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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136472
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/20 20190101AFI20230922BHJP
   G07D 11/50 20190101ALI20230922BHJP
【FI】
G07D11/20
G07D11/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042157
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】黒江 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】中澤 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】佐田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】沢田 雄史
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA15
3E141CB04
3E141FA09
3E141FC02
3E141FG08
3E141FG11
(57)【要約】
【課題】地域に流通する貨幣の情報を容易に収集する。
【解決手段】計測部は、投入された貨幣から複数種類の特徴量を計測し、計測データを生成する。記憶部は、計測データの送信条件を記憶する。送信部は、送信条件に従って、計測データの一部または全部を広域通信網を介して外部へ送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された貨幣から複数種類の特徴量を計測し、計測データを生成する計測部と、
前記計測データの送信条件を記憶する記憶部と、
前記送信条件に従って、前記計測データの一部または全部を通信ネットワークを介して外部へ送信する送信部と、
を備える貨幣処理装置。
【請求項2】
前記送信条件の選択を受け付ける選択画面を表示させ、選択に基づいて前記記憶部が記憶する前記送信条件を更新する条件設定部
を備える請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記計測データに基づいて前記貨幣の属性を識別する識別部を備え、
前記送信条件は、前記計測データを送信すべき貨幣の属性を含む
請求項1または請求項2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記計測データと識別閾値との比較によって前記貨幣の属性を識別する識別部を備え、
前記送信条件は、前記計測データが前記識別閾値に近似している場合に前記計測データを送信するか否かを含む
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記送信条件は、前記複数種類の特徴量のうち送信すべき特徴量の種類を含む
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記計測データに基づいて前記貨幣の属性を識別する識別部を備え、
前記送信条件には、前記属性別に送信すべき特徴量の種類が設定される
請求項5に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記計測データの一部または全部を前記外部へ送信する場合に、既知の特徴量を有する模擬貨幣の計測を要求する情報を出力する要求出力部を備え、
前記送信部は、前記模擬貨幣に係る前記計測データを前記外部へ送信する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貨幣を取り込み、当該貨幣の金種、真偽、汚損状態などを識別して、識別結果に応じた収納先へ搬送する貨幣処理装置が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。なお、本願において「貨幣」とは、紙幣および硬貨のことをいい、偽貨幣、貨幣処理装置の調整用の媒体などの紙幣および硬貨に類するものを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-009736号公報
【特許文献2】特開2020-091600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貨幣の使用態様は地域によって異なる場合があり、地域ごとに設定を調整する必要がある。例えば、地域によって流通する貨幣の損傷状態が異なる場合、貨幣を受け入れるか否かを分別する損傷状態の閾値を異ならせる必要がある。この場合、貨幣処理装置のサービスマンが各地域に赴き、流通する貨幣のデータを集める必要があり、手間がかかる。
