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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136490
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/12 20060101AFI20230922BHJP
   F02B 19/10 20060101ALI20230922BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20230922BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230922BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F02B19/12 A
F02B19/10 Z
F02D43/00 301Z
F02D43/00 301B
F02D45/00 364
F02D43/00 301N
F02M21/02 301C
F02M21/02 301J
F02M21/02 301B
F02M21/02 301D
F02M21/02 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042200
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】熊田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】岩田 一希
(72)【発明者】
【氏名】平早水 和幸
(72)【発明者】
【氏名】桑鶴 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】立石 貴久
(72)【発明者】
【氏名】小田 裕輔
【テーマコード(参考)】
3G023
3G384
【Fターム(参考)】
3G023AA17
3G023AB01
3G023AC07
3G023AD21
3G023AF01
3G384AA14
3G384BA01
3G384BA27
3G384CA04
3G384DA05
3G384EB12
3G384FA29Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】副室ガス圧力をより早く低減して良好な負荷応答性を確保することができるエンジンを提供する。
【解決手段】
ガスエンジン1は、各気筒11の燃焼室として、燃料ガスを点火させて火炎を発生させる副室21と、副室21で発生した火炎を用いて燃料ガス及び空気の混合気を燃焼させる主室20とを備えたエンジンであって、副室21に燃料ガスを供給する副室主管39と、主室20にへと供給される空気を流通する給気通路32と、副室主管39から給気通路32へと連通する連絡管41と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室として、燃料ガスを点火させて火炎を発生させる副室と、前記副室で発生した火炎を用いて燃料ガス及び空気の混合気を燃焼させる主室とを備えたエンジンであって、
前記副室に燃料ガスを供給する副室主管と、
前記主室にへと供給される空気を流通する給気通路と、
前記副室主管から前記給気通路へと連通する連絡管と、
を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記主室へと供給される空気を圧縮する過給機を備え、
前記連絡管は、前記主室への空気の給気方向において前記過給機より上流側で前記給気通路に接続されることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記連絡管は、前記副室主管から前記給気通路への燃料ガスの流量を調整可能な逃し弁を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記逃し弁は、予め定められた条件を満たした場合に開状態に切り替えられて、前記連絡管により前記副室主管と前記給気通路とを連通状態とすることを特徴とする請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記予め定められた条件は、当該エンジンの回転数が所定の定格回転数に到達したときから所定の経過時間を経過した場合、又は、前記副室主管のガス圧力が前記副室のガス圧力に対して所定の閾値以上高い場合であることを特徴とする請求項4に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室として主室と副室とを備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンには、燃焼室として、燃料ガスを点火させて火炎を発生させる副室と、副室で発生した火炎を用いて燃料ガス及び空気の混合気を燃焼させる主室とを備えた副室式ガスエンジン等がある。
