(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136473
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】成形品、金型装置、及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20230922BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230922BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20230922BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/14
B29C33/14
B29C45/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042158
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506027790
【氏名又は名称】厚木化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新國 崇之
(72)【発明者】
【氏名】調所 義之
(72)【発明者】
【氏名】小野 博昭
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD06
4F202AD08
4F202AD35
4F202AG07
4F202AH55
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AD06
4F206AD08
4F206AD35
4F206AG07
4F206AH55
4F206AM32
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】平面シートの位置ずれを抑制すると共に、樹脂の通路を確保する、技術を提供する。
【解決手段】成形品は、平面シートと、前記平面シートに対して分離された側面シートと、前記平面シート及び前記側面シートに対して一体化される樹脂部と、を備える。前記平面シートは、前記側面シートに当接される周縁と、前記周縁の一部に形成される切り欠きと、を有する。前記樹脂部は、前記平面シートの前記切り欠きに充填される充填部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面シートと、前記平面シートに対して分離された側面シートと、前記平面シート及び前記側面シートに対して一体化される樹脂部と、を備え、
前記平面シートは、前記側面シートに当接される周縁と、前記周縁の一部に形成される切り欠きと、を有し、
前記樹脂部は、前記平面シートの前記切り欠きを埋める充填部を含む、成形品。
【請求項2】
前記樹脂部は、前記平面シートの前記周縁を前記平面シートの片側から押さえる第1リング部と、前記平面シートの前記周縁を前記平面シートの反対側から押さえる第2リング部と、を備え、
前記充填部が、前記第1リング部と前記第2リング部の間に設けられる、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記樹脂部は、前記第1リング部又は前記第2リング部に架け渡される直線部を備え、
前記直線部の一端又は両端に、前記充填部が設けられる、請求項2に記載の成形品。
【請求項4】
前記樹脂部は、前記側面シートを筒状に固定する第1枠部と、前記側面シートを筒状に固定する第2枠部と、前記第1枠部と前記第2枠部を連結するピラー部と、を備え、
前記第1枠部が、前記充填部と前記第1リング部と前記第2リング部とを含む、請求項2又は3に記載の成形品。
【請求項5】
前記平面シートと前記側面シートは、紙を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項6】
平面シートと、前記平面シートに対して一体化される樹脂部と、を備え、
前記平面シートは、金型装置の壁面に当接される周縁と、前記周縁の一部に形成される切り欠きと、を有し、
前記樹脂部は、前記平面シートの前記切り欠きに充填される充填部を含む、成形品。
【請求項7】
平面シートと、前記平面シートに対して一体化される樹脂部と、を備え、
前記平面シートは、金型装置の壁面に当接される周縁を有し、
前記樹脂部は、前記平面シートの前記周縁の一部に、前記平面シートの片面から反対面に迂回する迂回部を有する、成形品。
【請求項8】
樹脂が充填されるキャビティ空間を形成する壁面の一部に、平面シートの周縁が当接される位置決め部を備え、
前記位置決め部には、前記平面シートの前記周縁の一部に、前記平面シートの片面から反対面に前記樹脂を迂回させる溝が形成される、金型装置。
【請求項9】
平面シートと前記平面シートに対して一体化される樹脂部とを備える成形品の製造方法であって、
金型装置内に前記平面シートを挿入するインサート工程と、前記インサート工程の後に前記金型装置内に樹脂を充填する充填工程と、を有し、
