(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136463
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】環境形成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042146
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中西 優貴
(72)【発明者】
【氏名】平井 潤
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA07
2G050EA01
(57)【要約】
【課題】扉に固定された延出部材が試料へのアクセス時に邪魔にならないようにする。
【解決手段】環境形成装置10は、所定の環境を生成するための空間を有する装置本体12と、扉14と、前記空間を開閉するように扉14を装置本体12に対してスライド可能にするスライド機構40と、を備える。スライド機構40は、扉14に固定された細長い形状の延出部材40aと、装置本体12に配置され、延出部材40aをスライド可能に保持する保持部40bと、を有する。扉14が前記空間を閉じた状態において前記空間内に試料が配置されるように試料の受け部35が扉14に配置される。延出部材40aは、受け部35よりも下に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の環境を生成するための空間を有する装置本体と、
扉と、
前記空間を開閉するように前記扉を前記装置本体に対してスライド可能にするスライド機構と、を備え、
前記スライド機構は、前記扉に固定された細長い形状の延出部材と、前記装置本体に配置され、前記延出部材をスライド可能に保持する保持部と、を有し、
前記扉が前記空間を閉じた状態において前記空間内に試料が配置されるように前記試料の受け部が前記扉に配置され、
前記延出部材は、前記受け部よりも下に位置している、環境形成装置。
【請求項2】
前記延出部材は、前記扉の高さ方向中心よりも下に位置している、請求項1に記載の環境形成装置。
【請求項3】
前記扉を前記装置本体にロックするためのロック部が設けられ、
前記ロック部は、前記扉の高さ方向中心よりも上に位置している、請求項2に記載の環境形成装置。
【請求項4】
前記ロック部と前記延出部材とは、前記扉の高さ方向中心に対して互いに対称となる位置に配置されている、請求項3に記載の環境形成装置。
【請求項5】
前記装置本体は、外装と内装と前記外装及び前記内装間に配置された断熱材とを有し、一方が開口する箱形であり、
前記保持部は、前記延出部材が前記断熱材よりも外側に位置した状態で前記延出部材を保持する、請求項1から4の何れか1項に記載の環境形成装置。
【請求項6】
前記扉には、床に沿って転動することにより前記扉のスライド移動を補助するローラーが設けられている、請求項1から5の何れか1項に記載の環境形成装置。
【請求項7】
前記扉は、環状に形成された扉本体と、前記扉本体に対して着脱可能であり且つ前記扉本体の内側に挿入されて前記扉本体の内孔を塞ぐ閉塞部と、を有し、
前記受け部は、前記閉塞部に固定されるとともに前記空間内に延びるように配置される、請求項1から6の何れか1項に記載の環境形成装置。
【請求項8】
前記扉には、前記試料に接続するケーブルを通すための貫通孔が設けられている、請求項1から7の何れか1項に記載の環境形成装置。
【請求項9】
前記扉には、前記試料自体又は試料に接続されたケーブルを接続するためのコネクタが設けられている、請求項1から8の何れか1項に記載の環境形成装置。
【請求項10】
前記扉には、前記試料に接続されたケーブルが接続される計測器を載置する載置部が設けられている、請求項1から9の何れか1項に記載の環境形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、所定の温度環境を生成するための空間を有する装置本体と、この空間を開閉するスライド式の扉と、を備えた環境形成装置が知られている。下記特許文献1に開示された環境形成装置では、
