(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136501
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】戸当り装置
(51)【国際特許分類】
E05C 17/56 20060101AFI20230922BHJP
E05F 5/00 20170101ALI20230922BHJP
【FI】
E05C17/56
E05F5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042219
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健
(57)【要約】
【課題】静かかつ確実に扉の移動を停止し得る小型かつ簡易な構成の戸当り装置を提供する。
【解決手段】床面4の受金具5におけるフラップ53を引き寄せる磁石330を保持した本体ベース300と、脚部352bが本体ベースから下方へ突出した状態で本体ベースに対して上下にスライド可能に配置されたスライドブロック350と、スライドブロックを下方に付勢するバネ状体370と、スライドブロックの脚部よりも下方へ突出した状態でフラップの係合孔53hと係合するように突出した係合部393、フラップの先端部と接触したときに制動力を付与する制動部394を有するストッパ390とを備え、スライドブロックは、ストッパ390よりも硬質の材料からなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉に設けられる戸当り装置であって、
前記扉に取り付けられ、床面の受金具に対して回動自在に取り付けられたフラップを引き寄せる磁石を保持した本体ベースと、
所定の脚部が前記本体ベースから下方へ突出した状態において前記本体ベースに対し一定の範囲で上下方向にスライド可能に前記本体ベースに取り付けられたスライドブロックと、
前記スライドブロックの上に載置され、前記本体ベースが前記収容穴に取り付けられた状態で前記スライドブロックを下方に付勢するバネ状体と、
前記本体ベースの下方を向く下面に取り付けられ、前記フラップの係合孔と係合するように突出した係合部、および、前記係合部よりも上方に配置されて前記フラップの先端部と接触したときに制動力を付与する制動部を有する弾性体からなるストッパと、
を備え、
前記スライドブロックは、前記ストッパよりも硬質の材料からなる
ことを特徴とする戸当り装置。
【請求項2】
前記本体ベースは、前記磁石を収容して保持する円筒状のケースを有し、前記扉の底面に形成された収容穴に取り付けられる
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項3】
前記本体ベースは、前記スライドブロックの前記脚部および前記ストッパを収容する凹空間を有し、前記磁石によって引き寄せられた前記フラップの先端部が前記ストッパの前記係合部を乗り越えた後、前記凹空間を形成する内壁面に衝突するまでの距離が前記フラップの前記係合孔の長さと同じである
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項4】
前記扉が所定の速度以下の低速で開閉するとき、前記フラップの先端部は前記スライドブロックの前記脚部の底面と接触しながら移動する一方、前記ストッパの前記制動部には接触しない
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項5】
前記扉が所定の速度を超える高速で開閉するとき、前記フラップの先端部は、前記スライドブロックの前記脚部の底面に接触して前記スライドブロックを前記バネ状体の付勢力に抗して上方へスライドさせ、前記ストッパの前記制動部に接触する
請求項1に記載の戸当り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、戸体に取り付けられる戸当り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石を用いた戸当り装置があり、扉の下部に取り付けられた戸当り本体と、床面に取り付けられた受金具とを有している。戸当り装置は、マグネットを有し、受金具は磁性体からなるフラップを有している。
【0003】
この戸当り装置においては、実際上、扉が開き、受け金具の上方に戸当り本体が来ると、戸当り本体のマグネットが受金具のフラップを引き寄せて、マグネットとフラップとを当接させることにより当該扉の開閉を阻止する。また、戸当り本体には、受金具と係合することにより扉の開閉を規制する係止部材を有している(例えば、特許文献1、および、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-147093号公報
【特許文献2】特開2004-263377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された戸当り装置および特許文献2に記載された戸当たりにおいては、床面に固定された受金具に対して回動自在に取り付けられたフラップ状のストッパ片が扉の底面に取り付けられたマグネットの磁力により跳ね上がるが、扉を勢いよく動かした場合にはストッパ片がマグネットに接触した瞬間に跳ね返り、扉の開動作を停止することができないおそれがあった。
【0006】
また、扉の開動作を停止する際には受金具におけるフラップ状のストッパ片とマグネットとが接触するために大きな金属音が発生し、ユーザにとっては耳障りになりかねないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、静かかつ確実に扉の移動を停止し得る小型かつ簡易な構成の戸当り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、開閉可能な扉に設けられる戸当り装置であって、前記扉に取り付けられ、床面の受金具に対して回動自在に取り付けられたフラップを引き寄せる磁石を保持した本体ベースと、所定の脚部が前記本体ベースから下方へ突出した状態において前記本体ベースに対し一定の範囲で上下方向にスライド可能に前記本体ベースに取り付けられたスライドブロックと、前記スライドブロックの上に載置され、前記本体ベースが前記収容穴に取り付けられた状態で前記スライドブロックを下方に付勢するバネ状体と、前記本体ベースの下方を向く下面に取り付けられ、前記フラップの係合孔と係合するように突出した係合部、および、前記係合部よりも上方に配置されて前記フラップの先端部と接触したときに制動力を付与する制動部を有する弾性体からなるストッパとを備え、前記スライドブロックは、前記ストッパよりも硬質の材料からなる。
