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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136489
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ブレース構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E04B1/58 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042188
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】507011611
【氏名又は名称】株式会社進富
(71)【出願人】
【識別番号】516152952
【氏名又は名称】構法開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129849
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】大西 克則
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB05
2E125AC15
2E125BB02
2E125CA06
(57)【要約】
【課題】製造コストの上昇を抑制できるとともに、圧縮側のブレースの支点間隔を短くしつつ圧縮力に抵抗できるブレース構造を提供する。
【解決手段】矩形フレーム10の一対の対角線L1,L1に沿ってX形に配置された4本のブレース20と、ブレース20の交差部で前記ブレースをピン接合する連結部材とを備えたブレース構造1である。ブレース20は、一端部が連結部材30に接合され、他端部が矩形フレーム10の角部に設けられた取付プレート13に接合されており、ブレース20と連結部材30との接合中心と、ブレース20と取付プレート13との接合中心は、対角線L1上に配置されており、連結部材30および取付プレート13の引張強度は、ブレース20の引張強度以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形フレームの一対の対角線に沿ってX形に配置された4本のブレースと、前記ブレースの交差部で前記ブレースをピン接合する連結部材とを備えたブレース構造であって、
前記ブレースは、一端部が前記連結部材に接合され、他端部が前記矩形フレームの角部に設けられた取付プレートに接合されており、
前記ブレースと前記連結部材との接合中心と、前記ブレースと前記取付プレートとの接合中心は、前記対角線上に配置されており、
前記連結部材および前記取付プレートの引張強度は、前記ブレースの引張強度以上である
ことを特徴とするブレース構造。
【請求項2】
前記ブレースは、所定の間隔をあけて背中合わせに配置された一対の溝形鋼と、一対の前記溝形鋼の背面間に介設されたスペーサとを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のブレース構造。
【請求項3】
一対の前記溝形鋼の一端部は前記取付プレートを挟持し、
一対の前記溝形鋼の他端部は前記連結部材を挟持しており、
前記スペーサの厚さ寸法は、前記取付プレートの厚さ寸法の厚さ寸法より大きく、且つ前記連結部材の厚さ寸法より大きい
ことを特徴とする請求項2に記載のブレース構造。
【請求項4】
前記ブレースは、所定の間隔をあけて背中合わせに配置された一対の溝形鋼と、一対の前記溝形鋼の側面間に掛け渡された複数の接続板とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のブレース構造。
【請求項5】
一対の前記溝形鋼の一端部の背面には所定の厚さの挟持プレートがそれぞれ設けられ、前記挟持プレートを介して前記取付プレートが挟持され、
一対の前記溝形鋼の他端部の背面には所定の厚さの挟持プレートがそれぞれ設けられ、前記挟持プレートを介して前記連結部材が挟持されており、
一対の前記溝形鋼の長手方向中間部の離間距離は、一対の前記溝形鋼の長手方向両端部の離間距離より大きい
ことを特徴とする請求項4に記載のブレース構造。
【請求項6】
前記連結部材の図芯は、前記ブレースの軸線の延長線上に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブレース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造にはラーメン構造とブレース構造があり、プランに応じて適宜選択されて構造計画されている。ブレース構造は引張ブレースをX状に構成するのが一般的で、水平力に対して伸びる側のブレースが機能して、縮む側のブレースは機能しない。X状の鉛直ブレースでは支点間隔が長いので、圧縮力に機能するにはブレース断面の強化(大型化)が必要になる。また、支点間隔を短くするため、X状の鉛直ブレースを分割する方法も考えられる。いずれもX状の交差部の芯ズレ対策方法などが課題なので、X状ではなく筋交い状の単一斜材として圧縮力および引張力ともに機能する方法がとられている。さらに、ブレースの中間部に可撓性の連結部材を介設することで、圧縮側のブレースの座屈を抑制するX状の鉛直ブレースもあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のブレース構造は、柱と梁で構成される矩形フレームの対角線上でX形に配置されたブレースの交差部(中央部)に連結部材が設けられている。