IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図1
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図2
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図3
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図4
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図5
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図6
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図7
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図8
  • 特開-画像処理装置及び画像処理方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136474
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G06F3/12 342
G06F3/12 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042160
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】西尾 圭太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異なる処理が行われた画像領域が重なることなく記録媒体に画像を印刷する画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】印刷装置を用いて記録媒体60に画像データに基づく印刷を行うための装置である情報処理装置は、画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、異なる処理毎に画像データを複数の画像領域に分け、異なる処理毎に画像領域を複数のジョブレイヤL1~L4に割り当て、複数のジョブレイヤを合成して印刷データを生成する。情報処理装置は、他のジョブレイヤの画像領域と重ならないように、ジョブレイヤに画像領域を割り当てる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置を用いて記録媒体に画像データに基づく印刷を行うための画像処理装置であって、
前記画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、前記異なる処理毎に前記画像データを複数の画像領域に分ける画像領域分割手段と、
前記異なる処理毎に前記画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる割当手段と、
複数の前記ジョブレイヤを合成して印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
を備え、
前記割当手段は、他の前記ジョブレイヤの前記画像領域と重ならないように、前記ジョブレイヤに前記画像領域を割り当てる、
画像処理装置。
【請求項2】
前記ジョブレイヤは、割り当てられた前記画像領域以外の領域にマスク処理が行われる、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
複数の前記ジョブレイヤのうち所定の前記ジョブレイヤを、別途生成された複数の前記ジョブレイヤで置換する、請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記割当手段は、他の前記ジョブレイヤに割り当てられた前記画像領域に重なる前記画像領域を一部の前記ジョブレイヤに割り当てる、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
印刷装置を用いて記録媒体に画像データに基づく印刷を行うための画像処理方法であって、
前記画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、前記異なる処理毎に前記画像データを複数の画像領域に分ける第1工程と、
前記異なる処理毎に前記画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる第2工程と、
複数の前記ジョブレイヤを合成して印刷データを生成する第3工程と、
を有し、
前記第2工程は、他の前記ジョブレイヤの前記画像領域と重ならないように、前記ジョブレイヤに前記画像領域を割り当てる、