【0009】
本発明において、前記本体ベースは、前記磁石を収容して保持する円筒状のケースを有し、前記扉の底面に形成された収容穴に取り付けられることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記本体ベースは、前記スライドブロックの前記脚部および前記ストッパを収容する凹空間を有し、前記磁石によって引き寄せられた前記フラップの先端部が前記ストッパの前記係合部を乗り越えた後、前記凹空間を形成する内壁面に衝突するまでの距離が前記フラップの前記係合孔の長さと同じであることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記扉が所定の速度以下の低速で開閉するとき、前記フラップの先端部は前記スライドブロックの前記脚部の底面と接触しながら移動する一方、前記ストッパの前記制動部には接触しないことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記扉が所定の速度を超える高速で開閉するとき、前記フラップの先端部は、前記スライドブロックの前記脚部の底面に接触して前記スライドブロックを前記バネ状体の付勢力に抗して上方へスライドさせ、前記ストッパの前記制動部に接触することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る態様によれば、静かかつ確実に扉の移動を停止し得る小型かつ簡易な構成の戸当り装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る戸当り装置が設けられた扉装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る扉装置に対応して設けられた受金具の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の下側の構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の斜め上方向から見た上方斜視図およびその上面図、斜め下方向から見た下方斜視図およびその下面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す側面図およびA-A断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す側面図およびB-B断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る戸当り装置のスライドブロックの構成を示す斜視図(A)、上面図(B)、側面図(C、D)および下面図(E)である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る戸当り装置のストッパの構成を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る戸当り装置のストッパの構成を示す上面図(A)、側面図(B)、下面図(C)およびA-A断面図(D)である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る戸当り装置におけるスライドブロックの通常状態を示すA-A断面図(A)およびB-B断面図(B)である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る戸当り装置において扉が低速で移動した場合のスライドブロックとフラップとの関係を示す断面図(A)、(B)である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る戸当り装置においてストッパとフラップとが係合されるまでの過程の説明に供する断面図(A)、(B)である。
【
図16】本発明の実施の形態に係る戸当り装置におけるスライドブロックが上方に押し上げられた状態を示すA-A断面図(A)およびB-B断面図(B)である。
【
図17】本発明の実施の形態に係る戸当り装置において扉が高速で移動した場合のスライドブロックとフラップとの関係を示す断面図(A)、(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0016】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる、開閉可能な扉(1)に設けられる戸当り装置(3)であって、扉(1)に取り付けられ、床面(4)の受金具(5)に対して回動自在に取り付けられたフラップ(53)を引き寄せる磁石(330)を保持した本体ベース(300)と、所定の脚部(352b)が本体ベース(300)から下方へ突出した状態において本体ベース(300)に対し一定の範囲で上下方向にスライド可能に本体ベース(300)に取り付けられたスライドブロック(350)と、スライドブロック(350)の上に載置され、本体ベース(300)が収容穴に取り付けられた状態でスライドブロック(350)を下方に付勢するバネ状体(370)と、本体ベース(300)の下方を向く下面に取り付けられ、フラップ(53)の係合孔(53h)と係合するように突出した係合部(393)、および、係合部(393)よりも上方に配置されてフラップ(53)の先端部と接触したときに制動力を付与する制動部(394)を有する弾性体からなるストッパ(390)と、を備え、スライドブロック(350)は、ストッパ(390)よりも硬質の材料からなる。
