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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136466
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230922BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20230922BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20230922BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/28 H
B60L50/70
B60L9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042150
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】広田 崇
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 功治
【テーマコード(参考)】
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC07
5H125BB05
5H125EE36
5H730AS05
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB27
5H730BB84
5H730BB86
5H730EE04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF09
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】燃料電池の起動時の電圧変動を抑える。
【解決手段】作業車両は、燃料電池とコンバータとの間に設けられた降圧回路と、降圧回路と並列に設けられ、燃料電池とコンバータとの導通および絶縁を切り替えるコンタクタと、降圧回路およびコンタクタを制御する制御装置とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置と、
前記走行装置を駆動させる電動機と、
前記電動機の動力源である燃料電池と、
前記電動機に接続されるコンバータと、
前記燃料電池と前記コンバータとの間に設けられた降圧回路と、
前記降圧回路と並列に設けられ、前記燃料電池と前記コンバータとの導通および絶縁を切り替えるコンタクタと、
前記降圧回路および前記コンタクタを制御する制御装置と
を備える作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記燃料電池の電圧が所定の定常運転電圧に下がるまで、前記コンタクタを絶縁させ、前記燃料電池の電圧が前記定常運転電圧まで下がった後に、前記コンタクタを導通させる
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記降圧回路は、
前記燃料電池の正極と前記コンバータの入力側との間に設けられた抵抗器と、
前記抵抗器と前記コンバータとの中間点とグラウンドとの導通および非導通を切り替え可能なスイッチング素子と
を備える請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記燃料電池の電圧が所定の定常運転電圧まで下がったときに、前記スイッチング素子をオフ状態で保持し、
前記コンバータの入力電圧と、前記燃料電池の電圧との差が所定値以下になったときに、前記コンタクタを導通させる
請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記降圧回路は、
前記燃料電池の正極に第一端子が接続された前記抵抗器と、
前記コンバータの入力側に第二端子が接続されたリアクトルと、
前記抵抗器の第二端子と前記リアクトルの第一端子との間に接続された前記スイッチング素子である第一スイッチング素子と、
前記抵抗器の第二端子と前記リアクトルの第一端子との間に、前記第一スイッチング素子と並列に接続された第一ダイオードと、
前記リアクトルの第一端子と前記燃料電池の負極との間に接続された第二スイッチング素子と、
前記リアクトルの第一端子と前記燃料電池の負極との間に、前記第二スイッチング素子と並列に接続された第二ダイオードと、
を備えるチョッパ回路である
請求項3または請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記降圧回路は、
前記燃料電池の正極に第一端子が接続され、前記コンバータの入力側に第二端子が接続された前記抵抗器である第一抵抗器と、
前記グラウンドに第二端子が接続された第二抵抗器と、
前記第一抵抗器の第二端子と前記第二抵抗器の第一端子との間に接続された前記スイッチング素子と、
前記第一抵抗器の第二端子と前記第二抵抗器の第一端子との間に、前記第一スイッチング素子と並列に接続されたダイオードと、
を備えるプルダウン回路である
請求項3または請求項4に記載の作業車両。
【請求項7】
前記降圧回路を構成する素子の耐電圧は、前記燃料電池の起動時の過渡電圧より大きく、