本発明の目的は、地域に流通する貨幣の情報を容易に収集することができる貨幣処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、貨幣処理装置は、投入された貨幣から複数種類の特徴量を計測し、計測データを生成する計測部と、前記計測データの送信条件を記憶する記憶部と、前記送信条件に従って、前記計測データの一部または全部を広域通信網を介して外部へ送信する送信部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様に係る貨幣処理装置を用いることで、地域に流通する貨幣の情報を容易に収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る紙葉類識別システムの構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る紙葉類処理装置の断面図である。
図3】第1の実施形態に係る紙葉類処理装置による紙葉類の処理動作を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る識別装置の構成を示す断面図である。
図5】第1の実施形態に係る識別装置による識別動作を示すフローチャート(パート1)である。
図6】第1の実施形態に係る識別装置による識別動作を示すフローチャート(パート2)である。
図7】第1の実施形態に係る送信条件の設定画面の例を示す図である。
図8】第1の実施形態に係る送信データのデータ構成の例を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《紙葉類識別システム1の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る紙葉類識別システム1の構成を示す図である。
紙葉類識別システム1は、紙葉類処理装置10、データサーバ20、分析装置30を備える。
紙葉類処理装置10は、紙葉類Sとして主に紙幣を分類処理するものであり、投入された紙葉類Sの特徴量を計測し、特徴量に基づいて紙葉類Sの金種、真偽および正損を識別する。金種、真偽および正損は、紙葉類Sの属性の一例である。紙葉類Sは、貨幣の一例である。紙葉類Sは、紙幣に加え、偽券、損券、エラー印刷、テスト用媒体、模擬紙などを含む。紙葉類処理装置10は、偽券、損券および識別不能な紙葉類Sなど、予め設定された条件に従って紙葉類Sをリジェクトする。紙葉類処理装置10は、リジェクトされない紙葉類Sを識別結果別に収容する。例えば、紙葉類処理装置10は、紙葉類Sを金種別に収容してもよいし、版別に収容してもよいし、方向別に収容してもよいし、正損別に収容してもよいし、これらの組み合わせに基づいて収容してもよい。なお、以下の実施形態では、紙葉類処理装置10は、リジェクトされない紙葉類Sを金種別に収容するものとして説明する。紙葉類処理装置10は、特徴量の計測データをデータサーバ20に送信する。
データサーバ20は、紙葉類処理装置10から送信された計測データを記録する。
分析装置30は、データサーバ20に記録された計測データを分析し、紙葉類処理装置10の識別に用いる設定データを生成する。
【0009】
紙葉類処理装置10、データサーバ20、分析装置30は、互いに広域通信網Nを介して接続される。広域通信網Nの例としては、インターネットや専用回線などが挙げられる。なお、他の実施形態においては、各装置が広域通信網Nに代えてローカルエリアネットワークなどの他の通信ネットワークを介して接続されてもよい。なお、紙葉類識別システム1は、複数の紙葉類処理装置10を備えるものであってよい。
【0010】
《紙葉類処理装置10の構成》
図2は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置10の断面図である。紙葉類処理装置10の筐体11の前面には、受入口111およびリジェクト口112とが設けられる。受入口111およびリジェクト口112は、上下に並んで配置されている。リジェクト口112は受入口111の上部に位置する。紙葉類処理装置10は、筐体11の内部に、集積部13、搬送部14、識別装置15、制御装置16、通信装置17、記憶装置18を備える。また、紙葉類処理装置10は、筐体11の側面に操作表示部19を備える。
【0011】
集積部13は、複数の収容部を備え、紙葉類Sを金種別に収容部に収容する。
搬送部14は、受入口111にセットされた紙葉類Sを集積部13またはリジェクト口112へ搬送する。
識別装置15は、搬送部14を通る紙葉類Sの特徴量を計測し、紙葉類Sの識別を行う。識別装置15は、搬送部14の経路のうち、集積部13およびリジェクト口112への分岐部より手前側の位置に設けられる。識別装置15の詳細な構成および動作については後述する。
制御装置16は、識別装置15の識別結果に基づいて搬送部14を制御し、紙葉類Sを集積部13またはリジェクト口112へ搬送させる。
通信装置17は、広域通信網Nに接続され、広域通信網Nを介したデータ通信を行う。
記憶装置18は、例えば半導体メモリで構成され、通信装置17に送信させる計測データを記憶するための記憶領域を有する。記憶装置18は、紙葉類処理装置10に内蔵されたものであってもよいし、リムーバブルメディアであってもよい。
操作表示部19は、紙葉類処理装置10の状態および操作画面を表示し、ユーザからの操作を受け付ける。操作表示部19は、例えばタッチパネルによって構成される。
【0012】
《紙葉類処理装置10の動作》
図3は、第1の実施形態に係る紙葉類処理装置10による紙葉類Sの処理動作を示すフローチャートである。