【0017】
〔2〕戸当り装置(3)において、本体ベース(300)は、磁石(330)を収容して保持する円筒状のケース(310)を有し、扉(1)の底面に形成された収容穴に取り付けられる。
【0018】
〔3〕戸当り装置(3)において、本体ベース(300)は、スライドブロック(350)の脚部(352b)およびストッパ(390)を収容する凹空間(300s)を底面に有し、磁石(330)によって引き寄せられたフラップ(53)の先端部がストッパ(390)の係合部(393)を乗り越えた後、凹空間(300s)を形成する内壁面に衝突するまでの距離がフラップ(53)の係合孔(53h)の長さと同じである。
【0019】
〔4〕戸当り装置(3)において、扉(1)が所定の速度以下の低速で開閉するとき、フラップ(53)の先端部はスライドブロック(350)の脚部(352b)の底面と接触しながら移動する一方、ストッパ(390)の制動部(394)には接触しない。
【0020】
〔5〕戸当り装置(3)において、扉(1)が所定の速度を超える高速で開閉するとき、フラップ(53)の先端部は、スライドブロック(350)の脚部(352b)の底面に接触してスライドブロック(350)をバネ状体(370)の付勢力に抗して上方へスライドさせ、ストッパ(390)の制動部(394)に接触する。
【0021】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の代表的な実施の形態にかかる戸当り装置の構成について
図1乃至
図17を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0022】
なお、説明の都合上、
図1において扉装置10における戸体(扉)1の閉方向a(Close)、開方向b(Open)とし、矢印ab方向を開閉方向とする。また、扉1を紙面手前から見たときの矢印c方向を左側または扉1の先端側、矢印d方向を右側または扉1のヒンジ側とし、矢印cd方向を水平方向又は左右方向と言う場合がある。さらに、矢印e方向を重力方向における上側または上方、矢印f方向を下側または下方とし、矢印ef方向を上下方向と言う場合がある。なお、これらの方向は、説明の便宜上用いられるのであって、実際の使用状況に対応した方向ではない。
【0023】
(2-1)実施の形態
図1および
図2に示すように、実施の形態に係る戸当り装置3が設けられた扉装置10の構成について説明する。扉装置10は、図示しない枠体に一端側が軸支された戸体(以下これを「扉」とも言う。)1と、枠体に対して開閉可能な扉1の先端側(矢印c方向)の底面に取り付けられた戸当り装置3と、床面4に設置され戸当り装置3に設けられたマグネット330(
図4等)の吸引力により戸当り装置3のストッパ390(
図4)と係合する受金具5とを有している。
【0024】
<受金具の構成>
図2に示すように、受金具5は、金属製であり、円盤形状のカバー部51と、円盤形状の床面取付部52と、を有している。床面取付部52は、略矩形状の薄板状部材からなるフラップ53と、当該フラップ53の一端を回動自在に軸支する回動軸54とを有している。
【0025】
床面取付部52は、カバー部51が取り付けられていない状態において図示しない取付用の複数の貫通孔を介して床面4に対してネジにより固定される。床面取付部52のほぼ中央には回動軸54を介してフラップ53が回動自在に軸支されている。
【0026】
具体的には、フラップ53は、床面取付部52に面接触して倒れた横倒状態と、回動軸54を中心に起き上がった起立状態との間で自在に回動する。このフラップ53が回動軸54を介して回動する際に、フラップ53および回動軸54の金属同志が接触する際にカチャカチャ等の接触音が発生する。
【0027】
カバー部51は、床面取付部52を覆うように取り付けられている。すなわちカバー部51は、床面取付部52の貫通孔を介してネジにより床面4に固定したネジの頭部等を隠し、フラップ53および回動軸54だけを露出する化粧板である。また、このカバー部51には、フラップ53および回動軸54を露出するため、フラップ53および回動軸54の大きさに対応したサイズの貫通穴51hが形成されている。
【0028】
さらに、フラップ53には、略矩形状に貫通した係合孔53hが形成されている。フラップ53の係合孔53hは、開閉方向(矢印ab方向)の長さ53hd、および、水平方向(矢印cd方向)の幅53hwを有している。係合孔53hの幅53hwは、後述するストッパ390の本体部391の幅391w(
図12)よりも大きい。
【0029】
扉1の戸当り装置3と受金具5とが対向していない状態では、フラップ53は、受金具5の床面取付部52に面接触して倒れた横倒状態であり、カバー部51とフラップ53とが面一になっている。
【0030】
一方、扉1の開閉動作に伴い、扉1の底面に固定された戸当り装置3が移動して受金具5に近接し、扉1の戸当り装置3と受金具5とが対向したとき、フラップ53の先端部が戸当り装置3の内部に設けられたマグネット330(
図4等)の磁力によって上方(矢印e方向)に引き寄せられる。このときフラップ53の係合孔53hは、戸当り装置3の本体ベース300の下方に設けられたゴム製のストッパ390の係合部393(
図15)と係合され、扉1の動きを抑制する。
【0031】
<戸当り装置の構成>
図3乃至
図12を用いて、戸当り装置3の構成について以下説明する。戸当り装置3は、
図3乃至
図5に示すように、主に、本体ベース300、マグネット330、スライドブロック350、バネ状体としての圧縮コイルバネ370、および、ストッパ390を有している。戸当り装置3は、これらの各部品が組み合わされて構成されており、扉1の底面のケース収容穴(図示せず)に取り付けられる。
【0032】
<本体ベース>
図6乃至
図9に示すように、本体ベース300は、戸当り装置3が扉1の底面のケース収容穴に取り付けられた際、その扉1の底面から下方(矢印f方向)に向かって突出する直方体形状を有する箱状部材であり、その上端面300aから上方(矢印e方向)に向かって円筒状に突出したケース310を有している。