連結部材は、低降伏点鋼などの鋼製の可撓性筒状体を備えて構成されており、変形可能となっている。このブレース構造に振動エネルギー(水平外力)が作用すると、連結部材が塑性変形し、振動エネルギーを吸収する。連結部材の筒状体は、引張り側のブレースからの荷重を受けて引張り方向に伸ばされて楕円形に変形する。他方、引張り方向と交差する方向(縮む側)では、筒状体が潰される方向に変形する。縮む側のブレースは、筒状体の変形に追従して引っ張られるので座屈を起こし難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-131860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X状の鉛直ブレースを分割して複数段設けるブレース構造や、ブレースの断面を強化するブレース構造では、部材点数や接合箇所が増加したり、ブレースの断面が大きくなることで、製造コストが上昇する問題があった。
ところで、近年では、圧縮側のブレースで圧縮力に抵抗することで制振性能を向上させることが注目されているが、特許文献1のブレース構造は、連結部材を積極的に変形させることで、圧縮側のブレースに引張力を作用させることで圧縮ブレースに圧縮力がかからないため座屈し難くするものであって、圧縮力に抵抗させるものではない。
【0006】
そこで、本発明は、製造コストの上昇を抑制できるとともに、圧縮側のブレースの支点間隔を短くしつつ圧縮力に抵抗できるブレース構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明は、矩形フレームの一対の対角線に沿ってX形に配置された4本のブレースと、前記ブレースの交差部で前記ブレースをピン接合する連結部材とを備えたブレース構造であって、前記ブレースは、一端部が前記連結部材に接合され、他端部が前記矩形フレームの角部に設けられた取付プレートに接合されており、前記ブレースと前記連結部材との接合中心と、前記ブレースと前記取付プレートとの接合中心は、前記対角線上に配置されており、前記連結部材および前記取付プレートの引張強度は、前記ブレースの引張強度以上であることを特徴とするブレース構造である。
【0008】
本発明におけるピン接合とは、曲げ応力を伝達しない接合であって、剛接合とは異なるものである。また、本発明における接合中心とは、ブレースと連結部材との接合点、またはブレースと取付プレートとの接合点の重心位置を言う。接合点が一つの場合は、当該接合点が接合中心となり、接合点が複数ある場合には、各接合点の重心位置が接合中心となる。本発明のブレース構造によれば、矩形フレームに水平力が作用した際に、一方の対角線に沿ったブレースが引張ブレースとなり、連結部材が引張ブレースに引っ張られる。このとき、連結部材は、引張ブレースにより対角線に沿った直線方向に引っ張られるので、面外方向への移動が拘束される。さらに、連結部材の引張強度は、ブレースの引張強度以上であるので、連結部材は変形しない板状の部材である。また、連結部材は、対角線上にブレースと接合して引っ張られるので回転しない。よって、連結部材に接合されっている圧縮ブレースの接合点は、面内・面外ともに移動が拘束される支点になるので、圧縮ブレースの支点間の長さは、連結部材と取付プレートとの間隔寸法(全対角長さの1/2)になる。したがって、対角線全体にかける従来の圧縮ブレースより小さく、1/2の長さになるので、圧縮力への抵抗が大きくなる。これにより、ブレースは圧縮力と引張力の両方に抵抗することができる。よって、製造コストの上昇を抑制しつつ、圧縮力による偏心座屈を防止できるので耐震性能を向上させることができる。
【0009】
本発明のブレース構造においては、前記ブレースは、所定の間隔をあけて背中合わせに配置された一対の溝形鋼と、一対の前記溝形鋼の背面間に介設されたスペーサとを備えているものが好ましい。このような構成によれば、溝形鋼を用いることで圧縮ブレースが面外方向に圧縮座屈し難くなり、また、溝形鋼が所定の間隔をあけて背中合わせに配置されることで、弱軸寸法が広くなり、断面二次半径が大きくなる。これによって、ブレースの軽量化を図りつつ、断面を強化することができる。
【0010】
また、本発明のブレース構造においては、一対の前記溝形鋼の一端部は前記取付プレートを挟持し、一対の前記溝形鋼の他端部は前記連結部材を挟持しており、前記スペーサの厚さ寸法は、前記取付プレートの厚さ寸法の厚さ寸法より大きく、且つ前記連結部材の厚さ寸法より大きいものが好ましい。このような構成によれば、ブレースの中間部が厚くなり、中間部の断面性能(断面二次半径)が大きくなる。ブレースに圧縮力が作用した際にはブレースの中間部に最も大きな曲げ力がかかるが、中間部の断面性能を大きくすることで、効果的な座屈防止が達成される。また、溝形鋼で連結部材と取付プレートを挟持しているので、少ない数の接合ボルトで軸力を伝達することができる。
【0011】
本発明のブレース構造においては、前記ブレースは、所定の間隔をあけて背中合わせに配置された一対の溝形鋼と、一対の前記溝形鋼の側面間に掛け渡された複数の接続板とを備えているものが好ましい。このような構成によれば、溝形鋼を用いることで圧縮ブレースが面外方向に圧縮座屈し難くなり、また、溝形鋼が所定の間隔をあけて背中合わせに配置されることで、弱軸寸法が広くなり、断面二次半径が大きくなる。これによって、ブレースの軽量化を図りつつ、断面を強化することができる。
