(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136487
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】変性液状ジエン系ポリマー及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 36/04 20060101AFI20230922BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20230922BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20230922BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08F36/04
C08C19/25
C08L15/00
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042182
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】上西 和也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC111
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GN01
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100BA63H
4J100BA77H
4J100CA01
4J100CA27
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA35
4J100HA61
4J100HC75
4J100HC78
4J100HD08
4J100HE14
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】シリカ吸着性に優れるジエン系ポリマー及び上記ジエン系ポリマーを含有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が500~50,000である、変性液状ジエン系ポリマー。
式(1)中、Xは、炭素数1~12のアルキレン基、炭素数2~12のアルケニレン基、又は、炭素数6~12の芳香族基を表し、A
1、A
2、A
3、Y及びZは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基又は水酸基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が500~50,000である、変性液状ジエン系ポリマー。
【化1】
式(1)中、Xは、炭素数1~12のアルキレン基、炭素数2~12のアルケニレン基、又は、炭素数6~12の芳香族基を表し、A
1、A
2、A
3、Y及びZは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基又は水酸基を表す。
【請求項2】
粘度が、2,000Pa・s以上である、請求項1に記載の変性液状ジエン系ポリマー。
【請求項3】
前記変性液状ジエン系ポリマーを構成するジエンが、1,3-ブタジエン又はイソプレンである、請求項1又は2に記載の変性液状ジエン系ポリマー。
【請求項4】
前記変性液状ジエン系ポリマーを構成するモノマーが、ジエン以外のモノマーとして芳香族ビニルを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性液状ジエン系ポリマー。
【請求項5】
ゴム100質量部と、シリカ5~200質量部と、請求項1~4のいずれか1項に記載の変性液状ジエン系ポリマー1~50質量部とを含有する、ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性液状ジエン系ポリマー及びゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ等と相互作用することでその分散性を向上させるジエン系ポリマーが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らが特許文献1に記載のジエン系ポリマーについて検討したところ、様々な用途への応用を考えると、シリカ吸着性のさらなる向上が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、シリカ吸着性に優れるジエン系ポリマー及び上記ジエン系ポリマーを含有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ケイ素原子及びリン原子を有する特定の化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子が500~50,000である、変性液状ジエン系ポリマーによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) 後述する式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が500~50,000である、変性液状ジエン系ポリマー。
(2) 粘度が、2,000Pa・s以上である、上記(1)に記載の変性液状ジエン系ポリマー。
(3) 上記変性液状ジエン系ポリマーを構成するジエンが、1,3-ブタジエン又はイソプレンである、上記(1)又は(2)に記載の変性液状ジエン系ポリマー。
(4) 上記変性液状ジエン系ポリマーを構成するモノマーが、ジエン以外のモノマーとして芳香族ビニルを含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の変性液状ジエン系ポリマー。
(5) ゴム100質量部と、シリカ5~200質量部と、上記(1)~(4)のいずれかに記載の変性液状ジエン系ポリマー1~50質量部とを含有する、ゴム組成物。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、シリカ吸着性に優れるジエン系ポリマー及び上記ジエン系ポリマーを含有するゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】特定変性ポリマー1の
31P NMR(核磁気共鳴)スペクトルである。
【
図2】特定変性ポリマー1の
1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の変性液状ジエン系ポリマーについて説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について量とは、特段の断りが無い限り、合計の量を指す。