【0033】
本体ベース300は、平面視長方形形状を有している。本体ベース300の上端面300aには、扉1の底面に取り付けるために貫通した2つの貫通孔300hが設けられている。本体ベース300は、2つの貫通孔300hを介して下方から木ネジ等をねじ込むことにより扉1の底面に取り付けられる。
【0034】
ケース310は、本体ベース300の上端面300aから上方(矢印e方向)に向かって突出し、その上方の端部が開口した円筒状部材である。ケース310の開口には開口端縁から内周側に向かって僅かに突出した環状の突部310k(
図5)が形成されている。また、ケース310の外径および高さは、扉1の底面に形成されたケース収容穴の内径および深さと同じである。扉1のケース収容穴は、ケース310の外径および高さを同じ内径および深さを有する円柱状の有底孔である。
【0035】
したがって、本体ベース300のケース310が扉1の底面のケース収容穴に収容された状態で2つの貫通孔300hを介して木ネジ等により取り付けられると、当該ケース310が扉1のケース収容穴に完全に収容されて隠蔽され、当該本体ベース300だけが扉1の底面から下方に突出した状態で露出されることになる。
【0036】
ケース310は、本体ベース300の貫通穴と同一の内径を有する円筒状部材である。すなわちケース310の内側空間は、本体ベース300の貫通孔と連通している。ケース310には、その内側に直方体形状のマグネット330を保持するために上方(矢印e方向)が開口された平面視矩形状の凹部空間314u(
図4(A)および
図7(C))を有するマグネット保持凹部314が設けられている。
【0037】
図7に示すように、ケース310では、マグネット保持凹部314が本体ベース300の貫通穴を完全に塞いではおらず、本体ベース300の内周面300nとマグネット保持凹部314の側壁との間には2つの貫通孔314hが存在している。
【0038】
これら2つの貫通孔314hは、後述するスライドブロック350のスライド脚部352(
図10)を挿通する際に用いられる空間である。なお、2つの貫通孔314hを形成している本体ベース300の内周面300nの下方端部には、中央のマグネット保持凹部314に向かって僅かに突出した弧状の段部300d(
図7(C)および
図9)が形成されている。この段部300dは、後述するスライドブロック350の上段部352uが係止される部分である。
【0039】
図7(B)、(D)に示すように、マグネット保持凹部314において下方を向いた面である下面314bには、扉1の開閉方向(矢印ab方向)に対して互いに平行かつ所定距離だけ離れた位置に2個の矩形状の貫通孔からなるストッパ取付孔315が形成されている。このストッパ取付孔315は、後述するストッパ390の嵌合突部392(
図11および
図12)が取り付けられる際に用いられる。
【0040】
本体ベース300の底面には、下方(矢印f方法)に向かって突出した4つの壁部によって凹空間300s(
図6、
図7(B))が形成されている。凹空間300sは、本体ベース300の四辺を構成している壁部の内壁面によって画成されている。
【0041】
本体ベース300の凹空間300sは、受金具5のフラップ53が戸当り装置3のマグネット330(
図4等)の磁力によって上方に引き寄せられた際に、当該フラップ53の先端部が入り込むスペースである。また、凹空間300sは、マグネット保持凹部314の下面314bから下方へ突出したスライドブロック350のスライド脚部352の下段部352b(
図6および
図10)、および、ストッパ390(
図6、
図10および
図11)を収容するスペースでもある。
【0042】
図6に示すように、本体ベース300の凹空間300sは、本体ベース300の四辺を構成している壁部の内壁面に加えて、平坦な底面301、その底面301の端部から閉方向a(Close)および開方向b(Open)に向かって次第に上方(矢印e方向)へ傾斜した傾斜面302a、302bによって形成されている。
【0043】
図14および
図15に示すように、2つの傾斜面302a、302bは、フラップ53が上方に引き寄せられて後述するスライドブロック350の下段部352bと接触した際の当該フラップ53の傾斜角度と平行またはほぼ平行な面である。したがって、扉1の開閉動作によってフラップ53の先端部と本体ベース300の傾斜面302aまたは302bとが摺接した際の摺動抵抗を極力小さくしている。
【0044】
また、
図8に示すように、2つの傾斜面302a、302bの開閉方向(矢印ab方向)の長さ、すなわち、本体ベース300の凹空間300sを画成している内壁面300snから底面301までの距離は、フラップ53の係合孔53hの長さ53hd(
図2)とほぼ同じ距離に設定されている。
【0045】
<マグネット>
図4に示すように、マグネット330は、例えば直方体形状からなる磁力の強いネオジウム磁石であり、ケース310のマグネット保持凹部314の凹部空間314uに収容可能な大きさを有している。マグネット330は、マグネット保持凹部314の凹部空間314uに嵌め込まれている。ただし、これに限るものではなく、マグネット保持凹部314の凹部空間314uに接着されていてもよく、あるいは単に載置されているだけであってもよい。因みに、マグネット330はネオジウム磁石に限るものではなく、その他種々の磁石を用いることができる。
【0046】
<スライドブロック>
図10に示すように、スライドブロック350は、略ピストンヘッドのような全体形状を有し、弾性力のあるゴムよりも硬質な樹脂によって形成されている。具体的には、スライドブロック350は、弾性力のあるゴムからなるストッパ390よりも硬質な樹脂によって形成されている。なお、スライドブロック350は、硬質な樹脂に限るものではなく、弾性力のあるゴムよりも硬質であり、フラップ53の先端部と接触したときの摩擦抵抗がゴムよりも小さければ、プラスチック、セラミック等その他種々の材料で形成されていてもよい。