【0012】
また、本発明のブレース構造においては、一対の前記溝形鋼の一端部の背面には所定の厚さの挟持プレートがそれぞれ設けられ、前記挟持プレートを介して前記取付プレートが挟持され、一対の前記溝形鋼の他端部の背面には所定の厚さの挟持プレートがそれぞれ設けられ、前記挟持プレートを介して前記連結部材が挟持されており、一対の前記溝形鋼の長手方向中間部の離間距離は、一対の前記溝形鋼の長手方向両端部の離間距離より大きいものが好ましい。このような構成によれば、ブレースの中間部が厚くなり、中間部の断面性能(断面二次半径)が大きくなる。ブレースに圧縮力が作用した際にはブレースの中間部に最も大きな曲げ力がかかるが、中間部の断面性能を大きくすることで、効果的な座屈防止が達成される。また、溝形鋼の両端部に挟持プレートが設けられているので、溝形鋼の背面に作用する応力を挟持プレートに分散でき、背面の変形を抑制できる。
【0013】
さらに、本発明のブレース構造においては、前記連結部材の図芯は、前記ブレースの軸線の延長線上に位置しているものが好ましい。このような構成によれば、ブレースと連結部材が直線状に配置され、連結部材の回転を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレース構造によれば、製造コストの上昇を抑制できるとともに、圧縮側のブレースの支点間隔を短くし、圧縮力がかかるブレースに合理的に圧縮力を負担させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係るブレース構造を示した側面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るブレース構造を示した拡大側面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】(a)~(c)は、本発明の実施形態に係るブレース構造の設置手順を説明するための側面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係るブレース構造を示した拡大側面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るブレース構造のブレースを示した図であって、(a)は側面図、(b)は図6のVII線矢視図、(c)は端面図である。
図8図6のIIX-IIX線断面図である。
図9図6のIX-IX線断面図である。
図10】本発明の実施形態の変形例に係るブレース構造を示した拡大側面図である。
図11】本発明の第三実施形態に係るブレース構造を示した側面図である。
図12図11のXII-XII線断面図である。
図13図11のXIII-XIII線矢視図である。
図14】本発明の第四実施形態に係るブレース構造を示した側面図である。
図15】本発明の第五実施形態に係るブレース構造を示した側面図である。
図16】本発明の第五実施形態に係るブレース構造の横材と縦材との接合部分を示した図であって、(a)は一部断面平面図、(b)は側面図、(c)は一部断面側面図である。
図17】本発明の第五実施形態に係るブレース構造のブレースと連結部材との接合部分を示した図であって、(a)は側面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
本発明のブレース構造を実施するための第一の形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1および図2に示すように、第一実施形態に係るブレース構造1は、矩形フレーム10と、ブレース20と、連結部材30とを備えている。
【0017】
矩形フレーム10は、上下の横材(梁)11,11と、横材11,11間に立設された一対の縦材(柱)12,12にて構成され、側面視で縦長の長方形形状を呈している。横材11は、例えばH型鋼等の鋼材にて構成されている。縦材12は、例えば角パイプ等の鋼材にて構成されている。矩形フレーム10の角部の内側には、ブレース20を取り付けるための取付プレート13が設けられている。取付プレート13は、鋼板にて構成されており、基端部が角部の内周面に当接し、先端部が矩形フレーム10の中心側に向かって延在している。取付プレート13の引張強度は、ブレース20の引張強度以上であり、且つ取付プレート13の圧縮強度は、ブレース20の圧縮強度以上である。取付プレート13は、厚さ方向中間部が、横材11および縦材12の厚さ方向(図2の紙面表裏方向)の中間部に合うように配置されている。
【0018】
ブレース20は、矩形フレーム10の一対の対角線L1,L1に沿ってX形に配置されている。ブレース20は、矩形フレーム10の対角線L1,L1の交差部(矩形フレーム10の中央部)で4分割されており、4本設けられている。各ブレース20は、矩形フレーム10の中心部で、連結部材30を介して連結されている。なお、対角線L1は、図2に示すように、横材11の芯L2と縦材12の芯L3との交点Pのうち、互いに対向する角部に位置する交点P(図2では下側の交点Pのみを図示している)同士を結んだ線である。
【0019】
図2乃至図4に示すように、ブレース20は、一対の溝形鋼21,21と、スペーサ22とを備えている。溝形鋼21は、ウエブ面に線対称の等辺形状の断面コ字形状を呈しており、横材11および縦材12の厚さ方向に所定の間隔をあけて背中合わせに配置されている。溝形鋼21は、等辺形状であり、背中合わせに配置されているので、接合時に偏心が生じない構成となっている。一対の溝形鋼21,21の長手方向一端部(外側端部)は、取付プレート13を挟持している。一対の溝形鋼21,21の長手方向他端部(内側端部)は連結部材20を挟持している。