また、本明細書において、炭化水素基(アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基中のアルキル基等)は、ヘテロ原子を有していてもよく、その形状(直鎖状、分岐状、環状)は特に限定されない。
また、本明細書において、シリカ吸着性に優れ、また、ゴム組成物に用いたときにシリカ分散性、低発熱性、耐摩耗性、WET性能、氷上性能、機械的特性が優れることを、「本発明の効果等が優れる」とも言う。
【0011】
[1]特定変性ポリマー
本発明の変性液状ジエン系ポリマー(以下、「特定変性ポリマー」とも言う)は、
後述する式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が500~50,000である、変性液状ジエン系ポリマーである。
【0012】
特定変性ポリマーはこのような構成をとるため所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、ホスフィンオキシドがシリル基とシリカのシラノール基との反応の触媒として作用することによって、シリカに対して極めて優れた吸着性を発現することが推測される。
【0013】
[骨格]
特定変性ポリマーの骨格(主鎖構造)は、ジエン系ポリマーであれば特に制限されない。
ジエン系ポリマーとは、ジエンを含むモノマーの重合体である。ジエン系ポリマーは、単独重合体(ホモポリマー)であっても、共重合体(コポリマー)であってもよいが、本発明の効果等がより優れる理由から、単独重合体であることが好ましい。
【0014】
〔ジエン〕
上記ジエンの具体例としては、ブタジエン(特に1,3-ブタジエン)、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。上記ジエンは、本発明の効果等がより優れる理由から、ブタジエン(特に1,3-ブタジエン)又はイソプレンであることが好ましく、ブタジエン(特に1,3-ブタジエン)であることがより好ましい。
【0015】
〔ジエン以外のモノマー〕
上記ジエンを含むモノマーは、ジエン以外のモノマーを含んでいてもよい。
上記ジエン以外のモノマーとしては特に制限されないが、芳香族ビニル(好ましくは、スチレン)、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブテン(好ましくは、イソブチレン)等が挙げられる。上記ジエン以外のモノマーは、本発明の効果等がより優れる理由から、芳香族ビニルが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0016】
〔含有量〕
上記ジエン系ポリマーを構成する全モノマー中のジエンの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上記全モノマー中のジエンの含有量は特に制限されず、100質量%である。
【0017】
上記ジエンを含むモノマーが、ジエン以外のモノマーとして芳香族ビニルを含む場合、上記ジエン系ポリマーを構成する全モノマー中のジエンの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、10~99質量%であることが好ましく、30~95質量%であることがより好ましく、50~90質量%であることがさらに好ましく、60~80質量%であることが特に好ましい。
また、上記ジエンを含むモノマーが、ジエン以外のモノマーとして芳香族ビニルを含む場合、上記ジエン系ポリマーを構成する全モノマー中の芳香族ビニルの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~90質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることがさらに好ましく、20~40質量%であることが特に好ましい。
【0018】
〔具体例〕
上記ジエン系ポリマーの具体例としては、ブタジエン重合体(BR)、イソプレン重合体(IR)、クロロプレン重合体(CR)、イソプレン-ブタジエン共重合体(IBR)、ブタジエン-スチレン共重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、イソブチレン-イソプレン共重合体等が挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、BR、IR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましく、BRがさらに好ましい。
【0019】
〔好適な態様〕
上記ジエン系ポリマーを構成するジエンは、本発明の効果がより優れる理由から、1,3-ブタジエン又はイソプレンであることが好ましく、1,3-ブタジエンであることがより好ましい。
【0020】
[末端]
上述のとおり、特定変性ポリマーは、下記式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有する。なお、通常、特定変性ポリマーは、式(1)中のA1、A2、A3、Y及びZのいずれかが骨格のジエン系ポリマーによって置換された構造を有する。
特定変性ポリマーは、式(1)で表される化合物に由来する構造を、1つの末端にのみ有するのでも、複数の末端に有するのでも構わない。
【0021】
〔式(1)で表される化合物〕
【0022】
【0023】
式(1)中、Xは、炭素数1~12のアルキレン基、炭素数2~12のアルケニレン基、又は、炭素数6~12の芳香族基を表し、A1、A2、A3、Y及びZは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基又は水酸基を表す。
【0024】
<X>
上述のとおり、式(1)中、Xは、炭素数1~12のアルキレン基、炭素数2~12のアルケニレン基、又は、炭素数6~12の芳香族基を表す。Xは、本発明の効果等がより優れる理由から、炭素数1~12のアルキレン基であることが好ましい。
【0025】
<A1、A2、A3>
上述のとおり、式(1)中、A1、A2及びA3は、それぞれ独立に、アルキル基(特に炭素数1~12)、アルコキシ基(特に炭素数1~12)又は水酸基を表す。A1、A2及びA3は、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましいい。A1、A2及びA3のうち少なくとも1つは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。
【0026】
<Y、Z>