【0047】
スライドブロック350は、円盤部351と、その円盤部351の互いに対向する両端部から下方(矢印f方向)に向かって延びる2個のスライド脚部352とが一体化された構成を有している。
【0048】
スライドブロック350の円盤部351は、平坦な上端面351aを有する薄板状の円盤部材である。円盤部351の上端面351aは、その上に圧縮コイルバネ370(
図4)が載置される載置面として用いられる。
【0049】
2個のスライド脚部352は、円盤部351の両端部から下方に向かって互いに平行に延びた部分であり、所定の厚さ352t、所定の幅352wおよび所定の高さ352hによって形成されている。このようなスライドブロック350が本体ベース300のケース310に組み込まれる際、その内側の空間352sにケース310のマグネット保持凹部314が収容される。
【0050】
スライド脚部352の厚さ352tは、円盤部351の半径よりも短い。スライド脚部352の幅352wは、円盤部351の半径よりも長く直径よりは短い。スライド脚部352の高さ352hは、ケース310の高さよりも低い。
【0051】
図10(E)に示すように、スライド脚部352の上方(矢印e方向)からみた平面視形状は、略三日月状を有している。スライド脚部352は、本体ベース300においてケース310のマグネット保持凹部314の両側に形成された2つの貫通孔314h(
図7)と対応している。スライド脚部352は、下方(矢印f方向)に向かうに連れて段階的に縮径しており、上段部352u、中段部352m、下段部352bに分かれている。
【0052】
スライドブロック350のスライド脚部352が、本体ベース300の貫通孔314hに挿通されると上段部352uが本体ベース300の段部300d(
図7(C)および
図9)に係止される。このとき、スライド脚部352の中段部352mが本体ベース300に隠蔽されるものの、下段部352bだけが貫通孔314hから下方(矢印f方向)の本体ベース300の凹空間300sに飛び出た状態となる。
【0053】
スライドブロック350は、スライド脚部352の上段部352uが本体ベース300の段部300dに係止された状態が最下点の位置であり、フラップ53の先端部によって下段部352bが下方から上方へ向かって押し上げられた場合にはスライドブロック350が上方へ僅かに持ち上がる。つまり、スライドブロック350はスライド脚部352を介して上下にスライド自在に本体ベース300に取り付けられている。
【0054】
スライド脚部352の下段部352bは、下方(矢印f方向)に向かうに連れて僅かに先細るテーパー状を為し、両側の角部にはC面取部352bcが形成されている。下段部352bの底面352bbは、受金具5のフラップ53の先端部が摺接する摺動面である。
【0055】
<圧縮コイルバネ>
圧縮コイルバネ370(
図4)は、スライドブロック350の円盤部351の上端面351aに載置されるバネ状体である。
【0056】
圧縮コイルバネ370は、本体ベース300に組み付けられたスライドブロック350の円盤部351の上端面351aに載置される際、ケース310の開口の端縁に形成された突部310kに対して当該圧縮コイルバネ370の上端部が係止されるように取り付けられる。すなわち、本体ベース300のケース310の内部において、圧縮コイルバネ370は、スライドブロック350の円盤部351とケース310の突部310kとの間に挟まれた状態となる。
【0057】
これにより圧縮コイルバネ370は、その弾性力によってスライドブロック350を本体ベース300に対して下方(矢印f方向)に付勢する。この場合、スライドブロック350のスライド脚部352の上段部352uが本体ベース300の段部300dに係止され、本体ベース300の底面301からスライド脚部352の下段部352bが下方へ突出した状態となる。
【0058】
<ストッパ>
図11および
図12に示すように、ストッパ390は、全体として弾性力のあるゴム状部材からなり、本体部391と、2個の嵌合突部392と、2個の係合部393と、制動部394とを有している。
【0059】
ストッパ390の本体部391は、薄板状部材であり、ケース310のマグネット保持凹部314の幅314w(
図7(D))と同じ幅391wを有している。ただし、本体部391の長さ391dは、マグネット保持凹部314の長さ314d(
図7(D))よりも短い。
【0060】
ストッパ390の本体部391は、マグネット保持凹部314の下面314bに密着可能な上方(矢印e方向)を向いた平坦面391aと、下方(矢印f方向)を向いた底面391bとを有している。
【0061】
本体部391の平坦面391aには、マグネット保持凹部314に設けられた2個のストッパ取付孔315と対応する位置に、2個の嵌合突部392が互いに対向配置された状態で本体部391と一体に形成されている。これら2個の嵌合突部392は、マグネット保持凹部314のストッパ取付孔315と同一の断面形状を有し、当該ストッパ取付孔315に嵌合可能な所定の高さを有している。
【0062】
ストッパ390の嵌合突部392は、マグネット保持凹部314のストッパ取付孔315に圧入されることにより、ストッパ390が本体ベース300のマグネット保持凹部314に対して一体に取り付けられる。これによりストッパ390は、本体ベース300の凹空間300sに配置されることになる(
図6参照)。
【0063】
本体部391の底面391bには、上述した平坦面391aに形成された2個の嵌合突部392よりも内側の位置に対して、互いに対向配置された2個の係合部393が本体部391と一体に形成されている。
【0064】
2個の係合部393は、互いに背向するように反対側かつ下方(矢印f方向)に向かって斜めに延びており、側面視(
図12(B))においてハの字状に本体部391の底面391bに形成されている。
【0065】
2個の係合部393は、本体部391の底面391bから所定の量だけ下方(矢印f方向)に向かって突出している。具体的には、2個の係合部393は、本体ベース300の凹空間300sに完全に隠蔽されてしまうのではなく、