紙葉類処理装置10の制御装置16は、受入口111にセットされた集積状態の紙葉類Sを一枚分離して繰り出させるように、搬送部14を制御する(ステップS1)。制御装置16は、当該紙葉類Sを搬送部14で搬送させる。搬送部14によって搬送される紙葉類Sが識別装置15を通るとき、識別装置15は、当該紙葉類Sの識別処理を行う(ステップS2)。識別装置15は、識別結果を制御装置16に出力する。制御装置16は、識別装置15から取得した識別結果が、紙葉類Sが異常であることを示すか否かを判定する(ステップS3)。なお、異常の例としては、偽券、損傷、テープ貼付、紫外線検査異常、重送、斜行およびニアフィードなどが挙げられる。なお、重送、斜行およびニアフィードなどの搬送異常については、識別装置15と別個に設けたセンサに検出させ、識別装置15は偽券、損傷、テープ貼付、紫外線検査異常などの識別異常を検出するものであってもよい。紙葉類Sが異常である場合(ステップS3:YES)、制御装置16は、搬送部14を制御して、当該紙葉類Sをリジェクト口112に搬送させる(ステップS4)。この場合、制御装置16は当該紙葉類Sを計数しない。
【0013】
他方、紙葉類Sが異常でない場合(ステップS3:NO)、制御装置16は、集積部13に当該紙葉類Sの行き先の収容部があるか否かを判定する(ステップS5)。集積部13の各収容部には、予め収容すべき紙葉類Sの種別が設定されている。制御装置16は設定データに基づいて紙葉類Sの行き先の収容部があるか否かを判定する。行き先がない場合(ステップS5:NO)、制御装置16は、搬送部14を制御して、当該紙葉類Sをリジェクト口112に搬送させる(ステップS4)。この場合、制御装置16は当該紙葉類Sを計数しない。
【0014】
他方、行き先がある場合(ステップS5:YES)、行き先の収容部がフルであるか否かを判定する(ステップS6)。行き先の収容部がフルである場合(ステップS6:YES)、制御装置16は、搬送部14を制御して、当該紙葉類Sをリジェクト口112に搬送させる(ステップS4)。この場合、制御装置16は当該紙葉類Sを計数しない。行き先の収容部がフルでない場合(ステップS6:NO)、当該紙葉類Sの種類、すなわちその金種の計数値を加算し、搬送部14を制御して、当該紙葉類Sを対応する収容部に搬送して収容させる(ステップ7)。
【0015】
ステップS4またはステップS7で紙葉類Sを搬送すると、制御装置16は、受入口111に紙葉類Sが残っているか否かを判定する(ステップS8)。受入口111が空でない場合(ステップS8:NO)、制御装置16はステップS1に処理を戻し、次の紙葉類Sを取り込ませる。他方、制御装置16は、受入口111が空である場合(ステップS8:YES)、制御装置16は、操作表示部19に、紙葉類Sの識別結果を表示させる(ステップS9)。操作表示部19には、例えば紙葉類Sの種類ごとの計数値、リジェクトされた紙葉類Sのリジェクト理由などが表示される。制御装置16は、計数結果を示す計数ログデータを生成し、記憶装置18に記録する(ステップS10)。
【0016】
《識別装置15の構成》
図4は、第1の実施形態に係る識別装置15の構成を示す断面図である。以下、第1の実施形態に係る識別装置15について詳しく説明する。
識別装置15は、紙葉類Sから複数の特徴量を計測するために複数の計測器を備える。具体的には、識別装置15は、第一イメージセンサ152、第二イメージセンサ153、厚さ検知センサ154、第一UVセンサ155、第二UVセンサ156、磁気センサ157、制御基板158を備える。
【0017】
第一イメージセンサ152および第二イメージセンサ153は、搬送部14によって搬送される紙葉類Sの二次元画像データ(イメージデータ)を計測する。第一イメージセンサ152および第二イメージセンサ153は、例えば、LED等の光源と受光レンズとCMOSイメージセンサ等のイメージセンサ本体との組を、紙葉類Sの搬送方向に対して直交する方向であって紙葉類Sの面に平行な方向に一列状に多数並べて構成されるコンタクトイメージセンサ(CIS)であってよい。第一イメージセンサ152は、受入口111に設置したときに上側を向く面(表面)のイメージデータを計測する。第二イメージセンサ153は、受入口111に設置したときに下側を向く面(裏面)のイメージデータを計測する。つまり、第一イメージセンサ152によって紙葉類Sの表面の反射画像を取得し、第二イメージセンサ153によって紙葉類Sの裏面の反射画像を取得し、第一イメージセンサ152および第二イメージセンサ153の組み合わせによって紙葉類Sの透過画像を取得する。各イメージセンサが有する光源は、可視光を出力してもよいし、紫外線または赤外線を出力してもよい。イメージセンサは、異なる波長の光を出力する複数の光源を備えていてよい。この場合、イメージセンサは、波長ごとにイメージデータを得ることができる。イメージデータを複数種類取得することで、目的に応じて異なる特徴を表すイメージデータを用いて紙葉類Sを識別をすることができる。
【0018】
例えば、透過画像データは、紙葉類Sの外形を検出するために用いることができる。また可視光反射画像データは紙葉類Sの模様や文字を判定するために用いることができる。赤外線反射画像データは、紙葉類Sに施されたセキュリティを検出するために用いることができる。
また目的に応じてイメージデータの解像度を変化させてもよい。例えば、細かい文字や模様を検出する場合、高い解像度の画像を用いることができる。ただし、解像度が高いほどデータサイズが大きくなり、また処理時間が長くなる。
【0019】