前記インサート工程は、前記平面シートの周縁の一部を前記平面シートとは別のシート、又は前記金型装置の壁面に当接させることで、前記平面シートを位置決めさせることを含み、
前記充填工程は、前記平面シートの前記周縁の残りの少なくとも一部を介して、前記平面シートの片面から反対面に前記樹脂を流し込むことを含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品、金型装置、及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の容器は、ブランクと、ブランクに対して射出された樹脂からなるピラー枠体と、を備える。ピラー枠体は、ブランクを保持する。容器は、ブランクを金型内に挿入した状態で、金型内に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。ブランクは、扇形の側部ブランクと、円形の底部ブランクと、連結ブランクと、を含む。連結ブランクは、側部ブランクと底部ブランクを連結する。ブランクは、筒状に組み立てられ、金型内に挿入される。ブランクは、プラスチックフィルムである。
【0003】
特許文献2に記載の容器は、側面用ラベルと底面用ラベルを金型内に挿入した状態で、金型内に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。側面用ラベルは、容器の側壁及び糸底の外周面にインモールドされるものである。底面用ラベルは、容器の底部の内面又は外面にインモールドされるものである。底面用ラベルは、容器の底部の内面又は外面よりも大きく形成され、樹脂の充填圧によって折り曲げられる。底面用ラベルが折り曲げられることで、樹脂の通路が確保される。側面用ラベルと底面用ラベルは、プラスチックフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-126563号公報
【特許文献2】特開平9-174595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、扇形の側部ブランクと円形の底部ブランクとが分離されていないので、ブランクの輪郭線の形状が複雑である。ブランクの輪郭線は、ブランクをシートから切り取る切り取り線で規定される。ブランクの切り取り線が複雑である場合、切り取り加工が煩雑になってしまう。また、切り取り線が複雑である場合、切り取り後に生じるゴミの量が多く、資源の無駄が多くなってしまう。
【0006】
特許文献2では、側面用ラベルと底面用ラベルとが分離されており、別々に切り取られる。側面用ラベルの切り取り線と、底面用ラベルの切り取り線が別々に設定される。それゆえ、個々の切り取り線の形状が単純であり、切り取り加工が容易である。また、側面用ラベルの切り取り線と、底面用ラベルの切り取り線の配置(位置及び向きなど)を、自由に変更することができる。それゆえ、切り取り後に生じるゴミの量が少なく、資源の無駄が少なくなる。
【0007】
特許文献2によれば、上記の通り、特許文献1の課題を解決することができるが、別の課題が生じうる。
【0008】
例えば、底面用ラベルが厚く、底面用ラベルが折り曲げられない場合、底面用ラベルが樹脂の通路を塞いでしまう。樹脂の通路を確保すべく、底面用ラベルの大きさを小さくする場合、金型内で底面用ラベルの位置ずれが生じてしまう。
【0009】
従来から、底面用ラベルのような平面シートを金型内に挿入した状態で、金型内に樹脂を充填し、成形品を作製することが行われていたが、平面シートの位置ずれを抑制すると共に、樹脂の通路を確保することは十分に検討されていなかった。
【0010】
本発明の一態様は、平面シートの位置ずれを抑制すると共に、樹脂の通路を確保する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る成形品は、平面シートと、前記平面シートに対して分離された側面シートと、前記平面シート及び前記側面シートに対して一体化される樹脂部と、を備える。前記平面シートは、前記側面シートに当接される周縁と、前記周縁の一部に形成される切り欠きと、を有する。前記樹脂部は、前記平面シートの前記切り欠きに充填される充填部を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、平面シートの周縁を側面シートに当接させることで平面シートの位置ずれを抑制でき、且つ、平面シートの周縁の一部に切り欠きを形成することで樹脂の通路を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)は第1実施形態に係る成形品の上面図であり、
図1(B)は
図1(A)のB-B線に沿った成形品の断面図であり、
図1(C)は
図1(B)の矢印Cから見た成形品の下面図であり、
図1(D)は
図1(C)のD-D線に沿った成形品の断面図である。
【
図5】
図5(A)は第1実施形態に係る金型装置の型開完了時の状態を示す断面図であり、
図5(B)は