前記コンバータを構成する素子の耐電圧は、前記過渡電圧より小さく、前記燃料電池の定常運転電圧より大きい
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池を搭載する作業車両のパワーモジュールの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/064010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池は起動時に、定格出力電圧を大きく上回る電圧を出力することが知られている。そのため、燃料電池に接続されるコンバータなどの機器を構成する素子の耐電圧を、起動時の電圧以上としておく必要がある。
本開示の目的は、燃料電池の起動時の電圧変動を抑えることができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、作業車両は、走行装置と、前記走行装置を駆動させる電動機と、前記電動機の動力源である燃料電池と、前記電動機に接続されるコンバータと、前記燃料電池と前記コンバータとの間に設けられたチョッパ回路と、前記チョッパ回路と並列に設けられ、前記燃料電池と前記コンバータとの導通および絶縁を切り替えるコンタクタと、前記チョッパ回路および前記コンタクタを制御する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、燃料電池の起動時の電圧変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一の実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
図2】第一の実施形態に係る電力制御システムの構成を示す概略図である。
図3】第一の実施形態に係るチョッパ回路の構成を示す回路図である。
図4】第一の実施形態に係るコンバータの構成を示す回路図である。
図5】第一の実施形態に係る燃料電池の起動制御を示すフローチャートである。
図6】第二の実施形態に係る降圧回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第一の実施形態〉
《運搬車両10の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
第一の実施形態に係る運搬車両10は、鉱山等で採掘した砕石物等を運搬するリジッドフレーム式のダンプトラックである。運搬車両10は、水素ガスを燃料とする燃料電池によって駆動する。運搬車両10は、作業車両の一例である。
図1は、第一の実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、ダンプボディ11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0009】
ダンプボディ11は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。
車体12は、図示しない車体フレームを含む。車体12は、車体フレームに設けられたヒンジピンを介してダンプボディ11を回転可能に支持する。車体12は、走行装置13に支持される。車体フレームのうち走行装置13の前輪の上部に、プラットフォーム121が設けられる。プラットフォーム121は、車体フレームの上面を構成する平板である。プラットフォーム121の上には、運転室122およびコントロールキャビネット123が設けられる。また、車体フレーム上には、複数の燃料電池124が設けられる。燃料電池124は、水素ガスと空気中の酸素とを反応させて電力を生成する。燃料電池124は、通常動作時(定常運転時)に定格電圧(例えば、800V)以下の電圧を出力する。他方、燃料電池124は、停止状態からの起動時に、定格電圧を超える過渡電圧(例えば、1200V)を出力することがある。
【0010】
コントロールキャビネット123は、電力の変換を行う。具体的には、コントロールキャビネット123には、燃料電池124と各種電気機器(バッテリ、走行モータ、油圧ポンプモータ等)との間の電力制御を行う電力制御システム20が格納される。
【0011】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。走行装置13は、電動機131を備える。電動機131は、後述する電力制御システム20の母線に供給される電力により走行装置13を駆動させる。
【0012】
《電力制御システム20の構成》
電力制御システム20は、複数の燃料電池124が生成する電力を所定の電圧に変換して母線Bに供給する。図2は、第一の実施形態に係る電力制御システム20の構成を示す概略図である。電力制御システム20は、複数の燃料電池124それぞれに対応する電力変換回路21と、各電力変換回路21を制御する制御装置22とを備える。また、母線Bには、電動機131に供給する交流電力を生成するインバータ23が設けられる。
【0013】