図13(A)および(B)に示すように、本体ベース300から下方(矢印f方向)に向かって僅かに突出している。
【0066】
係合部393は、受金具5のフラップ53の先端部と摺接する摺接面393aと、フラップ53の係合孔53hと係合する係合面393bとを有している。摺接面393aは、扉1の開閉動作が行われた際にフラップ53の先端部と接触した際、所定の抵抗感と滑り易さを備えるように本体部391の底面391bに対して所定の傾斜角度に設定されている。この摺接面393aの傾斜角度については任意に設定可能である。
【0067】
一方、係合面393bについては、受金具5のフラップ53の係合孔53hと係合した際の係合状態の維持し易さと、係合部393の係合状態が解消される際の弾性変形し易さとを備えるように本体部391の底面391bに対して所定の傾斜角度に設定されている。
【0068】
この場合、本体部391の底面391bに対する係合面393bの傾斜角度は、本体部391の底面391bに対する摺接面393aの傾斜角度よりも立っている。ただし、これに限るものではなく、底面391bに対する係合面393bの傾斜角度、および、底面391bに対する摺接面393aの傾斜角度は任意に設定可能である。
【0069】
2つの係合部393の間には、開閉方向(矢印ab方向)に沿って延び、当該2つの係合部393同士を繋ぐように一体化された直方体形状の制動部394が形成されている。
【0070】
この制動部394は、2個の係合部393よりも上方(矢印e方向)に配置されている。すなわち、制動部394は、2個の係合部393よりも下方に突出していない状態にある。また、制動部394は、受金具5のフラップ53がマグネット330によって引き寄せられていない通常の横倒状態(
図13(B))において、スライドブロック350のスライド脚部352の下段部352bよりも上方(矢印e方向)に配置されている。
【0071】
図12(C)に示すように、制動部394は、開閉方向(矢印ab方向)に沿って2つの係合部393同士を繋ぐように延びており、本体部391の幅391wよりも短い所定の幅394wを有している。
【0072】
制動部394は、本体部391の幅391wのほぼ中央に1つ配置されている。ただし、これに限るものではなく、制動部394は、本体部391の幅391wの中央から両外側の位置にそれぞれ配置されていてもよく、2つの係合部393同士の間であれば任意の場所に任意の個数だけ配置されていてもよい。
【0073】
制動部394の底面394bは、本体部391の底面391bと平行な平坦面であり、受金具5のフラップ53の先端部と接触したときに、底面394bとフラップ53の先端部との摩擦抵抗等によって制動力(ブレーキ)として作用する部分である。
【0074】
ストッパ390の制動部394は、スライドブロック350のスライド脚部352の下段部352bよりも軟質なゴム状部材からなるため、フラップ53の先端部がスライド脚部352の下段部352bに接触する時よりも摩擦抵抗が大きく制動力が働き易い。なお、制動部394の底面394bは、スライド脚部352よりも軟質であるため、フラップ53の先端部が接触した際に僅かに凹む場合もある。
【0075】
因みに、制動部394の幅394wは、フラップ53の先端部と接触したときの摩擦抵抗を大きくしたい場合にその幅394wを太くし、摩擦抵抗を小さくしたい場合にその幅394wを細くすればよく、任意に設定可能である。
【0076】
<組み立て手順>
このような構成の戸当り装置3においては、下記の手順によって組み立てることができる。まず、本体ベース300のケース310におけるマグネット保持凹部314の凹部空間314uにマグネット330を嵌め込むことにより取り付ける。
【0077】
この状態において、続いて、本体ベース300の内周面300nとマグネット保持凹部314の側壁との間に設けられた2つの貫通孔314hに対して、スライドブロック350における2個のスライド脚部352を差し込む。
【0078】
このときスライドブロック350は、スライド脚部352が本体ベース300の貫通孔314hに挿通されると共に、スライド脚部352の上段部352uが本体ベース300の段部300d(
図7(C)および
図9)によって係止されるため、スライド脚部352の下段部352bだけが貫通孔314hから下方(矢印f方向)の凹空間300sに飛び出た状態が形成される。
【0079】
因みに、このときマグネット330は、マグネット保持凹部314の凹部空間314uに収容され、かつ、スライドブロック350の円盤部351により上方(矢印e方向)が閉塞されることになり、マグネット330が凹部空間314uの中でガタつくことのない状態で保持される。
【0080】
その後、マグネット保持凹部314の下面314bに対してストッパ390の平坦面391aを当接させると共に、当該マグネット保持凹部314に設けられた2個のストッパ取付孔315に対して、ストッパ390における2個の嵌合突部392を圧入する。これにより、マグネット保持凹部314の下面314bに対してストッパ390を取り付けて一体化させることができる。
【0081】
続いて、スライドブロックの円盤部351の上端面351aに圧縮コイルバネ370を載せると共にケース310の突部310kに圧縮コイルバネ370の上端部を係止させることにより戸当り装置3が完成する。その完成した戸当り装置3が扉1の底面に設けられたケース収容穴に取り付けられると扉装置10が完成する。
【0082】
<戸当り装置の動作>
次に、このような構成の戸当り装置3により開閉動作中の扉1を受金具5の位置で停止させるための動作について説明する。
【0083】
<戸当り装置による扉停止動作>
図13(A)および(B)に示すように、扉1に取り付けられた戸当り装置3が受金具5によって停止されていない通常の横倒状態においては、スライドブロック350の円盤部351の上端面351aと、ケース310の突部310kとの間に挟まれた圧縮コイルバネ370による下方(矢印f方向)への付勢力がスライドブロック350に対して作用している。