【0003】
また、ガスエンジンには、例えば、特許文献1に開示されるように、給気管を流れる空気中に燃料流量制御バルブを介して導入される燃料ガスを混合し、この混合気をスロットルバルブにより流量調整して燃焼室に供給するものがある。このガスエンジンの統合制御方法では、検出されたエンジン状態と目標値となるエンジン状態との偏差に基づき燃料流量制御バルブの燃料ガス流量を設定する工程と、スロットルバルブの目標開度を設定するフィードバック制御を行う工程とを備える。これにより、高精度の空燃比制御を維持しながら負荷応答性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-57870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような空燃比制御を副室式ガスエンジンに適用して、副室内の空燃比を制御することがある。例えば、副室へと燃料ガスを供給するチェック弁を設けた構成において、チェック弁よりも上流側の副室主管内のガス圧力を吸気マニホールド内の圧力(即ち、燃焼室内の圧力)に対して高くなるように制御することで、チェック弁から副室内に流入する燃料ガス量がストイキ状態になるように制御する。副室主管の目標ガス圧力は負荷率に依存して決定される適合値であり、副室主管内のガス圧力が目標ガス圧力に追従するように、副室主管よりも上流側の比例弁を用いてPID制御する。
【0006】
ところで、エンジンの負荷投入時は、主室への燃料ガス供給が急激に増大するため、副室内の空燃比もリッチ化する。副室内空燃比が可燃範囲を逸脱しないように、負荷投入時は、副室内のガス圧力(副室ガス圧力)を急速に下げるように制御するため、目標ガス圧力を下げることになり、比例弁を閉状態へと変位させることになる。このとき、従来技術では、比例弁を閉状態へと変位させた状態で副室主管内のガス圧力を低下させるには、副室主管内のガスを、チェック弁を介して副室内に流入させる必要があるので、副室ガス圧力を急速に下げることができない。また、副室ガス圧力がチェック弁のガス流量に律速されて十分に低下するまでに時間を要することで比例弁開度が全閉に至ると、その後、副室ガス圧力を増加させたい状況になったときに、比例弁が開状態になるまで応答遅れが生じる。上記の応答遅れの結果、副室内の空燃比を適切に制御できずに失火してしまい、負荷投入に失敗するおそれがある。
【0007】
本発明は、副室ガス圧力をより早く低減して良好な負荷応答性を確保することができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のエンジンは、燃焼室として、燃料ガスを点火させて火炎を発生させる副室と、前記副室で発生した火炎を用いて燃料ガス及び空気の混合気を燃焼させる主室とを備えたエンジンであって、前記副室に燃料ガスを供給する副室主管と、前記主室にへと供給される空気を流通する給気通路と、前記副室主管から前記給気通路へと連通する連絡管と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、副室ガス圧力をより早く低減して良好な負荷応答性を確保することができるエンジンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るガスエンジンを示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るガスエンジンにおける各気筒を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係るガスエンジンの動作例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエンジンの実施形態に係るガスエンジン1について図面を参照して説明する。図1に示すように、ガスエンジン1は、エンジン本体2と、吸気機構3と、排気機構4と、制御装置5とを備えて構成されている。