【0020】
スペーサ22は、一対の溝形鋼21,21同士を一体化しつつ間隔を保持することで、溝形鋼21に圧縮力がかかった際に、弱軸側(溝形鋼21の解放側)に座屈するのを防止するためのものである。スペーサ22は、溝形鋼21,21の背面(ウエブ面)間に介設されている。スペーサ22は、所定厚さの鋼製プレートにて構成されている。スペーサ22は、ブレース20の長手方向中間部に設けられている。
【0021】
本実施形態のスペーサ22は、円形の鋼製プレートにて構成されており、溝形鋼21,21に挟まれている。スペーサ22は、溝形鋼21の幅寸法より小さい外径寸法を備えており、溝形鋼21からはみ出さない形状となっている。スペーサ22の形状は、円形に限定されるものではなく、矩形、多角形、楕円等の他の形状であってもよい。スペーサ22には、ボルト挿通孔23が形成されている。ボルト挿通孔23の芯は、溝形鋼21の幅方向中間部に位置し、且つ対角線L1上に位置している。ボルト挿通孔23は、スペーサ22の中央に形成されている。各溝形鋼21の長手方向中間部にもそれぞれボルト挿通孔が形成されている。溝形鋼21のボルト挿通孔と、スペーサ22のボルト挿通孔23にボルト54が挿通され、ナット55で締め付けることでスペーサ22と溝形鋼21とが連結され、つづり部(連結部)が形成される。なお、スペーサ22の設置位置(つづり部の形成位置)および個数は、ブレース20の長手方向中間部の一つに限定されるものではなく、ブレース20の長さに応じて適宜設定されるものである。つづり部を複数形成する場合の隣り合うつづり部の間隔は、溝形鋼21の圧縮座屈がブレース20の座屈より先行しない長さである。
【0022】
ボルト54は、高力ボルトではなく一般的なボルトであって、一本で溝形鋼21,21およびスペーサ22を固定している。スペーサ22の板厚(厚さ寸法)t2は、連結部材30の板厚(厚さ寸法)よりも大きく、且つ取付プレート13の板厚(厚さ寸法)t1よりも大きい。具体的には、連結部材30および取付プレート13の板厚(厚さ寸法)t1は9mmで、スペーサ22の板厚(厚さ寸法)t2は12mmである。これによって、一対の溝形鋼21,21は、長手方向中間部の離間距離が両端部の離間距離より大きく、ブレース20は、中間部が膨らんだ樽型となっている。
【0023】
なお、本実施形態では、ボルト54,ナット55で、溝形鋼21,21およびスペーサ22を固定しているが、固定方法はボルト54に限定されるものではない。溝形鋼21とスペーサ22を直接溶接(スポット溶接)するようにしてもよい。このような構成によれば、溝形鋼21の断面欠損がなくなるので、引張強度の低下を防ぐことができる。
【0024】
ブレース20と取付プレート13との接合点は、溝形鋼21,21の長手方向の外側端部で挟持された取付プレート13の先端部に形成されている。取付プレート13の先端部には、ボルト挿通孔14が形成されている。ボルト挿通孔14の芯は、対角線L1上に位置している。ボルト挿通孔14は、対角線L1上に沿って間隔をあけて複数個所(本実施形態では二か所)に形成されている。各溝形鋼21の外側端部にもそれぞれボルト挿通孔が形成されている。溝形鋼21のボルト挿通孔と、取付プレート13のボルト挿通孔14に高力ボルト51が挿通され、ナット52で締め付けることでブレース20が取付プレート13に接合される。なお、図中、符号「53」はワッシャを示している。高力ボルト51の芯の位置(ボルト挿通孔14の芯の位置)が、ブレース20と取付プレート13との接合点となる。つまり、ブレース20と取付プレート13との接合点が対角線L1上に間隔をあけて配置されている。これによって、接合点の面内方向および面外方向の剛性が向上して一対の溝形鋼21,21が圧縮座屈し難くなる。そして、二つの接合点の中心(重心)が、ブレース20と取付プレート13との接合中心となる。二つの接合点が対角線L1上に位置しているので、接合中心も対角線L1上に位置している。なお、取付プレート13の取付プレート13の板厚(厚さ寸法)t1は、かかる軸力によって適宜設定されるが、連結部材30の板厚(厚さ寸法)と同等であることが好ましい。
【0025】
連結部材30は、ブレース20をピン接合する部材であって、対角線L1,L1の交差部に設けられている。本発明におけるピン接合とは、曲げ応力を伝達しない接合であって、剛接合とは異なるものである。連結部材30は、矩形の鋼製プレートにて構成されており、連結部材30の引張強度は、ブレース20の引張強度以上であり、且つ連結部材30の圧縮強度は、ブレース20の圧縮強度以上である。連結部材30は、その対角線が矩形フレーム10の対角線L1と一致するように配置されている。つまり、連結部材30の図芯C1は、ブレース20の軸線の延長線上に位置している。本実施形態では、2本のブレース20の軸線の交点(対角線L1の交点)に図芯C1が位置している。これによって、ブレース20と連結部材30が直線状に配置される。連結部材30の四隅にブレース20がそれぞれ接合されている。
【0026】