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に画像を印刷する場合、画像データに対して種々の処理が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、カラー画像データに基づいて、各カラー画像データの色情報を含む中間データを生成し、この中間データから特色画像データを抽出し、抽出した特色画像データの色情報をプロセスカラーにより表現される色情報に変換する画像処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6098995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、画像データに対する処理として、複数のジョブレイヤを生成する画像処理が行われる場合がある。複数のジョブレイヤを生成する目的の一つには、画像を重ねて印刷する多層印刷を行うことにある。
【0006】
図8,9を参照して、多層印刷について説明する。図8(A)及び図9(A)は、多層印刷に用いるジョブレイヤを示す模式図である。図8(B)及び図9(B)は、多層印刷による成果物、すなわち記録媒体100への印刷状態を示す模式図であり、上面図と上面図におけるA-A’断面の拡大断面図を示す。
【0007】
図8の例では、ジョブレイヤL1及びジョブレイヤL2によって記録媒体100に画像が形成される。ジョブレイヤL1はジョブレイヤL2で示される画像領域の背景を示す。ジョブレイヤL1及びジョブレイヤL2によって形成される画像は、同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0008】
このジョブレイヤL1とジョブレイヤL2とを合成して印刷データを生成し、ジョブレイヤL1、ジョブレイヤL2の順に記録媒体100に画像を印刷する。これにより、図8(B)に示すように、ジョブレイヤL1で形成された画像の上にジョブレイヤL2で形成された画像が重なる。
【0009】
また、図9の例では、記録媒体100が透明メディアである。そして、ジョブレイヤL1~3は記録媒体100に対して同じ位置に形成される画像領域を示すものの、ジョブレイヤL1~L3では色又は画像が異なる。例えば、図9に示されるジョブレイヤL1~L3の例では、画像の輪郭は同じであるものの、ジョブレイヤL1~L3の画像は各々色が異なり、ジョブレイヤL2は白色とされる。
【0010】
このジョブレイヤL1~L3を合成して印刷データを生成し、ジョブレイヤL1、ジョブレイヤL2、ジョブレイヤL3の順に記録媒体100に画像を印刷する。これにより、図9(B)に示すように、記録媒体100に印刷される中央の層が白色層となり、画像が形成された側であるB方向からはジョブレイヤL3によって形成された画像が視認される。一方で、透明メディア側であるC方向からはジョブレイヤL1によって形成された画像が視認される。
【0011】
このように、複数のジョブレイヤを重ねて印刷を行うことで、2.5次元とも表現される盛り上がりのある画像を印刷できたり、記録媒体100として透明メディアを用いることで記録媒体100の両面で異なる画像を表現する印刷ができる。
【0012】
しかしながら、画像が重なって印刷されると、例えば、異なる色(カラーインク)が混ざって記録媒体に定着する場合もあり、また材料が盛り上がって印刷されることが好ましくない場合もある。
【0013】
そこで本発明は、異なる処理が行われた画像領域が重なることなく記録媒体に画像を印刷できる、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様の画像処理装置は、印刷装置を用いて記録媒体に画像データに基づく印刷を行うための画像処理装置であって、前記画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、前記異なる処理毎に前記画像データを複数の画像領域に分ける画像領域分割手段と、前記異なる処理毎に前記画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる割当手段と、複数の前記ジョブレイヤを合成して印刷データを生成する印刷データ生成手段と、を備え、前記割当手段は、他の前記ジョブレイヤの前記画像領域と重ならないように、前記ジョブレイヤに前記画像領域を割り当てる。
【0015】
本構成によれば、画像データに対する異なる処理毎に画像領域を分けて複数のジョブレイヤを生成し、複数のジョブレイヤを合成して印刷データを生成する。ジョブレイヤに割り当てられた画像領域と他のジョブレイヤに割り合てられた画像領域とは、各々が重なり合わない。これにより、本構成は、異なる処理が行われた画像領域が重なることなく記録媒体に画像を印刷できる。
【0016】
上記の画像処理装置において、前記ジョブレイヤは、割り当てられた前記画像領域以外の領域にマスク処理が行われてもよい。本構成によれば、異なる処理が行われた画像が記録媒体上で重なり合うことを、より確実に防止できる。
【0017】
上記の画像処理装置において、複数の前記ジョブレイヤのうち所定の前記ジョブレイヤを、別途生成された複数の前記ジョブレイヤで置換してもよい。本構成によれば、ユーザは所望のジョブレイヤに対して異なる処理を設定できる。
【0018】
上記の画像処理装置において、前記割当手段は、他の前記ジョブレイヤに割り当てられた前記画像領域に重なる前記画像領域を一部の前記ジョブレイヤに割り当ててもよい。本構成によれば、記録媒体に形成される画像に盛り上がりが生じ、装飾性の高い画像を印刷できる。