上述のとおり、式(1)中、Y及びZは、それぞれ独立に、アルキル基(特に炭素数1~12)、アルコキシ基(特に炭素数1~12)又は水酸基を表す。Y及びZは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましいい。Y及びZのうち少なくとも一方は、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。
【0027】
[分子量]
上述のとおり、特定変性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500~50,000である。上記Mwは、本発明の効果等がより優れる理由から、1,000~30,000であることが好ましく、10,000~20,000であることがより好ましい。
【0028】
また、特定変性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果等がより優れる理由から、500~50,000であることが好ましく、1,000~30,000であることがより好ましく、10,000~20,000であることがさらに好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0030】
[粘度]
特定変性ポリマーの粘度は、本発明の効果等がより優れる理由から、2,000Pa・s以上であることが好ましい。上記粘度の上限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100,000Pa・s以下であることが好ましく、10,000Pa・s以下であることがより好ましい。
【0031】
なお、本明細書において、粘度は、JIS K5600-2-3に準じて、コーンプレート型粘度計を用いて40℃の条件下で測定したものとする。
【0032】
[変性率]
特定変性ポリマーの変性率は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01~10モル%であることが好ましく、0.1~5.0モル%であることがより好ましく、1.0~4.0モル%であることがさらに好ましく、2.0~3.0モル%であることが特に好ましい。
なお、上記変性率とは、全繰り返し単位に対する、式(1)で表される化合物に由来する構造の割合(モル%)を表す。
【0033】
[製造方法]
特定変性ポリマーを製造する方法は特に制限されないが、得られる特定変性ポリマーについて本発明の効果等がより優れる理由から、下記重合工程と、下記末端変性工程とを備える方法が好ましい。なお、以下、得られる特定変性ポリマーについて本発明の効果等が優れることを、単に「本発明の効果等が優れる」とも言う。
(1)重合工程
ジエンを含むモノマーをアニオン重合によって重合することで、活性末端を有するジエン系ポリマーを得る工程
(2)末端変性工程
上記重合工程で得られた活性末端を有するジエン系ポリマーと、式(1)で表される化合物とを反応させることで、式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が500~50,000である変性液状ジエン系ポリマー(特定変性ポリマー)を得る工程
【0034】
以下、各工程について詳述する。
【0035】
〔重合工程〕
重合工程は、ジエンを含むモノマーをアニオン重合によって重合することで、活性末端(アニオン種)を有するジエン系ポリマーを得る工程である。
【0036】
<モノマー>
重合工程で用いられるジエンを含むモノマーの具体例及び好適な態様は、上述した特定変性ポリマーの骨格と同じである。
【0037】
<アニオン重合>
アニオン重合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合であることが好ましい。
【0038】
(有機リチウム化合物)
有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましく、n-ブチルリチウムがより好ましい。
【0039】
有機リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上記モノマーに対して、0.001~10モル%であることが好ましい。
【0040】
<活性末端を有するジエン系ポリマー>
重合工程で得られる活性末端を有するジエン系ポリマーの好適な範囲は、上述した特定変性ポリマーの骨格と同じである。また、上記活性末端を有するジエン系ポリマーの分子量及び粘度の好適な範囲は、上述した特定変性ポリマーと同じである。
【0041】
〔末端変性工程〕
末端変性工程は、上述した重合工程で得られた活性末端を有するジエン系ポリマーと、式(1)で表される化合物とを反応させることで、式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が500~50,000である変性液状ジエン系ポリマー(特定変性ポリマー)を得る工程である。式(1)で表される化合物は求電子性を有するため、活性末端を有するジエン系ポリマーの停止剤(求電子剤)として働く。
【0042】
<式(1)で表される化合物>
式(1)で表される化合物については上述のとおりである。
【0043】
[用途]
特定変性ポリマーは、シリカを含有する組成物(特にゴム組成物(タイヤ用、コンベアベルト用、ホース用等、特にタイヤ用))に有用である。
【0044】
[2]ゴム組成物
本発明のゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ゴム100質量部と、シリカ5~200質量部と、上述した変性液状ジエン系ポリマー(特定変性ポリマー)1~50質量部とを含有する、ゴム組成物である。
【0045】
[ゴム]
上述のとおり、本発明の組成物はゴムを含有する。
上記ゴムは特に制限されない。ただし、上記ゴムに上述した特定変性ポリマーは含まれない。
【0046】
上記ゴムは、本発明の効果等がより優れる理由から、ジエン系ゴムであることが好ましい。
上記ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
上記ゴムは、本発明の効果等がより優れる理由から、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0047】
〔分子量〕
【0048】
<重量平均分子量>
上記ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50,000超であることが好ましく、100,000~10,000,000であることがより好ましく、200,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0049】
<数平均分子量>