図11に示すように、扉81の左右両端に延出部材82がそれぞれ固定されており、一対の延出部材82は、装置本体83に設けられたスライドレール84に沿ってスライドする。扉81には、試料を載せるための試料台85が固定されていて、扉81を装置本体83から引き出すと、試料台85も装置本体83内の空間から引き出される。したがって、プリント基板等の試料に結線する作業等は、扉81が装置本体83から引き出された状態であれば、試料が試料台85に載置された状態で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された環境形成装置では、装置本体83に対してスライドする扉81に試料台85が取り付けられているため、扉81が装置本体83から引き出された状態であれば、試料が試料台85に載置された状態で結線等の作業を行うことができる。しかしながら、扉81の左右両端にはそれぞれ延出部材82が配置されており、この延出部材82は、上下方向に所定の幅を有するだけでなく、試料台85と同じ高さに位置しているため、例えば環境形成装置の横から試料にアクセスする場合には、延出部材82が作業の邪魔になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スライド式の扉を有する環境形成装置において、扉に固定された延出部材が試料へのアクセス時に邪魔にならないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る環境形成装置は、所定の環境を生成するための空間を有する装置本体と、扉と、前記空間を開閉するように前記扉を前記装置本体に対してスライド可能にするスライド機構と、を備える。前記スライド機構は、前記扉に固定された細長い形状の延出部材と、前記装置本体に配置され、前記延出部材をスライド可能に保持する保持部と、を有する。前記扉が前記空間を閉じた状態において前記空間内に試料が配置されるように前記試料の受け部が前記扉に配置される。前記延出部材は、前記受け部よりも下に位置している。
【0007】
本発明に係る環境形成装置では、扉を装置本体に対してスライドさせることにより、扉によって装置本体内の空間が開閉される。このとき、扉に配置された試料の受け部も扉と一体となって移動する。したがって、扉が装置本体から引き出されると、扉に配置された受け部も装置本体の空間から引き出される。この状態で受け部に配置された試料へのアクセスが可能となる。このとき、扉に固定された長尺状の延出部材が試料の受け部よりも下に位置しているため、使用者が環境形成装置の横に立って、受け部の試料に横からアクセスする場合であっても、延出部材が作業の邪魔にならない。
【0008】
前記延出部材は、前記扉の高さ方向中心よりも下に位置していてもよい。この態様では、受け部に試料が配置されて受け部及び延出部材に荷重がかかる場合でも、扉を安定して支持することができる。
【0009】
前記扉を前記装置本体にロックするためのロック部が設けられてもよい。この場合、前記ロック部は、前記扉の高さ方向中心よりも上に位置していてもよい。この態様では、扉が空間を閉じた状態にあるときには、扉の高さ方向中心よりも下に位置する延出部材と、扉の高さ方向中心よりも上に位置するロック部と、により、扉が装置本体に対して支持されることになる。このため、扉の支持を安定させることができる。
【0010】
前記ロック部と前記延出部材とは、前記扉の高さ方向中心に対して互いに対称となる位置に配置されていてもよい。この態様では、扉の支持をより安定させることができる。
【0011】
前記装置本体は、外装と内装と前記外装及び前記内装間に配置された断熱材とを有し、一方が開口する箱形であってもよい。この場合、前記保持部は、前記延出部材が前記断熱材よりも外側に位置した状態で前記延出部材を保持してもよい。
【0012】
この態様では、延出部材が装置本体に設けられた断熱材よりも外側に位置する。つまり、断熱材に対して装置本体内の空間とは反対側に延出部材が位置する。このため、装置本体内の空間が高温に加熱されたときでも、延出部材がその影響を受け難い。したがって、扉が装置本体から引き出された状態で、使用者が試料にアクセスするときに、使用者の身体の一部が延出部材に触れることがあっても、火傷を負う可能性は低い。
【0013】
前記扉には、床に沿って転動することにより前記扉のスライド移動を補助するローラーが設けられていてもよい。この態様では、ローラーが扉のスライド移動を補助するため、試料が受け部に配置されることによって扉が重くなった場合であっても、装置本体に対する扉のスライドをスムーズに行うことができる。
【0014】
前記扉は、環状に形成された扉本体と、前記扉本体に対して着脱可能であり且つ前記扉本体の内側に挿入されて前記扉本体の内孔を塞ぐ閉塞部と、を有してもよい。この場合、前記受け部は、前記閉塞部に固定されるとともに前記空間内に延びるように配置されてもよい。
【0015】
この態様では、受け部が固定された閉塞部を扉本体から外すことにより、受け部自体を扉本体から外すことができる。したがって、扉本体から取り外された受け部に試料を配置することができる。また、閉塞部が扉本体に装着された状態で受け部の試料にアクセスすることもできる。
【0016】