【0019】
本発明の一態様の画像処理方法は、印刷装置を用いて記録媒体に画像データに基づく印刷を行うための画像処理方法であって、前記画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、前記異なる処理毎に前記画像データを複数の画像領域に分ける第1工程と、前記異なる処理毎に前記画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる第2工程と、複数の前記ジョブレイヤを合成して印刷データを生成する第3工程と、を有し、前記第2工程は、他の前記ジョブレイヤの前記画像領域と重ならないように、前記ジョブレイヤに前記画像領域を割り当てる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、異なる処理が行われた画像領域が重なることなく記録媒体に画像を印刷できる、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の印刷システムの概略構成図である。
図2】本実施形態の情報処理装置及び印刷制御装置に関する機能ブロック図である。
図3】本実施形態の印刷データ生成処理の流れを示すフロ―チャートである。
図4】本実施形態のジョブレイヤ及び記録媒体への印刷状態を示す模式図である。
図5】本実施形態のテキスチャー処理が行われる場合のジョブレイヤ及び記録媒体への印刷状態を示す模式図である。
図6】本実施形態のテキスチャー処理が行われる場合のジョブレイヤ及び記録媒体への印刷状態を示す模式図である。
図7】本実施形態の重ね合せ印刷が行われる場合のジョブレイヤ及び記録媒体への印刷状態を示す模式図である。
図8】従来の多層印刷を示す模式図である。
図9】従来の多層印刷を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の印刷システム10について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の印刷システム10の概略構成図である。印刷システム10は、印刷装置12、印刷制御装置14、及び情報処理装置16を備える。
【0024】
印刷装置12は、一例として、インクジェットヘッドからインク液滴を記録媒体に吐出して記録媒体に画像を形成するインクジェットプリンタである。インクジェットプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等のプロセスカラーインク(以下「カラーインク」という。)を画像データに基づいて吐出し、プラテンに載置された記録媒体に対する印刷を行う。
【0025】
本実施形態の印刷装置12は、記録媒体に対して箔転写印刷が可能なように、箔転写装置を備えてもよい。箔転写印刷を行う場合、印刷装置12は記録媒体の箔転写領域に粘着性インクを吐出する。そして、箔転写装置は粘着性インクが吐出された箔転写領域に箔を転写する。なお、カラーインク及び粘着性インクが吐出された記録媒体は、箔が転写される前に適宜加熱されてもよい。
【0026】
本実施形態のカラーインク及び粘着性インクは、溶剤インクであるが、これに限らず、カラーインク及び粘着性インクはUV(Ultra Violet)インクとしてもよい。また、カラーインクを溶剤インクとし、粘着性インクをUVインクとしてもよい。また、カラーインクをUVインクとし、粘着性インクを溶剤インクとしてもよい。
【0027】
本実施形態では、一例として、粘着性インクを特色として扱い、カラーインクと粘着性インクとを同じインクジェットヘッドから吐出させる。なお、異なる材料のインクを用いて印刷を行う場合には、印刷装置12は、溶剤インクを吐出するインクジェットヘッド、UVインクを吐出するインクジェットヘッドとのように2つ以上のインクジェットヘッドを備えてもよい。
【0028】
印刷制御装置14は、入力された印刷データに基づいて画像を記録媒体に形成するように印刷装置12の制御を行なう。印刷制御装置14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等で構成される。
【0029】
情報処理装置16は、ユーザによって操作されるコンピュータであり、例えば、モニタ、CPU、RAM、ROM、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等で構成される。本実施形態の情報処理装置16は、記録媒体に印刷する画像を示す画像データを生成し、画像データに対して各種処理を行う画像処理装置として機能する。また、情報処理装置16は、画像処理後の画像データに基づいて印刷データを生成して印刷装置12へ送信する。
【0030】
本実施形態の情報処理装置16は、画像データに対する異なる処理(ジョブ)毎に画像領域を分けて複数のジョブレイヤを生成し、複数のジョブレイヤを合成して印刷データを生成する印刷データ生成処理を行う。本実施形態の印刷データ生成処理では、ジョブレイヤの画像領域と他のジョブレイヤの画像領域とが重ならないように、ジョブレイヤに画像領域を割り当てる。これにより、印刷システム10は、異なる処理が行われた画像領域が重なることなく記録媒体に画像を印刷できる。