【0012】
先ず、エンジン本体2について説明する。エンジン本体2は、シリンダブロック10に複数の気筒11を備えて構成される。各気筒11は、図2に示すように、シリンダ13と、ピストン14と、シリンダヘッド15と、点火装置16とから構成される。なお、本明細書では、各気筒11への混合気の供給を「吸気」とし、混合気の元となる空気の供給を「給気」として区別している。
【0013】
シリンダ13は、例えば、シリンダブロック10内に筒状に形成され、ピストン14は、シリンダ13内に摺動可能に収納される。シリンダヘッド15は、シリンダ13の上側に取り付けられ、シリンダ13及びシリンダヘッド15によって内側に燃焼室を形成している。
【0014】
特に、シリンダ13内には、ピストン14とシリンダヘッド15との間に主燃焼室である主室20を形成していて、シリンダヘッド15の下部内には、シリンダ13の主室20に連通する副燃焼室である副室21を形成している。シリンダヘッド15内には、副室21の上側にチェック弁22が備えられ、チェック弁22は、吸気機構3の副室主管39(図1参照)に接続されていて、副室主管39及びチェック弁22を介して燃料ガスが副室21に導入される。チェック弁22は、副室21内のガス圧力(即ち、主室20内の混合気圧力)と、副室主管39内のガス圧力との差圧に応じて開閉するように構成されている。
【0015】
例えば、チェック弁22は、副室21のガス圧力(主室20の混合気圧力)が高く、副室主管39のガス圧力との差圧が所定のチェック閾値未満となる場合に、閉状態に変位して、副室21への燃料ガスの供給を遮断する。一方、チェック弁22は、副室21のガス圧力(主室20の混合気圧力)が低く、副室主管39のガス圧力との差圧が所定のチェック閾値以上となる場合に、開状態に変位して、副室21へと燃料ガスを供給する。なお、副室比例弁40(図1参照)によって副室主管39におけるガス圧力が目標ガス圧力となるように調整することで副室21と副室主管39との差圧を調整可能となり、これによりチェック弁22の開度を調整することで、副室21への燃料ガスの供給量を調整可能とする。具体的には、チェック弁22から副室21内に流入する燃料ガスで副室21内に生成される混合気の空燃比がストイキ状態になるように制御する。
【0016】
また、シリンダヘッド15は、シリンダ13の主室20に連通する吸気ポート23及び排気ポート24を有し、主室20に対して吸気ポート23及び排気ポート24をそれぞれ開閉する吸気弁25及び排気弁26を備えている。吸気ポート23は、吸気機構3に接続されていて吸気機構3から燃料ガス及び空気の混合気を主室20へと導入し、排気ポート24は、排気機構4に接続されていて主室20で生じた排気ガスを排気機構4へと排出する。吸気弁25を開くことで、燃料ガス及び空気の混合気を、吸気ポート23を介して主室20に吸気可能となり、一方、排気弁26を開くことで、主室20で生じた排気ガスを、排気ポート24を介して排気可能となる。
【0017】
点火装置16は、シリンダヘッド15において副室21の上側に設けられ、副室21に露出した点火プラグ27を備えている。点火装置16は、制御装置5によって制御されて、副室主管39及びチェック弁22を介して副室21に導入された燃料ガスを、点火プラグ27で点火させることで、副室21内に火炎を発生させ、また、副室21で発生した火炎を主室20内へと噴出させる。主室20では、吸気ポート23を介して吸気された燃料ガス及び空気の混合気を、副室21で発生した火炎を用いて燃焼させる。
【0018】
次に、吸気機構3について説明する。吸気機構3は、図1に示すように、吸気マニホールド30と、燃料ガス通路31と、給気通路32とを備えている。吸気マニホールド30は、燃料ガス及び空気の混合気を複数の気筒11へと供給するものである。吸気マニホールド30は、複数の気筒11のそれぞれに対応するように分岐して複数の気筒11の各吸気ポート23に接続されていて、換言すれば、吸気マニホールド30の各分岐流路(図示せず)が各吸気ポート23に接続されている。
【0019】