ブレース20と連結部材30との接合点は、溝形鋼21,21の長手方向の内側端部に挟持された連結部材30の四隅の角部に形成されている。連結部材30の角部には、ボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。ボルト挿通孔の芯は、対角線L1上に位置している。ボルト挿通孔は、対角線L1上に沿って間隔をあけて二か所に形成されている。各溝形鋼21の内側端部にもそれぞれボルト挿通孔が形成されている。溝形鋼21のボルト挿通孔と、連結部材30のボルト挿通孔に高力ボルト51が挿通され、ナットで締め付けることでブレース20が連結部材30に接合される。高力ボルト51の芯の位置(ボルト挿通孔14の芯の位置)が、ブレース20と連結部材30との接合点となる。つまり、ブレース20と連結部材30との接合点が対角線L1上に間隔をあけて配置されている。これによって、接合点の面外方向の固定剛性が向上して一対の溝形鋼21,21が圧縮座屈し難くなる。そして、二つの接合点の中心(重心)が、ブレース20と連結部材30との接合中心となる。二つの接合点が対角線L1上に位置しているので、接合中心も対角線L1上に位置している。連結部材30の板厚(厚さ寸法)は、取付プレート13の板厚(厚さ寸法)t1と同等である。
【0027】
次に、図5を参照しながら本実施形態のブレース構造1の構築方法を説明する。ブレース構造1を構築するに際しては、まず、工場等において、上側のブレース20と、下セット部材とを組み立てる。上側のブレース20は、一対の溝形鋼21,21の長手方向中間部にスペーサ22を設置してボルト54を挿通し、ナット55で締め付けて形成する。下セット部材は、下側のブレース20と連結部材30とを備えている。下側のブレース20は、上側のブレース20と同形状で、前記した手順で形成する。そして、下側のブレース20の溝形鋼21の内側端部で連結部材30を挟み、仮ボルトを挿通してナットで締め付けてブレース20を連結部材30に仮固定する。このとき、仮ボルトは位置のブレース20に対して一本のみ用いており、ブレース20が連結部材30に対して回動可能に仮固定されている。左右のブレース20は、互いに平行になる状態で搬送される。
【0028】
施工現場においては、図5の(a)に示すように、下セット部材のブレース20を広げて、下側の取付プレート13に、高力ボルトを用いてブレース20の外側端部をそれぞれ仮固定する。そして、上側のブレース20の外側端部を、上側の取付プレート13に一本の高力ボルトを用いて仮固定し、ブレース20を吊り下げた状態にしておく。
【0029】
その後、図5の(b)に示すように、上側のブレース20の一方を回動させて、高力ボルトを用いてブレース20の内側端部を連結部材30に仮固定する。さらに、図5の(c)に示すように、上側のブレース20の他方を回動させて、高力ボルトを用いてブレース20の内側端部を連結部材30に仮固定する。そして、建入調整を行った後に、所定本数の高力ボルトを設置し、各高力ボルトの本締めを行う。以上の工程によって、ブレース構造1が完成する。
【0030】
本実施形態のブレース構造1によれば、矩形フレーム10に水平力が作用した際に、一方の対角線L1に沿ったブレース20,20が引張ブレースとなり、連結部材30が引張ブレースに引っ張られる。このとき、連結部材30は、対角線L1上に配置された高力ボルト51でブレース20に固定されており、対角線L1に沿った直線方向に引っ張られるので面外方向への移動が拘束される。さらに、連結部材30の引張強度は、ブレース20の引張強度以上であるので、連結部材30は変形しない板状の部材である。また、連結部材30は、対角線L1上でブレース20と接合して、対角線L1に沿って直線状に引っ張られるので回転しない。よって、連結部材30に接合されている圧縮ブレースの接合点は、面内・面外ともに移動が拘束される支点になるので、圧縮ブレースの支点間の長さは、連結部材と取付プレートとの間隔寸法(全対角長さの1/2)になる。したがって、対角線全体にかける従来の圧縮ブレースより小さく、1/2の長さになるので、圧縮力への抵抗が大きくなり、座屈し難くなっている。
【0031】
また、かかるブレース構造1によれば、ブレース20を圧縮力に抵抗できる断面にすることで、圧縮力に抵抗することができる。つまり、座屈長さが短くなることで、引張力にしか抵抗できなかったブレース20が圧縮力にも抵抗するので、ブレース20の製造コストの上昇を抑制しつつ、ブレース耐力壁量が少なくなり広い空間を構成できる。
【0032】
また、本実施形態では、溝形鋼21は、ウエブの両側のフランジの立上り高さが等しい形状であり、所定間隔をあけて背中合わせに配置されているので、接合時に偏心が生じない構成となっている。これによって、ブレース20が圧縮を受けるとき、圧縮ブレースが圧縮座屈し難くなり、効率良く抵抗できる断面形状となる。したがって、圧縮力による偏心座屈を抑制することができる。
【0033】
さらに、一対の溝形鋼21,21の背面間にスペーサ22が介設されているので、溝形鋼21,21同士が離間される。これによって、ブレース20の断面二次半径が大きくなり、断面積が効率的に大きくなる。つまり、ブレース20の軽量化を図りつつ、断面を強化することができる。
【0034】
また、スペーサ22は、ブレース20の長手方向中間部に設けられているので、ブレース20の中間部の溝形鋼21の離間距離を規制できる。これによって、ブレース20の中間部が厚くなり、中間部の断面性能(断面二次半径)が大きくなる。ブレース20に圧縮力が作用した際にはブレース20の中間部に最も大きな曲げ力がかかるが、中間部の断面性能を大きくすることで、溝形鋼21の面外への移動が規制され、効果的な座屈防止が達成される。また、溝形鋼で連結部材と取付プレートを挟持しているので、少ない数の接合ボルトで軸力を伝達することができる。さらに、溝形鋼21の圧縮座屈が、合成断面より先行しない離間距離でつづられる(連結される)こととなる。したがって、ブレース20がより一層座屈し難くなる。