【0031】
なお、異なる処理とは、異なる材料や手法による印刷である。異なる材料は,例えば、異なる色や、異なる色材(染料と顔料、カラーインクと粘着性インク、又は溶剤インクとUVインク)等である。また、異なる手法は、画像領域に対する異なるデータ変換処理や、異なるインクジェットヘッドによる印刷等である。
【0032】
図2は、本実施形態の情報処理装置16及び印刷制御装置14に関する機能ブロック図である。
【0033】
情報処理装置16は、記憶部20、画像処理設定部22、ジョブレイヤ生成部24、印刷データ生成部26、及び通信部28を備える。
【0034】
記憶部20は、記録媒体に印刷する画像データ等の各種データやプログラムを記憶する。
【0035】
画像処理設定部22は、画像データに対する各種処理の設定を行う。画像処理設定部22は、一般的な画像編集ソフトであってもよく、例えば、画像データに対する色の設定を含む各種処理の設定が行われる。
【0036】
また、画像処理設定部22は、例えば、ユーザによる入力操作に応じて、画像データに箔転写領域を設定してもよい。また、画像処理設定部22では、ユーザの入力操作に応じて箔転写領域に対するテキスチャー処理の設定を行う。テキスチャー処理の詳細は後述する。
【0037】
ジョブレイヤ生成部24は、画像データに対する異なる処理毎にジョブレイヤを生成する。このために本実施形態のジョブレイヤ生成部24は、画像領域分割部32及び割当部34を備える。
【0038】
画像領域分割部32は、画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、異なる処理毎に画像データを複数の画像領域に分ける。
【0039】
割当部34は、異なる処理毎に画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる。なお、割当部34は、他のジョブレイヤに割り当てられた画像領域と重ならないように、ジョブレイヤに画像領域を割り当てる。
【0040】
印刷データ生成部26は、複数のジョブレイヤを合成して、印刷装置12で印刷するためのデータである印刷データを生成する。本実施形態の印刷データ生成部26は、ユーザによって操作される専用のソフトウェアである。印刷データ生成部26は、画像データ(ジョブレイヤ)にRIP(Raster Image Processer)処理を行う。RIP処理は、画像データに対応する色のインクを吐出する吐出位置を指定するラスタ画像を生成する処理であり、C、M、Y、Kなどのカラーインクの各色に対応するグレースケール画像に対するハーフトーン処理を行うことで、その色のインクを吐出する吐出位置を指定するラスタ画像を生成する。
【0041】
このために本実施形態の印刷データ生成部26は、ジョブレイヤ合成部36及びRIP処理部38を備える。
【0042】
ジョブレイヤ合成部36は、複数のジョブレイヤを合成して印刷データとする。
【0043】
RIP処理部38は、ジョブレイヤに対するRIP処理を行う。また、本実施形態のRIP処理部38は、各ジョブレイヤに割り当てられた画像領域以外の領域にマスク処理を行う。
【0044】
通信部28は、印刷制御装置14や他の情報処理装置との間でデータの送受信を行う。なお、本実施形態の通信部28は、印刷データを印刷制御装置14へ送信する。
【0045】
次に印刷制御装置14の機能について説明する。図2に示されるように、印刷制御装置14は、通信部50、インク吐出制御部52、及びローラ駆動制御部54を備える。
【0046】
通信部50は、情報処理装置16との間でデータの送受信を行ない、印刷データを情報処理装置16から受信する。
【0047】
インク吐出制御部52は、印刷データに基づいて記録媒体にカラーインクや粘着性インクを吐出するようにインクジェットヘッドを制御する。
【0048】
ローラ駆動制御部54は、記録媒体を搬送するための各種搬送ローラの回転制御を行なう。
【0049】
なお、印刷装置12が箔転写装置を備えている場合、印刷制御装置14は、記録媒体に吐出されたカラーインクの乾燥及び粘着性インクの増粘を行うためヒーターの温度制御を行なう。
【0050】
次に、図3を参照して、印刷データ生成処理の流れを説明する。
【0051】
まず、ステップS100では、画像処理設定部22が画像データに対する処理の設定を行う。
【0052】
次のステップS102では、画像領域分割部32が画像データを異なる処理毎に複数の画像領域に分ける。
【0053】
次のステップS104では、割当部34が異なる処理毎に分割された画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる。
【0054】
次のステップS106では、RIP処理部38が複数のジョブレイヤに対してRIP処理を行う。なお、このRIP処理において、ジョブレイヤに対してマスク処理が行われる。
【0055】
次のステップS108では、ジョブレイヤ合成部36が複数のジョブレイヤを合成することで、印刷データを生成する。
【0056】