厚さ検知センサ154は、搬送部14によって搬送される紙葉類Sの厚さを計測する。厚さ検知センサ154は、例えば、紙葉類Sと接する可動ローラー154aと可動ローラー154aの変位を計測する変位センサ154bを備える。厚さ検知センサ154は、紙葉類Sの搬送方向に対して直交する方向であって紙葉類Sの面に平行な方向に一列状に複数チャネル並べて構成されるセンサアレイであってよい。
【0020】
第一UVセンサ155および第二UVセンサ156は、搬送部14によって搬送される紙葉類Sに紫外線を照射してその反射光の強度を計測する。第一UVセンサ155は、受入口111に設置したときに上側を向く面(表面)の紫外線反射強度を計測する。第二UVセンサ156は、受入口111に設置したときに下側を向く面(裏面)の紫外線反射強度を計測する。第一UVセンサ155および第二UVセンサ156は、例えば、紫外線光源とフォトダイオードとの組を、紙葉類Sの搬送方向に対して直交する方向であって紙葉類Sの面に平行な方向に一列状に複数チャネル並べて構成されるセンサアレイであってよい。なお、第一イメージセンサ152および第二イメージセンサ153が紫外線のイメージデータを取得する場合、紙葉類処理装置10は第一UVセンサ155および第二UVセンサ156を備えなくてもよい。
【0021】
磁気センサ157は、搬送部14によって搬送される紙葉類Sの磁気データを計測する。磁気センサ157は、例えば、単一磁気センサを、紙葉類Sの搬送方向に対して直交する方向であって紙葉類Sの面に平行な方向に一列状に複数チャネル並べて構成されるセンサアレイであってよい。
【0022】
制御基板158は、第一イメージセンサ152、第二イメージセンサ153、厚さ検知センサ154、第一UVセンサ155、第二UVセンサ156および磁気センサ157により取得された情報をもとに紙葉類Sの識別処理を行う。
【0023】
制御基板158は、例えばCPU基板やDSP基板等により構成される。つまり、識別装置15は、制御装置16と別個のプロセッサを有する。制御基板158は、書き換え可能な不揮発性メモリと、揮発性メモリとを備える。揮発性メモリには、各センサ(センサアレイの場合はさらに各チャネル)に対応するリングバッファが構成され、紙葉類Sから計測された計測データが記録される。また揮発性メモリには、識別処理に用いる計測データが記録される識別用領域が確保される。不揮発性メモリには、紙葉類Sの基準画像等の金種別の判定基準データ、真偽、正損等を識別するための判定用閾値、および計測データの送信条件が記録される。判定用閾値は、予め複数のレベルが用意されており、不揮発性メモリには、真偽および正損についていずれのレベルの判定用閾値を用いるかが記録される。
【0024】
なお、制御基板158は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0025】
制御基板158は、各種センサで取得された計測データと不揮発性メモリに記憶された閾値とを比較することで紙葉類Sを識別する。制御基板158は、計数ログデータ、動作ログデータおよび識別に用いた計測データを記憶装置18に記録する。計数ログデータは、識別装置15による紙葉類Sごとの識別結果を記録したデータである。動作ログデータは、紙葉類処理装置10の起動、停止、動作エラーなどのイベントを記録したデータである。
また制御基板158は、通信装置17に、記憶装置18に記録したデータをデータサーバ20に送信させる。
【0026】
《識別装置15の識別動作》
図5は、第1の実施形態に係る識別装置15による識別動作を示すフローチャート(パート1)である。図6は、第1の実施形態に係る識別装置15による識別動作を示すフローチャート(パート2)である。
搬送部14による搬送によって識別装置15を紙葉類Sが通過する間、各種センサは特徴量を計測し、計測データを生成する(ステップS21)。計測データは制御基板158に出力される。制御基板158は、計測データを逐次対応するリングバッファに記録する(ステップS22)。搬送部14は一定速度で紙葉類Sを送るため、リングバッファには、紙葉類Sの短辺を所定長さ毎に刻んだ各位置における計測データの系列が記録されることとなる。
【0027】
制御基板158は、リングバッファに記録された計測データの系列のうち、紙葉類Sの特徴量を表す部分を抽出し、識別用領域に記録する。制御基板158は、不揮発性メモリに記録された判定基準データと識別用領域の計測データとの誤差および類似度を、金種に対応する判定基準データごとに算出する(ステップS23)。なお、紙葉類Sが斜行状態で搬送された場合に、制御基板158は、イメージデータについて斜行状態を補正した上で、判定基準データとの比較を行う。
【0028】
制御基板158は、類似度が金種判定用閾値以上となる判定基準データが存在するか否かを判定する(ステップS24)。金種判定用閾値以上となる判定基準データが存在しない場合(ステップS24:NO)、当該紙葉類Sが識別不能と判定する(ステップS25)。類似度が金種判定用閾値以上となる判定基準データが存在する場合(ステップS24:YES)、当該紙葉類Sが金種判定用閾値以上となる判定基準データに係る金種であると判定する(ステップS26)。
【0029】