電力変換回路21は、コンバータ211、降圧回路212、コンタクタ213、第一電圧計214、第二電圧計215を備える。コンバータ211は、燃料電池124から供給される電圧を変換して母線Bに供給する。コンバータ211は、一次側端子対(入力端子211Aと一次側グラウンド端子211B)と二次側端子対(出力端子211Cと二次側グラウンド端子211D)を有する二端子対回路である。コンバータ211の出力端子211Cが母線Bに接続され、二次側グラウンド端子211DがグラウンドGに接続される。つまり、コンバータ211が出力する電力は、母線Bおよびインバータ23を介して電動機131に供給される。したがって、コンバータ211は、電動機131に接続されているといえる。
【0014】
降圧回路212は、燃料電池124から供給される電力を降圧してコンバータ211に供給する。降圧回路212は、一次側端子対(入力端子212Aと一次側グラウンド端子212B)と二次側端子対(出力端子212Cと二次側グラウンド端子212D)を有する二端子対回路である。降圧回路212の入力端子212Aが燃料電池124の正極に接続され、一次側グラウンド端子212Bが燃料電池124の負極に接続される。降圧回路212の出力端子212Cがコンバータ211の入力端子211Aに接続され、二次側グラウンド端子212Dがコンバータ211の一次側グラウンド端子211Bに接続される。
【0015】
コンタクタ213は、制御装置22の制御によって燃料電池124の正極とコンバータ211の入力端子211Aとの間の接続および切断を切り替える。コンタクタ213は、燃料電池124およびコンバータ211に対して、チョッパ回路212と並列に設けられる。
【0016】
第一電圧計214は、燃料電池124の出力電圧を計測する。
第二電圧計215は、コンバータ211の入力電圧を計測する。
【0017】
《降圧回路212の構成》
図3は、第一の実施形態に係る降圧回路212の構成を示す回路図である。降圧回路212は、例えばチョッパ回路によって構成される。チョッパ回路は、抵抗器31、キャパシタ32、第一スイッチング素子33、第一ダイオード34、第二スイッチング素子35、第二ダイオード36、リアクトル37を備える。
【0018】
抵抗器31の第1端子は、入力端子212Aに接続される。抵抗器31は、燃料電池124の正極とコンバータ211の入力側との間に設けられる。
キャパシタ32は、抵抗器31の第2端子と一次側グラウンド端子212Bとの間に接続される。キャパシタ32は、燃料電池124から出力される電圧を平滑化する。
【0019】
第一スイッチング素子33は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)によって構成される。第一スイッチング素子33のエミッタは第二スイッチング素子35のコレクタに接続され、コレクタは抵抗器31の第2端子に接続され、ベースは制御装置22に接続されている。以下、第一スイッチング素子33のエミッタと第二スイッチング素子35のコレクタとを接続する点を接続点Pと呼ぶ。第一スイッチング素子33は、燃料電池124の起動時の過渡電圧より大きい耐電圧(例えば、1700V)を有する。
第一ダイオード34は、第二スイッチング素子35に逆並列に接続されている。具体的には、第一ダイオード34のアノードは接続点Pに接続され、カソードは抵抗器31の第2端子に接続されている。
【0020】
第二スイッチング素子35は、例えばIGBTやMOSFETによって構成される。第二スイッチング素子35のエミッタは二次側グラウンド端子212Dに接続され、コレクタは接続点Pに接続され、ベースは制御装置22に接続されている。第二スイッチング素子35は、燃料電池124の起動時の過渡電圧より大きい耐電圧(例えば、1700V)を有する。第二スイッチング素子35は、抵抗器31とコンバータ211との中間点とグラウンドとの間の導通および非導通を切り替える。
第二ダイオード36は、第一スイッチング素子33に逆並列に接続されている。具体的には、第二ダイオード36のアノードは二次側グラウンド端子212Dに接続され、カソードは接続点Pに接続されている。
【0021】
リアクトル37は、直流電力の蓄積および放出を行う素子であり、その一方の端子は接続点Pに接続され、他方の端子は出力端子212Cに接続されている。
【0022】
制御装置22は、第一スイッチング素子33のオンおよびオフを切り替えるための制御信号と、第二スイッチング素子35のオンおよびオフを切り替えるための制御信号を生成する。制御装置22が生成した制御信号は、第一スイッチング素子33および第二スイッチング素子35のベースに供給される。
【0023】
《コンバータ211の構成》
図4は、第一の実施形態に係るコンバータ211の構成を示す回路図である。なお、図4に示すコンバータ211の構成はあくまで一例であり、これに限られない。第一の実施形態に係るコンバータ211は、フルブリッジコンバータと呼ばれる絶縁型スイッチングレギュレータである。コンバータ211は、インバータ41、整流回路43、トランス42、第一キャパシタ44、第二キャパシタ45を備える。
【0024】
インバータ41は、4つのスイッチング素子411と、各スイッチング素子411に並列に設けられた4つのダイオード412を備える。各スイッチング素子411は、例えばIGBTやMOSFETによって構成される。各スイッチング素子411は、制御装置22によって、トランス42の一次側コイルに所望の電圧が印加されるように、オンおよびオフを切り替えられる。インバータ41から出力された電圧は、トランス42の一次側コイルに印加される。各スイッチング素子411は、燃料電池124の定格電圧以上の耐電圧を有する。一方で、各スイッチング素子411の耐電圧は、燃料電池124の起動時の過渡電圧未満であってよい。