給気通路32は、複数の気筒11へと供給される混合気の元となる空気を吸気マニホールド30へと流通するものである。給気通路32は、給気方向の下流端で吸気マニホールド30に接続されていて、吸気マニホールド30から各吸気ポート23に対応して分岐した各分岐流路(図示せず)へと空気を供給する。給気通路32には、新気を浄化して導入するエアフィルタ33と、エアフィルタ33から導入される空気を圧縮して下流側へ送り出す過給機34と、過給機34で圧縮された空気を冷却するインタークーラ35とが給気方向の上流側から順に設けられている。また、給気通路32には、空気の供給量を調整可能とするスロットル弁(図示せず)が設けられていて、スロットル弁は、制御装置5によって開閉や開度を制御されて空気を各吸気ポート23へと供給する。
【0020】
燃料ガス通路31は、複数の気筒11へと供給される混合気の元となる燃料ガスを吸気マニホールド30へと流通するものである。図1では、燃料ガス通路31が、吸気マニホールド30に接続されるように図示しているが、燃料ガス通路31は、吸気マニホールド30から各吸気ポート23へ分岐した各分岐流路に設けられる各ガスインジェクタ(図示せず)に接続されていて、燃料ガス通路31を流通する燃料ガスを各ガスインジェクタによって各吸気ポート23へと供給する。各ガスインジェクタは、制御装置5によって制御されて燃料ガスを各吸気ポート23へと噴出する。
【0021】
燃料ガス通路31には、ガス圧縮機36が燃料ガス供給方向の上流側に設けられていて、更に、燃料ガス通路31は、燃料ガス供給方向においてガス圧縮機36の下流側で主室通路37と副室通路38とに分岐されている。主室通路37は、複数の気筒11のそれぞれに対応するように分岐して、燃料ガス供給方向の下流側で各吸気ポート23の各ガスインジェクタに接続されていて、燃料ガスを各ガスインジェクタへと供給する。
【0022】
副室通路38は、燃料ガス供給方向の下流側で副室主管39に接続されていて、更に、副室主管39は、複数の気筒11の各シリンダヘッド15に備えられたチェック弁22に接続されている。副室通路38には、副室比例弁40が燃料ガス供給方向の上流側に設けられている。
【0023】
副室比例弁40は、電磁弁等で構成され、制御装置5によって制御されて、開状態又は閉状態へと変位する。そして、副室通路38は、副室比例弁40を開状態にすることで副室主管39へと燃料ガスを供給する一方、副室比例弁40を閉状態にすることで副室主管39への燃料ガスの供給を遮断している。なお、副室比例弁40の開度を調整することで、副室主管39への燃料ガスの供給量を調整可能として、副室比例弁40によって副室主管39におけるガス圧力が目標ガス圧力となるように調整可能とする。
【0024】
本実施形態では特に、副室通路38の副室主管39には、給気通路32へと連通する連絡管41が接続されている。連絡管41は、副室主管39における燃料ガスを給気通路32へと逃がすことで、副室主管39内のガス圧力を下げるように構成される。連絡管41は、好ましくは、給気通路32における給気方向において過給機34より上流側で給気通路32に接続される。連絡管41には、副室主管39から給気通路32への燃料ガスの流量を調整可能な逃し弁42と、給気通路32への燃料ガスの流量を所定量に抑制するオリフィス43とが設けられる。
【0025】
逃し弁42は、電磁比例弁等で構成され、制御装置5によって制御されて、開状態又は閉状態へと変位する。そして、連絡管41は、逃し弁42を開状態にすることで副室主管39における燃料ガスを給気通路32へと逃がす一方、逃し弁42を閉状態にすることで副室主管39から連絡管41を介して燃料ガスが逃げないように遮断している。なお、逃し弁42の開度を調整することで、副室主管39から連絡管41を介して逃げる燃料ガスの流量を調整可能とする。
【0026】
次に、排気機構4について説明する。排気機構4は、排気マニホールド45と、排気通路46とを備えている。排気マニホールド45は、複数の気筒11で生じた排気ガスを排出するものである。排気マニホールド45は、複数の気筒11のそれぞれに対応するように分岐して複数の気筒11の各排気ポート24に接続されていて、換言すれば、排気マニホールド45の各分岐流路(図示せず)が各排気ポート24に接続されている。排気通路46は、複数の気筒11で生じて排気マニホールド45から排出された排気ガスを排気するために流通するものである。
【0027】