前記扉には、前記試料に接続するケーブルを通すための貫通孔が設けられていてもよい。この態様では、扉の貫通孔にケーブルを挿通し、このケーブルを受け部に配置された試料に接続できる。この接続作業は、扉が装置本体から引き出された状態で行うことができる。このため、受け部に配置された試料へのケーブルの接続作業が繁雑になることを回避できる。
【0017】
前記扉には、前記試料自体又は試料に接続されたケーブルを接続するためのコネクタが設けられていてもよい。この態様では、扉が装置本体から引き出された状態で、扉のコネクタに試料自体を接続することができ、又は試料に接続されたケーブルをコネクタに接続することができる。
【0018】
前記扉には、前記試料に接続されたケーブルが接続される計測器を載置する載置部が設けられていてもよい。この態様では、計測器が扉に保持されることになるため、扉をスライドさせるときには、試料だけでなく計測器も一緒に移動する。したがって、扉のスライド時においても試料と計測器の相対的な位置関係は変わらない。よって、扉のスライド移動によってケーブルが引っ張られてしまう等の事態を回避できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、スライド式の扉を有する環境形成装置において、扉に固定されたレールが試料へのアクセス時に邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)本実施形態に係る環境形成装置の正面図であり、(b)同環境形成装置の側面図である。
【
図2】前記環境形成装置の内部構成を説明するための図である。
【
図3】前記環境形成装置に用いられるサンプルホルダーを示す図である。
【
図4】前記環境形成装置の内部における吹出口、吸込口及び受け部の関係を説明するための図である。
【
図5】(a)その他の実施形態に係る環境形成装置の正面図であり、(b)同環境形成装置の側面図である。
【
図6】(a)その他の実施形態に係る環境形成装置の正面図であり、(b)同環境形成装置の側面図である。
【
図7】(a)その他の実施形態に係る環境形成装置の正面図であり、(b)同環境形成装置の側面図である。
【
図8】(a)その他の実施形態に係る環境形成装置を概略的に示す斜視図であり、(b)同環境形成装置の内部を説明するための図である。
【
図9】その他の実施形態に係る環境形成装置の側面図である。
【
図10】その他の実施形態に係る環境形成装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
本実施形態に係る環境形成装置は、試料を所定の温度環境に曝して、当該試料に熱負荷をかけるための恒温槽等の環境試験装置として構成されている。なお、環境形成装置は、恒温恒湿槽等の環境試験装置に限られるものではなく、試料を所定の温度湿度環境に曝す恒温恒湿槽として構成されてもよく、あるいは、高温環境下で電子デバイス等の試料に電気的ストレス(電源電圧、信号等)を付加するバーンイン装置として構成されていてもよい。すなわち、環境形成装置は、試料の周囲環境を所定の温度環境に調整し、試料に熱負荷をかけるような装置であればよい。
【0023】
図1(a)(b)に示すように、環境形成装置10は、一方向に開放された空間(試験空間S1、
図2参照)を有する装置本体12と、試験空間S1の開放端を開閉可能な扉14と、を備えている。
【0024】
図2に示すように、装置本体12には、試験空間S1に加え、試験空間S1に連通する空調空間S2も形成されている。試験空間S1と空調空間S2とは仕切壁16によって互いに仕切られている。試験空間S1は前方に向けて開放されており、空調空間S2は試験空間S1に対して後方すなわち、開放端とは反対側に位置している。
【0025】
空調空間S2には、空調機18が配置されている。空調機18には、空気を冷却する冷却器18aと、空気を加熱する加熱器18bと、空気を加湿する加湿器18cと、が含まれる。冷却器18aは、空気を冷却するように構成されているため、空気の除湿器として用いることもできる。なお、試験空間S1内の空気の湿度を調整する必要がない場合には、加湿器18cを省略することができる。
【0026】
空調機18によって空調された空気は、送風機20によって試験空間S1に吹き出される。仕切壁16には、送風機20から吹き出された空調空気を試験空間S1に導入させる吹出口21と、試験空間S1内の空気を空調空間S2に戻すための吸込口22と、が設けられている。吹出口21は高さ方向の中央に位置し、一対の吸込口22が上下に位置している。したがって、送風機20によって高さ方向の中央から前方に向けて試験空間S1に吹き出された空気は、その一部が上方に向きを変えて後方に流れ、残部が下方に向きを変えて後方に流れる。そして、試験空間S1内の空気は、上下一対の吸込口22から空調空間S2内に流れ込む。なお、装置本体12はこの構成に限られるものではなく、例えば、吹出口21が仕切壁16の上端に形成され、吸込口22が仕切壁16の下端に形成されていてもよい。この場合、送風機20によって仕切壁16の上端から前方に向けて試験空間S1に吹き出された空気は次第に下方に向きを変えながら流れ、試験空間S1の底板(後述する底パネル25)に沿って後方に流れて、下端の吸込口22を通して空調空間S2内に流れ込む。なお、吹出口21が下端に位置し、吸込口22が上端に位置する構成であってもよい。
