観点からも好ましくなかった。
【0055】
また、他の従来の着脱可能に設けられるチャイルドシートの幌は、幌のフックとチャイルドシートのフックとを解除する際に、幌全体に力が加わってしまい、幌が前方に回動するため、操作性が悪かった。
【0056】
それに対し、本実施の形態の幌4は、持ち手8が設けられ、力伝達部材9の操作部91を操作することで、係止部材54と座席本体3との係止を解除することができる。持ち手8を持った状態で操作部91を操作すれば、幌4の係止部材54の係止を確実に解除することができるため、操作性がよい。また、力伝達部材9は持ち手8に対して変位可能に設けられ、幌骨41,42,43,44にまで力伝達部材9の変位が伝わらないため、操作部91で係止部材54を変位させたとしても幌骨41,42,43,44および幌布45が前方に変位することがなく、この観点からも操作性がよい。
【0057】
また、操作部91を操作することで係止部材54を変位させるため、従来技術のように係合部を直接解除する必要がないため、指挟みの危険性がなく、安全性にも優れている。さらに、幌4は、幌基部5、持ち手8、および操作部91が設けられる力伝達部材9の3つの部材で形成されるため、簡易な構成とすることができ、部品点数を少なくすることができる。
【0058】
なお、本実施の形態の幌4は、操作部91が設けられる力伝達部材9は、固定軸82を支点として回動可能に設けられるとしたが、限定的ではなく、たとえば前後方向、幅方向、上下方向など直線的に移動可能であってもよい。
【0059】
また、本実施の形態において、持ち手8と幌基部5とは別の部材で構成したが、同一部材であってもよく、たとえば幌基部5に持ち手8となる凸部などが設けられていてもよい。
【0060】
本実施の形態の力伝達部材8は、持ち手8に対して回転可能に固定されていたが、持ち手8に対して変位可能に設けられていればよく、たとえば幌基部5に対して軸支されていてもよく、固定される部材については限定されない。
【0061】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 チャイルドシート、2 ベース本体、3 座席本体、4 幌、5 幌基部、8 持ち手、9 力伝達部材、56 延出部材、57 押圧部、82 固定軸、91 操作部、92 当接部、A 軸、B 接触点、C 起点、L1,L2 距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7