【0035】
さらに、ブレース20の長手方向中間部に設けられたスペーサ22の厚さ寸法t2は、ブレース20の外側端部の取付プレート13の厚さ寸法t1より大きく、且つ内側端部の連結部材30の厚さ寸法より大きいので、ブレース20が、一対の溝形鋼21,21の中間部が広がった樽型となる。したがって、圧縮力に対して溝形鋼21が座屈変形し難く、ブレース20がより一層座屈し難くなる。
【0036】
以上説明したように、ブレース構造1によれば、製造コストの上昇を抑制できるとともに、圧縮側のブレース20の支点間隔を短くし、圧縮力がかかるブレース20に合理的に圧縮力を負担させることができる。
【0037】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係るブレース構造について説明する。第二実施形態に係るブレース構造101は、ブレース120の形状が第一実施形態と異なる。その他の構成については、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。図6乃至図9に示すように、ブレース120は、一対の溝形鋼121,121と、接続板122とを備えている。溝形鋼121は、第一実施形態の溝形鋼21と同等の断面形状であり、所定の間隔をあけて背中合わせに配置されている。
【0038】
図7乃至図9に示すように、接続板122は、一対の溝形鋼121,121の側面間に掛け渡されている(図7の(b)および図8参照)。接続板122は、矩形形状を呈しており、両端面が各溝形鋼121の側面に隅肉溶接されて固定されている。一対の溝形鋼121,121は所定の間隔をあけて配置されており、接続板122が溝形鋼121,121の離間距離を保持している。接続板122は、溝形鋼121の幅方向両側から溝形鋼121を挟むように設けられて、つづり部(連結部)が形成されている。溝形鋼121を挟む接続板122,122は、溝形鋼121の長手方向に所定間隔をあけて複数組(本実施形態では六組)設けられている。隣り合うつづり部の間隔は、溝形鋼121の圧縮座屈がブレース120の座屈より先行しない長さである。
【0039】
溝形鋼121の端部の背面には所定の厚さの挟持プレート123が設けられている。図9に示すように、挟持プレート123は、取付プレート13または連結部材30を挟持するプレートであって、一対の溝形鋼121,121の互いに対向する背面にそれぞれ固定されている。挟持プレート123は、矩形形状を呈しており、溝形鋼121の幅寸法と同じ幅寸法を備えている。挟持プレート123には、溝形鋼121の端部に形成されたボルト挿通孔に相当する位置に同径のボルト挿通孔124が形成されている。ボルト挿通孔124には、ブレース120を取付プレート13または連結部材30に取り付けるための高力ボルトが挿通される(図9参照)。挟持プレート123の厚さ寸法は、溝形鋼121の厚さ寸法より大きい。二枚の挟持プレート123と取付プレート13または連結部材30を合わせた厚さが、溝形鋼121の端部の離間距離となる。
【0040】
溝形鋼121,121の離間距離は、長手方向中間部が長手方向両端部よりも僅かに大きくなっている。具体的には、長手方向中間部の離間距離は、長手方向両端部の離間距離より1mm大きい。これによって、ブレース120は、長手方向中間部が膨らんだ樽型となっている。このような構成のブレース120においては、取付プレート13および連結部材30の引張強度は、ブレース120の引張強度以上であり、且つ取付プレート13および連結部材30の圧縮強度は、ブレース120の圧縮強度以上である。
【0041】
このような構成のブレース構造101によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得られる他に、溝形鋼121の圧縮座屈がブレース120の座屈より先行しない間隔で接続板122を設ける(つづる)ことで、ブレース120の圧縮強度がより一層強くなり、座屈を防止できる。
【0042】
以上、本発明の第一および第二の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。例えば、前記実施形態では、ブレース20と連結部材30との接合点と、ブレース20と取付プレート13との接合点は、対角線L1上に配置されているが、その配置位置は、図10に示すように、対角線L1上に代えて、対角線L1を挟む線対称の位置としてもよい(図10では、ブレース20と取付プレート13との接合点を図示している)。具体的には、対角線L1を挟むように高力ボルト57が配置されており、対角線L1を挟んで互いに対向する高力ボルト57は、対角線L1から等間隔位置に配置されている。高力ボルト57は長方形の角部四か所に設けられており、高力ボルト57の設置位置を結ぶ対角線の交点が接合中心C2となる。接合中心C2は対角線L1上にある。なお、その他の構成については、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。このように対角線L1を挟む対称位置に高力ボルト57を設けると、接合の応力が作用する点は対角線L1上になるので、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態に係るブレース構造について説明する。第三実施形態に係るブレース構造201は、ブレース220の形状が第一実施形態および第二実施形態と異なる。その他の構成については、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。図11乃至図13に示すように、ブレース220は、角形鋼管にて構成されている。ブレース220は、角形鋼管の芯が矩形フレーム10の一対の対角線L1,L1に沿うように、X形に配置されている。なお、ブレース220は、角形鋼管に限定されるものではなく、丸形鋼管にて構成してもよい。