次に、制御装置5について説明する。制御装置5は、ガスエンジン1の運転を制御するECU(Engine Control Unit)等のコンピュータであり、CPU、ROM、RAM等を備えて、ガスエンジン1の各部を制御するように構成される。制御装置5は、ガスエンジン1を制御するための各種プログラムを記憶していて、プログラムを読み出して実行することでガスエンジン1を制御するようにしてよい。
【0028】
また、ガスエンジン1には、ガスエンジン1の回転数(回転速度)を検出する回転数センサ、主室通路37のガス圧力を検出する主室ガス圧力センサ、副室主管39のガス圧力を検出する副室ガス圧力センサ等の各種センサが設けられている。制御装置5は、各種センサに接続されていて、回転数センサで検出されたガスエンジン1の回転数、主室ガス圧力センサで検出された主室通路37内のガス圧力、副室ガス圧力センサで検出された副室主管39内のガス圧力を取得することで、ガスエンジン1の各部を監視する。
【0029】
制御装置5は、ガスエンジン1の回転数(回転速度)や、複数の気筒11の各主室20における空燃比を制御する機能を有し、例えば、ガスエンジン1の回転数が目標回転数となるように各主室20の空燃比を制御する。例えば、制御装置5は、ガスエンジン1の回転数や負荷率に基づいて、複数の気筒11の各吸気ポート23に対応する各ガスインジェクタからに供給する燃料ガス量を制御し、ガスエンジン1の回転数が目標回転数になるように制御する。制御装置5は、給気通路32のスロットル弁や各吸気ポート23に対応する各ガスインジェクタ等を制御することで各主室20の空燃比をリーン状態になるように制御し、複数の気筒11の各点火装置16の点火プラグ27を制御することで各主室20の混合気の点火タイミングを制御する。
【0030】
また、制御装置5は、吸気機構3について、副室主管39の目標ガス圧力を吸気マニホールド30の各吸気ポート23のガス圧力やガスエンジン1の負荷率に基づいて設定し、副室主管39における燃料ガスの圧力が目標ガス圧力になるように、副室比例弁40の開閉をPID制御する。制御装置5は、副室主管39の目標ガス圧力を副室21内のガス圧力(即ち、主室20内の混合気圧力)に対して高く設定することで、チェック弁22から副室21内に流入する燃料ガスで生成される混合気の空燃比がストイキ状態になるように制御する。
【0031】
本実施形態では特に、制御装置5は、逃し弁42を制御する逃し弁制御部50として動作し、逃し弁制御部50は、制御装置5が実行するプログラム等で構成されてよい。
【0032】
制御装置5の逃し弁制御部50は、予め定められた条件(例えば、ガスエンジン1の運転状態と所定の経過時間とに基づく条件)を満たした場合に、逃し弁42を開状態に切り替えることで、連絡管41により副室主管39と給気通路32とを連通状態にする。逃し弁制御部50は、通常は、逃し弁42を閉状態に維持していて、ガスエンジン1の運転状態と所定の経過時間とに基づく条件を満たした場合に、逃し弁42を開状態に切り替え、ガスエンジン1の運転状態と所定の閉塞時間とに基づく条件を満たした場合に、再度、逃し弁42を閉状態に切り替える。また、逃し弁制御部50は、閉状態の逃し弁42を徐々に開状態へと変位させ、また、開状態の逃し弁42を徐々に閉状態へと変位させる一次フィルタを有するとよい。
【0033】
具体的には、逃し弁制御部50は、ガスエンジン1が始動されてガスエンジン1の回転数が所定の定格回転数に到達したときから所定の経過時間(例えば、5秒)後に、逃し弁42の開状態への変位を開始する。即ち、逃し弁42を開状態に切り替えるための予め定められた条件は、ガスエンジン1の運転状態と所定の経過時間とに基づいて設定される。
【0034】
また、逃し弁制御部50は、ガスエンジン1が始動されて逃し弁42を開状態にした後、ガスエンジン1に負荷投入されたとき、ガスエンジン1の負荷率が所定の負荷閾値(例えば、30%)以上に到達したときから所定の第1閉塞時間(例えば、5秒)経過後、且つガスエンジン1の回転数が所定の回転数閾値(例えば、1480min-1)以上に到達したときから所定の第2閉塞時間(例えば、5秒)経過後に、逃し弁42の閉状態への変位を開始する。
【0035】
なお、所定の経過時間や、第1閉塞時間や第2閉塞時間等の所定の閉塞時間は、予め設定された値でよく、あるいは、利用者が任意に設定可能にしてもよく、若しくは、ガスエンジン1の運転状態に応じて変更されてもよい。
【0036】