金種が識別できた場合、制御基板158は、計測データと判定基準データとの誤差が、真偽に係る判定用閾値以下であるか否かを判定する(ステップS27)。真偽の識別に複数種類の計測データを用いる場合、各計測データについて判定用閾値以下であるか否かを判定する。制御基板158は、判定基準データとの誤差が真偽に係る判定用閾値を超える計測データが少なくとも1つ存在する場合(ステップS27:NO)、当該紙葉類Sが偽券であると判定する(ステップS28)。制御基板158は、真偽に係る判定用閾値を1段階下げた場合に、真券と判定されるか否かを判定する(ステップS29)。制御基板158は、真偽に係る判定用閾値を1段階下げると真券と判定される場合(ステップS29:YES)、当該紙葉類Sが真偽において識別境界にあると判定する(ステップS30)。識別境界は、紙葉類Sの属性の一例である。
【0030】
他方、制御基板158は、すべての計測データについて、判定基準データとの誤差が真偽に係る判定用閾値以下である場合(ステップS26:YES)、当該紙葉類Sが真券であると判定する(ステップS31)。制御基板158は、真偽に係る判定用閾値を1段階上げた場合に、偽券と判定されるか否かを判定する(ステップS32)。制御基板158は、真偽に係る判定用閾値を1段階下げると偽券と判定される場合(ステップS32:YES)、当該紙葉類Sが真偽において識別境界にあると判定する(ステップS33)。
【0031】
ステップS31で紙葉類Sが真券であると判定された場合、制御基板158は、計測データと判定基準データとの誤差が、正損に係る判定用閾値以下であるか否かを判定する(ステップS34)。正損の識別に複数種類の計測データを用いる場合、各計測データについて判定用閾値以下であるか否かを判定する。制御基板158は、判定基準データとの誤差が正損に係る判定用閾値を超える計測データが少なくとも1つ存在する場合(ステップS34:NO)、当該紙葉類Sが損券であると判定する(ステップS35)。制御基板158は、正損に係る判定用閾値を1段階下げた場合に、正券と判定されるか否かを判定する(ステップS36)。制御基板158は、正損に係る判定用閾値を1段階下げると正券と判定される場合(ステップS36:YES)、当該紙葉類Sが正損において識別境界にあると判定する(ステップS37)。
【0032】
制御基板158は、すべての計測データについて、判定基準データとの誤差が正損に係る判定用閾値以下である場合(ステップS34:YES)、当該紙葉類Sが正券であると判定する(ステップS38)。制御基板158は、正損に係る判定用閾値を1段階上げた場合に、損券と判定されるか否かを判定する(ステップS39)。制御基板158は、正損に係る判定用閾値を1段階上げると損券と判定される場合(ステップS39:YES)、当該紙葉類Sが正損において識別境界にあると判定する(ステップS40)。
【0033】
制御基板158は、紙葉類Sの金種、真偽および正損についての識別結果を制御装置16に出力する(ステップS41)。また制御基板158は、識別結果と揮発性メモリの識別用領域に記録した計測データとを、関連付けて記憶装置18に記録する(ステップS42)。
【0034】
《識別装置15による計測データの送信》
上述の通り、紙葉類処理装置10は、計測データと識別結果とを関連付けて記憶装置18に記録する。紙葉類処理装置10は、不揮発性メモリに設定された送信条件に従って計測データを送信する。
図7は、第1の実施形態に係る送信条件の設定画面の例を示す図である。紙葉類処理装置10は、ユーザからの操作によって送信条件の設定指示を受け付けると、図7に示すような設定画面を操作表示部19に表示させる。設定画面には、送信種別、送信頻度、データ種別およびデータ形式に係る設定項目が表示される。
【0035】
紙葉類処理装置10は、識別装置15の識別結果別に送信条件の設定を受け付ける。設定画面に表示される送信種別の設定項目は、計測データを送信すべき識別結果の設定を受け付ける。設定項目のうち「ALL」は、すべての計測データを同じ条件で送信対象とすることを意味する。したがって、「ALL」が選択されている場合には他の送信種別の選択はできない。
【0036】
設定項目のうち「リジェクト」は、リジェクト対象となった紙葉類Sの計測データを送信対象とすることを意味する。このとき、複数のリジェクト要因のうち、送信対象とするリジェクトの要因の指定を1つ以上受け付けてもよい。
設定項目のうち「正券」は、「正券」と識別された紙葉類Sの計測データを送信対象とすることを意味する。
設定項目のうち「損券」は、「損券」と識別された紙葉類Sの計測データを送信対象とすることを意味する。このとき、損券と識別された複数の要因(汚れ、かすれ、落書き、サイズ(縮みや膨張)、折れ、切れ、破れ、穴あき、テープによる補修、しわ、など)のうち、送信対象とする要因の指定を1つ以上受け付けてもよい。
【0037】
設定項目のうち「識別境界」は、「識別境界」と識別された紙葉類Sの計測データを送信対象とすることを意味する。このとき、判定用閾値のレベル差の指定を受け付けてもよい。レベル差の指定を受け付けている場合、識別装置15は、ステップS29、ステップS32、ステップS36、およびステップS38において、指定されたレベル差に基づいて識別境界の判定を行う。また、判定用閾値のレベルを上げた場合に判定結果が変わる(下側境界)か、判定用閾値のレベルを下げた場合に判定結果が変わる場合(上側境界)かの指定を受け付けてもよい。
【0038】
設定画面に表示される送信頻度の設定項目は、送信データの送信頻度の設定を受け付ける。