図5(A)に示す金型装置の型締時の状態を示す断面図であり、
図5(C)は
図5(B)に示す金型装置の射出時の状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1(D)に示す成形品の変形例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る成形品の上面図であり、
図7(B)は
図7(A)のB-B線に沿った成形品の断面図であり、
図7(C)は
図7(B)の矢印Cから見た成形品の下面図であり、
図7(D)は
図7(C)のD-D線に沿った成形品の断面図である。
【
図8】
図8(A)は第2実施形態に係る金型装置の型開完了時の状態を示す断面図であり、
図8(B)は
図8(A)に示す金型装置の型締時の状態を示す断面図であり、
図8(C)は
図8(B)に示す金型装置の射出時の状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図7(D)に示す成形品の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す成形品の製造に用いられる金型装置の型締時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。
【0015】
図1~
図4を参照して、第1実施形態に係る成形品10について説明する。成形品10は、
図1などに示すように、平面シート20と、平面シート20に対して分離された側面シート30と、平面シート20及び側面シート30に対して一体化される樹脂部40と、を備える。成形品10は、
図5に示す射出成形用の金型装置50内に平面シート20と側面シート30を挿入した状態で、金型装置50内に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。成形品10は、例えば容器である。
【0016】
平面シート20と側面シート30は、例えば紙を含む。成形品10の一部が紙であれば、樹脂の使用量を低減できる。なお、平面シート20と側面シート30は、紙の代わりにプラスチックフィルムを含んでもよいし、紙とプラスチックフィルムの複合シートであってもよい。平面シート20と側面シート30は、単層構造でもよいし、複数層構造でもよい。平面シート20と側面シート30には、印刷が施されてもよい。
【0017】
平面シート20は、例えば
図4に示すように平面視で円形であるが、多角形であってもよい。多角形は、四角形、五角形、又は六角形などである。平面シート20の形状は特に限定されない。成形品10が容器である場合、平面シート20は容器の底面を形成する。平面シート20は、折り曲げずに使用され、例えば0.2mm~0.6mmの厚みを有してもよい。
【0018】
側面シート30は、例えば扇形であり、
図3に示すように円筒状に丸めて金型装置50内に挿入される。側面シート30は、一対の側辺31、32が間隔をおいて向かい合うように円筒状に丸められる。なお、側面シート30は、角筒状に折り曲げて金型装置50内に挿入されてもよい。角筒は、四角筒、五角筒、又は六角筒などである。側面シート30の数は、本実施形態では1つであるが、平面シート20の周縁21に沿って複数に分割されていてもよい。
【0019】
平面シート20と側面シート30は、分離されており、別々に切り取られる。平面シート20の切り取り線と、側面シート30の切り取り線が別々に設定される。それゆえ、個々の切り取り線の形状が単純であり、切り取り加工が容易である。また、平面シート20の切り取り線と、側面シート30の切り取り線の配置(位置及び向きなど)を、自由に変更することができる。それゆえ、切り取り後に生じるゴミの量が少なく、資源の無駄が少なくなる。
【0020】
平面シート20は、
図1及び
図4に示すように、側面シート30に当接される周縁21と、周縁21の一部に形成される切り欠き22とを有する。平面シート20の周縁21を側面シート30に当接することで、平面シート20の位置ずれを抑制できる。また、平面シート20の周縁21の一部に切り欠き22を形成することで、樹脂の通路を確保できる。
【0021】
平面シート20の切り欠き22は、上記の通り、平面シート20の周縁21の一部のみに形成される。これにより、樹脂の通路を確保しつつ、平面シート20の位置ずれを抑制できる。切り欠き22の形状は、
図4では半円形であるが、矩形などであってもよく、特に限定されない。切り欠き22の数は、
図4では2つであるが、1つでもよいし、3つ以上でもよい。切り欠き22の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。
【0022】
樹脂部40は、
図1(D)に示すように、平面シート20の切り欠き22を埋める充填部41を含む。平面シート20の切り欠き22は、溶融した樹脂の通路として使用され、固化した樹脂からなる充填部41で埋められる。平面シート20の切り欠き22によって、平面シート20の片面から反対面に樹脂を流し込むことができる。
【0023】
樹脂部40は、