次に、ガスエンジン1の動作例について図3を参照して説明する。図3では、ガスエンジン1の回転数を細線の一点鎖線で示し、ガスエンジン1の負荷率を細線の二点鎖線で示す。また、図3では、主室20の目標混合気圧力を太線の破線で示し、主室20の混合気圧力を細線の破線で示す。また、図3では、副室主管39の目標ガス圧力を太線の実線で示し、副室主管39のガス圧力を細線の実線で示す。また、図3では、副室比例弁40の開度を太線の一点鎖線で示し、逃し弁42の開度を太線の二点鎖線で示す。
【0037】
先ず、ガスエンジン1を時刻t1で始動させると、制御装置5は、ガスエンジン1の回転数を増加させるように各部を制御することとなる。ガスエンジン1の回転数が時刻t2で所定の定格回転数に到達してから、所定の経過時間(例えば、5秒)後の時刻t3に、逃し弁制御部50は、逃し弁42の開状態への変位を開始する。
【0038】
その後、時刻t4に、ガスエンジン1に負荷投入されると、制御装置5は、主室20の噴射時間を長くして、主室20へと供給される燃料ガスを増加させることになる。このとき、副室21内の燃料ガスがリッチ化しないように、制御装置5は、副室21内のガス圧力を下げるために、副室主管39の目標ガス圧力を低く設定して、副室比例弁40を閉状態へと変位させる。ところで、副室主管39のガス圧力を低下させるには、チェック弁22を介して副室主管39内の燃料ガスを副室21内に流入させる手段が考えられる。その場合、副室主管39のガス圧力が目標ガス圧力にまで低下するまでの期間では、副室21内に必要以上の燃料ガスが流れ込むので、副室21内で燃料ガスの過リッチ状態が継続してしまう。更に、副室主管39のガス圧力が低下する速度はチェック弁22の流速(ガス流量)に律速されるので、副室主管39のガス圧力が十分に低下するまでの間に、副室比例弁40の開度が下限まで張り付いて全閉状態となるおそれがある。副室比例弁40が全閉状態になると、その後に副室主管39のガス圧力を高くしたい場合になっても、副室比例弁40を全閉状態から開弁するまでに応答遅れが発生するため、副室主管39のガス圧力を速やかに目標ガス圧力に追従させることが困難である。これに対して、本実施形態では、逃し弁42が開状態になっていて、連絡管41が副室主管39と給気通路32とを連通状態にしているので、副室主管39内のガスを、連絡管41を介して給気通路32へと逃がすことができ、副室主管39内のガス圧力を速やかに下げることができるため、副室21内の燃料ガスが過リッチ状態になる期間は生じず、副室比例弁40の開度が下限に張り付くことがない。これにより、副室主管39内のガス圧力を速やかに目標ガス圧力に追従させることができる。
【0039】
また、逃し弁制御部50は、ガスエンジン1の負荷率が所定の負荷閾値以上に到達したときから所定の第1閉塞時間経過後、且つガスエンジン1の回転数が所定の回転数閾値以上に到達したときから所定の第2閉塞時間経過後である時刻t5に、逃し弁42の閉状態への変位を開始する。
【0040】
なお、上記した実施形態では、逃し弁制御部50が、逃し弁42を開放する際のガスエンジン1の運転状態として、ガスエンジン1が始動されてガスエンジン1の回転数が所定の定格回転数に到達したときから所定の経過時間後を例として記載したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、逃し弁制御部50は、副室主管39のガス圧力が高く、チェック弁22及び副室比例弁40を閉状態から開状態へと速やかに変位できない場合であれば、逃し弁42を開放するように制御してよい。
【0041】
また、上記した実施形態では、連絡管41が、給気方向において過給機34より上流側で給気通路32に接続される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、連絡管41は、過給機34の上流側以外の位置で給気通路32に接続されてもよく、あるいは、その他の位置(例えば、排気通路46等)に接続されてもよい。
【0042】
また、逃し弁制御部50は、ガスエンジン1の始動後、初段の負荷投入時のみに、逃し弁42を開放するように制御してもよいが、あるいは、負荷投入が行われる都度、ガスエンジン1の運転状態に応じて、逃し弁42を開放するように制御してもよい。
【0043】