次のステップS110では、印刷データが通信部28を介して印刷制御装置14へ送信される。印刷制御装置14は、受信した印刷データにより示されるジョブレイヤ毎に印刷を行うように印刷装置12を制御する。
【0057】
図4を参照して、画像領域の分割、ジョブレイヤへの割り当て、及びマスク処理を説明する。図4(A)は、情報処理装置16によって生成されたジョブレイヤを示す模式図である。ジョブレイヤL1~L4は、一例として、元となる画像データの異なる色毎に画像領域が分割され、画像領域毎にジョブレイヤが割り当てられたものである。
【0058】
すなわち、ジョブレイヤL1において黒色で塗り潰された領域が、ジョブレイヤL1に割り当てられた画像領域である。また、ジョブレイヤL2において横線のハッチング領域が、ジョブレイヤL2に割り当てられた画像領域である。ジョブレイヤL3において縦線のハッチング領域が、ジョブレイヤL3に割り当てられた画像領域である。ジョブレイヤL4において斜線のハッチング領域が、ジョブレイヤL4に割り当てられた画像領域である。
【0059】
また、ジョブレイヤL1~L4は、割り当てられた画像領域以外の領域はマスク処理される。ジョブレイヤL1~L4において点によるハッチング領域がマスクされた領域である。すなわち、ジョブレイヤL1では黒色で塗り潰された領域以外がマスク処理される。ジョブレイヤL2では横線のハッチング領域以外の領域がマスク処理される。ジョブレイヤL3では縦線のハッチング領域以外の領域がマスク処理される。ジョブレイヤL4では斜線のハッチング領域以外の領域がマスク処理される。
【0060】
そして、マスク処理されたジョブレイヤL1~L4を合成して印刷データが生成され、印刷データに基づいて印刷装置12で記録媒体60に画像が印刷される。なお、印刷装置12は、ジョブレイヤL1、ジョブレイヤL2、ジョブレイヤL3、ジョブレイヤL4の順に画像を記録媒体60に印刷する。
【0061】
図4(B)は、図4(A)のジョブレイヤL1~L4を用いた印刷による成果物、すなわち記録媒体60への印刷状態を示す模式図であり、上面図と上面図におけるA-A’断面の拡大断面図を示す。
【0062】
印刷装置12は、マスク処理が行われたジョブレイヤL1~L4に基づいて、異なる色毎に記録媒体60に印刷を行う。このため、図4(B)に示されるように、各色が互いに重なり合うことなく記録媒体60に印刷が行われる。このように、各ジョブレイヤL1~L4に対してマスク処理を行うことで、異なる処理が行われた画像が記録媒体上で重なり合うことを、より確実に防止できる。
【0063】
なお、図4の例では、ジョブレイヤL1~L4は、各々異なる処理の画像領域が割り当てられているが、これに限らず、異なるジョブレイヤ同士で一部同じ処理の画像領域が割り当てられてもよい。
【0064】
次に、箔転写印刷を行う場合のジョブレイヤについて図5,6を参照して説明する。
【0065】
箔転写印刷において記録媒体60に転写された箔は割れ等の不良が生じる場合がある。この不良の原因は、一定以上の領域全面に粘着性インクを吐出してその全面に箔を転写することにある。そこで、本実施形態の印刷装置12では、箔転写領域に粘着性インクを所定のパターンで吐出することで、パターン状に箔を記録媒体60に転写する。本実施形態のパターンは、一例としてドット状の網点である。パターンとして、ドット状の網点以外に、星形の網点が用いられてもよく、網点に限らず、線を利用したグラデーションや網線等、様々な模様を箔転写で表現するように他のパターン(以下「テキスチャー」という。)が用いられてもよい。以下、箔転写領域に対して所定のパターンで粘着性インクを吐出する処理をテキスチャー処理という。
【0066】
また、本実施形態のテキスチャー処理は、箔転写領域において網点が形成されない隙間に予め設定された色(以下「背景色」という。)をカラーインクによって印刷する。箔転写領域において背景色が印刷されないと、網点間の隙間にはカラーインクが吐出されず、記録媒体60の表面色のままとなる。このため、箔転写領域に背景色が印刷されることで、記録媒体60に印刷される画像の装飾性が高くなる。
【0067】
このように、本実施形態のテキスチャー処理は、箔転写領域に対して、粘着性インクとカラーインクとのように複数の異なる材料による処理を設定する。なお、箔転写領域に対するテキスチャーの設定及び背景色の設定は、情報処理装置16が備える画像処理設定部22によって行われる。
【0068】
本実施形態の印刷システム10は、一例として、テキスチャー処理を行う場合に、複数のジョブレイヤのうち所定のジョブレイヤを、別途生成された複数のジョブレイヤで置換する置換処理を行う。なお、置換処理は、ユーザが置換の対象となるジョブレイヤを選択し、選択したジョブレイヤを別途生成した複数のジョブレイヤで置き換える。これにより、ユーザは、所望のジョブレイヤに対して異なる処理を設定できる。
【0069】
図5の例では、ジョブレイヤL1に箔転写領域が割り当てられる。そして置換処理として、ジョブレイヤL1をジョブレイヤL1-1及びジョブレイヤL1-2に置換する。
【0070】