【0044】
本実施形態のブレース220の端部には、取付プレート13または連結部材30が挿入されるスリット221が形成されている。スリット221は、ブレース220の軸方向に沿って延在し、ブレース220の両側面にそれぞれ形成されている。スリット221に取付プレート13または連結部材30が挿入された状態で溶接することで、ブレース220が取付プレート13または連結部材30に固定されている。詳しくは、図12および図13に示すように、角形鋼管の側面の外側表面で、取付プレート13または連結部材30の両面において隅肉溶接されている。隅肉溶接は、スリット221の周縁部の全周に渡ってコ字状に為されている。本実施形態では、溶接部分がブレース220と取付プレート13または連結部材30との接合点となる。角形鋼管の各側面のコ字状の溶接部分の重心同士を結んだ直線の中心部が接合中心となる。この接合中心は、対角線L1上に位置している。このような構成のブレース220においては、取付プレート13および連結部材30の引張強度は、ブレース220の引張強度以上であり、且つ取付プレート13および連結部材30の圧縮強度は、ブレース220の圧縮強度以上である。
【0045】
ブレース220と、取付プレート13または連結部材30との接合構造は、スリット221を形成する前記構造に限定されるものではない。例えば、角形鋼管の両端部を斜めカットして、残置され開放された板状部と取付プレートまたは連結部材とを、高力ボルトで接合するようにしてもよい。
【0046】
このような構成のブレース構造201によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得られる他に、ブレース220が角形鋼管にて構成されているので、ブレース220自体の強度が高く、ブレース220の圧縮強度がより一層強くなる。また、ブレース220の構造が、第一または第二実施形態と比較して簡単であるので、ブレース220の作成手間が軽減される。
【0047】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態に係るブレース構造について説明する。図14に示すように、第四実施形態に係るブレース構造301は、柱312の長さ寸法が大きく、柱312,312間において上下に複数段の矩形フレーム310が形成されている。矩形フレーム310は、柱312,312の間に掛け渡された水平材311と左右両側の柱312の一部(上下の水平材311で挟まれた所定長さの部分)とで構成されている。なお、図14では、建物の下層部を図示しており、基礎311aが下側の横材となっている。柱312の下端部は、アンカーボルト等を介して基礎311aに強固に固定されている。基礎311aが下側の横材となる場合の対角線L1の起点となる下側の交点Pは、柱312の芯L3と、基礎311aの表面(柱312の下端面)とが交差する位置である。他方、上側の矩形フレーム310は、上下の水平材311と左右両側の柱312の一部とで構成されている。
【0048】
ブレース220の形状は第三実施形態と同じである。また、ブレース220と取付プレート13または連結部材30との接合構造も第三実施形態と同じである。水平材311は、ブレース220と同等の構成であり、角形鋼管にて構成されている。水平材311の両端部には、スリットが形成されており、スリットに取付プレート13を挿入して溶接することで柱312に固定されている。
【0049】
このような構成のブレース構造301によれば、第一実施形態と同様の作用効果を得られる他に、長い柱312を水平材311で区画するので、細長比を小さくすることができ、柱312が座屈し難くなる。また、ブレース220の長さを短くできるので、座屈長さが短くなる。
【0050】
(第五実施形態)
次に、第五実施形態に係るブレース構造について説明する。図15に示すように、第五実施形態に係るブレース構造401は、木造構造の矩形フレーム410を補強する。矩形フレーム410は、上下の横材(梁と土台)411,411と、横材411,411間に立設された一対の縦材(柱)412,412にて構成され、側面視で縦長の長方形形状を呈している。横材411および縦材412は、ともに木製の角材にて構成されている。具体的には、1階の横材411は土台であり、例えば断面正方形(105mm×105mm)のスギにて構成されている。2階以上の横材411は梁であり、例えば断面縦長の長方形(180mm×105mm)のベイ松にて構成されている。縦材412は柱であり、土台と梁の間に立設されている。縦材412は、例えば断面正方形(105mm×105mm)のスギにて構成されている。
【0051】