上記ゴムの数平均分子量(Mn)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50,000~5,000,000であることが好ましく、100,000~1,000,000であることがより好ましい。
【0050】
[シリカ]
上述のとおり、本発明の組成物はシリカを含有する。
上記シリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0051】
〔CTAB〕
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積(以下、「CTAB吸着比表面積」を単に「CTAB」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、150~200m2/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0052】
〔含有量〕
本発明の組成物において、シリカの含有量は、上述したゴム100質量部に対して、5~200質量部である。上記シリカの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム100質量部に対して、10~150質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
【0053】
[特定変性ポリマー]
上述のとおり、本発明の組成物は上述した上述した変性液状ジエン系ポリマー(特定変性ポリマー)を含有する。特定変性ポリマーについては上述のとおりである。なお、本発明の組成物において、特定変性ポリマーはシリカ分散剤として働くものと考えらえる。
【0054】
〔含有量〕
本発明の組成物において、特定変性ポリマーの含有量は、上述したゴム100質量部に対して、1~50質量部である。上記特定変性ポリマーの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム100質量部に対して、2~10質量部であることが好ましい。
【0055】
本発明の組成物において、特定変性ポリマーの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0056】
[任意成分]
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(好ましくは、カーボンブラック)、シランカップリング剤、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤(促進剤)、加硫活性剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0057】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
【0058】
シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果等がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0059】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0061】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
<含有量>
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0063】
また、本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して、1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0064】
〔カーボンブラック〕
本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
【0065】
<N2SA>
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0066】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、上述したゴム100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0067】
[用途]
本発明の組成物は、例えば、タイヤ、コンベアベルト、ホース、防振材、ゴムロール、鉄道車両の外幌等に好適に用いられる。特に、タイヤ(特にトレッド)に好適に用いられる。
【実施例0068】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
[ジエン系ポリマーの合成]
以下のとおり、各ジエン系ポリマーを合成した。
【0070】
〔特定変性ポリマー1〕
以下のとおり、特定変性ポリマー1を合成した。
【0071】
<重合工程>
シクロヘキサンに1,3-ブタジエン1150mL、n-ブチルリチウム100mL、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを添加し加熱攪拌(60℃、24時間)して、活性末端を有するブタジエンポリマーを得た。
【0072】
<末端変性工程>
次いで、停止剤(求電子剤)として3-(トリエトキシシリル)プロピルホスホン酸ジエチル(下記式(1a)で表される化合物)(式(1)で表される化合物、ただし、式(1)中、Xは、プロプレン基を表し、A1、A2、A3、Y及びZは、エトキシ基を表す)(100mL)を添加して重合を停止した。重合溶液を多量のメタノールに添加し精製を行い、50℃で24時間真空乾燥を行った。
【0073】
【0074】
その結果、式(1a)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が15,000である、液状ブタジエンポリマーが得られた。得られた液状ブタジエンポリマーを「特定変性ポリマー1」とも言う。特定変性ポリマー1の粘度は、2000Pa・s、変性率は、2.3モル%であった。特定変性ポリマー1の
31P NMR(核磁気共鳴)スペクトル及び
1H NMRスペクトルを
図1~2に示す。
【0075】
〔特定変性ポリマー2〕
重合工程において、n-ブチルリチウムの量を減らした点以外は、上述した特定変性ポリマー1と同様の手順に従って、ブタジエンポリマーを得た。
【0076】
得られたブタジエンポリマーは、式(1a)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が40,000である、液状ブタジエンポリマーであった。得られた液状ブタジエンポリマーを「特定変性ポリマー2」とも言う。特定変性ポリマー2の粘度は4000Pa・s、変性率は、0.9モル%であった。