【0025】
トランス42は、一次側コイルに印加された電圧を、一次側コイルと二次側コイルの巻数比に応じた電圧に変換して、二次側コイルから出力する。二次側コイルから出力された電圧は、整流回路43の入力側に印加される。
【0026】
整流回路43は、4つのダイオード431を備える。整流回路43は、ダイオードブリッジによる全波整流回路である。整流回路43は、トランス42の二次側コイルから出力された交流電圧を整流することにより、直流電圧を生成する。
【0027】
第一キャパシタ44は、入力端子211Aと一次側グラウンド端子211Bとの間に接続され、インバータ41へ出力する電圧を平滑化する。
第二キャパシタ45は、出力端子211Cと二次側グラウンド端子211Dとの間に接続され、整流回路43から出力される電圧を平滑化する。
【0028】
《制御装置22による制御》
制御装置22は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現される。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。なお、他の実施形態においては、制御装置22は、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置などを備え、プログラムを実行することによって機能するコンピュータであってもよい。
【0029】
図5は、第一の実施形態に係る燃料電池124の起動制御を示すフローチャートである。燃料電池124が停止しているとき、コンタクタ213はオフ状態となっている。燃料電池124からの電力供給が開始すると、制御装置22は図5に示す起動制御を実行する。制御装置22は、第一電圧計214の計測値を取得する(ステップS1)。すなわち、制御装置22は、燃料電池124の電圧の計測値を取得する。制御装置22は、第一電圧計214の計測値が燃料電池124の定格電圧(例えば、800V)を超えるか否かを判定する(ステップS2)。第一電圧計214の計測値が燃料電池124の定格電圧を超える場合(ステップS2:YES)、制御装置22は、降圧回路212の出力電圧を燃料電池124の定格電圧とするための制御信号を生成し、第一スイッチング素子33および第二スイッチング素子35に出力する(ステップS3)。そして、制御装置22はステップS1に処理を戻し、電圧の状態を監視する。これにより、コンバータ211に入力される電圧は、燃料電池124の定格電圧となるため、コンバータ211を構成するスイッチング素子411の耐電圧を超えない。
【0030】
第一電圧計214の計測値が燃料電池124の定格電圧を超えない場合(ステップS2:NO)、制御装置22は第一スイッチング素子33をオン状態に保持し、第二スイッチング素子35をオフ状態に保持する制御信号を生成し、第一スイッチング素子33および第二スイッチング素子35に出力する(ステップS4)。これにより、燃料電池124が生成する電力は、抵抗器31とリアクトル37とを通ってコンバータ211に供給される。
【0031】
次に、制御装置22は、第一電圧計214および第二電圧計215の計測値を取得する(ステップS5)。すなわち、制御装置22は、燃料電池124の出力電圧の計測値、およびインバータ41の入力電圧の計測値を取得する。制御装置22は、第一電圧計214の計測値と第二電圧計215の計測値との差の絶対値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS6)。すなわち制御装置22は、第一電圧計214の計測値と第二電圧計215の計測値とがほぼ同じであるか否かを判定する。第一電圧計214の計測値と第二電圧計215の計測値との差が所定の閾値を超える場合(ステップS6:NO)、ステップS5に戻り、電圧の状態を監視する。
【0032】
他方、第一電圧計214の計測値と第二電圧計215の計測値との差が所定の閾値以下である場合(ステップS6:YES)、制御装置22はコンタクタ213をオフからオンに切り替える(ステップS7)。そして、制御装置22は降圧回路212への電力の供給をオフにする(ステップS8)。これにより、燃料電池124が定常運転状態となった後は、燃料電池124が生成した電気は降圧回路212を介さずにコンバータ211に供給される。燃料電池124が定常運転状態になると、燃料電池124の出力電圧は定格電圧以下となるため、燃料電池124の電圧を直接コンバータ211に入力しても、コンバータ211を構成するスイッチング素子411の耐電圧を超えない。
【0033】
《作用・効果》
このように、第一の実施形態に係る電力変換回路21は、燃料電池124とコンバータ211との間に設けられた降圧回路212と、降圧回路212と並列に設けられ、燃料電池124とコンバータ211との導通および絶縁を切り替えるコンタクタとを備える。このような構成を有することで、制御装置22は、降圧回路212およびコンタクタ213を制御することで、燃料電池124の起動時の電圧変動を抑えることができる。