【0084】
したがって、スライドブロック350は、圧縮コイルバネ370の付勢力によってスライド脚部352の上段部352uが本体ベース300の段部300d(
図7(C)および
図9)に係止された最下点の位置に配置される。
【0085】
すなわち、スライド脚部352の下段部352bが本体ベース300の貫通孔314hから下方(矢印f方向)に向かって凹空間300sの中に最大限に突出した状態が形成される。
図13においては、スライド脚部352の下段部352bが本体ベース300から下方へ飛び出した最下点の位置に配置された状態が示されている。
【0086】
この場合、スライド脚部352の下段部352bは、ストッパ390の係合部393および制動部394よりも下方(矢印f方向)に飛び出ている。ただし、ストッパ390において係合部393は、制動部394よりも下方に飛び出ている。
【0087】
このような戸当り装置3が通常の横倒状態(
図13(A)および(B))にある場合において、扉1が所定の速度より遅い低速で開動作された場合について説明する。
図14(A)および(B)に示すように、扉1の開方向(矢印b方向)への移動により、戸当り装置3のマグネット330と受金具5とが近づき互いに対向配置された状態になると、戸当り装置3のマグネット330の作用により受金具5のフラップ53が跳ね上がる。
【0088】
このとき、受金具5のフラップ53は、ストッパ390における2個の係合部393の間に位置しているスライドブロック350のスライド脚部352の下段部352bの底面352bbに対して最初に接触する。
【0089】
ただし、このとき、フラップ53の先端部は、ストッパ390の制動部394の底面394bと接触することはない。これは、圧縮コイルバネ370の付勢力により、ストッパ390の制動部394よりもスライドブロック350のスライド脚部352の下段部352bの方が下方(矢印f方向)に飛び出ているからである。
【0090】
扉1と一体になった戸当り装置3が開方向(矢印b方向)に向かって更に移動すると、フラップ53の先端部はスライド脚部352の下段部352bの底面352bbを摺接する。ここで、スライドブロック350は、硬質の樹脂によって形成されているため、フラップ53の先端部がスライド脚部352の下段部352bの底面352bbと接触したとき強い摩擦抵抗が生じることなく滑らかに扉1が移動する。
【0091】
その後、
図15(A)に示すように、フラップ53の先端部がストッパ390の係合部393に接触し、当該係合部393を乗り越えた後、本体ベース300の凹空間300sを画成している内壁面300snに衝突する。なお、フラップ53の先端部がストッパ390の係合部393を乗り越えたとき、係合部393はフラップ53の係合孔53hに入り込む。
【0092】
図15(B)に示すように、フラップ53の先端部が本体ベース300の凹空間300sを画成している内壁面300snに衝突すると、その衝撃で扉1が一時的に閉方向(矢印a方向)に向かって僅かに移動する。
【0093】
このとき、凹空間300sの傾斜面302bに沿ってフラップ53の先端部が摺接しながら扉1が閉方向(矢印a方向)へ移動することにより、フラップ53の係合孔53hと係合部393とが完全に係合し、扉1の移動が規制される。
【0094】
次に、戸当り装置3が通常の横倒状態(
図13(A)および(B))にある場合において、扉1が所定の速度より速い高速で開動作された場合について説明する。扉1の開方向(矢印b方向)への移動により、戸当り装置3のマグネット330と受金具5とが近づき互いに対向配置された状態になると、戸当り装置3のマグネット330の作用により受金具5のフラップ53が跳ね上がる。
【0095】
受金具5におけるフラップ53の先端部は、ストッパ390における2個の係合部393の間に配置されているスライドブロック350のスライド脚部352の下段部352bの底面352bbに対して最初に接触する(
図14(A)および(B))。
【0096】
このとき、
図16(A)および(B)に示すように、扉1の移動速度が速いために圧縮コイルバネ370の付勢力に抗してスライドブロック350のスライド脚部352を上方(矢印e方向)に押し上げる。
【0097】
そうすると、フラップ53の先端部は、ゴム状部材からなるストッパ390の制動部394の底面394bと接触することになり、フラップ53の先端部とストッパ390の制動部394の底面394bとの間で強い摩擦力が生じ、扉1の開方向(矢印b方向)への移動速度を低減させる。これは、スライド脚部352が硬質の樹脂であるのに対し、ストッパ390が弾性力のあるゴム状部材であるためである。
【0098】
扉1の移動速度が低減されると、フラップ53の先端部がスライドブロック350を上方(矢印e方向)に押し上げる力が弱まり、圧縮コイルバネ370の付勢力によりスライドブロック350が下方(矢印f方向)へ押し下げられる。
【0099】
これにより、フラップ53の先端部はストッパ390の制動部394からスライドブロック350のスライド脚部352の下段部352bの底面352bbへ接触先が切り変わり(
図14(A)および(B)の状態)、それ以降については、扉1が所定の速度以下の低速で移動することになる。
【0100】
したがって、
図15(A)および(B)に示したように、フラップ53の先端部がストッパ390の係合部393を乗り越えると共に、係合部393がフラップ53の係合孔53hに入り込んだ後、本体ベース300の凹空間300sを画成している内壁面300snに衝突する。
【0101】
その後、フラップ53の先端部が本体ベース300の凹空間300sを画成している内壁面300snに衝突したときの衝撃により、扉1が一時的に閉方向(矢印a方向)に向かって僅かに移動することによってフラップ53の係合孔53hと係合部393とが係合し、扉1の開方向(矢印b方向)への移動が規制される。なお、扉1における所定の速度とは、扉1の移動速度に応じてスライドブロック350のスライド脚部352を上方(矢印e方向)に押し上げることが可能な速度であり、その速度以上を高速とし、その速度未満を低速とする。