【0027】
装置本体12は、一方が開口した箱形である。本実施形態では、装置本体12は、一方が開口した箱形の外装の中に、一方が開口した箱形の内装が配置されるとともに、外装と内装との間の空間に断熱材が配置されている。
【0028】
装置本体12は、底パネル部25と、底パネル部25の左側(前方から見て右側)の縁部から立ち上がる左側パネル部26と、底パネル部25の右側(前方から見て左側)の縁部から立ち上がる右側パネル部27と、底パネル部25の後ろ側の縁部から立ち上がる背面パネル部28と、左側パネル部26、右側パネル部27及び背面パネル部28の上縁を接続する天井パネル部29と、を備えている。仕切壁16は背面パネル部28よりも前方に配置されており、仕切壁16の前側の空間が試験空間S1として機能し、仕切壁16と背面パネル部28との間の空間が空調空間S2となっている。
【0029】
底パネル部25は、外装の底面を構成する底パネルと、内装の底面を構成する底パネルと、両底パネル間に位置する断熱材と、を有する。左側パネル部26は、外装の左側面(前方から見て右側面)を構成する左側パネルと、内装の左側面(前方を見て右側面)を構成する左側パネルと、両左側パネル間に位置する断熱材と、を有する。右側パネル部27は、外装の右側面(前方から見て左側面)を構成する右側パネルと、内装の右側面(前方から見て左側面)を構成する右側パネルと、両右側パネル間に位置する断熱材と、を有する。背面パネル部28は、外装の背面を構成する背面パネルと、内装の背面を構成する背面パネルと、両背面パネル間に位置する断熱材と、を有する。天井パネル部29は、外装の天井を構成する天井パネルと、内装の天井を構成する天井パネルと、両天井パネル間に位置する断熱材と、を有する。すなわち、装置本体12は、独立した複数の断熱パネル(外装パネルと断熱材と内装パネルとからなる)を、一方が開放した箱形に組み付けた構成であってもよい。あるいは、装置本体12は、一方が開放した箱形の外装と、一方が開口した箱形で且つ外装の内側に配置された内装と、外装及び内装間に配置された断熱材と、によって構成されていてもよい。
【0030】
扉14は、矩形の環状に形成された扉本体14aと、扉本体14aの内側に挿入されて扉本体14aの内孔を塞ぐ閉塞部14bと、を有する。扉本体14aは、断熱パネルによって構成されている。この断熱パネルも、金属製の外装パネルで構成された中空の外装体と、外装体内に収容された断熱材と、を有する構造である。
【0031】
閉塞部14bは、外装体と、外装体内に収容された断熱材とを含む。閉塞部14bは、扉本体14aとは別体の構成であり、扉本体14aに対して着脱可能となっている。すなわち、閉塞部14bは、扉本体14aの内孔の形状及び大きさに対応した形状及び大きさを有している。
【0032】
閉塞部14bには、固定具31が設けられており、閉塞部14bが扉本体14aの内側に挿入された状態で固定具31を操作することにより、閉塞部14bは扉本体14aに固定される。閉塞部14bには取っ手32が設けられており、固定具31を緩めた状態で取っ手32を引くことにより、閉塞部14bを扉本体14aから取り外すことができる。
【0033】
閉塞部14bは、試料Wを扉14に固定するためのサンプルホルダー34の一部である。
図1(a)では、複数(3つ)のサンプルホルダー34が設けられているが、サンプルホルダー34は1つ以上であればよい。つまり、閉塞部14bも複数(3つ)に限られるものではなく、1つ以上であればよい。
【0034】
図3に示すように、サンプルホルダー34は、閉塞部14bと、閉塞部14bに固定され且つ試料Wを保持するための受け部35と、を含む。閉塞部14bは、一対の挟持部材14cを有しており、これら挟持部材14cはヒンジ14dによって開閉可能となっている。また挟持部材14cには、一対の挟持部材14cを閉じた状態でロックするロック機構33も設けられている。
【0035】
一対の挟持部材14cには、試料Wに接続されたケーブル38(
図3では、フラットケーブル38)を通過させるための切欠き部14eが形成されており、一対の挟持部材14cが開いた状態でケーブル38を切欠き部14eに沿わせ、この状態で一対の挟持部材14cを閉じると、ケーブル38は一対の挟持部材14cの切欠き部14eに挿通された状態となる。なお、切欠き部14eには緩衝材が配置されてもよい。