【0077】
〔未変性ポリマー〕
末端変性工程において、3-(トリエトキシシリル)プロピルホスホン酸ジエチルの代わりにメタノールを用いた点以外は、上述した特定変性ポリマー1と同様の手順に従って、ブタジエンポリマーを得た。
【0078】
得られたブタジエンポリマーは、末端が変性されていない、重量平均分子量が15,000である、液状ブタジエンポリマーであった。得られた液状ブタジエンポリマーを「未変性ポリマー」とも言う。
【0079】
〔比較変性ポリマー1〕
重合工程において、n-ブチルリチウムの量をさらに減らした点以外は、上述した特定変性ポリマー2と同様の手順に従って、ブタジエンポリマーを得た。
【0080】
得られたブタジエンポリマーは、式(1a)で表される化合物に由来する構造を末端に有し、重量平均分子量が100,000である、固体状のブタジエンポリマーであった。得られたブタジエンポリマーを「比較変性ポリマー1」とも言う。比較変性ポリマー1の粘度は、6000Pa・s、変性率は、0.3モル%であった。
【0081】
〔比較変性ポリマー2〕
末端変性工程において、3-(トリエトキシシリル)プロピルホスホン酸ジエチルの代わりにメチルトリエトキシシランを用いた点以外は、上述した特定変性ポリマー1と同様の手順に従って、ブタジエンポリマーを得た。
【0082】
得られたブタジエンポリマーは、メチルジエトキシシリル基を末端に有し、重量平均分子量が15,000である、液状ブタジエンポリマーであった。得られた液状ブタジエンポリマーを「比較変性ポリマー2」とも言う。
【0083】
[シリカ吸着性率]
キシレン15g中に、得られたジエン系ポリマー1.5g、シリカ3.0gを溶解させ、140℃、20分加熱攪拌した。その後濾過、回収し、80℃、24時間真空乾燥を行い、質量(最終質量)を測定した。そして、以下の計算式によってシリカ吸着率を求めた。
(シリカ吸着率)=(最終質量-評価に用いたシリカの質量)/(評価に用いたジエン系ポリマーの質量)×100(単位は%)
結果を下記表1に示す。シリカ吸着率が大きい程、シリカ吸着性に優れることを意味する。実用上、10%以上であることが好ましい。
【0084】
【0085】
表1から分かるように、末端が変性されていない液状ジエン系ポリマーである、未変性ポリマーと比較して、式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有し重量平均分子量が500~50,000である変性液状ジエン系ポリマー(特定変性ポリマー)である、特定変性ポリマー1~2は、優れたシリカ吸着性を示した。なかでも、重量平均分子量が30,000以下である特定変性ポリマー1は、より優れたシリカ吸着性を示した。
式(1)で表される化合物に由来する構造を末端に有するが重量平均分子量が50,000を超える変性液状ジエン系ポリマーである、比較変性ポリマー1、及び、重量平均分子量が500~50,000であるがメチルトリエトキシシラン(式(1)で表される化合物以外の化合物)に由来する構造を末端に有する変性液状ジエン系ポリマーである、比較例変性ポリマー2は、シリカ吸着性が不十分であった。
【0086】
[ゴム組成物の調製]
下記表2に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、まず、下記表2に示される成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに加硫促進剤及び硫黄を混合し、ゴム組成物を得た。なお、表2中、SBRの質量部はゴムの正味の量(オイルを除いた量)である。
【0087】
[評価]
得られたゴム組成物について以下の評価を行った。
【0088】
〔ペイン効果〕
得られたゴム組成物(未加硫)について、歪せん断応力測定機(RPA2000、α-テクノロジー社製)により、歪0.28%の歪せん断弾性率G′と歪30.0%の歪せん断弾性率G′とを測定し、その差G′0.28(MPa)-G′30.0(MPa)からペイン効果(未加硫)を求めた。
また、得られたゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製し、得られた加硫ゴムシートについて同様の測定を行い、ペイン効果(加硫後)を求めた。
結果を表2に示す。結果は比較例1を100とするとする指数で表した。指数が小さいほどシリカ分散性に優れることを意味する。
【0089】
〔tanδ(60℃)〕
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。
結果を表2に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど低発熱性に優れることを意味する。
【0090】
【0091】
表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:TUFDENE E581(SBR、ガラス転移温度:-36℃、スチレン含有量:35.6質量%、ビニル結合量:41.3%、油展品(油展量:37.5質量%)、旭化成ケミカルズ社製)
・BR:NIPOL BR1220(BR、日本ゼオン社製)
・特定変性ポリマー1~2:上述のとおり合成した特定変性ポリマー1~2
・未変性ポリマー:上述のとおり合成した未変性ポリマー
・比較変性ポリマー1~2:上述のとおり合成した比較変性ポリマー1~2
・シリカ:ZEOSIL 1165MP(CTAB吸着比表面積:159m2/g、ローディア社製)
・シランカップリング剤:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグッサ社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・プロセスオイル:プロセスオイル
・老化防止剤:アミン系老化防止剤(フレキシス社製、サントフレックス6PPD)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛
・加硫促進剤(DPG):1,3-ジフェニルグアニジン(ノクセラーDPG、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤(CZ):N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ-G、大内新興化学工業社製)
・硫黄:硫黄
【0092】
表2から分かるように、特定変性ポリマーを含有しない比較例1~4と比較して、特定変性ポリマーを含有する実施例1~2は、優れた、シリカ分散性及び低発熱性を示した。