上記のように、本発明によれば、ガスエンジン1は、各気筒11の燃焼室として、燃料ガスを点火させて火炎を発生させる副室21と、副室21で発生した火炎を用いて燃料ガス及び空気の混合気を燃焼させる主室20とを備えたエンジンであって、副室21に燃料ガスを供給する副室主管39と、主室20にへと供給される空気を流通する給気通路32と、副室主管39から給気通路32へと連通する連絡管41と、を備える。
【0044】
これにより、本発明のガスエンジン1によれば、副室主管39のガスを、連絡管41を介して逃がすことができるので、副室主管39のガス圧力を下げることができる。そのため、副室21がチェック弁22を介して副室主管39と接続される構成において、連絡管41によって副室主管39のガス圧力を下げることで、副室21のガス圧力を速やかに下げることができる。例えば、ガスエンジン1の負荷投入時には、主室20への燃料ガスの供給量を増加するので、副室21内の燃料ガスが過リッチにならないように、副室主管39のガス圧力を低下させる必要がある。ここで、副室主管39のガス圧力を低下させる手段として、チェック弁22を介して副室主管39内の燃料ガスを副室21内に流入させる手段を適用した場合には、上記したように、副室主管39のガス圧力に関して目標ガス圧力への追従性が悪くなる。これに対して、本発明のガスエンジン1では、上記のように、連絡管41によって副室主管39のガス圧力を下げることによって、副室21のガス圧力をより早く低減して良好な負荷応答性を確保することができる。
【0045】
また、本発明のガスエンジン1は、主室20へと供給される空気を圧縮する過給機34を備え、連絡管41は、主室20への空気の給気方向において過給機34より上流側で給気通路32に接続される。これにより、過給機34を備えたガスエンジン1において、過給機34より給気上流側に接続された連絡管41は、過給機34によって生じた給気負圧を利用して、副室主管39から給気通路32への流通を促進することができ、より効果的に副室主管39のガス圧力を逃がすことができる。
【0046】
また、本発明のガスエンジン1において、連絡管41は、副室主管39から給気通路32への燃料ガスの流量を調整可能な逃し弁42を備える。これにより、ガスエンジン1の始動時は、逃し弁42によって連絡管41を閉じておくことで副室主管39のガス圧力を速やかに上昇して負荷投入への応答性を確保しつつ、ガスエンジン1の負荷投入までに逃し弁42によって連絡管41を開いておくことで副室主管39の目標ガス圧力への追従性を負荷投入時に確保することができる。
【0047】
また、本発明のガスエンジン1は、予め定められた条件(エンジンの運転状態と所定の経過時間とに基づく条件)を満たした場合に逃し弁42を開状態に切り替えて、連絡管41により副室主管39と給気通路32とを連通状態とする。これにより、ガスエンジン1は、逃し弁42の開閉に起因する副室主管39のガス圧力の変動を抑制することができる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、逃し弁42を開状態に切り替えるための予め定められた条件を、エンジンの運転状態と所定の経過時間とに基づく条件とし、具体的には、ガスエンジン1が始動されてガスエンジン1の回転数が所定の定格回転数に到達したときから所定の経過時間を経過した場合を例に説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、エンジンの運転状態は、ガスエンジン1が始動されてガスエンジン1の回転数が所定の定格回転数に到達したときに限定されず、他のタイミングでもよい。また、他の実施形態では、逃し弁42を開状態に切り替えるための予め定められた条件は、副室主管39のガス圧力と副室21のガス圧力との差圧に基づいて設定され、例えば、副室主管39のガス圧力が副室21のガス圧力に対して所定の閾値以上高い場合としてもよい。
【0049】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うガスエンジンもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 ガスエンジン(エンジン)
5 制御装置
11 気筒
16 点火装置
20 主室
21 副室
22 チェック弁
27 点火プラグ
30 吸気マニホールド
31 燃料ガス通路
32 給気通路
34 過給機
39 副室主管
40 副室比例弁
41 連絡管
42 逃し弁
50 逃し弁制御部

図1
図2
図3