【0036】
受け部35は、閉塞部14bの内面すなわち、扉本体14aに装着された状態で試験空間S1に面する面に固定されている。そして、扉14が閉じられた状態では、受け部35は、扉本体14aから試験空間S1内に延びている。
【0037】
受け部35は、矩形枠状に形成された枠部35aと、枠部35aに固定され試料Wを保持するための保持部材35bと、を有する。保持部材35bは、網目状又は多孔状であり、空気を通過させることができる。試料Wは、保持部材35bに沿うように配置され、例えば紐状の固定部材によって保持部材35bに取り付けられる。
【0038】
図1(a)に示すように、扉14には、複数のサンプルホルダー34が固定されるが、サンプルホルダー34は、各受け部35が垂直姿勢になり、且つ複数の受け部35が左右方向に並ぶように配置される。
図2及び
図4に示すように、送風機20は、扉14に対向するように配置されており、扉14に向けて送風する。各受け部35は、送風機20と扉14とを結ぶ方向に延びる姿勢で配置されている。このため、送風機20によって試験空間S1に吹き出された空気は、受け部35に沿って扉14方向に流れる。そして、扉14付近において、上方又は下方に向きを変えて後方に流れる。各受け部35の保持部材35bは、空気を通過させる構成となっている。このため、送風機20から吹き出された空気は、受け部35に沿って流れるだけでなく、保持部材35bを左右方向に通過することが可能となっている。
【0039】
図1(a)(b)に示すように、扉14は、スライド機構40によって装置本体12に対してスライド可能となっている。スライド機構40は、扉14に固定された細長い形状の延出部材40aと、延出部材40aをスライド可能に保持する保持部40bと、を有する。
【0040】
延出部材40aは、一端部が扉14(扉本体14a)の側面に固定されている。すなわち、延出部材40aは、扉14に対して幅方向に出っ張った位置に配置されている。そして、延出部材40aは、扉14から後方に向かって水平に直線的に延びている。図例では、一対の延出部材40aが、扉14の左右両側に分かれて配置された構成となっている。左側の延出部材40aは、装置本体12を構成する左側パネル部26の外側(左側)に位置しており、右側の延出部材40aは、右側パネル部27の外側(右側)に位置している。つまり、延出部材40aは、装置本体12に設けられた断熱材よりも外側(空調空間S2と反対側)に位置している。
【0041】
保持部40bは、延出部材40aをスライド移動可能に保持するものであり、装置本体12に配置されている。保持部40bは、装置本体12の側面の外面との間に前後方向に延びる空間を形成するカバー40cと、カバー40c内に配置された複数の転動体(図示省略)と、を有する。延出部材40aは、カバー40cと装置本体12の側面とによって区画された空間内に挿入される。図例では、左右一対の延出部材40aが設けられているため、保持部40bも装置本体12の左右にそれぞれ設けられている。左側の保持部40bは、左側パネル部26の外面(外装の左側面)に取り付けられており、右側の保持部40bは、右側パネル部27の外面(外装の右側面)に取り付けられている。
【0042】
なお、保持部40bは、転動体を有さず、前後方向に延びるカバー40cのみで構成されてもよく、あるいは、カバー40cが省略されて、前後方向に間隔をおいて配置された複数の転動体によって構成されてもよい。
【0043】
延出部材40aは、
図1(b)に示すように、扉14に配置された受け部35よりも下に位置している。すなわち、延出部材40aの上端は受け部35の下端よりも下に位置している。したがって、受け部35に保持された試料Wに横からアクセスするときに、延出部材40aが試料Wに対する作業の邪魔になることはない。例えば、
図1(b)における紙面手前側に使用者が立って、試料Wの確認作業等をするときに、手前側に位置する延出部材40aが作業の邪魔になることはない。
【0044】
また、延出部材40aは、扉14の高さ方向中心Cよりも下に位置している。保持部40bは延出部材40aがこの位置になるように延出部材40aを保持している。したがって、受け部35に試料Wが保持されて扉14が重くなっているときでも、保持部40bは、扉14を安定してスライドさせることができる。なお、延出部材40aは、受け部35よりも下に位置していれば、扉14の高さ方向中心Cと同じ高さ位置、あるいは扉14の高さ方向中心Cよりも上に位置していてもよい。
【0045】