図1(B)に示すように、平面シート20の周縁21を平面シート20の片側から押さえる第1リング部42と、平面シート20の周縁21を平面シート20の反対側から押さえる第2リング部43と、を備える。第1リング部42は、例えば容器の底面から突き出す脚である。第1リング部42と第2リング部43とで、平面シート20を両側から挟んで固定できる。樹脂部40は、第1リング部42と第2リング部43の1つのみを備えてもよい。
【0024】
充填部41は、
図1(D)に示すように、第1リング部42と第2リング部43の間に設けられる。平面シート20を挟んで配置される第1リング部42と第2リング部43の間に樹脂の通路を確保でき、第1リング部42と第2リング部43の両方に樹脂を流し込むことができる。
【0025】
樹脂部40は、
図1及び
図2に示すように、第1リング部42に架け渡される直線部44を備える。直線部44の中央には、溶融した樹脂が最初に流れ込む入口部45が設けられる。入口部45の平面視形状は、円形であるが、多角形であってもよく、特に限定されない。溶融した樹脂は、入口部45に相当する空間に流れ込んだ後、直線部44に相当する空間を通り、第1リング部42に相当する空間に流れ込む。
【0026】
直線部44の数は、
図2では1つであるが、複数であってもよい。複数の直線部44が入口部45で交差してもよい。直線部44の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。一方、直線部44の数が少ないほど、樹脂の使用量を低減できる。平面シート20として折り曲げることができない程度の厚みの紙を使用するので、直線部44の数が1つであっても、容器の底面の剛性を十分に確保できる。
【0027】
図1(D)に示すように、直線部44の一端又は両端(
図1(D)では両端)に、充填部41が設けられてもよい。溶融した樹脂が第1リング部42に相当する空間に流れ込み始めるのとほぼ同時に、溶融した樹脂が第2リング部43に相当する空間に流れ込み始める。よって、金型装置50内に樹脂を短時間で充填できる。溶融した樹脂は、時間の経過とともに冷却され、固化される。金型装置50内に樹脂を短時間で充填できれば、樹脂を隅々まで充填できる。
【0028】
樹脂部40は、
図1及び
図2に示すように、側面シート30を筒状に固定する第1枠部46と、側面シート30を筒状に固定する第2枠部47と、第1枠部46と第2枠部47を連結するピラー部48と、を備える。第1枠部46が、充填部41と第1リング部42と第2リング部43とを含む。第1枠部46と第2枠部47は、筒状の側面シート30を内側から保持する。第1枠部46と第2枠部47は、
図2では円環状であるが、環状であればよく、角環状であってもよい。
【0029】
ピラー部48は、第1枠部46の第2リング部43と、第2枠部47を連結する。溶融した樹脂は、第2リング部43に相当する空間と、ピラー部48に相当する空間を通り、第2枠部47に相当する空間に流れ込む。ピラー部48は、
図3に示す側面シート30の一対の側辺31、32の間に配置され、側面シート30の一対の側辺31、32を固定する。なお、ピラー部48の数は、
図2では1つであるが、2つ以上であってもよい。ピラー部48の数が多いほど、側面シート30を所望の形状に維持しやすい。
【0030】
樹脂部40が第1枠部46と第2枠部47とピラー部48とを備えることで、平面シート20と側面シート30を所望の形状に維持できる。
【0031】
樹脂部40は、
図1及び
図2に示すように、第2枠部47から側面シート30の外側に張り出すフランジ部49を備えてもよい。フランジ部49は、
図2では円環状であるが、環状であればよく、角環状であってもよい。図示しないが、フランジ部49には容器の蓋が貼り付けられ、容器内が密閉される。
【0032】
次に、
図5を参照して、上記成形品10の製造に用いられる金型装置50について説明する。金型装置50は、例えば、第1金型51と、第2金型52と、を備える。例えば、第1金型51は固定金型であり、第2金型52は可動金型である。第2金型52をZ軸負方向に移動させることで、金型装置50の型閉、及び型締が行われる。また、第2金型52をZ軸正方向に移動させることで、金型装置50の型開が行われる。
【0033】
図5(A)に示すように、型開完了時に、平面シート20と側面シート30が金型装置50内に挿入される。例えば、平面シート20は第2金型52に保持され、側面シート30は第1金型51に保持される。第2金型52は、例えば、平面シート20を真空吸着する。その後、型閉と型締が行われる。
【0034】
図5(B)に示すように、型締時に、第1金型51と第2金型52の間にキャビティ空間53が形成される。キャビティ空間53の一部には、平面シート20と側面シート30が配置されている。平面シート20の周縁21は、側面シート30に当接されている。平面シート20の位置ずれが抑制されるので、第2金型52は平面シート20の真空吸着を解除してもよい。
【0035】