横材411と縦材412とは、縦材412の端面に形成されたほぞ412aを、横材411に形成されたほぞ穴411aに差し込むことで接続されている(木造標準接合)。本実施形態では、さらに、横材411と縦材412の接続部分には、L型金具413が設けられている。L型金具413は、横材411と縦材412との接続強度を補強するとともに、ブレース420を接合する取付プレートの役目を果たす。図16にも示すように、L型金具413は、縦材412の側面に当接する縦板部414aと、横材411の上面または下面に当接する横板部414bとを備えている。L型金具413は、縦板部414aおよび横板部414bに木ネジ415をそれぞれ挿通させることで、木ネジ剪断接合で横材411(梁)および縦材412(柱)に軸力を伝達している。縦材412および縦板部414aには、ブレース420の一端が溶接されている。土台である横材411との接合は、縦材412の上部と下部のL型金具413からの合計軸力である引抜力(圧縮側は柱とL型金具413の支圧のみ)を伝達するために、引張力とせん断力を負担可能なボルト接合としている。ボルト416は、通しボルトを用いており、横材411を上下に貫通させている。ボルト416の下端部は、土台の下部に形成された凹部に収容され、ワッシャプレート417を介して締め付けられている(図16の(b),(c)参照)。ボルト416は、横材411の幅方向に間隔をあけて一対設けられている。ワッシャプレート417は、隣り合うボルト416,416間に掛け渡されており、ボルト418を介して凹部の上側の底面に固定されている。
【0052】
図15に示すように、ブレース420は、前記実施形態と同様に、矩形フレーム410の一対の対角線L1,L1に沿ってX形に配置されている。ブレース420は、矩形フレーム410の対角線L1,L1の交差部(矩形フレーム10の中央部)で4分割されており、4本設けられている。各ブレース420は、矩形フレーム410の中心部で、連結部材430を介して連結されている。ブレース420は、角形鋼管にて構成されている。ブレース420は、角形鋼管の芯が矩形フレーム410の一対の対角線L1,L1に沿うように、X形に配置されている。なお、ブレース420は、角形鋼管に限定されるものではなく、丸形鋼管にて構成してもよい。本実施形態のブレース420は、鉄骨構造の矩形フレームを補強するブレースよりも小さい寸法(例えば30mm×30mm、厚さ1.6mm)となっている。
【0053】
図16に示すように、ブレース420の一端部(L型金具413側の端部)は、L型金具413の入隅部に当接するように、側面視で出隅部が直角になる角形に切断されている。角形に切断されたブレース420の一端部の全長に渡って隅肉溶接が為されて、ブレース420がL型金具413に接合されている。この溶接の溶接部の重心部分がブレース420とL型金具413(取付プレート)との接合中心となる。接合中心は、対角線L1上に配置されている。L型金具413のブレース420の軸方向への引張強度は、ブレース420の引張強度以上であり、且つL型金具413のブレース420の軸方向への圧縮強度は、ブレース420の圧縮強度以上である。
【0054】
図15および図17に示すように、ブレース420の他端部(矩形フレーム410の中心部の連結部材430側の端部)は、側面視で角形に切断されている。他端部の一対の切断面は互いに直交し、他端部の出隅部が直角になっている。切断面の傾斜角度は、ブレース420の傾斜角度に応じて設定されており、ブレース420を設置した際に、一方の切断面422aが水平になり、他方の切断面422bが垂直になる傾斜角度となっている(図17の(a)参照)。ところで、連結部材430は、鋼製プレートにて構成されている。本実施形態の連結部材430は、鉄骨構造を補強するための連結部材30と比較して小さく側面視で縦長の長方形となっている。連結部材430の引張強度は、ブレース420の引張強度以上であり、且つ連結部材430の圧縮強度は、ブレース420の圧縮強度以上である。このような連結部材430との接合部における、4本のブレース420の他端部同士は、互いに所定の間隔をあけて対向して配置されている。4本のブレース420間の隙間は、狭い幅の十字形状になっている。ブレース420の他端部の切断面に繋がる側面には、板状の連結部材430が挿入されるスリット421が形成されている。スリット421は、ブレース420の軸方向に沿って延在し、ブレース420の両側面にそれぞれ形成されている。スリット421に連結部材430が挿入された状態で溶接することで、ブレース420が連結部材430に固定されている。角形鋼管の側面の外側表面で、連結部材430の両面において隅肉溶接されている。スリット421は、ブレース420の表面側の角部が面取りされて開先加工されており、溶接強度が高められている。この溶接の溶接部の重心部分がブレース420と連結部材430との接合中心となる。接合中心は、対角線L1上に配置されている。
【0055】
このような構成のブレース構造401によれば、木造構造の矩形フレーム410においても、第一実施形態と同様の作用効果を得られる。以上説明したように、本発明のブレース構造は、鉄骨構造および木造構造のいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ブレース構造
10 矩形フレーム
13 取付プレート
20 ブレース
21 溝形鋼
22 スペーサ
30 連結部材
L1 対角線
t1 取付プレートの厚さ寸法
t2 スペーサの厚さ寸法
101 ブレース構造
120 ブレース
121 溝形鋼
122 接続板
123 挟持プレート
201 ブレース構造
220 ブレース
301 ブレース構造
401 ブレース構造
420 ブレース
430 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17