設定項目のうち「計数毎」は、受入口111にセットした紙葉類Sを取り込み、受入口111が空になり計数が停止するまでに取得した計測データを送信することを意味する。「計数毎」が選択された場合、計測データの送信が完了するまで、次の紙葉類Sの取り込みを行わない。なお、1セットの紙葉類Sの計数において、送信種別の設定項目で指定した識別結果を付された紙葉類Sがなければ、計測データの送信は行われない。
設定項目のうち「プール」は、枚数や期間の指定を受け付け、当該枚数の計数が完了するたびに、または当該期間が経過するたびに、記憶装置18に記録された計測データを送信することを意味する。
【0039】
上述した通り、紙葉類処理装置10は、識別結果別に送信条件の設定を受け付ける。設定画面に表示されるデータ種別の設定項目は、複数の計測データのうち送信対象とするものの設定を受け付ける。
設定項目のうち「ALL」は全てのセンサの計測データを送信対象とすることを意味する。したがって、「ALL」が選択されている場合には他のデータ種別の選択はできない。
【0040】
設定項目のうち「イメージ」は、第一イメージセンサ152および第二イメージセンサ153よる計測データを送信対象とすることを意味する。紙葉類処理装置10は、第一イメージセンサ152および第二イメージセンサ153よる計測データについて、さらに具体的な送信対象の指定を受け付けてよい。例えば、紙葉類処理装置10は、透過画像を送信するか、反射画像を送信するか、記番号部分を切出すか、全画面を送信するか、リジェクト要因となったもののみを抽出するかなどの選択を受け付ける。
【0041】
設定項目のうち「MG」は、磁気センサ157による計測データを送信対象とすることを意味する。紙葉類処理装置10は、磁気センサ157による計測データについて、さらに送信対象のチャネルの指定を受け付けてよい。例えば、紙葉類処理装置10は、全チャネルを抽出するか、奇数番のチャネルのみを抽出するか、リジェクト要因となったチャネルのみを抽出するか、リジェクト要因となったチャネルと当該チャネルの両隣のチャネルを抽出するかなどの指定を受け付けてよい。
【0042】
設定項目のうち「UV」は、第一UVセンサ155および第二UVセンサ156による計測データを送信対象とすることを意味する。紙葉類処理装置10は、第一UVセンサ155および第二UVセンサ156による計測データについて、さらに送信対象のチャネルの指定を受け付けてよい。例えば、紙葉類処理装置10は、全チャネルを抽出するか、奇数番のチャネルのみを抽出するか、2つのセンサ(第一UVセンサ155および第二UVセンサ156)の一方のみの計測データを抽出するか、リジェクト要因となったチャネルのみを抽出するかなどの指定を受け付けてよい。
【0043】
設定項目のうち「厚さ」は、厚さ検知センサ154による計測データを送信対象とすることを意味する。紙葉類処理装置10は、厚さ検知センサ154による計測データについて、さらに送信対象のチャネルの指定を受け付けてよい。例えば、紙葉類処理装置10は、全チャネルを抽出するか、奇数番のチャネルのみを抽出するか、リジェクト要因となったチャネルのみを抽出するかなどの指定を受け付けてよい。
【0044】
また、データ種別の設定項目には、リジェクト要因を送信対象とする選択肢が設けられていてもよい。「リジェクト要因」は全てのセンサの計測データのうち、リジェクト要因となったものを送信対象とすることを意味する。したがって、「リジェクト要因」が選択されている場合には他のデータ種別の選択はできない。例えば、画像による真偽判定でリジェクトされた場合は、イメージデータを送信対象とし、他のセンサの計測データを送信対象としない。解析に搬送状態(位置や斜行角度)の情報が必要となる場合にはその情報を算出結果により数値で取得するほか、搬送状態を算出可能にイメージデータを合わせて取得しても良い。複数の要因でリジェクトした場合には要因に応じた間引きをしても良い。すなわち、紙葉類処理装置10は、全てのセンサの計測データのうち、複数の要因の少なくとも1つに対応するセンサの計測データを送信対象とし、いずれの要因にも対応しないセンサの計測データを送信対象としなくて良い。例えば、リジェクトの判定が磁気センサ157の計測データと第一UVセンサ155の計測データに基づいてなされた場合に、磁気センサ157および第一UVセンサ155の計測データを送信対象とし、厚さ検知センサ154の計測データを送信対象としなくてよい。このとき、搬送状態を算出するために必要であればイメージデータを送信対象としてもよい。さらに、磁気センサ157および第一UVセンサ155についても解析に必要なチャンネルデータのみを送信すればよく、イメージデータは搬送状態を算出するために必要な波長のイメージデータ、例えば透過赤外イメージデータのみを送信対象としてもよい。
【0045】
また、データ形式の設定項目は、送信すべき計測データの形式についての設定を受け付ける。データ形式の設定項目のうち「加工なし」は、各センサデータを補正しないまま送信することを意味する。
設定項目のうち「斜行補正」はイメージデータの媒体長辺を搬送方向に垂直となるように回転させたデータを送信することを意味する。
【0046】
なお、データ種別やデータ形式に係る設定は、良く使用されるものはプリセットとして記憶されていてもよい。なお、本実施形態では、操作表示部19の操作によって送信条件の設定を受け付けるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、通信装置17を介して分析装置30などの他の装置から送信条件の設定を受け付けてもよい。
【0047】