装置本体12には、扉14を装置本体12にロックするためのロック部42が設けられている。ロック部42は、扉14が装置本体12に接触した状態で扉14をその位置で固定するためのものであり、ロック部42によって扉14がロックされると、装置本体12と扉14との間が気密状にシールされる。
【0046】
ロック部42は、扉14の高さ方向中心Cよりも上に位置している。より具体的には、ロック部42と延出部材40aとは、側方から見て、扉14の高さ方向中心Cに対して互いに対称となる位置に配置されている。なお、ロック部42は、扉14の高さ方向中心Cよりも上に位置していれば、ロック部42と延出部材40aとが、扉14の高さ方向中心Cに対して互いに対称となる位置に配置されていなくてもよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、扉14を装置本体12に対してスライドさせることにより、装置本体12の試験空間S1が開閉される。このとき、扉14に配置された受け部35も扉14と一体となって移動する。したがって、扉14が装置本体12から引き出されると、受け部35も装置本体12の試験空間S1から引き出される。この状態で受け部35に配置された試料Wへのアクセスが可能となる。このとき、扉14に固定された長尺状の延出部材40aが受け部35よりも下に位置しているため、使用者が環境形成装置10の横に立って、受け部35で保持された試料Wに横からアクセスする場合であっても、延出部材40aが作業の邪魔にならない。
【0048】
また本実施形態では、延出部材40aが扉14の高さ方向中心Cよりも下に位置しているため、受け部35に試料Wが配置されて受け部35及び延出部材40aに荷重がかかる場合でも、扉14を安定して支持することができる。
【0049】
また本実施形態では、ロック部42が扉14の高さ方向中心Cよりも上に位置している。このため、扉14が閉じられているときには、扉14の高さ方向中心Cよりも下に位置する延出部材40aと、扉14の高さ方向中心Cよりも上に位置するロック部42と、により、扉14が装置本体12に対して支持されることになる。このため、扉14の支持を安定させることができる。
【0050】
また本実施形態では、保持部40bが、延出部材40aが装置本体12に収容された断熱材よりも外側に位置した状態で延出部材40aを保持する。このため、試験空間S1が高温に加熱されたときでも、延出部材40aはその影響を受け難い。したがって、扉14が装置本体12から引き出された状態で、使用者が試料Wにアクセスするときに、使用者の身体の一部が延出部材40aに触れることがあっても、火傷を負う可能性は低い。
【0051】
また本実施形態では、受け部35が、扉14の閉塞部14bに固定されるとともに、試験空間S1内に延びるように配置されている。したがって、受け部35が固定された閉塞部14bを扉本体14aから外すことにより、受け部35も扉本体14aから外すことができる。したがって、扉本体14aから取り外された受け部35に試料Wを配置することができる。また、閉塞部14bが扉本体14aに装着された状態で受け部35に保持された試料Wにアクセスすることもできる。
【0052】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、扉14が環状に形成された扉本体14aと扉本体14aの内側に挿入される閉塞部14bとを有するが、サンプルホルダー34を設けるための内孔が形成された扉本体14aを有する構成に限られるものではない。例えば、
図5(a)(b)に示すように、受け部35は扉14の内面に固定され、扉14には、受け部35に配置された試料に接続された図略のケーブルを通すための貫通孔14fが形成されていてもよい。この場合、貫通孔14fを塞ぐ栓部材44が設けられてもよい。この構成でも、受け部35は延出部材40aよりも上に位置する。また貫通孔14fも延出部材40aよりも上に位置する。複数の受け部35が設けられてもよく、この場合、最も下に位置する受け部35も延出部材40aよりも上に位置する。
【0053】
なお、貫通孔14fは、
図1(a)(b)の形態、すなわち、扉14が、環状に形成された扉本体14aと扉本体14aの内側に挿入される閉塞部14bとを有する形態において設けられてもよい。この場合、貫通孔14fは、扉本体14aに形成されても、閉塞部14bに形成されてもよい。
【0054】
また、
図6(a)(b)及び
図7(a)(b)に示すように、扉14にコネクタが設けられていてもよい。
図6(a)(b)は、カードエッジコネクタ46が扉14に設けられるとともに、ケーブルを通すための貫通孔14fが扉14に形成された例を示す。扉14の外面に設けられたカードエッジコネクタ46は、外部の計測器、テスターなどに接続される図略のケーブルを接続でき、このカードエッジコネクタ46には、受け部35に配置された試料に接続された図略のケーブルが接続される。貫通孔14fには、外部の計測器等と試料とを繋ぐ図略のケーブルを通すことができる。受け部35はカードエッジコネクタ46及び貫通孔14fよりも下に位置する。なお、