図5(C)に示すように、金型装置50が型締された状態で、樹脂の射出が行われる。第1金型51には射出装置のノズル61がタッチされており、ノズル61が溶融した樹脂を射出する。溶融した樹脂が、キャビティ空間53に充填され、固化される。これにより、平面シート20と側面シート30と樹脂部40で構成される成形品10が得られる。
【0036】
その後、型開が行われる。成形品10は、樹脂の固化によって収縮し、第2金型52に抱き着く。従って、型開時に、成形品10は、第2金型52と共にZ軸正方向に移動させられ、第1金型51から抜き取られる。その後、成形品10は、不図示のエジェクタ装置によって第2金型52から突き出され、金型装置50の外部に取り出される。
【0037】
成形品10の製造方法は、金型装置50内に平面シート20を挿入するインサート工程と、インサート工程の後に金型装置50内に樹脂を充填する充填工程と、を有する。インサート工程は、平面シート20の周縁21の一部を平面シート20とは別のシート(例えば側面シート30)に当接させることで、平面シート20を位置決めさせることを含む。充填工程は、平面シート20の周縁21の残りの少なくとも一部を介して、平面シート20の片面から反対面に樹脂を流し込むことを含む。
【0038】
次に、
図6を参照して、
図1(D)に示す成形品10の変形例について説明する。以下、本変形例と、上記第1実施形態の相違点について主に説明する。
図6に示すように、直線部44は、第1リング部42の代わりに、第2リング部43に架け渡されてもよい。平面シート20の中央には貫通穴が形成され、その貫通穴に入口部45が設けられる。溶融した樹脂は、入口部45に相当する空間に流れ込んだ後、直線部44に相当する空間を通り、第2リング部43に相当する空間に流れ込む。
【0039】
図6に示すように、直線部44の一端又は両端(
図6では両端)に、充填部41が設けられてもよい。溶融した樹脂が第2リング部43に相当する空間に流れ込み始めるのとほぼ同時に、溶融した樹脂が第1リング部42に相当する空間に流れ込み始める。よって、金型装置50内に樹脂を短時間で充填できる。溶融した樹脂は、時間の経過とともに冷却され、固化される。金型装置50内に樹脂を短時間で充填できれば、樹脂を隅々まで充填できる。
【0040】
次に、
図7を参照して、第2実施形態に係る成形品110について説明する。成形品110は、平面シート120と、平面シート120に対して一体化される樹脂部140と、を備える。成形品110は、
図8に示す射出成形用の金型装置150内に平面シート120を挿入した状態で、金型装置150内に溶融した樹脂を充填し固化することにより作製される。成形品110は、例えば容器の蓋である。
【0041】
平面シート120は、例えば紙を含む。成形品110の一部が紙であれば、樹脂の使用量を低減できる。なお、平面シート120は、紙の代わりにプラスチックフィルムを含んでもよいし、紙とプラスチックフィルムの複合シートであってもよい。平面シート120は、単層構造でもよいし、複数層構造でもよい。平面シート120には、印刷が施されてもよい。
【0042】
平面シート120は、例えば平面視で四角形であるが、五角形、六角形、円形又は楕円形などでもよい。平面シート120の形状は特に限定されない。平面シート120は、折り曲げずに使用され、例えば0.2mm~0.6mmの厚みを有してもよい。
【0043】
平面シート120は、
図7及び
図8に示すように、金型装置150の壁面154に当接される周縁121と、周縁121の一部に形成される切り欠き122とを有する。平面シート120の周縁121を金型装置150の壁面154に当接することで、平面シート120の位置ずれを抑制できる。平面シート120の周縁121は、金型装置150の壁面154に当接するので、金型装置150から取り出された後では成形品110の表面に露出している。また、平面シート120の周縁121の一部に切り欠き122を形成することで、樹脂の通路を確保できる。
【0044】
平面シート120の切り欠き122は、上記の通り、平面シート120の周縁121の一部のみに形成される。これにより、樹脂の通路を確保しつつ、平面シート120の位置ずれを抑制できる。切り欠き122の形状は、
図7(A)では四分円形であるが、四角形などであってもよく、特に限定されない。切り欠き122の数は、
図7(A)では4つであるが、1つでもよいし、2つ、3つ、又は5つ以上でもよい。切り欠き122の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。
【0045】
樹脂部140は、
図7(D)に示すように、平面シート120の切り欠き122を埋める充填部141を含む。平面シート120の切り欠き122は、溶融した樹脂の通路として使用され、固化した樹脂からなる充填部141で埋められる。平面シート120の切り欠き122によって、平面シート120の片面から反対面に樹脂を流し込むことができる。
【0046】
樹脂部140は、