識別装置15は、設定された送信条件に従って、記憶装置18に記録された計測データをデータサーバ20に送信する。すなわち、識別装置15の制御基板158は、記憶装置18に記憶された各計測データに関連付けられた識別結果と送信条件とを比較し、当該計測データを送信するか否かを判定し、送信する場合に、当該識別結果に関連付けられた送信条件が示す種類の計測データを抽出し、送信データに追加する。つまり、本実施形態に係る識別装置15は、送信装置17を制御する。なお、他の実施形態においては、識別装置15が通信装置17を備えるものであってもよい。
【0048】
図8は、第1の実施形態に係る送信データのデータ構成の例を示す図である。
送信データはファイル情報部と1以上の紙葉類データ部とから構成される。ファイル情報部には、ファイル送信日時、ファイルサイズ、ユーザ名、紙葉類処理装置10の管理番号、識別ユニットの管理番号、各センサの管理番号などが格納される。なお、これらの情報のうちいずれかは計数ログなどの別ファイルで送信してもよい。
紙葉類データ部は、紙葉類情報部と計測データ部とから構成される。紙葉類情報部には、集積部13における振分け設定、識別のレベル設定、識別結果、送信対象の計測データの構成などが格納される。計測データ部には、送信対象となる計測データが格納される。
【0049】
紙葉類処理装置10は、送信データの送信中、計数処理を実行しない。これは、識別装置15の計算資源が計測データの送信に割かれ、リアルタイムな識別処理の実現を保証できなくなるためである。したがって、設定条件において、計測データの送信が必要な識別結果を指定し、また必要な計測データの種別を指定することで、送信する計測データの量を抑え、計数処理ができない時間を短くすることができる。
【0050】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、紙葉類処理装置10は、投入された貨幣の計測データの一部または全部を、予め記憶された送信条件に従って、広域通信網を介してデータサーバ20へ送信する。これにより、紙葉類処理装置10が設置された地域における紙葉類Sの使用態様を示す計測データをデータサーバ20に蓄積することができる。分析装置30などは、任意のタイミングで任意の計測データをデータサーバ20から取得することができる。これにより、分析装置30は、データサーバ20に記録された計測データを分析し、紙葉類処理装置10の設置された地域の特性に応じて、紙葉類Sの識別に用いる設定データを生成することができる。
【0051】
〈第2の実施形態〉
識別装置15の各種センサによる計測データは、紙葉類Sの特徴のみならずセンサの状態によって変化し得る。そのため、分析装置30による分析を行う場合、紙葉類Sの計測データと、特徴量が既知であるリファレンス用の模擬紙を計測した計測データとを比較することが好ましい。第2の実施形態に係る紙葉類処理装置10は、ユーザに模擬紙の計測を促す。
【0052】
第2の実施形態に係る制御装置16は、受入口111にセットされたすべての紙葉類Sの計数を完了すると(図3のステップS8:YES)、図9に示すように模擬紙の読み取りを要求する表示画面を表示させる。図9は、第2の実施形態に係る表示画面の一例を示す図である。表示画面には、メッセージウインドウD1とメッセージアイコンD2とが表示される。メッセージウインドウには、模擬紙の読み取りを要求する旨の文言D11と、読取開始ボタンD12、読取不要ボタンD13、閉じるボタンD14が含まれる。なお、模擬紙には、計数可能なものと計数不可能なものとが存在する。そのため、文言D11には、セットすべき模擬紙の種類やセット方法の指定などのガイダンスが含まれていてもよい。ガイダンスは、図示により模擬紙の種類やセット方法を示すものであってもよい。
【0053】
受入口111に模擬紙をセットして読取開始ボタンD12が押下されると、紙葉類処理装置10は模擬紙を紙葉類処理装置10内部に取り込み、読み取りを開始する。模擬紙はリジェクト口112から排出される。模擬紙の計測データは記憶装置18に記録され、送信条件に従ってデータサーバ20に送信される。このとき、記録された模擬紙の計測データのファイル名は、模擬紙の種類を表すものであってよい。例えば、ガイダンスが表示される場合には、当該ガイダンスにおいて指定された種類を表すファイル名で計測データが保存される。操作表示部19は、メッセージウインドウD1とメッセージアイコンD2とを表示画面から消す。
【0054】
他方、続けて紙葉類Sを計数する予定があり、模擬紙を都度読み取る必要がない場合には、ユーザは読取不要ボタンD13を押下する。読取不要ボタンD13が押下されると、操作表示部19は、メッセージウインドウD1とメッセージアイコンD2とを表示画面から消す。
【0055】
他方、続けて紙葉類Sを計数する予定がない一方で、すぐに模擬紙を取得できない場合には、ユーザは閉じるボタンD14を押下する。閉じるボタンD14が押下されると、操作表示部19は、メッセージウインドウD1を表示画面から消す一方で、メッセージアイコンD2を表示画面に残す。メッセージアイコンD2が押下されると、メッセージウインドウD1が表示される。
【0056】
〈第3の実施形態〉