図6(a)(b)の形態において、貫通孔14fを省略することができる。
【0055】
図7(a)(b)は、複数のBNCコネクタ47が扉14に設けられた例を示す。扉14の外面に設けられたBNCコネクタ47には、外部の計測器、アナライザーなどに接続される図略のケーブルを接続でき、扉14の内面に設けられたBNCコネクタ47には、受け部35に配置された試料に接続された図略のケーブルを接続できる。延出部材40aは受け部35よりも下に位置し、受け部35はBNCコネクタ47よりも下に位置する。なお、試料WがBNCコネクタ47に、ケーブルを介することなく直接接続されてもよい。また、貫通孔14fが設けられてもよい。
【0056】
カードエッジコネクタ46、BNCコネクタ47は、
図1(a)(b)の形態、すなわち、扉14が環状に形成された扉本体14aと扉本体14aの内側に挿入される閉塞部14bとを有する形態において設けられてもよい。例えば扉14の半分が環状の扉本体14a及び閉塞部14bを有し、他の半分にコネクタ46,47が設けられる形態としてもよい。この構成において、さらに貫通孔14fが設けられてもよい。
【0057】
前記実施形態では、一対の延出部材40aが、扉14の左右両側に分かれて配置されて、扉14の側面における下部に固定されているが、この構成に限られるものではない。例えば、
図8(a)(b)に示すように、一対の延出部材40aが扉14の底面における左右両端近傍に固定されていてもよい。この場合、底パネル部25の下側に設けられた保持部40bに延出部材40aが挿入される構成としてもよい。また、幅広に形成された1つの延出部材40aが扉14の底面における中央に固定された構成であってもよい。この場合、延出部材40aが扉14の下面または内面における下端部に固定される。また、装置本体12の下には、図略の冷凍機等が配置される機械室48が設けられてもよい。また、背面パネル部28の後ろ側にも機械室49が設けられてもよい。
【0058】
図9に示すように、扉14には、試料Wに接続されたケーブル38が接続される計測器51を保持する載置部52が設けられていてもよい。載置部52は、扉14の上面に固定されており、計測器51を載置する載置面52aを有している。
図9では、載置部52の内端が扉14の内面よりも装置本体12側に張り出しているため、装置本体12には載置部52と干渉しないように図略の凹部が形成されている。なお、載置部52は、扉14を閉じたときに装置本体12の上側に位置してもよい。この構成の場合、装置本体12に凹部を設ける必要は無い。また、載置部52は、内端が扉14の内面から装置本体12側に張り出さない構成としてもよい。例えば、載置部52は扉14の外面に固定されてもよい。
【0059】
扉14には、載置部52に載置された計測器51と受け部35に配置された試料Wとを接続するケーブル38を通すための貫通孔14fが形成されている。
【0060】
この構成では、計測器51が扉14に保持されることになるため、扉14をスライドさせるときには、試料Wだけでなく計測器51も一緒に移動する。したがって、扉14のスライド時においても試料Wと計測器51の相対的な位置関係は変わらない。よって、扉14のスライド移動によってケーブル38が引っ張られてしまう等の事態を回避できる。なお、計測器51の載置部52は、
図1(a)、
図5(a)~
図7(a)の何れの扉14にも採用できる。
【0061】
扉14には、床に沿って転動することにより扉14のスライド移動を補助するローラー54が設けられている。この構成により、試料Wが受け部35に配置されることによって、扉14が重くなった場合であっても、装置本体12に対する扉14のスライドをスムーズに行うことができる。
【0062】
扉14のスライド移動を補助するローラー54は、
図10に示すように、計測器51の載置部52が設けられていない扉14にも採用することができる。つまり、ローラー54は、
図1(a)(b)、
図5(a)~
図7(b)の何れの扉14にも採用することができる。扉14に試料Wの受け部35が設けられているため、受け部35に試料Wが載置されることにより、扉14が重くなることがあり得るからである。
【符号の説明】
【0063】
10 :環境形成装置
12 :装置本体
14 :扉
14a :扉本体
14b :閉塞部
14f :貫通孔
35 :受け部
40 :スライド機構
40a :延出部材
40b :保持部
42 :ロック部
51 :計測器
52 :載置部
54 :ローラー