図7(B)に示すように、平面シート120の周縁121を平面シート120の片側から押さえる第1リング部142と、平面シート120の周縁121を平面シート120の反対側から押さえる第2リング部143と、を備える。第1リング部142と第2リング部143とで、平面シート120を両側から挟んで固定できる。樹脂部140は、第1リング部142と第2リング部143の1つのみを備えてもよい。
【0047】
充填部141は、
図7(D)に示すように、第1リング部142と第2リング部143の間に設けられる。平面シート120を挟んで配置される第1リング部142と第2リング部143の間に樹脂の通路を確保でき、第1リング部142と第2リング部143の両方に樹脂を流し込むことができる。
【0048】
樹脂部140は、
図7(D)に示すように、第1リング部142に架け渡される直線部144を備える。直線部144の中央には、溶融した樹脂が最初に流れ込む入口部145が設けられる。入口部145の平面視形状は、円形であるが、多角形であってもよく、特に限定されない。溶融した樹脂は、入口部145に相当する空間に流れ込んだ後、直線部144に相当する空間を通り、第1リング部142に相当する空間に流れ込む。
【0049】
直線部144の数は、
図7(C)に示すように2つであるが、1つでもよいし、3つ以上でもよい。複数の直線部144が入口部145で交差している。直線部144の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。一方、直線部144の数が少ないほど、樹脂の使用量を低減できる。平面シート120として折り曲げることができない程度の厚みの紙を使用するので、直線部144の数が1つであっても、容器の底面の剛性を十分に確保できる。
【0050】
図7(D)に示すように、各直線部144の一端又は両端(
図7(D)では両端)に、充填部141が設けられてもよい。溶融した樹脂が第1リング部142に相当する空間に流れ込み始めるのとほぼ同時に、溶融した樹脂が第2リング部143に相当する空間に流れ込み始める。よって、金型装置150内に樹脂を短時間で充填できる。溶融した樹脂は、時間の経過とともに冷却され、固化される。金型装置150内に樹脂を短時間で充填できれば、樹脂を隅々まで充填できる。
【0051】
なお、図示しないが、直線部144は、第1リング部142の代わりに、第2リング部143に架け渡されてもよい。この場合、平面シート120の中央には貫通穴が形成され、その貫通穴に入口部145が設けられる。溶融した樹脂は、入口部145に相当する空間に流れ込んだ後、直線部144に相当する空間を通り、第2リング部143に相当する空間に流れ込む。
【0052】
樹脂部140は、
図7(B)、及び
図7(D)に示すように、平面シート120を平面に固定する第1枠部146と、第1枠部146の外側に設けられる第2枠部147と、第1枠部146と第2枠部147を連結する折り返し部148と、を備える。第1枠部146が、充填部141と第1リング部142と第2リング部143とを含む。第1枠部146と第2枠部147は、四角環状であるが、環状あればよく、円環状であってもよいし、角環状であってもよい。
【0053】
折り返し部148は、U字状の断面形状を有し、第1枠部146の第2リング部143と、第2枠部147を連結する。溶融した樹脂は、第2リング部143に相当する空間と、折り返し部148に相当する空間を通り、第2枠部147に相当する空間に流れ込む。折り返し部148には、容器の上縁が挿入され、容器内が密閉される。第2枠部147が容器の上縁に接触することで、容器内が密閉されてもよい。
【0054】
次に、
図8を参照して、上記成形品110の製造に用いられる金型装置150について説明する。金型装置150は、例えば、第1金型151と、第2金型152と、を備える。例えば、第1金型151は固定金型であり、第2金型152は可動金型である。第2金型152をZ軸負方向に移動させることで、金型装置150の型閉、及び型締が行われる。また、第2金型152をZ軸正方向に移動させることで、金型装置150の型開が行われる。
【0055】
図8(A)に示すように、型開完了時に、平面シート120が金型装置150内に挿入される。例えば、平面シート120は、第2金型152に保持される。第2金型152は、例えば、平面シート120を真空吸着する。なお、平面シート120は、第1金型151に保持されてもよい。その後、型閉と型締が行われる。
【0056】
図8(B)に示すように、型締時に、第1金型151と第2金型152の間にキャビティ空間153が形成される。キャビティ空間153の一部には、平面シート120が配置されている。平面シート120の周縁121は、金型装置150の壁面154に当接されている。平面シート120の位置ずれが抑制されるので、第2金型152は平面シート120の真空吸着を解除してもよい。
【0057】
図8(C)に示すように、金型装置150が型締された状態で、樹脂の射出が行われる。第1金型151には射出装置のノズル161がタッチされており、ノズル161が溶融した樹脂を射出する。溶融した樹脂が、キャビティ空間153に充填され、固化される。これにより、平面シート120と樹脂部140で構成される成形品110が得られる。