紙葉類処理装置10の識別装置15は、貨幣の識別処理において制御基板158の計算資源の使用率が100%近くになることから、計測データを送信している間、紙葉類処理装置10は計数処理を受け付けない。そのため、計測データを送信することで紙葉類処理装置10の稼働率の低下する可能性がある。これに対し、第3の実施形態に係る紙葉類処理装置10は、紙葉類処理装置10の電源がオフになっているときに、計測データを送信することで紙葉類処理装置10の稼働率の低下を防ぐ。
【0057】
第3の実施形態に係る制御基板158は、紙葉類処理装置10がスタンバイ状態にあるときに、記憶装置18が記憶する動作ログデータに基づいて、紙葉類処理装置10の電源がオフとなる時間帯を推定する。例えば、制御基板158は、動作ログデータの電源オンおよび電源オフの履歴の統計処理により、電源オフとなる時刻の平均値より2σ遅い時刻を電源オフ時刻と推定し、電源オンとなる時刻の平均値より2σ早い時刻を電源オン時刻と推定することで、電源がオフとなる時間帯を推定する。制御基板158は、推定した時間帯に電源を自動的にオンにするようにスケジュールを組む。
【0058】
推定した時間帯に制御基板158が起動すると、制御基板158は、記憶装置18が記憶する計測データと不揮発性メモリに記録された送信条件とに基づいて、推定した時間帯の間に送信可能なデータ量の送信データを生成する。例えば、制御基板158は、推定した時間帯の長さに通信装置17の通信速度を乗算することで送信可能なデータ量を算出し、記憶装置18が記憶する計測データから送信条件に従って算出したデータ量相当の計測データを読み出して、送信データを生成する。
【0059】
そして、制御基板158は、生成した送信データを広域通信網Nを介してデータサーバ20へ送信する。これにより、制御基板158は、紙葉類処理装置10が使用されない時間帯に計測データを送信することで、紙葉類処理装置10の稼働率の低下を防ぐことができる。
【0060】
また、紙葉類処理装置10の電源がオンになり、制御装置16が初期化処理を行っている間、制御基板158はデータサーバ20にログデータを送信する。ログデータは、計測データと比較して十分にデータ量が小さく、初期化処理を行っている間にデータサーバ20への送信を完了することができる。
【0061】
分析装置30のユーザは、データサーバ20からログデータを読み取ることで、計測データが必要となる紙葉類Sの種類やデータの種類を検討し、紙葉類処理装置10に設定する。これにより、紙葉類処理装置10が送信すべき計測データを限定し、分析に必要な適切な量の計測データを送信できるようにすることができる。
【0062】
なお、第3の実施形態に係る紙葉類処理装置10は、定期的に電源のオン/オフがなされる環境において、効果を奏するが、紙葉類処理装置10は常に稼働する環境におかれることもある。このような場合には、紙葉類処理装置10は、アップロード予定時間帯(アップロード開始時刻と終了予定時刻)を提示し、オペレータに当該時間帯でのアップロードの可否の入力を受け付けることで、データの送信時間帯を確保することができる。アップロード予定時間帯の提示は、例えば送信データの記憶容量がフルに近くなったとき(例えば記憶容量の所定割合に達したとき)や、一定時間操作がなされていないときに行われる。アップロード開始時刻は、例えばアップロード予定時間帯の提示時刻から一定時間後の時刻であってよい。アップロード終了予定時刻は、送信データのデータ量を通信速度で除算して得られる時間を、例えばアップロード開始時刻に加算した時刻であってよい。
【0063】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る識別装置15は、制御装置16と別個の計算資源を有するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る紙葉類処理装置10は、これらの構成が単独のコンピュータによって構成されるものであってもよい。なお、上述した実施形態に係る紙葉類処理装置10は、制御装置16は紙葉類処理装置10を稼働させるために常に受入口111および搬送部14の状態を監視する必要があるため、データの送信のために計算資源を割り当てることができないため、制御装置16と別個の計算資源を有する識別装置15が識別処理を行っていないときにデータを送信することが好ましい。
【0064】
上述した実施形態では、貨幣処理装置を紙葉類処理装置10に実装する例について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、貨幣処理装置を硬貨処理装置に適用してもよい。また、他の実施形態に係る紙葉類処理装置10は、紙幣ではなくカジノチケットなどの有価媒体を計数するものであってもよい。また、処理対象の紙葉類Sは、バラの紙葉類Sでなく、結束された紙葉類S(帯封紙幣)であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…紙葉類識別システム 10…紙葉類処理装置 11…筐体 111…受入口 112…リジェクト口 13…集積部 14…搬送部 15…識別装置 152…第一イメージセンサ 153…第二イメージセンサ 154…厚さ検知センサ 154a…可動ローラー 154b…変位センサ 155…第一UVセンサ 156…第二UVセンサ 157…磁気センサ 158…制御基板 16…制御装置 17…通信装置 18…記憶装置 19…操作表示部 20…データサーバ 30…分析装置 N…広域通信網 S…紙葉類
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9