なお、電力変換回路21を上記のように構成することで、コンバータ211を構成する素子の耐電圧を燃料電池124の起動時の過渡電圧以上とする必要がなくなり、少なくともコンバータ211を構成する素子の耐電圧を燃料電池124の定格電圧以上とすればよくなる。つまり、燃料電池124の起動時の過渡電圧だけのためにコンバータ211の耐電圧を高くする必要がなくなる。
【0034】
〈第二の実施形態〉
第一の実施形態では、降圧回路212が図3に示すチョッパ回路によって構成される。これに対し、第二の実施形態に係る降圧回路212は、プルダウン回路によって構成される。
【0035】
《降圧回路212の構成》
図6は、第二の実施形態に係る降圧回路212の構成を示す回路図である。第二の実施形態に係る降圧回路212は、第一抵抗器51、キャパシタ52、スイッチング素子53、ダイオード54、第二抵抗器55を備える。
【0036】
第一抵抗器51の第1端子は、入力端子212Aに接続される。第一抵抗器51の第2端子は、出力端子212Cに接続される。つまり第一抵抗器51は、燃料電池124の正極とコンバータ211の入力側との間に設けられる。
キャパシタ52は、第一抵抗器51の第2端子と、第二抵抗器55の第1端子との間に接続される。
【0037】
スイッチング素子53のエミッタは第二抵抗器55の第1端子に接続され、コレクタは第一抵抗器51の第2端子に接続され、ベースは制御装置22に接続されている。スイッチング素子53は、燃料電池124の起動時の過渡電圧より大きい耐電圧(例えば、1700V)を有する。つまりスイッチング素子53は、抵抗器51とコンバータ211との中間点とグラウンドとの間の導通および非導通を切り替える。
ダイオード54は、スイッチング素子53に逆並列に接続されている。具体的には、ダイオード54のアノードは第二抵抗器55の第一端子に接続され、カソードは第一抵抗器51の第2端子に接続されている。
【0038】
第二抵抗器55の第1端子は、キャパシタ52の第2端子、スイッチング素子53のエミッタ、およびダイオード54のアノードに接続される。第二抵抗器55の第2端子は、一次側グラウンド端子212Bおよび二次側グラウンド端子212Dに接続される。
【0039】
制御装置22は、スイッチング素子53のオンおよびオフを切り替えるための制御信号を生成する。制御装置22が生成した制御信号は、スイッチング素子53のベースに供給される。
【0040】
降圧回路212は、図6に示す構成においても、スイッチング素子53のオンとオフを順次切り替えることで、図3に示す構成と同様に、燃料電池124から供給される電力を降圧してコンバータ211に供給することができる。
【0041】
すなわち、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS2で第一電圧計214の計測値が燃料電池124の定格電圧を超える場合、ステップS3で制御装置22は、降圧回路212の出力電圧を燃料電池124の定格電圧とするためにスイッチング素子53のオンおよびオフを高速に切り替える制御信号を生成し、スイッチング素子53に出力する。
他方、ステップS2において第一電圧計214の計測値が燃料電池124の定格電圧を超えない場合、ステップS4で制御装置22はスイッチング素子53をオフ状態に保持する制御信号を生成し、スイッチング素子53に出力する。これにより、燃料電池124が生成する電力は、抵抗器51を通ってコンバータ211に供給される。
そして、燃料電池124の出力電圧の値とインバータ41の入力電圧の値とがほぼ同じになった後に、ステップS7で制御装置22はコンタクタ213をオフからオンに切り替え、ステップS8で降圧回路212への電力の供給をオフにする。
【0042】
《作用・効果》
このように、第二の実施形態に係る電力変換回路21は、第一の実施形態と同様に、降圧回路212およびコンタクタ213を制御することで、燃料電池124の起動時の電圧変動を抑えることができる。また、第二の実施形態に係る電力変換回路21は、第一の実施形態と同様に、少なくともコンバータ211を構成する素子の耐電圧を燃料電池124の定格電圧以上であれば、燃料電池124の起動時の電圧変動において各素子に係る電圧が耐電圧を超えない。
【0043】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…運搬車両 11…ダンプボディ 12…車体 121…プラットフォーム 122…運転室 123…コントロールキャビネット 124…燃料電池 13…走行装置 20…電力制御システム 21…電力変換回路 211…コンバータ 211A…入力端子 211B…一次側グラウンド端子 211C…出力端子 211D…二次側グラウンド端子 212…降圧回路 212A…入力端子 212B…一次側グラウンド端子 212C…出力端子 212D…二次側グラウンド端子 213…コンタクタ 214…第一電圧計 215…第二電圧計 22…制御装置 31…抵抗器 32…キャパシタ 33…第一スイッチング素子 34…第一ダイオード 35…第二スイッチング素子 36…第二ダイオード 37…リアクトル 41…インバータ 411…スイッチング素子 412…ダイオード 42…トランス 43…整流回路 431…ダイオード 44…第一キャパシタ 45…第二キャパシタ B…母線 G…グラウンド P…接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6