ジョブレイヤL1-1,L1-2は、共にジョブレイヤL1に割り当てられた箔転写領域に対応している。このジョブレイヤL1-1,L1-2は箔転写領域を示す画像データに基づいて、別途生成される。具体的には、ジョブレイヤL1-1には、網点とされた箔転写領域が割り当てられる。なお、ジョブレイヤL1-1において、網点以外の領域はマスク処理される。すなわち、ジョブレイヤL1-1には、背景色となる画像領域にもマスク処理が行われる。一方、ジョブレイヤL1-2には、背景色となる画像領域が割り当てられる。なお、ジョブレイヤL1-2において、背景色以外の領域はマスク処理される。すなわち、ジョブレイヤL1-2には、網点となる画像領域にもマスク処理が行われる。
【0071】
このような置換処理による箔転写領域の設定によって、図5(B)に示すように、カラーインク及び粘着性インクが重なることなく、記録媒体60に印刷できる。
【0072】
なお、テキスチャー処理を行うためのジョブレイヤは置換処理によって生成されるのではなく、例えば、画像データに対して予め網点(テクスチャー)で粘着性インクを吐出することを設定し、網点の隙間に所定のカラーインクを吐出することを設定してもよい。
【0073】
この形態の場合、図6(A)に示されるように、網点とされた箔転写領域がジョブレイヤL1に割り当てられる。また、箔転写領域において背景色となる画像領域がジョブレイヤL2に割り当てられる。なお、ジョブレイヤL3~L5は各々異なるカラーインクを吐出る処理が行われる画像領域が割り当てられる。
【0074】
これにより、図6(B)に示すように、カラーインク及び粘着性インクが重なることなく、記録媒体60に印刷できる。
【0075】
また、本実施形態の割当部34は、他のジョブレイヤに割り当てられた画像領域に重なる画像領域を一部のジョブレイヤに割り当ててもよい。これにより、記録媒体60に形成される画像に盛り上がりが生じ、装飾性の高い画像を印刷できる。なお、このような印刷を重ね合せ印刷といい、画像処理設定部22によって重ね合わせる画像領域が設定される。
【0076】
図7は、重ね合せ印刷を示す模式図であり、図7(A)は、情報処理装置16によって生成されたジョブレイヤを示す模式図である。図7(A)に示されるように、ジョブレイヤL2の画像領域とその上層となるジョブレイヤL3の画像領域が重なっている。そして、図7(B)の断面図で示されるように、ジョブレイヤL2に基づいて印刷された画像の上に、ジョブレイヤL3に基づいた画像が印刷されるので、記録媒体60に形成される画像には高さ方向に重なりが生じる。
【0077】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
上記実施形態では、印刷装置12をインクジェットプリンタとする形態について説明したが、本発明はこれに限られず、印刷装置12をレーザープリンタ等の他のプリンタとしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、各ジョブレイヤに対してマスク処理を行う形態について説明したが、本発明はこれに限られず、ジョブレイヤに対してマスク処理を行わない形態としてもよい。
【0080】
(実施形態の効果)
(1)本実施形態の情報処理装置16は、印刷装置12を用いて記録媒体60に画像データに基づく印刷を行うための情報処理装置であって、画像データに対して複数の異なる処理によって印刷を行うために、異なる処理毎に画像データを複数の画像領域に分ける画像領域分割部32と、異なる処理毎に画像領域を複数のジョブレイヤに割り当てる割当部34と、複数のジョブレイヤを合成して印刷データを生成する印刷データ生成部26と、を備え、割当部34は、他のジョブレイヤの画像領域と重ならないように、ジョブレイヤに画像領域を割り当てる。
【0081】
本実施形態によれば、画像データに対する異なる処理毎に画像領域を分けて複数のジョブレイヤを生成し、複数のジョブレイヤを合成して印刷データを生成する。ジョブレイヤに割り当てられた画像領域と他のジョブレイヤに割り合てられた画像領域とは、各々が重なり合わない。これにより、本構成は、異なる処理が行われた画像領域が重なることなく記録媒体60に画像を印刷できる。
【0082】
(2)本実施形態のジョブレイヤは、割り当てられた画像領域以外の領域にマスク処理が行われる。本実施形態によれば、異なる処理が行われた画像が記録媒体60上で重なり合うことを、より確実に防止できる。
【0083】
(3)本実施形態の情報処理装置16は、複数のジョブレイヤのうち所定のジョブレイヤを、別途生成された複数のジョブレイヤで置換する。本構成によれば、ユーザは所望のジョブレイヤに対して異なる処理を設定できる。
【0084】
(4)本実施形態の割当部34は、他のジョブレイヤに割り当てられた画像領域に重なる画像領域を一部のジョブレイヤに割り当てる。本実施形態によれば、記録媒体60に形成される画像に盛り上がりが生じ、装飾性の高い画像を印刷できる。
【符号の説明】
【0085】
12 印刷装置
16 情報処理装置(画像処理装置)
26 印刷データ生成部(印刷データ生成手段)
32 画像領域分割部(画像領域分割手段)
34 割当部(割当手段)
60 記録媒体(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9