【0058】
その後、型開が行われる。成形品110は、樹脂の固化によって収縮し、第2金型152に抱き着く。従って、型開時に、成形品110は、第2金型152と共にZ軸正方向に移動させられ、第1金型151から抜き取られる。その後、成形品110は、不図示のエジェクタ装置によって第2金型152から突き出され、金型装置150の外部に取り出される。
【0059】
成形品110の製造方法は、金型装置150内に平面シート120を挿入するインサート工程と、インサート工程の後に金型装置150内に樹脂を充填する充填工程と、を有する。インサート工程は、平面シート120の周縁121の一部を金型装置150の壁面154に当接させることで、平面シート120を位置決めさせることを含む。充填工程は、平面シート120の周縁121の残りの少なくとも一部を介して、平面シート120の片面から反対面に樹脂を流し込むことを含む。
【0060】
次に、
図9を参照して、
図7(D)に示す成形品110の変形例について説明する。以下、本変形例と、上記第2実施形態の相違点について主に説明する。
図9に示すように、成形品110の樹脂部140は、平面シート120の周縁121の一部に、
図7(D)に示す充填部141の代わりに、迂回部149を備えてもよい。迂回部149は、平面シート120の片面から反対面に迂回し、樹脂の通路を確保する。
【0061】
平面シート120は、金型装置150の壁面154に当接される周縁121を有する。平面シート120の周縁121を金型装置150の壁面154に当接することで、平面シート120の位置ずれを抑制できる。また、平面シート120の周縁121の一部に迂回部149を形成することで、樹脂の通路を確保できる。
【0062】
迂回部149は、上記の通り、平面シート120の周縁121の一部のみに形成される。これにより、樹脂の通路を確保しつつ、平面シート120の位置ずれを抑制できる。迂回部149は、例えば平面シート120の四隅に設けられる。なお、迂回部149の位置は、平面シート120の四隅には限定されない。また、迂回部149の数は、4つであるが、1つでもよいし、2つ、3つ、又は5つ以上でもよい。迂回部149の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。迂回部149の断面形状は、
図9では四角形であるが、半円形などであってもよく、特に限定されない。
【0063】
迂回部149は、
図9に示すように、第1リング部142と第2リング部143の間に設けられる。平面シート120を挟んで配置される第1リング部142と第2リング部143の間に樹脂の通路を確保でき、第1リング部142と第2リング部143の両方に樹脂を流し込むことができる。
【0064】
樹脂部140は、
図9に示すように、第1リング部142に架け渡される直線部144を備える。各直線部144の一端又は両端(
図9では両端)に、迂回部149が設けられてもよい。溶融した樹脂が第1リング部142に相当する空間に流れ込み始めるのとほぼ同時に、溶融した樹脂が第2リング部143に相当する空間に流れ込み始める。よって、金型装置150内に樹脂を短時間で充填できる。溶融した樹脂は、時間の経過とともに冷却され、固化される。金型装置150内に樹脂を短時間で充填できれば、樹脂を隅々まで充填できる。
【0065】
なお、図示しないが、直線部144は、第1リング部142の代わりに、第2リング部143に架け渡されてもよい。この場合、平面シート120の中央には貫通穴が形成され、その貫通穴に入口部145が設けられる。溶融した樹脂は、入口部145に相当する空間に流れ込んだ後、直線部144に相当する空間を通り、第2リング部143に相当する空間に流れ込む。
【0066】
図9に示す成形品110は、
図10に示す金型装置150を用いて成形される。金型装置150は、樹脂が充填されるキャビティ空間153を形成する壁面154の一部に、平面シート120の周縁121が当接される位置決め部155を備える。位置決め部155には、平面シート120の周縁の一部に、平面シート120の片面から反対面に樹脂を迂回させる溝156が形成される。
【0067】
溝156は、例えば平面シート120の四隅に設けられる。なお、溝156の位置は平面シート120の四隅には限定されない。また、溝156の数は、4つであるが、1つでもよいし、2つ、3つ、又は5つ以上でもよい。溝156の数が多いほど、樹脂の通路の数が多く、大量の樹脂を流すことができる。溝156の断面形状は、
図10では四角形であるが、半円形などであってもよく、特に限定されない。溝156は、溶融した樹脂の通路として使用され、固化した樹脂からなる迂回部149で埋められる。溝156によって、平面シート120の片面から反対面に樹脂を流し込むことができる。
【0068】
以上、本発明に係る成形品、金型装置、及び成形品の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0069】
10 成形品
20 平面シート
21 周縁
22 切り欠き
30 側面シート
40 樹脂部
41 充填部