【0102】
<作用および効果>
本実施の形態における戸当り装置3では、扉1の開動作が低速で行われた場合、受金具5のフラップ53の先端部が硬質の樹脂からなるスライドブロック350の下段部352bの底面352bbと摺接して滑らかに移動することになるので、フラップ53の先端部とスライド脚部352の下段部352bとの間で大きな音が発生することなく確実に扉1を停止させることができる。
【0103】
また、戸当り装置3では、扉1の開動作が高速で行われた場合、フラップ53の先端部がスライドブロック350を上方に押し上げることにより、当該フラップ53の先端部がストッパ390の制動部394の底面と接触し、扉1の開方向(矢印b方向)への移動速度を低減させる。
【0104】
このとき瞬間的にフラップ53の先端部と制動部394との間に摩擦による音が発生するものの、扉1の移動速度が低速になってスライドブロック350が圧縮コイルバネ370の付勢力により押し下げられる。
【0105】
そうすると、フラップ53の先端部が制動部394の底面394bから離れ、スライド脚部352の下段部352bと接触することになる。つまり、フラップ53の先端部は、扉1の開動作が低速で行われた場合と同様にスライドブロック350の下段部352bの底面352bbと摺接して滑らかに移動することになる。
【0106】
したがって戸当り装置3では、扉1の開動作が高速で行われた場合であっても、フラップ53の先端部とストッパ390の制動部394との間で発生する音を極力減らしつつかつ確実に扉1を停止させることができる。
【0107】
さらに、戸当り装置3では、本体ベース300の凹空間300sを画成している2つの傾斜面302a、302bの開閉方向(矢印ab方向)の長さ、すなわち、本体ベース300の凹空間300sを画成している内壁面300snから底面301までの距離を、フラップ53の係合孔53hの長さ53hdとほぼ同じ距離になるよう極力短くしている。
【0108】
これにより戸当り装置3は、フラップ53の先端部が係合部393を乗り越え、凹空間300sを画成している内壁面300snと衝突した後にフラップ53の係合孔53hとストッパ390の係合部393とが係合するまでの時間が極めて短くなる。
【0109】
かくして、フラップ53が受金具5の回動軸54を介して回動する際に生じるカチャカチャ音等の雑音の発生時間が短くなり、ユーザにとって好ましくない音の発生を低減することができる。
【0110】
3.他の実施の形態
なお、上述した実施の形態においては、バネ状体としての圧縮コイルバネ370を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、下方に付勢力を付与することが可能であれば、複数の圧縮コイルバネ370を用いるようにしたり、その他の柱状または円筒状の弾性体を用いるようにしてもよい。
【0111】
また、上述した実施の形態においては、ストッパ390の制動部394よりもスライドブロック350のスライド脚部352における下段部352bの方が下方に配置されており、フラップ53の先端部がストッパ390の制動部394よりも先に下段部352bに接触するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、制動部394の方が下段部352bよりも下方に配置するようにしたり、或いは、制動部394と下段部352bとが同じ高さになるように配置するようにしてもよい。
【0112】
フラップ53の先端部がストッパ390の制動部394に先に接触した場合、扉1の移動速度が遅くなるので雑音の発生も低減する。この場合、スライド脚部352の下段部352bよりも制動部394が軟質であるため、フラップ53の先端部が制動部394の底面394bを凹ませると同時に下段部352bにも接触することになる。これにより、雑音の発生が低減された状態でフラップ53の係合孔53hとストッパ390の係合部393とが係合される。
【0113】
さらに、上述した実施の形態においては、圧縮コイルバネ370をスライドブロック350の円盤部351の上端面351aに載置すると共にケース310の突部310kに圧縮コイルバネ370の上端部を係止させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、本体ベース300のケース310の上方の開口を塞ぐ蓋部を設け、蓋部と円盤部351との間に圧縮コイルバネ370を挟み付けることによりスライドブロック350を下方に付勢するようにしてもよい。
【0114】
或いは、圧縮コイルバネ370をスライドブロック350の円盤部351の上端面351aに載置させ、扉1の底面に形成されたケース収容穴に戸当り装置3が取り付けられた際、ケース収容穴の底面とスライドブロック350の円盤部351の上端面351aとの間に圧縮コイルバネ370を挟み付けるようにしてもよい。この場合も、圧縮コイルバネ370によりスライドブロック350を下方に付勢することができる。
【0115】
本発明に係る戸当り装置3は、上記実施の形態に限定されるものではない。なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の戸当り装置3を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
1……扉、3…戸当り装置、4…床面、5…受金具、51…カバー部、52…床面取付部、53…フラップ、53h…係合孔、54…回動軸、300…本体ベース、300d…段部、300s…凹空間、300sn…内壁面、301…底面、302a、302b…傾斜面、310…ケース、314…マグネット保持凹部、314u…凹部空間、314h…貫通孔、315…ストッパ取付孔、330…マグネット、350…スライドブロック、351…円盤部、352…スライド脚部、352u…上段部、352m中段部、352b…下段部、370…圧縮コイルバネ、390…ストッパ、391…本体部、392…嵌合突部、393…係合部、393a…摺接面、393b…係合面、394…制動部。